以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内の一方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を示す断面図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ1の一部を拡大した断面図である。タイヤ1は、中心軸(回転軸)AXを中心に回転可能である。図1及び図2はそれぞれ、タイヤ1の中心軸AXを通る子午断面を示す。タイヤ1の中心軸AXは、タイヤ1の赤道面CLと直交する。
本実施形態においては、タイヤ1の中心軸AXとY軸とが平行である。すなわち、本実施形態において、中心軸AXと平行な方向は、Y軸方向である。Y軸方向は、タイヤ1の幅方向又は車幅方向である。赤道面CLは、Y軸方向に関してタイヤ1の中心を通る。θY方向は、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向である。X軸方向及びZ軸方向は、中心軸AXに対する放射方向である。タイヤ1が走行(転動)する路面(地面)は、XY平面とほぼ平行である。
本実施形態においては、タイヤ1(中心軸AX)の回転方向を適宜、周方向、と称する。中心軸AXに対する放射方向を適宜、径方向、と称する。
タイヤ1は、カーカス部2と、ベルト層3と、ベルトカバー4と、ビード部5と、トレッド部10と、サイドウォール部9とを備えている。トレッド部10は、トレッドゴム6に配置される。サイドウォール部9は、サイドウォールゴム8に配置される。カーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のそれぞれは、コードを含む。コードは、補強材である。コードを、ワイヤと称してもよい。カーカス部2、ベルト層3、及びベルトカバー4のような補強材を含む層をそれぞれ、コード層と称してもよいし、補強材層と称してもよい。
カーカス部2は、タイヤ1の骨格を形成する強度部材である。カーカス部2は、コードを含む。カーカス部2のコードを、カーカスコードと称してもよい。カーカス部2は、タイヤ1に空気が充填されたときの圧力容器として機能する。カーカス部2は、ビード部5に支持される。ビード部5は、Y軸方向に関してカーカス部2の一側及び他側のそれぞれに配置される。カーカス部2は、ビード部5において折り返される。カーカス部2は、有機繊維のカーカスコードと、そのカーカスコードを覆うゴムとを含む。なお、カーカス部2は、ポリエステルのカーカスコードを含んでもよいし、ナイロンのカーカスコードを含んでもよいし、アラミドのカーカスコードを含んでもよいし、レーヨンのカーカスコードを含んでもよい。
ベルト層3は、タイヤ1の形状を保持する強度部材である。ベルト層3は、コードを含む。ベルト層3のコードを、ベルトコードと称してもよい。ベルト層3は、カーカス部2とトレッドゴム6との間に配置される。ベルト層3は、例えばスチールなどの金属繊維のベルトコードと、そのベルトコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルト層3は、有機繊維のベルトコードを含んでもよい。本実施形態において、ベルト層3は、第1ベルトプライ3Aと、第2ベルトプライ3Bとを含む。第1ベルトプライ3Aと第2ベルトプライ3Bとは、第1ベルトプライ3Aのコードと第2ベルトプライ3Bのコードとが交差するように積層される。
ベルトカバー4は、ベルト層3を保護し、補強する強度部材である。ベルトカバー4は、コードを含む。ベルトカバー4のコードを、カバーコードと称してもよい。ベルトカバー4は、タイヤ1の中心軸AXに対してベルト層3の外側に配置される。ベルトカバー4は、例えばスチールなどの金属繊維のカバーコードと、そのカバーコードを覆うゴムとを含む。なお、ベルトカバー4は、有機繊維のカバーコードを含んでもよい。
ビード部5は、カーカス部2の両端を固定する強度部材である。ビード部5は、タイヤ1をリムに固定させる。ビード部5は、スチールワイヤの束である。なお、ビード部5が、炭素鋼の束でもよい。
トレッドゴム6は、カーカス部2を保護する。トレッドゴム6は、トレッド部10と、トレッド部10に設けられた複数の溝20とを有する。トレッド部10は、路面と接触する接地部を含む。トレッド部10は、溝20の間に配置される陸部を含む。
サイドウォールゴム8は、カーカス部2を保護する。サイドウォールゴム8は、Y軸方向に関してトレッドゴム6の一側及び他側のそれぞれに配置される。サイドウォールゴム8は、Y軸方向に関してトレッド部10の一側及び他側のそれぞれに配置されるサイドウォール部9を有する。
本実施形態において、タイヤ外径はODである。タイヤリム径はRDである。タイヤ総幅はSWである。トレッド接地幅はWである。トレッド展開幅はTDWである。
タイヤ外径ODとは、規定リムにタイヤ1を装着して、規定圧力(例えば230kPa)でタイヤ1の内部に空気を充填し、タイヤ1に荷重を加えないときの、タイヤ1の直径をいう。
タイヤリム径RDとは、タイヤ1に適合するホイールのリム径をいう。タイヤリム径RDは、タイヤ内径と等しい。
タイヤ総幅SWとは、規定リムにタイヤ1を装着して、規定圧力でタイヤ1の内部に空気を充填し、タイヤ1に荷重を加えないときの、中心軸AXと平行な方向に関するタイヤ1の最大の寸法をいう。すなわち、タイヤ総幅SWとは、トレッドゴム6の+Y側に配置されたサイドウォール部9の最も+Y側の部位と、−Y側に配置されたサイドウォール部9の最も−Y側の部位との距離をいう。サイドウォール部9の表面にそのサイドウォール部9の表面から突出する構造物が設けられている場合、タイヤ総幅SWとは、その構造物を含むY軸方向に関するタイヤ1の最大の寸法をいう。サイドウォール部9の表面から突出する構造物は、サイドウォール部9においてサイドウォールゴム8の少なくとも一部によって形成された文字、マーク、及び模様の少なくとも一つを含む。
トレッド接地幅Wとは、中心軸AXと平行な方向に関するトレッド部10の接地領域の最大の寸法(最大幅)をいう。トレッド部10の接地領域とは、規定リムにタイヤ1を装着して、規定圧力(例えば230kPa)でタイヤ1の内部に空気を充填し、タイヤ1に負荷能力の80%に相当する荷重を加えて平坦な路面に接地させたときの、タイヤ1の接地領域をいう。
