まず、本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。図1は本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルを示す側面図である。なお、ショベルは建設機械の一例であり、本発明の一実施形態による旋回駆動装置は、旋回体を旋回する機構を有する建設機械に組み込むことができる。
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
なお、図1に示すショベルは、旋回駆動装置に供給する電力を蓄積する蓄電装置を有するショベルである。しかしながら、本発明は、電動旋回を採用したショベルであれば、例えば外部電源から充電電力が供給される電気駆動式ショベルにも適用され得る。
図2は図1に示すショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の出力軸21bには、レゾルバ22、及び旋回減速機24が接続される。旋回減速機24の出力軸24Aにはメカニカルブレーキ23が接続される。旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とにより、負荷駆動系として旋回駆動装置40が構成される。ここで、旋回用電動機21が上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23が上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくブレーキ装置に相当する。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、蓄電系120の昇降圧コンバータを駆動制御することによりキャパシタの充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタの充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、蓄電系120の昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタの充放電制御を行う。また、コントローラ30は、後述のようにキャパシタに充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
上述のような構成のショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回駆動するために、インバータ20を介して供給される電力により旋回用電動機21が駆動される。旋回用電動機21の出力軸21bの回転力は、旋回減速機24とメカニカルブレーキ23を介して旋回駆動装置40の出力軸40Aに伝達される。
図3は本発明の一実施形態による旋回駆動装置40の構成を示すブロック図である。上述のように、旋回駆動装置40は、駆動源としての電動モータである旋回用電動機21を含む。旋回用電動機21の出力軸側に旋回減速機24が接続される。
具体的には、旋回減速機24は、第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3の3段構成を有する。第1旋回減速機24−1、第2旋回減速機24−2、及び第3旋回減速機24−3は、それぞれ遊星減速機で構成される。より具体的には、第1段の第1旋回減速機24−1は、旋回用電動機21に組み付けられる。また、第1旋回減速機24−1の出力軸となる遊星キャリア46には、メカニカルブレーキ23としてのディスクブレーキが設けられる。また、第2段の第2旋回減速機24−2は、メカニカルブレーキ23を間に挟んで第1旋回減速機24−1に組み付けられ、第3段の第3旋回減速機24−3は第2旋回減速機24−2に組み付けられる。そして、第3旋回減速機24−3の出力軸が旋回駆動装置40の出力軸40Aとなる。なお、図示はしないが、旋回駆動装置40の出力軸40Aは旋回機構2に接続され、出力軸40Aの回転力により旋回機構2が駆動される。
次に、図4〜図8を参照しながら、旋回駆動装置40の具体的な構成について説明する。なお、図4は、旋回駆動装置40の上面図であり、図4中の破線は、第1旋回減速機24−1の主要構成部品のかくれ線を表す。また、図5は、図4のV−V線断面図である。
また、図5は旋回駆動装置40のうち、第1旋回減速機24−1及びメカニカルブレーキ23を構成する部分の断面図である。本実施形態では、第1旋回減速機24―1を構成する遊星減速機の太陽歯車42が、旋回用電動機21の出力軸21bに固定されている。太陽歯車42は3つの遊星歯車44のそれぞれに係合している。遊星歯車44のそれぞれは、ピン44aを介して第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する遊星キャリア46に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合している。
内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50は、旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア46は、第1ギヤケース50に固定された第2ギヤケース52に対して、ベアリング56を介して回転可能に支えられている。
