JP6647554B2 - 造塩染料及びそれを用いた筆記具用インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ボールペン、マーキングペン等に用いられる筆記具用インキ組成物に好適な溶解性と色相とを有する造塩染料及びそれを用いた筆記具用インキ組成物に関するものである。
従来から、油性インキに用いられる着色剤として、顔料又は染料が用いられている。顔料系油性インキは筆跡の堅牢性に優れるものの、インキ中で顔料が凝集したり沈降したりするため、筆跡が薄くなったり、筆跡が形成されなくなったりする等の不具合を生じ易い。一方染料系油性インキは、染料が溶剤中に溶解して安定的に保存されるため、顔料系油性インキの不具合を生じない反面、筆跡の耐水性に乏しい傾向にある。染料系油性インキの耐水性を向上させる方法として、尿素とアルデヒドとの縮合樹脂を添加して紙のような筆記媒体へ筆跡の定着性を向上させる方法や(特許文献1)、シリコーン系界面活性剤を添加する方法が知られている(特許文献2)。しかし、その効果は必ずしも十分とはいえず、さらなる耐水性の向上が望まれていた。
また、油性インキに用いられる溶剤として、キシレンやケトン等が用いられている。これらの溶剤は、人体に対する毒性や臭気等の問題を有するので、アルコールやグリコールのようなアルコール系溶剤が用いられている。しかしながらアルコール系溶剤は親水性であるので、これらの溶剤中に染料を溶解させたインキは耐水性に乏しく、筆跡が水に濡れると染料が滲み出してしまう。そのため書かれた文字の判読が困難になったり、未使用の筆記媒体に染料が写って染着したりするという不具合を生じる。
このような不具合を解消するため、高い着色力を有する塩基性染料と酸性染料とを組み合わせたり、塩基性染料と無色又は淡色の有機酸とを組み合わせたりした油溶性造塩染料が知られている。特にトリフェニルメタン系塩基性染料は、色相と着色力が良好であり、これに各種のアニオンを組み合わせて、筆記具インキ用着色剤として用いられている。このような着色剤として、トリアリールメタン系塩基性染料とアゾ系黄色酸性染料の造塩染料を含む着色剤が知られているが(特許文献3)、この造塩染料は、経時によって造塩染料の一部が崩れ、析出物の生成や書き味の劣化を生じていた。また塩基性染料を母体とした造塩染料は(特許文献4)、良好なインキ経時安定性を有するものの、書き味向上のために含まれている界面活性剤が、塩基性染料と反応し析出物を生成するという不具合を生じていた。
特開平4−239071号公報 特開平11−172185号公報 特開平9−165542号公報 特開平8−134393号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、アルコール系溶剤への溶解性と経時安定性とに優れた造塩染料、及びこれを用いることにより人体に対して安全で高い耐水性を有する筆記具用インキ組成物を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の造塩染料は、下記化学式(1)
Figure 0006647554
(式(1)中、Yは酸性染料から得られる残基又は有機酸から得られる残基、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数である)で表されるものである。すなわち、式(1)に示す造塩染料は、トリフェニルメタン系塩基性染料カチオンとYa−に示す酸性染料アニオン又は有機酸アニオンとが結合した構造を示す。
造塩染料は、前記酸性染料及び前記有機酸が少なくともスルホン酸基を2個有するものであることが好ましい。
造塩染料は、前記酸性染料がジスアゾ酸性染料であってもよい。
造塩染料は、燃焼クーロメトリー法によって測定された全塩素量が50〜1000ppmであることが好ましい。さらに造塩染料は、原子吸光で測定した鉄の含有量が最大で100ppmであることがより好ましい。
本発明の筆記具用染料は、上記いずれかの造塩染料を含むものである。
本発明の黒色配合着色剤は、上記いずれかの造塩染料を含むものである。
本発明の筆記具用インキ組成物は、上記の筆記具用染料又は上記の黒色配合着色剤と、液媒体と、前記液媒体に溶解する樹脂とを、少なくとも含むものである。
本発明の造塩染料は、アルコール系溶剤に対して高い溶解性を示し、かつインキ組成物に含まれる樹脂や界面活性剤のような添加物との相溶性が高いものであるので、析出し難く経時安定性に優れ、添加物の選択やそれの配合比の自由度を確保できる。また造塩染料は、少なくとも2個のスルホン酸基を有する酸性染料又は有機酸から得られる残基を有していると、スルホン酸の深色化効果により、良好な着色力を発現する。さらに造塩染料は、ジスアゾ構造を有する残基を有していると、優れた堅牢性を発現するので、耐熱性や耐光性に優れる。
本発明の黒色配合着色剤は、上記の造塩染料を含んでいるので、高濃度に発色して深色化した良好な漆黒を発色する。
本発明の筆記具用インキ組成物は、上記の造塩染料を含んでいるので、耐水性に優れ筆跡のブリードや滲みが生じ難い。
本発明を適用する製造例A−1の紫外線可視分光吸収スペクトルを示す図である。 本発明を適用する製造例B−1の紫外線可視分光吸収スペクトルを示す図である。 本発明を適用外である製造例C−1の紫外線可視分光吸収スペクトルを示す図である。 本発明を適用外である製造例C−2の紫外線可視分光吸収スペクトルを示す図である。
本発明の造塩染料は、下記化学式(1)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(1)中、Yは酸性染料から得られる残基又は有機酸から得られる残基、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数である)
化学式(1)中の造塩染料は、トリフェニルメタン系塩基性染料から得られるカチオン成分(トリフェニルメタン系塩基性染料カチオン成分)と、酸性染料又は有機酸から得られるアニオン成分(酸性染料アニオン成分又は有機酸アニオン成分)とにより構成されるものである。ここで化学式(1)中、Yが酸性染料から得られる残基である造塩染料を、造塩染料Aと称し、Yが有機酸から得られる残基である造塩染料を、造塩染料Bと称する。造塩染料Aは、トリフェニルメタン系塩基性染料と酸性染料との和の領域の可視光吸収曲線を示す。一方造塩染料Bは、トリフェニルメタン系塩基性染料のみの領域の可視光吸収曲線を示す。したがって、造塩染料Aは酸性染料を適宜選択することにより、所望の色相を選択できるものである。これに対し造塩染料Bの色相は、トリフェニルメタン系塩基性染料のpHや溶解性に依存する。
(造塩染料A)
本発明の造塩染料について、まず造塩染料Aを説明する。化学式(1)中、Yが酸性染料から得られる残基(酸性染料アニオン)である本発明の造塩染料Aは、下記化学式(2)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(2)中、Dはスルホン酸基を有する酸性染料から得られる残基、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数、pは1〜2の正数、qは0〜1の正数である)
化学式(2)中、下記化学式(3)は、トリフェニルメタン系塩基性染料からのカチオン(トリフェニルメタン系塩基性染料カチオン)である。
Figure 0006647554
化学式(2)中、下記化学式(4)は酸性染料から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
(化学式(4)中、Dはスルホン酸基を有する酸性染料から得られる残基、aは1〜2の正数、pは1〜2の正数、qは0〜1の正数である)
ここで、本発明に用いられるトリフェニルメタン系塩基性染料は、ジエチルアニリンとジメチルアニリンとから、公知のトリフェニルメタンの製造方法により、製造できる。このようにして得られたトリフェニルメタン系塩基性染料は、下記化学式(5)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料である。
Figure 0006647554
(化学式(5)中、Xb−はCl、Brのようなハロゲン原子アニオン、塩酸、硫酸、硝酸のような無機酸アニオン、bは1〜2の正数、mは1〜2の正数である)
一般的に市販されているものは、化学式(5)中のXb−がClであり、m=1であるトリフェニルメタン系塩基性染料である。
化学式(2)で表される造塩染料Aは、化学式(5)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料とD−(SOH)p+qで表される酸性染料とから得られる造塩染料である。酸性染料から得られるアニオンが1価のアニオンである場合、p=a=kが1となり、化学式(2)は、塩基性染料から得られるカチオン:酸性染料から得られるアニオン=1:1の造塩染料を示す。酸性染料から得られるアニオンが、2価のアニオンである場合、p=a=kが2となり、化学式(2)は、塩基性染料から得られるカチオン:酸性染料から得られるアニオン=2:1の造塩染料を示す。またp+qが2以上の場合、造塩染料Aが、トリフェニルメタン系塩基性染料カチオン:酸性染料アニオン=1:1のみからなっていてもよく、2:1と1:1との混合からなっていてもよい。
造塩染料Aは、全塩素測定の燃焼クーロメトリー法によって測定された全塩素量の値が、50ppm〜1000ppmであることが好ましく、100ppm〜700ppmであることがより好ましい。造塩染料Aの全塩素量がこの範囲であることによって、経時安定性に優れ、かつ低コストで実用的な筆記具用インキ組成物が得られる。一方、全塩素量が上記の範囲外の造塩染料を含む筆記具用インキ組成物は、ボールペン先端部の金属製ボール及び金属製ボール台座が塩化物イオンによって腐食したり、造塩染料の溶剤への溶解度が低下して造塩染料や造塩染料の原料が析出したりする。そのため筆跡にカスレ等の筆記不良が生じる。
本発明の造塩染料Aの製造方法は、
工程1:塩基性染料を溶解する工程
工程2:酸性染料を溶解する工程
工程3:造塩染料を合成し、結晶を析出する工程
工程4:得られた造塩染料の結晶を濾過・水洗する工程
工程5:濾過された造塩染料を乾燥する工程
を少なくとも有する製造方法である。この製造方法によれば、高純度の造塩染料Aを得ることができる。以下、各工程を詳しく説明する。
[工程1]
工程1は、トリフェニルメタン系塩基性染料と無機酸又は有機酸とを、溶媒に加えて加熱しながら混合し、トリフェニルメタン系塩基性染料を溶解する工程である。この溶媒として、精製水、蒸留水、及び純水のような水やアルコールのような親水性溶媒を挙げることができる。なかでも水が好ましい。無機酸として塩酸、硫酸及び硝酸が挙げられ、有機酸として酢酸、乳酸及びシュウ酸が挙げられる。なかでも塩酸が好ましい。無機酸又は有機酸の量は、トリフェニルメタン系塩基性染料を溶解することができれば特に限定されないが、トリフェニルメタン系塩基性染料に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。また無機酸又は有機酸のpHは、1〜4であることが好ましい。混合・溶解の温度は、室温から80℃が好ましい。
[工程2]
