JP6460521B2 - 再活性化触媒系の製造方法、及び再活性化触媒系を用いたエステル化合物の製造方法 - Google Patents

再活性化触媒系の製造方法、及び再活性化触媒系を用いたエステル化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、再活性化触媒系の製造方法、及びその方法によって得た触媒系を用いたエステル化合物の製造方法に関する。本発明は、より詳細には、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造するために使用及び回収された回収触媒系を再活性化して再活性化触媒系を製造する方法、及びその再活性化触媒系を用いたエステル化合物の製造方法に関する。
従来から、実質的に一酸化炭素を使用することなく、不飽和結合を有する有機化合物と、ギ酸化合物とを原料として使用し、上記有機化合物にエステル基が付加したエステル化合物を製造する様々な方法が知られている。
例えば、非特許文献1は、ホスフィン配位子を有するルテニウム化合物を触媒として用いて、エチレンとギ酸メチルとを、190℃の温度条件下で、18時間にわたって反応させ、エチレンにギ酸メチルが付加したプロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対して、286モル当量のプロピオン酸メチルが生成する。
非特許文献2は、カルボニル配位子と塩素配位子とを有するルテニウム化合物を触媒として用い、DMF溶媒中、エチレンとギ酸メチルとを、160℃の温度条件下で、2時間にわたって反応させ、エチレンにギ酸メチルが付加したプロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対し、345モル当量のプロピオン酸メチルが生成する。
特許文献1は、カルボニル配位子、塩素配位子及びアミン配位子からなる群から選ばれる配位子を有するルテニウム化合物と、四級アンモニウムヨウ化物とからなる触媒系の存在下で、DMF溶媒中、エチレンとギ酸メチルとを、190℃の温度条件下で、1時間にわたって反応させ、プロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対し、1530モル当量のプロピオン酸メチルが生成する。
非特許文献3は、ルテニウムカルボニルクラスター化合物と三級ホスフィン化合物とを組み合わせて触媒として用い、トルエン中で、ノルボルネンとギ酸メチルとを、170℃の温度条件下で、15時間にわたって反応させ、ノルボルネンにエステル基が付加した化合物を製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ギ酸メチルを基準として、ノルボルネンにエステル基が付加した化合物が収率22%で得られる。また、ギ酸メチルに代えてギ酸ベンジルを用いた場合には、対応するエステル化合物が収率77%で得られる。
また、非特許文献4は、ルテニウムカルボニルクラスター化合物を触媒として用い、DMF溶媒中で、1−ヘキセンとピリジン基を有するギ酸化合物とを、135℃の温度条件下で、4時間にわたって反応させ、対応するエステル化合物を製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ギ酸化合物を基準として、エステル化合物が収率98%で得られる。
これらの手法は、一酸化炭素等の有毒な原料を必要とせず、比較的低い圧力で反応が進行する点で優れている。しかし、基本的に160℃以上の高い反応温度を必要とし、これよりも反応温度を下げるためには、特殊な構造を持つギ酸化合物を用いる必要があった。
これに対し、本発明者は、先に、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、不飽和有機化合物とギ酸エステルとを反応させた時、従来法で必要となる反応温度よりも低い温度で反応が進行し、効率良く所望とするエステル化合物が得られることを見出している(特許文献2)。
本発明者による方法によれば、実質的な量の一酸化炭素を用いることなく、不飽和有機化合物とギ酸エステルとを原料として、原料有機化合物にエステル基が付加したエステル化合物を提供することが可能である。特に、本発明者による方法によれば、ギ酸エステルとして安価なギ酸メチルを用いた場合であっても、従来技術に比べて低い反応温度で、かつ効率良く、目的とするエステル化合物を提供することが可能である。
しかし、上記方法では、反応触媒としてルテニウム等の希少金属を使用する必要がある。これら希少金属は、産出量の減少、価格の高騰などが懸念される物質であるため、上記方法は、製造コストの面での改善が望まれている。したがって、より安価な方法で金属触媒を再利用する手法の探索は、製造コストの低減や環境資源の節約に直結するため、極めて重要な課題である。
希少金属を回収し、再利用する一般的な方法として、金属触媒を含む有機廃液を焼成して地金へと変換し、再度、触媒を合成する方法が知られている(特許文献3)。この方法は、特に、高価な希少金属を回収できる点、また、触媒を再合成するため、常に高い触媒活性を維持できる点で優れている。
しかしながら、地金を経て金属触媒を再生する上記方法は、その工程の都合上、コストが膨大になる。そのため、有機廃液中の金属含有量が少ない場合には、金属触媒を回収するメリットが薄れてしまうことになる。そこで、金属触媒について実質的に必要となるコストを大幅に低減することができる、触媒の再生方法が望まれている。
特開平8−20557号公報 WO2011/013430号公報 特開2010−106326号公報
P.Isnard,B.Denise,R.P.A.Sneeden,J.M.Cognion,P.Durual,J.Organomet.Chem.,256,135(1983). N.Lugan,G.Lavigne,J.M.Soulie,S.Fabre,P.Kalck,J.Y.Saillard,J.F.Halet,Organometallics,14,1712(1995). T.Kondo,T.Okada,T.Mitsudo,Organometallics,18,4123(1999). S.Ko,Y.Na,S.Chang,J.Am.Chem.Soc.,124,750(2002). M.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.