トレッド展開幅TDWとは、規定リムにタイヤ1を装着して、規定圧力(例えば230kPa)でタイヤ1の内部に空気を充填し、荷重を加えないときの、タイヤ1のトレッド部10の展開図における両端の直線距離をいう。
図3及び図4を参照してトレッド展開幅TDWについて説明する。図3及び図4は、トレッド展開幅TDWを説明するための図である。図3は、トレッド部10、サイドウォール部9、及びビード部5を含むタイヤ1の子午断面を模式的に示す図である。図4は、図3のA部分を拡大した図である。
図3及び図4に示すように、タイヤ1の子午断面(YZ平面)において、トレッド部10のプロファイルラインの延長線と−Y側のサイドウォール部9の延長線との交点をC1、トレッド部10のプロファイルラインの延長線と+Y側のサイドウォール部9の延長線との交点をC2としたとき、トレッド展開幅TDWとは、幅方向(Y軸方向)に関する交点C1と交点C2との距離をいう。
図5は、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗の評価を実施可能な処理装置50の一例を示す図である。処理装置50は、コンピュータを含む。
処理装置50は、タイヤ1の摩耗状態を計測可能な計測装置57と接続される。処理装置50は、計測装置57で計測されたタイヤ1の摩耗状態に基づいて、タイヤ1の摩耗性能を評価する。
本実施形態において、処理装置50は、処理部50pと、記憶部50mと、入出力部53とを含む。処理部50pと記憶部50mとは、入出力部53を介して接続される。
処理部50pは、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)のようなメモリとを含む。処理部50pは、計測装置57の計測結果に基づいて演算を実施する演算部と、タイヤ1の摩耗の評価を実施する解析部とを含む。処理部50pは、入出力部53と接続される。
記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、不揮発性のメモリ、ハードディスク装置のような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等のストレージ装置の少なくとも一つを含む。記憶部50mは、タイヤ1の摩耗の評価のための情報を記憶する。記憶部50mは、タイヤ1の摩耗の評価結果を記憶する。記憶部50mは、タイヤ1の摩耗の評価を実施するためのコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法を処理装置50に実行させることができる。
入出力部53は、計測装置57及び端末装置54と接続される。端末装置54は、入力装置55及び出力装置56と接続される。入力装置55は、キーボード、マウス、及びマイクの少なくとも一つを含む。出力装置56は、ディスプレイなどの表示装置、及びプリンタの少なくとも一つを含む。
計測装置57の計測結果は、入出力部53を介して、処理部50pに出力される。処理部50pは、計測装置57の計測結果を取得する。処理部50pは、計測装置57の計測結果を使って、タイヤ1の摩耗性能を評価する。なお、タイヤ1の摩耗の評価のためのデータの少なくとも一部が、入力装置55から入力されてもよい。
処理部50pにおいて実施されたタイヤ1の摩耗の評価結果は、入出力部53及び端末装置54を介して出力装置56に出力される。出力装置56は、タイヤ1の摩耗の評価結果を出力可能である。出力装置56が表示装置を含む場合、表示装置は、タイヤ1の摩耗の評価結果を表示可能である。
次に、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法の一例について説明する。図6は、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法の処理手順を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法は、同一の又は類似するデザインの溝パターンがタイヤ1(中心軸AX)の周方向に複数設けられたタイヤ1を準備する工程(ステップSA1)と、1つの溝パターンで規定されるピッチ31及び周方向に配置される2つのラグ溝22で規定されるブロック32の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1の評価区画41を規定する工程(ステップSA2)と、タイヤ1の評価区画41の先着部を含む先着領域に第1の計測点43Aを設定し、評価区画41の後着部を含む後着領域に第2の計測点43Bを設定する工程(ステップSA3)と、計測における基準点44を設定する工程(ステップSA4)と、第1の計測点43Aと基準点44との距離を計測し、第2の計測点43Bと基準点44との距離を計測する工程(ステップSA5)と、第1の計測点43Aと基準点44との距離と第2の計測点43Bと基準点44との距離との相違に基づいて、第1の計測点43Aと第2の計測点43Bとの段差量を算出する工程(ステップSA6)と、算出された段差量に基づいて、タイヤ1の周方向偏摩耗性能を評価する工程(ステップSA7)と、を含む。
周方向偏摩耗とは、タイヤ1の周方向に関してタイヤ1のトレッド部10(陸部)が不均一に摩耗する摩耗形態をいう。周方向偏摩耗は、ヒールアンドトゥ摩耗及び多角形摩耗の少なくとも一方を含む。ヒールアンドトゥ摩耗とは、タイヤ1の周方向に関してタイヤ1の陸部が不均一に摩耗する摩耗形態をいう。多角形摩耗とは、タイヤ1の周方向に関して複数の角が形成されるようにタイヤ1のトレッド部10が摩耗する摩耗形態をいう。
以下の説明においては、周方向偏摩耗がヒールアンドトゥ摩耗であることとする。すなわち、以下の説明においては、周方向偏摩耗のうちヒールアンドトゥ摩耗が評価される例について説明する。なお、周方向偏摩耗が多角形摩耗でもよい。
図7は、タイヤ1のトレッド部10の一例を示す図である。図7に示すように、タイヤ1は、トレッド部10に設けられた溝20を有する。溝20は、タイヤ1の周方向に延びる主溝21と、少なくとも一部がタイヤ1の幅方向に延びるラグ溝(横溝)22と、少なくとも一部がタイヤ1の幅方向に延びるサイプ23と、を含む。溝20の周囲に、陸部が設けられる。陸部は、溝20と、その溝20に隣り合う溝20との間に設けられる。トレッド部10は、複数の陸部を含む。
