以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態およびその変形例には同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法の関係等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
本実施形態にかかる木質建材10は、床板などとして用いられるものであって、図1および図2に示すように、板状の基材部20を備えている。
基材部20は、例えば、平板である中密度繊維板(MDF)からなる基材本体21と、例えば、突板からなる化粧板22と、を備えている。本実施形態では、基材本体21の表面21aのほぼ全面(後述する溝部30以外の部位、面取り部が形成されている場合には溝部30および面取り部以外の部位)に化粧板22が貼付されている。
化粧板22の表面22aは、種々のデザイン(例えば、木目調など)で化粧されており、このように化粧された化粧板22を基材本体21の表面21aに設けるようにすれば、木質建材10の意匠性を高めることができるようになる。
なお、本実施形態では、基材本体21の表面21aに化粧板22が設けられた木質建材10を例示しているが、基材部20の両面に化粧板22が設けられていてもよいし、化粧板を設けないものとしてもよい。また、本実施形態では、略矩形板状の木質建材10を例示しているが、木質建材の輪郭形状は矩形状に限らず、種々の形状とすることができる。
そして、基材本体21と化粧板22とで構成される基材部20の表面20aには、化粧板22側から基材本体21まで達するように、溝部30が形成されている。したがって、本実施形態では、基材部20の表面20aは、平坦部20bと溝部30の内面30aとを有している。なお、溝部30は、木質建材10を床板として用いて床に敷き詰めた際に擬似目地として機能させることができるものである。
また、本実施形態では、同一方向(木質建材10の長手方向)に延在する2本の溝部30が形成されたものを図1に例示しているが、溝部30の延在方向は木質建材10の短手方向であってもよい。また、複数本の溝部30を、少なくとも2つの溝部30が交差するように形成することも可能である。
さらに、本実施形態では、この溝部30内に加飾層50が形成されており、加飾層50によって、溝部30内にも、種々のデザイン(例えば、木目調など)が形成されるようにしている。このとき、基材部20の表面20aの平坦部20b(化粧板22の表面22a)に形成されたデザイン(色や柄)と同様のデザイン(色や柄)を溝部30内に形成することができる。こうすれば、木質建材10の表面を視た際に、溝部30が目立ちすぎてしまうのを抑制することができ、木質建材10の意匠性をより高めることができるようになる。特に、平坦部20bおよび溝部30内のデザインを木目調にすれば、一枚板で作成した板材に見た目を近づけることができる。
また、本実施形態では、溝部30の内面30aを含む基材部20の表面20aに形成された目止め層40を介して、溝部30内に加飾層50を形成している。
このように、目止め層40は、溝部30の内面30aおよび化粧板22の表面22a、すなわち基材部20の表面(片面)20aの全面に形成されている。そして、この目止め層40は、基材本体21および化粧板22を目止めし、加飾層50(特に、後述する隠蔽層60)を形成する際に用いられる塗料(特に、白色系塗料81)が基材本体21等に染み込んでしまうのを抑制できるようにするものである。
目止め層40は、例えば、スポンジ、ゴム等の弾性を有するローラを用いて、UV硬化性の塗料を塗布することで形成することができる。
加飾層50は、溝部30内における目止め層40の表面41の全面に白色系塗料81を塗布することで形成される隠蔽層60と、隠蔽層60の表面61の全面に、着色塗料82を塗布することで形成される着色層70と、を備えている。
隠蔽層60は、溝部30において着色層70に対する白色系の下地として形成されるものであり、例えば、UV硬化性の白色系塗料81をインクジェット80aにより塗布することで形成することができる。また、隠蔽層60は、着色層70の発色を支援するために形成されるものでもある。
一方、着色層70は、例えば、加飾層50が化粧板22の表面22aと同様の外観を有するように、隠蔽層60の表面61の全面に形成されるものである。この着色層70は、例えば、UV硬化性の着色塗料82をインクジェット80bにより塗布することで形成することができる。
なお、必要に応じて、目止め層40の表面41や隠蔽層60の表面61に保護層や光沢層を形成するようにしてもよい。
ここで、本実施形態では、2つの傾斜部31,31を備えるように溝部30を形成している(図2参照)。そして、2つの傾斜部31,31が、それぞれ傾斜面32,32を有するようにしている。
