以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。このタイヤ2の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、カーカス10、バンド12、一対のエッジプライ14及びインナーライナー16を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、二輪自動車に装着される。
トレッド4は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド4は、路面と接地するトレッド面18を形成する。トレッド4は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。このトレッド4には、溝は刻まれていない。このタイヤ2は、スリックタイプである。このトレッド4に溝が刻まれて、トレッドパターンが形成されてもよい。
二輪自動車は、その車体を傾斜して旋回する。旋回容易の観点から、このタイヤ2のトレッド4の輪郭は小さな曲率半径を有する。
このタイヤ2では、直進走行時、トレッド4の赤道面の部分(クラウン領域C)が接地する。旋回走行においては、このクラウン領域Cよりも軸方向外側の部分(ミドル領域M)が接地する。レースにおいてライダーは、たびたび二輪自動車を極限まで傾斜させて旋回させる。この状態は、「フルバンク」と称されている。このフルバンクにおいては、トレッド4の端の部分(ショルダー領域S)が接地する。それぞれの領域をキャンバー角に対応させると、クラウン領域Cはキャンバー角が0°から30°の範囲である場合にタイヤ2が路面と接地する領域である。ミドル領域Mは、キャンバー角が30°から45°の範囲である場合にタイヤ2が路面と接地する領域である。ショルダー領域Sは、キャンバー角が45°から60°の範囲である場合にタイヤ2が路面と接地する領域である。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。サイドウォール6は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、カーカス10の軸方向外側に位置している。このサイドウォール6は、カーカス10の損傷を防止する。
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも半径方向内側に位置している。ビード8は、コア20と、このコア20から半径方向外向きに延びるエイペックス22とを備えている。コア20はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。エイペックス22は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス22は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、カーカスプライ24からなる。カーカスプライ24は、両側のビード8の間に架け渡されている。カーカスプライ24は、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ24は、コア20の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ24には、主部と折り返し部とが形成されている。このカーカス10が2枚以上のカーカスプライ24から形成されてもよい。
図示されていないが、カーカスプライ24は、並列された多数のカーカスコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのカーカスコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。カーカスコードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
バンド12は、トレッド4の半径方向内側に位置している。このタイヤ2では、バンド12はカーカス10と積層されている。バンド12の端は、トレッド4の端の近くに位置している。このバンド12は、トレッド4の半径方向内側において、一方のトレッド4の端と他方のトレッド4の端との間に架け渡されている。
バンド12は、バンドコードを含んでいる。バンドコードは、螺旋状に巻回されている。このバンド12は、いわゆるジョイントレス構造を有する。バンドコードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するバンドコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このバンド12は、タイヤ2の半径方向の剛性に寄与する。このバンド12は、走行時に作用する遠心力の影響を抑制する。このタイヤ2は、高速安定性及びトラクション性能に優れる。
図1において、両矢印LTは赤道面からトレッド面18の端26までの長さを表している。この長さLTは、トレッド面18に沿って計測される。この長さLTは、トレッド面18の長さの半分である。本願においては、この長さLTはトレッド4の長さの半分とも称される。両矢印LBは、赤道面からバンド12の端28までの長さを表している。この長さLBは、バンド12の長さの半分である。本願においては、この長さLBが基準長さである。この長さLBは、バンド12に沿って計測される。
バンド12による補強の観点から、長さLTに対する基準長さLBの比率(LB/LT)は70%以上が好ましく、100%以下が好ましい。
それぞれのエッジプライ14は、バンド12の外側に位置している。エッジプライ14は、バンド12の端28の部分に積層されている。一方のエッジプライ14と他方のエッジプライ14とは、軸方向において、離間して配置されている。
エッジプライ14は、並列された多数のエッジコードを含んでいる。それぞれのエッジコードは、周方向に対して傾斜している。
インナーライナー16は、カーカス10の内側に位置している。インナーライナー16は、カーカス10の内面に接合されている。インナーライナー16は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー16の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー16は、タイヤ2の内圧を保持する。