主溝21は、タイヤ1の周方向に形成される。主溝21の少なくとも一部は、タイヤ1のトレッド部10のセンター部11に設けられる。主溝21は、内部にトレッドウェアインジケータを有する。トレッドウェアインジケータは、摩耗末期を示す。主溝21は、4.0mm以上の幅を有し、5.0mm以上の深さを有してもよい。図7に示す例において、タイヤ1は、4つの主溝21を有する。
ラグ溝22の少なくとも一部は、タイヤ1の幅方向に形成される。ラグ溝22の少なくとも一部は、タイヤ1のトレッド部10のショルダー部12に設けられる。ショルダー部12は、幅方向(Y軸方向)に関してセンター部11の一側(+Y側)及び他側(−Y側)のそれぞれに配置される。ラグ溝22は、1.5mm以上の幅を有する。ラグ溝22は、4.0mm以上の深さを有してもよく、部分的に4.0mm未満の深さを有していてもよい。
サイプ23の少なくとも一部は、タイヤ1の幅方向に形成される。サイプ23は、タイヤ1の陸部に形成される。本実施形態において、サイプ23の少なくとも一部は、タイヤ1のトレッド部10のショルダー部12に設けられる。サイプ23は、1.5mm未満の幅を有する。
一般に、タイヤ1のトレッド部10には、同一の又は類似するデザインの溝パターンが周方向に複数設けられる。周方向に複数設けられる溝パターンのうち、1つの溝パターンによって区画される領域は、ピッチ31と呼ばれる。1つの溝パターンによって1つのピッチ31が規定される。
すなわち、ピッチ31とは、タイヤ1の周方向に同一の又は類似するデザインの溝パターンが複数設けられている場合において、1つの溝パターンでタイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。溝パターンは、主溝21、ラグ溝22、及びサイプ23の少なくとも一つを含む。ピッチ31は、タイヤ1の周方向に配置された2つのラグ溝22で区画されてもよい。それら2つのラグ溝22は、同一の又は類似するデザインである。ピッチ31は、タイヤ1の周方向に配置された2つのサイプ23で区画されてもよい。それら2つのサイプ23は、同一の又は類似するデザインである。
なお、同一の又は類似するラグ溝22のデザインは、ラグ溝22の幅、長さ、延びる方向、角部の数、及び角部の角度の少なくとも一つを含む。
なお、ピッチ31は、タイヤ1の周方向に配置された第1の幅のラグ溝22と第1の幅とは異なる第2の幅のラグ溝22とで区画されてもよい。ピッチ31は、タイヤ1の周方向に配置されたラグ溝22とサイプ23とで区画されてもよい。
図7に示す例において、1つのピッチ31(溝パターン)は、タイヤ1の周方向に配置された2つのラグ溝22で規定されている。図7に示す例において、ピッチ31は、サイプ23を含む。また、図7に示す例において、ピッチ31は、主溝21の一部を含む。
ブロック32とは、タイヤ1の周方向に隣り合う2つのラグ溝22でタイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。ブロック32は、タイヤ1の周方向に隣り合う同一の幅のラグ溝22で区画されてもよい。ブロック32は、タイヤ1の周方向に隣り合う第1の幅のラグ溝22と第1の幅とは異なる第2の幅のラグ溝22とで区画されてもよい。
図7に示す例において、ブロック32は、周方向に関して、1つのピッチ31に対して1つ配置される。
図8は、タイヤ1のトレッド部10の一例を示す図である。図8に示す例において、タイヤ1のトレッド部10に、主溝21と、ラグ溝22と、サイプ23とが設けられている。図8に示す例において、タイヤ1は、2つの主溝21を有する。
図8に示す例において、ラグ溝22は、+Y側のショルダー部12に設けられたラグ溝22A及びラグ溝22Bと、センター部11に設けられたラグ溝22C、ラグ溝22D、及びラグ溝22Eと、−Y側のショルダー部12に設けられたラグ溝22F及びラグ溝22Gとを含む。ラグ溝22A、ラグ溝22B、ラグ溝22C、ラグ溝22D、ラグ溝22E、ラグ溝22F、及びラグ溝22Gはそれぞれ、デザインが異なる。上述のように、ラグ溝22のデザインは、ラグ溝22の幅、長さ、延びる方向、角部の数、及び角部の角度の少なくとも一つを含む。
+Y側のショルダー部12において、ラグ溝22Aとラグ溝22Bとは、周方向に関して交互に配置される。センター部11において、ラグ溝22Cとラグ溝22Dとは、周方向に関して交互に配置される。−Y側のショルダー部12において、ラグ溝22Gは、ラグ溝22Fとラグ溝22Fとの間に3つ配置される。
図8に示す例において、サイプ23は、−Y側のショルダー部12に設けられる。+Y側のショルダー部12にサイプ23は設けられない。
図8に示す例において、1つのピッチ31(溝パターン)は、主溝21の一部、ラグ溝22A、ラグ溝22B、ラグ溝22C、ラグ溝22D、ラグ溝22Eの一部、ラグ溝22F、ラグ溝22G、及びサイプ23を含む。図8に示す例において、ピッチ31は、ラグ溝22B、ラグ溝22C、及びラグ溝22Fと、それらラグ溝(22B、22C、22F)に対して周方向に隣り合うラグ溝22B、ラグ溝22C、及びラグ溝22Fとの間に規定される。
図8に示す例において、ブロック32は、周方向に配置されるラグ溝22Aとラグ溝22Bとで規定されるブロック32Aと、周方向に配置されるラグ溝22Bとラグ溝22Bとで規定されるブロック32Bと、周方向に配置されるラグ溝22Fとラグ溝22Gとで規定されるブロック32Cと、周方向に配置されるラグ溝22Gとラグ溝22Gとで規定されるブロック32Dとを含む。
評価区画41とは、ピッチ31及びブロック32の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。評価区画41は、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗(周方向偏摩耗)の計測対象部分、及びタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗(周方向偏摩耗)の評価対象部分を含む。
図7に示す例において、評価区画41は、1つのピッチ31で規定されてもよい。評価区画41は、1つのブロック32で規定されてもよい。