この傾斜面32は、基材部20の表面20aに連なる一端32a側(溝部30の端部30b側)で深さが浅く、表面20aから離れる他端32b側(溝部30の中央部30c側)で深さが深くなるように形成されている。
さらに、本実施形態では、傾斜面32は湾曲部33を備えている。この湾曲部33は、一端32a側(溝部30の端部30b側)から他端32b側(溝部30の中央部30c側)に向かうにつれて、湾曲部33の仮想接平面(図示せず)と仮想水平面Pとのなす鋭角が徐々に大きくなるように形成されている。すなわち、湾曲部33は、基材部20の表面20a側に凸となるように滑らかに湾曲している。
このように、本実施形態では、湾曲部33が、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる面部に相当している。
なお、本実施形態では、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる面部として滑らかに連続して湾曲する湾曲部33を例示している。しかしながら、面部の形状はこれに限らず、様々な形状とすることができる。例えば、傾斜面を一端32a側から他端32b側にかけて段階的に傾斜が大きくなるように屈曲させて屈曲部を形成し、当該屈曲部を面部とすることも可能である。すなわち、複数の平坦な面を一端32a側よりも他端32b側で傾斜が大きくなるように連設させて屈曲面を形成し、当該屈曲面を有する屈曲部を面部とすることが可能である。このような屈曲部を面部とした場合、当該面部は、一端32a側の平坦な傾斜面と仮想水平面Pとのなす鋭角が小さく、他端32b側の平坦な傾斜面で仮想水平面Pとのなす鋭角が大きくなるように形成されることとなる。
なお、化粧板22が貼付された側の基材部20の周縁部に、他の基材部20と隣接して配設されることにより溝部30と同様の目地溝を構成するように、面取り部を形成することが可能である。このとき、基材部20の周縁部に面取り部を形成する際に、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる面部を有するように面取り部を形成することも可能である。なお、上述した溝部30は、周縁部に面取り部が形成された基材部20を隣接させて配置した際に形成される目地溝に似せるために形成したものである。
ところで、上述したように、本実施形態では、傾斜面32が一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる面部(湾曲部33)を有するようにしている。かかる構成とすると、単位投影面積あたりの塗布量を均一にした状態で白色系塗料81を塗布した場合、図3の比較例に示すように、隠蔽層が、一端32a側で層厚t1が厚く他端32b側で薄い通常隠蔽層600となってしまう。
なお、単位投影面積あたりの塗布量が均一であるとは、以下のようにして形成された領域内に存在する白色系塗料81の量がほぼ同一であることを意味している。
まず、図4に示すように、湾曲部(面部)33を仮想水平面Pに投影した際に形成される領域を水平投影領域Rとする。次に、水平投影領域Rを同一面積の投影正方形S1、S2…で複数に分割する。このとき、投影正方形S1、S2…を、面積が単位面積となるように設定する。なお、単位面積としては、例えば、1平方ミリメートルや1平方マイクロメートル等があげられるが、単位面積の大きさは適宜設定することが可能である。そして、このように形成された投影正方形S1、S2…を、単位投影面積を有する投影正方形と定義する。そして、湾曲部33の表面33aのうち仮想水平面Pに投影した際に、単位投影面積を有する投影正方形S1、S2…となる領域を領域R1、R2…とする。
そして、湾曲部33の表面33aにおいて、単位投影面積を有する投影正方形S1、S2…に対応する領域R1、R2…上に、ほぼ同量の白色系塗料81を塗布すれば、図3に示す通常隠蔽層600が形成される。
このようにして形成された通常隠蔽層600の表面600aに、同様に単位投影面積あたりの塗布量を均一にした状態で着色塗料82を塗布することで通常着色層700が形成される。
そして、図3には、この通常隠蔽層600と通常着色層700とで形成された通常加飾層500が形成された、通常木質建材100が示されている。
このように、通常隠蔽層600と通常着色層700とで通常加飾層500を形成すると、一端32a側の隠蔽層600の層厚t1aが、他端32b側の隠蔽層600の層厚t1bよりも大きくなってしまうため、通常厚み差d1が比較的大きくなってしまう。
なお、通常厚み差d1とは、通常隠蔽層600における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚みの差(t1a−t1b)のことである。
そして、一端32a側の隠蔽層の層厚t1aが、他端32b側の隠蔽層の層厚t1bよりも大きくなってしまうと、通常加飾層500の一端32a側が明るくなってしまい、通常加飾層500に色むらが生じてしまう場合がある。