上述のように、不飽和有機化合物とギ酸エステルとの反応によってエステル化合物を製造する方法において、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む特定の触媒系は有効であるが、ルテニウムは希少金属であり、高価である。そのため上記触媒系を低コストで効率良く再生する方法が望まれている。上記触媒系を低コストで効率良く再生するためには、反応後に回収される触媒系残渣を直接処理して再活性化する方法が望ましい。併せて、再活性化処理時に使用する再活性化剤は、安価であり、かつ取扱いが容易であることが望ましい。したがって、本願発明は、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む特定の触媒系を用いたエステル化合物の製造後に回収される触媒系残渣を直接処理して再活性化触媒系を製造する方法であって、安価で、かつ取扱いが容易な再活性化剤を使用する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を解決すべく鋭意研究した結果、上記エステル化合物の製造時に、反応液から目的とするエステル化合物を分離した後に回収される触媒系残渣を、直接、再活性化する方法について検討した。その結果、再活性化剤として無機過酸化剤又は空気といった酸化剤が好適であることを見出し、本願発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の事項に関する。
本発明の第1の態様は、再活性化触媒系の製造方法に関し、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造した後に回収した回収触媒系を再活性化する工程を含み、該工程が、上記回収触媒系と無機過酸化物又は空気とを接触させることを含み、上記無機過酸化物の添加量が上記回収触媒系におけるルテニウム金属に対して、3〜12モル当量の範囲であることを特徴とする。
ここで、上記再活性化触媒系の製造方法において、上記無機過酸化物は、過炭酸ナトリウムを含むことが好ましい。上記工程において、上記回収触媒系にさらにハロゲン化合物を加えることが好ましく、上記ハロゲン化合物はハロゲン化物塩を含むことが好ましい。上記ハロゲン化物塩は、第四級アンモニウム塩を含むことが好ましい。
上記触媒系における上記ルテニウム化合物は、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とをあわせ持つルテニウム錯体を含むことが好ましい。上記触媒系における上記コバルト化合物は、分子内にカルボニル配位子を有するコバルト錯体を含むことが好ましい。上記触媒系における上記ハロゲン化物塩は、第四級アンモニウム塩を含むことが好ましい。
本発明の第2の態様は、エステル化合物の製造方法に関し、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する方法において、上記触媒系として、上記第1の態様の再活性化触媒系の製造方法で得た再活性化触媒系を使用することを特徴とする。
本発明の第3の態様は、エステル化合物の製造方法に関し、
(a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(b)上記工程(a)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と、
(c)上記回収触媒系を、上記第1の態様に記載の製造方法によって再活性化し、再活性化触媒系を得る工程と、
(d)上記工程(c)によって得られた再活性化触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(e)上記工程(d)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記再活性化触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程、を含むことを特徴とする。
ここで、上記エステル化合物の製造方法において、上記工程(c)〜(e)を順次繰り返して実施することが好ましい。上記工程(a)及び(d)における上記反応時に、それぞれ、塩基性化合物を加えることが好ましく、上記塩基性化合物は、三級アミン化合物であることが好ましい。上記工程(a)及び(d)における上記反応時に、それぞれ、フェノール化合物を加えることが好ましい。上記工程(a)及び(d)における上記反応時に、それぞれ、有機ハロゲン化合物を加えることが好ましい。
本発明によれば、反応液からエステル化合物を分離した後に得られる触媒系残渣を直接処理することができ、再活性化した触媒系をそのまま再利用することができる。すなわち、従来法に見られるように、反応後に回収した触媒系を再活性化及び再利用するために、触媒の活性中心である希少金属を焼成し、それら金属を地金に変換した後に回収する必要がなく、触媒を再合成する必要もない。また、複数種の触媒が混在する触媒系の残渣から、それぞれ成分ごとに単離する必要もない。
また、処理時に使用する無機過酸化物又は空気といった酸化剤は安価であり、かつ取扱いが容易であるため、低コストで、効率良く触媒の再活性化を実施することができる。再活性化のために使用した上記酸化剤は、エステル化合物を製造する反応を阻害することがない。そのため、上記酸化剤を用いた処理後に、分離精製等の工程を行うことなく、再活性化した触媒系をそのまま、再利用することができる。以上のように、本発明によれば、特殊な装置を使用することなく、反応後に回収された触媒残渣を直接再活性化することができるため、引き続き、再活性化した触媒を使用して目的とするエステル化合物を効率良く、かつ安価に製造することができる。
以下、本発明について、その実施形態に基づき詳細に説明する。
<再活性化触媒系の製造方法>
本発明による再活性化触媒系の製造方法は、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造し、反応液からエステル化合物を分離した後に回収される、回収触媒系を再活性化して再活性化触媒系を得る工程を有し、上記工程が上記回収触媒系を無機過酸化剤又は空気といった安価な酸化剤で処理することを含むことを特徴とする。
ここで、用語「回収触媒系」は、広義では、上記触媒系の存在下、上記エステル化合物の製造を実施した時に、反応液から目的とするエステル化合物を分離した後に得られる残渣を意味する。通常、上記分離後に得られる残渣には、触媒系の他に、未反応の原料及び溶媒などの成分が含まれる場合もあるが、残渣の主成分が触媒系であることを意図している。そのため、用語「回収触媒系」は、好ましくは、反応液からエステル化合物を分離する過程で、未反応の原料及び溶媒などが除かれた状態で得た、触媒系を主成分とする残渣を意味する。また、「回収触媒系」(以後、「触媒系残渣」と称する場合もある)は、新規で調製した触媒系を使用した反応後に回収した触媒系の残渣のみならず、再活性化触媒系を使用した反応後に回収して得た触媒系の残渣であってよい。
上記回収触媒系には、触媒系を構成するルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩が含まれているため、回収触媒系をそのまま再利用することもできる。しかし、回収触媒系は、使用後の触媒系であるため、少なくともルテニウム化合物の一部が失活した状態にある。そのため、それらを再利用して効率良く反応を実施することは困難である。これに対し、本発明によれば、無機過酸化剤又は空気といった安価な酸化剤を用いて上記回収触媒系を再活性化することで、使用済みの触媒系を再利用した場合であっても、効率よく反応を実施することが可能となる。
ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下、不飽和有機化合物とギ酸エステルとを反応させると、その反応過程において、ルテニウム金属は、系内でギ酸メチルが分解することによって生じるカルボニル(−C≡O)の配位を受け、カルボニル配位子(-C≡O)が過剰に配位した状態となる。そして、カルボニル配位子(-C≡O)が過剰に配位したルテニウム金属は、空軌道が埋まり、クラスター化することで、本来、活性化したいギ酸メチルの炭素−水素結合やオレフィンからの配位を受けることが出来ず、触媒活性を失うことになる。そのため、回収触媒系を再活性化するためには、ルテニウム金属に過剰に配位したカルボニル配位子を脱炭酸によって脱離及び分解させる再活性化剤が必要となる。再活性化剤として酸化剤を使用した場合、脱炭酸を促すことで、ルテニウム金属に過剰に配位したカルボニル配位子(-C≡O)を分解することが可能であると考えられる。特に、酸化剤の中でも、無機過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過塩素酸ターシャリーブチル等の亜塩素酸類、過ヨウ素酸等の過ハロゲン酸、及び過酸化水素などの過酸化剤は、分子の極性が極めて高く、また自身も容易に分解可能であり、カルボニルとの配位能力が高いことから、有効な再活性化剤となり得ると考えられる。しかし、酸化力が強い化合物は、爆発などの危険を伴う場合があるため、反応が安全に進行するような条件設定、及び管理が必要となるため現実的ではない。
一方、無機過酸化物及び空気は、上述の過酸化物と比較して酸化力は弱いが、触媒残渣に対する酸化剤としては有効であり、安価で、かつ取扱いが容易であるという利点を有する。特に限定するものではないが、上記無機過酸化物の一例として、過炭酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過酸化マグネシウム、過ホウ素酸ナトリウム、及び過レニウム酸ナトリウムが挙げられ、これら化合物を単独で使用しても、複数組み合わせて使用してもよい。なかでも、過炭酸ナトリウムは弱酸性であり、極めて安定な化合物である点で好ましい。過炭酸ナトリウムは、消防法等の規制がないため、工場等での実用化も容易である。
また、過炭酸ナトリウム又は空気を酸化剤として使用した場合、エステル化合物の製造において、エステル化反応に悪影響を及ぼさない。そのため、過炭酸ナトリウム又は空気で処理した触媒系をさらに精製することなく、そのまま再活性化された触媒系として使用することができる。そのため、本発明の一実施形態において、再活性化された触媒系は過炭酸ナトリウム又は空気といった酸化剤を含んでもよい。そのような再活性化触媒系を用いてエステル化合物を製造した場合、エステル化合物との分離が容易である点でも、酸化剤として過炭酸ナトリウム又は空気を使用する利点がある。このように、回収触媒に対する酸化剤として過炭酸ナトリウム又は空気を使用することによって、様々な利点が得られる。
本発明において、回収触媒系の再活性化のために回収触媒系に添加する無機過酸化剤の量は、特に限定されるものではない。しかし、エステル化合物の製造において、反応後に回収される回収触媒系は、少なくともルテニウム化合物の一部が失活した状態にあるため、回収触媒系中のルテニウム金属の含有量を基準として、酸化剤の使用量を調整することが望ましい。本発明の一実施形態において、無機過酸化剤の添加量は、上記回収触媒系におけるルテニウム金属のモル数に対して、3〜12モル当量の範囲であることが好ましく、3〜10モル当量であることがより好ましい。なお、上記回収触媒系中のルテニウム金属のモル数は、ICP発光分光分析による定量分析によって決定することができる。
無機過酸化剤の添加量を上記範囲内に調整することによって、回収触媒系の再活性化を効率よく実施することが容易となる。無機過酸化剤の添加量が少ない場合、エステル化合物の収率が低下する傾向がある。一方、過炭酸ナトリウムの添加量が多すぎるとエステル化合物の収率が低下する傾向がある。これは、理論によって拘束するものではないが、過炭酸ナトリウムの添加量が少なすぎると、回収触媒系の酸化が不十分で、触媒再活性が十分に進行しないことが考えられる。一方、添加量が多すぎると、回収触媒系への酸化が過剰に進行してしまい、触媒系の一部にルテニウム化合物の中心原子であるルテニウム金属から配位子が解離した状態のルテニウム化合物が生じ、そのことによって触媒活性を発揮しない可能性が考えられる。
本発明において、回収触媒系の再活性化のために空気を使用する場合、回収触媒系に空気を直接導入できれば、いかなる方法を適用してもよい。例えば、一般的に工場で導入している気体ライン(ガスライン)を使用し、ラインと反応容器との間で流入圧力を調整した後に、反応容器に空気を流入させる方法を適用することができる。別法として、一般的に販売されている空気ボンベを使用してもよい。空気の導入量は、特に限定されない。実際のところ、空気酸化によって触媒の再活性化を行う場合、その再活性化効率は空気の流量に依存しないことが、本発明者らの検討によって分かっている。より詳細には、反応容器を大気中に開放した状態でバブリングを行っただけの状態でも効果が得られ、また反応容器を大気中に開放した状態で、通常の加熱及び攪拌反応を実施した場合でも多少の効果が得られる。上記回収触媒系におけるルテニウム金属のモル数に対して、空気の導入量を一定量以上とすることが望ましいと思われるが、実際のところ、ルテニウム金属に対して大過剰量となる空気が反応系内に混入しても、空気が反応系に悪影響を及ぼすことはない。そのため、本発明の一実施形態では、触媒再活性化の効率を挙げるために、ルテニウム金属に対して、大過剰量の空気を導入することが好ましい。
後述の実施例に見られるように、回収触媒系におけるルテニウム金属のモル数に対して、過炭酸ナトリウム等の無機過酸化剤の使用量が一定範囲を超えると、触媒再活性化の効率が低下する傾向がみられる。ルテニウム金属に対して無機過酸化剤が過剰に存在すると、ルテニウム金属への酸化が過剰に進行する可能性がある。そのため、触媒系の一部にルテニウム化合物の中心原子であるルテニウム金属から配位子が解離した状態のルテニウム化合物が生じる可能性がある。また、無機過酸化物が、ルテニウム以外の部位、すなわち、系内のコバルト配位子やアンモニウム塩(テトラアンモニウムクロリド)と反応し、コバルトの配位子を脱離させたり、塩を分解させたりする可能性がある。一方、酸化剤として空気を使用する場合、過剰量の空気を導入しても、何ら不具合が生じないことからすると、空気はルテニウムに配位している過剰なカルボニル基を脱離させるだけで、触媒系における他の成分と反応することはないと推測される。そのため、酸化剤の量的な調整が不要である点で、空気は好適な酸化剤となる。
本発明において「回収触媒系の再活性化」は、回収触媒系と無機過酸化剤又は空気といった酸化剤を接触させることによって達成される。例えば、回収触媒系に酸化剤を加えて混合することによって実施することができる。上記混合を行う時、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。上記酸化剤を使用して処理を行なう際の温度は、20℃〜還流温度が好ましく、40℃〜還流温度がより好ましく、50℃〜還流温度が特に好ましい。処理時の温度を20℃以上にすることで効率良く、また再生速度の低下なく、触媒を再生することが容易となる。一方、還流温度より高い温度を避けることによって、耐圧容器等の特殊な器具を使用とせずに、容易に触媒を再活性化することができる。
