以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、1台の室外機に3台の室内機が並列に接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える空気調和装置を例に挙げ、空気調和装置の設置時に室外機と複数の室内機とを接続する冷媒配管の長さに応じて不足する冷媒を追加で充填する場合について説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
図1(A)に示すように、本実施例における空気調和装置1は、屋外に設置される1台の室外機2と、室外機2に液管8およびガス管9で並列に接続された3台の室内機5a〜5cとを備えている。詳細には、液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各液管接続部53a〜53cに、それぞれ接続されている。また、ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に、他端が分岐して室内機5a〜5cの各ガス管接続部54a〜54cに、それぞれ接続されている。以上により、空気調和装置1の冷媒回路100が構成されている。
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、流路切換手段である四方弁22と、室外熱交換器23と、室外流量調整手段である室外膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、室外ファン27と、充填ポート28とを備えている。そして、室外ファン27を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、後述する四方弁22のポートaに吐出管41で接続されており、また、圧縮機21の冷媒吸入側は、後述する四方弁22のポートcに吸入管42で接続されている。
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管43で接続されている。ポートcは、上述したように圧縮機21の冷媒吸入側と吸入管42で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管45で接続されている。
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外ファン27の回転により室外機2内部に取り込まれた外気とを熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続され、他方の冷媒出入口は室外機液管44で閉鎖弁25に接続されている。
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は電子膨張弁であり、その開度が調整されることで、室外熱交換器23に流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで図示しない吸込口から室外機2内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を図示しない吹出口から室外機2外部へ放出する。
充填ポート28は、例えば、電磁開閉弁で構成されており、一方のポートが吸入管42に冷媒配管で接続されており、他方のポートには図示しない冷媒ボンベが接続できるようになっている。冷媒回路100に冷媒を充填する際には、冷媒ボンベを充填ポート28に接続し、充填ポート28を開く。これにより、冷媒ボンベから吸入管42に向かって冷媒が流れる。
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられている。図1(A)に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力を検出する高圧検出手段である高圧センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。吸入管42には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する低圧検出手段である低圧センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
室外機液管44における室外熱交換器23と室外膨張弁44との間には、室外熱交換器23に流入する、または、室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出する熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2内に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が備えられている。
