JP6455747B2 - 金属酸化物の製造装置および前記金属酸化物の製造方法 - Google Patents

金属酸化物の製造装置および前記金属酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物の製造装置および前記金属酸化物の製造方法に関する。
近年、自然や生物に学ぶ無機材料合成研究が盛んに行われている。その中でフラックス法は自然界で結晶(鉱物)が創り出される知恵を活かして開発されたものであり、高温で無機化合物や金属の溶液から結晶を析出させる方法である。このフラックス法の特長として、目的結晶の融点よりもはるかに低い温度で結晶を育成できる、欠陥の極めて少ない結晶が成長する、自形が発達するなどが挙げられる。
フラックス法により金属酸化物を製造する方法として、フラックスとなる適当な酸化物または塩の存在下で、金属酸化物の前駆体である金属化合物を高温焼成した後、(1)徐冷するフラックス徐冷法、および(2)フラックスを蒸発させるフラックス蒸発法が知られている。この際、前記フラックス徐冷法は徐冷をしながら過飽和状態を形成し、金属酸化物の結晶成長を促すものであるのに対し、前記フラックス蒸発法はフラックスの蒸発を駆動力として、金属酸化物の結晶成長を促すものである。なお、前記フラックス蒸発法は、フラックスが蒸発で焼成容器から抜け出すことから、前記フラックス徐冷法のように、洗浄によりフラックスを除去する等の煩雑な作業が不要である等の利点がある。
フラックス蒸発法は、煩雑な作業が不要であることから、幅広く金属酸化物の製造に用いられている。例えば、特許文献1には、原料およびフラックスを含有する試料を加熱し、フラックスの蒸発を駆動力として結晶を析出および成長させるフラックス蒸発法により、六角両錐形を基本形状とする人工コランダム結晶を製造することを特徴とする人工コランダム結晶の製造方法に係る発明が記載されている。
国際公開第2005/054550号
しかしながら、フラックス蒸発法による金属酸化物の製造においては、フラックスの蒸発を駆動力とする性質上、蒸発したフラックスが装置系外/環境に放出されることから、環境への負荷が大きい、製造コストが高いといった問題点がある。
そこで本発明は、フラックス蒸発法において、蒸発したフラックスを回収する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、焼成炉から蒸発するフラックスを粉体化する冷却配管および前記粉体化したフラックスを回収する回収手段を設けることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はフラックス蒸発法による金属酸化物の製造装置に関する。この際、前記製造装置は、フラックスの存在下で金属化合物を焼成する焼成炉と、前記焼成炉に接続され、前記焼成により気化したフラックスを粉体化する冷却配管と、前記冷却配管で粉体化したフラックスを回収する回収手段と、を有する。
本発明によれば、フラックス蒸発法において、蒸発したフラックスを回収する手段を提供できる。
本発明の一実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図である。 本発明の別の実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図である。 本発明の別の実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図である。 実施例1において製造された金属酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 実施例1において製造された金属酸化物のX線回折法(XRD)チャートである。
<金属酸化物の製造装置>
本発明の一形態によればフラックス法による金属酸化物の製造装置が提供される。この際、前記製造装置は、フラックスの存在下で金属化合物を焼成する焼成炉と、前記焼成炉に接続され、前記焼成により気化したフラックスを粉体化する冷却配管と、前記冷却配管で粉体化したフラックスを回収する回収手段と、を有する。
以下、図面を参照しながら、本実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図である。金属酸化物の製造装置1は、フラックスの存在下で金属化合物を焼成する焼成炉2と、前記焼成炉2に接続され、前記焼成により気化したフラックスを粉体化する十字(クロス)型の冷却配管3と、前記冷却配管3で粉体化したフラックスを回収する回収手段である集塵機4と、を有する。この際、前記焼成炉2および冷却配管3は、排気口5を介して接続されている。また、前記冷却配管3は、左端部には外気吸気口(図示せず)に開度調整ダンパー6が、上端部には観察窓7がそれぞれ配置されている。集塵機4には、第1の送風手段である排風装置8が接続されている。当該排風装置8が排風することにより、集塵機4および冷却配管3が吸引され、冷却配管3が有する開度調整ダンパー6から外気が冷却配管3に送風される。すなわち、排風装置8が吸引機能を奏することによって、受動的に冷却配管3に送風が生じる。なお、金属酸化物の製造装置1は、外部冷却装置9を有していてもよく、これによって焼成炉2から生じるフラックス蒸気の冷却条件を任意に制御することが可能となる。
図1の金属酸化物の製造装置1によれば、焼成炉2から蒸発したフラックスは、主に冷却配管3において粉体化し、集塵機4において回収されうる。そして、回収されたフラックスは、金属酸化物の製造にリサイクルすることができる。その結果、環境への負荷を低減するとともに、製造コストを低くすることができる。
以下、金属酸化物の製造装置の各構成について詳細に説明する。
[焼成炉]
焼成炉は、フラックス蒸発法により金属酸化物を製造する反応器である。
この際、フラックス蒸発法とは、フラックスの存在下で金属化合物を焼成させることで金属酸化物を製造する方法である。なお、焼成過程において、フラックスは蒸発し、当該フラックスの蒸発を駆動力として金属酸化物の結晶成長が進行する。
焼成炉としては、フラックス蒸発法に適用できるものであれば特に制限されず、バッチ式焼成炉であっても、連続式焼成炉であってもよい。
前記バッチ式焼成炉としては、箱型焼成炉、バッチ式ロータリーキルン焼成炉、トンネル型焼成炉、管状炉等が挙げられる。
前記連続式焼成炉としては、連続型ロータリーキルン焼成炉、ローラーハースキルン炉、プッシャー炉、コンベア炉、ネットコンベア炉、シャフトキルン炉、流動化焼成炉等が挙げられる。