なお、上述の第1旋回減速機24−1は、各歯車を潤滑するための潤滑油が、旋回用電動機21のエンドプレート21a、出力軸21b、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46によって密閉される構造となっている。
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、旋回用電動機21の出力軸21bが回転して太陽歯車42が回転すると、遊星歯車44が回転(自転)する。遊星歯車44は第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合しており、遊星歯車44の回転力で内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50が回転しようとする。ところが、第1ギヤケース50は旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車44を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア46のほうが回転する。以上のような歯車作用により、旋回用電動機21の出力軸21bの回転が減速されて遊星キャリア46から出力される。
次に、メカニカルブレーキ23を構成するディスクブレーキの構造について説明する。ディスクブレーキは固定部である第2ギヤケース52と出力軸である遊星キャリア46との間に形成される。遊星キャリア46の外周から遊星キャリア46の回転半径方向外側に向けてブレーキディスク60が延在する。ブレーキディスク60は、遊星キャリア46に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えばスプライン接続のような接続構造を介して遊星キャリア46に接続されている。
ブレーキディスク60の上下両側には、ブレーキプレート62が配置されている。ブレーキプレート62は、固定部である第2ギヤケース52に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能な状態で、例えばスプライン接続のような接続構造を介して第2ギヤケース52の内面側に接続されている。上側のブレーキプレート62の上には、ピストン64が、遊星キャリア46の軸方向に移動可能な状態で配置されている。ピストン64はスプリング66により押圧されて常に上側のブレーキプレート62に押し付けられている。本実施形態では、スプリング66としてコイルスプリングを用いているが、小さな変位で高出力を得ることのできる多段重ねの皿バネを用いることもできる。
ブレーキプレート62とブレーキディスク60とは、遊星キャリア46の軸方向に移動可能である。そのため、上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧される。ブレーキプレート62とブレーキディスク60の表面は摩擦係数の大きな被膜に覆われている。そして、ブレーキディスク60がブレーキプレート62により挟まれて押圧されることで、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。また、ブレーキディスク60は遊星キャリア46に対して回転できないように接続されている。そのため、ブレーキディスク60に作用するブレーキ力が遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
ピストン64と第2ギヤケース52との間には、作動油が供給可能な油圧空間68が形成され、油圧空間68にブレーキ解除ポート69が接続されている。また、ピストン64と第2ギヤケース52との間にはOリング等のシール部材91が配置され、油圧空間68内の作動油が漏れ出ないようにシールしている。パイロットポンプ15から操作装置26、油圧ライン27a(図2参照。)及びブレーキ解除ポート69を介して油圧空間68に油圧を供給すると、ピストン64が油圧により押し上げられて、ブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、本実施形態では、第1ギヤケース50の上面にリング状の凹部が形成され、リング状の凹部の底面に複数の貫通孔が形成されている。この貫通孔のそれぞれに上述のスプリング66が挿入されている。各スプリング66の下端は、第1ギヤケース50の貫通孔から突出し、ピストン64に形成された穴の底面に当接している。そして、第1ギヤケース50のリング状の凹部には、スプリング押え部材90が嵌合している。スプリング押え部材90は、複数のボルト92により第1ギヤケース50に締め付けられて固定されている。
スプリング押え部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定される前は、各スプリング66の上端はリング状の凹部の底面から上方に突出している。したがって、スプリング押え部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定する際に、各スプリング66はスプリング押え部材90により押圧されて圧縮される。スプリング押え部材90を第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定すると、各スプリング66は、スプリング押え部材90とピストン64との間に挟まれて圧縮された状態となっている。このときの各スプリング66の復元力(スプリング力)が、ピストン64(すなわち、ブレーキプレート62)をブレーキディスク60に押し付ける力となり、遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