また、室外機2には、室外機制御手段200が備えられている。室外機制御手段200は、室外機2の図示しない電装品箱に格納されている制御基板に搭載されている。図2(B)に示すように、室外機制御手段200は、CPU210と、記憶部220と、通信部230と、センサ入力部240とを備えている。
記憶部220は、ROMやRAMで構成されており、室外機2の制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27の制御状態、後述する設置時動作テーブル300、等を記憶している。通信部230は、室内機5a〜5cとの通信を行うためのインターフェイスである。センサ入力部240は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210に出力する。
CPU210は、前述した室外機2の各センサでの検出結果をセンサ入力部240を介して取り込む。また、CPU210は、室内機5a〜5cから送信される制御信号を通信部230を介して取り込む。CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン27の駆動制御を行う。また、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行う。さらには、CPU210は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、室外膨張弁24の開度制御を行う。
次に、3台の室内機5a〜5cについて説明する。3台の室内機5a〜5cは、室内熱交換器51a〜51cと、室内流量調整手段である室内膨張弁52a〜52cと、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53a〜53cと、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54a〜54cと、室内ファン55a〜55cとを備えている。そして、室内ファン55a〜55cを除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50a〜50cを構成している。
尚、室内機5a〜5cの構成は全て同じであるため、以下の説明では、室内機5aの構成についてのみ説明を行い、その他の室内機5b、5cについては説明を省略する。また、図1では、室内機5aの構成装置に付与した番号の末尾をaからbおよびcにそれぞれ変更したものが、室外機5aの構成装置と対応する室内機5b、5cの構成装置となる。
室内熱交換器51aは、冷媒と後述する室内ファン55aにより図示しない吸込口から室内機5a内部に取り込まれた室内空気とを熱交換させるものであり、一方の冷媒出入口が液管接続部53aに室内機液管71aで接続され、他方の冷媒出入口がガス管接続部54aに室内機ガス管72aで接続されている。室内熱交換器51aは、室内機5aが冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機5aが暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。
尚、液管接続部53aやガス管接続部54aには、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
室内膨張弁52aは、室内機液管71aに設けられている。室内膨張弁52aは電子膨張弁であり、その開度を調整することによって室内熱交換器51aに流れる冷媒量を調整することができる。室内膨張弁52aは、室内熱交換器51aが蒸発器として機能する場合は、その開度が要求される冷房能力に応じて調整され、室内熱交換器51aが凝縮器として機能する場合は、その開度が要求される暖房能力に応じて調整される。
室内ファン55aは樹脂材で形成されており、室内熱交換器51aの近傍に配置されている。室内ファン55aは、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5a内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51aにおいて冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ供給する。
以上説明した構成の他に、室内機5aには各種のセンサが設けられている。室内機液管71aにおける室内熱交換器51aと室内膨張弁52aとの間には、室内熱交換器51aに流入あるいは室内熱交換器51aから流出する冷媒の温度を検出する液冷媒温度検出手段である液側温度センサ61aが設けられている。室内機ガス管72aには、室内熱交換器51aから流出あるいは室内熱交換器51aに流入する冷媒の温度を検出するガス冷媒温度検出手段であるガス側温度センサ62aが設けられている。そして、室内機5aの図示しない吸込口付近には、室内機5a内に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ63aが備えられている。
