図1は本発明の実施例に係る建設機械としてのショベルの側面図である。ショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、バケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3にはキャビン10が設けられ且つエンジン等の動力源が搭載される。
図2は図1に示すショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
エンジン11と電動発電機12は変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15にはパイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
コントロールバルブ17はショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。右側走行用油圧モータ1A、左側走行用油圧モータ1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、インバータ18を介して、キャパシタ19及び昇降圧コンバータ100を含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120にはインバータ20を介して旋回用モータとしての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の出力軸21bにはレゾルバ22及び旋回減速機24が接続される。旋回減速機24は比較的高い減速比(例えば1/200)を有する。旋回減速機24の出力軸24Aにはメカニカルブレーキ23が接続される。旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とにより、負荷駆動系として旋回駆動装置40が構成される。なお、電流計21Aは、旋回用電動機21を流れる電流を検出する装置であり、制御弁23Aは、パイロットポンプ15の吐出圧を用いるメカニカルブレーキ23の作動・解除を切り替える電磁弁である。また、温度計24Sは旋回減速機24の温度を検出する装置であり、例えば、旋回減速機24内の潤滑油の温度を検出するバイメタル式温度計である。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。
圧力センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出する装置であり、検出値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30はショベルの駆動制御を行う制御装置である。コントローラ30は、例えば、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行する。
また、コントローラ30は、圧力センサ29から供給される旋回レバー信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される旋回レバー信号は、上部旋回体3を旋回させるために操作装置26の1つである旋回レバーを操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、蓄電系120の昇降圧コンバータ100を駆動制御することによりキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて蓄電系120の昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り替え制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
上述のような構成のショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回駆動するために、インバータ20を介して供給される電力により旋回用電動機21が駆動される。旋回用電動機21の出力軸21bの回転力は、旋回減速機24を介して旋回減速機24の出力軸(旋回駆動装置40の出力軸40A)に伝達される。