このとき、溝部30に形成されるデザインが単一色である場合や、木目調などの柄が形成されているが、背景色が単一色となっている場合には、色差(通常色差)ΔE2が比較的大きくなってしまう。なお、通常色差ΔE2とは、通常加飾層500における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差のことである。
このように、通常加飾層500が形成された通常木質建材100とすると、通常木質建材100の見栄えが悪化してしまうことがある。
そこで、本実施形態では、木質建材10の意匠性をより向上させることができるようにした。
具体的には、上述したように形成された通常木質建材100と比較した際に、加飾層50が、通常加飾層500とは態様が異なるようにした。より具体的には、上述したように形成された通常木質建材100と比較した際に、隠蔽層60が、通常隠蔽層600とは態様が異なるようにした。
本実施形態では、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなるようにすることで、隠蔽層60と通常隠蔽層600との態様を異ならせている。
なお、厚み差d2は、一端32a側の隠蔽層60の層厚t1aと他端32b側の隠蔽層60の層厚t1bとの差(t1a−t1b)のことである。
具体的には、投影正方形S1に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量と、投影正方形S2に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量とが異なるように、隠蔽層60を形成している。
なお、投影正方形S1は、湾曲部(面部)33の一端32a側に位置しており、投影正方形S2は、湾曲部(面部)33の他端32b側に位置している。
さらに、本実施形態では、湾曲部(面部)33の傾斜が緩くなるにつれて、対応する投影正方形内に存在する白色系塗料81の量が少なくなるように、隠蔽層60を形成している。
こうすることで、隠蔽層60の層厚t1を湾曲部(面部)33の一端32a側から他端32b側にかけてほぼ同一の厚さとすることができるようになる。
なお、本実施形態では、着色層70は、通常着色層700と同様の態様をしている。すなわち、単位投影面積あたりの着色塗料82の量が均一となるように着色層70を形成しているため、着色層70は、一端32a側で層厚t2(層厚t2a)が厚く他端32b側で層厚t2(層厚t2b)が薄くなるように形成されている。
このようにして形成された木質建材10は、加飾層50における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差ΔE1が測定できる場合には、色差ΔE1が通常色差ΔE2よりも小さくなっている。なお、色差ΔE1が測定できる場合とは、上述したように、溝部30に形成されるデザインが単一色である場合や、木目調などの柄が形成されているが、背景色が単一色となっている場合などである。
なお、色差ΔE1が測定できる場合には、色差ΔE1が0.8以下となるように、加飾層50を形成するのが好ましい。こうすれば、一端32a側と他端32b側との色の相異を、目視で認識することが難しくなるため、溝部30の見た目をほぼ一様の状態とすることができる。また、加飾層50のデザイン(色や柄)を、基材部20の表面20aの平坦部20b(化粧板22の表面22a)に形成されたデザイン(色や柄)と同様のデザイン(色や柄)とすれば、溝部30と平坦部20bとの境界線をぼやかすことができる。その結果、木質建材10の表面10aを視た際に、溝部30が目立ちすぎてしまうのをより抑制することができるようになり、木質建材10の意匠性をより一層高めることができるようになる。
かかる構成の木質建材10は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、前処理として、矩形のMDFを基材本体21として、基材本体21の表面(片面)21aに突板である化粧板22を貼付する。次いで、切削刃、切削ヘッド、レーザ加工ヘッド等を有する加工具により、基材本体21が化粧板22側から切削されることにより、溝部30と、溝部30を除く平坦部20bとを有する木質の基材部20を形成する。
次に、図5に示すように、UV硬化性の塗料を基材部20の溝部30を含む表面20aに塗布し、目止め層40を形成する(目止め工程)。
このように、UV硬化性の塗料を用いることで、公知のUV照射装置を用いて紫外線を照射して目止め層40を硬化させることができる。
次に、図6に示すように、溝部30内の目止め層40の表面40aの全面にUV硬化性の白色系塗料81をインクジェット80aにより塗布して隠蔽層60を形成する(隠蔽工程)。
このとき、投影正方形S1に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量と、投影正方形S2に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量と、が異なるように白色系塗料81を塗布する。