また、室内機5aには、室内機制御手段500aが備えられている。室内機制御手段500aは、室内機5aの図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、図1(B)に示すように、CPU510aと、記憶部520aと、通信部530aと、センサ入力部540aとを備えている。
記憶部520aは、ROMやRAMで構成されており、室内機5aの制御プログラムや各種センサからの検出信号に対応した検出値、使用者による空調運転に関する設定情報等を記憶する。通信部530aは、室外機2および他の室内機5b、5cとの通信を行うためのインターフェイスである。センサ入力部540aは、室内機5aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU510aに出力する。
CPU510aは、前述した室内機5aの各センサでの検出結果をセンサ入力部540aを介して取り込む。また、CPU510aは、使用者が図示しないリモコンを操作して設定した運転情報やタイマー運転設定等を含んだ信号を図示しないリモコン受光部を介して取り込む。CPU510aは、取り込んだ検出結果やリモコンから送信された信号に基づいて、室内膨張弁52aの開度制御や、室内ファン55aの駆動制御を行う。また、CPU510aは、運転開始/停止信号や運転情報(設定温度や室内温度等)を含んだ制御信号を、通信部530aを介して室外機2に送信する。
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、図1(A)を用いて説明する。尚、以下の説明では、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合について説明し、暖房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1(A)における矢印は冷房運転時の冷媒の流れを示している。
図1(A)に示すように、室内機5a〜5cが冷房運転を行う場合、室外機制御手段200は、四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り換える。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能する。
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管43を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23から流出した冷媒は室外機液管44を流れ、全開とされている室外膨張弁24および閉鎖弁25を介して液管8に流入する。
液管8を流れて分流し各室内機5a〜5cに流入した冷媒は、室内機液管71a〜71cを流れ、室内膨張弁52a〜52cを通過するときに減圧されて低圧の冷媒となる。室内機液管71a〜71cから室内熱交換器51a〜51cに流入した冷媒は、室内ファン55a〜55cの回転により室内機5a〜5c内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能し、室内熱交換器51a〜51cで冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5a〜5cが設置された室内の冷房が行われる。
室内熱交換器51a〜51cから流出した冷媒は室内機ガス管72a〜72cを流れガス管9に流入する。ガス管9を流れ閉鎖弁26を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機ガス管45、四方弁22、吸入管42を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
以上説明したように冷媒回路100を冷媒が循環することで、空気調和装置1の冷房運転が行われる。
尚、室内機5a〜5cが暖房運転を行う場合、室外機制御手段200は、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り換える。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器51a〜51cが凝縮器として機能する。
