JP6859652B2 - 高周波通信装置及び高周波通信装置用電磁波吸収体の製造方法 - Google Patents
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Description
α=Ad(εμ)0.5/(μ”+ε”μ/ε) (1)
式(1)において、dは前記電磁波吸収体の厚さ、ε,ε”,μ,μ”はそれぞれ前記電磁波吸収体の誘電率、誘電率の損失項、透磁率、透磁率の損失項であり、A=8×104/π[Ω/m]である。
ここで、αは、以下の式(1)で表されるパラメータである。
α=Ad(εμ)0.5/(μ”+ε”μ/ε) (1)
式(1)において、dは前記電磁波吸収体の厚さ、ε,ε”,μ,μ”はそれぞれ前記電磁波吸収体の誘電率、誘電率の損失項、透磁率、透磁率の損失項である。AおよびΔは所望される電磁波減衰率に応じて定められる定数である。
本発明の一実施形態にかかる電磁波吸収体は、例えば、高周波通信装置において、金属製の筐体内に設けて使用することができる。筐体内を伝搬する電磁波を減衰させることで、電気信号間のカップリングや、筐体内における電磁波の共振を抑制することができる。まず、そのような電磁波吸収体を備えた高周波通信装置1について、簡単に説明する。
次に、上記で高周波通信装置1に設けられる本発明の一実施形態にかかる電磁波吸収体15について、詳細に説明する。上記のように、電磁波吸収体15は、非金属材料よりなるマトリクス中に軟磁性粒子が分散されたシート体として形成されている。
そして、αパラメータが、式(2)の条件を満たす。
なお、式(1)において、dは電磁波吸収体15の厚さ、ε,ε”,μ,μ”はそれぞれ電磁波吸収体15の誘電率、誘電率の損失項、透磁率、透磁率の損失項である。また、Aは定数であり、A=8×104/π[Ω/m]である。
・軟磁性粒子の種類(成分組成、粒径、粒子形状等)
・マトリクス材料の種類
・軟磁性粒子の含有量(充填率)
・厚さd
・適用周波数f
図2に、独立した電磁波吸収体15に電磁波が入射した際の挙動を模式的に示す。入射波W1の成分の一部は、電磁波吸収体15の表面で反射され、反射波となる。残りの成分W2は、電磁波吸収体15の内部に進入する。電磁波吸収体15の内部に進入した電磁波の成分の一部は、吸収体15の裏側の面から出射し、透過波W3となる。残りの成分W4は、電磁波吸収体15の内部で、反射を受ける。この成分W4が(多重)反射を受けて電磁波吸収体15の膜内を進む間に、電磁波吸収体15を構成する材料によって、エネルギーを吸収され、エネルギーが減衰する(吸収減衰)。
・P[W/m3]:吸収エネルギー
・μ0[H/m]:真空の透磁率
・μ r :比透磁率
・μ r ”:比透磁率の損失項
・ε0[A/m]:真空の誘電率
・ε r :比誘電率
・ε r ”:比誘電率の損失項
・ρ[Ωm]:抵抗率
・H[A/m]:磁界強度
・E[V/m]:電界強度
・f[Hz]:周波数
なお、電磁波吸収体15の複素透磁率μ[H/m]および複素誘電率ε[A/m]は、以下のように表される。
式(5)より、電界強度Eと磁界強度Hの関係は以下のようになる。
すると、式(3)を式(7)のように整理することができる。
上記の説明では、電磁波吸収体15の内部に入射した電磁波の吸収減衰のみを考慮していた。しかし、実際には、筐体10の内壁面に貼り付けられた電磁波吸収体15において、電磁波が干渉を起こすはずである。
ここで、mを0以上の整数(m=0,1,2,…)として、α=mのとき、2つの反射波W6、W8の位相が重なり、反射波W6、W8が相互に強め合う。一方、α=m+1/2のとき、反射波W6とW8で位相が半波長分ずれることになり、逆位相となるので、反射波W6、W8は相互に打ち消し合う。
以上のように、電磁波吸収体15による電磁波の減衰には、吸収エネルギーPの効果だけでなく、干渉の効果が影響する。そこで、両者の効果を統合して考慮する必要がある。
とおく。そして、式(4−1)および式(4−2)も利用して式(15)を整理すると、冒頭で挙げた式(1)が得られる。
上記のように、電磁波の吸収エネルギーPは、電磁波吸収体15の材料構成によって定まる定数であるので、Aも定数となる。
を満たすように、上記各パラメータを選定すればよい。Δ=3/10とすれば、冒頭に挙げた式(2’)が得られる。
このようにすれば、電磁波吸収体15の材料構成および厚さdにある程度広い許容範囲をもたせながら、電磁波に対して高い減衰率を示す電磁波吸収体15とすることができる。
さらにΔ=3/10とすれば、式(2)が得られる。
となる。さらにΔ=3/10とすれば、式(2”)が得られる。
電磁波吸収体15に分散される粒子を構成する軟磁性材料の成分組成は、特に指定されるものではない。軟磁性材料は、代表的には金属よりなる。好適な軟磁性材料として、センダスト、Fe、Fe−Si系合金、Fe−Ni系合金(パーマロイ)、Fe−Co系合金、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Cr−Si系合金、フェライト系ステンレス合金、オーステナイト系ステンレス合金、Ni基合金、Co基合金、Ni−Cr系合金、フェライトを挙げることができる。それらの材料を用い、溶湯噴霧法等によって、粒子を形成すればよい。上記のうち、Fe−Si系合金、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Si系合金が、高周波の電磁波に対して特に良好な減衰特性を示す。
まず、溶湯噴霧法により、以下個別に示す各種成分組成と粒径を有する軟磁性粒子を作製した。そして、得られた軟磁性材料よりなる粒子を、所定の含有量となるように、可塑性アクリル樹脂またはシリコーン樹脂に添加し、撹拌混合脱泡機を用いてスラリー混合した。得られた混合スラリーを型枠に流し込んで、シート状とした。そして、乾燥、型抜き、厚み調整を行い、評価対象とする電磁波吸収体試料を得た。