図8に示す例において、評価区画41は、1つのピッチ31で規定されてもよい。評価区画41は、ブロック32Aで規定されてもよい。評価区画41は、ブロック32Bで規定されてもよい。評価区画41は、ブロック32Cで規定されてもよい。評価区画41は、ブロック32Dで規定されてもよい。
評価区画41は、ラグ溝22及びサイプ23の少なくとも一方に基づいて規定されてもよい。評価区画41は、タイヤ1の周方向に隣り合う2つのラグ溝22で区画されてもよい。評価区画41は、タイヤ1の周方向に隣り合うラグ溝22とサイプ23とで区画されてもよい。
上述のように、ピッチ31とは、タイヤ1の周方向に同一の又は類似するデザインの溝パターンが複数設けられている場合において、1つの溝パターンでタイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。溝パターンは、主溝21、ラグ溝22、及びサイプ23の少なくとも一つを含む。したがって、図7に示すように、ピッチ31を規定するラグ溝22に基づいて、評価区画41が規定されてもよい。
上述のように、ブロック32とは、タイヤ1の周方向に隣り合う2つのラグ溝22でタイヤ1のトレッド部10に規定される部分をいう。したがって、図8に示すように、ブロック32を規定するラグ溝23に基づいて、評価区画41が規定されてもよい。
図7及び図8に示したように、評価区画41は、周方向に複数規定される。
本実施形態においては、図7又は図8に示したような、同一の又は類似するデザインの溝パターン(ピッチ31)が中心軸AXの周方向に複数設けられたタイヤ1が準備される(ステップSA1)。タイヤ1は、評価対象のタイヤである。タイヤ1を、試験タイヤ1、と称してもよい。
次に、図7及び図8を参照して説明したように、ピッチ31及びブロック32の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1の評価区画41が規定される(ステップSA2)。評価区画41の規定は、処理装置50によって実施される。
次に、評価区画41の先着部440(先着側)に計測点43Aが設定され、評価区画41の後着部450(後着側)に計測点43Bが設定される(ステップSA3)。
図9から図13はそれぞれ、評価区画41、計測点43A、及び計測点43Bの一例を模式的に示す図である。
図9は、評価区画41が、タイヤ1の周方向に隣り合う2つのラグ溝22の間に規定されている例を示す。図9に示す例において、周方向に関して、2つのラグ溝22の間に、他の溝は存在しない。図9において、2つのラグ溝22の間の領域が、ピッチ31とみなされてもよいし、ブロック32とみなされてもよい。
計測点43Aは、周方向に関して評価区画41の一端部又はその近傍に定められる。計測点43Bは、周方向に関して評価区画41の他端部又はその近傍に定められる。
タイヤ1が車両に装着されて走行すると、周方向に関して評価区画41の一端部が他端部よりも先に路面に接触する。先着部は、タイヤ1が中心軸AXを中心に回転しながら路面を走行する場合において、評価区画41のうち、路面に先に接触する部分をいう。後着部とは、タイヤ1が中心軸AXを中心に回転しながら路面を走行する場合において、評価区画41のうち、路面に後に接触する部分をいう。本実施形態においては、周方向に関して評価区画41の一端部が先着部である。周方向に関して評価区画41の他端部が後着部である。
図9に示す例では、計測点43Aは、評価区画41の先着部440又はその近傍に定められる。計測点43Bは、評価区画41の後着部450又はその近傍に定められる。
図10は、評価区画41が、タイヤ1の周方向に配置された2つのラグ溝22の間に規定されている例を示す。図10に示す例において、周方向に関して、2つのラグ溝22の間に、サイプ23が配置される。図10において、2つのラグ溝22の間の領域が、ピッチ31とみなされてもよいし、ブロック32とみなされてもよい。
図10に示す例においても、計測点43Aは、評価区画41の先着部440又はその近傍に定められる。計測点43Bは、評価区画41の後着部450又はその近傍に定められる。
図11は、評価区画41が、タイヤ1の周方向に配置された2つのラグ溝22の間に規定されている例を示す。図11に示す例において、周方向に関して、評価区画41を規定する2つのラグ溝22(221)の間に、他のラグ溝22(222)が1つ配置される。図11において、評価区画41を規定する2つのラグ溝22(221)の間の領域が、ピッチ31とみなされてもよい。
図11に示す例においても、計測点43Aは、評価区画41の先着部440又はその近傍に定められる。計測点43Bは、評価区画41の後着部450又はその近傍に定められる。
図12は、評価区画41が、タイヤ1の周方向に配置された2つのサイプ23の間に規定されている例を示す。図12に示す例において、周方向に関して、評価区画41を規定する2つのサイプ23(231)の間に、他のサイプ23(232)が1つ配置される。図12において、評価区画41を規定する2つのサイプ23(231)の間の領域が、ピッチ31とみなされてもよい。
図12に示す例においても、計測点43Aは、評価区画41の先着部440又はその近傍に定められる。計測点43Bは、評価区画41の後着部450又はその近傍に定められる。
図13は、評価区画41が、タイヤ1の周方向に配置された2つのサイプ23の間に規定されている例を示す。図13に示す例において、周方向に関して、評価区画41を規定する2つのサイプ23(233)の間に、他のサイプ23(234)が2つ配置される。図13において、評価区画41を規定する2つのサイプ23(233)の間の領域が、ピッチ31とみなされてもよい。
図13に示す例においても、計測点43Aは、評価区画41の先着部440又はその近傍に定められる。計測点43Bは、評価区画41の後着部450又はその近傍に定められる。
なお、上述の実施形態において、周方向に関する評価区画41の寸法は、タイヤ1の全周の寸法の1/4以下であることが好ましい。
図14は、評価区画41及び評価区画41において周方向に設定された計測点43A及び計測点43Bを一般化した模式図である。図14は、評価区画41の平面図である。図14に示すように、評価区画41の先着部440に計測点43Aが設定される。評価区画41の後着部450に計測点43Bが設定される。