これらのうち、原料を焼成炉内に連続的に供給することが可能であり、大量生産が可能である観点から、連続式焼成炉であることが好ましく、ローラーハースキルン炉、プッシャー炉、コンベア炉、ネットコンベア炉であることがより好ましく、ローラーハースキルン炉、プッシャー炉であることがさらに好ましい。
焼成炉の加熱方式としては、特に制限されないが、電気、ガス、マイクロ波、赤外線等が挙げられる。これらのうち、工業化が容易であり、制御しやすい観点から、電気式加熱方式であることが好ましい。
焼成炉の形状としては、特に制限されないが、多角柱状(三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、七角柱、八角柱等)、円柱状、多角錐状(三角錐、四角錐、五角錐、六角錐、七角錐、八角錐等)、円錐等が挙げられる。これらのうち、多角柱状、円柱状であることが好ましい。
(排気口)
焼成炉は、通常、排気口を有する。当該排気口は、気化したフラックスを焼成炉内から排出する機能を有する。
当該排気口の位置は、特に制限されず、側壁部(下側壁部、中央側壁部、上側壁部)、下部(底面がある場合には底面部)、上部(上面がある場合には上面部)のいずれであってもよい。このうち、気化したフラックスを効率的に排出される観点から、上側壁部、上部(上面部)であることが好ましく、上部(上面部)であることがより好ましい。排気口は、焼成炉に2以上有していてもよい。焼成炉が連続焼成炉である場合には、各温度ゾーンに複数の排気口を有していてもよい。
(気体吸気口)
焼成炉は、気体吸気口を有していてもよい。一実施形態において、焼成炉は気体吸気口を有することが好ましく、外気吸気口を有することがより好ましい。
気体吸気口は、気体を焼成炉内部に導入するためのものである。
前記気体としては、フラックス蒸気との反応性を有しないものであれば特に制限されないが、空気(この場合、本明細書では気体吸気口を特に「外気吸気口」とも称する)、酸素、窒素、アルゴン、水蒸気等が挙げられる。このうち、気体としては、コストの観点から空気であることが好ましい。
気体吸気口の形状は、略円形、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)のいずれであってもよいが、略円形であることが好ましく、円形であることがより好ましい。
気体吸気口の配置する位置は、特に制限されず、焼成炉のいずれの位置に配置してもよいが、フラックス蒸気を効率的に焼成炉から排出できる観点から、排気口の設置位置と対向する面に配置させることが好ましい。
(開度調整ダンパー)
開度調整ダンパーは、通常、気体吸気口に設置されうるものであり、焼成炉に導入される気体量、速度等を調整する機能を有する。
開度調整ダンパーとしては、特に制限されず、公知ものが使用されうる。開度調整ダンパーは、モーターを有していてもよし、逆流防止機構が設けられていてもよいし、スリットを有していてもよい。
開度調整ダンパーは、焼成炉の構成により、1つであっても、2以上有していてもよい。
(第2の送風手段)
焼成炉は、第2の送風手段を有していてもよい。当該第2の送風手段は、焼成炉内に気体を能動的に送風する機能を有する。これにより、焼成炉内に生じる気化したフラックスを好適に焼成炉外に排出することができる。具体的には、焼成炉内に気体を能動的に送風すると、送風していない場合と比べて焼成炉内が加圧方向に傾く。そうすると、焼成炉内の気体(気化したフラックスを含む)が後述する冷却配管に移動しやすくなる。このため、気化したフラックスを迅速かつ効果的に回収することができる。また、フラックス蒸発法においてはフラックスの蒸発が結晶成長の駆動力となるため、気化したフラックスを焼成炉から排出しやすくすると、フラックス蒸発法が好適に進行しうる。その結果、得られる金属酸化物は好適に結晶成長したものとなりうる。
よって、好ましい一実施形態によれば、焼成炉は、少なくとも1つの第2の送風手段を有する。なお、第2の送風手段を有する場合には、通常、焼成炉内に気体を導入するための気体吸気口を有する。また、送風する気体量、送風速度を調整するために、好ましくは開度調整ダンパーを有する。
第2の送風手段の構成としては、焼成炉内に気体を送風できるものであれば特に制限されないが、通常、能動的に気体を焼成炉内に送風する構成が挙げられる。具体的には、圧縮外気源による圧力で気体を送風する方法が挙げられる。
第2の送風手段を配置する位置は、特に制限されず、側壁部(下側壁部、中央側壁部、上側壁部)、底部(底面がある場合には底面部)、上部(上面がある場合には上面部)のいずれであってもよい。このうち、気化したフラックスが排気口から効果的に排出させる観点から、排気口の設置位置と対向する面であることが好ましい。
第2の送風手段は、焼成炉に2以上設けてもよい。この際、2以上の第2の送風手段は、近接した場所(例えば、同一面)に配置させて送風力を向上させてもよいし、対向面に配置させて焼成炉内で気体を衝突させ、焼成炉内の高温を利用して気体を鉛直上向き方向に循環させてもよい。
[冷却配管]
冷却配管は、焼成炉で生じる気化したフラックスを冷却することで粉体化するための配管である。
冷却配管の冷却手段としては、特に制限されないが、後述するように冷却配管中への気体の送風による冷却、冷却配管が有する冷却機構による冷却、外部冷却装置による冷却等が挙げられる。これらのうち、低コストである、気化したフラックスを低温気体との接触により効果的に粉体化できる、後述する回収手段に効率的に粉体化されたフラックスを輸送できる観点から冷却配管中への気体の送風による冷却であることが好ましく、冷却配管中への外気の送風による冷却であることがより好ましい。
当該冷却配管は、通常、焼成炉と後述する回収手段との間に配置されるものであり、その構成は特に制限されない。一実施形態によれば、冷却配管は、気体供給口、開度調整ダンパー、冷却機構、および観察窓からなる群から選択される少なくとも1つを有しうる。
冷却配管の材質は特に制限されず、公知の金属や合金が使用されうる。
なお、冷却配管の内側にはセラミックコートまたは断熱スリープを設置することが好ましく、コストおよび容易に交換できる観点から、断熱スリーブを設置することがより好ましい。前記セラミックコートまたは断熱スリープを設置することで、気化したフラックスと冷却配管との反応を防止することができる。
(排気口)
冷却配管は、通常、排気口を有する。当該排気口は、焼成炉から導入された気化したフラックスを含む気体を冷却配管から回収手段に排出する機能を有する。
なお、排気口の位置は、冷却配管の形状によっても異なるが、焼成炉から導入される気化したフラックスを含む気体の導入方向に対して30〜150度の角度に配置されることが好ましく、45〜135度の角度に配置されることがより好ましい。焼成炉からの気体導入方向に対して上記方向に配置することで、焼成炉から導入される気体に含まれる気化したフラックスがそのまま排出されることを防止し、冷却配管内で冷却する時間が得られることから好ましい。