次に、本実施形態における設置時運転について、図1乃至図3を用いて説明する。ここで、設置時運転とは、空気調和装置1の設置時に実行される運転のことであり、液管8およびガス管9の長さに応じて冷媒回路100で不足する冷媒を追加充填する冷媒充填運転と、冷媒充填運転の終了後に引き続き行われ冷媒回路100に滞留する冷凍機油を圧縮機21に回収する油回収運転とからなる。尚、冷媒充填運転および油回収運転では、冷媒回路100を図1に示す状態、すなわち、室外熱交換器23が凝縮器として機能するよう、また、室内熱交換器51a〜51cが蒸発器として機能するよう、四方弁22を切り換え、室内機5a〜5c全てが冷房運転となるようにする。
まず、図1および図2を用いて、空気調和装置1の設置時運転における室外機2および室内機5a〜5cの動作について説明する。図2に示す設置時動作テーブル300は、上述した冷媒充填運転および油回収運転を行う際の室外機2および室内機5a〜5cの各構成要素の制御態様と、冷媒充填運転および油回収運転の終了条件とを定めたものであり、室外機2の記憶部220に予め記憶されているものである。
以下に、設置時動作テーブル300における冷媒充填運転/油回収運転毎に、各構成要素の制御態様および終了条件について説明する。冷媒充填運転時は、圧縮機21の回転数が第1固定回転数R1、例えば、50rpsとなるように制御する。また、室外ファン27の回転数を制御して室外熱交換器23に流通させる空気量を調整することで、室外熱交換器23における凝縮圧力が所定の目標圧力、例えば、3.0MPaとなるように制御(以降、目標高圧制御と記載)する。また、室外膨張弁24の開度を全開とする。また、室内膨張弁52a〜52cの開度を制御して室内熱交換器51a〜51cを流れる冷媒量を調整するとともに、室内ファン55a〜55cの回転数を制御して室内熱交換器51a〜51cに流通させる空気量を調整することで、室内熱交換器51a〜51cにおける蒸発圧力が所定の目標圧力、例えば、0.9MPaとなるように制御(以降、目標低圧制御と記載)する。そして、冷媒充填運転の終了条件は、凝縮器として機能している室外熱交換器23の冷媒出口側における熱交過冷却度である冷媒の過冷却度SCが所定の閾値、例えば、10℃(以降、閾過冷却度SCtと記載)以上となったか否か、としている。
ここで、第1固定回転数R1(上記例では、50rps)の決定方法について説明する。冷媒充填運転では、冷媒回路100内の冷媒量が少ない状態で圧縮機21を駆動するので、圧縮機21の吸入圧力が低下しやすくなっている。このため、回転数を高くして圧縮機21を駆動すると、吸入圧力が大きく低下して圧縮機21個別に定められた吸入圧力の性能下限値を下回る虞がある。従って、冷媒充填運転時の圧縮機21の回転数は、予め試験により、吸入圧力が性能下限値を下回らないことが確認できており、かつ、冷媒回路100への冷媒充填が早く完了するようできる限り高い回転数を求め、これを第1固定回転数R1としている。
また、室外膨張弁24の開度が全開となるように制御するのは、次の理由による。室外膨張弁24の開度を小さくすると、室外膨張弁24を冷媒が通過する際に冷媒の状態が、液冷媒から気液二相冷媒へと変化する。冷媒が気液二相冷媒となれば、冷媒配管(液管8)による圧力損失が大きくなるので、これを防ぐために、室外膨張弁24の開度を全開とする。
以上説明したように、冷媒充填運転時は、室外ファン27の回転数で目標高圧制御を行うとともに室内膨張弁52a〜52cの開度および室内ファン55a〜55cの回転数で目標低圧制御を行うことで圧縮機21の吐出圧力および吸入圧力が一定となるようにし、冷媒回路100における圧縮機21の回転数を第1固定回転数R1に固定することによって冷媒回路100における冷媒循環量が一定となり、室外膨張弁24を全開とすることで冷媒の状態が変化しないようにしている。これにより、冷媒回路100における冷媒の状態が安定する。
冷媒回路における冷媒の状態が安定した状態で、室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒の過冷却度SCを算出し、算出した過冷却度SCが閾過冷却度SCt以上となっていれば、冷媒充填により冷媒回路100の冷媒が適正量になったと判断できる。尚、過冷却度SCは、高圧センサ31で検出した圧縮機21の吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度から熱交温度センサ35で検出した室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒温度を減じることで算出できる。ここで、高圧センサ31と、熱交温度センサ35と、室外機制御部200とで、本発明の過冷却度検出手段が構成される。また、閾過冷却度SCtは、予め試験によって求められているものであり、空気調和装置1で充分な空調能力を発揮するために必要な冷媒量が冷媒回路100に充填されており、かつ、冷媒回路100を冷媒充填運転の際の状態としたときの、室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒の過冷却度である。