次に、計測における基準点44が設定される(ステップSA4)。
次に、設定された計測点43Aの位置及び計測点43Bの位置が計測装置57によって計測される。本実施形態において、計測装置57は、設定された計測点43Aと基準点44との距離を計測する。また、計測装置57は、設定された計測点43Bと基準点44との距離を計測する(ステップSA5)。計測点43Aと基準点44との距離は、タイヤ1の径方向の計測点43Aと基準点44との距離を含む。計測点43Bと基準点44との距離は、タイヤ1の径方向の計測点43Bと基準点44との距離を含む。
図15は、本実施形態に係る計測装置57の一例を模式的に示す図である。計測装置57は、タイヤ1の外形(プロファイル)を計測可能である。タイヤ1の外形は、トレッド部10の外形を含む。本実施形態において、計測装置57は、タイヤ1の外形を光学的に計測する。
なお、以下の説明においては、計測点43Aと計測点43Bとを区別する必要がない説明においては、計測点43A及び計測点43Bを適宜、計測点43、と総称する。
計測装置57は、計測光MLを生成する生成部571と、生成部571で生成された計測光MLを射出する射出部572と、タイヤ1に照射されそのタイヤ1で反射した計測光MLが入射する入射部573と、入射部573からの計測光MLを受光する受光センサ574と、タイヤ1を支持する支持部575と、を有する。支持部575は、中心軸AXを中心にタイヤ1を回転可能に支持する。生成部571及び射出部572の位置は、固定されている。入射部573及び受光センサ574の位置は、固定されている。
計測光MLは、レーザ光を含む。タイヤ1の表面において、計測光MLの照射領域は、スポット状である。タイヤ1の表面において、計測光MLの照射領域の大きさと、計測点43の大きさとは、実質的に等しい。
射出部572から射出された計測光MLは、タイヤ1のトレッド部10に設定された計測点43(計測点43A及び計測点43Bの少なくとも一方)に照射される。計測装置57は、射出部572から射出された計測光MLがタイヤ1の計測点43に照射されるように、射出部572とタイヤ1との相対位置を調整する。射出部572とタイヤ1との相対位置が調整された状態で、射出部572から計測光MLが射出される。射出部572から射出された計測光MLは、計測点43に照射される。
本実施形態において、計測装置57は、計測点43に照射される計測光MLがタイヤ1の表面(トレッド部10の表面)に実質的に垂直に入射するように、射出部572とタイヤ1の計測点43との相対位置を調整する。また、計測装置57は、射出部572から射出される計測光MLの光路の延長線上に中心軸AXが配置されるように、射出部572と計測点MLとの相対位置を調整する。
タイヤ1の計測点43に照射された計測光MLの少なくとも一部は、その計測点43で反射する。計測点43で反射した計測光MLは、入射部573に入射する。本実施形態において、射出部572から射出される計測光MLの光路と、入射部573に入射する計測光MLの光路とは、実質的に一致する。
本実施形態において、計測装置57は、ハーフミラー(ビームスプリッタ)を含む光学部材576を有する。射出部(射出面)572及び入射部(入射面)573は、光学部材576の表面を含む。すなわち、本実施形態において、射出部572は、入射部573を含む。入射部573に入射した計測光MLは、受光センサ574に受光される。
本実施形態において、基準点44は、計測装置57に設定される。基準点44の位置は固定されている。本実施形態において、基準点44は、入射部573に設定される。なお、基準点44が、受光センサ574の受光面に設定されてもよい。
計測装置57は、受光センサ574による計測光MLの受光結果に基づいて、基準点44に対する計測点43の位置を求めることができる。すなわち、計測装置57は、計測光MLを使って、基準点44と計測点43との相対位置を求めることができる。
本実施形態において、計測装置57は、受光センサ574の受光結果に基づいて、計測点43と基準点44との距離を計測する。本実施形態においては、計測点43と入射部573との距離が計測される。
本実施形態において、計測点43は、タイヤ1の周方向に少なくとも2つ設けられた第1の計測点43A及び第2の計測点43Bを含む。計測装置57は、計測光MLの照射領域に第1の計測点43A及び第2の計測点43Bを順次配置して、第1の計測点43Aと基準点44との距離、及び第2の計測点43Bと基準点44との距離を計測する。本実施形態においては、計測装置57は、支持部575を使って、中心軸AXを中心にタイヤ1を回転させることによって、計測光MLの照射領域に第1の計測点43A及び第2の計測点43Bを順次配置する。
図16及び図17は、本実施形態に係る計測点43A及び計測点43Bと基準点44との距離の計測方法の一例を説明するための模式図である。本実施形態において、基準点44の位置は固定されている。タイヤ1の表面(陸部)には、2つの計測点43A及び計測点43Bが設定されている。
タイヤ1は、支持部575に支持される。計測光MLの照射領域に計測点43Aが配置されるように、支持部575が駆動される。計測光MLの照射領域に計測点43Aが配置された状態で、計測点43Aに計測光MLが照射される。これにより、図16に示すように、計測装置57によって、計測点43Aと基準点44との距離KAが計測される。
計測点43Aと基準点44との距離KAが計測された後、計測光MLの照射領域に計測点43Bが配置されるように、タイヤ1を支持する支持部575が駆動される。計測光MLの照射領域に計測点43Bが配置された状態で、計測点43Bに計測光MLが照射される。これにより、図17に示すように、計測装置57によって、計測点43Bと基準点44との距離KBが計測される。
計測装置57により計測点43A及び計測点43Bのそれぞれと基準点44との距離が計測された後、その計測結果が処理装置50に出力される。処理装置50の処理部50pは、第1の計測点43Aと基準点44との距離と、第2の計測点43Bと基準点44との距離との相違に基づいて、第1の計測点43Aと第2の計測点43Bとの段差量を算出する(ステップSA6)。