なお、排気口は1つであってもよいが、2以上有していてもよい。
(気体吸気口)
冷却配管は気体吸気口を有していてもよい。一実施形態において、冷却配管は気体吸気口を有することが好ましく、外気吸気口を有することがより好ましい。
気体吸気口は、気体を冷却配管内部に導入するためのものである。
使用されうる気体および気体吸気口の形状は、上述したものと同様であることからここでは説明を省略する。
気体吸気口の配置する位置は、特に制限されず、冷却配管のいずれの位置に配置してもよいが、冷却効率および後述する回収手段への輸送効率の観点から、回収手段への接続面方向対して対向方向に配置させることが好ましい。
(開度調整ダンパー)
開度調整ダンパーは、通常、気体吸気口に設置されうるものであり、冷却配管に導入される気体量、速度等を調整する機能を有する。
使用されうる開度調整ダンパーは、上述したものと同様であることからここでは説明を省略する。
開度調整ダンパーは、冷却配管の構成により、1つであっても、2以上有していてもよい。
(冷却機構)
冷却機構は、冷却配管を冷却する機能(内部冷却機構)を有していてもよい。
冷却機構としては、特に制限されないが、気体冷却機構、相変化冷却機構、液体冷却機構等が挙げられる。
前記気体冷却機構としては、特に制限されないが、空気、不活性ガス、水素ガス、六フッ化硫黄(SF)等の気体を冷却する装置の内部に充填し、これを熱交換器等により冷却して循環させる機構等が挙げられる。
前記相変化冷却機構としては、特に制限されないが、水、アンモニア、二酸化炭素(CO)、プロパン、パーフルオロカーボン、フロン等の冷媒を、受熱部と放熱部とを往復させて冷却する機構等が挙げられる。具体的な構成として、ヒートレーン、ヒートパイプ等が挙げられる。
前記液体冷却機構としては、特に制限されないが、絶縁油等を循環させて冷却する機構等が挙げられる。
冷却機構は、冷却配管の全体を冷却するように設けられていてもよいが、冷却配管の一部に設けられていてもよい。一実施形態において、冷却機構は、焼成炉から排出される気化したフラックスを含む気体と、気体吸気口から前記気体と衝突するまでの一部に冷却機構を設けることが好ましい。上記部分に冷却機構を設けることで、冷却配管中への気体の送風による冷却で気化したフラックスを粉体化する場合に、気体が冷却できる、または気体の低温を維持できることから好ましい。
(観察窓)
観察窓は、冷却配管の内部状況を確認するためのものである。観察窓を設けることにより、冷却配管内でのフラックスの粉体化の状況や、粉体化されたフラックスの詰まり等を確認することができる。
観察窓は冷却配管のどの位置に設けてもよいが、フラックスの粉体化の状況をよく観察できる観点から、焼成炉の接続箇所の対向面に設けることが好ましい。
また、観察窓は、1つのみ設けてもよいし、2以上設けてもよい。
(冷却配管の構成)
冷却配管の構成は、特に制限されない。例えば、上述した図1に示すように、十字(クロス)型とすることができる。また、枝管付き十字(クロス)型、T字型等にしてもよい。
図2には、本発明の一実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図を示す。図2は、冷却配管として枝管付き十字(クロス)型の構成を採用したものであり、その他の構成は図1と同様である。図2の冷却配管3は、排気口5を介して焼成炉2と接続され、これが集塵機4へと接続されている。冷却配管3は、上端部には観察窓7が配置されている。また、冷却配管3は、左端部および右上方部(枝管部)には2つの外気吸気口(図示せず)に開度調整ダンパー6が配置されている。このような枝管付き十字(クロス)型の冷却配管3の構成を有する場合、左端部の開度調整ダンパー6から外気が導入されつつ、右上方部(枝管部)の開度調整ダンパー6からも外気が導入される。その結果、冷却配管3内で外気がランダムに循環することとなり、効率的に気化したフラックスを冷却できる。また、冷却配管3中に存在する角部や排気口5との接続部等に溜まった粉体化されたフラックスを集塵機4に輸送することができる。
また、図3には、本発明一実施形態に係る金属酸化物の製造装置の概略図を示す。図3は、冷却配管としてT字型の構成を採用したものであり、その他の構成は図1と同様である。図3の冷却配管3は、排気口5を介して焼成炉2と接続され、これが集塵機4へと接続されている。冷却配管3の左端部には外気吸気口(図示せず)に開度調整ダンパー6が配置されている。このようなT字型の冷却配管3の構成を有する場合、左端部の開度調整ダンパー6から導入される外気が、焼成炉2から導入される気化したフラックスを直接的に冷却しうるため、効果的な粉体化が可能となりうる。また、導入される外気が直線的に進行することで集塵機4に輸送されるため、短時間で回収する工程に移行することができる。これにより、微細なフラックスを回収することが可能となりうる。
その他、冷却配管の構成は、十字(クロス)型、T字型の他、C字型、L字型、I字型、V字型、W字型、E字型、コの字型、渦巻き型等のいずれであってもよい。また、これらの任意の位置に、1または2以上の枝管を有していてもよい。これらのうち、冷却配管の形状は、粉体化したフラックスが配管中に詰まることなく、集塵機等の回収手段に効率的に輸送される観点から、十字(クロス)型、T字型、L字型であることが好ましく、十字(クロス)型、T字型であることがより好ましい。
[回収手段]
回収手段は、冷却配管から輸送される粉体化されたフラックスを回収するものである。
回収手段としては、特に制限されないが、集塵機、サイクロン、エアフィルター等が挙げられる。これらのうち、回収手段は、集塵機であることが好ましい。
前記集塵機としては、特に制限されないが、サイクロン集塵機、バグフィルター集塵機、慣性集塵機、移動層集塵機、湿式集塵機、フィルター集塵機、電気集塵機当が挙げられる。
これらのうち、集塵機は、粉体化したフラックスを低コスト、効率的に回収できる観点から、バグフィルター集塵機であることが好ましい。
回収手段は、1つであってもよいし、2つ以上用いてもよい。回収手段を2つ以上用いる場合には、並列に設置してもよいし、直列に設置してもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
[第1の送風手段]
本形態に係る製造装置は、冷却配管に送風するために第1の送風手段を有していてもよい。この際、第1の送風手段は、冷却配管内に気体を能動的または受動的に送風する。これにより、冷却配管中の気体が内部に滞留することなく、気体が冷却配管外部に排出されることとなるため、冷却配管の冷却効果、冷却配管中の粉体の回収手段への輸送能力増大効果等が得られうる。