このタイヤ2では、バンド12はセンター部30と一対のサイド部32とを備えている。詳細には、このバンド12は、センター部30と一対のサイド部32とからなる。センター部30は、赤道面上に位置している。それぞれのサイド部32は、軸方向において、センター部30の外側に位置している。
図2には、バンド12のセンター部30とそのサイド部32との境界付近が示されている。この図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向に相当し、紙面に対して垂直な方向は周方向に相当する。
センター部30は、センターコード34とセンタートッピングゴム36とからなる。センターコード34は、バンド12を構成するバンドコードのうち、センター部30に含まれるバンドコードである。前述したように、バンドコードは螺旋状に巻回されている。したがってセンターコード34は、螺旋状に巻回されている。これにより、センター部30には軸方向に並列された多数のセンターループ38が形成されている。
センターコード34は、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2では、センター部30が剛性に寄与するとの観点から、センター部30におけるセンターコード34の密度Dcは10エンズ/5cm以上が好ましい。センター部30による乗り心地への影響が抑えられるとの観点から、密度Dcは50エンズ/5cm以下が好ましい。この密度Dcは、図1に示された断面において、5cm幅のセンター部30に含まれるセンターコード34の断面(センターループ38)の数を計数することにより得られる。
センタートッピングゴム36は、ゴム組成物を架橋することによって得られる。センタートッピングゴム36は、架橋ゴムである。センタートッピングゴム36は、センターコード34を覆う。センタートッピングゴム36は、センターコード34を拘束する。
センタートッピングゴム36のゴム組成物は基材ゴムを含む。好ましい基材ゴムは、ジエン系ゴムである。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)及びポリクロロプレン(CR)が挙げられる。ジエン系ゴムには、共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル系モノマーとの共重合体が含まれる。この共重合体の具体例としては、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体(S−SBR)及び乳化重合スチレン−ブタジエン共重合体(E−SBR)が挙げられる
センタートッピングゴム36のゴム組成物は、補強剤を含む。センタートッピングゴム36のゴム組成物は、主たる補強剤として、カーボンブラックを含んでいる。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック及びサーマルブラックが例示される。
センタートッピングゴム36に含まれる補強剤の量は、センタートッピングゴム36の硬さに影響する。センタートッピングゴム36の硬質の観点から、カーボンブラックの量は基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましい。センタートッピングゴム36の軟質の観点から、この量は80質量部以下が好ましい。
センタートッピングゴム36のゴム組成物は、硫黄及び加硫促進剤を含んでいる。このゴム組成物が、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を含んでもよい。
サイド部32は、サイドコード40とサイドトッピングゴム42とからなる。サイドコード40は、バンド12を構成するバンドコードのうち、サイド部32に含まれるバンドコードである。前述したように、バンドコードは螺旋状に巻回されている。したがってサイドコード40は、螺旋状に巻回されている。これにより、それぞれのサイド部32には軸方向に並列された多数のサイドループ44が形成されている。
サイドコード40は、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このタイヤ2では、サイドコード40は前述されたセンターコード34の有機繊維と同等の有機繊維からなる。このサイドコード40がセンターコード34の有機繊維とは異なる有機繊維からなってもよい。
このタイヤ2では、サイド部32が剛性に寄与するとの観点から、サイド部32におけるサイドコード40の密度Dsは10エンズ/5cm以上が好ましい。サイド部32による乗り心地への影響が抑えられるとの観点から、密度Dsは50エンズ/5cm以下が好ましい。この密度Dsは、図1に示された断面において、5cm幅のサイド部32に含まれるサイドコード40の断面(サイドループ44)の数を計数することにより得られる。
サイドトッピングゴム42は、ゴム組成物を架橋することによって得られる。サイドトッピングゴム42は、架橋ゴムである。サイドトッピングゴム42は、サイドコード40を覆う。サイドトッピングゴム42は、サイドコード40を拘束する。
サイドトッピングゴム42のゴム組成物は基材ゴムを含む。好ましい基材ゴムは、ジエン系ゴムである。センタートッピングゴム36に関して前述されたジエン系ゴムが、サイドトッピングゴム42にも用いられうる。
サイドトッピングゴム42のゴム組成物は、補強剤を含む。センタートッピングゴム36に関して前述されたカーボンブラックが、サイドトッピングゴム42にも用いられる。
サイドトッピングゴム42に含まれる補強剤の量は、サイドトッピングゴム42の硬さに影響する。サイドトッピングゴム42の硬質の観点から、カーボンブラックの量は基材ゴム100質量部に対して10質量部以上が好ましい。サイドトッピングゴム42の軟質の観点から、この量は100質量部以下が好ましい。このタイヤ2では、サイドトッピングゴム42は、センタートッピングゴム36よりも補強剤を多く含む。
サイドトッピングゴム42のゴム組成物は、硫黄及び加硫促進剤を含んでいる。このゴム組成物が、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛等を含んでもよい。
前述したように、このタイヤ2では、バンド12はセンター部30と一対のサイド部32とを備えている。センター部30は螺旋状に巻回されたセンターコード34とセンタートッピングゴム36とからなり、各サイド部32は螺旋状に巻回されたサイドコード40とサイドトッピングゴム42とからなる。このバンド12は、タイヤ2の周方向の剛性に寄与する。このタイヤ2は、トラクション性能に優れる。
