以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に複数台の室内機が冷媒配管で並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施形態における空気調和装置1は、1台の室外機2に10台の室内機5が、室内機5の台数と同じ10本の液管8および10本のガス管9で並列に接続されている。具体的には、10本の液管8の各々の一端と室外機2に設けられる10個の液側閉鎖弁27が接続され、10本の液管8の各々の他端と10台の室内機5の液管接続部53が接続されている。また、10本のガス管9の各々の一端と室外機2に設けられる10個のガス側閉鎖弁28が接続され、10本のガス管9の各々の他端と10台の室内機5のガス管接続部54が接続されている。このように、室外機2と10台の室内機5が10本の液管8および10本のガス管9で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が構成されている。尚、図1(A)では、10台の室内機5、10本の液管8、10本のガス管9、10個の液側閉鎖弁27、および、10個のガス側閉鎖弁28については、各々3つのみ描画している。
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、10個の膨張弁24と、アキュムレータ25と、室外ファン26と、上述した10個の液側閉鎖弁27および10個のガス側閉鎖弁28と、室外機制御手段200を備えている。そして、室外ファン26および室外機制御手段200を除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。尚、図1(A)では、10個の膨張弁24は3個のみ描画している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口と四方弁22のポートaが吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側とアキュムレータ25の冷媒流出側が吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。上述したように、ポートaと圧縮機21の冷媒吐出口が吐出管41で接続されている。ポートbと室外熱交換器23の一方の冷媒出入口が冷媒配管43で接続されている。ポートcとアキュムレータ25の冷媒流入側が冷媒配管46で接続されている。そして、ポートdには室外機ガス管45の一端が接続されている。室外機ガス管45の他端には、10本の室外機ガス分管45a(図1(A)では、このうち3本を描画)の各々の一端が接続されており、10本の室外機ガス分管45aの各々の他端は、10個のガス側閉鎖弁28に接続されている。
室外熱交換器23は、室外ファン26の回転により図示しない吸込口から室外機2の内部に取り込まれた外気と冷媒を熱交換させる。上述したように、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と四方弁22のポートbが冷媒配管43で接続されている。また、室外熱交換器23の他方の冷媒出入口には室外機液管44の一端が接続されている。室外熱交換器23は、冷媒回路10が冷房サイクルとなる場合は凝縮器として機能し、冷媒回路10が暖房サイクルとなる場合は蒸発器として機能する。
室外機液管44の他端には、10本の室外機液分管44a(図1(A)では、このうち3本を描画)の各々の一端が接続され、10本の室外機液分管44aの各々の他端は10個の液側閉鎖弁27に接続されている。そして、各室外機液分管44aには、膨張弁24が設けられている。これら10個の膨張弁24は、全て室外機制御手段200によりその開度が制御される。各膨張弁24の開度を制御することによって、各膨張弁24に接続される10台の室内機5に流れる冷媒量が調整される。10個の膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整される。
アキュムレータ25は、上述したように、冷媒流入側と四方弁22のポートcが冷媒配管46で接続され、冷媒流出側と圧縮機21の冷媒吸入口が吸入管42で接続されている。アキュムレータ25は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管42を介して圧縮機21に吸入させる。
室外ファン26は、室外熱交換器23の近傍に配置される樹脂材で形成されたプロペラファンであり、図示しないファンモータによって室外ファン26が回転することで、室外機2に設けられた図示しない吸込口から室外機2の内部に外気を取り込み、室外熱交換器23を流れる冷媒と熱交換した外気を室外機2に設けられた図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力検出手段である高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度検出手段である吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ25の冷媒流入側近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34が設けられている。