よって、好ましい位置実施形態によれば、金属酸化物の製造装置は、第1の送風手段を有する。
第1の送風手段が能動的に冷却配管に気体を送風するものである場合には、第1の送風手段の構成としては、特に制限されないが、圧縮外気源による圧力で気体を送風する方法が挙げられる。なお、第1の送風手段が能動的に冷却配管に気体を送風する場合には、通常、冷却配管に気体を導入するための気体吸気口を有する。また、送風する気体量、送風速度を調整するために、好ましくは開度調整ダンパーを有する。
第1の送風手段が受動的に冷却管に気体を送風するものである場合には、第1の送風手段の構成としては、特に制限されないが、吸引機であることが好ましい。吸引機が吸引することにより前記冷却配管に受動的に送風を生じさせることができる。当該吸引機としては、排風装置(ファン式排風機、ブロワ式排風機等)、減圧ポンプ、真空ポンプ等が挙げられる。これらのうち、焼成炉内に及ぼす減圧度への影響の観点から、ファン式排風機、ブロワ式排風機であることが好ましく、ファン式排風機であることがより好ましい。なお、本明細書において、「吸引機」とは、冷却配管内部の気体を冷却配管外部に移動させる機能を有するものを意味する。例えば、第1の送風手段が排風装置である場合、排風に伴って冷却配管中の気体が冷却配管外に輸送されることとなる。その結果、冷却配管内部は陰圧状態となり(吸引による効果)、冷却配管に気体が送風されることとなる。
第1の送風手段を配置する位置は特に制限されず、冷却配管に直接接続してもよいし、冷却配管以外の場所に配置してもよい。このうち、第1の送風手段が能動的に冷却配管に気体を送風するものである場合には、第1の送風手段は冷却配管に直接接続することが好ましく、冷却配管内部の気体を効果的に回収手段に輸送する観点から、冷却配管の排気口に対して対向水平面に配置することが好ましい。また、第1の送風手段が受動的に冷却配管に気体を送風するものである場合には、第1の送風手段は回収手段に接続されることが好ましい。この場合には、冷却配管、回収手段、第1の送風手段の順に配列されることとなる。第1の手段が回収手段に接続されることにより、第1の送風手段により生じる送風効果は、冷却配管だけでなく、回収手段にも及ぶこととなる。そうすると、例えば、回収手段が集塵機の場合には、前記送風効果により粉体化されたフラックスを効率的に回収することができる。
[外部冷却装置]
金属酸化物の製造装置は、外部冷却装置を有していてもよい。
当該外部冷却装置は、通常、冷却配管を冷却する機能を有する。当該外部冷却装置としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。具体的には、恒温水槽による冷却、恒温油槽による冷却、送風機による冷風による冷却等が挙げられる。
また、一実施形態において、後述する配管等を冷却することを目的として、外部冷却装置を配置してもよい。
外部冷却装置は1つ有していてもよいし、2以上有していてもよい。
[配管]
金属酸化物の製造装置は、配管を有していてもよい。
焼成炉および冷却配管、冷却配管および回収手段、焼成炉および第1の送風手段、第2の送風手段および冷却配管、第2の送風手段および回収手段等は、直接接続してもよいが、別途配管を介して接続してもよい。
冷却配管の材質は特に制限されず、公知の金属や合金が使用されうる。
なお、気化したフラックスおよび/または粉体化した高温フラックスと接触する配管の内側にはセラミックコートまたは断熱スリープを設置することが好ましく、コストおよび容易に交換できる観点から、断熱スリーブを設置することがより好ましい。前記セラミックコートまたは断熱スリープを設置することで、気化したフラックスと配管との反応を防止することができる。
<金属酸化物の製造方法>
本発明の一実施形態によれば、金属酸化物の製造方法が提供される。当該金属酸化物の製造方法は、フラックスの存在下で金属化合物を焼成して、金属酸化物および気化したフラックスを得る工程(1)と、前記気化したフラックスを冷却して粉体化する工程(2)と、前記粉体化したフラックスを回収する工程(3)と、を有する。その他必要に応じて、工程(3)で回収したフラックスを再利用する工程(4)をさらに有していてもよい。
[工程(1)]
工程(1)は、フラックスの存在下で金属化合物を焼成して、金属酸化物および気化したフラックスを得る工程である。
(フラックス)
フラックスとしては、特に制限されないが、モリブデン化合物、タングステン化合物、バナジウム化合物、塩素化合物、フッ素化合物、ホウ素化合物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等が挙げられる。
前記モリブデン化合物としては、特に制限されないが、金属モリブデン、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、HPMo1240、HSiMo1240、KMo3n+1(n=1〜3)、NaMo3n+1(n=1〜3)、LiMo3n+1(n=1〜3)、MgMo3n+1(n=1〜3)、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸ケイ素、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸チタニウム、モリブデン酸鉄、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸ホウ素、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸ニッケル、モリブデン酸マンガン、モリブデン酸クロム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸イットリウム、モリブデン酸ジルコニウム、モリブデン酸銅等が挙げられる。
前記タングステン化合物としては、特に制限されないが、三酸化タングステン、硫化タングステン、タングステン酸、塩化タングステン、タングステン酸カルシウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム、タングステン酸アルミニウム、タングステンナトリウム、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸、ケイタングステン酸等が挙げられる。