工程2は、酸性染料と塩基性物質とを溶媒中で混合して、酸性染料を溶解する工程である。溶媒として水や親水性溶媒が挙げられる。塩基性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウムのような水酸化物;炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムのような炭酸塩;アンモニア水を挙げることができ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。塩基性物質の量は、酸性染料を溶解することができれば特に限定されないが、酸性染料に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。また塩基性物質のpHは8〜11が好ましい。酸性染料は、弱アルカリ条件とすることにより、溶媒に溶解し易い。混合・溶解の温度は、室温から90℃が好ましい。
[工程3]
工程3は、工程1の溶液に、pHを弱酸性又は中性に調整しつつ加熱しながら工程2の溶液を加えて造塩染料を合成し、結晶を析出させる工程(工程3−1)、又は工程2の溶液に、pHを弱アルカリ性から弱酸性に調整しつつ加熱しながら工程1の溶液を加え、造塩染料を合成し、pHを弱酸性にして結晶を析出させる工程(工程3−2)である。工程3における反応は、下記化学式(6)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(6)中、Dはスルホン酸基を有する酸性染料から得られる残基であり、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数、pは1〜2の正数、qは0〜1の正数である)
化学式(6)中、下記化学式(3)は、トリフェニルメタン系塩基性染料からのカチオンである。
Figure 0006647554
化学式(6)中、下記化学式(4)は、酸性染料から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
(化学式(4)中、Dはスルホン酸基を有する酸性染料から得られる残基であり、aは1〜2の正数、pは1〜2の正数、qは0〜1の正数である)
工程3において、酸性染料の当量はトリフェニルメタン系塩基性染料に対して同等又はやや多いことが好ましい。具体的に、1.0〜1.5当量であることが好ましく、1.0〜1.2当量であることがより好ましい。pHの調整に、工程1及び工程2で挙げた無機酸又は有機酸及び塩基性物質を好適に使用できる。また有機酸塩によって緩衝溶液を調製してもよい。工程3−1及び工程3−2において、室温から90℃の温度で造塩染料を合成することが好ましい。なお造塩染料を析出させる際、弱酸性条件下で析出させる酸析に代えて、塩化ナトリウムのような無機塩を加えることにより析出させる塩析を行ってもよく、酸析と塩析とを併用してもよい。
[工程4]
工程4は、工程3で得られた造塩染料の結晶を濾過・水洗して造塩染料を得る工程である。工程1〜工程3において生成した無機塩の量を低減するため、濾液の電導度が300μS/cm以下となるように濾過することが好ましい。また必要に応じて、造塩染料を溶解し、この溶解液をイオン交換膜に通じて脱塩処理を行ってもよい。濾過することによって得られた造塩染料の結晶又はウェットケーキに洗浄水を加えることによって、造塩染料を再分散させて水洗することが好ましい。
[工程5]
工程5は、工程4で得られた造塩染料を乾燥させる工程である。乾燥方法として、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、及びスプレードライ乾燥を挙げることができる。
得られた造塩染料Aは、非水溶性で油溶性の染料構造を有しているため、不純物や原料、特に無機塩を除去し易い。
造塩染料Aは、酸性染料が少なくとも2個のスルホン酸基を有していることにより、対イオンであるトリフェニルメタン系塩基性染料を、少なくとも2個有していることが好ましい。造塩染料Aは、複数のアルキル基を有するトリフェニルメタン構造を有していることによって、インキ組成物のアルコール系溶剤に対して優れた溶解性を発現する。さらに、トリフェニルメタン系塩基性染料のアミノ(アンモニウム)発色部と、スルホン酸の深色化効果とにより、良好な着色力を発現する。
少なくとも2個のスルホン酸基(ジスルホン酸)を有する酸性染料は、2個のアゾ基を有するジスアゾ酸性染料であることがより好ましい。それにより、スルホン酸基の深色化効果に加えて、2個のアゾ発色部がさらに強い着色力を発現するので、造塩染料Aが高濃度に発色する。このような造塩染料Aを含む黒色配合着色剤や、筆記具用インキ組成物は、特にボールペン用のインキに好適に用いられる。
さらに、C.I.Acid Red 97のようにβ−ナフトールを2個有するジスアゾ酸性染料を選択することにより、造塩染料Aの堅牢性が向上して、耐熱性や耐光性が向上する。造塩染料Aは、このように酸性染料の構造を選択することにより、深色化し、紫色が深くなり、高濃度においては黒色に近くなっている。このため、調色において、黒色系の色合わせが容易になり、黒色用途の原材料として、好適に用いられる。またジスアゾ酸性染料は高い水溶性を有しているため、造塩染料Aの製造工程において、未反応のジスアゾ酸性染料が残存していたとしても、水洗することによって容易に取り除くことができ、造塩染料Aの純度を高めることができる。
造塩染料Aの鉄含有量は、最大で100ppmであることが好ましく、5ppm〜100ppmであることがより好ましく、5ppm〜70ppmであることが一層好ましい。造塩染料Aの鉄含有量がこの範囲であることによって、造塩染料Aを含有する筆記具用インキ組成物はこの範囲以下の値を示す。この造塩染料Aを含有する筆記具用インキ組成物によれば、造塩染料Aと鉄との錯体、造塩染料Aと添加剤と鉄との錯体、特に水酸基を有する化合物と鉄との錯体の析出を防止することができる。それにより造塩染料Aは、筆記具用インキ組成物中で、長期にわたって溶存し結晶析出しないので、インキの長期安定性が向上し、筆跡にカスレ等の筆記不良を生じさせない。また、このような造塩染料Aを含有する筆記具用インキ組成物は、ボールペン先端部であるペン先に用いられる金属製ボール及び金属製ボール台座に対する摩耗性が改善される。
このような造塩染料Aを得るのに好適に用いられる酸性染料として、トリフェニルメタン系塩基性染料と造塩できる酸性染料が挙げられ、スルホン酸基やカルボキシ基を有する一般的な酸性染料、直接染料、分散染料等が含まれる。この酸性染料は、スルホン酸塩ややカルボン酸塩であってもよい。例えば、モノアゾ系酸性染料、ジスアゾ系酸性染料、オキサジン系酸性染料、アミノケトン系酸性染料、キサンテン系酸性染料、キノリン系酸性染料、トリフェニルメタン系酸性染料、及びアントラキノン系酸性染料等を挙げることができ、具体的に以下に例示される。
モノアゾ系酸性染料として、
C.I.Acid Yellow 4、6、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、39、40、40:1、41、43、46、48、53、55、60、63、65、66、69、72、76、94、122、127、131、136、143、144、145、146、149、153、168、169,172、174、178、180、189、190、192、199等;
C.I.Acid Orange 1、1:1、5、6、7、8、9、10、12、14、16、17、18、19、20、20:1、22、23、27、28、28:1、30、31、35、36、41、50、102、106、117、119、131、134、136等;
C.I.Acid Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、25:1、26、26:1、26:2、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、42、43、44、45、53、54、55、57、59、60、62、64、68、74、76、76:1、88、102、106、107、108、110、113、120、127、131、133、135、137、138、141、155、157、160、161、172、175、176、177、181、229、231、237、239、240、242、249、252、253、257、263、264、266、267、274、276、280、309、311、324、325、326、334、335、336、337、340、343、344、347、348、353、354等;
C.I.Acid Violet 1、2、3、5、5:1、6、7、7:1、11、12、13、14、20、27、67、96、97等;
C.I.Acid Blue 4、6、21、70、89、92、95、117、135、155、159、169、174、183等;
C.I.Acid Green 2、55、66、70等;
C.I.Acid Brown 2、3、4、6、7、8、9、12、16、20、23、35、38、51、71、87、88、89、90、91、102、203、324、340、345等;
C.I.Acid Black 22、31、34、128、173等;
C.I.Direct Yellow 127、129等;
C.I.Direct Orange 17、75、76、84、104、114等;
C.I.Direct Red 3、20、47、48、51、64、65、66、69、70、113、118、118:1、119、123、126、131、142、144、145、147、151、168、191、193、215、216等;
C.I.Direct Violet 8、10、97等;
C.I.Direct Green 24、78、80等;
C.I.Direct Brown 30、53、55、191等
を挙げることができる。
ジスアゾ系酸性染料として、
C.I.Acid Yellow 38、42、42:1、44、51、56、67、68、82、83、84、86、87、90、105、115、117、132、141、142、159、166、175、183、187、188、191等;
C.I.Acid Orange 4、24、24:1、25、33、37、38、45、49、51、54、55、56、59、79、83、94、95、116、128、132、138等;
C.I.Acid Red 47、56、65、66、67、70、71、73、85、86、89、97、99、104、111、114、115、116、123、125、128、132、134、142、144、148、150、151、152、154、158、163、164、167、170、171、173、241、255、260、286、299、323、333、350、351等;
C.I.Acid Violet 4、30、102等;
C.I.Acid Blue 29、44、73、85、113、114、116、118、120、128、262等;
C.I.Acid Green 19、20、34、94等;
C.I.Acid Brown 5、14、15、17、24、32、41、43、55、62、63、65、70、73、74、77、79、80、125、152、153、154、155、156、157、158、197、198、199、200、202、204、205、206、208、209、213、215、229、247、288、318、319、323、326、327、341等;