なお、対応する投影正方形内に塗布される白色系塗料81の量を異ならせる方法としては、例えば、図7(a)に示す方法がある。図7(a)に示す方法は、部位に応じてインクジェット80aにより塗布される白色系塗料81の塗布密度を異ならせる方法である。
このように、部位に応じてインクジェット80aにより塗布される白色系塗料81の塗布密度を異ならせることで、塗布密度が小さくなるにつれて、塗布される白色系塗料81の量が少なくなる。
したがって、本実施形態では、インクジェット80aにより塗布される白色系塗料81の塗布密度が、一端32a側で小さくなるようにし、他端32b側で大きくなるようにすることとなる。
このように、インクジェット80aにより塗布される白色系塗料81の塗布密度を部位ごとに異ならせた状態で、白色系塗料81を塗布すれば、対応する投影正方形内に塗布される白色系塗料81の量を部位ごとに異ならせることができる。
また、図7(b)に示す方法で、対応する投影正方形内に塗布される白色系塗料81の量を異ならせることも可能である。図7(b)に示す方法は、部位に応じて塗布回数を異ならせ、塗布回数が多い部位により多くの白色系塗料81を塗布するようにしたものである。
したがって、本実施形態では、インクジェット80aにより塗布される白色系塗料81の塗布回数は、一端32a側で少なく、他端32b側で多くなる。
そして、本実施形態では、白色系塗料81としてUV硬化性の塗料を用いているため、公知のUV照射装置を用いて紫外線を照射することで隠蔽層60を硬化させることができる。
また、インクジェット80aとしても、公知のものを用いることができる。なお、基材部20の溝部30の位置をレーザ変位計、撮像素子等を用いたセンサにより検知することで、塗装材(白色系塗料81)を溝部30に向けて正確に吐出するように構成するのが好ましい。
次に、図8に示すように、隠蔽層60の表面61に、UV硬化性の着色塗料82をインクジェット80bにより塗布して着色層70を形成する(着色工程)。
本実施形態では、着色塗料82としてUV硬化性の塗料を用いているため、公知のUV照射装置を用いて紫外線を照射することで着色層70を硬化させることができる。
また、インクジェット80bとしても、公知のものを用いることができる。なお、基材部20の溝部30の位置をレーザ変位計、撮像素子等を用いたセンサにより検知することで、塗装材(着色塗料82)を溝部30に向けて正確に吐出するように構成するのが好ましい。
なお、着色層70は、一般的に、シアン塗料、マゼンダ塗料およびイエロー塗料の3つの塗料の配合を適宜設定することで所望の色の着色塗料82とし、当該着色塗料82を塗布することで形成されるものである。しかしながら、上記3つの塗料以外の塗料(例えば、ブラック塗料など)を混合可能なインクジェット80bを用いることも可能である。
このように、本実施形態では、加飾工程は、上述した目止め工程と隠蔽工程と着色工程とを有している。
その後、必要に応じて、目止め層40の表面41や隠蔽層60の表面61に保護層や光沢層を形成する。
こうして、溝部30内が加飾層50により加飾された木質建材10が形成される。この木質建材10は、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなっている。なお、このとき形成された木質建材10は、色差ΔE1が測定できる場合には、色差ΔE1が通常色差ΔE2よりも小さくなっている。
以上説明したように、本実施形態にかかる木質建材10は、表面20aに傾斜部31が形成された板状の基材部20と、傾斜部31に形成される加飾層50と、を備えている。
そして、加飾層50は、傾斜部31に白色系塗料81を塗布することで形成される隠蔽層60と、隠蔽層60の表面61に、着色塗料82を塗布することで形成される着色層70と、を備えている。
さらに、傾斜部31は、表面20aに連なる一端32a側で深さが浅く、表面20aから離れる他端32b側で深さが深くなるように形成された傾斜面32を有している。そして、傾斜面32は、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる湾曲部(面部)33を有している。
ここで、加飾層50を、以下で説明する方法により形成された通常加飾層500と比較する。
まず、湾曲部(面部)33を仮想水平面Pに投影した際に形成される領域を水平投影領域Rとする。
そして、水平投影領域Rを同一面積の投影正方形S1,S2…で複数に分割し、湾曲部(面部)33のそれぞれの投影正方形S1、S2…に対応する部分に同量の白色系塗料81を塗布した場合に形成される層を通常隠蔽層600とする。
また、通常隠蔽層600のそれぞれの投影正方形S1、S2…に対応する部分に同量の着色塗料82を塗布した場合に形成される層を通常着色層700とする。
