JP2015101568A - エステル化合物の製造方法 - Google Patents

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裕行 白井
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Kazuaki Nakada
和彰 中田
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Hiroyuki Kawakami
広幸 川上
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健一 富永
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Kazuhiko Sato
一彦 佐藤
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茂 島田
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Abstract

【課題】ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させることによって、エステル化合物を製造する方法において、反応に用いた触媒を容易かつ低コストの手法で再利用し、製造コストを低減する方法を提供すること。
【解決手段】ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収した回収触媒系を再利用して、エステル化合物を製造する方法において、上記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理するか、触媒系を追加することを特徴する製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、回収した触媒系を再利用するエステル化合物の製造方法に関する。本発明は、より詳細には、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造するために使用及び回収された触媒系を効率良く再利用するエステル化合物の製造方法に関する。
従来から、実質的に一酸化炭素を使用することなく、不飽和結合を有する有機化合物と、ギ酸化合物とを原料として使用し、上記有機化合物にエステル基が付加したエステル化合物を製造する様々な方法が知られている。
例えば、非特許文献1は、ホスフィン配位子を有するルテニウム化合物を触媒として用いて、エチレンとギ酸メチルとを、190℃の温度条件下で、18時間にわたって反応させ、エチレンにギ酸メチルが付加したプロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対して、286モル当量のプロピオン酸メチルが生成する。
非特許文献2は、カルボニル配位子と塩素配位子とを有するルテニウム化合物を触媒として用い、DMF溶媒中、エチレンとギ酸メチルとを、160℃の温度条件下で、2時間にわたって反応させ、エチレンにギ酸メチルが付加したプロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対し、345モル当量のプロピオン酸メチルが生成する。
特許文献1は、カルボニル配位子、塩素配位子およびアミン配位子からなる群から選ばれる配位子を有するルテニウム化合物と、第四級アンモニウムヨウ化物とからなる触媒系の存在下で、DMF溶媒中、エチレンとギ酸メチルとを、190℃の温度条件下で、1時間にわたって反応させ、プロピオン酸メチルを製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ルテニウム化合物に対し、1530当量のプロピオン酸メチルが生成する。
非特許文献3は、ルテニウムカルボニルクラスター化合物と第三級ホスフィン化合物とを組み合わせて触媒として用い、トルエン中で、ノルボルネンとギ酸メチルとを、170℃の温度条件下で、15時間にわたって反応させ、ノルボルネンにエステル基が付加した化合物を製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ギ酸メチルを基準として、ノルボルネンにエステル基が付加した化合物が収率22%で得られる。また、ギ酸メチルに代えてギ酸ベンジルを用いた場合には、対応するエステル化合物が収率77%で得られる。
また、非特許文献4は、ルテニウムカルボニルクラスター化合物を触媒として用い、DMF溶媒中で、1−ヘキセンとピリジン基を有するギ酸化合物とを、135℃の温度条件下で、4時間にわたって反応させ、対応するエステル化合物を製造する方法を開示している。この開示された方法によれば、ギ酸化合物を基準として、エステル化合物が収率98%で得られる。
これらの手法は、一酸化炭素等の有毒な原料を必要とせず、比較的低い圧力で反応が進行する点で優れている。しかし、基本的に160℃以上の高い反応温度を必要とし、これよりも反応温度を下げるためには、特殊な構造を持つギ酸化合物を用いる必要があった。
これに対し本発明者は、先に、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、不飽和有機化合物とギ酸エステルとを反応させた時、従来法で必要となる反応温度よりも低い温度で反応が進行し、効率良く所望とするエステル化合物が得られることを見出している(特許文献2)。
本発明者による方法によれば、実質的な量の一酸化炭素を用いることなく、不飽和有機化合物とギ酸エステルを原料として、原料有機化合物にエステル基が付加したエステル化合物を提供することが可能である。特に、本発明者による方法によれば、ギ酸エステルとして安価なギ酸メチルを用いた場合であっても、従来技術に比べて低い反応温度で、かつ効率良く、目的とするエステル化合物を提供することが可能である。
しかし、上述の方法では、反応触媒としてルテニウム等の希少金属を使用する必要がある。これら希少金属は、産出量の減少、価格の高騰などが懸念される物質であるため、上記方法は、製造コストの面で改善が望まれている。したがって、より安価な方法で金属触媒を再利用する手法の探索は、製造コストの低減や環境資源の節約に直結するため、極めて重要な課題である。
希少金属を回収し、再利用する一般的な方法として、金属触媒を含む有機廃液を焼成して地金へと変換し、再度、触媒を合成する方法が挙げられる(特許文献3)。この方法は、特に、高価な希少金属を回収できる点、また触媒を再合成するため、常に高い触媒活性を維持できる点で優れている。
特開平8−20557号公報 WO2011/013430号公報 特開2010−106326号公報
P.Isnard,B.Denise,R.P.A.Sneeden,J.M.Cognion,P.Durual,J.Organomet.Chem.,256,135(1983). N.Lugan,G.Lavigne,J.M.Soulie,S.Fabre,P.Kalck,J.Y.Saillard,J.F.Halet,Organometallics,14,1712(1995). T.Kondo,T.Okada,T.Mitsudo,Organometallics,18,4123(1999). S.Ko,Y.Na,S.Chang,J.Am.Chem.Soc.,124,750(2002). M.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.