図3は旋回駆動装置40の構成例を示すブロック図である。上述のように、旋回駆動装置40は、駆動源としての三相交流モータ(例えばIPMモータ)である旋回用電動機21を含む。旋回用電動機21の出力軸側には旋回減速機24として遊星減速機が接続される。
旋回減速機24は、1段目(高速段)の旋回減速機24−1と2段目(低速段)の旋回減速機24−2とを含む。2段目の旋回減速機24−2はメカニカルブレーキ23(ディスクブレーキ)を間に挟んで1段目の旋回減速機24−1に組み付けられる。但し、メカニカルブレーキ23は、2段目の旋回減速機24−2の出力軸(旋回駆動装置40の出力軸40A)のところに配置されてもよい。
1段目の旋回減速機24−1の出力軸にはメカニカルブレーキ23としてのディスクブレーキが設けられ且つ2段目の旋回減速機24−2の入力軸に結合される。2段目の旋回減速機24−2の出力軸は旋回駆動装置40の出力軸40Aとなる。出力軸40Aに結合される出力ギアは旋回機構2のリングギアに接続され、出力軸40Aの回転力により旋回機構2が回転駆動される。なお、旋回減速機24は1段構成であってもよく、3段以上の構成であってもよい。
図4は旋回駆動装置40のうち、旋回減速機24及びメカニカルブレーキ23を構成する部分の断面図である。1段目の旋回減速機24−1を構成する遊星減速機の太陽歯車42は旋回用電動機21の出力軸21bに固定されている。太陽歯車42は複数の遊星歯車44に噛合している。各遊星歯車44は、旋回減速機24−1の出力軸を構成する遊星キャリア46に回転可能に支持されている。遊星キャリア46は、ギアケース72に対して、ベアリング58を介して回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車44は、ギアケース70の内面に形成された内歯歯車48に噛合している。同様に、2段目の旋回減速機24−2を構成する遊星減速機の太陽歯車82は、旋回減速機24−1の遊星キャリア46に固定されている。太陽歯車82は複数の遊星歯車84に噛合している。各遊星歯車84は、旋回減速機24−2の出力軸を構成する遊星キャリア86に回転可能に支持されている。遊星キャリア86は、旋回減速機24の出力軸(旋回駆動装置40の出力軸40A)を構成し、ベアリング59を介してギアケース74に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車84は、ギアケース74の内面に形成された内歯歯車88に噛合している。
また、旋回減速機24は、各歯車を潤滑するための潤滑油LB1が、旋回用電動機21のエンドプレート21e、ギアケース70、72、及び74、並びに、遊星キャリア86(出力軸40A)によって密閉される構造を有する。
旋回用電動機21の出力軸21bが回転して太陽歯車42が回転すると、遊星歯車44が回転(自転)する。遊星歯車44はギアケース70の内面に形成された内歯歯車48に噛合しており、遊星歯車44の回転力で内歯歯車48が形成されたギアケース70が回転しようとする。ところが、ギアケース70は旋回用電動機21のエンドプレート21eに固定されているので回転できない。その結果、遊星歯車44を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア46が回転する。
遊星キャリア46が回転して太陽歯車82が回転すると、遊星歯車84が回転(自転)する。遊星歯車84はギアケース74の内面に形成された内歯歯車88に噛合しており、遊星歯車84の回転力で内歯歯車88が形成されたギアケース74が回転しようとする。ところが、ギアケース74はギアケース72、70を介してエンドプレート21eに固定されているので回転できない。その結果、遊星歯車84を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア86が回転する。
以上のような歯車作用により、旋回用電動機21の出力軸21bの回転が減速されて出力軸40Aから出力される。
メカニカルブレーキ23は、主にブレーキディスク60及びブレーキプレート62で構成され、ギアケース72と遊星キャリア46との間に配置される。
ブレーキプレート62は、ブレーキディスク60の上下両側に配置される。上側のブレーキプレート62の上には、ピストン64が、遊星キャリア46の回転軸方向に移動可能な状態で配置されている。ピストン64はスプリングにより押圧されて常に上側のブレーキプレート62に押し付けられている。