C.I.Acid Black 1、3、5、5:1、6、7、9、10、11、12、13、14、15、16、16:1、17、18、20、21、23、24、26、26:1、26:2、26:3、26:4、27、28、30、32、35、36、37、41、166等;
C.I.Direct Yellow 1、2、4、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、120、121、126、132、133、134等;
C.I.Direct Orange 1、2、3、4、5、6、7、8、10、13、19、20、21、24、25、26、29、29:1、30、31、32、33、43、49、51、56、59、69、72、73、74、79、80、83、85、87、88、90、91、92、95、96、97、98、101、102、102:1、108、112等;
C.I.Direct Red 1、2、2:1、4、5、6、7、8、10、10:1、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、26、26:1、28、29、31、33、33:1、34、35、36、37、39、42、43、43:1、44、46、49、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、67、67:1、68、72、72:1、73、74、75、77、78、79、81、81:1、85、86、88、89、90、97、100、101、101:1、107、108、110、114、116、117、120、121、122、122:1、124、125、127、127:1、127:2、128、129、130、132、134、135、136、137、138、140、141、148、149、150、152、153、154、155、156、169、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、186、189、204、211、213、214、217、222、224、225、226、227、228、232、236、237、238等;
C.I.Direct Violet 1、3、4、5、6、7、9、11、12、13、14、16、17、18、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、51、52、57、58、61、62、63、64、71、72、77、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88、93等;
C.I.Direct Blue 1、2、3、4、6、7、8、8:1、9、10、12、14、15、16、19、20、21、21:1、22、23、25、27、29、31、35、36、37、40、42、45、48、49、50、53、54、55、58、60、61、64、65、67、79、96、98:1、101、111、116、122、123、124、128、129、130、130:1、132、136、138、140、145、146、149、152、153、154、156、158、158:1、164、165、166、167、168、169、170、174、177、181、184、185、188、192、193、206、207、209、213、215、225、226、229、230、231、242、243、244、253、254、260、263等;
C.I.Direct Green 11、13、14、34、38、42、49、55、56、57、60、79等;
C.I.Direct Brown 2、18、37、50、56、58、59、60、67、80、86、112、118、123、125、126、146、147、148、152、155、165、167、168、179、184、185、186、206、208等;
C.I.Direct Black 3、15、17、29、30、39、47、51、71、84、85、86、87、90、96、104、129、148等
を挙げることができる。
オキサジン系酸性染料として、
C.I.Direct Violet 54等;
C.I.Direct Blue 97、106、107、108、109、190等
を挙げることができる。
アミノケトン系酸性染料として、
C.I.Acid Yellow 7等
を挙げることができる。
キサンテン系酸性染料として、
C.I.Acid Red 50、52、91、92、93、289、306等;
C.I.Acid Violet 9等;
C.I.Acid Blue 19等
を挙げることができる。
キノリン系酸性染料として、
C.I.Acid Yellow 2、3、5等;
C.I.Direct Yellow 5、119等
を挙げることができる。
トリフェニルメタン系酸性染料として、
C.I.Acid Violet 15、16、17、19、21、23、24、25、38、49、72等;
C.I.Acid Blue 1、3、5、7、9、11、13、15、17、22、24、26、34、48、75、83、84、86、88、90、90:1、91、93、99、100、103、104、108、109、110、119、123、147、206、213、269等;
C.I.Acid Green 3、5、6、7、8、9、11、13、14、15、16、18、22等
を挙げることができる。
アントラキノン系酸性染料として
C.I.Acid Red 80、81、82、83、143、356等;
C.I.Acid Violet 29、31、33、34、36、39、41、42、43、47、51、63、76、103、109等;
C.I.Acid Blue 2、8、14、23、25、27、35、37、40、41、41:1、43、45、46、47、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、62、62:1、63、64、65、68、69、78、79、80、81、96、111、124、127、127:1、129、137、138、143、145、150、175、176、198、203、204、205、208、227、230、231、232、233、235、239、245、247、253、257、258、260、261、264、266、271、272、273、274、277、278、280等;
C.I.Acid Green 10、17、25、25:1、27、36、37、38、40、41、42、44、54、59、69、71、81、84、95等;
C.I.Acid Brown 25、26、27、36等;
C.I.Acid Black 46、48、48:1、50、97等;
C.I.Direct Green 30等
を挙げることができる。
好ましい酸性染料として、下記化学式(7)で表される2個のスルホン酸基と2個のアゾ基とを有するジスアゾ酸性染料が挙げられる。
Figure 0006647554
(化学式(7)中、Eはカップリング成分から得られる残基、Mは水素原子又はアルカリ金属(例えばLi、Na、Kのアルカリ金属)である)
好ましい造塩染料Aは、化学式(3)で表されるトリフェニルメタン系塩基性染料からのカチオンと、化学式(4)で表される酸性染料からのアニオンとから得られるものであり、さらに好ましくは、トリフェニルメタン塩基性染料から得られるカチオンとジスアゾ酸性染料から得られるアニオンとが2:1で構成され、下記化学式(8)で表される造塩染料である。
Figure 0006647554
(化学式(8)中、Eはカップリング成分から得られる残基である)
前記ジスアゾ酸性染料は、下記化学式(9)に示すように、公知のジアゾ化カップリング反応を用い、水系で、4,4’−ジアミノジフェニルジスルホン酸をジアゾ化し、所定のカップリング成分とカップリングすることによって得られる。
Figure 0006647554
(化学式(9)中、E−Hはカップリング成分である)
カップリング成分Eは同じであっても異なってもよい水酸基を有する化合物であり、βーナフトール誘導体又はピラゾロン誘導体であることが好ましい。βーナフトール誘導体の好ましい構造は、下記化学式(10)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(10)中、Rは水素原子又は下記化学式(11)で表されるmであり、Rは炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子である)
Figure 0006647554
(化学式(11)中、Rは炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基、又はハロゲン原子である)
ピラゾロン誘導体の好ましい構造は、下記化学式(12)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(12)中、Rは炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、炭素数1〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルコキシ基、又はハロゲン原子である)
前記した化学式(4)で表されるアニオンとして、具体的に下記化学式(13)〜(19)を挙げることができる。なかでも下記化学式(13)及び(14)が好ましい。
下記化学式(13)は、C.I.Acid Red 97から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(14)は、C.I.Acid Yellow 42から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(15)は、C.I.Acid Orange 56から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(16)は、C.I.Acid Red 144から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(17)は、C.I.Acid Yellow 87から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(18)は、C.I.Acid Yellow系ジスアゾ染料から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
下記化学式(19)は、C.I.Acid Red系ジスアゾ染料から得られるアニオンである。
Figure 0006647554
造塩染料Aは、本発明の黒色配合着色剤に好適に用いることができる。この場合色相配合のマッチングの観点から、造塩染料Aが赤色を示すジスアゾ酸性染料から得られるアニオンを有するものであると、良好な漆黒を示す黒色配合着色剤を得ることができる。特に好ましいアニオンは、上記の化学式(13)に示すジスアゾ酸性染料のアニオンである。
(造塩染料B)
本発明の造塩染料Bは、下記化学式(20)で表される。
Figure 0006647554