冷媒配管43における室外熱交換器23の近傍には、室外熱交換器23が凝縮器として機能する際に室外熱交換器23に流入する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ35が設けられている。室外機液管44における室外熱交換器23の近傍には、室外熱交換器23が蒸発器として機能する際に室外熱交換器23に流入する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ36が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度検出手段である外気温度センサ37が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン26の駆動状態、10台の室内機5の各々から送信される運転情報(運転/停止情報や設定温度情報等を含む)等を記憶する。通信部230は、10台の室内機5の各々との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。CPU210は、センサ入力部240を介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、1分毎)に取り込むとともに、10台の室内機5の各々から送信される運転開始/停止を示す運転状態や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ信号が通信部230を介して入力される。CPU210は、これら入力された各種情報に基づいて、第1膨張弁24a〜第3膨張弁24cの開度制御、圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行う。また、図示は省略するが、CPU210は、タイマー計測機能を有している。
次に、10台の室内機5について説明する。10台の室内機5は全て同じ構成を備えており、室内熱交換器51と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内ファン55を備えている。そして、室内ファン55を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
室内熱交換器51は、冷媒と、室内ファン55の回転により室内機5に備えられた図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53が室内機液管71で接続されている。室内熱交換器51の他方の冷媒出入口とガス管接続部54が室内機ガス管72で接続されている。尚、液管接続部53やガス管接続部54には、各冷媒配管が溶接やフレアナット等によって接続されている。
室内熱交換器51は、室内機5が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
室内ファン55は、室内熱交換器51の近傍に配置される樹脂材で形成されたクロスフローファンであり、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を室内機5に備えられた図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51の近傍には、室内熱交換器51に流入あるいは室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72における室内熱交換器51の近傍には、室内熱交換器51から流出あるいは室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62が設けられている。そして、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ63aが備えられている。
次に、本実施形態の空気調和装置1が冷房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作を、図1(A)を用いて説明する。以下の説明では、10台の室内機5が全て冷房運転を行っている場合について説明する。図1(A)において、矢印は、冷媒回路10における冷房運転時の冷媒の流れを示してり、また、四方弁22については、冷房運転時の各ポート間の連通状態を実線で示している。
尚、空気調和装置1が暖房運転を行うときの冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作については詳細な説明を省略するが、暖房運転時は四方弁22の各ポート間の連通状態は、図1(A)に破線で示す状態となり、室外熱交換器23が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51が凝縮器として機能する。
室内機5が冷房運転を行う場合は、四方弁22が図1(A)に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdが連通するように、また、ポートbとポートcが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10が図1(A)に矢印で示す方向に冷媒が流れる状態となり、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、各室内熱交換器51が蒸発器として機能する。
上記のような冷媒回路10の状態で圧縮機21が起動すると、圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は吐出管41から四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン26の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮し、室外熱交換器23から室外機液管44に流出する。室外機液管44に流入した冷媒は、各室外機液分管44aに分流し全開とされている各膨張弁24を通過して、各液側閉鎖弁27を介して各液管8に流入する。