しかしながら、地金を経て金属触媒を再生する上記方法は、その工程の都合上、コストが膨大になる。そのため、特に、有機廃液中の金属含有量が少ない場合には、金属触媒を回収するメリットが薄れてしまうことになる。そこで、金属触媒について実質的に必要となるコストを大幅に低減する方法が望まれている。
上述の状況に鑑み、本発明は、焼成による金属の回収、及び触媒の再合成という過程を経ずに、反応液から回収される使用済の触媒系を直接再利用することで、金属触媒の実質的なコストを大幅に低減する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を解決すべく鋭意研究した結果、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させることを特徴とするエステル化合物の製造方法において、反応液から目的とするエステル化合物を分離した後に回収される回収触媒系を効率良く再利用することによって、目的とするエステル化合物が安価で製造できることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明の特徴は、以下記載の事項に関する。
(1)エステル化合物の製造方法であって、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収した回収触媒系を使用して、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させる工程を有する、製造方法。
(2)上記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理し再活性化した後に使用する、上記(1)に記載の製造方法。
(3)エステル化合物の製造方法であって、
(a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(b)上記工程(a)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と、
(c)上記回収触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と
を有する、製造方法。
(4)上記工程(c)において、上記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理して再活性化した後に上記反応を実施する、上記(3)に記載の製造方法。
(5)上記工程(c)において、上記回収触媒系に、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系を追加する、上記(3)又は(4)に記載の製造方法。
(6)さらに、(d)上記(c)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程を有し、上記回収触媒系を使用して、上記工程(c)と上記工程(d)とを繰り返し実施する、上記(4)又は(5)に記載の製造方法。
(7)上記触媒系において、上記ルテニウム化合物が、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つルテニウム錯体を含む、上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載の製造方法。
(8)上記触媒系において、上記コバルト化合物が、分子内にカルボニル配位子を有するコバルト錯体を含む、上記(3)〜(7)のいずれか1つに記載の製造方法。
(9)上記触媒系において、上記ハロゲン化物塩が、第四級アンモニウム塩を含む、上記(3)〜(8)のいずれか1つに記載の製造方法。
(10)上記工程(a)及び上記工程(c)における上記反応時に、それぞれ、塩基性化合物を加える、上記(3)〜(9)のいずれか1つに記載の製造方法。
(11)上記塩基性化合物が、第三級アミン化合物を含む、上記(10)に記載の製造方法。
(12)上記工程(a)及び上記工程(c)における上記反応時に、フェノール化合物を加える、上記(3)〜(11)のいずれか1つに記載の製造方法。
(13)上記工程(a)及び上記工程(c)における上記反応時に、有機ハロゲン化合物を加える、上記(3)〜(12)のいずれか1つに記載の製造方法。
(14)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収された回収触媒系を再活性化する工程を有する再活性化触媒系の製造方法であって、上記再活性化する工程が、上記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理することを含む、製造方法。
本発明によれば、反応液からエステル化合物を分離した後に得られる回収触媒系を効率良く再利用することができる。特に、回収触媒系を再活性化する方法では、上記回収触媒系を直接処理し、そのまま使用することができる。すなわち、本発明によれば、回収触媒系の再活性化において、触媒の活性中心である希少金属を焼成し、それら金属を地金に変換した後に回収する必要がない。また、複数種の触媒が混在する触媒系の残渣から、それぞれの成分ごとに単離する必要もない。そのため、本発明によれば、特殊な装置を使用することなく、回収触媒系を効率良く利用して、目的とするエステル化合物を効率良く、かつ低コストで製造することができる。
以下、本発明について、その実施形態に基づき詳細に説明する。本発明によるエステル化合物の製造方法の一実施形態は、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収した回収触媒系を使用して、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させる工程を含むことを特徴とする。
ここで、用語「回収触媒系」は、広義では、上記触媒系の存在下、上記エステル化合物の製造を実施した時に、反応液から目的とするエステル化合物を分離した後に得られる残渣を意味する。通常、上記分離後に得られる残渣には、触媒系の他に、未反応の原料及び溶媒などの成分が含まれる場合もあるが、残渣の主成分が触媒系であることを意図している。そのため、用語「回収触媒系」は、好ましくは、反応液からエステル化合物を分離する過程で、未反応の原料及び溶媒などが除かれた状態で得た、触媒系を主成分とする残渣を意味する。また、「回収触媒系」(以後、「触媒系の残渣」と称する場合もある)は、新規で調製した触媒系を使用した反応後に回収した触媒系の残渣のみならず、再活性化触媒系を使用した反応後に回収して得た触媒系の残渣であってよい。