このタイヤ2では、サイドトッピングゴム42はセンタートッピングゴム36よりも硬質であり、サイドトッピングゴム42の複素弾性率E*sは12MPa以上である。このサイドトッピングゴム42は、サイドコード40の拘束に寄与する。このタイヤ2では、旋回時において、バンド12のサイド部32が軸方向に作用する力に抗するように作用する。旋回時に軸方向の力がタイヤ2に作用した場合に、このタイヤ2では十分な反力が得られる。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、弾性率E*sは14MPa以上がより好ましい。
このタイヤ2では、トラクション性能の低下を抑えつつ、グリップ性能の向上が達成される。本発明によれば、トラクション性能の低下を抑えつつ、グリップ性能の向上が達成された二輪自動車用空気入りタイヤ2が得られる。
本発明では、サイドトッピングゴム42の複素弾性率E*sは、「JIS K 6394」の規定に準拠して、下記の測定条件により、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製の商品名「VESF−3」)を用いて計測される。この計測では、サイドトッピングゴム42のゴム組成物から板状の試験片(長さ=45mm、幅=4mm、厚み=2mm)が形成される。この試験片が、計測に用いられる。
初期歪み:10%
振幅:±2.0%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
このタイヤ2では、サイドトッピングゴム42の複素弾性率E*sは25MPa以下が好ましい。弾性率E*sが25MPa以下に設定されることにより、サイドトッピングゴム42の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、バンド12のサイド部32によるトラクション性能への影響が抑えられる。この観点から、弾性率E*sは20MPa以下がより好ましい。
このタイヤ2では、センタートッピングゴム36はサイドトッピングゴム42よりも軟質である。軟質なセンタートッピングゴム36は、タイヤ2の乗り心地及び衝撃吸収性を阻害しない。この観点から、センタートッピングゴム36の複素弾性率E*cは10MPa以下が好ましく、8MPa以下がより好ましい。センターコード34の拘束の観点から、この弾性率E*cは2MPa以上が好ましく、4MPa以上がより好ましい。なお、この弾性率E*cは、センタートッピングゴム36のためのゴム組成物を用いて、前述された、弾性率E*sと同様にして得られる。
前述したように、このタイヤ2は一対のエッジプライ14を備えている。それぞれのエッジプライ14は、バンド12の端28の部分を覆っている。
図1に示されているように、エッジプライ14はバンド12のサイド部32に積層されている。前述したように、エッジプライ14は並列された多数のエッジコードを含んでおり、それぞれのエッジコードは周方向に対して傾斜している。このエッジプライ14は、サイド部32を拘束する。サイドコード40はさらに動きにくい。このタイヤ2では、サイド部32及びエッジプライ14の相乗効果により、旋回時に軸方向の力がタイヤ2に作用した場合に、十分な反力が得られる。このタイヤ2は、グリップ性能に一層優れる。このタイヤ2では、一方のサイド部32に1枚のエッジプライ14が積層されている。この一方のサイド部32に、2枚以上のエッジプライ14が積層されてもよい。
エッジコードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維及びアラミド繊維が例示される。高い剛性を有するエッジプライ14が得られるとの観点から、エッジコードのための有機繊維としてはアラミド繊維がより好ましい。
図示されていないが、エッジコードは、複数本のフィラメントを撚り合わせたものからなる。このタイヤ2では、エッジコードが、有機繊維からなる2本のフィラメントを撚り合わせて形成したコードがエッジコードとして用いられてもよい。有機繊維からなる3本のフィラメントを撚り合わせて形成したコードがエッジコードとして用いられてもよい。なお、例えば、880dtexの繊度を有するフィラメントを2本撚り合わせて形成したエッジコードの構造は、「JIS L 0017」の規定にしたがって、880dtex/2として表される。
エッジプライ14は、バンド12よりもトレッド面18に近接する。エッジプライ14の剛性は、トレッド4の柔軟性に影響する。エッジコードを構成するフィラメントの繊度は、エッジプライ14の剛性に影響する。このタイヤ2では、好ましくは、フィラメントの繊度は880dtex以下である。このフィラメントから形成されたエッジコードは、トレッド4の柔軟性を阻害しない。このタイヤ2では、良好なグリップ性能が維持される。この観点から、フィラメントの繊度は440dtex以下がより好ましい。エッジプライ14の剛性の確保の観点から、このフィラメントの繊度は110dtex以上が好ましい。
このタイヤ2では、エッジプライ14におけるエッジコードの密度Deは30エンズ/5cm以下が好ましい。これにより、トレッド4の柔軟性を適切に維持しつつ、エッジプライ14がサイド部32を十分に拘束する。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この観点から、この密度Deは20エンズ/5cm以下がより好ましい。エッジプライ14の剛性の確保の観点から、この密度Deは5エンズ/5cm以上が好ましい。なお、この密度Deは、エッジコードの延在方向に対して垂直な断面において、5cm幅のエッジプライ14に含まれるエッジコードの断面の数を計数することにより得られる。
図2に示されているように、エッジプライ14は、多数のエッジコード46とエッジトッピングゴム48とからなる。エッジトッピングゴム48は、エッジコード46を覆う。エッジトッピングゴム48は、エッジコード46を拘束する。
このタイヤ2では、エッジトッピングゴム48の複素弾性率E*eは12MPa以上が好ましい。これにより、エッジトッピングゴム48がエッジコード46の拘束に効果的に寄与する。このタイヤ2では、エッジプライ14がサイド部32をより効果的に拘束する。サイドコード40はさらに動きにくい。このタイヤ2では、サイド部32及びエッジプライ14のさらなる相乗効果により、旋回時に軸方向の力がタイヤ2に作用した場合に、より十分な反力が得られる。このタイヤ2は、グリップ性能により一層優れる。良好なトラクション性能が維持されるとの観点から、この弾性率E*eは25MPa以下が好ましく、20MPa以下がより好ましい。なおこの弾性率E*eは、エッジトッピングゴム48のためのゴム組成物を用いて、前述された、弾性率E*sと同様にして得られる。
