JP6459093B2 - 筆記具インキ用着色剤及びそれを含有する筆記具用インキ組成物 - Google Patents
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Description
また、油性インキに用いられる溶剤として、キシレンやケトン等が多く用いられてきた。これらの溶剤は、人体に対する毒性や臭気等の問題を有するので、アルコールやグリコールのようなアルコール系溶剤が用いられている。しかしながらアルコール系溶剤は親水性であるので、これらの溶剤中に染料を溶解させたインキは耐水性に乏しく、筆跡が水に濡れると染料が滲み出してしまう。そのため書かれた文字の判読が困難になったり、未使用の記録媒体に染料が写って染着したりするという不具合を生じる。
着色剤は、前記化学式(1)で表される造塩染料Xが、カチオンとアニオンとの当量比を2:1とし、下記化学式(4)
着色剤は、例えば、燃焼クーロメトリー法によって測定された前記造塩染料の全塩素量が、50〜1000ppmであるものが挙げられる。
着色剤は、前記造塩染料の鉄含有量が、最大で100ppmであってもよい。
着色剤は、高速液体クロマトグラフィーによって測定された、前記化学式(4)で表される造塩染料と前記化学式(5)で表される造塩染料との存在比が99.1〜85.0:0.9〜15.0%であるものであってもよい。
本発明の筆記具用インキ組成物は、上記の着色剤と、液媒体及び前記液媒体に溶解する樹脂とを含有しており、前記樹脂がスチレン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素アルデヒド樹脂、及び/又はシクロヘキサノン樹脂であるものである。
筆記具用インキ組成物は、前記樹脂が、前記ケトン樹脂、前記ポリビニルピロリドン、及び/又はポリビニルブチラールである前記ポリビニルアセタールであってもよい。
本発明の筆記具用インキ組成物は、低温で析出物を生成せず、安定性と耐水性とに優れ、筆跡のブリード、滲み、及びカスレを生じない。この筆記具用インキ組成物は、これに含まれる着色剤である造塩染料がジスアゾ構造を有しているので、高い堅牢性を発現し耐熱性や耐光性に優れる。また燃焼クーロメトリー法によって測定された全塩素量が極めて低いものであるので、ボールペンのペン先に用いられる金属製のボールやボールチップが腐食しない。
(造塩染料X)
本発明の筆記具用インキ組成物に含まれる着色剤である造塩染料Xは、下記化学式(A1)
で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料と、下記化学式(A2)
この造塩染料Xは、前記化学式(A1)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料から得られるカチオンと前記化学式(A2)で表されるジスアゾ酸性染料から得られるアニオンとの当量比が2:1であることにより、下記化学式(4)
工程1:塩基性染料を溶解する工程
工程2:酸性染料を溶解する工程
工程3:造塩染料を合成し、結晶を析出する工程
工程4:得られた造塩染料の結晶を濾過・水洗する工程
工程5:濾過された造塩染料を乾燥する工程
を少なくとも有する。この製造方法によれば、高純度の造塩染料Xを得ることができる。以下、各工程を詳しく説明する。
工程1は、トリフェニルメタン系塩基性染料と無機酸又は有機酸とを、溶媒に加えて加熱しながら混合し、トリフェニルメタン系塩基性染料を溶解する工程である。この溶媒として、精製水、蒸留水、及び純水のような水やアルコールのような親水性溶媒を挙げることができる。なかでも水が好ましい。無機酸として塩酸、硫酸及び硝酸が挙げられ、有機酸として酢酸、乳酸及びシュウ酸が挙げられる。なかでも塩酸が好ましい。無機酸又は有機酸の量は、トリフェニルメタン系塩基性染料を溶解することができれば特に限定されないが、トリフェニルメタン系塩基性染料に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。混合・溶解の温度は、室温から80℃が好ましい。
[工程2]
工程2は、酸性染料と塩基性物質とを溶媒中で混合して、酸性染料を溶解する工程である。溶媒として水や親水性溶媒が挙げられる。塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムのような水酸化物;炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムのような炭酸塩;アンモニア水を挙げることができ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。塩基性物質の量は、酸性染料を溶解することができれば特に限定されないが、酸性染料に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。酸性染料は、弱アルカリ条件(pH=8〜11)とすることにより、溶媒に溶解し易い。混合・溶解の温度は、室温から90℃が好ましい。
[工程3]
工程3は、工程1の溶液に、pHを弱酸性又は中性に調整しつつ加熱しながら工程2の溶液を加えて造塩染料を合成し、結晶を析出させる工程(工程3−1)、又は工程2の溶液に、pHを弱アルカリ性から弱酸性に調整しつつ加熱しながら工程1の溶液を加え、造塩染料を合成し、pHを弱酸性にして結晶を析出させる工程(工程3−2)である。工程3における反応は、下記化学式(12)で表される。
[工程4]
工程4は、工程3で得られた造塩染料の結晶を濾過・水洗して造塩染料を得る工程である。燃焼クーロメトリー法によって測定された全塩素量が50〜1000ppmである造塩染料を得るためには重要な工程である。工程1〜工程3において生成した無機塩の量を低減するため、濾液の電導度が200μS/cm以下となるように濾過することが好ましい。また必要に応じて、造塩染料を溶解し、この溶解液をイオン交換膜に通じて脱塩処理を行ってもよい。濾過することによって得られた造塩染料の結晶又はウェットケーキに洗浄水を加えることによって、造塩染料を再分散させて水洗することが好ましい。
[工程5]
工程5は、工程4で得られた造塩染料を乾燥させる工程である。乾燥方法として、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、及びスプレードライ乾燥を挙げることができる。
得られた造塩染料Xは、非水溶性で油溶性の染料構造を有しているため、不純物や原料、特に無機塩を除去し易い。