そして、通常隠蔽層600と通常着色層700とで通常加飾層500を形成する。このとき、通常隠蔽層600における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚みの差(t1a−t1b)が通常厚み差d1となっている。また、色差が測定できる場合には、通常加飾層500における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差は、通常色差ΔE2となっている。
このようにして形成された通常の木質建材100と比較して、本実施形態にかかる木質建材10は、加飾層50の態様が、通常加飾層500の態様とは異なっている。具体的には、隠蔽層60の態様が、通常隠蔽層600の態様とは異なっている。
そして、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなっている。
具体的には、湾曲部(面部)33の一端32a側に位置する投影正方形S1に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量と、湾曲部(面部)33の他端32b側に位置する投影正方形S2に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量とを異ならせている。このように、白色系塗料81の量を傾斜に応じて異ならせて隠蔽層60を形成することで、隠蔽層60の態様を通常隠蔽層600の態様と異ならせている。
かかる構成とすることで、隠蔽層60の層厚t1を湾曲部(面部)33の一端32a側から他端32b側にかけてほぼ同一の厚さとすることができ、加飾層50の湾曲部(面部)33の一端32a側が明るくなってしまうのを抑制することができる。その結果、溝部30が目立ちすぎてしまうのを抑制することができ、木質建材10の意匠性をより高めることができるようになる。
また、本実施形態にかかる木質建材の製造方法は、加飾工程を備えている。この加飾工程は、傾斜部31に白色系塗料81をインクジェットにより塗布して隠蔽層60を形成する隠蔽工程と、隠蔽層60に着色塗料82をインクジェットにより塗布して着色層70を形成する着色工程と、を備えている。
そして、傾斜面31に形成された一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる湾曲部(面部)33に加飾層50を形成する加飾工程は、以下で説明される方法と比較される。
まず、湾曲部(面部)33を仮想水平面Pに投影した際に形成される領域を水平投影領域Rとする。
また、水平投影領域Rを同一面積の投影正方形S1、S2…で複数に分割した場合に、湾曲部(面部)33のそれぞれの投影正方形S1、S2…に対応する部分に同量の白色系塗料81を塗布する工程を通常隠蔽工程とする。
また、通常隠蔽工程で形成された隠蔽層のそれぞれの投影正方形S1、S2…に対応する部分に同量の着色塗料82を塗布する工程を通常着色工程とする。
そして、通常隠蔽工程と通常着色工程とを有する通常加飾工程で通常加飾層500を形成する。このとき形成された通常隠蔽層600における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚みの差(t1a−t1b)が通常厚み差d1となっている。また、色差が測定できる場合には、通常加飾層500における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差は、通常色差ΔE2となっている。
このような通常の木質建材の製造方法と比較して、本実施形態にかかる木質建材の製造方法は、加飾工程における塗布態様を通常加飾工程とは異ならせている。具体的には、隠蔽工程における塗布態様を通常隠蔽工程における塗布態様とは異ならせている。そして、塗布態様を異ならせることで、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなるようにしている。
具体的には、隠蔽工程では、湾曲部(面部)33に白色系塗料81をインクジェットにより塗布する際に、投影正方形S1に対応する部分と、投影正方形S2に対応する部分とで、含まれる白色系塗料81の量が異なるように、白色系塗料81を塗布している。
かかる方法により木質建材10を形成することで、隠蔽層60の層厚t1を湾曲部(面部)33の一端32a側から他端32b側にかけてほぼ同一の厚さとすることができ、加飾層50の湾曲部(面部)33の一端32a側が明るくなってしまうのを抑制できる。その結果、溝部30が目立ちすぎてしまうのを抑制することができ、木質建材10の意匠性をより高めることができるようになる。
また、色差が測定できる場合には、隠蔽層60の塗布態様を異ならせるだけで、加飾層50の一端32a側と他端32b側の色差ΔE2を通常色差ΔE1よりも小さくすることができる。そのため、意匠性の高い木質建材10をより容易に製造することができるようになる。