図3には、サイド部32におけるサイドコード40に対するエッジプライ14のエッジコード46の配置の様子が模式的に示されている。この図示されたサイドコード40は、このサイドコード40の螺旋巻きにより形成される一のサイドループ44でもある。この図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向に相当する。この紙面においては、その右側が軸方向外側である。この図3において、上下方向はタイヤ2の周方向、言い換えれば、回転方向に相当する。タイヤが正回転するとき、図3の上側が回転方向前側である。タイヤが正回転するとき、接地面は、上から下に向かって移動する。
前述したように、サイドコード40は実質的に周方向に延在する。このタイヤ2では、エッジコード46は、このサイドコード40に対して傾斜しているのが好ましい。これにより、エッジコード46がサイドコード40を効果的に拘束する。このタイヤ2では、旋回時に軸方向の力がタイヤ2に作用した場合に、より十分な反力が得られる。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。図3に示される通り、エッジコード46は、第一端50と第二端52とを有する。第二端52は、正の回転方向において、第一端50よりも前側に位置する。第二端52は、軸方向において、第一端50よりも内側に位置する。このエッジコード46は、より効果的にサイドコード40を拘束する。第二端52が、軸方向において、第一端50よりも外側に位置してもよい。
図3において、角度θpはエッジコード46がサイドコード40に対してなす傾斜角度を表している。この角度θpは、サイド部32の軸方向中心に位置するサイドコード40を基準にして計測される。
このタイヤ2では、エッジコード46が効果的にサイドコード40を拘束するとの観点から、傾斜角度θpの絶対値は30°以上が好ましく、90°以下が好ましい。エッジコード46が周方向の剛性にも寄与するとの観点から、この角度θpの絶対値は60°以下がより好ましい。
図2において、両矢印Tはサイドコード40とエッジコード46との間の距離を表している。この距離は、サイドコード40とエッジコード46との間に存在するゴムの厚さである。
このタイヤ2では、距離Tは0.7mm以上が好ましい。これにより、サイドコード40とエッジコード46との干渉が抑えられる。サイドコード40とエッジコード46との間にあるゴムの損傷が防止されるので、このタイヤ2は耐久性に優れる。この距離Tは1.5mm以下が好ましい。これにより、エッジコード46によるサイドコード40の拘束力が十分に確保される。このタイヤ2では、良好なグリップ性能が維持される。
このタイヤ2では、図1に示されているように、エッジプライ14の外端54は、半径方向においてバンド12の端28よりも内側に位置しているのが好ましい。これにより、サイド部32がエッジプライ14により効果的に拘束されるとともに、エッジプライ14の外端54への歪みの集中が防止される。このタイヤ2では、耐久性を損なうことなく、良好なグリップ性能が達成される。
このタイヤ2では、エッジプライ14の内端56はサイド部32の内端58よりも半径方向外側に位置するのが好ましい。これにより、エッジプライ14がサイド部32全体を覆うことになり、エッジプライ14にサイド部32がより効果的に拘束される。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。さらに、エッジプライ14の一部がセンター部30と積層されることになるので、このタイヤ2では、センター部30とサイド部32との境界付近に特異な剛性を有する部分が形成されることが防止される。このタイヤ2によれば、ライダーは、違和感を憶えることなく、直進走行から旋回走行又は旋回走行から直進走行へ滑らかに移行できる。このタイヤ2は、過渡特性に優れる。この観点から、エッジプライ14がセンター部30と重複している長さは、5mm以上が好ましく、15mm以下が好ましい。
図4には、バンド12及び一対のエッジプライ14が示されている。この図4において、左右方向は軸方向に相当し、上下方向は周方向に相当する。
この図4において、両矢印LBは、図1に示されたバンド12の基準長さである。両矢印LSは、サイド部32の長さである。この長さLSは、バンド12の端28からサイド部32の内端58までの長さをバンド12に沿って計測することにより得られる。両矢印LEは、エッジプライ14の長さである。この長さLEは、エッジプライ14の外端54からその内端56までの長さをエッジプライ14に沿って計測することにより得られる。長さLDは、バンド12の端28から突出するエッジプライ14の長さである。この突出長さLDは、バンド12の端28からエッジプライ14の外端54までの長さをエッジプライ14に沿って計測することにより得られる。
このタイヤ2では、基準長さLBに対するサイド部32の長さLSの比率(LS/LB)は30%以上が好ましい。これにより、サイドコード40が十分に拘束された領域が適切に維持される。このサイド部32は、グリップ性能に寄与する。この比率は60%以下が好ましい。これにより、高い剛性を有するサイド部32によるバンド12全体の剛性への影響が抑えられる。このタイヤ2では、良好なトラクション性能が維持される。
このタイヤ2では、基準長さLBに対するエッジプライ14の長さLEの比率(LE/LB)は40%以上が好ましい。これにより、エッジプライ14がサイド部32を効果的に拘束する。このタイヤ2は、グリップ性能に優れる。この比率は60%以下が好ましい。これにより、高い剛性を有するエッジプライ14による剛性及び質量への影響が抑えられる。このタイヤ2では、質量の増加を抑えつつ、良好なトラクション性能が維持される。
このタイヤ2では、突出長さLDは5mm以上が好ましい。これにより、エッジプライ14の外端54への歪みの集中が効果的に防止される。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。この突出長さLDは、10mm以下が好ましい。これにより、エッジプライ14による質量への影響が抑えられる。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。後述するタイヤの各部材の寸法及び角度も、このタイヤ2と同様にして測定される。