各液管8から各液管接続部53を介して各室内機5に流入した冷媒は、各室内機液管71を流れて各室内熱交換器51に流入し、各室内ファン55の回転によって室内機2の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介して各ガス管9に流入し、各ガス管9を流れて各ガス側閉鎖弁28を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、各室外機ガス分管45aから室外機ガス管45、四方弁22、冷媒配管46へと流れてアキュムレータ25に流入し、アキュムレータ25でガス冷媒と液冷媒とに分離される。アキュムレータ25から吸入管42へと流出したガス冷媒は、吸入管42を流れて圧縮機21に吸入され、再び圧縮される。
以上説明したように空気調和装置1が冷房運転を行っているときに、運転を停止している室内機5がある場合は、当該室内機5に液管8および液側閉鎖弁27を介して接続された室外機液分管44aに設けられた膨張弁24が全閉とされる。圧縮機21から冷媒とともに吐出された冷凍機油は、四方弁22、室外熱交換器23および室外機液管44を介して各室外機液分管44aに分流するが、各室外機液分管44aに分流した冷凍機油のうち、全閉とされている膨張弁24が設けられた室外機液分管44aに流入した冷凍機油は、当該膨張弁24によって堰き止められて室外機液分管44aに滞留する。
上記のように全閉とされている膨張弁24によって堰き止められて室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量は、膨張弁24が全閉とされている時間が長いほど多くなる。一方、全閉とされている膨張弁24によって堰き止められて室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量は、圧縮機21から吐出される冷凍機油量によっても変化する。具体的には、圧縮機21の冷媒吐出側における冷媒の吐出過熱度が十分に大きい(例えば、15degや20deg)場合は、圧縮機21から吐出される冷凍機油量は少なくなるので、室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も少なくなる。また、吐出過熱度が小さい(例えば、2degや4deg)場合は、圧縮機21から吐出される冷凍機油量は多くなるので、室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も多くなる。これは、吐出過熱度が大きいほど圧縮機21内部の温度が高く、圧縮機21内部に滞留する冷凍機油の温度も高くなって冷凍機油に冷媒が溶け込みにくくなるためである。
そこで、本発明では、複数の所定時間を定め、その所定時間の間に1度も運転していない室内機5が存在する、つまり、当該室内機5に対応する膨張弁24が一度も開いていない場合に、各所定時間内における圧縮機21の吐出過熱度の最小値(以降、最小吐出過熱度と記載)が各所定時間に応じて決定した閾過熱度以下であれば、停止している室内機5に対応する膨張弁24を開くとともに圧縮機21の回転数を所定回転数として油回収運転を行う。一方で、各所定時間内における最小吐出過熱度が各所定時間に応じて決定した閾過熱度より大きい値であれば、油回収運転は行わず冷房運転を継続する。
以下、図2に示すフローチャートを用いて、本発明の空気調和装置1が冷房運転を行うときに、CPU210が、冷房運転を開始した時点あるいは油回収運転を終了して冷房運転を再開した時点からの経過時間および圧縮機21の吐出過熱度に応じて、油回収運転の実行要否を判断する際に実行する処理について説明する。図2に示すフローチャートでは、STは処理のステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。尚、図2では、本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、冷房運転時に使用者が指示した設定温度や風量等の運転条件に応じた制御といった、空気調和装置1に関わる一般的な処理については説明を省略する。
また、以下の説明では、冷房運転を開始した時点あるいは油回収運転を終了して冷房運転を再開した時点からの経過時間として、第1所定時間Tp1、第2所定時間Tp2、第3所定時間Tp3、第4所定時間Tp4の4つの所定時間を定め、これらの長短関係を、Tp1<Tp2<Tp3<Tp4としている。尚、第4所定時間Tp4が、本発明の強制油回収実行時間である。また、第1所定時間Tp1が経過した後に油回収運転の要否を判断するのに用いる閾過熱度を第1閾過熱度SHt1とし、同様に第2所定時間Tp2経過後に用いる閾過熱度を第2閾過熱度SHt2、第3所定時間Tp3経過後に用いる閾過熱度を第3閾過熱度SHt3とし、これらの大小関係を、SHt1<SHt2<SHt3としている。
さらには、冷房運転を開始した時点あるいは油回収運転を終了して冷房運転を再開した時点から冷媒回路10が安定するまでに必要となる時間である安定時間をTs、圧縮機21の吐出過熱度をSHd、吐出過熱度SHdの最小値である最小吐出過熱度をSHdminとしている。以上の各パラメータのうち、第1所定時間Tp1〜第4所定時間Tp4、安定時間Ts、および、第1閾過熱度SHt1〜第3閾過熱度SHt3は、予め試験等を行って求められて記憶部220に記憶されているものである。
使用者が各室内機5の図示しないリモコン等を操作して運転開始を指示すると、CPU210は、使用者の指示した運転が冷房運転であるか否かを判断する(ST1)。使用者の指示した運転が冷房運転であれば(ST1−Yes)、CPU210は、冷房運転開始処理を実行する(ST2)。ここで、冷房運転開始処理とは、CPU210が四方弁22の各ポートを図1(A)に実線で示す接続となるよう切り換えて、冷媒回路10を冷房サイクルとすることである。
冷房運転開始処理を終えたCPU210は、冷房運転制御を開始する(ST3)。ここで、冷房運転制御とは、CPU210が各室内機5から要求された冷房能力に応じた回転数で圧縮機21の駆動制御を行うとともに、圧縮機21の吐出過熱度SHdが冷房運転時の目標過熱度(予め試験等を行って求められて記憶部220に記憶されているもの。例えば、10deg)以上となるように室外ファン26の駆動制御を行うことである。