上記回収触媒系には、触媒系を構成するルテニウム化合物、コバルト化合物、ハロゲン化物塩が含まれているため、回収触媒系をそのまま再利用することもできる。しかし、回収触媒系は、使用後の触媒系であるため、少なくともルテニウム化合物の一部が失活した状態にある。そのため、回収触媒系を効率良く再利用するためには、回収触媒系を再活性化させた後に使用することが好ましい。本発明の一実施形態では、回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理して、再活性化することを特徴とする。また、本発明の別の実施形態として、回収触媒系を再利用する時に、同様の触媒系を追加してもよい。このように、回収触媒系を効率良く再利用することによって、エステル化合物を簡便かつ低コストで連続的に製造することが可能となる。
一実施形態において、本発明によるエステル化合物の製造方法は、
(a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
(b)上記工程(a)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と、
(c)上記回収触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程とを有する。
別の実施形態において、本発明によるエステル化合物の製造方法は、上記(a)〜(c)の工程に加えて、さらに(d)上記(c)によって得られた反応液から上記エステル化合物を分離し、上記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程を有する。上記工程(d)で得た回収触媒系を使用して、上記工程(c)と上記工程(d)とを繰り返し実施することによって、回収触媒系を繰り返し使用してエステル化合物を連続的に製造することが可能となる。
以下、本発明によるエステル化合物の製造方法について、工程に沿って詳細に説明する。
<工程(a)及び(d)>
工程(a)及び工程(d)は、エステル化合物を合成する反応工程に関する。反応は、反応装置内で、触媒系の存在下、原料となる化合物を混合することによって達成される。これらの工程では、上記反応後に、目的とするエステル化合物と、触媒系とを含む反応液が得られる。反応時に使用する原料及び触媒系等の詳細は以下のとおりである。
原料:
(不飽和有機化合物)
本発明において原料として使用可能な不飽和有機化合物は、分子内に1以上の不飽和炭素結合を有する化合物であればよく、特に制限されない。すなわち、不飽和有機化合物は、脂肪族鎖状不飽和化合物、脂肪族環状不飽和化合物、および芳香族化合物等を含む各種化合物であってよい。ここで、不飽和炭素結合は、分子鎖末端に存在しても、又は分子鎖内部に存在してもよい。また、分子内に複数の不飽和炭素結合を有する化合物であってもよい。分子内に複数の不飽和炭素結合を有する化合物を原料として使用することによって、分子内に複数のエステル基を持つ化合物を製造することが可能である。
上記脂肪族鎖状不飽和化合物の具体例として、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、ヘキサントリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン、並びにこれらの異性体および誘導体が挙げられる。
上記脂肪族環状不飽和化合物の具体例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、並びにこれらの異性体および誘導体が挙げられる。
上記芳香族化合物は、芳香族鎖状不飽和化合物および芳香族環状不飽和化合物を含む。上記芳香族鎖状不飽和化合物の具体例として、スチレン、スチルベン、トリフェニルエチレン、テトラフェニルエチレンおよびその誘導体が挙げられる。上記芳香族環状不飽和化合物の具体例として、インデン、ジヒドロナフタレン、インドールおよびその誘導体が挙げられる。
上述の不飽和有機化合物は、分子内の水素原子が、アルキル基、環状脂肪族基、芳香族基、複素環式基、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン、および含リン置換基からなる群より選ばれる1種以上の官能基で置換されていてもよい。
(ギ酸エステル)
本発明において原料として使用可能なギ酸エステルは、特に制限はされない。例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、ギ酸アリル、ギ酸ビニル、ギ酸ベンジル等から適宜選択して使用することができる。コスト及び反応性の観点から、ギ酸メチルが好適である。
(原料の割合)
反応に用いる不飽和有機化合物とギ酸エステルとの割合は、仕込み量で、不飽和有機化合物に対し、ギ酸エステルの量を2〜100モル当量とすることが好ましく、4〜50モル当量とすることがより好ましい。ギ酸エステルの上記仕込み量を2モル当量以上とすることで、副反応によって収率が低下することを抑制することが容易となる。また、上記仕込み量が100モルを超えると特に効果は変化しないため、100モル当量以下にすることによって生産性の低下を抑制することが容易となる。
触媒系:
本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系を使用する。後述する実施例によって明らかにされるように、本発明では、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩との特定の組み合わせによって、所期の目的が達成可能となる。以下、触媒系を構成する各種化合物について説明する。
(ルテニウム化合物)