スプリング押え部材90が第1ギヤケース50のリング状の凹部内に固定された状態では、スプリング押え部材90全体がリング状の凹部内に収容される。そのため、スプリング押え部材90は、旋回用電動機21のエンドプレート21a(フランジとも称することもある)に当接する第1ギヤケース50の合わせ面から突出することはない。したがって、第1ギヤケース50の合わせ面のみが旋回用電動機21のエンドプレート21aに当接する。ただし、スプリング押え部材90の上面にはOリング等のシール部材93が配置され、第1ギヤケース50内の遊星歯車44を潤滑・冷却する潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。また、スプリング押え部材90の下面にもOリング等のシール部材94が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。同様に、第1ギヤケース50と第2ギヤケース52との間にもOリング等のシール部材95が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。
次に、図6〜図8を参照しながら、旋回駆動装置40における回転駆動力の伝達について説明する。なお、図6及び図7は何れも図4のVI−VI線断面図であり、図6は旋回用電動機21の出力軸21bが静止しているときの旋回駆動装置40の状態を示し、図7は出力軸21bが回転しているときの旋回駆動装置40の状態を示す。また、図8は、第1旋回減速機24−1における太陽歯車42及び遊星歯車44の側面図である。
図6に示すように、第1旋回減速機24−1は、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48を含む遊星歯車機構で構成される。また、第2旋回減速機24−2は、太陽歯車82、遊星歯車84、遊星キャリア86、及び内歯歯車88を含む遊星歯車機構で構成される。同様に、第3旋回減速機24−3は、太陽歯車102、遊星歯車104、遊星キャリア106、及び内歯歯車108を含む遊星歯車機構で構成される。
第1旋回減速機24−1において、太陽歯車42は、旋回用電動機21の出力軸21bに固定され、遊星歯車44と係合する。遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内壁に形成された内歯歯車48と太陽歯車42との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第1旋回減速機24−1は、3つの遊星歯車44を有する。3つの遊星歯車44のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア46を回転させる。なお、遊星キャリア46は、第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する。
また、本実施形態では、太陽歯車42及び3つの遊星歯車44のそれぞれは、はすば歯車(図8参照。)で構成され、内歯歯車48は、はすば内歯車(図示せず。)で構成される。なお、はすば歯車は、やまば歯車を含む。やまば歯車は、ねじれ方向が逆向きのはすば歯車を組み合わせた構成を有するためである。はすば内歯車についても同様である。また、太陽歯車42及び3つの遊星歯車44のそれぞれは、平歯車に比べてかみ合い率の高い歯車であれば、はすば歯車以外の他の歯車が用いられてもよい。内歯歯車48についても同様である。この構成により、旋回駆動装置40は、旋回減速機24が発生させる騒音及び振動を低減させることができる。複数の歯が常時かみ合い滑らかな動きが実現されるためである。
第2旋回減速機24−2において、太陽歯車82は、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46に固定され、遊星歯車84と係合する。遊星歯車84は、第3ギヤケース54の内壁に形成された内歯歯車88と太陽歯車82との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第2旋回減速機24−2は、3つの遊星歯車84を有する。3つの遊星歯車84のそれぞれは、ピン84aを介して遊星キャリア86に回転可能に支持され、自転しながら公転することによって遊星キャリア86を回転させる。なお、遊星キャリア86は、第2旋回減速機24−2の出力軸を構成する。
また、本実施形態では、太陽歯車82及び3つの遊星歯車84のそれぞれは、平歯車で構成され、内歯歯車88は、内歯平歯車で構成される。第2旋回減速機24−2を構成する歯車は、第1旋回減速機24−1を構成する歯車に比べ回転速度が低く、騒音レベル及び振動レベルも低いためである。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、太陽歯車82及び3つの遊星歯車84のそれぞれは、平歯車に比べてかみ合い率の高いはすば歯車で構成されてもよい。内歯歯車88についても同様である。この構成により、旋回駆動装置40は、旋回減速機24が発生させる騒音及び振動をさらに低減させることができる。