図5には、本発明の他の実施形態に係る二輪自動車用の空気入りタイヤ60が示されている。図5において、上下方向がタイヤ60の半径方向であり、左右方向がタイヤ60の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ60の周方向である。図5において、一点鎖線CLはタイヤ60の赤道面を表わす。このタイヤ60の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
このタイヤ60は、トレッド62、一対のサイドウォール64、一対のビード66、カーカス68、ベルト70、バンド72及びインナーライナー74を備えている。このタイヤ60のトレッド62、サイドウォール64、ビード66、カーカス68及びインナーライナー74は、図1に示されたタイヤ2のものと同等の構成を有している。
このタイヤ60では、ベルト70はバンド72の半径方向内側に位置している。ベルト70は、カーカス68と積層されている。ベルト70は、カーカス68を補強する。ベルト70の軸方向幅は、タイヤ60の最大幅の0.7倍以上が好ましい。
ベルト70は、内側層76及び外側層78からなる。外側層78は、内側層76の半径方向外側に位置している。図5から明らかなように、内側層76は、外側層78の端80にて半径方向において内側から外側に向かって折り返されている。このベルト70は、フォールド構造を有している。
図6には、このベルト70の展開図が示されている。この図6において、左右方向は軸方向に相当し、上下方向は周方向に相当する。
内側層76は、並列された多数の第一ベルトコード82とトッピングゴム84とからなる。それぞれの第一ベルトコード82は、赤道面に対して傾斜している。図6において、角度θ1は第一ベルトコード82が赤道面に対してなす傾斜角度を表している。このタイヤ60では、傾斜角度θ1の絶対値は45°以上88°以下である。
前述したように、ベルト70はフォールド構造を有している。折り返しの容易の観点から、第一ベルトコード82は好ましくは有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
外側層78は、並列された多数の第二ベルトコード86とトッピングゴムとからなる。それぞれの第二ベルトコード86は、赤道面に対して傾斜している。図6において、角度θ2は第二ベルトコード86が赤道面に対してなす傾斜角度を表している。このタイヤ60では、傾斜角度θ2の絶対値は45°以上88°以下である。図6から明らかなように。内側層76の本体90における第一ベルトコード82の赤道面に対する傾斜方向は、外側層78の第二ベルトコード86の赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
図から明らかなように、外側層78は内側層76のように折り返されない。第二ベルトコード86の材質がスチールとされてもよい。この第二ベルトコード86に、有機繊維が用いられてもよい。この場合、好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
バンド72は、トレッド62の半径方向内側に位置している。このタイヤ60では、バンド72はベルト70と積層されている。バンド72の端92は、トレッド62の端の近くに位置している。このバンド72は、トレッド62の半径方向内側において、一方のトレッド62の端と他方のトレッド62の端との間に架け渡されている。図5から明らかなように、バンド72はベルト70を覆っている。
図示されていないが、バンド72はバンドコードを含んでいる。バンドコードは、螺旋状に巻回されている。このバンド72は、いわゆるジョイントレス構造を有する。バンドコードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するバンドコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このバンド72は、タイヤ60の半径方向の剛性に寄与する。このバンド72は、走行時に作用する遠心力の影響を抑制する。このタイヤ60は、高速安定性及びトラクション性能に優れる。
図5において、両矢印LTは赤道面からトレッド面94の端96までの長さを表している。この長さLTは、トレッド面94の長さの半分である。両矢印LBは、赤道面からバンド72の端92までの長さを表している。この長さLBは、バンド72の長さの半分である。この長さLBは、バンド72に沿って計測される。この実施形態においても、この長さLBは基準長さとも称される。
バンド72による補強の観点から、長さLTに対する基準長さLBの比率(LB/LT)は70%以上が好ましく、100%以下が好ましい。
このタイヤ60では、バンド72はセンター部98と、一対のミドル部100と、一対のサイド部102とを備えている。詳細には、このタイヤ60のバンド72は、センター部98と一対のミドル部100と一対のサイド部102とからなる。センター部98は、赤道面上に位置している。それぞれのサイド部102は、軸方向において、センター部98の外側に位置している。詳細には、サイド部102はショルダー領域Sに位置している。それぞれのミドル部100は、軸方向において、センター部98とサイド部102との間に位置している。このタイヤ60では、クラウン領域Cにセンター部98が位置し、ミドル領域Mにミドル部100が位置し、そして、ショルダー領域Sにサイド部102が位置している。
図示されていないが、センター部98はセンターコードとセンタートッピングゴムとからなる。センターコードは、バンド72を構成するバンドコードのうち、センター部98に含まれるバンドコードである。前述したように、バンドコードは螺旋状に巻回されている。したがってセンターコードは、螺旋状に巻回されている。これにより、センター部98には軸方向に並列された多数のセンターループが形成されている。
センターコードには、図1のタイヤ2のセンターコード34に関して前述されたコードが用いられる。センタートッピングゴムには、図1のタイヤ2のセンタートッピングゴム36に関して前述されたゴム組成物が用いられる。センターコードの拘束の観点から、センタートッピングゴムの複素弾性率E*cは2MPa以上が好ましい。乗り心地及び衝撃吸収性の観点から、弾性率E*cは10MPa以下が好ましい。