また造塩染料Xは、1分子内に複数のアルキル基を有するトリフェニルメタン構造を有していることによって、インキ組成物のアルコール系溶剤に対して優れた溶解性を発現する。さらにジスアゾ酸性染料が2個のスルホン酸基を有していることがより好ましい。それにより、発色部であるトリフェニルメタン系塩基性染料のアミノ(アンモニウム)骨格が有する発色力と、2個のナフタレン構造を含むアゾ発色部の着色力と、スルホン酸の深色化効果との相乗効果により、造塩染料Xが高濃度に発色する。このような造塩染料Xを含有する筆記具用インキ組成物は、特に黒色に近い濃い紫色を発色することにより、黒色系の色合わせに好適である。そのため特にボールペン用のインキ組成物に好適に用いることができる。
またβ−ナフトールを1分子内に2個有するジスアゾ酸性染料を選択することにより、造塩染料Xの堅牢性が向上して、耐熱性や耐光性が向上する。
さらに用いられるジスアゾ酸性染料は、ジフェニル骨格に2個のスルホン酸基を有しているので、高い水溶性を有している。このため、造塩染料Xの製造工程において、未反応のジスアゾ酸性染料が残存していたとしても、水洗することによって容易に取り除くことができ、造塩染料Xの純度を高めることができる。
本発明の筆記具用インキ組成物に含まれる着色剤である造塩染料Yは、下記化学式(14)
全塩素測定の燃焼クーロメトリー法によって測定された造塩染料Yの全塩素量は、造塩染料Xと同様に、50ppm〜1000ppmであることが好ましく、50ppm〜800ppmであることがより好ましく、100ppm〜700ppmであることがより一層好ましい。
造塩染料Yは、造塩染料Xとほぼ同様の効果を奏する。筆記具用インキ組成物中に極性を有する少量の造塩染料Yが含まれていることにより、造塩染料X及び造塩染料Yの液媒体への溶解性が高められるので、造塩染料X及び造塩染料Yが筆記具用インキ組成物中で析出しない。その結果この筆記具用インキ組成物は、筆跡にカスレのような不具合を生じさせないので、高濃度の造塩染料を含有するボールペン用インキ組成物に好適に用いられる。このような筆記具用インキ組成物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定された造塩染料Xと造塩染料Yとの存在比は、造塩染料X:造塩染料Y=99.1〜85.0:0.9〜15.0%であることが好ましく、94.5〜85.5:5.5〜14.5%であることがより好ましく、90.5〜86.0:9.5〜14.0%であることがより一層好ましい。
本発明の造塩染料X及び/又は造塩染料Yは紫色系の着色剤であるので、黒色配合着色剤に好適に用いることができる。黒色筆記具用のインキ組成物を調製するのに、造塩染料X及び/又は造塩染料Yと、赤、青、及び黄の3色(色の三原色)の染顔料とを組合せて黒色配合着色剤を調製することが好ましい。これらの色味や配合比率は、表現されるべき色味に応じて任意に設定される。例えば紫と黄の2色基本配合を設定しておき、その他の染顔料を組合せることができる。これらの染顔料として、公知の黄色、赤味の黄色(オレンジ)、及び赤色染顔料を用いることができる。
赤味の黄色(オレンジ色)染料の具体的な例として、C.I.Solvent Orange 1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、19、20、37、37.1、40、40:1、49等;C.I.Basic Orange 2、22等を挙げることができる。
赤色染料の具体的な例として、C.I.Solvent Red 8、13、14、18、30、35、36、37、38、39、46、49、52、79、81、82、83、96、99、100、102、109、112、113、115、119、122、124、127、128、142、184、185、186、187、203、204、205、206等;C.I.Basic Red 1等を挙げることができる。
赤味の黄色(オレンジ色)顔料の具体的な例として、C.I.Pigment Orange 5、13、16、34、36、38、43、62、68、72、74等を挙げることができる。
赤色顔料の具体的な例として、C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、25、30、31、32、37、38、39、40、41、42、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、49:3、50、50:1、50:2、50、52、52:1、52:2、52:3、53:1、53:2、54、55、56、57、57:1、57:2、58、58:1、58:2、58:3、58:4、59、60、60:1、101、104、112、122、144、146、149、166、170、175、176、177、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、211、213、214、242、253、254、255、256、257、264、266、268、270、272等を挙げることができる。
黒色含金染料の具体的な例として、C.I.Solvent Black 15、22、22:1、23、25、26、27、28、29、30、34、35、36、37、38、40、41、42、43、45、47、48等を挙げることができる。
黒色顔料の具体的な例として、C.I.Pigment Black 1、6、7、11、28、30等を挙げることができる。
このような染料として、公知の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、造塩染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化染料、硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶性染料、食用染料、及び金属錯塩染料が挙げられる。これらの染料として、アゾ系染料、アントラキノン系染料、オキサジン系染料、フタロシアニン系染料、キナクリドン系染料、キノフタロン系染料、トリフェニルメタン系染料、ペリノン系染料、及びペリレン系染料等を挙げることができる。染料の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して0.01〜50質量%であることが好ましい。
また前記染料は、市場において入手可能な造塩染料が好ましい。この造塩染料として、