上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧され、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。また、ブレーキディスク60は遊星キャリア46に対して回転できないように接続されている。そのため、ブレーキディスク60に作用するブレーキ力が遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
ピストン64とギアケース72との間には、作動油を供給可能な油圧空間が形成され、油圧空間にブレーキ解除ポートが接続されている。パイロットポンプ15からブレーキ解除ポートを介して油圧空間に作動油を供給すると、ピストン64が作動油により押し上げられて、ブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。
次に、コントローラ30による暖機について説明する。コントローラ30は、例えば、エンジン11の暖機、油圧系の暖機、及びキャパシタ19の暖機のうちの少なくとも1つを行うと同時に旋回減速機24の暖機を行う。エンジン11の暖機はエンジン11をアイドリングさせることで実行される。油圧系の暖機はメインポンプ14から作動油を吐出させることで実行される。キャパシタ19の暖機はキャパシタ19を充放電させることで実行される。旋回減速機24の暖機は旋回用電動機21を動作させることで実行される。
また、コントローラ30は、図2に示すように、旋回制御部31、暖機要否判定部32、及び暖機制御部33を機能要素として含む。
旋回制御部31は旋回用モータの動きを制御する機能要素である。旋回制御部31は、例えば、旋回操作に基づく旋回指令をインバータ20に対して出力する。具体的には、圧力センサ29が検出する旋回レバーの操作量に応じてインバータ20に対する電流指令の大きさを決定する。
暖機要否判定部32は、例えば、外気温、作動油温、エンジン冷却水温、旋回減速機24に関する温度等が所定温度以下の場合に暖機を行う必要があると判定する。
暖機制御部33は、暖機を開始させた後、所定の終了条件が満たされた場合に暖機(旋回減速機24の暖機を含む。)を終了させる。例えば、エンジン11の暖機を実行している場合にはエンジン11の温度が所定温度に達したときにその暖機を終了させる。或いは、キャパシタ19の暖機を実行している場合にはキャパシタ19の温度が所定温度に達したときにその暖機を終了させる。また、暖機を開始させてから所定時間が経過したときにその暖機を終了させてもよい。
[実施例1]
ここで、図5を参照し、コントローラ30が必要に応じて暖機を実行する処理(以下、「暖機処理」とする。)について説明する。図5は暖機処理の一例の流れを示すフローチャートである。コントローラ30は、ショベルを起動したときにこの暖機処理を実行する。
最初に、コントローラ30の暖機要否判定部32は、暖機を行う必要があるかを判定する(ステップS1)。暖機要否判定部32は、外気温、作動油温、エンジン冷却水温、旋回減速機24に関する温度(例えば旋回減速機24内の潤滑油の温度)等の少なくとも1つが所定温度以下の場合に暖機を行う必要があると判定する。例えば、エンジン冷却水温が所定温度以下の場合にエンジン11、油圧系、キャパシタ19、及び旋回減速機24の暖機を行う必要があると判定する。なお、エンジン11、油圧系、及びキャパシタ19のそれぞれの暖機を行う必要があるかを個別に判定してもよい。例えば、エンジン冷却水温が所定温度以下の場合にエンジン11の暖機を行う必要があると判定してもよく、作動油温が所定温度以下の場合に油圧系の暖機を行う必要があると判定してもよく、潤滑油の温度が所定温度以下の場合に旋回減速機24の暖機を行う必要があると判定してもよい。
暖機を行う必要があると判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30の暖機制御部33は暖機を開始させる(ステップS2)。本実施例では、暖機制御部33は、例えば、エンジン11、油圧系、キャパシタ19、旋回減速機24の何れか1つの暖機を行う必要があると判定した場合、エンジン11の暖機、油圧系の暖機、及びキャパシタ19の暖機を開始させると同時に旋回減速機24の暖機を開始させる。