図示されていないが、サイド部102はサイドコードとサイドトッピングゴムとからなる。サイドコードは、バンド72を構成するバンドコードのうち、サイド部102に含まれるバンドコードである。前述したように、バンドコードは螺旋状に巻回されている。したがってサイドコードは、螺旋状に巻回されている。これにより、サイド部102には軸方向に並列された多数のサイドループが形成されている。
サイドコードには、図1のタイヤ2のサイドコード40に関して前述されたコードが用いられる。サイドトッピングゴムには、図1のタイヤ2のサイドトッピングゴム42に関して前述されたゴム組成物が用いられる。したがって、サイドコードの拘束の観点から、サイドトッピングゴムの複素弾性率E*sは12MPa以上である。サイド部102によるトラクション性能への影響を抑えるとの観点から、弾性率E*sは25MPa以下が好ましい。
図示されていないが、ミドル部100はミドルコードとミドルトッピングゴムとからなる。ミドルコードは、バンド72を構成するバンドコードのうち、ミドル部100に含まれるバンドコードである。前述したように、バンドコードは螺旋状に巻回されている。したがってミドルコードは、螺旋状に巻回されている。これにより、ミドル部100には軸方向に並列された多数のミドルループが形成されている。
ミドルコードには、センターコードに関して前述されたコードが用いられる。ミドルトッピングゴムには、センタートッピングゴムに関して前述されたゴム組成物が用いられる。このタイヤ60では、ミドルトッピングゴムはセンタートッピングゴムと同等である。したがって、ミドルコードの拘束の観点から、ミドルトッピングゴムの複素弾性率E*mは2MPa以上が好ましい。乗り心地及び衝撃吸収性の観点から、弾性率E*mは10MPa以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ60では、バンド72はセンター部98と一対のミドル部100と一対のサイド部102とを備えている。センター部98は螺旋状に巻回されたセンターコードとセンタートッピングゴムとからなる。各ミドル部100は螺旋状に巻回されたミドルコードとミドルトッピングゴムとからなる。各サイド部102は螺旋状に巻回されたサイドコードとサイドトッピングゴムとからなる。このバンド72は、タイヤ60の周方向の剛性に寄与する。このタイヤ60は、トラクション性能に優れる。
このタイヤ60では、サイドトッピングゴムは、センタートッピングゴム及びミドルトッピングゴムよりも硬質であり、サイドトッピングゴムの複素弾性率E*sは12MPa以上である。このサイドトッピングゴムは、サイドコードの拘束に寄与する。このタイヤ60では、旋回時において、バンド72のサイド部102が軸方向に作用する力に抗するように作用する。旋回時に軸方向の力がタイヤ60に作用した場合に、このタイヤ60では十分な反力が得られる。このタイヤ60は、グリップ性能に優れる。
このタイヤ60では、トラクション性能の低下を抑えつつ、グリップ性能の向上が達成される。本発明によれば、トラクション性能の低下を抑えつつ、グリップ性能の向上が達成された二輪自動車用空気入りタイヤ60が得られる。
二輪自動車は、曲線路を減速して走行する。このとき、ライダーは二輪自動車を傾けて走行させる。フルバンク時には、タイヤ60のショルダー領域Sが接地している。二輪自動車が曲線路を抜け直線路に入るとき、二輪自動車が最も倒れた状態から、ライダーは加速を始め、二輪自動車を徐々に起こしていく。このプロセスでは、速度の上昇に伴い、タイヤ60の接地領域は、ショルダー領域Sからミドル領域Mへ、そして、ミドル領域Mからクラウン領域Cへと移行していく。速度の上昇は、タイヤ60の外径成長を促す。大きな外径は小さな接地面積を招来する。このため、二輪自動車が曲線路を抜け直線路に入るプロセスでは、グリップ性能が低下する恐れがある。
バンドコードの密度が大きい場合、外径成長が抑えられるが、バンド72の柔軟性が損なわれる。低速で走行するフルバンクでは、接地面積の確保の観点から、バンド72にはある程度の柔軟性が必要である。
このタイヤ60では、センター部98におけるセンターコードの密度Dcはミドル部100におけるミドルコードの密度Dmよりも大きく、かつ、この密度Dmはサイド部102におけるサイドコードの密度Dsよりも大きい。このタイヤ60のバンド72は、バンドコードの密度が、バンド72の端92から赤道面に向かって大きくなるように構成されている。言い換えれば、このバンド72では、バンド72の端92から赤道面に向かってバンドコードによる拘束力が大きくなるように構成されている。このバンド72は、曲線路を抜け直線路に入るプロセスにおいて、適度な柔軟性を確保しつつ、タイヤ60の外径成長を効果的に抑える。このタイヤ60は、グリップ性能に優れる。
このタイヤ60では、適度な柔軟性を確保しつつ、タイヤ60の外径成長が効果的に抑制されるとの観点から、センターコードの密度Dcとミドルコードの密度Dmとの差(Dc−Dm)は5エンズ/5cm以上が好ましい。ミドルコードの密度Dmとサイドコードの密度Dsとの差(Dm−Ds)は、5エンズ/5cm以上が好ましい。旋回から直進又は直進から旋回への滑らかな移行が達成されるとの観点から、この差(Dc−Dm)は10エンズ/5cm以下が好ましい。この差(Dm−Ds)は10エンズ/5cm以下が好ましい。
このタイヤ60では、センターコードの密度Dcは30エンズ/5cm以上が好ましい。これにより、クラウン領域Cにおける外径成長が効果的に抑えられる。この密度Dcは50エンズ/5cm以下が好ましい。これにより、クラウン領域Cにおける柔軟性が適切に維持される。
このタイヤ60では、ミドルコードの密度Dmは20エンズ/5cm以上が好ましい。これにより、ミドル領域Mにおける外径成長が効果的に抑えられる。この密度Dmは40エンズ/5cm以下が好ましい。これにより、ミドル領域Mにおける柔軟性が適切に維持される。
このタイヤ60では、サイドコードの密度Dsは10エンズ/5cm以上が好ましい。これにより、ショルダー領域Sにおける外径成長が効果的に抑えられる。この密度Dsは30エンズ/5cm以下が好ましい。これにより、ショルダー領域Sにおける柔軟性が適切に維持される。