回収触媒系の再活性化の進行は、再生処理前後の触媒系の錯体分子量を比較することで確認することができる。分子量の測定方法は特に制限はなく、金属原子の分子量が測定できればよい。例えば、ESI−MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)によって金属錯体の分子量を測定することができる。再活性化前は、カルボニル配位子が配位したルテニウムが複数縮合してクラスター化した状態にあるため、分子量は大きい。一方、再活性化後は、再活性化剤によってカルボニル配位子が分解され、ルテニウム錯体が単核化されるため、分子量は小さくなる。クラスター化による分子量の増大は、反応条件等によって変動する。例えば、後述の実施例に見られるエステル化反応の場合、反応後に回収される触媒系(再活性化前の回収触媒系)におけるルテニウム錯体分子量は500〜800g/molである。これに対し、再活性化後は、ルテニウム錯体がジクロロジカルボニルルテニウム([Ru(CO(Cl)])となり、その分子量は197g/molとなる。このように錯体分子量の変化によって、再活性化の進行を確認することができる。特に限定するものではないが、本発明の一実施形態では、回収触媒系におけるルテニウムのモル数が0.05ミリモルとなるスケールに対し、80℃の加熱条件下、4時間程度の処理時間で回収触媒系の再活性化を概ね完結することができる。
本発明の一実施形態では、酸化剤を用いた処理時に、ハロゲン化合物を加えることが好ましい。酸化剤又は空気とハロゲン化合物とを併用することによって、触媒の再活性化の効率をより高めることができる。理論によって拘束するものではないが、回収触媒系の再活性化において、酸化剤又は空気とハロゲン化合物とを併用した場合、酸化剤又は空気によって酸化されたルテニウム成分にハロゲンが配位し、触媒活性を有するルテニウムが安定化するためであると推測される。
本発明で使用するハロゲン化合物としては、特に制限はなく、例えば、ハロゲン化メチル、ジハロゲンメタン、ジハロゲンエタン、トリハロゲンメタン、テトラハロゲン炭素、ハロゲン化プロパン、ハロゲン化ブタン、ハロゲン化ベンゼン等の有機ハロゲン化合物が挙げられる。特に限定するものではないが、1−クロロブタンを含むハロゲン化ブタンは、取扱い性に優れ、安価である点で好ましい。また、上記ハロゲン化合物は、塩化物イオン等のハロゲンイオンと、カチオンとから構成されるハロゲン化物塩であってもよく、上記カチオンは、無機物イオン及び有機物イオンのいずれであってもよい。ハロゲン化物塩の具体例としては、後述のエステル化合物の製造方法に関して例示するハロゲン化物塩と同じであってよい。
本発明では、上述のハロゲン化合物を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。特に限定するものではないが、酸化剤又は空気と併用するハロゲン化合物の一例として、1−クロロブタン等のハロゲン化ブタン、又はテトラエチルアンモニウムクロリド、又はブチルメチルピロリジニウムクロリド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。エステル化合物の製造時に使用した触媒系中のハロゲン化物塩は、エステル化反応時、及び反応後に反応液からエステル化合物を回収する時の加熱によって分解する傾向がある。そのため、触媒系中のハロゲン化物塩を補充する観点から、一実施形態として、過酸化物と、第四級アンモニウム塩を含むハロゲン化合物とを併用することが好ましい。一実施形態では、過酸化物と、テトラエチルアンモニウムクロリドとを併用することによって、触媒系の回収と、回収触媒系の再活性化を繰り返し実施した場合にも、効率よく再活性化触媒を得ることが可能である。
本発明で使用するハロゲン化合物の量は、例えば、回収触媒系中のルテニウム金属に対し、0.5〜50モル当量であることが好ましく、1〜30モル当量であることがより好ましく、2〜20モル当量であることがとくに好ましい。ハロゲン化合物の使用量が0.5モル当量未満の場合、触媒の再生率が低下する傾向があり、50モル当量を超えても特に利点はない。なお、上記回収触媒系中のルテニウム金属のモル数は、ICP発光分光分析による定量分析によって決定することができる。
<エステル化合物の製造方法>
本発明によるエステル化合物の製造方法は、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する方法において、上記触媒系として、先に記載した本発明による再活性化触媒系の製造方法によって得られた再活性化触媒系を使用することを特徴とする。
上記エステル化合物の製造方法の一実施形態は、
(a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(b)上記工程(a)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収することによって、回収触媒系を得る工程と、
(c)上記回収触媒系を、先に記載した再活性化触媒系の製造方法に従い再活性化することによって、再活性化触媒系を得る工程と、
(d)上記工程(c)によって得られた再活性化触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(e)上記工程(d)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記再活性化触媒系を回収することによって、回収触媒系を得る工程と、を含む製造方法に関する。
以下、本発明によるエステル化合物の製造方法について、工程に沿って詳細に説明する。
<工程(a)及び(d)>
工程(a)及び工程(d)は、エステル化合物を合成する反応工程に関する。反応は、反応装置内で、触媒系の存在下、原料となる化合物を混合することによって達成される。これらの工程では、上記反応後に、目的とするエステル化合物と、触媒系とを含む反応液が得られる。反応時に使用する原料及び触媒系等の詳細は以下のとおりである。
原料:
(不飽和有機化合物)
本発明において原料として使用可能な不飽和有機化合物は、分子内に1以上の不飽和炭素結合を有する化合物であればよく、特に制限されない。すなわち、不飽和有機化合物は、脂肪族鎖状不飽和化合物、脂肪族環状不飽和化合物、及び芳香族化合物等を含む各種化合物であってよい。ここで、不飽和炭素結合は、分子鎖末端に存在しても、又は分子鎖内部に存在してもよい。また、分子内に複数の不飽和炭素結合を有する化合物であってもよい。分子内に複数の不飽和炭素結合を有する化合物を原料として使用することによって、分子内に複数のエステル基を持つ化合物を製造することが可能である。
上記脂肪族鎖状不飽和化合物の具体例として、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、ヘキサントリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン、並びにこれらの異性体及び誘導体が挙げられる。
上記脂肪族環状不飽和化合物の具体例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、並びにこれらの異性体及び誘導体が挙げられる。
上記芳香族化合物は、芳香族鎖状不飽和化合物及び芳香族環状不飽和化合物を含む。上記芳香族鎖状不飽和化合物の具体例として、スチレン、スチルベン、トリフェニルエチレン、テトラフェニルエチレン及びその誘導体が挙げられる。上記芳香族環状不飽和化合物の具体例として、インデン、ジヒドロナフタレン、インドール及びその誘導体が挙げられる。
上述の不飽和有機化合物は、分子内の水素原子が、アルキル基、環状脂肪族基、芳香族基、複素環式基、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン、及び含リン置換基からなる群より選ばれる1種以上の官能基で置換されていてもよい。特に限定するものではないが、一実施形態として、ノルボルネンモノカルボン酸メチルを使用することができる。
(ギ酸エステル)
本発明において原料として使用可能なギ酸エステルは、特に制限はされない。例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、ギ酸アリル、ギ酸ビニル、ギ酸ベンジル等から適宜選択して使用することができる。コスト及び反応性の観点から、ギ酸メチルが好適である。