VALIFAST(登録商標) YELLOW 1101、1103、1109、3108、3120、3150、3170、3180、4120、4121等;
VALIFAST ORANGE 1201、2210、3208、3209、3210等;
VALIFAST RED 1308、1320、1364、1388、2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320等;
VALIFAST PINK 2310N、2312等;
VALIFAST BROWN 2402、3402、3405等;
VALIFAST GREEN 1501等;
VALIFAST BLUE 1605、1613、1621、1631、2620、2670、2680等;
VALIFAST VIOLET 1701、1702、1704、1705等;
VALIFAST BLACK 1807、1821、3804、3806、3808、3810、3820、3830、3840、3870、3877等;
OIL BLUE 613等;OIL PINK 312等(以上、オリヱント化学工業社製)
C.I.Basic Red 1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;C.I.Basic Red 1:1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;C.I.Basic Red 2と有機酸との造塩染料;C.I.Basic Yellow 1と有機酸との造塩染料;C.I.Basic Yellow 2と有機酸との造塩染料;C.I.Basic Yellow 51と有機酸との造塩染料;C.I.Basic Yellow 52と有機酸との造塩染料;C.I.Acid Black 51と有機アミンとの造塩染料;C.I.Acid Black 52と有機アミンとの造塩染料等が挙げられる。
前記顔料は、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン顔料のような無機顔科;タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナシリケートのような体質顔科;アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料のような有機顔料;蛍光顔料、パール顔料、金色、銀色のようなメタリック顔料が挙げられる。
また潤滑性を有する黒色顔料として、黒鉛(グラファイト)が好ましい。黒鉛は、人造黒鉛及び天然黒鉛を使用でき、鱗片上黒鉛、塊状黒鉛、及び土状黒鉛を、必要に応じた性状と大きさのものを使用できる。
他の黒色顔料として、プリンテックス3、25、30、35、40、45、55、60、75、80、85、90、95、300、スペシャルブラック4、5、100、250、550(以上、エボニックデグサジャパン社製)。
三菱カーボンブラック#2700、#2650、#2600、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#260、#95#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、MCF88、MA600、MA77、MA7、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA230(以上、三菱化学社製)、
トーカブラック#8500/F、#8300/F、#7550SB/F、#7400、#7360SB/F、#7350/F、#7270SB、#7100/F、#7050(以上、東海カーボン社製)等のカーボンブラックや、
ダイヤモンドブラックN(玉億色材社製)等のアニリンブラックや、ボーンブラック(三重カラーテクノ社製)や、鉄化ブラックKN−320(日本鉄化社製)等の鉄黒が挙げられる。
黄色顔料、赤味の黄色(オレンジ色)顔料、及び赤色顔料は、黒色配合着色剤に含まれるものと同様のものを使用できる。
青色顔料として、C.I.Pigment Blue 2、9、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、28、29、36、60、68、76、80等が挙げられる。
緑色顔料として、C.I.Pigment Green 7、36、37等が挙げられる。
紫色顔料として、C.I.Pigment Violet 19、23等が挙げられる。
これらの顔料は、単独又は複数が混合されたものであってもよい。
必要に応じて無機顔料の分散体や染料が添加された加工顔料を用いてもよい。さらに、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィンのようなモノマーを重合して得られる樹脂エマルション、筆記具用インキ組成物中で膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、又はこれらのエマルションが着色剤で染着された染着樹脂粒子である有機多色顔料を用いてもよい。
顔料は、ディゾルバーのような攪拌機により攪拌されることによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミルのような粉砕機により混合粉砕された後、遠心分離や濾過されることで粗大粒子、未溶解物、及び混入固形物が取り除かれていることが好ましい。
本発明の筆記具用インキ組成物は、少なくとも造塩染料X及び造塩染料Yのいずれかを含有し、さらに必要に応じて染顔料のような着色剤が配合されることにより得られる配合着色剤と、液媒体と、この液媒体に溶解する樹脂とを含むものであり、ボールペン、マーキングペン、サインペンのような筆記具に充填されることにより好適に用いられる。筆記具用染料又は配合着色剤の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.10〜30質量%であることが好ましく、0.50〜25質量%であることがより好ましい。含有量が0.10質量%未満であると、筆記具用インキ組成物の着色力、発色性が不十分となってしまう。一方30質量%を超えると筆跡にカスレが生じてしまう。
この筆記具用インキ組成物によれば、造塩染料X、造塩染料Y、及び配合着色剤の少なくとも一種の着色剤を含有する油性のインキを処方でき、このインキが充填された筆記具による筆跡は、耐水性及び耐ブリード性に優れている。