図5において、両矢印LSはサイド部102の長さである。この長さLSは、バンド72の端92からサイド部102の内端104までの長さをバンド72に沿って計測することにより得られる。両矢印LCは、センター部98の長さの半分である。この長さLCは、赤道面からセンター部98の端106までの長さをバンド72に沿って計測することにより得られる。両矢印LMは、ミドル部100の長さである。この長さLMは、ミドル部100の内端108からその外端110までの長さをバンド72に沿って計測することにより得られる。
このタイヤ60では、基準長さLBに対するサイド部102の長さLSの比率(LS/LB)は30%以上が好ましい。これにより、サイドコードが十分に拘束された領域が適切に維持される。このサイド部102は、グリップ性能に寄与する。この比率は60%以下が好ましい。これにより、高い剛性を有するサイド部102によるバンド72全体の剛性への影響が抑えられる。このタイヤ60では、良好なトラクション性能が維持される。
このタイヤ60では、クラウン領域Cにおいて、適度な柔軟性を確保しつつ、タイヤ60の外径成長が効果的に抑制されるとの観点から、基準長さLBに対するセンター部98の長さLCの比率(LC/LB)は20%以上が好ましく、35%以下が好ましい。
このタイヤ60では、ミドル領域Mにおいて、適度な柔軟性を確保しつつ、タイヤ60の外径成長が効果的に抑制されるとの観点から、基準長さLBに対するセンター部98の長さLMの比率(LM/LB)は20%以上が好ましく、35%以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ60では、内側層76は外側層78の端80にて半径方向において内側から外側に向かって折り返されている。これにより、内側層76には、本体90と、一対の折り返し部112とが形成されている。折り返し部112は、折り返された内側層76である。
このタイヤ60では、外側層78の端80は内側層76で包み込まれる。折り返された内側層76の端114は、ベルト70の端116よりも軸方向内側に位置している。このベルト70では、その端116において損傷は生じにくい。このタイヤ60は、高速耐久性に優れる。
図5から明らかなように、折り返し部112はショルダー領域Sに位置している。図6に示されているように、折り返し部112は並列された多数の第一ベルトコード82を含んでいる。このタイヤ60では、旋回時において、折り返し部112が軸方向に作用する力に抗するように作用する。旋回時に軸方向の力がタイヤ60に作用した場合に、このタイヤ60では十分な反力が得られる。このタイヤ60は、グリップ性能に優れる。
図5において、両矢印LFは折り返し部112の長さである。この長さLFは、ベルト70の端116から折り返し部112の端114までの長さをベルト70に沿って計測することにより得られる。
このタイヤ60では、トレッド面94の長さの半分の長さLTに対する折り返し部112の長さLFの比率(LF/LT)は10%以上30%以下が好ましい。言い換えれば、折り返された内側層76の長さは、トレッド62の長さの半分の10%以上30%以下が好ましい。この比率が10%以上に設定されることにより、旋回時に軸方向の力がタイヤ60に作用した場合に、この折り返し部112が反力の発生に効果的に寄与する。このタイヤ60は、グリップ性能に優れる。この観点から、この比率は15%以上がより好ましい。この比率が30%以下に設定されることにより、折り返し部112によるトラクション性能及び質量への影響が抑えられる。この観点から、この比率は25%以下が好ましい。
このタイヤ60では、クラウン領域Cにおいては、ベルト70は内側層76及び外側層78の2層構造を有している。このクラウン領域Cにおいては、外側層78がベルト70の外側部分を構成する。ショルダー領域Sにおいては、ベルト70は、内側層76の本体90、外側層78及び内側層76の折り返し部112の3層構造を有している。このショルダー領域Sにおいては、折り返し部112がベルト70の外側部分を構成する。図6に示されているように、折り返し部112に含まれる第一ベルトコード82の傾斜方向は外側層78に含まれる第二ベルトコード86の傾斜方向と同等である。
このタイヤ60では、好ましくは、内側層76の第一ベルトコード82の傾斜角度θ1の絶対値は外側層78の第二ベルトコード86の傾斜角度θ2の絶対値よりも小さい。これにより、クラウン領域Cにおいては、外側層78と内側層76との間で生じる剪断剛性の上昇が抑えられる。ショルダー領域Sにおいては、折り返し部112に含まれる第一ベルトコード82は外側層78に含まれる第二ベルトコード86と交差する。この交差は、折り返し部112と外側層78との間で生じる剪断剛性に寄与する。このタイヤ60では、クラウン領域Cでは剛性が適切に維持される。ショルダー領域Sでは、旋回時において軸方向の力が作用した場合に、3層構造のベルト70がこの力に抗するように作用する。このタイヤ60では、直進走行時の安定性を損なうことなく、旋回時におけるグリップ性能の向上が達成される。この観点から、傾斜角度θ2の絶対値と傾斜角度θ1の絶対値との差は、5°以上が好ましく、30°以下が好ましい。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実験1]
[実施例1]
図1−4に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、180/55R17である。この実施例1の仕様は、下記の表1に記載の通りである。この実施例1では、エッジプライのエッジコードには、アラミド繊維からなるコードが用いられた。このことが、エッジコードの材質の欄に、「A」で表されている。
[比較例1−3]
比較例1−3は従来のタイヤである。比較例1及び3では、エッジプライは設けられていない。比較例2では、2枚のフルプライがバンドに積層された。2枚のフルプライは、バンド全体を覆うように配置された。表1には、実施例1のエッジプライの仕様に対応するフルプライの仕様が記載されている。
[実施例2]
エッジコードの構造を変えた他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3−5及び比較例4]
エッジプライを設けずにサイド部のサイドトッピングゴムの複素弾性率E*sを下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例3−5及び比較例4のタイヤを得た。
[実施例6−9]
エッジプライを設けずに比率(LS/LB)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6−9のタイヤを得た。