このとき、隠蔽工程では、湾曲部(面部)33の傾斜が小さくなるにつれて白色系塗料81の塗布量が少なくなるように、白色系塗料81をインクジェット80aにより塗布することが可能である。
こうすれば、隠蔽層60の層厚t1を湾曲部(面部)33の一端32a側から他端32b側にかけてより均一にすることができる。さらに、一回の塗布工程で隠蔽層60の層厚をより均一にできるため、製造工程の簡素化を図ることも可能となる。
また、隠蔽工程では、湾曲部(面部)33の傾斜が大きい部位に白色系塗料81をインクジェット80aにより複数回塗布するようにすることも可能である。
こうすることによっても、隠蔽層60の層厚t1を湾曲部(面部)33の一端32a側から他端32b側にかけてより均一にすることができるようになる。
(第2実施形態)
本実施形態にかかる木質建材10Aは、基本的に上記第1実施形態の木質建材10と同様の構成を備えている。
すなわち、木質建材10Aは、図9に示すように、表面20aに傾斜部31が形成された板状の基材部20と、傾斜部31に形成される加飾層50と、を備えている。
そして、加飾層50は、傾斜部31に白色系塗料81を塗布することで形成される隠蔽層60と、隠蔽層60の表面61に、着色塗料82を塗布することで形成される着色層70と、を備えている。
さらに、傾斜部31は、表面20aに連なる一端32a側で深さが浅く、表面20aから離れる他端32b側で深さが深くなるように形成された傾斜面32を有している。そして、傾斜面32は、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる湾曲部(面部)33を有している。
また、加飾層50の態様を、通常加飾層500の態様とは異ならせ、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなるようにしている。
特に、色差が測定できる場合には、加飾層50における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差ΔE1が通常色差ΔE2よりも小さくなるようにしている。
ここで、本実施形態にかかる木質建材10Aが上記第1実施形態の木質建材10と主に異なる点は、隠蔽層60の層厚t1が一端32a側で薄くなるように隠蔽層60を形成した点にある。
具体的には、湾曲部(面部)33の一端32a側に位置する投影正方形S1に対応する部分に含まれる白色系塗料81の量を、上記第1実施形態よりも少なくすることで、隠蔽層60の層厚t1が一端32a側で薄くなるようにしている。
したがって、隠蔽工程においては、湾曲部(面部)33の一端32a側に位置する投影正方形S1に対応する部分に塗布する白色系塗料81の塗布量が、上記第1実施形態よりも少なくなる。
なお、本実施形態では、隠蔽層60の層厚t1は、一端32a側において、一端32aに向かうにつれて徐々に薄くなるようになっている。また、隠蔽層60の層厚t1は、一端32a側以外では、ほぼ同一の厚さとなるように形成されている。したがって、図11に記載の木質建材10Aでは、湾曲部(面部)33の一端32a側における隠蔽層60の厚さが、他の部位における隠蔽層60の厚さよりも薄くなっている。
このとき、厚み差d2の絶対値、すなわち、(t1a−t1b)の絶対値が、通常厚み差d1よりも大きくなってしまう可能性がある。しかしながら、厚み差d2の絶対値が、通常厚み差d1よりも大きくなってしまった場合であっても、実際の厚み差d2、すなわち、(t1a−t1b)の値は、負の値となる。したがって、傾斜の緩い一端32a側における隠蔽層60の厚さから傾斜のきつい他端32b側における隠蔽層60の厚さを引いた値を厚み差と定義すれば、本実施形態においても、d2<d1となっている。
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用・効果を奏することができる。
また、隠蔽層60の層厚t1が一端32a側で薄くなるようにすることで、平坦部20bと溝部30との境界部におけるコントラストを下げることができるようになる。その結果、化粧面部(平坦部20b)およびインクジェット印刷部(溝部30)を滑らかで連続性を有するように加飾することが可能となる。
なお、隠蔽層60の層厚t1が一端32a側で薄くなるようにすることで、比較的明るくなりやすい一端32a側の加飾層50の色をより確実に抑えることができ、木質建材10の意匠性をより高めることができるようになるという利点もある。
(第3実施形態)
本実施形態にかかる木質建材10Bは、基本的に上記第1実施形態の木質建材10と同様の構成を備えている。
すなわち、木質建材10Bは、図10に示すように、表面20aに傾斜部31が形成された板状の基材部20と、傾斜部31に形成される加飾層50と、を備えている。
そして、加飾層50は、傾斜部31に白色系塗料81を塗布することで形成される隠蔽層60と、隠蔽層60の表面61に、着色塗料82を塗布することで形成される着色層70と、を備えている。