本発明で使用可能なルテニウム化合物は、ルテニウムを含む化合物であればよく、特に制限はない。例えば、ルテニウム原子を中心として、周囲に配位子が結合した構造を有するルテニウム錯体化合物が挙げられる。本発明の一実施形態では、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つ、ルテニウム錯体化合物が好ましい。そのようなルテニウム錯体化合物の具体例として、[RuCl(CO)、[RuCl(CO)、等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体、並びに[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)11Cl]および[Ru(CO)13Cl]等をカウンタアニオンとして有するルテニウムカルボニルハロゲン錯塩等の各種化合物が挙げられる。上記カウンタアニオンを有する錯塩は、カウンタカチオンとして、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属等の金属イオンを有するものであってよい。例示した化合物の中でも、反応率向上の観点から、[Ru(CO)Cl、[Ru(CO)Cl等のルテニウムカルボニルハロゲン錯体がより好ましい。
本発明で使用するルテニウム化合物は、当技術分野において周知の方法に従って製造することもできるが、市販品として入手することもできる。また、[Ru(CO)Clは、M.J.Cleare,W.P.Griffith,J.Chem.Soc.(A),1969,372.に記載された方法に従って製造することができる。
さらに、上記で例示したルテニウム化合物の他に、ルテニウム化合物の例として、RuCl、Ru(CO)12、RuCl(C12)、Ru(CO)(C)、Ru(CO)(C12)、およびRu(C10)(C12)等が挙げられる。これらのルテニウム化合物は、上記で例示したルテニウム化合物の前駆体化合物として使用することも可能であり、本発明におけるエステル化の反応前又は反応中に、上記ルテニウム化合物を調製して、反応系に導入してもよい。
上記ルテニウム化合物の使用量は、原料として使用する不飽和有機化合物に対して、好ましくは1/10000〜1モル当量、より好ましくは1/1000〜1/50モル当量である。製造コストを考えると、上記ルテニウム化合物の使用量は、可能な限り、少量にすることが好ましい。しかし、上記ルテニウムの使用量が1/10000モル当量未満となると、エステル化反応の速度が極端に遅くなる傾向にある。
(コバルト化合物)
本発明で使用可能なコバルト化合物は、コバルトを含む化合物であればよく、特に制限はない。好適な化合物の具体例として、Co(CO)、HCo(CO)、Co(CO)12等のカルボニル配位子を持つコバルト化合物、酢酸コバルト、プロピオン酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸コバルト等のカルボン酸化合物を配位子に持つコバルト化合物、およびリン酸コバルトが挙げられる。中でも、反応率向上の観点から、カルボニル配位子を持つコバルト化合物が好ましい。
上記コバルト化合物の使用量は、上記ルテニウム化合物に対して、1/100〜10モル当量、好ましくは1/10〜5モル当量である。上記ルテニウム化合物に対する上記コバルト化合物の比率が1/100モル当量より低くても、または10モル当量より高くても、エステル化合物の生成量は著しく低下する傾向にある。本発明では、コバルト化合物を単独で用いても、複数組合せて用いてもよい。
(ハロゲン化物塩)
本発明で使用可能なハロゲン化物塩は、塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオン等のハロゲンイオンと、カチオンとから構成される化合物であればよく、特に限定されない。但し、本発明におけるハロゲン化物塩には、ルテニウム及び/又はコバルトを含む塩は含まれないものとする。上記カチオンは、無機物イオンおよび有機物イオンのいずれであってもよい。また、上記ハロゲン化物塩は、分子内に1以上のハロゲンイオンを含んでもよい。
ハロゲン化物塩を構成する無機物イオンは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される1種の金属イオンであってよい。具体例として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、およびストロンチウムが挙げられる。
また、有機物イオンは、有機化合物から誘導される1価以上の有機基であってよい。一例として、アンモニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、ピリジウム、イミダゾリウムおよびイミニウムが挙げられ、これらイオンの水素原子はアルキルおよびアリール等の炭化水素基によって置換されていてもよい。特に限定するものではないが、好適な有機物イオンの具体例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、およびベンジルトリフェニルホスホニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムが挙げられる。なかでも、反応率向上の観点から、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、およびテトラエチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム塩がより好ましい。
本発明で使用するハロゲン化物塩は、固体の塩である必要はなく、室温付近または100℃以下の温度領域で液体となる、ハロゲン化物イオンを含むイオン性液体を用いてもよい。このようなイオン性液体に用いられるカチオンの具体例として、1−エチル3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ペンチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム、1−デシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピジリニウム、1−ヘキシルピリジニウム、ブチルメチルピロリジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ブチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ペンチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘキシル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、8−ヘプチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、および8−オクチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機物イオンが挙げられる。本発明では、上述のハロゲン化物塩を単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