第3旋回減速機24−3において、太陽歯車102は、第2旋回減速機24−2の出力軸としての遊星キャリア86に固定され、遊星歯車104と係合する。遊星歯車104は、第3ギヤケース54の内壁に形成された内歯歯車108と太陽歯車102との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第3旋回減速機24−3は、3つの遊星歯車104を有する。3つの遊星歯車104のそれぞれは、ピン104aを介して遊星キャリア106に回転可能に支持され、自転しながら公転することによって遊星キャリア106を回転させる。なお、遊星キャリア106は、旋回減速機24の出力軸40Aを構成する。
また、本実施形態では、太陽歯車102及び3つの遊星歯車104のそれぞれは、平歯車で構成され、内歯歯車108は、内歯平歯車で構成される。第3旋回減速機24−3を構成する歯車は、第2旋回減速機24−2を構成する歯車に比べさらに回転速度が低く、騒音レベル及び振動レベルもさらに低いためである。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、太陽歯車102及び3つの遊星歯車104のそれぞれは、平歯車に比べてかみ合い率の高いはすば歯車で構成されてもよい。内歯歯車108についても同様である。この構成により、旋回駆動装置40は、旋回減速機24が発生させる騒音及び振動をさらに低減させることができる。
このように、本実施形態では、旋回駆動装置40は、高速段である第1旋回減速機24−1がはすば歯車で構成され、中速段である第2旋回減速機24−2及び低速段である第3旋回減速機が平歯車で構成される。そのため、旋回駆動装置40は、騒音及び振動の低減を実現しながらも比較的低い製造コストで製造され得る。具体的には、旋回駆動装置40は、比較的高い回転速度のため比較的大きな騒音及び振動を発生させる第1旋回減速機24−1をはすば歯車で構成することによって騒音及び振動の低減を実現できる。そして、騒音及び振動の低減は、オペレータの疲労や不快感を低減させることができる。また、旋回駆動装置40は、比較的低い回転速度のため比較的小さな騒音及び振動しか発生させない第2旋回減速機24−2及び第3旋回減速機24−3を平歯車で構成することによって、はすば歯車を採用する場合に比べ、製造コストの増大を抑制できる。なお、同様の効果を得るために、高速段である第1旋回減速機24−1及び中速段である第2旋回減速機24−2がはすば歯車で構成され、低速段である第3旋回減速機が平歯車で構成されてもよい。
上述の構成により、旋回駆動装置40は、旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度を減じて出力軸40Aのトルクを増大させる。
具体的には、旋回駆動装置40は、図7に示すように、出力軸21bの時計回りの高速・低トルクの回転に応じて、遊星歯車44を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア46を時計回りに回転させる。そして、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46の時計回りの回転に応じて、遊星歯車84を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア86を時計回りに回転させる。さらに、旋回駆動装置40は、遊星キャリア86の時計回りの回転に応じて、遊星歯車104を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア106、すなわち、出力軸40Aを時計回りに低速・高トルクで回転させる。出力軸21bが反時計回りに回転する場合も、各歯車の回転方向が逆になることを除き、同様である。
次に、図6及び図7を参照しながら、旋回駆動装置40における潤滑油の動きについて説明する。
旋回駆動装置40は、出力軸21b、エンドプレート21a、第1ギヤケース50、第2ギヤケース52、及び遊星キャリア46で密閉される空間SP1を有する。なお、出力軸21bには、図示しないオイルシールが装着され、遊星キャリア46にはオイルシール57が装着される。空間SP1は、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62、及びピストン64を収容し、細かいドットパターンで表される潤滑油LB1で満たされる。また、空間SP1は、第1循環路72a及び第2循環路72bを含む循環路72を介してバッファタンク70に接続される。
また、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46、第2ギヤケース52、第3ギヤケース54、及び遊星キャリア106で密閉される空間SP2を有する。なお、遊星キャリア106には、図示しないオイルシールが装着される。空間SP2は、太陽歯車82、102、遊星歯車84、104、及び、遊星キャリア86、106を収容し、粗いドットパターンで表される潤滑油LB2で満たされる。なお、潤滑油LB2は、オイルシール57によって潤滑油LB1から隔離されている。また、潤滑油LB2は、潤滑油LB1と同じ種類の潤滑油であってもよく、異なる種類の潤滑油であってもよい。例えば、旋回駆動装置40は、高回転用の潤滑油LB1を、低回転用の潤滑油LB2とは異なる種類の潤滑油としてもよい。