暖機を行う必要がないと判定した場合(ステップS1のNO)、コントローラ30は、暖機を開始させることなく、暖機処理を終了させる。
また、暖機制御部33は、暖機を開始させた後で所定の終了条件が満たされた場合にその暖機を終了させる。例えば、暖機制御部33は、エンジン11の温度が所定温度に達したときにエンジン11、油圧系、キャパシタ19、及び旋回減速機24の暖機を終了させる。なお、暖機制御部33は、エンジン11、油圧系、キャパシタ19、旋回減速機24のそれぞれの終了条件を個別に判断し、それぞれの暖機を個別に終了させてもよい。また、エンジン11、油圧系、及びキャパシタ19の何れかの暖機を終了させると同時に旋回減速機24の暖機を終了させてもよい。
上述の構成により、コントローラ30は、エンジン11、油圧系、及びキャパシタ19のうちの少なくとも1つの暖機の終了時に旋回減速機24内の潤滑油を温まった状態(低粘度状態)にすることができる。そのため、暖機終了後に直ちに操作者が旋回駆動系を違和感なく操作できるようにする。
[実施例2]
次に、図6を参照し、旋回減速機24内の潤滑油を攪拌して温めるための動作の一例である旋回用電動機21の往復回転について説明する。なお、図6は旋回用電動機21を流れる三相電流のそれぞれの時間的推移を示す図であり、U相電流、V相電流、W相電流の時間的推移をそれぞれ実線、点線、一点鎖線で表す。また、図6の例では、時刻t1において旋回用電動機21の動作が開始した場合を想定する。
コントローラ30は、三相のモータ励磁電流のそれぞれの往復励磁を所定の回転角度範囲で行う。所定の回転角度範囲は、モータ軸の回転角度(機械角)の範囲であり、例えば、360度を磁極数で除した値(電気角で180度に対応する機械角)以上の範囲である。例えば磁極数が8極の場合、暖機制御部33は、往復回転開始時のモータ回転角度から45度だけ旋回用電動機21の回転子を一方向に回転させた後、逆方向に45度回転させる。その結果、U相、V相、W相の各相の電流を電気角で180度以上推移させることで往復回転中の三相電流のそれぞれの積算値を平準化でき、熱バランスを改善できる。すなわち、旋回用電動機21の回転位置をずらすことで、三相コイルの何れかに発熱(ジュール損失)が集中せず、局所的な発熱によるコイルの損傷を抑制できる。なお、所定の回転角度範囲は、所定の2つのギアの間のバックラッシュ分であってもよく、そのバックラッシュ分にギアの弾性変形分を加えた範囲であってもよい。例えば、出力軸40Aに結合される出力ギアと旋回機構2のリングギアとの間のバックラッシュ分であってもよく、そのバックラッシュ分にギアの弾性変形分を加えた範囲であってもよい。その結果、上部旋回体3の旋回角度を変化させずに往復回転を実行できる。これにより、コントローラ30は、旋回用電動機21を動作(回転)させて旋回減速機24を暖機させつつも(潤滑油を攪拌させつつも)上部旋回体3を動作(旋回)させないようにすることができる。また、所定の回転角度範囲は、ブレーキディスク60と共に回転する被駆動ギアとその被駆動ギアを駆動する駆動ギアとの間のバックラッシュ分であってもよく、そのバックラッシュ分にギアの弾性変形分を加えた範囲であってもよい。この場合、メカニカルブレーキ23は望ましくは作動状態とされる。上部旋回体3の固定を確実にするためである。これにより、メカニカルブレーキ23に負荷が加わることも防止でき、ブレーキディスク60及びブレーキプレート62の摩耗も防止できる。
具体的には、暖機制御部33は、時刻t2において往復回転開始後のモータ回転角度が45度に達すると三相のモータ励磁電流のそれぞれの推移パターンを反転させる。具体的には、三相のモータ励磁電流のそれぞれが時刻t1から時刻t2までの間で辿った推移パターンを逆行するように三相のモータ励磁電流のそれぞれを推移させる。その結果、旋回用電動機21は逆方向への回転を開始する。そして、時刻t3において逆回転開始後のモータ回転角度が45度に達してモータ回転角度が往復回転開始時のモータ回転角度に戻ると、三相のモータ励磁電流のそれぞれの推移パターンを再び反転させる。具体的には、三相のモータ励磁電流のそれぞれが時刻t2から時刻t3までの間で辿った推移パターンを逆行するように、すなわち、時刻t1から時刻t2までの間で辿った推移パターンと同じように三相のモータ励磁電流のそれぞれを推移させる。そして、時刻t4において再反転後のモータ回転角度が45度に達すると三相のモータ励磁電流のそれぞれの推移パターンをさらに反転させる。このように、暖機制御部33は、所定の回転角度毎に三相のモータ励磁電流のそれぞれの推移パターンを反転させる。そして、所定の終了条件が満たされるまでその往復回転を継続させる。