アルコール系溶剤は、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3−ペンタノール、tert-アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n-ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
多価アルコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコールのような分子内に2個以上の炭素、2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール、及びこれらの誘導体が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤として、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、なかでも炭素数2〜7のグリコールエーテルが好ましい。
ジエーテル系溶剤として、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、分子内にヒドロキシ基を有しないジエステルが挙げられる。
このような樹脂として、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンのようなケトン系樹脂;ポリスチレンのようなスチレン系樹脂;ポリビニルブチラールのようなポリビニルアセタール;ポリビニルピロリドン;ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂のようなマレイン酸系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂のようなフェノール系樹脂;スチレン−アクリル樹脂のようなアクリル系樹脂;ロジン系樹脂;尿素アルデヒド系樹脂;シクロヘキサノン系樹脂が挙げられる。なかでもポリビニルブチラール樹脂が好ましい。造塩染料X及び造塩染料Yは、製造工程における水洗によって未反応の酸性染料のような遊離した酸成分を有していないので、この酸成分によるポリビニルブチラール樹脂の加水分解を生じさせず、筆記具用インキ組成物は経時安定性や保存安定性に優れている。そのためポリビニルブチラール樹脂を選択することによって、筆記具用インキ組成物に良好な造膜性や高い増粘作用を付与できる。
潤滑剤として、オレイン酸のような高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アシルアミノ酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩のリン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独又は複数が混合されたものであってもよい。潤滑剤を含む筆記具用インキ組成物は、ボールペンのボールチップのボール受け座の摩耗防止効果を発現する。
潤滑性をさらに向上させる微粒子が筆記具用インキ組成物に含まれていてもよい。この微粒子として、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系の樹脂微粒子やアルミナ微粒子、シリカ微粒子が挙げられる。なかでも、球状のシリカ微粒子が好ましい。微粒子がボールチップのボール受け座とボールとの間隙に入り込むことにより、ボール受け座とボールとの金属接触が抑制されるので、潤滑性が向上する。
せん断減粘性付与剤として、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカが挙げられる。せん断減粘性付与剤を含んでいることにより、ボールペンのボールとボールチップとの間隙から筆記具用インキ組成物が遺漏せず、またボールチップを上向き(正立状態)でボールペンが放置された場合に筆記具用インキ組成物が逆流しない。
粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンのような合成高分子物質;グァーガム、ローカストビーンガムのような種子多糖類及びその誘導体;ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、のような微生物系多糖類及びその誘導体;カラーギナン、アルギン酸のような海藻多糖類及びその誘導体;タラガントガムのような樹脂多糖類;セルロース系樹脂;ピロリドン系樹脂が挙げられる。
レベリング剤として、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
防錆剤として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン、エチレンジアミン四酢酸、金属塩系化合物、及びリン酸エステル系化合物が挙げられる。
防腐剤として、ベンゾイソチアザリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、イソチアゾロン、オキサゾリジン系化合物が挙げられる。
表面張力調整剤として、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
酸化防止剤として、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類が挙げられる。
紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル5’−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及びp−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのようなシリコーン系化合物、鉱物油、及びフッ素系化合物が挙げられる。
湿潤剤として、グリセリン、ソルビタン系化合物、多糖類、尿素、エチレン尿素又はこれらの誘導体が挙げられる。
分散助剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
pH調整剤として水酸化ナトリウム、アルカノールアミン、アミン、アンモニウムのようなアルカリ化剤が挙げられる。