(原料の割合)
反応に用いる不飽和有機化合物とギ酸エステルとの割合は、仕込み量で、不飽和有機化合物に対して、ギ酸エステルの量を2〜100モル当量とすることが好ましく、2〜50モル当量とすることがより好ましい。ギ酸エステルの上記仕込み量を2モル当量以上とすることで、副反応によって収率が低下することを抑制することが容易となる。また、上記仕込み量が100モル当量を超えると特に効果は変化しないため、100モル当量以下にすることによって生産性の低下を抑制することが容易となる。
触媒系:
本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系を使用する。後述する実施例によって明らかにされるように、本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩との特定の組み合わせによって、所期の目的が達成可能となる。以下、触媒系を構成する各種化合物について説明する。
(ルテニウム化合物)
本発明で使用可能なルテニウム化合物は、ルテニウムを含む化合物であればよく、特に制限はない。例えば、ルテニウム原子を中心として、周囲に配位子が結合した構造を有するルテニウム錯体化合物が挙げられる。本発明の一実施形態では、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つ、ルテニウム錯体化合物が好ましい。そのようなルテニウム錯体化合物の具体例として、[RuCl(CO)、[RuCl(CO)、等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体、並びに[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)11Cl]及び[Ru(CO)13Cl]等をカウンタアニオンとして有するルテニウムカルボニルハロゲン錯塩等の各種化合物が挙げられる。上記カウンタアニオンを有する錯塩は、カウンタカチオンとして、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の金属イオンを有するものであってよい。例示した化合物の中でも、反応率向上の観点から、[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)Cl等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体がより好ましい。
本発明で使用するルテニウム化合物は、当技術分野において周知の方法に従って製造することもできるが、市販品として入手することもできる。また、[Ru(CO)Clは、M.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.(非特許文献5)に記載された方法に従って製造することができる。
さらに、上記で例示したルテニウム化合物の他に、ルテニウム化合物の例として、RuCl、Ru(CO)12、RuCl(C12)、Ru(CO)(C)、Ru(CO)(C12)、及びRu(C10)(C12)等が挙げられる。これらのルテニウム化合物は、上記で例示したルテニウム化合物の前駆体化合物として使用することも可能であり、本発明におけるエステル化の反応前又は反応中に、上記ルテニウム化合物を調製して、反応系に導入してもよい。
上記ルテニウム化合物の使用量は、原料として使用する不飽和有機化合物に対して、好ましくは1/10000〜1モル当量、より好ましくは1/1000〜1/50モル当量である。製造コストを考えると、上記ルテニウム化合物の使用量は、可能な限り、少量にすることが好ましい。しかし、上記ルテニウムの使用量が1/10000モル当量未満となると、エステル化反応の速度が極端に遅くなる傾向にある。
(コバルト化合物)
本発明で使用可能なコバルト化合物は、コバルトを含む化合物であればよく、特に制限はない。好適な化合物の具体例として、Co(CO)、HCo(CO)、Co(CO)12等のカルボニル配位子を持つコバルト化合物、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸コバルト等のカルボン酸化合物を配位子に持つコバルト化合物、及びリン酸コバルトが挙げられる。中でも、反応率向上の観点から、カルボニル配位子を持つコバルト化合物が好ましい。
上記コバルト化合物の使用量は、上記ルテニウム化合物に対して、1/100〜10モル当量、好ましくは1/10〜5モル当量である。上記ルテニウム化合物に対する上記コバルト化合物の比率が1/100モル当量より低くても、又は10モル当量より高くても、エステル化合物の生成量は著しく低下する傾向にある。本発明では、コバルト化合物を単独で用いても、複数組合せて用いてもよい。
(ハロゲン化物塩)
本発明で使用可能なハロゲン化物塩は、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン等のハロゲンイオンと、カチオンとから構成される化合物であればよく、特に限定されない。但し、本発明におけるハロゲン化物塩には、ルテニウム及び/又はコバルトを含む塩は含まれないものとする。上記カチオンは、無機物イオン及び有機物イオンのいずれであってもよい。また、上記ハロゲン化物塩は、分子内に1以上のハロゲンイオンを含んでもよい。
ハロゲン化物塩を構成する無機物イオンは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選択される1種の金属イオンであってよい。具体例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウムが挙げられる。
また、有機物イオンは、有機化合物から誘導される1価以上の有機基であってよい。一例として、アンモニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、ピリジウム、イミダゾリウム及びイミニウムが挙げられ、これらイオンの水素原子はアルキル及びアリール等の炭化水素基によって置換されていてもよい。特に限定するものではないが、好適な有機物イオンの具体例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムが挙げられる。なかでも、反応率向上の観点から、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド等の第4級アンモニウム塩がより好ましい。
本発明で使用するハロゲン化物塩は、固体の塩である必要はなく、室温付近又は100℃以下の温度領域で液体となる、ハロゲン化物イオンを含むイオン性液体を用いてもよい。このようなイオン性液体に用いられるカチオンの具体例として、1−エチル3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピジリニウム、1−ヘキシルピリジニウム、ブチルメチルピロリジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ブチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ペンチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘキシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘプチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−オクチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機物イオンが挙げられる。本発明では、上述のハロゲン化物塩を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