この往復回転により、コントローラ30は、旋回用電動機21の出力軸21bと一体的に回転する旋回減速機24−1の太陽歯車42を所定の回転角度範囲で往復回転させる。そして、太陽歯車42と遊星歯車44とのかみ合いによる摩擦熱によって太陽歯車42及びその周辺の温度を上昇させることができる。また、太陽歯車42の周囲に存在する潤滑油を攪拌して温めることができる。
また、所定の終了条件は適宜設定されるが、旋回系が十分な温度になったことを条件としてもよい。例えば、旋回用電動機21を流れる三相電流の少なくとも1つの1往復回転分の積算値に基づいて決定されてもよい。この場合、暖機制御部33は、1往復回転毎に、旋回用電動機21を流れる三相電流のそれぞれの1往復回転分の積算値を導き出す。そして、1往復回転分の積算値の何れかが所定値以下となった場合に終了条件が満たされたとして旋回減速機24の暖機を終了させてもよい。
また、暖機制御部33は、上部旋回体3の旋回角度が短期的には変動しても長期的に見て変動しないように旋回用電動機21を往復回転させてもよい。また、上部旋回体3の旋回角度が長期的に見て変動しないように往復回転の中心を移動させてもよい。
[実施例3]
次に図7を参照し、旋回用電動機21が発生させた熱を利用して旋回減速機24を暖機するための構成について説明する。図7は旋回駆動装置40の部分断面図であり、図4に対応する。図7の構成は、エンドプレート21eとギアケース70とが周縁部MTで嵌合するように構成される点、及び、エンドプレート21eの少なくとも一部がアルミニウム、銅等の良熱伝導体HTで構成される点において図4の構成と相違する。しかしながら、図7の構成はその他の部分で図4の構成と共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違点を詳細に説明する。
本実施例では、ギアケース70は上端面の外縁に環状の凸部を有する。そして、エンドプレート21eは、ギアケース70の凸部とかみ合うようにその下端面の外縁に環状の凹部を有する。旋回用電動機21と旋回減速機24とが嵌合構造を介して互いに接触するこの構成は、エンドプレート21eとギアケース70の接触面積を増大させて旋回用電動機21が発生させた熱の旋回減速機24への伝達効率を高める効果をもたらす。なお、本実施例では、エンドプレート21eとギアケース70との嵌合は環状凸部と環状凹部の一対の組み合わせにより実現されるが、複数対の組み合わせで実現されてもよい。また、環状凸部がエンドプレート21eに形成され且つ環状凹部がギアケース70に形成されてもよい。また、環状構造以外の嵌合構造が採用されてもよい。
また、良熱伝導体HTはエンドプレート21eの下端面に埋め込まれている。旋回減速機24内の潤滑油LB1と接触できるようにするためである。また、良熱伝導体HTは嵌合構造のない中央部に埋め込まれている。嵌合構造がある部分の機械強度に悪影響を及ぼさないようにするためである。但し、エンドプレート21eはその全体が良熱伝導体HTで形成されてもよい。旋回用電動機21が発生させた熱が良熱伝導体HTを介して旋回減速機24に伝達されるこの構成は、旋回用電動機21が発生させた熱の旋回減速機24及び潤滑油LB1への伝達効率を高める効果をもたらす。
そのため、コントローラ30は、旋回用電動機21を動作させることで旋回用電動機21自身と旋回減速機24を効率的に暖機することができる。なお、旋回用電動機21の暖機は、旋回用電動機21の制御性の変化を緩和或いは防止できる点でも有効である。旋回用電動機21が低温状態(例えば−30℃)にある場合、標準温度状態(例えば20℃)にある場合に比べ、三相コイルのそれぞれの抵抗値が大きくなってしまうためである。また、低温状態にある場合には、旋回用電動機21に取り付けられた電圧センサ、温度センサ等の各種センサが標準温度状態のときのようには動作せず、異常値を出力するおそれがあるためである。
また、コントローラ30は、旋回用電動機21を動作させて旋回減速機24を暖機することでメカニカルブレーキ23の作動・解除に用いる作動油を温めることができる。そのため、低温状態にあるメカニカルブレーキ23をより早期に解除できる。