ボールペンの構造や形状は特に限定されないが、例えばボールを先端のボール受け座に装着したボールチップを先端部に接続させているインキ収容管が軸筒の内空に収容され、このチップが軸筒の先端から突き出ている構造を有しているボールペンを挙げることができる。インキ収容管の開口した基端から筆記具用インキ組成物が充填された後、基端の開口は逆流防止の液栓又は逆流防止体で塞がれる。ボールが筆記媒体上を転がることにより、ボールチップとボールとの間隙からボール表面に筆記具用インキ組成物が供給され、筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なお軸筒やインキ収容管は、樹脂成形物や金属加工体である。
マーキングペンの構造や形状は特に限定されないが、例えば軸筒の内空に、繊維束で形成されたインキ吸蔵体と、これに一体化したペン芯が軸筒の先端から突き出ている構造や、これに加えて軸筒の先端部に、繊維束で形成された櫛溝状のインキ流量調節部材を有しているマーキングペンを挙げることができる。筆記具用インキ組成物が、軸筒に充填されることにより、インキ吸蔵体に含浸される。ペン芯に筆記具用インキ組成物が供給され、繊維チップが紙のような筆記媒体にこすり付けられることにより、筆記具用インキ組成物が筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なおペン芯は、繊維束製、フェルト製、又はプラスチック製を用いることができる。
なお、製造例及び比較製造例で用いた水の電気伝導度は、全て22.5℃において148μS/cmである。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−1の合成
[造塩染料A−1]
造塩染料A−1を、塩素・硫黄分析装置(三菱化学アナリテック社製、製品名:TOX−2100H)にて全塩素の含有量を測定したところ、356ppmであった。
造塩染料A−1の吸光度を次の条件で測定した。造塩染料A−1を0.050g秤量し、ベンジルアルコール10mLに溶解させ、100mLメスフラスコに入れ1−メトキシ−2−プロパノールで100mLとした。この溶液1mLをホールピペットで秤量して100mLメスフラスコに移し、1−メトキシ−2−プロパノールを加えて100mLとした。この溶液の吸光度を、紫外線可視分光光度計(島津製作所社製、製品名:UV−1700 UV−VISIBLE SPECTROPHOTOMETER)にて測定した。結果を図1に示した。
造塩染料A−1を、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名:iCAP7400Duo)で、鉄の含有量を測定したところ、11ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−2の合成
[造塩染料A−2]
造塩染料A−2の化学式は、造塩染料A−1の化学式(A−1)と同一である。
2Lビーカーに水1700gを入れて75℃に加熱し、35.4gのトリフェニルメタン塩基性染料C(鉄含有量65ppm)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させて(pH=3.0)、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水410gを入れて75℃に加熱し、26.4gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させて(pH=8.1)、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを42分間で滴下し、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を徐々に加えてpH=8.7に調整し、50℃にて1時間反応した。71℃まで加熱した後30℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が199μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥し、造塩染料A−2を得た(収量=49.4g)。
得られた造塩染料A−2について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ387ppmであり、鉄の含有量を測定したところ31ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−3の合成
[造塩染料A−3]
造塩染料A−3の化学式は、造塩染料A−1の化学式(A−1)と同一である。
2Lビーカーに水1700gを入れて75℃に加熱し、35.4gのトリフェニルメタン塩基性染料C(鉄含有量39ppm)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.3)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.8とした後濾過し、濾液を2Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水410gを入れて75℃に加熱し、26.4gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.0)。この溶液に炭酸ナトリウム2.4gを加えpH=10.0とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Bに溶液−Aを65分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=8.1)。71℃まで加熱した後30℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が205μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥し、造塩染料A−3を得た(収量=50.5g)。
得られた造塩染料A−3について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ401ppmであり、鉄の含有量を測定したところ18ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Dとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−4の合成
[造塩染料A−4]
得られた造塩染料A−4について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ341ppmであり、鉄の含有量を測定したところ15ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=88:12%とジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−5の合成