一方、油回収運転時は、圧縮機21の回転数が第1固定回転数R1より高い回転数である第2固定回転数R2、例えば、80rpsとなるように制御する。また、室内膨張弁52a〜52cの開度を、圧縮機21に吸入される冷媒が気液二相状態となるように制御(以降、気液二相制御と記載)する。また、室内ファン55a〜55cは、室内熱交換器51a〜51cにおける冷媒と空気との熱交換量を一定とするための所定の固定回転数Ri、例えば、900rpmで回転させる。そして、油回収運転の終了条件は、圧縮機21の冷媒吸入側の冷媒過熱度である吸入過熱度SHcが0℃となったか否か、としている。尚、室外ファン27および室外膨張弁24の制御態様は、冷媒充填運転時の制御態様と同じである。
ここで、圧縮機21の回転数を第1固定回転数R1より高い第2固定回転数R2(上記例では、80rps)としているのは次の理由による。まず、油回収運転時は、先に行う冷媒充填運転により冷媒回路100に充分な量の冷媒が充填されているので、圧縮機21の回転数を第1固定回転数R1より高くしても吸入圧力が性能下限値を下回る虞がない。また、油回収運転では、圧縮機21から冷媒とともに冷媒回路100に吐出され冷媒回路100に滞留する冷凍機油を、気液二相状態の冷媒を圧縮機21に吸入させることによって圧縮機21に戻すのであるが、このとき、冷媒回路100を流れる冷媒の流速ができる限り速いことが好ましい。そこで、予め試験により冷媒回路100に滞留する冷凍機油を圧縮機21に回収できることが確認できている冷媒の流速を実現する圧縮機21の回転数を求めこれを第2固定回転数R2としている。
尚、本実施形態では、油回収運転時の圧縮機21の回転数を第2固定回転数R2で固定しているが、第2固定回転数R2以上で圧縮機21の回転数を可変してもよい。
また、室内膨張弁52a〜52cの開度は、液側温度センサ61a〜61cで検出する室内熱交換器51a〜51cの冷媒入口側の冷媒温度(以降、液側冷媒温度Trlと記載)とガス側温度センサ62a〜62cで検出する室内熱交換器51a〜51cの冷媒出口側の冷媒温度(以降、ガス側冷媒温度Trgと記載)とが同じになるように制御される。これにより、室内機5a〜5cから流出する冷媒は気液二相状態となる。
以上説明したように、油回収運転時は、室外ファン27の回転数で目標高圧制御を行うことで圧縮機21の吐出圧力が一定となるようにするとともに室外膨張弁24を全開とすることで冷媒の状態が変化しないようにして室内機5a〜5cに流入する冷媒の状態を安定させ、室内ファン55a〜55cを固定回転数Riで回転させることで室内熱交換器51a〜51cに流通させる空気量を一定とし、室内膨張弁52a〜52cの開度調整により気液二相状態の冷媒を室内機5a〜5cから流出させている。そして、圧縮機21の回転数を第2固定回転数R2で固定することによって、気液二相状態の冷媒の流速を速くして、冷媒回路100内に滞留する冷凍機油を圧縮機21に戻している。
そして、上記のような冷媒回路100の状態で、圧縮機21の冷媒吸入側における吸入過熱度SHcを算出し、算出した吸入過熱度SHcが0となっていれば、気液二相状態の冷媒が圧縮機21に吸入されている、つまり、冷凍機油が圧縮機21に戻されていると判断する。尚、吸入過熱度SHcは、吸入温度センサ34で検出した圧縮機21に吸入される冷媒の温度から低圧センサ32で検出した圧縮機21の吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度を減じることで算出できる。ここで、低圧センサ32と、吸入温度センサ34と、室外機制御部200とで、本発明の吸入圧力検出手段が構成される。
次に、図1乃至図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1で設置時運転を行う際の制御について説明する。図3は、空気調和装置1が設置時運転を行う場合の、各制御部での処理の流れを示すフローチャートであり、(A)は室外機制御部200のCPU210が行う処理の流れを、(B)は室内機制御部500a〜500cのCPU510a〜510cが行う処理の流れを、それぞれ示すものである。尚、図3において、STはステップを表し、これに続く数字はステップ番号を表している。また、図3では本発明に関わる処理を中心に説明しており、これ以外の処理、例えば、前述した冷房運転時における、使用者の指示した設定温度や風量等の運転条件に対応した冷媒回路の制御、等の空気調和装置に関わる一般的な処理については説明を省略している。