次に図8を参照し、旋回用電動機21が発生させた熱を利用して旋回減速機24を暖機するための別の構成である冷却系90について説明する。図8は冷却系90の構成例を示す図である。冷却系90は、通常、各種機器の冷却に用いられるシステムであり、主に、冷却液ポンプ91、ラジエータ92、冷却液タンク93、及び冷却管94を含む。本実施例では、旋回減速機24の暖機のためにこの冷却系90を利用する。
冷却液ポンプ91は、冷却液タンク93に蓄えられた冷却液を吸い込んで吐出し、冷却管94で構成される冷却回路内で冷却液を循環させる。本実施例では、冷却液ポンプ91は、ラジエータ92を介して吸い込んだ冷却液を吐出する。その後、冷却液は、コントローラ30、キャパシタ19、インバータ18、インバータ20、昇降圧コンバータ100、旋回用電動機21、旋回減速機24、電動発電機12、及び変速機13の各種機器に隣接するように配置された冷却管94内を通って流れ、ラジエータ92に戻る。なお、本実施例では冷却液は水とLLC(ロングライフクーラント)の混合液である。
冷却液ポンプ91は、暖機を行う必要があると判定したコントローラ30から作動信号を受けると、その作動信号に応じて作動を開始する。そして、冷却液ポンプ91は、各種機器が発生させた熱で温められた(潤滑油LB1より温かい)冷却液を旋回減速機24に供給して旋回減速機24の暖機を早めることができる。なお、各種機器は、エンジン、油圧系、キャパシタ19、又は旋回用電動機21の何れかの暖機のために動作することで熱を発生させる。例えば、冷却液ポンプ91は、旋回用電動機21に電流を供給するために動作するインバータ20が発生させた熱と旋回用電動機21自身が発生させた熱とで温められた冷却液を旋回減速機24に供給して旋回減速機24の暖機を早めることができる。
なお、冷却管94のうち、旋回減速機24に隣接する管部分は、潤滑油LB1が溜まっている旋回減速機24の下部に隣接する部分が多くなるように配置されてもよく、或いは、その下部のみに隣接するように配置されてもよい。
また、インバータ20と旋回駆動装置40とは互いの筐体が接触するように配置されてもよく、それぞれの筐体の接触部分の少なくとも一部が良熱伝導体HTで形成されてもよい。筐体同士の熱伝達率を高めるためである。
また、本実施例では、旋回減速機24に隣接する管部分は冷却管94を流れる冷却液の全てが必ず通るように構成されるが、冷却液の一部が選択的に流れるように構成されてもよい。この場合、冷却液の流れ方向を切り替える切替弁、冷却液の流量を調整する流量制御弁等が用いられてもよい。
旋回用電動機21が発生させた熱が冷却系90を介して旋回減速機24に伝達される上述の構成は、旋回用電動機21が発生させた熱の旋回減速機24及び潤滑油LB1への伝達効率を高める効果をもたらす。そのため、コントローラ30は、冷却系90及び旋回用電動機21を動作させることで旋回用電動機21及び旋回減速機24を効率的に暖機できる。
[実施例4]
次に図9及び図10を参照し、旋回用電動機21でトルクを発生させずに発熱させる方法について説明する。
図9は、旋回用電動機21における回転磁界を発生させる三相合成電流と電流位相角βとの関係を示す概略図である。具体的には、図9は、回転子が作る磁束の方向をd軸とし、d軸と直交する方向(電気角で90度の方向)をq軸とし、U相軸に対するd軸の位相(以下、「モータ磁極角度」とする。)をθとして示す。図9において、電流位相角βはq軸に対する三相合成電流Itの位相として表される。したがって、U相、V相、W相の各相の電流Iu、Iv、Iwは、以下の式で表される。なお、Aは振幅を表す。
また、図10は旋回用電動機21が発生させる発生トルクと電流位相角βとの関係を示す。図10では、縦軸がトルクに対応し、横軸が電流位相角βに対応する。また、旋回用電動機21の発生トルクはマグネットトルクとリラクタンストルクの合計で表され、実線が発生トルクの推移を示し、破線がマグネットトルクの推移を示し、一点鎖線がリラクタンストルクの推移を示す。また、トルクは単位法で表される。
図10に示すように、旋回用電動機21の発生トルクは、電流位相角βが+π/6(+30度)のときに極大値となり、+5π/6(+150度)のときに極小値となり、+π/2(+90度)又は−π/2(−90度)のときにゼロとなる。また、電流位相角βが−π/2の近傍にあるときの発生トルクの傾きは、電流位相角βが+π/2の近傍にあるときの発生トルクの傾きよりも小さい。すなわち、発生トルクは、電流位相角βが−π/2の近傍にあるときに、電流位相角βが+π/2の近傍にあるときよりも安定的となる。