[造塩染料A−5]
得られた造塩染料A−5について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ386ppmであり、鉄の含有量を測定したところ31ppmであった。
得られた造塩染料A−5の吸光度を、造塩染料A−1と同様に測定した。結果を図2に示した。
得られた造塩染料A−5について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC 島津製作所社製 検出器;SPD−M20A、カラムオーブン;CTO−20A、ポンプ;LC−20AT、デガッサー;DGU−20A3)を用い、以下の測定条件にて測定を行い、トリフェニルメタン塩基性染料Cとトリフェニルメタン塩基性染料Dとの存在比を算出した。
サンプル0.005gを溶離液3mLに溶解させ、超音波洗浄器に30分かけ、平均ポア径が0.5μmのメンブランフィルターで濾過してサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。カラム;L−Column ODS (4.6×250mm)、カラムオーブン温度;45℃、流速;1.0mL/分、試料注入量;5μL、検出波長;254nm、溶離液;アセトニトリル:0.01mol/L−KH2PO4:リン酸=8:2:0.03
測定結果を島津製作所社製の解析ソフトウエア「LC solution LC−Assist」を用いて以下の条件で解析した。
Width;5秒、slope;300μV/分、Drift;0μV/分、T.DBL;1000分、最少面積/高さ;10000
保持時間=4〜7分に検出されたトリフェニルメタン塩基性染料C(前記化学式(17)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料)、及び保持時間=2〜4分に検出されたトリフェニルメタン塩基性染料D(前記化学式(18)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料)の存在比を、各面積値の割合から算出した。その結果、トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=88.1:11.9%であった。
トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=91:9%とジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−6の合成
[造塩染料A−6]
造塩染料A−6の化学式は、造塩染料A−5の化学式(A−5)と同一である。
2Lビーカーに水1100gを入れて75℃に加熱し、20.0gのトリフェニルメタン塩基性染料C(鉄含有量31ppm)及び1.9gのトリフェニルメタン塩基性染料D(鉄含有量46ppm)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.2)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を3Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水250gを入れて75℃に加熱し、15.7gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.2)。この溶液に炭酸ナトリウム1.4gを加えpH=10.1とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを27分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.7)。71℃まで加熱した後30℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が175μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥し、造塩染料A−6を得た(収量=31.2g)。
得られた造塩染料A−6について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ428ppmであり、鉄の含有量を測定したところ18ppmであった。
得られた造塩染料A−6について、造塩染料A−5と同様にHPLCにより存在比を測定したところ、トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=90.2:9.8%であった。
トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=70:30%とジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との造塩染料A−7の合成
[造塩染料A−7]
造塩染料A−7の化学式は、造塩染料A−5の化学式(A−5)と同一である。
2Lビーカーに水1400gを入れて75℃に加熱し、20.0gのトリフェニルメタン塩基性染料C(鉄含有量35ppm)及び8.1gのトリフェニルメタン塩基性染料D(鉄含有量37ppm)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.1)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.5とした後濾過し、濾液を3Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水320gを入れて75℃に加熱し、20.4gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.2)。この溶液に炭酸ナトリウム1.8gを加えpH=10.0とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを37分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.2)。71℃まで加熱した後30℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が271μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥し、造塩染料A−7を得た(収量=34.7g)。