(化学式(20)中、Za−は有機酸から得られるアニオン、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数である)
造塩染料Aの製造方法である工程1〜工程5中、酸性染料に代えて有機酸を用いることにより、造塩染料Bを製造できる。なお、有機酸は水への溶解性が良好であるため、工程2中、塩基性物質を加えて弱アルカリにpHを調整する操作を省略できる。好ましい有機酸としては、スルホン酸基を有するスルホン酸系、及び硫酸エステル系のアニオン界面活性剤が挙げられる。化学式(20)中、Za−は下記スルホン酸及び/又は硫酸エステルから得られるアニオンである。
化学式(20)中のZa−を得るためのスルホン酸系界面活性剤として、具体的に、下記化学式(21)で表されるアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、
Figure 0006647554
(化学式(21)中、Rは炭素数3〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウム原子団、mは1〜2の正数である)
下記化学式(22)で表されるアルキルナフタレンスルホン酸又はその塩、
Figure 0006647554
(化学式(22)中、Rは炭素数3〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウム原子団、mは1〜2の正数である)
下記化学式(23)で表されるナフタレンスルホン酸塩−ホルマリン重縮合物、
Figure 0006647554
(化学式(23)中、nは繰り返し単位数、Mは水素原子又はアルカリ金属である)
下記化学式(24)で表されるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸又はその塩、
Figure 0006647554
(化学式(24)中、Rは炭素数8〜18で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル基、M及びMは水素原子又はアルカリ金属である)
スルホコハク酸又はその塩、α−オレフィンスルホン酸又はその塩、及びN−アシルスルホン酸又はその塩等が挙げられる。
なお上記の化学式中、アンモニウム原子団として、NH や炭素数1〜12のアルキル基を有するモノ−,ジ−,トリ−,又はテトラアルキルアンモニウムイオンが挙げられる。
硫酸エステル系界面活性剤として、具体的に、アルキル硫酸エステル又はその塩、アルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル又はその塩、及びアルキルアミド硫酸エステル又はその塩が挙げられる。
なかでも好ましい有機酸は、スルホン酸基を2個有する有機酸である。特に2個のスルホン酸基を有し、かつ少なくともアリール基を有する有機酸が好ましい。具体的にアルキルベンゼンジスルホン酸又はその塩、アルキルナフタレンジスルホン酸又はその塩、ナフタレンジスルホン酸塩−ホルマリン重縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸又はその塩がより好ましい。ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸であることが一層好ましい。
(黒色配合着色剤)
本発明の造塩染料を含む黒色配合着色剤は、黒色筆記具用インキの着色剤である。造塩染料A及び/又は造塩染料Bの調色に、黄色染顔料、赤味の黄色(オレンジ色)染顔料、及び赤色染顔料を用いることができる。
黄色染料の具体的な例として、
C.I.Solvent Yellow 13、15、21、30、32、34、44、54、57、60、61、62、65、83、93、105、120、136、155等;
C.I.Basic Yellow 28、51等;
を挙げることができる。
赤味の黄色(オレンジ色)染料の具体的な例として、
C.I.Solvent Orange 1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、19、20、37、37.1、40、40:1、49等;
C.I.Basic Orange 2、22等
を挙げることができる。
赤色染料の具体的な例として、
C.I.Solvent Red 8、13、14、18、30、35、36、37、38、39、46、49、52、79、81、82、83、96、99、100、102、109、112、113、115、119、122、124、127、128、142、184、185、186、187、203、2034、205、206等;
C.I.Basic Red 1等
を挙げることができる。
黄色顔料の具体的な例として、
C.I.Pigment Yellow 1、3、12、13、14、16、17、34、42、55、73、74、79、81、83、93、94、95、97、104,109、110、111、120、128、133、136、138、139、147、151、154、155、167、173、174、175、176、180、185、191、194、213等
を挙げることができる。
赤味の黄色(オレンジ色)顔料の具体的な例として、
C.I.Pigment Orange 5、13、16、34、36、38、43、62、68、72、74等
を挙げることができる。
赤色顔料の具体的な例として、
C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、25、30、31、32、37、38、39、40、41、42、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、49:3、50、50:1、50:2、50、52、52:1、52:2、52:3、53:1、53:2、54、55、56、57、57:1、57:2、58、58:1、58:2、58:3、58:4、59、60、60:1、101、104、112、122、144、146、149、166、170、175、176、177、179、184、185、187、188、202、207、208、209、210、211、213、214、242、253、254、255、256、257、264、266、268、270、272等
を挙げることができる。
また黒色配合着色剤の堅牢性を向上させ、黒色度を調節するのに、アジン系ニグロシン油溶性染料(C.I.Solvent Black 5、7)と黒色含金染料と黒色顔料とを併用できる。
黒色含金染料の具体的な例として、
C.I.Solvent Black 15、22、22:1、23、25、26、27、28、29、30、34、35、36、37、38、40、41、42、43、45、47、48等
を挙げることができる。
黒色顔料の具体的な例として、
C.I.Pigment Black 1、6、7、11、28、30等
を挙げることができる。
(筆記具用インキ組成物)
本発明の筆記具用インキ組成物は、少なくとも造塩染料A及び造塩染料Bのいずれかを含む筆記具用染料、又は少なくとも造塩染料A及び造塩染料Bのいずれか並びに染顔料のような着色剤を配合することにより得られる配合着色剤と、液媒体と、この液媒体に溶解する樹脂とを含むものであり、ボールペン、マーキングペン、サインペンのような筆記具に充填されることにより好適に用いられる。筆記具用染料又は配合着色剤の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜25質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、筆記具用インキ組成物の着色力、発色性が不十分となってしまう。一方30質量%を超えると筆跡にカスレが生じてしまう。
この筆記具用インキ組成物によれば、造塩染料A、造塩染料B、及び黒色配合着色剤の少なくとも一種の着色剤を含有する油性のインキを処方でき、このインキが充填された筆記具による筆跡は、耐水性及び耐ブリード性に優れている。
筆記具用インキ組成物に含まれる液媒体として、アルコール系溶剤、多価アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、ジエーテル系溶剤、及びエステル系溶剤のような溶剤を挙げることができる。溶剤の含有量は、筆記具の種類や、染顔料の種類及び含有量に応じて適宜設定されるが、筆記具用インキ組成物全量に対して、20〜97質量%であることが好ましく、30〜95%であることがより好ましい。
アルコール系溶剤は、炭素数が2以上の脂肪族アルコールであり、具体的には、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert-ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、3−ペンタノール、tert-アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n-ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ヘプタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノールのような高級アルコール等が挙げられる。
多価アルコール系溶剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコールのような分子内に2個以上の炭素、2個以上のヒドロキシ基を有する多価アルコール、及びこれらの誘導体が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤として、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられ、なかでも炭素数2〜7のグリコールエーテルが好ましい。
ジエーテル系溶剤として、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤として、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸プロピル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、トリメチル酢酸プロピル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、カプリル酸トリグリセライド、クエン酸トリブチルアセテート、オキシステアリン酸オクチル、プロピレングリコールモノリシノレート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、分子内にヒドロキシ基を有しないジエステルが挙げられる。
筆記具用インキ組成物は、インキの定着性向上、筆跡の裏写り防止、染顔料の溶解性及び分散性向上、並びに粘度調整のため樹脂を含んでいる。この樹脂は、上記の液媒体である溶剤に溶解するものである。樹脂の含有量は、粘度調整及び書き味の調整の観点から、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.5〜35質量%であることが好ましく、1.0〜20質量%であることがより好ましい。含有量が0.5質量%未満であると筆記具用インキ組成物の粘度が不足して筆跡が滲み易くなったり、ボールペンのペン先が著しく摩耗したりする。一方35質量%を超えると筆記具用インキ組成物に含まれるべき溶剤や染顔料が不足したり、筆跡にカスレを生じ書き味に悪影響を及ぼしたりする。