さらに、傾斜部31は、表面20aに連なる一端32a側で深さが浅く、表面20aから離れる他端32b側で深さが深くなるように形成された傾斜面32を有している。そして、傾斜面32は、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる湾曲部(面部)33を有している。
また、加飾層50の態様を、通常加飾層500の態様とは異ならせている。特に、色差が測定できる場合には、加飾層50における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差ΔE1が通常色差ΔE2よりも小さくなるようにしている。
ここで、本実施形態にかかる木質建材10Bが上記第1実施形態の木質建材10と主に異なる点は、着色層70の態様を、通常着色層700の態様とは異ならせた点にある。
具体的には、着色層70の一端32a側における層厚t2(層厚t2a)を、通常着色層700の一端32a側における層厚t2(層厚t2a)よりも厚くなるようにした。
より詳しく説明すると、まず、単位投影面積を有する投影正方形S1、S2…に対応する領域R1、R2…上にほぼ同量の白色系塗料81を塗布することで、隠蔽層60を形成する。このとき形成された隠蔽層60は、図3に示す通常隠蔽層600とほぼ同様の形状となる。すなわち、一端32a側で層厚t1が厚く他端32b側で薄くなっている。
そして、この隠蔽層60の表面61の全面に、着色塗料82を塗布することで、着色層70を形成する。このとき、湾曲部(面部)33の一端32a側に位置する投影正方形S1に対応する部分に含まれる着色塗料82の量と、湾曲部(面部)33の他端32b側に位置する投影正方形S2に対応する部分に含まれる着色塗料82の量とを異ならせている。具体的には、湾曲部(面部)33の傾斜が緩くなるにつれて、着色塗料82の量および着色塗料82の塗布量が多くなるように、着色層70を形成している。
こうすることで、隠蔽層60の層厚t1が厚い部位に対応する部位における層厚t2がより厚くなった着色層70を形成することができる。
すなわち、着色層70の厚み差d4は、通常着色層700の通常厚み差d3よりも大きくなっている。
なお、通常厚み差d3とは、通常着色層700における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚みの差(t2a−t2b)のことである。
また、厚み差d4とは、着色層70における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚みの差(t2a−t2b)のことである。
こうすることで、加飾層50の湾曲部(面部)33の一端32a側が明るくなってしまうのを抑制できる。
なお、本実施形態では、シアン塗料、マゼンダ塗料およびイエロー塗料の3つの塗料のみを用いて着色層70を形成したものを例示している。しかしながら、上記3つの塗料以外の塗料(例えば、ブラック塗料など)を混合可能なインクジェット80bを用いて着色層70を形成することも可能である。
例えば、3つの塗料の他にブラック塗料を用いて着色層70を形成すれば、S1の領域内に存在する着色塗料82の量を少なくしつつ、加飾層50の湾曲部(面部)33の一端32a側が明るくなってしまうのを抑制することができる。
したがって、例えば、一端32a側に塗布する着色塗料82を、ブラック塗料を混合させたものとした場合、シアン塗料、マゼンダ塗料およびイエロー塗料の3つの塗料のみを着色塗料として用いた場合に較べて、着色塗料82の量が少なくなる。すなわち、着色層70の一端32a側における層厚t2を通常よりも薄くすることができる。
そのため、色差の測定が可能な場合、かつ、ブラック塗料が用いられている場合には、領域R2上に塗布する量よりも多くの着色塗料82を領域R1上に塗布することなく、色差ΔE1を通常色差ΔE2よりも小さくことができる。
すなわち、湾曲部33の表面33aにおける領域R1上に、領域R2上に塗布する着色塗料82の量と同量もしくはそれ以下の量の着色塗料82を塗布することで、色差ΔE1を通常色差ΔE2よりも小さくすることができる。
このとき、着色層70の厚み差d4は、通常着色層700の通常厚み差d3と同じ、もしくは、それ以下となっている。
しかしながら、この場合にあっても、一端32a側に形成された着色層70の色は、シアン塗料、マゼンダ塗料およびイエロー塗料の3つの塗料のみを着色塗料82として用いて再現することが可能である。そして、かかる方法で再現した場合には、湾曲部33の一端32a側に位置する投影正方形S1に対応する部分に含まれる着色塗料82の量は、湾曲部33の他端32b側に位置する投影正方形S2に対応する部分に含まれる着色塗料82の量よりも多くなる。