上述のハロゲン化物塩のうち、好適なハロゲン化物塩は、塩化物塩、臭化物塩、およびヨウ化物塩の少なくとも1種であり、カチオンが有機物イオンである化合物である。また、反応率向上の観点から、上記ハロゲン化物塩は、第四級アンモニウム塩であることが好ましい。上記第四級アンモニウム塩は、窒素原子が有する置換基同士が結合し環状構造を形成していても、窒素原子に二重結合を介して置換基が結合していてもよい。特に限定するものではないが、本発明において好適なハロゲン化物塩の具体例として、ブチルメチルピロリジニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)イミニウムアイオダイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、およびテトラエチルアンモニウムクロリドが挙げられる。但し、本発明におけるハロゲン化物塩には、ルテニウム及び/又はコバルトを含む塩は含まれないものとする。
ハロゲン化物塩の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、反応速度を効果的に高めることができる。一方、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。本発明では、ハロゲン化物塩を単独で使用しても、複数組合せて用いてもよい。
本発明による製造方法では、ルテニウム化合物とコバルト化合物とハロゲン化物塩とを含む特定の触媒系の使用によって、所望とする反応を促進することが可能である。本発明の一実施形態では、必要に応じて、上記触媒系を使用した反応時、塩基性化合物、フェノール化合物、および有機ハロゲン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を追加してもよい。反応時に、これら各種化合物を反応系中に追加することによって、反応促進の効果をより高めることが可能である。以下、上記各種化合物について説明する。
(塩基性化合物)
本発明において、塩基性化合物による反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において使用可能な塩基性化合物は、無機化合物であっても、有機化合物であってもよい。塩基性の無機化合物の具体例として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の各種金属の炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物塩、およびアルコキシドが挙げられる。塩基性の有機化合物の具体例として、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物、ピリジン化合物、イミダゾール化合物、およびキノリン化合物が挙げられる。上述の塩基性化合物のなかでも、反応促進効果の観点から、第三級アミン化合物が好適である。本発明において好適な第三級アミン化合物の具体例として、トリアルキルアミン、N−アルキルピロリジン、N−アルキルピペリジン、キヌクリジン、およびトリエチレンジアミンが挙げられる。
塩基性化合物の添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、ルテニウム化合物に対して、1〜1000モル当量、好ましくは2〜200モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
(フェノール化合物)
本発明において、フェノール化合物を添加することによる反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において好適なフェノール化合物の具体例として、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、メトキシフェノール、フェノキシフェノール、クロルフェノール、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキノン、およびカテコールが挙げられる。
フェノール化合物の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、促進効果の発現がより顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
(有機ハロゲン化合物)
本発明において、有機ハロゲン化合物を添加することによる反応促進の効果は、原料として使用する不飽和有機化合物の種類によって異なる。本発明において好適な有機ハロゲン化合物としては、ハロゲン化メチル、ジハロゲンメタン、ジハロゲンエタン、トリハロゲンメタン、テトラハロゲン炭素、およびハロゲン化ベンゼン等が挙げられる。
有機ハロゲン化合物の添加量は、例えば、ルテニウム化合物に対して1〜1000モル当量、好ましくは2〜50モル当量である。添加量を1モル当量以上とすることによって、反応促進効果の発現が顕著になる傾向がある。また、添加量が1000モル当量を超えると、添加量をさらに増加したとしても、反応促進のさらなる向上効果は得られない傾向がある。
その他:
(溶媒)
本発明の製造方法において、不飽和有機化合物とギ酸エステルとの反応は、特に溶媒を用いることなく進行させることができる。しかし、必要に応じて、溶媒を使用してもよい。本発明において使用可能な溶媒は、原料として使用する化合物を溶解できればよく、特に限定はされない。本発明において好適に使用できる溶媒の具体例として、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、エチルベンゼン、クメン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、およびアセトニトリルが挙げられる。