ステップSA6で算出された計測点43Aと計測点43Bとの段差量に基づいて、評価区画41におけるタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される(ステップSA7)。ヒールアンドトゥ摩耗性能の評価は、処理装置50によって実施される。
図18は、評価区画41におけるヒールアンドトゥ摩耗の評価結果の一例を模式的に示す図である。図18は、評価区画41におけるタイヤ1の一部の側断面図を示す。図18は、中心軸AXと直交する平面(XZ平面)におけるタイヤ1の断面を示す。
ヒールアンドトゥ摩耗とは、タイヤ1の周方向(進行方向、回転方向)に対して、溝20で囲まれた陸部(評価区画41)が不均一に摩耗することをいう。ヒールアンドトゥ摩耗が発生すると、評価区画41において段差が発生する可能性がある。ヒールアンドトゥ摩耗は、評価区画41の先着部440の摩耗量と後着部450の摩耗量との相違に起因して発生する。
評価区画41の段差とは、中心軸AXに対する放射方向に関して、基準点44と先着部440との距離と、基準点44と後着部450との距離との差をいう。換言すれば、評価区画41の段差とは、先着部440の高さと後着部450の高さとの差をいう。評価区画41の段差量とは、評価区画41の段差の値をいう。
なお、本実施形態においては、基準点44が、タイヤ1の外側に配置される計測装置57に設定される。基準点44は、例えば中心軸AXに設定されてもよい。その場合、評価区画41の段差とは、中心軸AXに対する放射方向に関して、中心軸AXと先着部440との距離と、中心軸AXと後着部450との距離との差をいう。
評価区画41の先着部440の摩耗量と後着部450の摩耗量との差が大きいと、評価区画41の段差(段差量)は大きくなる。評価区画41の先着部440の摩耗量と後着部450の摩耗量との差が小さいと、評価区画41の段差(段差量)は小さくなる。
したがって、評価区画41の先着部440に設定された計測点43Aと基準点44との距離KAが計測され、評価区画41の後着部450に設定された計測点43Bと基準点44との距離KBが計測され、それら距離KAと距離KBとの相違(差)が導出されることによって、評価区画41における試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能が的確に評価される。
以上説明したように、本実施形態によれば、ピッチ31及びブロック32の少なくとも一方に基づいてタイヤ1の評価区画41を規定し、その評価区画41の先着部440に設定された第1の計測点43Aと基準点44との距離、及び評価区画41の後着部450に設定された第2の計測点43Bと基準点44との距離を計測し、その距離の相違に基づいて、第1の計測点43Aと第2の計測点43Aとの段差量を算出するようにしたので、その算出された段差量に基づいて、実際に走行した後のタイヤ1の評価区画41におけるヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)を的確に評価することができる。
本実施形態において、評価区画41は、タイヤ1の周方向に複数規定されてもよい。複数の評価区画41のそれぞれに設定された計測点43A及び計測点43Bのそれぞれと基準点44との距離が計測される。評価区画41毎に、計測点43Aと計測点43Bとの段差量が算出される。複数の評価区画41のそれぞれについて算出された段差量に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能が評価される。これにより、周方向に複数規定される評価区画41のそれぞれで発生するヒールアンドトゥ摩耗を的確に評価することができる。例えば、周方向に隣り合う複数の評価区画41ごとに摩耗を評価することができる。また、ヒールアンドトゥ摩耗によって発生する評価区画41の段差の形態を評価したり、評価区画41ごとの不規則なヒールアンドトゥ摩耗の形態を評価したりすることができる。
なお、上述の実施形態においては、計測点43Aが先着部440に定められ、計測点43Bが後着部450に定められることとした。図19に示すように、計測点43Aが、先着部440を含む先着領域48に定められてもよい。計測点43Bが、後着部450を含む後着領域49に定められてもよい。
図19は、評価区画41の一例を模式的に示す図である。図19に示すように、先着領域48は、周方向に関して評価区画41の一端部である先着部440と、周方向に関して先着部440よりも評価区画41の中心側の部位46との間に規定される。後着領域49は、周方向に関して評価区画41の他端部である後着部450と、周方向に関して後着部450よりも評価区画41の中心側の部位47との間に規定される。計測点43Aは、周方向に関して先着部440と部位46との間の先着領域48に定められてもよい。計測点43Bは、周方向に関して後着部450と部位47との間の後着領域49に定められてもよい。
周方向に関して、先着部440と部位46との距離、及び後着部450と部位47との距離はそれぞれ、評価区画41の先着部440と後着部450との距離Hの1/3以下に定められる。先着部440と部位46との距離、及び後着部450と部位47との距離はそれぞれ、評価区画41の先着部440と後着部450との距離Hの20%以下に定められることが好ましい。先着部440と部位46との距離は、周方向に関する先着領域48の寸法である。後着部450と部位47との距離は、周方向に関する後着領域49の寸法である。
先着領域48は、評価区画41の先着部440を含む。後着領域49は、評価区画41の後着部450を含む。先着領域48に計測点43Aが定められ、後着領域49に計測点43Bが定められることにより、評価区画41の先着部440又はその近傍、及び評価区画41の後着部450又はその近傍における摩耗量を計測することができる。ヒールアンドトゥ摩耗は、評価区画41の先着部440の摩耗量と後着部450の摩耗量との相違に起因して発生する。したがって、計測点43Aを評価区画41の先着部440又はその近傍を含む先着領域48に定め、計測点43Bを評価区画41の後着部450又はその近傍を含む後着領域49に定めることによって、ヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