このような樹脂として、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンのようなケトン系樹脂;ポリスチレンのようなスチレン系樹脂;ポリビニルブチラールのようなポリビニルアセタール;ポリビニルピロリドン;ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂のようなマレイン酸系樹脂;ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂のようなフェノール系樹脂;スチレン−アクリル樹脂のようなアクリル系樹脂;ロジン系樹脂;尿素アルデヒド系樹脂;シクロヘキサノン系樹脂が挙げられる。なかでもポリビニルブチラール樹脂が好ましい。造塩染料A及び造塩染料Bは、製造工程における水洗によって未反応の酸性染料のような遊離した酸成分を有していないので、この酸成分によるポリビニルブチラール樹脂の加水分解を生じさせず、筆記具用インキ組成物は経時安定性や保存安定性に優れている。そのためポリビニルブチラール樹脂を選択することによって、筆記具用インキ組成物に良好な造膜性や高い増粘作用を付与できる。
筆記具用インキ組成物を製造するのに、公知の方法を用いることができる。例えば、造塩染料A及び/又は造塩染料B、液媒体である溶剤、及び樹脂を所定量配合し、ホモミキサーやディスパーのような攪拌機に投入して攪拌混合することにより得られる。さらに必要に応じて、濾過や遠心分離によって粗大粒子を除去してもよい。このように製造された筆記具用インキ組成物は、ボールペンやマーキングペンに充填される。
ボールペンの構造、形状は特に限定されないが、例えばボールを先端のボール受け座に装着したボールチップを先端部に接続させているインキ収容管が軸筒の内空に収容され、このチップが軸筒の先端から突き出ている構造を有しているボールペンを挙げることができる。インキ収容管の開口した基端から筆記具用インキ組成物が充填された後、基端の開口は逆流防止の液栓又は逆流防止体で塞がれる。ボールが筆記媒体上を転がることにより、ボールチップとボールとの間隙からボール表面に筆記具用インキ組成物が供給され、筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なお軸筒やインキ収容管は、樹脂成形物や金属加工体である。
マーキングペンの構造や形状は特に限定されないが、例えば軸筒の内空に、繊維束で形成されたインキ吸蔵体と、これに一体化したペン芯が軸筒の先端から突き出ている構造や、これに加えて軸筒の先端部に、繊維束で形成された櫛溝状のインキ流量調節部材を有しているマーキングペンを挙げることができる。筆記具用インキ組成物が、軸筒に充填されることにより、インキ吸蔵体に含浸される。ペン芯に筆記具用インキ組成物が供給され、繊維チップが紙のような筆記媒体にこすり付けられることにより、筆記具用インキ組成物が筆記媒体に染み込んで筆跡が形成される。なおペン芯は、繊維束製、フェルト製、又はプラスチック製を用いることができる。
筆記具用インキ組成物は、ホーロー製、ガラス製、金属製、熱可塑性樹脂製、又は熱硬化性樹脂製のホワイトボード用マーキングペンに用いてもよい。この場合、筆記具用インキ組成物に剥離剤を含ませることが好ましい。この剥離剤として、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を挙げることができる。好適に用いられる剥離材として具体的に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル及びこれらの塩、脂肪族二塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、ポリアルキレングリコールエステルを挙げることができる。これらの剥離剤は、単独でも、複数を混合しても用いることができる。
筆記具用インキ組成物は、必要に応じて潤滑剤、せん断減粘性付与剤、粘度調整剤、レベリング剤、防錆剤、防腐剤、表面張力調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、湿潤剤、分散助剤、及びpH調整剤を含んでいてもよい。
潤滑剤として、オレイン酸のような高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アシルアミノ酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩のリン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独又は複数が混合されたものであってもよい。潤滑剤を含む筆記具用インキ組成物は、ボールペンのボールチップのボール受け座の摩耗防止効果を発現する。
潤滑性をさらに向上させる微粒子が筆記具用インキ組成物に含まれていてもよい。この微粒子として、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系の樹脂微粒子やアルミナ微粒子、シリカ微粒子が挙げられる。なかでも、球状のシリカ微粒子が好ましい。微粒子がボールチップのボール受け座とボールとの間隙に入り込むことにより、ボール受け座とボールとの金属接触が抑制されるので、潤滑性が向上する。
せん断減粘性付与剤として、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカが挙げられる。せん断減粘性付与剤を含んでいることにより、ボールペンのボールとボールチップとの間隙から筆記具用インキ組成物が遺漏せず、またボールチップを上向き(正立状態)でボールペンが放置された場合に筆記具用インキ組成物が逆流しない。
粘度調整剤として、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドンのような合成高分子物質;グァーガム、ローカストビーンガムのような種子多糖類及びその誘導体;ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム、のような微生物系多糖類及びその誘導体;カラーギナン、アルギン酸のような海藻多糖類及びその誘導体;タラガントガムのような樹脂多糖類;セルロース系樹脂;ピロリドン系樹脂が挙げられる。
レベリング剤として、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
防錆剤として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン、エチレンジアミン四酢酸、金属塩系化合物、及びリン酸エステル系化合物が挙げられる。
防腐剤として、ベンゾイソチアザリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、イソチアゾロン、オキサゾリジン系化合物が挙げられる。
表面張力調整剤として、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
酸化防止剤として、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類が挙げられる。
紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル5′−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及びp−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
消泡剤として、ジメチルポリシロキサンのようなシリコーン系化合物、鉱物油、及びフッ素系化合物が挙げられる。
湿潤剤として、グリセリン、ソルビタン系化合物、多糖類、尿素、エチレン尿素又はこれらの誘導体が挙げられる。
分散助剤として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
pH調整剤として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン、アミン、アンモニウムのようなアルカリ化剤が挙げられる。
筆記具用インキ組成物は、黄色、橙色、赤色、青色、紫色、緑色、黒色の色相を示す染料、顔料、又はこれらの混合物のような着色剤を含んでいてもよい。
このような染料として、公知の染料インキ組成物に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、造塩染料、アルコール溶解性染料、アゾイック染料、硫化染料、硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶性染料、食用染料、及び金属錯塩染料が挙げられる。これらの染料として、アゾ系染料、アントラキノン系染料、オキサジン系染料、フタロシアニン系染料、キナクリドン系染料、キノフタロン系染料、トリフェニルメタン系染料、ペリノン系染料、及びペリレン系染料を挙げることができる。染料の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましい。
また前記染料は、市場において入手可能な造塩染料が好ましい。この造塩染料として、
VALIFAST(登録商標) YELLOW 1101、1103、1109、3108、3120、3150、3170、3180、4120、4121等;
VALIFAST ORANGE 1201、2210、3208、3209、3210等;
VALIFAST RED 1308、1320、1364、1388、2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320等;
VALIFAST PINK 2310N、2312等;
VALIFAST BROWN 2402、3402、3405等;
VALIFAST GREEN 1501等;
VALIFAST BLUE 1605、1613、1621、1631、2620、2670、2680等;
VALIFAST VIOLET 1701、1702、1704、1705等;
VALIFAST BLACK 1807、1821、3804、3806、3808、3810、3820、3830、3840、3870、3877等;
OIL BLUE 613等;
OIL PINK 312(オリヱント化学工業社製)等;
C.I.Basic Red 1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;
C.I.Basic Red 1:1とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料;
C.I.Basic Red 2と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 1と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 2と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 51と有機酸との造塩染料;