(反応温度)
本発明の製造方法において、不飽和有機化合物とギ酸エステルとの反応は、80℃〜200℃の温度範囲で実施することが好ましい。上記反応は、100℃〜160℃の温度範囲で実施することがより好ましい。80℃以上の温度で反応を実施することによって、反応速度が速まり、効率良く反応を進めることができる。その一方で、反応温度を200℃以下に制御することによって、原料として使用するギ酸エステルの分解を抑制することができる。ギ酸エステルが分解すると、不飽和有機化合物に対するエステル基の付加が達成されなくなる。さらに、反応温度が高すぎると、原料として使用する化合物の分解、又は開環による重合が生じ、収率が低下する可能性があるため望ましくない。反応温度が、原料として使用する不飽和有機化合物又はギ酸エステルのいずれかの沸点を超える場合には、耐圧容器内で反応を行うことが望ましい。反応の終結は、ガスクロマトグラフ、NMR等の周知の分析技術を用いて確認することができる。
<工程(b)及び(d)>
工程(b)及び工程(d)は、先の工程で得た反応液からエステル化合物を分離し、使用後の触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程に関する。反応液からエステル化合物を分離する方法は、特に限定されず、蒸留精製、抽出、膜分離といった当技術分野で公知の方法を使用して実施することができる。特に限定するものではないが、効率面から、上記分離は、蒸留精製によって実施することが好ましい。反応液を蒸留精製した場合、純度の高いエステル化合物が容易に得られる。その一方で、未反応の原料及び溶媒等を含まない蒸留残渣として、回収触媒系を容易に得ることができる。すなわち、蒸留精製による方法は、蒸留残渣(回収触媒系)における触媒系の含有率を高めることが容易である点でも好ましい。
上記蒸留精製は、減圧下、100〜250℃で実施することが好ましく、120〜220℃で実施することがより好ましく、130〜200で実施することが特に好ましい。蒸留温度を100℃以上にすることによって、蒸留時間を短縮化することが容易となる。一方、蒸留温度を250℃以下にすることによって、触媒系化合物の分解を抑制することが容易となる。減圧条件に制限は無い。但し、触媒系化合物の分解が起こらないように、上記温度範囲で蒸留が実施できるように、適切に調整することが望ましい。
<工程(c)>
工程(c)は、触媒系として反応液から回収した回収触媒系を使用することを除き、工程(a)と同様にして、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程に関する。上記回収触媒系には、触媒系を構成するルテニウム化合物、コバルト化合物、およびハロゲン化物塩が含まれているため、回収触媒系をそのまま再利用することもできる。しかし、回収触媒系は、使用後の触媒系であるため、少なくともルテニウム化合物の一部が失活した状態にある。そのため、回収触媒系を効率良く再利用するためには、回収触媒系を再活性化した後に使用することが好ましい。
一実施形態では、工程(c)において、回収触媒系はギ酸又はギ酸エステルで処理した後に使用する。ギ酸又はギ酸エステルを用いて回収触媒系を処理することによって、再活性化した触媒系を容易に製造することができる。このようなギ酸又はギ酸エステルを用いた再活性化処理は、回収触媒系にギ酸又はギ酸エステルを接触させることによって実施することができる。例えば、回収触媒系にギ酸又はギ酸エステルを加えた後に、この溶液を加熱還流することによって実施することができる。このような再活性化を実施する時、必要に応じて溶媒を使用してもよい。
一実施形態において、再活性化処理は、効率面からギ酸(水溶液)を使用して実施することが好ましいが、ギ酸エステルを使用しても良好に実施することができる。ギ酸エステルの具体例は、エステル化合物の原料として例示した化合物と同様である。再活性化処理後の触媒系(再活性化触媒系)は、ギ酸又はギ酸エステル、及び溶媒などの成分を含んでもよい。再活性化触媒系が上記成分を含んでいても、エステル化合物を製造する際に悪影響を及ぼすことはない。しかし、上記触媒系を使用して、エステル化合物を効率良く実施する観点から、再活性化処理後に上記成分を留去した状態で再活性化触媒を使用することが好ましい。
上記再活性化処理時の溶液は、最初は緑色であるが、ルテニウム錯体におけるルテニウム原子の酸化数の変化に伴って徐々に橙色へと変化する。そのため、上記溶液の色の変化によって、回収触媒系の再生を確認することができる。
上記ギ酸又はギ酸エステルの使用量は、例えば、回収触媒系の重量に対して、200重量%以上、好ましくは500重量%以上とする。上記使用量を200重量%以上にすることによって、触媒系の再生を効率良く実施することができる。また、再活性化処理時の反応温度は、60℃〜還流温度、好ましくは80℃〜還流温度である。上記反応温度を60℃以上にした場合、触媒系の再活性化を、効率及び速度の両方の観点において良好に実施することが容易となる。また、上記反応温度を還流温度より低い温度に設定することによって、耐圧容器等の特殊な器具を必要とせずに、回収触媒系の再活性化を簡便に実施することができる。
上述のように、本発明の一実施形態では、回収触媒系から各種触媒系化合物をそれぞれ分離することなく、回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理することで、金属触媒の触媒活性を再活性化することが可能である。そのため、本発明によれば、反応率を低下させることなく、回収触媒系を利用し反応を連続的に実施することが可能である。
上記工程(b)及び(d)において、蒸留によって反応液からエステル化合物を回収した場合、容器内には触媒系を主成分とする蒸留残渣(回収触媒系)が残る。一実施形態では、容器内の上記蒸留残渣にギ酸又はギ酸エステルを直接加えた後に、この溶液を加熱還流することによって、回収触媒系の再活性化処理を実施することができる。