前記バナジウム化合物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム、メタバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸カリウム、メタバナジウム酸ナトリウム、バナジウム酸ナトリウム、オキシ塩化バナジウム、オキシ硫酸バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられる。
前記塩素化合物としては、特に制限されないが、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。
前記フッ素化合物としては、特に制限されないが、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、氷晶石、フッ化鉛等が挙げられる。
前記ホウ素化合物としては、特に制限されないが、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウム、フッ化ホウ素等が挙げられる。
前記硫酸塩としては、特に制限されないが、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム等が挙げられる。
前記硝酸塩としては、特に制限されないが、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸リチウム等が挙げられる。
前記炭酸塩としては、特に制限されないが、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
これらのフラックスは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これらのうち、得られる金属酸化物が単結晶構造および/または形状制御しやすい観点から、モリブデン化合物を含むことが好ましく、気化したフラックスを粉末化する際に効率よく回収できる観点から、三酸化モリブデンを含むことがより好ましい。
フラックスの使用量としては、特に制限されず、所望とする金属酸化物に応じて適宜選択することができる。例えば、粒径が大きい(1mm以上)金属酸化物を製造する場合には、後述する金属化合物を構成する金属元素に対するフラックスを構成するフラックス金属のモル比(フラックス金属/金属元素)が、3.0超であることが好ましい。一方、粒径が小さい(1mm未満)金属酸化物を製造する場合には、後述する金属化合物を構成する金属元素に対するフラックスを構成するフラックス金属のモル比(フラックス金属/金属元素)が、0.001〜3.0モルであることが好ましく、0.03〜3.0であることがより好ましく、0.08〜0.7であることがさらに好ましい。
(金属化合物)
金属化合物としては、特に制限されないが、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物、銅化合物、鉄化合物等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物を用いることが好ましい。
前記アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移酸化物アルミニウム(γ−酸化物アルミニウム、δ−酸化物アルミニウム、θ−酸化物アルミニウムなど)、α−酸化物アルミニウム、2種以上の結晶相を有する混合酸化物アルミニウム等が挙げられる。
前記ケイ素化合物としては、結晶性シリカ、シリカゲル、シリカナノ粒子、メソポーラスシリカなどの人工合成されたアモルファスシリカ、シリコンを含有する有機シリコン化合物、バイオシリカ等が挙げられる。
前記チタン化合物としては、特に制限されないが、塩化チタン、硫酸チタン、メタチタン酸、アモルファス酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型とルチル型との混合型酸化チタン等が挙げられる。
前記マグネシウム化合物としては、特に制限されないが、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム四水和物、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、窒化マグネシウム、水素化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、アクリル酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、マグネシウムエトキシド、グルコン酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム四水和物、ステアリン酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム三水和物、塩化カリウムマグネシウム、硝酸マグネシウム六水和物、臭化マグネシウム六水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム七水和物、シュウ酸マグネシウム二水和物、安息香酸マグネシウム四水和物、クエン酸マグネシウムn水和物、二クエン酸三マグネシウム九水和物、モノペルオキシフタル酸マグネシウム等が挙げられる。
これらの金属化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、金属化合物を2種以上組み合わせて用いる場合には、複合酸化物が製造されうる。例えば、アルミニウム化合物およびマグネシウム化合物を組み合わせて用いた場合には、MgAlの基本組成を有するスピネル複合酸化物を製造することができる。
これらのうち、アルミニウム化合物、アルミニウム化合物およびマグネシウム化合物を用いることが好ましい。
(焼成)
フラックスの存在下、金属化合物を高温焼成し、フラックスを蒸発させることで、金属酸化物を製造することができる(フラックス蒸発法)。
フラックス蒸発法は、通常、まずフラックスと金属化合物とが反応して中間体を形成する。次いで、前記中間体を、分解して結晶成長させることで金属酸化物を製造することができる。この際、フラックスの蒸発を駆動力として、金属酸化物の結晶成長が促される。
なお、例えば、フラックスとしてモリブデン化合物を用いた場合には、中間体としてモリブデン酸金属塩を形成し、これが分解して金属酸化物が製造される。この際、三酸化モリブデンが気化によって蒸発し、これを駆動力として金属酸化物の結晶成長が促される。