C.I.Basic Yellow 52と有機酸との造塩染料;
C.I.Acid Black 52とアミンとの造塩染料
が挙げられる。
また用いることのできる顔料は、液媒体に溶解し難く、液媒体に分散したときに30nm〜700nmの平均粒径を有するものであることが好ましい。顔料の含有量は、筆記具用インキ組成物全量に対して0.5〜25質量%であることが好ましく、0.5〜20%であることがより好ましい。
前記顔料は、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン顔料のような無機顔科;タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナシリケートのような体質顔科;アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料のような有機顔料;蛍光顔料、パール顔料、金色、銀色のようなメタリック顔料が挙げられる。
また潤滑性を有する黒色顔料として、黒鉛(グラファイト)が好ましい。黒鉛は、人造黒鉛及び天然黒鉛を使用でき、鱗片上黒鉛、塊状黒鉛、及び土状黒鉛を、必要に応じた性状と大きさのものを使用できる。
他の黒色顔料として、プリンテックス3、25、30、35、40、45、55、60、75、80、85、90、95、300、スペシャルブラック4、5、100、250、550(以上、エボニックデグサジャパン社製)。
三菱カーボンブラック#2700、#2650、#2600、#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#260、#95#52、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#32、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、MCF88、MA600、MA77、MA7、MA11、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA230(以上、三菱化学社製)、
トーカブラック#8500/F、#8300/F、#7550SB/F、#7400、#7360SB/F、#7350/F、#7270SB、#7100/F、#7050(以上、東海カーボン社製)等のカーボンブラックや、
ダイヤモンドブラックN(玉億色材社製)等のアニリンブラックや、ボーンブラック(三重カラーテクノ社製)や、鉄化ブラックKN−320(日本鉄化社製)等の鉄黒が挙げられる。
黄色顔料、赤味の黄色(オレンジ色)顔料、及び赤色顔料は、黒色配合着色剤に含まれるものと同様のものを使用できる。
青色顔料として、C.I.Pigment Blue 2、9、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、28、29、36、60、68、76、80等が挙げられる。
緑色顔料として、C.I.Pigment Green 7、36、37等が挙げられる。
紫色顔料として、C.I.Pigment Violet 19、23等が挙げられる。
これらの顔料は、単独又は複数が混合されたものであってもよい。
必要に応じて無機顔料の分散体や染料が添加された加工顔料を用いてもよい。さらに、スチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸エステル、アクリルニトリル、オレフィンのようなモノマーを重合して得られる樹脂エマルション、筆記具用インキ組成物中で膨潤して不定形となる中空樹脂エマルション、又はこれらのエマルションが着色剤で染着された染着樹脂粒子である有機多色顔料を用いてもよい。
顔料を分散させる分散剤は、顔料の種類に応じて適宜選択される。具体的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体のような合成樹脂、並びにこれらのEO(エチレンオキサイド)付加物及びPO(プロピレンオキサイド)付加物、ポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げられる。
顔料は、ディゾルバーのような攪拌機により攪拌されることによって、また、ボールミルやロールミル、ビーズミル、サンドミル、ピンミルのような粉砕機により混合粉砕された後、遠心分離や濾過されることで粗大粒子、未溶解物、及び混入固形物が取り除かれていることが好ましい。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお製造例において、用いた水の電気伝導度は、全て22.5℃において148μS/cmである。
(製造例A−1)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Red 97との造塩染料(染料例A−1)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1(化学式(5)中のXb−がClであり、m=1であるトリフェニルメタン系塩基性染料)をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れて75℃に加熱し、36gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.4)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=10.9とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを40分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.2)。72℃まで加熱した後50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が185μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=65.9g)。それによって染料例A−1を得た。
染料例A−1を、塩素・硫黄分析装置(三菱化学アナリテック社製、製品名TOX−2100H)にて全塩素の含有量を測定したところ、423ppmであった。
染料例A−1を、原子吸光測定器(バリアン テクノロジーズ ジャパン リミテッド社製、製品名SpectrAA−220FS)にて鉄の含有量を測定したところ、58ppmであった。
染料例A−1の吸光度を次の条件で測定した。
染料例A−1を0.050g秤量し、ベンジルアルコール10mLに溶解させ、100mLメスフラスコに加え1−メトキシ−2−プロパノールで100mLとした。この溶液1mLをホールピペットで秤量し100mLメスフラスコに移し、1−メトキシ−2−プロパノールを加えて100mLとした。この溶液の吸光度を、紫外線可視分光光度計(島津製作所社製、製品名UV−1700 UV−VISIBLE SPECTROPHOTOMETER)にて測定した。結果を図1に示した。
(製造例A−2)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Red 97との造塩染料(染料例A−2)の合成
染料例A−2の化学式は、染料例A−1の化学式(A−1)と同一である。
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーに移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れて75℃に加熱し36gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.3)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=10.7とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを40分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.1)。8質量%酢酸水溶液をこれに徐々に加えpH=4.7に調整した後、72℃まで加熱した。50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が192μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=65.8g)。それによって染料例A−2を得た。
得られた染料例A−2について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、305ppmであった。また、同様に鉄の含有量を測定したところ、63ppmであった。
(製造例A−3)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Red 97との造塩染料(染料例A−3)の合成
染料例A−3の化学式は、染料例A−1の化学式(A−1)と同一である。
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れて75℃に加熱し、36gのC.I.Acid Red 97をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.3)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=10.7とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを130分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.1)。72℃まで加熱した後50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が191μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=65.9g)。それによって染料例A−3を得た。
得られた染料例A−3について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、378ppmであった。また、同様に鉄の含有量を測定したところ、61ppmであった。
(製造例A−4)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Yellow 42との造塩染料(染料例A−4)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5重量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水573gを入れて75℃に加熱し39gのC.I.Acid Yellow 42を徐々にこれに加え2時間かけて溶解させた(pH=6.9)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=11.0とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを37分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.3)。72℃まで加熱した後50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が177μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=68.0g)。それによって染料例A−4を得た。