まず、図3(A)を用いて、室外機制御部200のCPU210が行う処理の流れを説明する。空気調和装置1の設置後、作業者は、室外機2の電源を投入するとともに、充填ポート28に冷媒ボンベを接続した後室外機2に設けられた図示しないスイッチの操作により設置時運転の開始を指示する。設置時運転の開始が指示されると、CPU210は、充填ポート28を開く。そして、CPU210は、冷媒充電運転開始信号を通信部230を介して室内機5a〜5cに送信する(ST1)。尚、冷媒充電運転開始信号には、冷媒充填運転時の室内膨張弁52a〜52cや室内ファン55a〜55cの制御態様であり設置時動作テーブル300を参照して抽出した目標低圧制御と、目標低圧制御の際に使用する圧縮機21の吸入圧力の目標圧力(以降、目標低圧Pltと記載)とが含まれており、つまりは、室内機5a〜5cに、圧縮機21の吸入圧力が目標低圧Pltとなるように目標低圧制御を行わせる指示が含まれている。
次に、CPU210は、記憶部220に記憶している設置時動作テーブル300における冷媒充填運転の項目を参照し、圧縮機21の回転数が第1固定回転数R1(例えば、50rps)となるよう制御し(ST2)、室外膨張弁24の開度を全開とする(ST3)。
次に、CPU210は、高圧センサ31で検出した圧縮機21の吐出圧力が目標圧力(例えば、3.0MPa)となるように室外ファン27の回転数を制御する(ST4)。そして、CPU210は、低圧センサ32で検出した圧縮機21の吸入圧力Pl(以降、低圧Plと記載)を通信部230を介して室内機5a〜5cに送信する(ST5)。
尚、以上説明したST2〜ST5の処理が、冷媒充填運転時の室外機2における処理となり、ST2〜ST5の処理を実行することによって、冷媒ボンベから充填ポート28を介して冷媒回路100に冷媒が充填される。
次に、CPU210は、室外熱交換器23の冷媒出口側における冷媒の過熱度SCを、高圧センサ31で検出しセンサ入力部240を介して取り込んだ圧縮機21の吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度から熱交温度センサ35で検出しセンサ入力部240を介して取り込んだ冷媒温度を減じて算出し、算出した過冷却度SCが閾過冷却度SCt(例えば、10℃)以上であるか否かを判断する(ST6)。
過熱度SCが閾過冷却度SCt以上でなければ(ST6−No)、CPU210は、ST4に処理を戻し冷媒充填運転時の処理を継続する。過熱度SCが閾過冷却度SCt以上であれば(ST6−Yes)、CPU210は、冷媒充填運転終了信号を通信部230を介して室内機5a〜5cに送信し(ST7)、充填ポート28を閉じて、冷媒充填運転を終了する。
ST7で冷媒充填運転を終了したCPU210は、冷媒充填運転に引き続き油回収運転のための処理を開始する。CPU210は、油回収運転開始信号を通信部230を介して室内機5a〜5cに送信する(ST8)。尚、油回収運転開始信号には、油回収運転時の室内膨張弁52a〜52cの制御態様であり設置時動作テーブル300を参照して抽出した気液二相制御と、室内ファン55a〜55cの制御の際に使用する固定回転数Riが含まれており、つまりは、室内機5a〜5cに、室内機5a〜5cから流出する冷媒を気液二相状態とする気液二相制御を行わせる指示が含まれている。また、CPU210は、冷媒充填運転から油回収運転に移行する間(ST7およびST8の処理中)も、圧縮機21の回転数を第1固定回転数R1として圧縮機21を継続して駆動するとともに、室外膨張弁24の開度を全開のままとしている。
次に、CPU210は、記憶部220に記憶している設置時動作テーブル300における油回収運転の項目を参照し、圧縮機21の回転数が第2固定回転数R1(例えば、80rps)となるよう制御し(ST9)、また、高圧センサ31で検出した圧縮機21の吐出圧力が目標圧力(例えば、3.0MPa)となるように室外ファン27の回転数を制御する(ST10)。
尚、以上説明したST9およびST10の処理が、油回収運転時の室外機2における処理となり、ST9およびST10の処理を実行することによって、圧縮機21に気液二相状態の冷媒が吸入されて冷媒回路100内に滞留する冷凍機油が圧縮機21に回収される。
次に、CPU210は、圧縮機21の冷媒吸入側における吸入過熱度SHcを、吸入温度センサ34で検出しセンサ入力部240を介して取り込んだ圧縮機21に吸入される冷媒の温度から圧縮機21の吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度を減じて算出し、算出した吸入過熱度SHcが0℃であるか否かを判断する(ST11)。
吸入過熱度SHcが0℃でなければ(ST11−No)、CPU210は、ST10に処理を戻し油回収運転時の処理を継続する。吸入過熱度SHcが0℃であれば(ST11−Yes)、CPU210は、油回収運転終了信号を通信部230を介して室内機5a〜5cに送信し(ST12)、圧縮機21と室外ファン27とを停止するとともに、室外膨張弁24を全閉として(ST13)、油回収運転を終了する。そして、ST13の処理を終えたCPU210は、設置時運転に関する処理を終了する。