冷房運転制御を開始したCPU210は、タイマー計測を開始し(ST4)、タイマー計測開始から安定時間Ts(例えば、10分)が経過したか否かを判断する(ST5)。安定時間Tsが経過していなければ(ST5−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。
安定時間Tsが経過していれば(ST5−Yes)、CPU210は、吐出過熱度SHdを算出する(ST6)。具体的には、CPU210は、吐出温度センサ33で検出した吐出温度と、高圧センサ31で検出した吐出圧力をセンサ入力部240を介して取り込み、吐出圧力を用いて算出した高圧飽和温度を吐出温度から減じて吐出過熱度SHdを算出する。
次に、CPU210は、ST6で算出した吐出過熱度SHdが最小吐出過熱度SHdminであるか否かを判断する(ST7)。算出した吐出過熱度SHdが最小吐出過熱度SHdminであれば(ST7−Yes)、つまり、算出した吐出過熱度SHdが冷房運転開始後に最初に算出したもの、あるいは、今までに算出して記憶部220に記憶しているものより小さければ、CPU210は、算出した吐出過熱度SHdを最小吐出過熱度SHdminとして記憶部220に上書き記憶して(ST8)、ST9に処理を進める。算出した吐出過熱度SHdが最小吐出過熱度SHdminでなければ(ST7−No)、CPU210は、算出した吐出過熱度SHdを記憶せずST9に処理を進める。
ST9において、CPU210は、ST4でタイマー計測を開始してから第1所定時間Tp1(例えば、3時間)が経過したか否かを判断する。第1所定時間Tp1が経過していなければ(ST9−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。第1所定時間Tp1が経過していれば(ST9−Yes)、CPU210は、ST4でタイマー計測を開始してから現時点までの間に1度も運転していない室内機5があるか否かを判断する(ST10)。尚、詳細な説明は省略するが、記憶部220には、各室内機5の運転条件(設定温度や風量等)、運転状態(運転/停止)等を記憶するテーブルが設けられており、CPU210は、各室内機5から通信部230を介して得た情報で随時このテーブルを更新している。CPU210は、このテーブルを参照してST10における判断を行う。
タイマー計測を開始してから現時点までの間に1度も運転していない室内機5がなければ(ST10−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。タイマー計測を開始してから現時点までの間に1度も運転していない室内機5があれば(ST10−Yes)、CPU210は、記憶部220に記憶している最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1(例えば、5deg)以下であるか否かを判断する(ST11)。
最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1以下であれば(ST11−Yes)、CPU210は、ST17に処理を進める。最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1以下でなければ(ST11−No)、CPU210は、ST4でタイマー計測を開始してから第2所定時間Tp2(例えば、4時間)が経過したか否かを判断する(ST12)。
第2所定時間Tp2が経過していなければ(ST12−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。第2所定時間Tp2が経過していれば(ST12−Yes)、CPU210は、記憶部220に記憶している最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2(例えば、8deg)以下であるか否かを判断する(ST13)。
最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2以下であれば(ST13−Yes)、CPU210は、ST17に処理を進める。最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2以下でなければ(ST13−No)、CPU210は、ST4でタイマー計測を開始してから第3所定時間Tp3(例えば、5時間)が経過したか否かを判断する(ST14)。
第3所定時間Tp3が経過していなければ(ST14−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。第3所定時間Tp3が経過していれば(ST14−Yes)、CPU210は、記憶部220に記憶している最小吐出過熱度SHdminが第3閾過熱度SHt3(例えば、10deg)以下であるか否かを判断する(ST15)。
最小吐出過熱度SHdminが第3閾過熱度SHt3以下であれば(ST15−Yes)、CPU210は、ST17に処理を進める。最小吐出過熱度SHdminが第3閾過熱度SHt3以下でなければ(ST15−No)、CPU210は、ST4でタイマー計測を開始してから第4所定時間Tp4(例えば、6時間)が経過したか否かを判断する(ST16)。
第4所定時間Tp4が経過していなければ(ST16−No)、CPU210は、ST20に処理を進める。第4所定時間Tp4が経過していれば(ST16−Yes)、CPU210は、ST17に処理を進める。