また、周方向に関して評価区画41の中央部を避けて摩耗量(計測点43A及び計測点43Bの位置)が計測されることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が過小評価されることが抑制される。
なお、上述の実施形態においては、タイヤ1の幅方向に関して計測点43A及び計測点43Bの位置が実質的に同一であることとした。図20に示すように、幅方向に関して計測点43Aと計測点43Bとの位置が異なってもよい。なお、幅方向に関して計測点43Aと計測点43Bとの位置が異なる場合、そのY軸方向に関する計測点43Aと計測点43Bとの距離は、5mm以下であることが好ましい。以下の実施形態においても同様である。
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図21は、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
上述の実施形態と同様、まず、同一の又は類似するデザインの溝パターンが中心軸AXの周方向に複数設けられたタイヤ1が準備される(ステップSB1)。実際に走行した後のタイヤ1が準備される。1つの溝パターンで規定されるピッチ31及び周方向に配置される2つのラグ溝22で規定されるブロック32の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1の評価区画41が規定される(ステップSB2)。複数の評価区画41それぞれの先着部440(先着領域48)に計測点43Aが設定され、後着部450(後着領域49)に計測点43Bが設定される(ステップSB3)。計測における基準点44が設定される(ステップSB4)。
本実施形態においては、タイヤ1の径方向の基準点44の位置を示す基準高さが設定される(ステップSB5)。換言すれば、基準点44の径方向の位置が設定される。
タイヤ1の径方向に関する基準点44(基準高さ)と計測点43Aとの距離が計測される。また、タイヤ1の径方向に関する基準点44(基準高さ)と計測点43Bとの距離が計測される(ステップSB6)。
基準高さと計測点43Aとの距離(径方向の距離)と、基準高さと計測点43Bとの距離(径方向の距離)との相違に基づいて、径方向の計測点43Aの位置を示す第1計測高さ、及び径方向の計測点43Bの位置を示す第2計測高さが算出される(ステップSB7)。換言すれば、基準高さを基準とした、計測点43Aの径方向の位置、及び計測点43Bの径方向の位置が算出される。
第1計測高さと第2計測高さとの相違(差)に基づいて、径方向に関する計測点43Aと計測点43Bとの段差量が算出される(ステップSB8)。
ステップSB8で算出された段差量に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される(ステップSB9)。
以上説明したように、本実施形態によれば、タイヤ1の径方向についての段差量が明確に算出される。そのため、タイヤ1の評価区画41におけるヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)を的確に評価することができる。
また、本実施形態においては、径方向のタイヤ1の計測点43A及び計測点43Bの位置が算出されるため、摩耗の進展度合いを把握することができ、摩耗の進展度合いと段差量との関係を評価することができる。
図22は、本実施形態に係る基準点44の一例を模式的に示す図である。図22に示すように、本実施形態において、基準点44(基準高さ)は、タイヤ1の陸部(トレッド部10)の頂点に設定されてもよい。タイヤ1の陸部の頂点とは、陸部の表面のうち径方向に関して中心軸AXとの距離が最も大きい点をいう。基準高さは、基準点44を通るように設定される仮想面を含む。基準高さの仮想面は、中心軸AXの周囲に配置される円弧状の面を含む。
タイヤ1が実際に走行することによって、そのタイヤ1の陸部に、図22に示すような頂点(突出部)が形成される可能性がある。本実施形態においては、そのタイヤ1の陸部の頂点に基準点44が設定される。径方向の計測点43の位置(計測高さ)は、径方向に関する基準高さとの距離の相違に基づいて算出される。計測高さは、計測点43を通るように設定される仮想面を含む。計測高さの仮想面は、中心軸AXの周囲に配置される円弧状の面を含む。
タイヤ1の陸部の表面に基準高さが設定されることにより、簡易的な計測装置を使って、比較的容易に、径方向に関する基準点44と計測点43との距離を計測することができる。
図23は、本実施形態に係る基準点44の一例を模式的に示す図である。図23に示すように、複数の陸部の頂点(基準点44)に基づいて、基準高さが設定されてもよい。図23に示す例では、基準高さは、周方向に配置された複数(3つ)の陸部の頂点(基準点44)を結ぶ仮想面を含む。基準高さの仮想面は、中心軸AXの周囲に配置される円弧状の面を含む。
図24は、本実施形態に係る基準点44の一例を模式的に示す図である。図24に示すように、基準高さが、タイヤ1の外側でタイヤ1から離れた位置に設けられている計測装置57に設定されてもよい。
図25は、タイヤ1の表面において周方向に設定された4つの計測点43(43A、43B)の一例を示す模式図である。4つの計測点43のそれぞれについて計測高さが設定される。計測高さは、基準高さを基準に設定される。図25に示す例では、4つの計測点43をそれぞれ、第1計測点A1、第2計測点A2、第1計測点B1、及び第2計測点B2、と称する。
図25に示すように、評価区画41Aにおいて、第1計測点A1及び第2計測点A2が設定される。評価区画41Bにおいて、第1計測点B1及び第2計測点B2が設定される。図25に示す例では、評価区画41Aの第1計測点A1の計測高さと第2計測点A2の計測高さとの差Δaと、評価区画41Bの第1計測点B1の計測高さと第2計測点B2の計測高さとの差Δbとは、等しい。
計測高さは、基準高さを基準に算出される。処理装置50は、評価区画41Aにおける第1計測点A1の計測高さ及び第2計測点A2の計測高さは、評価区画41Bにおける第1計測点B1の計測高さ及び第2計測点B2の計測高さよりも高いことを把握することができる。また、差Δaから導出される評価区画41Aのヒールアンドトゥ摩耗と差Δbから導出される評価区画41Bのヒールアンドトゥ摩耗とは同一の状態であると評価することができる。また、評価区画41Aの摩耗の進展度合いが評価区画41Bの摩耗の進展度合いよりも小さいことを評価することができる。