図6に示すように、出力軸21bが静止している場合、バッファタンク70内の潤滑油LB1の油面L1は、エンドプレート21aの底面よりも高い位置にある。すなわち、空間SP1は、潤滑油LB1で満たされた状態にある。なお、第2循環路72bは、油面L1よりも高い位置でバッファタンク70に接続される。また、バッファタンク70における第2循環路72bの接続位置は調整可能に構成されてもよい。
一方、図7に示すように、出力軸21bが回転している場合、空間SP1内の潤滑油LB1は、回転する遊星キャリア46及びブレーキディスク60による遠心ポンプ作用により、空間SP1の下部に形成される流入孔を通じて循環路72に送り込まれる。具体的には、空間SP1内の潤滑油LB1は、ブレーキディスク60とブレーキプレート62との間を通って第1循環路72aに送り込まれてバッファタンク70に排出される。なお、図7の破線矢印は、潤滑油LB1の流れを表す。
また、遊星キャリア46には、ブレーキディスク60の半径方向内側から潤滑油LB1を供給できるように油路74が設けられる。油路74により、旋回駆動装置40は、ブレーキディスク60の表面に沿った潤滑油LB1の流れを形成でき、ブレーキディスク60を効率的に冷却できる。なお、本実施形態では、2つのブレーキプレート62の間に1つのブレーキディスク60が配置されるが、複数のブレーキディスク60を用いる構成が採用されてもよい。具体的には、4つのブレーキプレート62のそれぞれの間に3つのブレーキディスク60のそれぞれが配置される構成が採用されてもよい。この場合、旋回駆動装置40は、油路74により、隣接する2つのブレーキディスク60の間の空間に存在する潤滑油LB1の循環を促進できる。また、油路74は、遊星キャリア46の回転軸近くまで延び、1又は複数の開口を通じて太陽歯車42の下にある空間SP1の一部に接続されてもよい。
また、空間SP1は、潤滑油LB1の一部が第1循環路72aを通じてバッファタンク70に排出されるため、第2循環路72bを通じてバッファタンク70にある空気を引き込む。その結果、空間SP1内の潤滑油LB1は、旋回用電動機21の出力軸21bの回転によって撹拌されてすり鉢状の油面L2を形成する。なお、第1循環路72a及び第2循環路72bは何れも、絞り等によって潤滑油の流れが規制されない非規制状態にある。
その後、空間SP1から排出される潤滑油LB1によってバッファタンク70内の潤滑油LB1の油面は、第2循環路72bより上のレベルL3に達する。この場合、バッファタンク70内の潤滑油LB1は、第2循環路72b及び空間SP1の上部に形成された流出孔を通って空間SP1に流入する。なお、流出孔は、例えば、内歯歯車48の上方又は内部に形成される。バッファタンク70から空間SP1に流入する潤滑油LB1は、内歯歯車48、遊星歯車44、太陽歯車42、及び遊星キャリア46を潤滑した後、すり鉢状の油面L2を形成する空間SP1内の潤滑油LB1に合流する。
なお、バッファタンク70には、バッファタンク70内の潤滑油LB1を冷却するための熱交換手段76の一例としてのファンが設置される。そのため、バッファタンク70から空間SP1に流入する潤滑油LB1の温度は、空間SP1からバッファタンク70に排出される潤滑油LB1の温度より低い。その結果、バッファタンク70から空間SP1に流入する潤滑油LB1は、内歯歯車48、遊星歯車44、太陽歯車42、遊星キャリア46、及び、空間SP1内の潤滑油LB1を冷却できる。なお、熱交換手段76は、バッファタンク70の外面に形成される放熱フィン等、ファン以外の手段であってもよい。また、バッファタンク70は、それ自身が熱交換手段となり得るため、追加の熱交換手段76を省略してもよい。また、バッファタンク70は、第1循環路72aから流入する潤滑油LB1がバッファタンク70内で確実に冷却された後で第2循環路72bを通って空間SP1に戻されるよう、ジグザグ状の流路を内部に設けるようにしてもよい。また、バッファタンク70は、内圧を調整可能なブリーザ装置を備えていてもよい。
その後、出力軸21bの回転が停止すると、すり鉢状の油面L2を形成していた空間SP1内の潤滑油LB1は、空間SP1内で水平な油面を形成する。そして、バッファタンク70内の潤滑油LB1は、遊星キャリア46及びブレーキディスク60の回転による遠心ポンプ作用が消失するため、その油面がレベルL3より低くなるまでは、第1循環路72a及び第2循環路72bを通って空間SP1に戻る。また、バッファタンク70内の潤滑油LB1は、その油面がレベルL3より低くなった後は、その油面がレベルL1(図6参照。)に達するまでは、第1循環路72aを通って空間SP1に戻る。バッファタンク70内の潤滑油LB1の油面がレベルL1に達すると、空間SP1は潤滑油LB1で満たされた状態となり、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48は潤滑油LB1に完全に浸された状態となる。
このように、旋回駆動装置40は、旋回用電動機21の出力軸21bが回転する際に空間SP1内の潤滑油LB1をバッファタンク70に排出して空間SP1内の潤滑油LB1の量を減少させる。その結果、旋回駆動装置40は、潤滑油LB1の撹拌抵抗を低減させ、出力軸21b、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46の回転負荷を低減させることができる。