エステル化合物の製造において、精製法や装置の状況により、上記触媒系を構成する各種化合物が系外へ流出する可能性がある。そのような流出は、回収触媒系を再利用する時に反応系内の触媒量が減少することを意味する。そのため、本発明の別の実施形態では、工程(c)において、反応系に、先に使用した触媒系と同様の触媒系を追加することが好ましい。触媒系の追加量は、蒸留残渣(回収触媒系)における金属量をICP発光分光分析によって分析することにより、適切に調整することができる。また、反応時に使用した触媒系の重量に対する回収触媒系の重量の損失分(流出量)を把握することによって、適切に調整することができる。通常、一連の工程を繰り返してエステル化合物を連続的に製造した場合、触媒系は同じ割合で流出する傾向がある。そのため、反応毎に流出量を把握する必要はなく、同じ割合の触媒量を追加すればよい。
上述のように、反応系に新たに触媒系を追加することによって、反応率を低下させることなく、連続的に反応を実施することが容易となる。本発明の一実施形態では、工程(c)において、回収触媒系を再活性化するとともに、触媒系を追加することが好ましい。失活した触媒系に対して、失活分の触媒系を追加した場合、失活成分が不純物となり、副反応が生じる場合がある。これに対し、上述のように回収触媒系の再活性化処理を実施した後に、触媒系を追加することによって、副反応のリスクを低減することも可能となる。本発明の一実施形態では、工程(c)において、回収触媒系の再活性化処理及び触媒系の追加の少なくとも一方を実施することによって、上記工程(c)〜(d)を繰り返し実施することが容易となるため、エステル化合物の製造を効率良く連続的に実施することができる。
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかし、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
以下の実施形態は、回収した蒸留残渣をそのまま触媒系として使用してエステル化合物の合成を行なう方法に関する。
(1)エステル化合物の合成
室温下、内容積1000mlのステンレス製加圧反応装置内に、ルテニウム化合物として[Ru(CO)Clを3.00mmol、コバルト化合物として酢酸コバルトを3.00mmol、ハロゲン化物塩としてテトラエチルアンモニウムクロリドを30.0mmol加え、混合して触媒系を得た。この触媒系に、ノルボルネンモノカルボン酸メチルを600mmol、ギ酸メチルを300mL加え、さらに、塩基性化合物としてトリエチルアミンを120mmol、フェノール化合物として4−メトキシフェノールを30.0mmol添加した。次いで、窒素ガス0.5MPaで反応装置内をパージし、120℃で8時間にわたって保持した。
その後、反応装置を室温まで冷却し、放圧し、残存有機相の一部を抜き取り、ガスクロマトグラフを用いて下記条件で、反応液の成分を分析した。分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは594mmol(ノルボルナンジカルボン酸メチル基準で収率99.0%)であった。なお、ガスクロマトグラフの分析は、ジーエルサイエンス(株)製GC−353B型GCを使用して下記条件で実施した。
検 出 器 :水素炎イオン検出器
カ ラ ム :ジーエルサイエンス(株)製 TC−1(60m)
キャリアガス:ヘリウム(300kPa)
温 度
注入口:200℃
検出器:200℃
カラム:40℃〜240℃(昇温速度:5℃/min)
(2)エステル化合物及び蒸留残渣の回収
上記反応液の低沸成分(ギ酸メチル、トリエチルアミン)をエバポレータで減圧下留去し、得られた濃縮液を蒸留精製した。上記蒸留精製によって、20gの蒸留残渣を回収し、その全量を2回目の反応の触媒系として用いた。
(3)蒸留残渣(回収触媒系)の再利用
反応装置に、上記触媒系として蒸留残渣を入れ、さらに、上記(1)と同様の条件でノルボルナンモノカルボン酸メチル、ギ酸メチル、トリエチルアミン、及び4−メトキシフェノールを加え、反応及び分析を行なった。反応液の分析結果によれば、反応によって生成したノルボルナンジカルボン酸メチルは594mmol(ノルボルナンジカルボン酸メチル基準で収率99.0%)であった。また、上記反応後に回収された蒸留残渣は、18gであった。
上述のように、上記反応液からエステル化合物及び蒸留残渣を回収、次いで上記蒸留残渣を回収触媒系として使用して反応を実施する工程を繰り返した。その結果、3回目の反応ではエステル化合物の収率が84.0%、回収された蒸留残渣は16gであった。また、4回目の反応ではエステル化合物の収率が0%、回収された蒸留残渣は14gであった。
(実施例2)
以下の実施形態は、回収した蒸留残渣に、流出分の触媒系を追加してエステル化合物の合成を行なう方法に関する。
実施例1の(1)及び(2)と全て同様にして、1回目の反応及び蒸留精製を行ない、20gの蒸留残渣(回収触媒系)を得た。次に、上記蒸留残渣を触媒系として使用し、さらに1回目の反応時に使用した1/10の量(2g)の触媒系を追加したことを除き、実施例1の(1)と全て同様にして、反応及び分析を行なった。さらに、反応液から蒸留残渣を回収し、これを回収触媒系として使用するとともに、触媒系を追加して反応を実施する工程を同様に繰り返した。その結果、5回目までの反応ではエステル化合物の収率は全て98.0%以上であり、6回目の反応では収率50.0%、7回目の反応では収率0%であった。なお、反応後に回収された蒸留残渣は、2〜7回目の反応に関して、全て20gであった。また、各反応時に追加した触媒系は、それぞれ1回目の反応時に使用した触媒系の1/10の量(2g)とした。
(実施例3)
以下の実施形態は、回収した蒸留残渣をギ酸で再活性化させてエステル化合物の合成を行なう方法に関する。
実施例1の(1)及び(2)と全て同様にして、1回目の反応及び蒸留精製を行ない、20gの蒸留残渣(回収触媒系)を得た。次に、上記蒸留残渣の重量に対して10倍量の80%ギ酸水溶液を加え、この溶液を7時間にわたって加熱還流することにより、回収触媒系の再活性化を行なった。その際、溶液が緑色から橙色に変化したことから、触媒の再活性化の終結を確認した。その後、上記溶液から溶媒を留去し、得られた固形分を触媒系として使用したことを除き、実施例1の(1)と全て同様にして、反応及び分析を行なった。さらに、反応液から蒸留残渣を回収し、これを上述のように再活性化した後に使用して反応を実施する工程を同様に繰り返した。その結果、4回目までの反応ではエステル化合物の収率が全て98.0%以上であり、5回目の反応では収率70.0%、6回目の反応では収率10.0%であった。なお、回収された蒸留残渣は、2〜6回目の反応において、順に、18g、16g、14g、12g及び10gであった。また、それぞれの再活性化で添加したギ酸の量は、再活性化する蒸留残渣の重量に対して10倍量とした。