上述のハロゲン化物塩のうち、好適なハロゲン化物塩は、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩であり、カチオンが有機物イオンである化合物である。また、反応率向上の観点から、上記ハロゲン化物塩は、第4級アンモニウム塩であることが好ましい。上記第4級アンモニウム塩は、窒素原子が有する置換基同士が結合し環状構造を形成していても、窒素原子に二重結合を介して置換基が結合していてもよい。特に限定するものではないが、本発明において好適なハロゲン化物塩の具体例として、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリドが挙げられる。但し、本発明におけるハロゲン化物塩には、ルテニウム及び/又はコバルトを含む塩は含まれないものとする。
ハロゲン化物塩の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、反応速度を効果的に高めることができる。一方、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。本発明では、ハロゲン化物塩を単独で使用しても、複数組合せて用いてもよい。
本発明による製造方法では、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む特定の触媒系の使用によって、所望とする反応を促進することが可能である。本発明の一実施形態では、必要に応じて、上記触媒系を使用した反応時、塩基性化合物、フェノール化合物、及び有機ハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を追加してもよい。反応時に、これら各種化合物を反応系中に追加することによって、反応促進の効果をより高めることが可能である。以下、上記各種化合物について説明する。
(塩基性化合物)
本発明において、塩基性化合物による反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において使用可能な塩基性化合物は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。塩基性の無機化合物の具体例として、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の各種金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物塩、アルコキシドが挙げられる。塩基性の有機化合物の具体例として、一級アミン化合物、二級アミン化合物、三級アミン化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、キノリン化合物が挙げられる。上述の塩基性化合物のなかでも、反応促進効果の観点から、三級アミン化合物が好適である。本発明において好適な三級アミン化合物の具体例として、トリアルキルアミン、N−アルキルピロリジン、N−アルキルピペリジン、キヌクリジン、及びトリエチレンジアミンが挙げられる。
塩基性化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜200モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
(フェノール化合物)
本発明において、フェノール化合物を添加することによる反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において好適なフェノール化合物の具体例として、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、メトキシフェノール、フェノキシフェノール、クロルフェノール、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキノン及びカテコールが挙げられる。
フェノール化合物の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
(有機ハロゲン化合物)
本発明において、有機ハロゲン化合物を添加することによる反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において好適な有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン化メチル、ジハロゲンメタン、ジハロゲンエタン、トリハロゲンメタン、テトラハロゲン炭素、ハロゲン化ベンゼン等が挙げられる。
有機ハロゲン化合物の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、促進効果の発現が顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
(溶媒)
本発明の製造方法において、不飽和有機化合物とギ酸エステルとの反応は、特に溶媒を用いることなく進行させることができる。しかし、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。
本発明において使用可能な溶媒は、原料として使用する化合物を溶解できればよく、特に限定はされない。本発明において好適に使用できる溶媒の具体例として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、γ-バレロラクトン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
特に限定するものではないが、本発明の好ましい一実施形態では、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素有機溶媒中で反応を行うことが好ましい。含窒素有機溶媒は、上記化合物に限らず、分子内に窒素を含んでいればよく、特に制限はない。環状構造を有するものであっても、鎖状構造を有するものであってもよく、また、分子内に他の官能基を含んでいてもよい。含窒素有機溶媒を使用した場合、不飽和有機化合物に対して必要となるギ酸エステルの使用量を低減した場合であっても、良好な収率で化合物を製造することが可能である。具体的には、通常、不飽和有機化合物に対して8当量のギ酸エステルを使用するが、2〜4当量(従来使用量の1/2〜1/4の量)に抑えた場合でも、同程度の収率で所望とする化合物を得ることができる。含窒素有機溶媒の添加量を、例えば、不飽和有機化合物に対して0.6〜1.0当量とした場合、ギ酸エステルの使用量を低減しても、エステル化合物の生成量を低下することなく、また、反応速度を効果的に高めることが容易である。
(反応温度)
本発明の製造方法において、不飽和有機化合物とギ酸エステルとの反応は、80℃〜200℃の温度範囲で実施することが好ましい。上記反応は、100℃〜160℃の温度範囲で実施することがより好ましい。80℃以上の温度で反応を実施することによって、反応速度が速まり、効率良く反応を進めることができる。その一方で、反応温度を200℃以下に制御することによって、原料として使用するギ酸エステルの分解を抑制することができる。ギ酸エステルが分解すると、不飽和有機化合物に対するエステル基の付加が達成されなくなる。さらに、反応温度が高すぎると、原料として使用する化合物の分解、又は開環による重合が生じ、収率が低下する可能性があるため望ましくない。反応温度が、原料として使用する不飽和有機化合物又はギ酸エステルのいずれかの沸点を超える場合には、耐圧容器内で反応を行う必要がある。反応の終結は、ガスクロマトグラフ、NMR等の周知の分析技術を用いて確認することができる。
<工程(b)及び(e)>