フラックスと金属化合物との混合状態は、特に限定されず、フラックスと金属化合物とが同一の空間に存在すればよい。例えば、両者が混合されていない状態であっても、フラックス反応は進行しうる。両者を混合する場合には、粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合等を行うことができ、この際、得られる混合物は乾式状態、湿式状態のいずれであってもよい。両者が混ざっていない状態である場合は、焼成温度をフラックスの昇華温度以上とすることで、気化したフラックスが金属酸化物と接触することとなり、気体−固体の反応を行うことができる。
焼成温度としては、使用するフラックス、金属化合物、および所望とする金属酸化物等によっても異なるが、通常、中間体が分解できる温度とすることが好ましい。例えば、フラックスとしてモリブデン化合物を、金属化合物としてアルミニウム化合物を用いる場合には、中間体として、モリブデン酸アルミニウムが形成されうることから、焼成温度は500℃〜900℃であることが好ましく、600〜900℃であることがより好ましく、700〜900℃であることがさらに好ましい。
昇温速度は、使用するフラックス、金属化合物、および所望とする金属酸化物等によっても異なるが、製造効率の観点から、0.5〜100℃/分であることが好ましく、1〜50℃/分であることがより好ましく、2〜10℃/分であることがさらに好ましい。
焼成炉内の内部圧力は、特に制限されず、陽圧であっても減圧であってもよいが、フラックスを好適に焼成炉から冷却配管に排出する観点から、焼成は減圧下で行われることが好ましい。具体的な減圧度としては、−5000〜−10Paであることが好ましく、−2000〜−20Paであることがより好ましく、−1000〜−50Paであることがさらに好ましい。減圧度が−5000Pa以上であると、焼成炉の高気密性や機械的強度が過度に要求されず、製造コストが低減できることから好ましい。一方、減圧度が−10Pa以下であると、焼成炉の排出口でのフラックスの詰まりを防止できることから好ましい。
反応時間についても特に制限はなく、例えば、1分〜30時間とすることができる。
なお、焼成中に焼成炉に気体を送風する場合、送風する気体の温度は、5〜500℃であることが好ましく、10〜100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、焼成炉の有効容積が100Lに対して、1〜500L/minであることが好ましく、10〜200L/minであることがより好ましい。
(金属酸化物)
金属酸化物は、用いる金属化合物等により異なるが、金属酸化物の機能性の観点から、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉄、アルミニウムとマグネシウムとのスピネル複合酸化物であることが好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミニウムとマグネシウムとのスピネル複合酸化物であることがより好ましく、酸化アルミニウム、アルミニウムとマグネシウムとのスピネル複合酸化物であることがさらに好ましい。
金属酸化物の結晶構造等については、フラックス蒸発法により製造されることから、通常、緻密な単結晶構造を有しうる。かような緻密な単結晶構造を有する金属酸化物は高い機能性を有しうる。例えば、酸化アルミニウム、アルミニウムとマグネシウムとのスピネル複合酸化物は、本来的には、緻密性が低く、多結晶構造を有する傾向があるため、フォノンの散乱を起こしやく、高熱伝導率を得ることが困難である。しかしながら、フラックス蒸発法により得られる酸化アルミニウム、アルミニウムとマグネシウムとのスピネル複合酸化物は緻密な規則の高い結晶構造を有するため、フォノンの散乱が抑制され、高熱伝導率の実現が可能である。このような結晶構造等は、フラックス蒸発法において、使用するフラックスの種類および添加量、金属化合物の種類および添加量、焼成条件等により適宜制御することができる。
なお、金属酸化物はフラックスを含みうる。例えば、フラックスとしてモリブデン化合物を用いた場合には、上述の通り、三酸化モリブデン等の形態で多くは蒸発するが、一部のモリブデン化合物は金属酸化物に取り込まれる。その結果、モリブデンを含む酸化アルミニウムは、着色したものとなりうる。
金属酸化物中のフラックスの含有量は、特に制限されないが、金属酸化物を低コストで効率的に製造する観点から、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3〜0.01質量%であることがさらに好ましい。なお、フラックス法により製造された金属酸化物がフラックスを含む場合、不可避不純物として含まれる金属元素(通常、100ppm程度)よりも含有量が多くなる傾向がある。
金属酸化物の平均粒径は、特に制限されないが、0.1〜1000μmであることが好ましく、0.2〜100μmであることがより好ましく、0.3〜80μmであることがさらに好ましく、0.4〜60μmであることが特に好ましい。なお、本明細書において、「平均粒径」とは、任意の100個の粒子の粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)により得られたイメージから測定、算出された値を意味する。この際、「粒径」とは、粒子の輪郭線上の2点間の距離のうち、最大の長さを意味する。
金属酸化物の形状は、目的に応じて、製造条件を適宜変更することで制御することができる。例えば、フラックスとして酸化モリブデンを、金属化合物として酸化アルミニウムを用いて、α結晶の酸化アルミニウムを製造しようとする場合、フラックスの添加量および焼成条件を適宜変更することで、α結晶の酸化アルミニウムを製造することができる。
一実施形態において、多量の酸化モリブデンを使用し、長時間かけてゆっくりと結晶成長させると、六角両錐形のα結晶酸化アルミニウムを製造することができる。このようなα結晶酸化アルミニウムは、レーザー発振材料、高硬度軸受材料、物性測定用標準材料、宝飾品等の用途に適用することができる。
また、別の一実施形態において、少量の酸化モリブデンを使用し、短時間で結晶成長させると、単結晶構造を有する粒径分布の狭い単結晶構造のα結晶酸化アルミニウムを製造することができる。このようなα結晶酸化アルミニウムは、樹脂フィラー、研磨剤、ファインセラミックスの原料等の用途に適用することができる。
なお、上記いずれの場合にも、酸化モリブデンが酸化アルミニウム結晶の[113]面に選択的に吸着しうる。その結果、結晶成分は[001]面に供給されにくくなり、[001]面の出現を抑制できる。その結果、[001]面以外の面を主結晶面とするα結晶の酸化アルミニウムを製造することができる。このような結晶構造を有するα結晶の酸化アルミニウムは、通常の焼成で得られる板状のα−酸化アルミニウムや[001]面を主結晶面とする多面体とは異なり、[001]結晶面成長は効率的に抑制され、均整で球に近い多面体形状の粒子となりうる。なお、本明細書において、「[001]面以外の面を主結晶面とする」とは、[001]面の面積が、金属酸化物中の全面積に対して20%以下であることを意味する。