上記で得られた各種電磁波吸収体試料について、電磁波の透過率を、図4に基づいて上記で説明したように、導波管を用いて計測した。評価には、評価対象の周波数に応じて、JIS WRJ−22で規定される方形導波管を用いた。この導波管20の内壁面に、上記で得られた電磁吸収体試料を貼り付けた。
図5において模式的に示したような電磁波吸収体の厚さと透過率の関係が実際に得られるかどうかを確認した。まず、軟磁性粒子としてFe−13Cr−1Siよりなるものを用い、マトリクス材料としてアクリル樹脂を用いて、電磁波吸収体試料を作製した。軟磁性粒子の粒径は、9.1μmと6.6μmの2とおりとし、軟磁性粒子の含有量は、50体積%とした。厚さの異なる電磁波吸収体試料を複数作成した。そして、上記のように、導波管を用い、評価対象の周波数を24GHzに設定して、100mmあたりの透過率S21を計測した。
表1に、電磁波吸収体試料の構成材料、軟磁性粒子の含有量、厚さ、適用周波数を様々に異ならせた場合について、式(1)に基づいて算出したαの値と、実測された透過率S21の値を示す。なお、式(1)においては、A=8×104/π[Ω/m]とした。αの算出には、ネットワークアナライザを用いた透過率S21の周波数応答の計測結果に基づいて得られたε’、ε”、μ’、μ”の値を用いており、それらも表1に併せて示す。なお、表1では、αの値を表示する際に、含まれる最大の整数mの寄与を差し引いた値であるα’を、分母500の分数として表示している(0<α’<1、α=m+α’)。
15 電磁波吸収体
20 導波管
Claims (10)
- 金属材料よりなる筐体と、
前記筐体に収容され、高周波信号を入力する入力部と、前記高周波信号を出力する出力部とをマイクロストリップ線路として備えた処理回路と、を有する高周波通信装置において、
前記筐体の内側の面のうち、前記処理回路に対向する天井面と、前記入力部と前記出力部を結ぶ方向に沿った側方面と、から選択される少なくとも1つの面に、
非金属材料よりなるマトリクス中に軟磁性材料よりなる粒子を分散させたシート状の電磁波吸収体が設けられ、
前記電磁波吸収体は、mを0以上の整数として、m+1/5≦α≦m+4/5を満たし、前記入力部と前記出力部を結ぶ方向に、シート面に略平行に伝搬する、1GHz以上100GHz以下の範囲内の適用周波数の電磁波を吸収減衰することで、前記マイクロストリップ線路における信号のカップリングを低減することを特徴とする高周波通信装置。
ここで、αは以下の式(1)で表されるパラメータである。
α=Ad(εμ)0.5/(μ”+ε”μ/ε) (1)
式(1)において、dは前記電磁波吸収体の厚さ、ε,ε”,μ,μ”はそれぞれ前記適用周波数における前記電磁波吸収体の誘電率、誘電率の損失項、透磁率、透磁率の損失項であり、A=8×104/π[Ω/m]である。 - m=0であることを特徴とする請求項1に記載の高周波通信装置。
- 前記電磁波吸収体の厚さdが、1μm以上、20mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高周波通信装置。
- 前記電磁波吸収体における前記軟磁性材料よりなる粒子の含有量が30体積%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高周波通信装置。
- 前記電磁波吸収体における前記軟磁性材料よりなる粒子の含有量が50体積%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の高周波通信装置。
- 前記適用周波数は、20GHz以上100GHz以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高周波通信装置。
- 金属材料よりなる筐体と、
前記筐体に収容され、高周波信号を入力する入力部と、前記高周波信号を出力する出力部とをマイクロストリップ線路として備えた処理回路と、を有する高周波通信装置において、
前記筐体の内側の面のうち、前記処理回路に対向する天井面と、前記入力部と前記出力部を結ぶ方向に沿った側方面と、から選択される少なくとも1つの面に設けられ、
前記入力部と前記出力部を結ぶ方向に、シート面に略平行に伝搬する、1GHz以上100GHz以下の範囲内の適用周波数の電磁波を吸収減衰することで、前記マイクロストリップ線路における信号のカップリングを低減する、非金属材料よりなるマトリクス中に軟磁性材料よりなる粒子を分散させたシート状の電磁波吸収体を製造するに際し、
前記電磁波吸収体が、mを0以上の整数として、m+1/2−Δ≦α≦m+1/2+Δを満たすように、前記電磁波吸収体を設計することを特徴とする高周波通信装置用電磁波吸収体の製造方法。
ここで、αは、以下の式(1)で表されるパラメータである。
α=Ad(εμ)0.5/(μ”+ε”μ/ε) (1)
式(1)において、dは前記電磁波吸収体の厚さ、ε,ε”,μ,μ”はそれぞれ前記適用周波数における前記電磁波吸収体の誘電率、誘電率の損失項、透磁率、透磁率の損失項である。A=8×10 4 /π[Ω/m]であり、Δ=3/10である。 - m=0とすることを特徴とする請求項7に記載の高周波通信装置用電磁波吸収体の製造方法。
- 前記電磁波吸収体における前記軟磁性材料よりなる粒子の含有量が50体積%以上であることを特徴とする請求項7または8に記載の高周波通信装置用電磁波吸収体の製造方法。
- 前記適用周波数は、20GHz以上100GHz以下であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の高周波通信装置用電磁波吸収体の製造方法。
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