工程(b)及び工程(e)は、先の工程で得た反応液からエステル化合物を分離し、使用後の触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程に関する。反応液からエステル化合物を分離する方法は、特に限定されず、蒸留精製、抽出、膜分離といった当技術分野で公知の方法を使用して実施することができる。特に限定するものではないが、効率面から、上記分離は、蒸留によって実施することが好ましい。反応液を蒸留精製した場合、純度の高いエステル化合物が容易に得られる。その一方で、未反応の原料及び溶媒等を含まない蒸留残渣として、回収触媒系を容易に得ることができる。
上記蒸留は、減圧下、100〜250℃で実施することが好ましく、120〜220℃で実施することがより好ましく、130〜200で実施することが特に好ましい。蒸留温度を100℃以上にすることによって、蒸留時間を短縮化することが容易となる。一方、蒸留温度を250℃以下にすることによって、回収触媒系中の触媒系化合物の分解を抑制することが容易となる。
減圧条件に制限はない。但し、触媒系化合物の分解が起こらないように、上記温度範囲で蒸留が実施できるように、適切に調整することが望ましい。
<工程(c)>
工程(c)は、反応液から回収した回収触媒系を再活性化する工程に関する。回収触媒系の再活性化は、先に記載した本発明の活性化触媒系の製造方法に従って実施される。一実施形態において、回収触媒系の再活性化は、先の工程において反応液から蒸留によってエステル化合物を回収した後に容器内に残った蒸留残渣に、直接、酸化剤又は空気と、必要に応じて溶媒とを加え、加熱及び攪拌することによって実施することができる。加熱温度及び攪拌時間を調整することによって、再活性化を効率よく進めることができる。例えば、再活性化は、30〜250℃の温度条件下で実施することができ、好ましくは、30〜150℃の温度条件化で実施することができ、より好ましくは30〜100℃の温度条件下で行うことができる。また溶媒を使用する場合は、その沸点以下の温度条件下で実施することが好ましい。特に限定するものではないが、一実施形態として、60℃の温度条件下で、4時間にわたって攪拌を続けることによって、十分な再活性化が達成できる。
本発明の一実施形態では、再活性化触媒系を使用して、エステル化合物の製造を連続的に実施することも可能である。すなわち、本発明の一実施形態は、上記工程(c)〜(e)を順次繰り返して実施する、エステル化合物の製造方法に関する。例えば、再活性化触媒系を含む容器に、エステル化合物の製造時に使用する触媒系以外の原料を加え、上述のようにエステル化合物の合成を実施して反応液を得る工程と、反応液からエステル化合物を分離し、触媒系を回収して回収触媒系を得る工程と、回収触媒系を再活性化し、再利用する工程とを順次繰り返すことによって、エステル化合物を連続的に製造することができる。
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
(参考例1)
<エステル化合物の合成及び回収>
室温下、内容積50mLのステンレス製加圧反応装置内に、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを0.05mmol、コバルト化合物として酢酸コバルトを0.05mmol、ハロゲン化物塩としてテトラエチルアンモニウムクロリドを0.5mmol加え、混合して触媒系を得た。この触媒系に、ノルボルネンモノカルボン酸メチルを10mmol、ギ酸メチルを2.5mL加え、さらに、塩基性化合物としてトリエチルアミンを2mmol、フェノール化合物として4−メトキシフェノールを0.5mmol、溶媒としてDMFを0.5mL添加した。次いで窒素ガス0.5MPaで反応装置内をパージし、120℃で8時間保持した。その後、反応装置を室温まで冷却し、放圧し、残存有機相の一部を抜き取り、ガスクロマトグラフを用いて反応混合物の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは9.9mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率99%)であった。
なお、ガスクロマトグラフの分析は、ジーエルサイエンス(株)製GC−353B型GCを使用して下記条件で実施した。
検出器:水素炎イオン検出器
カラム:ジーエルサイエンス(株)製 TC−1(60m)
キャリアガス:ヘリウム(300kP)
温度
注入口:200℃
検出器:200℃
カラム:40℃〜240℃(昇温速度:5℃/min)
次いで、上記反応液の低沸成分(ギ酸メチル、トリエチルアミン)をエバポレータで減圧下留去し、得られた濃縮液を蒸留精製することにより、所望とするエステル化合物を回収した。
<回収触媒系の触媒量の定量分析>
上記エステル化合物の回収後に残った蒸留残渣を回収し(回収触媒系)、ICP発光分光分析による定量分析を行った。その結果、蒸留残渣におけるルテニウム金属のモル数は0.05mmolであった。
(実施例1)
参考例1と同様にしてエステル化合物を製造し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系に対して、DMF0.5mLに溶解させた過炭酸ナトリウム0.15mmol、テトラエチルアンモニウムクロリドを0.50mmol加え、80℃で4時間撹拌することによって再活性化触媒系を製造した。次いで、この再活性化触媒系を使用して2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、処理後の回収触媒系(上記再活性化触媒系)に対して、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にしてエステル化反応及び分析を行った。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは8.80mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率88.0%)であった。
(実施例2)
参考例1と同様にエステル化合物を合成し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系に対して、DMF0.5mLに溶解させた過炭酸ナトリウムを0.50mmol、テトラエチルアンモニウムクロリドを0.50mmol加え、80℃で4時間撹拌することによって再活性化触媒系を製造した。次いで、この再活性化触媒系を使用して2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、処理後の回収触媒系(上記再活性化触媒系)に、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にして反応及び分析を行った。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは7.70mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率77.0%)であった。
(実施例3)
参考例1と同様にエステル化合物を合成し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系に対して、DMF0.5mLに溶解させた過炭酸ナトリウムを0.60mmol、テトラエチルアンモニウムクロリドを0.50mmol加え、80℃で4時間撹拌することによって再活性化触媒系を製造した。次いで、この再活性化触媒を使用して2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、処理後の回収触媒系(上記再活性化触媒系)に対して、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にして反応及び分析を行った。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは6.40mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率64.0%)であった。