なお、金属酸化物がMgAlの基本組成を有するスピネル複合酸化物である場合には、単結晶構造を有する多面体粒子を製造することができる。このようなスピネル粒子は、樹脂フィラー、触媒、光学材料、基板の原料、研磨剤等の用途に適用することができる。
また、金属酸化物がルチル型酸化チタンである場合には、優れた隠蔽性と高い赤外線散乱能力を有するため、塗料、インキ、化粧品等の用途に適用することができる。また、金属酸化物が酸化ケイ素である場合には、シラノール基を事実上含まないQ4結合で構成される2相共連続構造体を製造することができ、ライフサイエンスにおける担持体や樹脂フィラー、触媒、化粧品等の用途に適用することができる。
(気化したフラックス)
気化したフラックスは、使用するフラックスによって異なるが、通常フラックスを構成する金属酸化物である。例えば、フラックスとして、モリブデン酸アンモニウムを用いる場合には、焼成により熱力学的に安定な三酸化モリブデンに変換されることから、気化するフラックスは前記三酸化モリブデンとなる。なお、フラックス蒸発法によっては、フラックスと金属化合物とが中間体を生成する場合があるが、この場合でも焼成により中間体が分解して結晶成長するため、フラックスは熱力学的に安定な形態で気化する。
気化したフラックスの温度は、使用するフラックスの種類によっても異なるが、200〜2000℃であることが好ましく、400〜1500℃であることがより好ましい。なお、気化したフラックスの温度が2000℃以下であると、通常、冷却配管において、外気(0〜100℃)の送風により容易に粉体化することができる傾向がある。
焼成炉から排出される気化したフラックスの排出速度は、使用するフラックス量、焼成炉の温度、焼成炉内への気体の送風、焼成炉排気口の口径により制御することができる。冷却配管の冷却能力によっても異なるが、焼成炉から冷却配管への気化したフラックスの排出速度は、0.001〜100g/minであることが好ましく、0.1〜50g/minであることがより好ましい。
また、焼成炉から排出される気体中に含まれる気化したフラックスの含有量は、0.01〜1000mg/Lであることが好ましく、1〜500mg/Lであることがより好ましい。
[工程(2)]
工程(2)は、工程(1)により生じる気化したフラックスを冷却して粉体化する工程である。
(冷却)
気化したフラックスの冷却は、冷却配管を低温にすることにより行われる。この際、冷却手段としては、上述のように冷却配管中への気体の送風による冷却、冷却配管が有する冷却機構による冷却、外部冷却装置による冷却等が挙げられる。
冷却温度(冷却配管の温度)は、特に制限されないが、−100〜600℃であることが好ましく、―50〜400℃であることがより好ましい。
気化したフラックスの冷却速度は、特に制限されないが、100〜100000℃/秒であることが好ましく、1000〜50000℃/秒であることがより好ましい。なお、フラックスの冷却速度が早くなるほど、粒径の小さく、比表面積の大きいフラックスの粉体が得られる傾向がある。
冷却手段が、冷却配管中への気体の送風による冷却である場合、送風する気体の温度は―100〜300℃であることが好ましく、―50〜100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、0.1〜20m/minであることが好ましく、1〜10m/minであることがより好ましい。気体の送風速度が0.1m/min以上であると、高い冷却速度を実現することができ、冷却配管の詰まりを防止できることから好ましい。一方、気体の送風速度が20m/min以下であると、高価な第1の送風手段(排風機等)が不要となり、製造コストを低くすることができることから好ましい。
気体を送風した際の冷却配管の管内流速は、1〜50m/秒であることが好ましく、3〜30m/秒であることがより好ましい。冷却配管の管内流速が1m/秒以上であると、高い冷却速度を実現することができ、冷却配管の詰まりを防止できることから好ましい。一方、冷却配管の管内流速が50m/秒以下であると、高価な第1の送風手段(排風機等)が不要となり、製造コストを低くすることができることから好ましい。
なお、排風速度や冷却配管の管内流速は、開度調整ダンパーにより適宜制御することができる。
(粉体化)
粉体化されるフラックスは、回収手段に輸送されて回収される。
粉体化されるフラックスの一次粒子の平均粒径は、0.001〜1000μmであることが好ましく、0.005〜10μmであることがより好ましい。一次粒子の平均粒径が0.001μm以上であると、回収手段中での効率的な回収が可能となりうることから好ましい、一方、平均粒径が1000μm以下であると、冷却配管等の配管中で蓄積することによる詰まりを防止または抑制できること、および/または冷却配管から回収手段への輸送が可能となりうることから好ましい。
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)により生じる粉体化したフラックスを回収する工程である。
(回収)
粉体化したフラックスは、回収手段により回収される。
回収方法は、特に制限されず、バッチであっても、連続式であってもよい。
バッチである場合には、反応ごとに回収手段から粉体化したフラックスを回収する。この場合には、回収したフラックスを金属酸化物の製造に使用する際に、事前に添加量、粒径等を調整することで、金属酸化物の形状制御等を好適に行うことができる。
また、連続式である場合には、反応継続中に、粉末化したフラックスを順次回収する。この場合には、フラックスをそのまま連続的に金属化合物と混合して焼成炉に仕込むことができ、単位時間内に金属酸化物の製造量の増加等の効果が得られうる。
[工程(4)]
工程(4)は、回収したフラックスを再利用する工程である。
(再利用)
工程(3)において回収されたフラックスは、気化したものを粉体化して得られたものであり、純度が高い傾向がある。よって、これを再度金属酸化物の製造に再利用することができる。これにより、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストを低くすることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