ST11、ST13、ST15、および、ST16での各々の判断が「yes」である場合は、CPU210は油回収運転を実行する(ST17)。CPU210は、油回収運転を行うとき、各室内機5の室内熱交換器51における冷媒流量が、各室内熱交換器51の冷媒流路(パス)が液冷媒で満たされる流量となるように、各室内機5に対応する膨張弁24の開度を個別に制御するとともに、圧縮機21を所定の回転数(例えば、70rps)とする。ここで、各膨張弁24の開度や圧縮機21の所定回転数は、予め試験等を行って求められて記憶部220に記憶されているものである。
ここで、以上説明したST9からST17までの処理について、詳細に説明する。まず、ST9〜ST11の処理について説明する。ST9ではタイマー計測開始から第1所定時間Tp1が経過した後、ST10において第1所定時間Tp1が経過するまでに1度も運転していない室内機5が存在しない場合(ST10−No)では、いずれの室内機5においても対応する膨張弁24が1度は開かれているので、室外機液分管44aで膨張弁24が全閉とされていた際に堰き止められていた冷凍機油が室外機液分管44aより流出している。従って、この場合は油回収運転を行う必要がないので、CPU210は、油回収運転を行わずにST20へ処理を進めている。
ST10において第1所定時間Tp1が経過するまでに1度も運転していない室内機5が存在する場合(ST10−No)では、当該室内機5に対応する膨張弁24が第1所定時間Tp1が経過するまでの間ずっと全閉とされている。これにより、当該膨張弁24で冷凍機油が堰き止められて室外機液分管44aにおける膨張弁24より上流側(室外熱交換器23側)に冷凍機油が滞留している。
このとき、ST11において最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1以下でなければ、圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油は少なく、室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も少ない。この場合は、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する可能性は低く油回収運転を行う必要がない。従って、CPU210は、油回収運転を行わずにST20へ処理を進めている。一方、ST10において最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1以下であれば、圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油は多く、室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も多い。この場合は、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する恐れがあるため油回収運転を行う必要があり、CPU210はST17に処理を進めて油回収運転を行う。
次に、ST12〜ST13の処理について説明する。ST12では、CPU210は、タイマー計測を開始してから第1所定時間Tp1よりも長い第2所定時間Tp2が経過したか否かを判断している。ST12の処理を行う時点においては、タイマー計測開始から1度も運転していない室内機5が存在しかつ油回収運転が行われていない状態であり、第1所定時間Tp1が経過してから第2所定時間Tp2となるまでの間も、停止している室内機5に対応する室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量が増加している。
そこで、第2所定時間Tp2が経過した後は、ST13において最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1より値が大きい第2閾過熱度SHt2以下であるか否かで、油回収運転の要否を判断している。最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2以下でなければ、圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油は少なく、第2所定時間Tp2が経過した後であっても室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も少ない。この場合は、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する可能性は低いため油回収運転を行う必要がなく、CPU210は、油回収運転を行わずにST20へ処理を進めている。一方、ST13において最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2以下であれば、最小吐出過熱度SHdminが第1閾過熱度SHt1以下である場合より圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油は少ない可能性はあるものの、第1所定時間Tp1が経過した時点より長い時間が経過していることから室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量が第1所定時間Tp1が経過した時点より多くなっており、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する恐れがある。このために油回収運転を行う必要があり、CPU210はST17に処理を進めて油回収運転を行う。
次に、ST14〜ST15の処理について説明する。ST14では、CPU210は、タイマー計測を開始してから第2所定時間Tp2よりも長い第3所定時間Tp3が経過したか否かを判断している。ST14の処理を行う時点においては、タイマー計測開始から1度も運転していない室内機5が存在しかつ油回収運転が行われていない状態であり、第2所定時間Tp2が経過してから第3所定時間Tp3となるまでの間も、停止している室内機5に対応する室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量がさらに増加している。