[実施例10−11]
エッジコードの密度Deを下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10−11のタイヤを得た。
[実施例12]
一方のショルダー領域に設けるエッジプライの枚数を2枚とした他は実施例1と同様にして、実施例12のタイヤを得た。
[実施例13]
エッジコードの材質及び構造を変えた他は実施例1と同様にして、実施例13のタイヤを得た。この実施例13では、ナイロン繊維からなるコードがエッジコードとして用いられた。このことが、表4の材質の欄に「N」で表されている。このエッジコードの構造は、1400dtex/2であった。
[実施例14−20]
エッジコードの構造及び/又は密度Deを下記の表5及び6の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例14−20のタイヤを得た。
[実施例21−24]
エッジコードの角度θpを下記の表7の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例21−24のタイヤを得た。
[実施例25−28]
比率(LE/LB)を下記の表8の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例25−28のタイヤを得た。
[性能評価]
試作タイヤを排気量が600ccであるレース用の二輪自動車(4サイクル)の後輪に装着し、その内圧が170kPaとなるように空気を充填した。後輪のリムのサイズは、MT6.00×17とされた。前輪には、市販のタイヤ(サイズ=120/70R17)を装着し、その内圧が240kPaとなるように空気を充填した。前輪のリムのサイズは、MT3.50×17とされた。この二輪自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させて、ライダーによる、グリップ(特に、旋回時)、トラクション及び剛性感に関する官能評価を行った。この結果が、目標値を100とする指数で下記の表1から8に示されている。グリップ及びトラクションに関しては、数値が大きいほど好ましい。剛性感に関しては、数値が大きいほど剛性感を感じたことを表している。
表1から8に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
[実験2]
[実施例29]
図5−6に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、190/50ZR17である。この実施例1の仕様は、下記の表9に記載の通りである。バンドにおいて、比率(LC/LB)及び比率(LM/LB)はそれぞれ、30%とされた。この実施例1には、フォール構造のベルトが採用されている。内側層における第一ベルトコードの傾斜角度θ1の絶対値は、50°とされた。外側層における第二ベルトコードの傾斜角度θ2の絶対値は、70°とされた。
[比較例5]
比較例5は、従来のタイヤである。この比較例5のバンドは、表1の比較例1のバンドの構成と同様の構成を有している。この比較例5には、従来のベルトが採用されている。この比較例5では、ベルトの内側層はその外側層の端で折り返されていない。内側層における第一ベルトコードの傾斜角度θ1の絶対値は、26°とされた。外側層における第二ベルトコードの傾斜角度θ2の絶対値は、26°とされた。
[実施例30−31]
ベルトをフォールド構造とせず、センターコードの密度Dc、ミドルコードの密度Dm及びサイドコードの密度Dsを下記の表9の通りとした他は実施例29と同様にして、実施例30−31のタイヤを得た。
[実施例32]
センターコードの密度Dc、ミドルコードの密度Dm及びサイドコードの密度Dsを下記の表9の通りとした他は実施例29と同様にして、実施例32のタイヤを得た。
[実施例33−35]
比率(LF/LT)を下記の表10の通りとした他は実施例29と同様にして、実施例33−35のタイヤを得た。
[性能評価]
試作タイヤを排気量が1000ccであるレース用の二輪自動車(4サイクル)の後輪に装着し、その内圧が250kPaとなるように空気を充填した。後輪のリムのサイズは、MT6.00×17とされた。前輪には、市販のタイヤ(サイズ=120/70ZR17)を装着し、その内圧が250kPaとなるように空気を充填した。前輪のリムのサイズは、MT3.50×17とされた。この二輪自動車を、その路面がアスファルトであるサーキットコースで走行させて、ライダーによる、グリップ(特に、倒し込み時の安定性)及びトラクション(駆動性能)に関する官能評価を行った。この結果が、実施例30を100とした指数で下記の表9から10に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[高速耐久性]
タイヤが、試験機のリム(サイズ;MT6.00×17)に装着され、この試作タイヤの内部に気体が充填され、この試作タイヤの内圧が250kPaとされた。気体充填後、この試作タイヤは20℃から30℃の温度雰囲気下で3時間放置された。放置後、この試作タイヤに気体が再度充填され、内圧が上記所定の圧力とされた。所定の荷重(1500N)がこの試作タイヤに負荷されつつ、この試作タイヤがテストドラムの路面に接地された。なお、このテストドラムの路面は平滑であり、このテストドラムの外径は1.7mとされた。接地後、試験機による走行試験が開始された。試験開始から20分で、試作タイヤの試験速度が、230km/hとされた(スタートステップ)。試験速度は、この速度(230km/h)で10分間保持された(ステップ1)。保持後、この試験速度が、速度(240km/h)に到達され、さらに10分間保持された(ステップ2)。この試験速度が、速度(250km/h)に到達され、さらに10分間保持された(ステップ3)。この試験速度が、速度(260km/h)に到達され、さらに10分間保持された(ステップ4)。試験速度を10km/h上げてこれを10分間保持するというステップが、タイヤが破壊するまで繰り返された。その結果が、タイヤが破壊した時点における試験速度及び時間に基づく、実施例30を100とした指数値で下記の表9から10に示されている。この数値が大きいほど、良好である(高速耐久性に優れる)ことが示される。
表9から10に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。