得られた染料例A−4について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、364ppmであった。また、同様に鉄の含有量を測定したところ、73ppmであった。
(製造例A−5)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Red 97:C.I.Acid Yellow 42=50:50との造塩染料(染料例A−5)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水573gを入れ75℃に加熱し18.0gのC.I.Acid Red 97及び19.5gのC.I.Acid Yellow 42をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=7.8)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=10.9とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを37分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.4)。72℃まで加熱した後50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が166μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=67.3g)。それによって染料例A−5を得た。
得られた染料例A−5について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、397ppmであった。
(製造例A−6)
トリフェニルメタン塩基性染料とC.I.Acid Red 97:C.I.Acid Yellow 42=75:25との造塩染料(染料例A−6)の合成
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水575gを入れて75℃に加熱し、27.0gのC.I.Acid Red 97及び9.8gのC.I.Acid Yellow 42をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=8.1)。この溶液に炭酸ナトリウム4gを加えpH=10.9とした後濾過し、溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを50℃に加熱し、溶液−Aに溶液−Bを37分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=7.2)。72℃まで加熱した後50℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が179μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて75℃で2日間乾燥した(収量=67.1g)。それによって染料例A−6を得た。
得られた染料例A−6について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、412ppmであった。
(製造例B−1)
トリフェニルメタン塩基性染料とドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料(染料例B−1)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーへ移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れ、59.2gのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸(濃度50質量%)を加え、1時間撹拌した後濾過し、溶液−Bとした(pH=9.3)。溶液−A及び溶液−Bを20℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを36分間で滴下し20℃にて1時間反応した(pH=6.7)。30℃まで加熱した後15℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が199μS/cmになるまで水洗した。その後、減圧乾燥機にて50℃で2日間乾燥した(収量=62.3g)。それによって染料例B−1を得た。
得られた染料例B−1について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、410ppmであった。また、同様に鉄の含有量を測定したところ、68ppmであった。
得られた染料例B−1の吸光度を製造例A−1と同様に測定した。結果を図2に示した。
(製造例B−2)
トリフェニルメタン塩基性染料とドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料(染料例B−2)の合成
染料例B−2の化学式は、染料例B−1の化学式(B−1)と同一である。
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーに移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れ、59.2gのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸(濃度50質量%)を加え、1時間撹拌した後濾過し、溶液−Bとした(pH=9.3)。溶液−A及び溶液−Bを20℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを30分間で滴下し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液をこれに徐々に加えpH=8.5に調整し、20℃にて1時間反応した。30℃まで加熱した後15℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が199μS/cmになるまで水洗した。その後、減圧乾燥機にて50℃で2日間乾燥した(収量=61.3g)。それによって染料例B−2を得た。
得られた染料例B−2について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、337ppmであった。
(製造例B−3)
トリフェニルメタン塩基性染料とドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料(染料例B−3)の合成
染料例B−3の化学式は、染料例B−1の化学式(B−1)と同一である。
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーに移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水576gを入れ、59.2gのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸(濃度50質量%)を加え、1時間撹拌した後濾過し、溶液−Bとした(pH=9.3)。溶液−A及び溶液−Bを20℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを120分間で滴下し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液をこれに徐々に加えpH=8.5に調整し、20℃にて1時間反応した(pH=6.5)。30℃まで加熱した後15℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が178μS/cmになるまで水洗した。その後、減圧乾燥機にて50℃で2日間乾燥した(収量=62.5g)。それによって染料例B−3を得た。
得られた染料例B−3について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、351ppmであった。
(製造例B−4)
トリフェニルメタン塩基性染料とジノニルナフタレンジスルホン酸との造塩染料(B−4)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーに移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水486gを入れて60℃に加熱し、50.6gのジノニルナフタレンジスルホン酸(濃度55質量%)と20.5gの20質量%水酸化ナトリウム水溶液とを加え、50℃で1時間撹拌した後濾過し、溶液−Bとした(pH=10.7)。溶液−A及び溶液−Bを40℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを60分間で滴下して40℃にて1時間反応した(pH=5.5)。10質量%水酸化ナトリウム水溶液をこれに徐々に加えpH=7.0に調整し50℃まで加熱した後40℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が175μS/cmになるまで水洗した。その後、50℃で3日間乾燥した(収量=68.2g)。それによって染料例B−4を得た。
得られた染料例B−4について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、383ppmであった。
(製造例B−5)
トリフェニルメタン塩基性染料とドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸:ジノニルナフタレンジスルホン酸=50:50との造塩染料(染料例B−5)の合成
Figure 0006647554
3Lビーカーに水2450gを入れて75℃に加熱し、50gのトリフェニルメタン塩基性染料1をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.8)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.7とした後濾過し、濾液を5Lビーカーに移して、溶液−Aとした。別な1Lビーカーに水509gを入れて60℃に加熱し、25.3gのジノニルナフタレンジスルホン酸(濃度55質量%)と、10.3gの20質量%水酸化ナトリウム水溶液と、29.6gのドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸(濃度50質量%)とを加え、60℃で1時間撹拌した後濾過し、溶液−Bとした(pH=10.4)。溶液−A及び溶液−Bを20℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを60分間で滴下して20℃にて1時間反応した(pH=6.3)。30℃まで加熱した後15℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が178μS/cmになるまで水洗した。その後、減圧乾燥機にて50℃で2日間乾燥した(収量=66.7g)。それによって染料例B−5を得た。