そこで、第3所定時間Tp3が経過した後は、ST15において最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2より値が大きい第3閾過熱度SHt3以下であるか否かで、油回収運転の要否を判断している。最小吐出過熱度SHdminが第3閾過熱度SHt3以下でなければ、圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油は少なく、第3所定時間Tp3が経過した後であっても室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量も少ない。この場合は、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する可能性は低いため油回収運転を行う必要がなく、CPU210は、油回収運転を行わずにST20へ処理を進めている。一方、ST15において最小吐出過熱度SHdminが第3閾過熱度SHt3以下であれば、最小吐出過熱度SHdminが第2閾過熱度SHt2以下である場合より圧縮機21から吐出された単位時間当りの冷凍機油はさらに少ない可能性はあるものの、第2所定時間Tp2が経過した時点より多くの時間が経過していることから室外機液分管44aに滞留する冷凍機油量が第2所定時間Tp2が経過した時点より多くなっており、圧縮機21で冷凍機油が枯渇する恐れがある。このために油回収運転を行う必要があり、CPU210はST17に処理を進めて油回収運転を行う。
最後に、ST16の処理について説明する。ST16では、CPU210は、タイマー計測を開始してから第3所定時間Tp3よりも長い第4所定時間Tp4が経過したか否かを判断している。ここで、第4所定時間Tp4が経過していれば、最小吐出過熱度SHdminの値に関わらずST17に処理を進めて油回収運転を行う。これは、タイマー計測を開始した時点から第4所定時間Tp4が経過するまでの長時間、1度も運転していない室内機5が存在する場合は、かなりの量の冷凍機油が当該室内機5に対応する室外機液分管44aに滞留している恐れがあり、圧縮機21で冷凍機油が枯渇している恐れがあるためである。
CPU210は、ST17の処理を行って油回収運転を実行しているとき、油回収運転の終了条件が成立しているか否かを判断する(ST18)。ここで油回収運転の終了条件とは、圧縮機21に湿った冷媒(ガス冷媒中に液冷媒が含まれている状態)が吸入されており冷媒回路10に滞留している冷凍機油が湿った冷媒とともに圧縮機21に吸入されたと考えられる条件が成立しているか否かであり、例えば、圧縮機21に吸入される冷媒の過熱度である吸入過熱度が0degとなれば油回収運転条件が成立したと判断し、吸入過熱度が0degでなければ油回収運転を継続する。尚、CPU210は、吸入温度センサ34で検出した吸入温度と、低圧センサ32で検出した吸入圧力をセンサ入力部240を介して取り込み、吸入圧力を用いて算出した低圧飽和温度を吸入温度から減じて吸入過熱度を算出する。CPU210は、吸入過熱度を定期的(例えば、1分毎)に算出している。
ST18において、油回収運転の終了条件が成立していなければ(ST18−No)、CPU210は、ST17に処理を戻す。油回収運転の終了条件が成立していれば(ST18−Yes)、CPU210は、油回収運転を終了してタイマーをリセットする(ST19)。
次に、CPU210は、使用者が空気調和装置1の運転切替指示をしたか否かを判断する(ST20)。ここで、運転切替指示とは、冷房運転から暖房運転への切り替え、あるいは、暖房運転から冷房運転への切り替えが、使用者によって指示されることを意味する。運転切替指示があれば(ST20−Yes)、CPU210は、ST1に処理を戻す。運転切替指示がなければ(ST20−Yes)、CPU210は、使用者が空気調和装置1の運転停止指示をしたか否かを判断する(ST21)。
運転停止指示があれば(ST21−Yes)、CPU210は、圧縮機21および室外ファン26を停止するとともに、各膨張弁24を全閉とする運転停止処理を行い(ST23)、処理を終了する。運転停止指示がなければ(ST21−Yes)、CPU210は、現在の運転が冷房運転であるか否かを判断する(ST22)。現在の運転が冷房運転であれば(ST22−Yes)、CPU210は、ST6に処理を戻し、現在の運転が冷房運転でなければ(ST22−No)、つまり、暖房運転であれば、CPU210は、ST27に処理を戻す。
尚、ST1において、使用者の指示した運転が冷房運転でなければ(ST1−No)、つまり、使用者の指示した運転が暖房運転であれば、CPU210は、暖房運転開始処理を実行する(ST24)。ここで、暖房運転開始処理とは、CPU210が四方弁22の各ポートを図1(A)に破線で示す接続となるよう切り換えて、冷媒回路10を暖房サイクルとすることである。
暖房運転開始処理を終えたCPU210は、暖房運転制御を開始する(ST25)。ここで、暖房運転制御とは、CPU210が各室内機5から要求された暖房能力に応じた回転数で圧縮機21や室外ファン26の駆動制御を行うとともに、各膨張弁24の開度を各膨張弁24に対応する室内機5から要求された暖房能力に応じた開度とすることである。
ST25の処理を終えたCPU210は、ST20に処理を進める。
以上説明したように、本発明の空気調和装置1で冷房運転を行っているとき、冷房運転開始時点あるいは前回の油回収運転の終了時点から所定時間経過後に、検出した吐出過熱度が所定の閾過熱度より大きい場合は、油回収運転を実行しない。これにより、不要な油回収運転の実行を防いで使用者の快適性が損なわれることを抑制できる。