(実施例4)
以下の実施形態は、回収した蒸留残渣をギ酸で再活性化させるとともに、流出分の触媒系を追加してエステル化合物の合成を行なう方法に関する。
実施例1の(1)及び(2)と同様にして、1回目の反応及び蒸留精製を行ない、20gの蒸留残渣(回収触媒系)を得た。次に、上記蒸留残渣の重量に対して10倍量の80%ギ酸水溶液中を加え、この溶液を7時間にわたって加熱還流することにより、回収触媒系の再活性化を行なった。その際、溶液が緑色から橙色に変化したことから、触媒の再活性化の終結を確認した。その後、上記溶液から溶媒を留去し、得られた固形分を触媒系として使用し、さらに1回目の反応時に使用した1/10量の触媒系を追加したことを除き、実施例1の(1)と全て同様にして、反応及び分析を行なった。さらに、反応液から蒸留残渣を回収し、これを上述のように再活性化した後に使用するとともに、触媒系を追加して反応を実施する工程を同様に繰り返した。その結果、エステル化合物の収率が10回目までの反応で全て98.0%以上であったことが確認できた。なお、各反応後に回収された蒸留残渣は、2〜10回目の反応において、全て20gであった。また、追加した触媒系の量は、各反応において、初回反応時の1/10の量(2g)であり、それぞれの再活性化で添加したギ酸の量は、再活性化する蒸留残渣の重量に対して10倍量とした。11回目以降の反応については実施していないが、上述の結果から、回収触媒系の再活性化及び触媒系の追加によって、高い触媒活性が維持でき、エステル化合物を高収率で得ることが可能であると推測される。

Claims (14)

  1. ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収した回収触媒系を使用して、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させる工程を有する、エステル化合物の製造方法。
  2. 前記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理し再活性化した後に使用する、請求項1に記載の製造方法。
  3. エステル化合物の製造方法であって、
    (a)ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と、
    (b)前記工程(a)によって得られた反応液から前記エステル化合物を分離し、前記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程と、
    (c)前記回収触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させ、エステル化合物を製造する工程と
    を有する、エステル化合物の製造方法。
  4. 前記工程(c)において、前記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理して再活性化した後に前記反応を実施する、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記工程(c)において、前記回収触媒系に、ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系を追加する、請求項3又は4に記載の製造方法。
  6. さらに、(d)前記(c)によって得られた反応液から前記エステル化合物を分離し、前記触媒系を回収し、回収触媒系を得る工程を有し、前記回収触媒系を使用して、前記工程(c)と前記工程(d)とを繰り返し実施する、請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 前記触媒系において、前記ルテニウム化合物が、分子内にカルボニル配位子とハロゲン配位子とを合わせ持つルテニウム錯体を含む、請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記触媒系において、前記コバルト化合物が、分子内にカルボニル配位子を有するコバルト錯体を含む、請求項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記触媒系において、前記ハロゲン化物塩が、第四級アンモニウム塩を含む、請求項3〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記工程(a)及び前記工程(c)における前記反応時に、それぞれ、塩基性化合物を加える、請求項3〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記塩基性化合物が、第三級アミン化合物を含む、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記工程(a)及び前記工程(c)における前記反応時に、フェノール化合物を加える、請求項3〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記工程(a)及び前記工程(c)における前記反応時に、有機ハロゲン化合物を加える、請求項3〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. ルテニウム化合物と、コバルト化合物と、ハロゲン化物塩とを含む触媒系の存在下で、分子内に少なくとも1つの不飽和炭素結合を有する有機化合物と、ギ酸エステルとを反応させて得られる反応液から回収された回収触媒系を再活性化する工程を有する再活性化触媒系の製造方法であって、前記再活性化する工程が、前記回収触媒系をギ酸又はギ酸エステルで処理することを含む、製造方法。
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