また、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46及びブレーキディスク60の回転による遠心ポンプ作用により、空間SP1の下部にある潤滑油LB1をバッファタンク70に排出する。そして、旋回駆動装置40は、バッファタンク70内の潤滑油LB1を空間SP1の上部に戻す。その結果、旋回駆動装置40は、空間SP1内の潤滑油LB1の量を過度に減少させることなく、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48を確実に潤滑できる。
また、旋回駆動装置40は、熱交換手段76によりバッファタンク70内の潤滑油LB1を冷却する。その結果、旋回駆動装置40は、空間SP1内で各歯車の回転等によって加熱された潤滑油LB1をバッファタンク70で冷却した上で空間SP1に戻すことができ、各歯車及び潤滑油LB1の過熱を抑制できる。
一方で、空間SP2内の潤滑油LB2は、旋回用電動機21の出力軸21bが回転する場合であっても、空間SP2内を下部から上部に循環することはない。各歯車の回転速度が旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度に比べて低いため、各歯車の回転負荷の低減、潤滑油LB2の冷却に対する必要性が比較的低いためである。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、旋回駆動装置40は、空間SP2内の潤滑油LB2を循環させるために、また、潤滑油LB2の過熱を抑制するために、バッファタンク70と同様の、空間SP2に接続される別のバッファタンクを備えるようにしてもよい。
次に、図9を参照しながら、本発明の別の実施形態による旋回駆動装置40Xの構成例について説明する。なお、図9は、旋回用電動機21の出力軸21bが回転しているときの状態を示す断面図であり、図7に対応する。
旋回駆動装置40Xは、バッファタンク70、第1循環路72a、及び第2循環路72bの組み合わせの代わりに循環路72Mを備える点で旋回駆動装置40と相違するが、その他の点で共通する。そのため、共通点の説明を省略しながら相違点を詳細に説明する。
循環路72Mは、第1ギヤケース50及び第2ギヤケース52のそれぞれの内部に形成される油路であり、旋回用電動機21の出力軸21bが静止している場合であっても潤滑油LB1に満たされている。すなわち、空間SP1及び循環路72Mは、常に潤滑油LB1で満たされた状態にある。
また、図9に示すように、出力軸21bが回転している場合、空間SP1内の潤滑油LB1は、回転する遊星キャリア46及びブレーキディスク60による遠心ポンプ作用により、空間SP1内の下部に形成された流入孔を介して循環路72Mに送り込まれる。具体的には、空間SP1内の潤滑油LB1は、ブレーキディスク60とブレーキプレート62との間を通って循環路72Mに送り込まれる。循環路72Mに送り込まれた潤滑油LB1は、熱交換手段76によって冷却されながら、新たに送り込まれる潤滑油LB1に押されて鉛直上方に送られる。その後、循環路72M内を鉛直上方に移動する潤滑油LB1は、新たに送り込まれる潤滑油LB1に押され、空間SP1の上部に形成された流出孔に向けて、すなわち、回転軸に近づく方向に送られる。このとき、空間SP1内の潤滑油LB1は、遠心力によって回転軸から離れようとしている。そのため、循環路72M内を回転軸に近づく方向に移動する潤滑油LB1は、この回転軸から離れようとする潤滑油LB1を回転軸に近づく方向に押し戻しながら空間SP1の上部に形成された流出孔から空間SP1内に押し出される。なお、図9の破線矢印は、循環路72M内を移動する潤滑油LB1の流れを表す。
このように、空間SP1は、循環路72Mに送り込まれた潤滑油LB1の量だけ、循環路72Mから潤滑油LB1を受ける。そのため、空間SP1は、常に潤滑油LB1に満たされた状態にあり、旋回用電動機21の出力軸21bの回転によって撹拌されるが、すり鉢状の油面を形成することはない。
その後、出力軸21bの回転が停止すると、循環路72M内の潤滑油LB1はその移動を止める。この場合も、空間SP1が潤滑油LB1で満たされた状態は変化しない。
このように、旋回駆動装置40Xは、旋回用電動機21の出力軸21bが回転する際に空間SP1内の潤滑油LB1を下方から上方に循環させる。具体的には、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46及びブレーキディスク60の回転による遠心ポンプ作用により、空間SP1の下部にある流入孔と空間SP1の上部にある流出孔とを繋ぐ循環路72Mを用いて潤滑油LB1を循環させる。また、旋回駆動装置40Xは、熱交換手段76により循環路72M内の潤滑油LB1を冷却する。その結果、旋回駆動装置40Xは、空間SP1内で各歯車の回転等によって加熱された潤滑油LB1を循環路72M内で冷却した上で空間SP1に戻すことができ、各歯車及び潤滑油LB1の過熱を抑制できる。
一方で、空間SP2内の潤滑油LB2は、旋回用電動機21の出力軸21bが回転する場合であっても、空間SP2内を下部から上部に循環することはない。各歯車の回転速度が旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度に比べて低いため、各歯車の回転負荷の低減、潤滑油LB2の冷却に対する必要性が比較的低いためである。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、旋回駆動装置40Xは、空間SP2内の潤滑油LB2を循環させるために、また、潤滑油LB2の過熱を抑制するために、循環路72Mと同様の、空間SP2に接続される別の循環路を備えるようにしてもよい。