焼成炉としてはRHKシミュレーター(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を、集塵機としてはVF−5N集塵機(アマノ株式会社製)を用いて金属酸化物の製造を行った。
遷移酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナ、平均粒径45μm)4kgと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製)1kgと、を混合した。得られた混合物をサヤに仕込んで図1に示す製造装置1で焼成を行った。焼成工程中は、焼成炉2の側面および下面から外気(送風速度:50L/min、外気温度:25℃)を導入しながら、集塵機4を運転した。排風機8の排風速度および開度調整ダンパー6を調整し、開度調整ダンパー6から外気を送風し(送風速度:2m/min、管内流速:6m/秒、外気温度:25℃)、焼成炉2の減圧度を―400Paに保持した。
焼成温度は1300℃とし、10時間保持した。なお、焼成温度が700℃以上になると、遷移酸化アルミニウムと三酸化モリブデンとの反応が始まり、モリブデン酸アルミニウムを形成する。そして、焼成温度が1300℃に達するまでには、モリブデン酸アルミニウムが分解し、気化した三酸化モリブデンが蒸発する(焼成温度が800℃で得られたサンプルについて、後述の方法でXRD測定を行うと、遷移酸化アルミニウムに由来する散乱ピークと、モリブデン酸アルミニウムに由来する散乱ピークが確認された)。前記三酸化モリブデンは焼成炉2の排気口5から冷却配管3に排出される。冷却配管3においては、送風される外気と混合されることによって前記気化した三酸化モリブデンが冷却され、粉体化する。なお、この際の冷却速度は2000〜2500℃/秒であり、200℃以下まで急速に冷却されることで粉体化される。粉体化された三酸化モリブデンは、排風機8および開度調整ダンパー6から送風される外気により輸送し、集塵機4内のフィルターにより回収した。
焼成後にサヤから3.98kgの青色の粉末である酸化アルミニウム(金属酸化物)を取り出した。
酸化アルミニウム(金属酸化物)の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。具体的には、粉末を両面テープにてサンプル支持台に固定し、表面観察装置VE−9800(株式会社キーエンス製)を用いて観察を行った。なお、図4には、実施例1において製造された金属酸化物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。その結果、平均粒径は、5μmであった。また、[001]面以外の結晶面を主結晶面とする多面体粒子であることを確認した。
また、酸化アルミニウム(金属酸化物)のX線回折法(XRD)による観察を行った。具体的には、酸化アルミニウム(金属酸化物)の粉末を測定試料用ホルダーに設置し、広角X線回折装置であるRint−Ultma(株式会社リガク製)にセットした。そして、Cu/Kα線:40kV/30mA、スキャンスピード:1.0度/分、走査範囲:5〜80度の条件で測定を行った。なお、図5には、実施例1において製造された金属酸化物のX線回折法(XRD)チャートを示す。その結果、α−酸化アルミニウムに由来する鋭い散乱ピークが表れ、α結晶構造の以外の結晶系ピークは観察されなかった。
さらに、酸化アルミニウム中のモリブデンの含有率を蛍光X線定量評価測定により測定した。具体的には、酸化アルミニウム(金属酸化物)の粉末100mgをろ紙に採取し、ポリプロピレン(PP)フィルムをかぶせて蛍光X線測定であるZSX100e(株式会社リガク製)により測定を行った。その結果、酸化アルミニウム中のモリブデンの含有率は0.60質量%であった。
また、集塵機で回収した酸化モリブデンを取り出した。
酸化モリブデンの回収率は、仕込み量に対し80%(0.8kg)であった。
また、上記と同様の方法で蛍光X線定量評価測定を行い、三酸化モリブデンの純度を測定したところ、99.5%であった。
なお、製造装置を観察したところ、焼成炉の排気口、冷却配管の狭窄、閉塞等は殆どないことを確認した。
[実施例2]
実施例1で回収した三酸化モリブデンを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で金属酸化物(酸化アルミニウム)の製造を行った。
得られた結果は、実施例1と同様のものであった。
[比較例1]
集塵機4および排風装置8を用いなかったことを除いては、実施例1と同様の方法で金属酸化物(酸化アルミニウム)の製造を行った。
なお、集塵機4および排風装置8を用いない場合、開度調整ダンパー6から冷却配管3への受動的な送風が行われないため焼成炉2から排出される気体中に含まれる気化したフラックス(三酸化モリブデン)を冷却・粉体化することができない。
その結果、焼成の途中で焼成炉の排気口5で三酸化モリブデンが析出して閉塞した。その結果、フラックスの大部分は焼成炉内に残存した。
1 金属酸化物の製造装置、
2 焼成炉、
3 冷却配管、
4 集塵機、
5 排気口、
6 開度調整ダンパー、
7 観察窓、
8 排風装置、
9 外部冷却装置。

Claims (6)

  1. フラックス蒸発法による金属酸化物の製造装置であって、
    フラックスの存在下で金属化合物を焼成する焼成炉と、
    前記焼成炉に接続され、前記焼成により気化したフラックスを粉体化する冷却配管と、
    前記冷却配管で粉体化したフラックスを回収する回収手段と、
    前記冷却配管に送風するための第1の送風手段である吸引機と
    を有する、前記吸引機が吸引することにより前記冷却配管に送風を生じさせる、
    製造装置。
  2. 前記回収手段が、集塵機である、請求項1に記載の製造装置。
  3. 前記冷却配管が外気供給口を有する、請求項1または2に記載の製造装置。
  4. 前記吸引機が、前記回収手段に接続される、請求項に記載の製造装置。
  5. 前記焼成炉が、少なくとも1つの第2の送風手段を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の製造装置。
  6. フラックスの存在下で金属化合物を減圧下で焼成して、金属酸化物および気化したフラックスを得る工程(1)と、
    前記気化したフラックスを冷却して粉体化する工程(2)と、
    前記粉体化したフラックスを回収する工程(3)と、
    を有する金属酸化物の製造方法であって、冷却配管内を吸引することで送風を生じさせフラックスを粉体化する金属酸化物の製造方法
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