得られた造塩染料A−7について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ423ppmであり、鉄の含有量を測定したところ17ppmであった。
得られた造塩染料A−7について、造塩染料A−5と同様にHPLCにより存在比を測定したところ、トリフェニルメタン塩基性染料C:トリフェニルメタン塩基性染料D=71.3:28.7%であった。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料B−1の合成
[比較造塩染料B−1]
得られた比較造塩染料B−1について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ468ppmであり、鉄の含有量を測定したところ325ppmであった。
得られた比較造塩染料B−1の吸光度を、造塩染料A−1と同様に測定した。結果を図3に示した。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとモノアゾ酸性染料C.I.Acid Yellow 36との比較造塩染料B−2の合成
[比較造塩染料B−2]
得られた比較造塩染料B−2について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ1524ppmであり、鉄の含有量を測定したところ26ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Basic Violet 3とジスアゾ酸性染料C.I.Acid Yellow 42との比較造塩染料B−3の合成
[比較造塩染料B−3]
得られた比較造塩染料B−3について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ1120ppmであり、鉄の含有量を測定したところ31ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Yellow 42との比較造塩染料B−4の合成
[比較造塩染料B−4]
得られた比較造塩染料B−4について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ427ppmであり、鉄の含有量を測定したところ225ppmであった。
トリフェニルメタン塩基性染料Cとジスアゾ酸性染料C.I.Acid Red 97との比較造塩染料B−5の合成
[比較造塩染料B−5]
造塩染料B−5の化学式は、造塩染料A−1の化学式(A−1)と同一である。
2Lビーカーに水1700gを入れて75℃に加熱し、35.4gのトリフェニルメタン塩基性染料C(鉄含有量265ppm)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.1)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を3Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水410gを入れて75℃に加熱し、26.4gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.1)。この溶液に炭酸ナトリウム2.4gを加えpH=10.1とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを46分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.6)。71℃まで加熱した後30℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が1.2mS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥し、比較造塩染料B−5を得た(収量=52.7g)。
得られた比較造塩染料B−5について、造塩染料A−1と同様に、全塩素の含有量を測定したところ1399ppmであり、鉄の含有量を測定したところ122ppmであった。
造塩染料A−1〜A−7及び比較造塩染料B−1〜B−5と市販されている染料とを夫々粉体混合して、表1に示す実施例用配合着色剤1〜7と、比較例用配合着色剤8〜13とを、調製した。なお表1中、VALIFAST YELLOW 1103(C.I.Acid Yellow 42の有機アミン塩)、VALIFAST RED 1308(C.I.Basic Red 1と C.I.Acid Yellow 42との造塩染料)、VALIFAST BLACK 1815(C.I.Acid Black 1の有機アミン塩)、及びVALIFAST BLACK 1821(C.I.Solvent Black 7の有機酸塩)は、オリヱント化学工業社製の油溶性染料である。
実施例1〜7、及び比較例1〜6のボールペン用インキ組成物を、夫々20mLのガラス瓶に15mL入れ、密栓した後完全に溶解させ、0℃の恒温槽にて1ヶ月間放置した。その後、ガラス瓶中のボールペン用インキ組成物の表層及び下層を、目視した。それにより膜状物質の有無、及び析出物の有無を観察した。結果を下記の四段階で評価し、その結果を表3に示した。
膜状物質及び析出物が極僅かに観察された:△
膜状物質及び析出物が観察された:×
ボールペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
実施例1〜7及び比較例1〜6のボールペン用インキ組成物を、内径1.6mmのポリプロピレン製チューブに適量充填し、先端にボール(超硬合金製、直径1.0mm)が取り付けられたステンレス製ボールチップに装着した。さらにチューブの基端部にインキ追従体を入れ、チューブを軸筒に挿入してボールチップを覆うようにキャップを嵌め、評価試験用ボールペンを作製した。
作製したボールペンのキャップを取り、25℃湿度65%下にて1時間放置した後、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
カスレが生じ難かった:○
カスレがやや生じた:△
カスレが生じ易かった:×
ボールペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
造塩染料A−1〜A−7及び比較造塩染料B−1〜B−5と市販されている染料とを夫々粉体混合して、表4に示す実施例用配合着色剤14〜19と、比較例用配合着色剤20〜25とを、調製した。