得られた染料例B−5について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、424ppmであった。
(比較製造例1)
エチルバイオレットとC.I.Acid Orange 7との造塩染料(比較染料例C−1)の合成
Figure 0006647554
水120gを75℃に加熱しエチルバイオレット5gをこれに徐々に加え2時間かけて溶解させた(pH=3.4)。この溶液に5質量%の塩酸溶液を加えpH=2.8とした後濾過して、溶液−Aとした。別に水212gを75℃に加熱し、3.4gのC.I.Acid Orange 7をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させ、溶液−Bとした(pH=10.2)。溶液−A及び溶液−Bを50℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを10分間で滴下し50℃にて1時間反応した(pH=8.9)。その後、デカンテーションにより上澄み液を取り除き、反応物を室温で7日間乾燥した(収量=6.5g)。それによって比較染料例C−1を得た。
得られた比較染料例C−1について、製造例A−1と同様に全塩素の含有量を測定したところ、1437ppmであった。また、同様に鉄の含有量を測定したところ、107ppmであった。
得られた比較染料例C−1の吸光度を製造例A−1と同様に測定した。結果を図3に示した。
(比較製造例2)
メチルバイオレットとC.I.Acid Yellow 42との造塩染料(比較染料例C−2)の合成
Figure 0006647554
水60gを75℃に加熱しメチルバイオレット5gをこれに加え2時間かけて溶解させ、溶液−Aとした(pH=2.8)。水138gを75℃に加熱し、4.1gのC.I.Acid Yellow 42をこれに徐々に加え2時間かけて溶解させ、炭酸ナトリウム0.3gを加えpH=9.2として、これを溶液−Bとした。溶液−A及び溶液−Bを30℃に冷却し、溶液−Aに溶液−Bを10分間で滴下し30℃にて1時間反応した(pH=7.4)。67℃まで加熱した後22℃まで冷却し、濾過後、電気伝導度が188μS/cmになるまで水洗した。その後、棚型温風乾燥機にて50℃で3日間乾燥した(収量=7.03g)。それによって比較染料例C−2を得た。
得られた比較染料例C−2の吸光度を製造例A−1と同様に測定した。結果を図4に示した。
(ボールペン用インキ組成物の調製)
製造例A−1〜A−6及びB−1〜B−5、並びに比較製造例C−1及びC−2で得られた造塩染料と市販されている染料とを粉体混合して、表1に示す実施例用配合着色剤1〜7と、比較例用配合着色剤7〜11とを、調製した。なお、VALIFAST YELLOW 1103(C.I.Acid Yellow 42の有機アミン塩)、VALIFAST RED 1308(C.I.Basic Red 1と C.I.Acid Yellow 42との造塩染料)、VALIFAST BLACK 1815(C.I.Acid Black 1の有機アミン塩)、及びVALIFAST BLACK 1821(C.I.Solvent Black 7の有機酸塩)は、オリヱント化学工業社製の油溶性染料である。
Figure 0006647554
実施例用配合着色剤1〜7を用いて実施例1〜7のボールペン用インキ組成物を、比較例用配合着色剤8〜11を用いて比較例1〜4のボールペン用インキ組成物を、夫々調製した。各インキ組成物の組成を表2に示す。なお、ポリビニルブチラールBL−1及びBH−Sは積水化学工業社製のポリビニルブチラール樹脂であり、ハイラック111は日立化成社製のケトン樹脂であり、YP90Lはヤスハラケミカル社製のテルペンフェノール樹脂であり、ポリビニルピロリドンK−90は日本触媒社製のビニルピロリドンの重合体である。
Figure 0006647554
実施例1〜3、5〜7、及び比較例1〜3のボールペン用インキ組成物を、ディゾルバーによって撹拌し、分散させた。実施例4及び比較例4のボールペン用インキ組成物を、ビーズミルによって分散させた。その後、以下の評価を行った。
(ボールペン用インキ組成物の溶解安定性評価)
実施例1〜7、及び比較例1〜4のボールペン用インキ組成物を、夫々20mLのガラス瓶に15mL入れ、密栓した後、0℃の恒温槽にて1ヶ月間放置した。その後、ガラス瓶中のインキ組成物の表層及び下層を、目視した。それにより膜状物質の有無、及び析出物の有無を観察した。結果を下記の四段階で評価し、その結果を表3に示した。
膜状物質及び析出物が観察されなかった:○
膜状物質及び析出物が極僅かに観察された:△
膜状物質及び析出物が観察された:×
ボールペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
(評価試験用ボールペンの作製)
実施例1〜7及び比較例1〜4のボールペン用インキ組成物を、内径1.6mmのポリプロピレン製チューブに適量充填し、先端にボール(超硬合金製、直径1.0mm)が取り付けられたステンレス製ボールチップに装着した。さらにチューブの基端部にインキ追従体を入れ、チューブを軸筒に挿入してボールチップを覆うようにキャップを嵌め、評価試験用ボールペンを作製した。
(ボールペン用インキ組成物のドライアップ性評価)
作製したボールペンのキャップを取り、25℃湿度65%下にて1時間放置した後、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
カスレが生じ難かった:○
カスレがやや生じた:△
カスレが生じ易かった:×
ボールペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
(ボールペン用インキ組成物のボールの腐食性評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4のボールペン用インキ組成物を50mLのガラス瓶に45mL入れ、上記のボールペンのボールチップと同じ材質のステンレス板(1cm四方、厚さ3mm)を全て浸漬させた。30℃の恒温槽にて1ヶ月間放置後、ステンレス板を取り出し、メタノールで洗浄後、表面を観察し、腐食による表面光沢の落ち度合いを目視にて行い、下記の三段階で評価した。
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が全くなかった:○
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が極僅かに確認された:△
表面の腐食(表面光沢の落ち度合い)が明らかに確認された:×
ボールペン用インキ組成物の評価結果を表3に示した。
Figure 0006647554
(マーキングペン用インキ組成物の調製)
製造例A−1〜A−6及びB−1〜B−5、並びに比較製造例C−1及びC−2で得られた造塩染料と市販されている染料とを粉体混合して、表4に示す実施例用配合着色剤12〜16と、比較例用配合着色剤17〜19とを、調製した。
Figure 0006647554
実施例用配合着色剤12〜16を用いて実施例8〜12のマーキングペン用インキ組成物を、比較例用配合着色剤17〜19を用いて比較例5〜7のマーキングペン用インキ組成物を、夫々調製した。各インキ組成物の組成を表5に示す。なお、マルキードNo.31は荒川化学工業社製のマレイン酸樹脂である。
Figure 0006647554
実施例8〜10、12、及び比較例5〜6のマーキングペン用インキ組成物を、ディゾルバーによって撹拌し、分散させた。実施例11及び比較例7のマーキングペン用インキ組成物を、ビーズミルによって分散させた。その後、以下の評価を行った。
(マーキングペン用インキ組成物の溶解安定性評価)
実施例8〜12、及び比較例5〜7のマーキングペン用インキ組成物を、夫々20mLのガラス瓶に15mL入れ、密栓した後、0℃の恒温槽にて1ヶ月間放置した。その後、ガラス瓶中のインキ組成物の表層及び下層を、目視した。それにより膜状物質の有無、及び析出物の有無を観察した。結果を下記の四段階で評価した。その結果を表6に示した。
膜状物質及び析出物が観察されなかった:○
膜状物質及び析出物が極僅かに観察された:△
膜状物質及び析出物が観察された:×
マーキングペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
(評価試験用マーキングペンの作製)
実施例8〜12、及び比較例5〜7のマーキングペン用インキ組成物を、フェルト製のペン芯を有するマーキングペン(三菱鉛筆社製、製品名:油性ピースマーカー)に適量充填し、ペン芯を覆うようにキャップを嵌め、評価用マーキングペンを作製した。
(マーキングペン用インキ組成物のドライアップ性評価)
作製したマーキングペンのキャップを取り、25℃湿度65%下にて1分間放置した後、PPC用紙にフリーハンドで丸を筆記した。その筆跡のカスレについて下記の四段階で評価した。
カスレが生じ難かった:○
カスレがやや生じた:△
カスレが生じ易かった:×
マーキングペンインキ配合着色剤が溶解しなかったため評価できなかった:―
マーキングペン用インキ組成物の評価結果を表6に示した。
Figure 0006647554
表3及び表6から明らかなように、本発明を適用した実施例1〜7のボールペン用インキ組成物、及び実施例8〜12のマーキング用インキ組成物は、本発明の適用外の比較例1〜7のインキ組成物に比べて性能の点において非常に優れていることが確認された。
本発明の造塩染料、並びにこれを含む筆記具用染料及び黒色配合着色剤は、所望の染料や顔料ともにボールペンやマーキングペンのような筆記具の着色剤に用いられる。また本発明の筆記具用インキ組成物は、筆記具に充填されて用いられる。

Claims (7)

  1. 下記化学式(1)
    Figure 0006647554
    (化学式(1)中、Yは酸性染料から得られる残基又は有機酸から得られる残基、aは1〜2の正数、kは1〜2の正数である)
    で表されることを特徴とする造塩染料。
  2. 前記酸性染料及び前記有機酸が、少なくともスルホン酸基を2個有することを特徴とする請求項1に記載の造塩染料。
  3. 前記酸性染料が、ジスアゾ酸性染料であることを特徴とする請求項1に記載の造塩染料。
  4. 燃焼クーロメトリー法によって測定された全塩素量が、50〜1000ppmであることを特徴とする請求項1に記載の造塩染料。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の造塩染料を含むことを特徴とする筆記具用染料。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の造塩染料を含むことを特徴とする黒色配合着色剤。
  7. 請求項5に記載の筆記具用染料、又は請求項6に記載の黒色配合着色剤と、液媒体と、前記液媒体に溶解する樹脂とを、少なくとも含むことを特徴とする筆記具用インキ組成物。
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