そこで、コントローラ30は、旋回用電動機21の通常運転の場合に採用される電流位相角(発生トルクの絶対値が最大となる+π/6及び+5π/6)からずれた電流位相角βとなるように各相の電流Iu、Iv、Iwの値を決定する。発生トルクが小さくなるようにするためである。例えば、電流位相角βが−π/2±π/6の範囲内にある角度となるように各相の電流Iu、Iv、Iwの値を決定する。発生トルクが略ゼロとなるようにするためである。
本実施例では、電流位相角βが−π/2となるように各相の電流Iu、Iv、Iwの値を決定する。そして、旋回用電動機21を直流励磁することでトルクを発生させずに発熱させる。また、コントローラ30は、電流位相角βを−π/2±π/6の範囲内に維持しながら各相の電流を所定時間毎に変化させてもよい。各相の電流の積算値の不均衡を抑制して発熱のアンバランスを抑えるためである。また、コントローラ30は、電流位相角βが+π/2となるように各相の電流Iu、Iv、Iwの値を決定してもよい。
なお、電流位相角βが−π/2のときの各相の電流Iu、Iv、Iwは、以下の式で表される。
具体的には、コントローラ30は、レゾルバ22の出力に基づいて磁極角度θを導き出した上で、上述の式を用いて各相の電流Iu、Iv、Iwの値を導き出す。この構成により、コントローラ30は、磁極角度θに基づいて導き出した各相の電流値で旋回用電動機21を直流励磁することでトルクを発生させずに旋回用電動機21を発熱させることができる。また、トルクを発生させないため、メカニカルブレーキ23は非作動状態であってもよい。また、トルクを発生させないため、メカニカルブレーキ23が作動状態であったとしてもメカニカルブレーキ23に負担が加わることはない。
また、コントローラ30は、図11に示すように各相の直流励磁電流の値を所定時間毎に変化させてもよい。すなわち、旋回用電動機21の回転位置を所定時間毎にずらしてもよい。具体的には、コントローラ30は、所定時間毎に電流位相角βを切り替えてもよい。なお、図11は、各相の直流励磁電流の時間的推移を示す図であり、実線がU相電流Iu、破線がV相電流Iv、一点鎖線がW相電流Iwの時間的推移を表す。また、電流は単位法で表される。
この実施例では、コントローラ30は、所定時間Dが経過する度に各相の電流Iu、Iv、Iwの値を切り替えて直流励磁を繰り返す。例えば、コントローラ30は、電流位相角βが+90度となる各相の電流値の組み合わせと、電流位相角βが−90度となる各相の電流値の組み合わせとを交互に切り替えながら直流励磁を繰り返してもよい。この構成により、コントローラ30は、電流値の切り替えのとき以外はトルクを発生させずに旋回用電動機21を発熱させることができる。また、各相の電流の積算値を平準化でき、三相コイルの何れかに発熱が集中するのを緩和できるため、局所的な発熱によるコイルの損傷を抑制できる。なお、所定時間Dは可変であってもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
また、旋回減速機24の暖機(旋回用電動機21の暖機を含む。)は、エンジン11の暖機、油圧系の暖機、及びキャパシタ19の暖機のうちの少なくとも1つと同時に実行される。同時の場合、旋回減速機24の暖機は、旋回用電動機21の往復回転でキャパシタ19の電力を消費することでキャパシタ19の暖機を早めることができる。或いは、旋回用電動機21の往復回転で電動発電機12が発電した電力を消費することで電動発電機12を駆動するエンジン11の暖機を早めることができる。或いは、キャパシタ19及び電動発電機12の少なくとも一方の発熱で冷却系90の冷却液を温めることで旋回減速機24の暖機を早めることができる。
また、上述の実施例では、コントローラ30は太陽歯車42を所定の2つのギアの間のバックラッシュ分だけ往復回転させる。しかしながら、これは、それら2つのギアの接触の有無にかかわらずバックラッシュ分だけ強制的に往復回転させることを意味しない。例えば、コントローラ30は、それら2つのギアが接触したことを検知した場合に太陽歯車42の回転方向を反転させてもよい。