したがって、ブラック塗料を混合させることで、着色塗料82の量を少なくしつつより暗い色味を出すようにした場合、3つの塗料のみを着色塗料82として用いて再現した際の着色塗料82の使用量に換算することができる。すなわち、ブラック塗料を用いた着色塗料の使用量は、上述の方法で換算した着色塗料82の使用量とみなすことができる。
そして、着色塗料82の使用量とみなされた換算量で、S1に対応する部位に塗布される量(S1に対応する部位に存在する量)とS2に対応する部位に塗布される量(S2に対応する部位に存在する量)とを比較すれば、S1側(一端32a側)が多くなる。
このように、ブラック塗料を用いた場合であっても、実質的に、3つの塗料のみを着色塗料82として用い、投影正方形S1に対応する部分と投影正方形S2に対応する部分とで、含まれる着色塗料82の量を異ならせて着色層70を形成したことと同じになる。このとき、着色層70の厚み差d4は、通常着色層700の通常厚み差d3よりも大きくなる。
このように、本実施形態では、シアン塗料、マゼンダ塗料およびイエロー塗料の3つの塗料のみを着色塗料として用いて再現した場合に、投影正方形S1に対応する部分と投影正方形S2に対応する部分とに含まれる着色塗料82の量が異なるようにしている。
すなわち、着色層70の態様および塗布態様を異ならせることで、加飾層50の態様および加飾工程の塗布態様を異ならせている。
かかる構成とすることによっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用・効果を奏することができる。
(第4実施形態)
本実施形態にかかる木質建材10Cは、基本的に上記第1実施形態の木質建材10と同様の構成を備えている。
すなわち、木質建材10Cは、図11に示すように、表面20aに傾斜部31が形成された板状の基材部20と、傾斜部31に形成される加飾層50と、を備えている。
そして、加飾層50は、傾斜部31に白色系塗料81を塗布することで形成される隠蔽層60と、隠蔽層60の表面61に、着色塗料82を塗布することで形成される着色層70と、を備えている。
さらに、傾斜部31は、表面20aに連なる一端32a側で深さが浅く、表面20aから離れる他端32b側で深さが深くなるように形成された傾斜面32を有している。そして、傾斜面32は、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる湾曲部(面部)33を有している。
また、加飾層50の態様を、通常加飾層500の態様とは異ならせ、隠蔽層60における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる厚み差d2が通常厚み差d1よりも小さくなるようにしている。
特に、色差が測定できる場合には、加飾層50における湾曲部(面部)33と対応する部位の一端32a側と他端32b側とで生じる色差ΔE1が通常色差ΔE2よりも小さくなるようにしている。
ここで、本実施形態にかかる木質建材10Cが上記第1実施形態の木質建材10と主に異なる点は、湾曲部(面部)33が傾斜面32の一部(一端32b側:溝部30の両端部)にのみ形成されている点にある。
そして、湾曲部(面部)33の上部に形成される加飾層50の態様および加飾層50の製造方法は、上記第1実施形態で示したものと同様になっている。
なお、溝部30の中央部には、一定の角度で傾斜する傾斜面32Cが形成されている。この傾斜面32Cには、通常の方法(単位投影面積あたりの塗布量が均一となるように、白色系塗料81および着色塗料82を塗布する)により加飾層50(隠蔽層60および着色層70)が形成されている。このとき傾斜面32Cに形成される加飾層50は、隠蔽層60の厚さが均一で、着色層70の厚さも均一となっている。
以上の本実施形態によっても、上記第1実施形態とほぼ同様の作用・効果を奏することができる。
なお、上記第1〜第4実施形態で示した構成を適宜組み合わせて、木質建材の意匠性をより向上させるようにすることも可能である。
例えば、上記第1実施形態や第2実施形態で示したように、隠蔽層60の厚さを調整して通常隠蔽層600とは態様が異なるようにした上で、着色層70の厚さも調整して通常着色層700とは態様が異なるようにしてもよい。
このとき、上記第3実施形態で示した態様とは反対の態様となるように着色層70の厚さを調整してもよい。すなわち、着色層70の厚み差d4が通常着色層700の通常厚み差d3よりも小さくなるようにしてもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態およびその変形例には限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、基材部20の周縁部に、一端32a側と他端32b側とで傾斜が異なる面部を有するように面取り部を形成し、このような面取り部に加飾層50を形成する場合に、本発明を適用することができる。
また、基材部や化粧板、その他細部の構成は、上述の構成に限るものではなく、適宜に変更することが可能である。