また、旋回駆動装置40Xは、旋回用電動機21の出力軸21bが回転しているか静止しているかにかかわらず、空間SP1を常に潤滑油LB1で満たすように構成される。そのため、旋回駆動装置40Xは、ショベルの機体の傾斜にかかわらず、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48を確実に潤滑できる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施形態では、旋回駆動装置40は、1つのバッファタンク70に接続される1組の循環路72(第1循環路72a及び第2循環路72bの組み合わせ)を備える。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、旋回駆動装置40は、1つのバッファタンクに接続される複数組の循環路を備えていてもよく、複数のバッファタンクに接続される複数組の循環路を備えていてもよい。また、旋回駆動装置40は、複数の第1循環路72aに対応する1つの第2循環路72bを備えていてもよく、1つの第1循環路72aに対応する複数の第2循環路72bを備えていてもよい。
また、上述の実施形態では、旋回駆動装置40Xは、1つの循環路72Mを備えるが、複数の循環路72Mを備えていてもよい。
また、上述の実施形態では、旋回駆動装置40は、空間SP1に接続されるバッファタンク70及び循環路72を備えるが、追加的に或いは代替的に、空間SP2に接続されるバッファタンク70及び循環路72を備えていてもよい。同様に、旋回駆動装置40Xは、空間SP1に接続される循環路72Mを備えるが、追加的に或いは代替的に、空間SP2に接続される循環路72Mを備えていてもよい。
また、旋回駆動装置40、40Xでは、循環路72、72Mは、第1ギヤケース50及び第2ギヤケース52のそれぞれの内部に形成されるが、第1ギヤケース50及び第2ギヤケース52のそれぞれの内表面に形成される循環溝を含んでいてもよい。
また、旋回駆動装置40、40Xでは、スプリング66を収容する空間と、ブレーキ解除ポート69と、循環路72、72Mとがそれぞれ円周方向にオフセットして形成される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、スプリング66を収容する空間、ブレーキ解除ポート69、及び、循環路72、72Mのうちの少なくとも2つが同じ円周方向位置に形成されてもよい。
また、旋回駆動装置40、40Xでは、空間SP1の上部に潤滑油LB1が側方から進入するように、循環路72、72Mの流出孔が何れも第1ギヤケース50の内壁に形成されている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、空間SP1の上部に潤滑油LB1が上方から進入するように、循環路がエンドプレート21a内に形成され、その循環路の流出孔がエンドプレート21aの底面に形成されてもよく、循環溝がエンドプレート21aの底面に形成されてもよい。この場合、旋回駆動装置40、40Xは、例えば、旋回用電動機21の出力軸21bが回転しているときに油面L2から露出する太陽歯車42に潤滑油LB1を直接供給することもできる。
また、旋回駆動装置40、40Xでは、オイルシール57によって空間SP1と空間SP2とが分離され、潤滑油LB1と潤滑油LB2とが混合しないように構成される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、空間SP1内の各歯車と空間SP2内の各歯車とを同じ種類の潤滑油で潤滑してもよい。また、空間SP2は、第2旋回減速機24−2を構成する遊星歯車機構を収容する空間と、第3旋回減速機24−3を構成する遊星歯車機構を収容する空間とに分離されてもよい。第2旋回減速機24−2を構成する遊星歯車機構を潤滑する潤滑油と、第3旋回減速機24−3を構成する遊星歯車機構を潤滑する潤滑油とを隔離し、別々の潤滑油を利用できるようにするためである。
また、旋回駆動装置40、40Xでは、第1旋回減速機24−1の遊星キャリア46は、第1旋回減速機24−1の出力軸、及び、第2旋回減速機24−2の入力軸として構成され、第2旋回減速機24−2の太陽歯車82が固定される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、第1旋回減速機24−1の出力軸は、第2旋回減速機24−2の入力軸に取り外し可能に連結される構成であってもよい。すなわち、第1旋回減速機24−1は、旋回減速機24の残りの部分から取り外し可能に構成されてもよい。この場合、空間SP2は、第2ギヤケースの代わりとなる図示しないトッププレートと、第2旋回減速機24−2の入力軸と、第3ギヤケース54と、遊星キャリア106とによって密閉される。なお、第2旋回減速機24−2の入力軸及び遊星キャリア106には、図示しないオイルシールが装着される。この構成により、旋回駆動装置40、40Xは、仕様の異なる様々な第1旋回減速機を旋回減速24の残りの部分に組み合わせることができ、減速比等の特性を種々の用途に適応させることができる。