実施例8〜13、及び比較例7〜12のマーキングペン用インキ組成物を、夫々20mLのガラス瓶に15mL入れ、密栓した後、0℃の恒温槽にて1ヶ月間放置した。その後、ガラス瓶中のマーキングペン用インキ組成物の表層及び下層を、目視した。それにより膜状物質の有無、及び析出物の有無を観察した。結果を下記の四段階で評価した。その結果を表6に示した。
膜状物質及び析出物が観察されなかった:○
膜状物質及び析出物が極僅かに観察された:△
膜状物質及び析出物が観察された:×
マーキングペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
実施例10〜17、及び比較例5〜8のマーキングペン用インキ組成物を、フェルト製のペン芯を有するマーキングペン(三菱鉛筆社製、製品名:油性ピースマーカー)に適量充填し、ペン芯を覆うようにキャップを嵌め、評価用マーキングペンを作製した。
作製したマーキングペンのキャップを取り、25℃湿度65%下にて1分間放置した後、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
カスレが生じ難かった:○
カスレがやや生じた:△
カスレが生じ易かった:×
マーキングペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
実施例14〜16、及び比較例13〜15のボールペン用インキ組成物を調製し、下記の試験を行った。
造塩染料A−1、A−5、及びA−6と、市販されている染料(VALIFAST BLACK 1815)とを夫々粉体混合して、配合着色剤を調製した。さらにこの配合着色剤、樹脂、及び液媒体を、ディスパー撹拌して、実施例14〜16のボールペン用インキ組成物を調製した。これと同様にして、比較造塩染料B−2、B−3、及びB−5を、用いて比較例13〜15のボールペン用比較インキ組成物を調製した。
実施例14〜16、及び比較例13〜15のボールペン用インキ組成物を50mLのガラス瓶に45mL入れ、上記のボールペンのボールチップと同じ材質のステンレス板(1cm四方、厚さ3mm)を全て浸漬させた。30℃の恒温槽にて1ヶ月間放置後、ステンレス板を取り出し、メタノールで洗浄後、表面を観察し、腐食による表面光沢の落ち度合いを目視にて行い、下記の三段階で評価した。
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が全くなかった:○
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が極僅かに確認された:△
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が明らかに確認された:×
実施例17〜20、並びに比較例16及び17のボールペン用インキ組成物を調製し、下記の試験を行った。
造塩染料A−1、及びA−5〜A−7と、市販されている染料(VALIFAST BLACK 1815)とを夫々粉体混合して、配合着色剤を調製した。さらにこの配合着色剤、樹脂、及び液媒体を、ディスパー撹拌して実施例17〜20のボールペン用インキ組成物を調製した。これと同様にして、比較造塩染料B−4及びB−5を用いて比較例16及び17のボールペン用インキ組成物を調製した。
実施例17〜20、並びに比較例16及び17のボールペン用インキ組成物を50mLのガラス瓶に45mL入れ、60℃の恒温槽にて1ヶ月間放置後した。実施例及び比較例のボールペン用インキ組成物の夫々をプレパラートにのせて、結晶の発生を光学顕微鏡(400倍)にて観察し、下記の三段階で評価した。
結晶が全くなかった:○
結晶が僅かに確認された:△
結晶が多量に確認された:×
(ボールペン用インキ組成物の筆記性評価)
上記で得られた実施例17〜20、並びに比較例16及び17のボールペン用インキ組成物を用いて、実施例1〜7と同様にして、評価試験用ボールペンを作製した。作製したボールペンを用いて、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
スムーズに筆記でき、カスレが生じ難かった:○
筆記できたが、カスレがやや生じた:△
筆記し難く、カスレが多く生じた:×
筆記できなかった:××
Claims (7)
- 下記化学式(1)
であり、R2は水素原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子であり、M及びNは互いに独立して水素原子又はアルカリ金属であり、mは0〜1の数であり、nは0〜1の数であり、ただしm及びnがともに1の場合を除く)
である)
で表される造塩染料と、下記化学式(5)
であり、R2は水素原子、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子である)
で表される造塩染料とを、含有することを特徴とする筆記具インキ用着色剤。 - 燃焼クーロメトリー法によって測定された前記造塩染料の全塩素量が、50〜1000ppmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具インキ用着色剤。
- 前記造塩染料の鉄含有量が、最大で100ppmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の筆記具インキ用着色剤。
- 高速液体クロマトグラフィーによって測定された、前記化学式(4)で表される造塩染料と前記化学式(5)で表される造塩染料との存在比が99.1〜85.0:0.9〜15.0%であることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の筆記具インキ用着色剤。
- 請求項1に記載の筆記具インキ用着色剤と、液媒体及び前記液媒体に溶解する樹脂とを含有しており、前記樹脂がスチレン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素アルデヒド樹脂、及び/又はシクロヘキサノン樹脂であることを特徴とする筆記具用インキ組成物。
- 前記樹脂が、前記ケトン樹脂、前記ポリビニルピロリドン、及び/又はポリビニルブチラールである前記ポリビニルアセタールであることを特徴とする請求項6に記載の筆記具用インキ組成物。
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