(実施例5)
参考例1と同様にエステル化合物を合成し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系に対して、テトラエチルアンモニウムクロリドを0.50mmol加え、0.5mLのDMFに溶解させた。その後、回収触媒系の溶液に空気を50mL/minの流量で導入し、バブリングした状態で、100℃において4時間撹拌することによって再活性化触媒系を製造した。次いで、この再活性化触媒系を使用して2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、処理後の回収触媒系(上記再活性化触媒系)に対して、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にして反応及び分析を行った。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは7.60mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率76.0%)であった。
(比較例1)
参考例1と同様にエステル化合物を合成し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系を未処理のまま使用し、2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、未処理の回収触媒系に対して、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にして反応及び分析を行った。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは6.00mmol(ノルボルネンモノカルボン酸メチル基準で収率60.0%)であった。
(比較例2)
参考例1と同様にエステル化合物を合成し、回収触媒系を得た。この回収触媒系におけるルテニウムのモル数は0.05mmolであった。上記回収触媒系に対して、DMF0.5mLに溶解させた過炭酸ナトリウムを0.05mmol、テトラエチルアンモニウムクロリドを0.50mmol加え、80℃で4時間撹拌することによって再活性化触媒系を製造した。次いで、この再活性化触媒系を使用して2回目のエステル化反応を行った。具体的には、反応装置内で、処理後の回収触媒系(上記再活性化触媒系)に対して、ノルボルネンモノカルボン酸メチル10mmol、ギ酸メチル2.5mL、トリエチルアミン2mmol、及び4−メトキシフェノール0.5mmolを加え、参考例1と同様にして反応及び分析を行なった。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは3.30mmol(ノルボルネンモノジカルボン酸メチル基準で収率33.0%)であった。
実施例1〜4及び比較例1及び2の結果をまとめて表1に示す。表1から分かるように、蒸留残渣(回収触媒系)を触媒系として再利用する際に、回収触媒系を過炭酸ナトリウム又は空気で処理することによって、少なくとも一部活性が低下した回収触媒系を効率良く再活性化することができる。その結果、触媒系を構成する金属含有化合物を実質的に追加することなく、所望とするエステル化合物を効率よく、かつ連続的に製造することが可能となる。
Figure 0006460521

Claims (15)

  1. ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造した後に回収した回収触媒系を再活性化する工程を含む、再活性化触媒系の製造方法であって、
    前記工程が、前記回収触媒系と無機過酸化物又は空気とを接触させることを含み、前記無機過酸化物の添加量が前記回収触媒系におけるルテニウム金属に対して、3〜12モル当量の範囲である、製造方法。
  2. 前記無機過酸化物が、過炭酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記工程において、前記回収触媒系にさらにハロゲン化合物を加える、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ハロゲン化合物が、ハロゲン化物塩を含む、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記ハロゲン化物塩が第四級アンモニウム塩を含む、請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記触媒系における前記ルテニウム化合物が、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とをあわせ持つルテニウム錯体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記触媒系における前記コバルト化合物が、分子内にカルボニル配位子を有するコバルト錯体を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記触媒系における前記ハロゲン化物塩が、第四級アンモニウム塩を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する方法であって、
    前記触媒系として、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法で得た再活性化触媒系を使用する、製造方法。
  10. エステル化合物の製造方法であって、
    (a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
    (b)前記工程(a)によって得られた反応液から前記エステル化合物を分離し、前記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と、
    (c)前記回収触媒系を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法によって再活性化し、再活性化触媒系を得る工程と、
    (d)前記工程(c)によって得られた再活性化触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
    (e)前記工程(d)によって得られた反応液から前記エステル化合物を分離し、前記再活性化触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と
    を含む、製造方法。
  11. 前記工程(c)〜(e)を順次繰り返して実施する、請求項10に記載の製造方法。

  12. 前記工程(a)及び(d)における前記反応時に、それぞれ、塩基性化合物を加える、請求項10又は11に記載の製造方法。
  13. 前記塩基性化合物が、三級アミン化合物である、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記工程(a)及び(d)における前記反応時に、それぞれ、フェノール化合物を加える、請求項10〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 前記工程(a)及び(d)における前記反応時に、それぞれ、有機ハロゲン化合物を加える、請求項10〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
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