次に、図3(B)を用いて、室内機制御部500a〜500cのCPU510a〜510cが行う処理の流れを説明する。空気調和装置1の設置後、作業者により室内機5a〜5cの電源が投入されると、CPU510a〜510cは、通信部530a〜530cを介して室外機2から冷媒充填開始信号を受信したか否かを判断する(ST21)。
冷媒充填開始信号を受信していなければ(ST21−No)、CPU510a〜510cは、ST21に処理を戻す。冷媒充填開始信号を受信していれば(ST21−Yes)、CPU510a〜510cは、冷媒充填開始信号に含まれる、冷媒充填運転時の室内ファン55a〜55cおよび室内膨張弁52a〜52cの制御態様である目標低圧制御および目標低圧Pltを抽出する(ST22)。尚、CPU510a〜510cは、抽出した目標低圧Pltを記憶部530a〜530cに記憶する。
次に、CPU510a〜510cは、通信部530a〜530cを介して室外機2から低圧Plを受信したか否かを判断する(ST23)。低圧Plを受信していなければ(ST23―No)、CPU510a〜510cは、ST23に処理を戻す。
低圧Plを受信していれば(ST23−Yes)、CPU510a〜510cは、受信した低圧Plと記憶部530a〜530cに記憶している目標低圧Pltとの圧力差に応じて、室内ファン55a〜55cおよび室内膨張弁52a〜52cの目標低圧制御を実行する(ST24)。具体的には、CPU510a〜510cは、低圧Plが目標低圧Pltより高い場合は、室内ファン55a〜55cの回転数を低下させ、室内膨張弁52a〜52cの開度を小さくする。また、低圧Plが目標低圧Pltより低い場合は、室内ファン55a〜55cの回転数を上昇させ、室内膨張弁52a〜52cの開度を大きくする。
尚、以上説明したST23およびST24の処理が、冷媒充填運転時の室内機5a〜5cにおける処理となる。
次に、CPU510a〜510cは、通信部530a〜530cを介して室外機2から冷媒充填運転終了信号を受信したか否かを判断する(ST25)。冷媒充填運転終了信号を受信していなければ(ST25−No)、CPU510a〜510cは、ST23に処理を戻し冷媒充填運転時の処理を継続する。冷媒充填運転終了信号を受信していれば(ST25−Yes)、CPU510a〜510cは、通信部530a〜530cを介して室外機2から油回収運転開始信号を受信したか否かを判断する(ST26)。
油回収運転開始信号を受信していなければ(ST26−No)、CPU510a〜510cは、ST26に処理を戻す。油回収運転開始信号を受信していれば(ST26−Yes)、CPU510a〜510cは、油回収運転信号に含まれる、油回収運転時の室内膨張弁52a〜52cの制御態様である気液二相制御および室外ファン55a〜55cの固定回転数Riを抽出する(ST27)。尚、CPU510a〜510cは、抽出した固定回転数Riを記憶部530a〜530cに記憶する。
次に、CPU510a〜510cは、室内ファン55a〜55cの回転数を、記憶部530a〜530cに記憶している固定回転数Riとする(ST28)。次に、CPU510a〜510cは、液側温度センサ61a〜61cで検出した液側冷媒温度Trlと、ガス側温度センサ62a〜62cで検出したガス側冷媒温度Trgとを、センサ入力部540a〜540cを介して取り込む(ST29)。尚、CPU510a〜510cは、取り込んだ液側冷媒温度Trlおよびガス側冷媒温度Trgを記憶部530a〜530cに記憶する。
次に、CPU510a〜510cは、ST29で取り込んだ液側冷媒温度Trlとガス側冷媒温度Trgとが同じ温度となるように、室内膨張弁52a〜52cの気液二相制御を実行する(ST30)。具体的には、CPU510a〜510cは、液側冷媒温度Trlよりガス側冷媒温度Trgの方が高ければ、室内膨張弁52a〜52cの開度を大きくする。
尚、以上説明したST27〜ST30の処理が、油回収運転時の室内機5a〜5cにおける処理となる。
次に、CPU510a〜510cは、通信部530a〜530cを介して室外機2から油回収運転終了信号を受信したか否かを判断する(ST31)。油回収運転終了信号を受信していなければ(ST31−No)、CPU510a〜510cは、ST29に処理を戻し油回収運転時の処理を継続する。油回収運転終了信号を受信していれば(ST31−Yes)、CPU510a〜510cは、室内膨張弁52a〜52cを全閉とする(ST32)。そして、ST32の処理を終えたCPU510a〜510cは、設置時運転に関する処理を終了する。
以上説明したように、本発明の空気調和装置は、冷媒充填運転時に圧縮機から吐出されて冷媒回路内に滞留する冷凍機油を、冷媒充填運転終了後に引き続き行う油回収運転で圧縮機に回収するので、冷媒充填運転後の圧縮機内に充分な量の冷凍機油を確保できる。従って、圧縮機の再起動時に潤滑不良となることを防ぐことができ、圧縮機の故障、破損等を防ぐことができる。