<第3実施形態>
第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図26は、本実施形態に係るタイヤ1の摩耗評価方法の処理手順を示すフローチャートである。
上述の実施形態と同様、まず、同一の又は類似するデザインの溝パターンが中心軸AXの周方向に複数設けられたタイヤ1が準備される(ステップSC1)。実際に走行した後のタイヤ1が準備される。1つの溝パターンで規定されるピッチ31及び周方向に配置される2つのラグ溝22で規定されるブロック32の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1の周方向に複数の評価区画41が規定される(ステップSC2)。複数の評価区画41のそれぞれにおいて2つの計測点43(43A、43B)が設定される(ステップSC3)。
本実施形態において、基準点44は、径方向の異なる位置に設定される第1基準点44A及び第2基準点44Bを含む。
計測点43A及び計測点43Bが設定された後、第1基準点44Aが設定される(ステップSC4)。径方向の第1基準点44Aの位置を示す第1基準高さが設定される(ステップSC5)。
第2基準点44Bが設定される(ステップSC6)。径方向の第2基準点44Bの位置を示す第2基準高さが設定される(ステップSC7)。
図27は、本実施形態に係る計測装置57の一例を模式的に示す図である。本実施形態において、第1基準点44Aは、計測装置57に設定される。第1基準高さは、第1基準点44Aを通るように設定される。第2基準点44Bは、タイヤ1の中心軸AXに設定される。第2基準高さは、第2基準点44Bを通るように設定される。
第1基準点44Aの位置は、固定されている。第2基準点44Bの位置は、固定されている。第1基準点44Aと第2基準点44Bとの相対位置は、変化しない。計測点43(43A、43B)は、第1基準点44Aと第2基準点44Bとの間に配置される。
計測点43Aの計測高さと、第1基準点44Aの第1基準高さとの距離(径方向の距離)が計測装置57によって計測される。計測点43Bの計測高さと、第1基準点44Aの第1基準高さとの距離(径方向の距離)が計測装置57によって計測される(ステップSC8)。
本実施形態においては、第1基準点44Aと計測点43(43A、43B)と第2基準点44Bとが同一直線上に配置された状態で、計測装置57による計測点43の位置(径方向の位置)の計測が行われる。
計測装置57の計測結果は、処理装置50に出力される。処理装置50は、計測点43Aと第1基準点44A(第1基準高さ)との距離の相違に基づいて、第1基準高さに対する径方向の計測点43Aの位置を算出する。処理装置50は、計測点43Bと第1基準点44A(第1基準高さ)との距離の相違に基づいて、第1基準高さに対する径方向の計測点43Bの位置を算出する(ステップSC9)。
処理装置50は、第1基準点44A(第1基準高さ)と第2基準点44B(第2基準高さ)との距離の相違に基づいて、第2基準高さに対する径方向の計測点43Aの位置を算出する。処理装置50は、第1基準点44A(第1基準高さ)と第2基準点44B(第2基準高さ)との距離の相違に基づいて、第2基準高さに対する径方向の計測点43Bの位置を算出する(ステップSC10)。
例えば、計測装置57により、計測点43(43A、43B)と第1基準点44Aとの距離L1が計測される。これにより、第1基準高さに対する径方向の計測点43Aの位置及び計測点43Bの位置が算出される。第1基準点44Aの位置及び第2基準点44Bの位置は固定されている。第1基準高さと第2基準高さとの距離Lは、既知データである。第1基準高さと第2基準高さとの距離Lに関するデータは、記憶部50mに記憶されている。処理装置50は、記憶部50mに記憶されている第1基準高さと第2基準高さとの距離Lと、計側装置57で計測された計測点43(43A、43B)と第1基準高さとの距離L1とに基づいて、第2基準高さと計測点43(43A、43B)との距離L2を算出することができる。これにより、第2基準高さに対する径方向の計測点43(43A,43B)の位置が算出される。
本実施形態においては、第2基準高さと少なくとも2つの計測点43A及び計測点43Bそれぞれとの距離が算出される。すなわち、少なくとも、第2基準高さと第1の計測点43Aとの距離と、第2基準高さと第2の計測点43Bとの距離とが算出される。
処理装置50は、第2基準高さに対する径方向の第1の計測点43Aの位置と、第2基準高さに対する径方向の第2の計測点43Bの位置との相違に基づいて、第1の計測点43Aと第2の計測点43Bとの段差量を算出する(ステップSC11)。
ステップSC11で算出された段差量に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性方(周方向偏摩耗性能)が評価される(ステップSC12)。
以上説明したように、本実施形態によれば、タイヤ1の径方向についての第1基準点44Aと計測点43(43A,43B)との位置関係から、第2基準点44Bと計測点43(43A,43B)との位置関係を求めることができる。すなわち、第1基準点44Aと計測点43(43A,43B)との位置関係のみならず、第2基準点44Bと計測点43(43A,43B)との位置関係が求められる。そのため、タイヤ1の周方向偏摩耗性能をより的確に評価することができる。例えば、計測点43の摩耗状態を定量化した上で、その摩耗状態と段差量との関係を評価することができる。
本実施形態においては、第2基準点44Bは、タイヤ1の中心軸AXに設定される。これにより、タイヤ1のトレッド部10が摩耗した後の、タイヤ1の中心軸AXとトレッド部10の表面との距離を求めることができる。
図28は、本実施形態に係る第2基準点44Bの一例を模式的に示す図である。図28に示すように、第2基準点44Bは、新品のタイヤ1のトレッド部10の表面に相当する位置に設定されてもよい。新品のタイヤ1が支持部575に支持された状態で、計測装置57に設定された第1基準点44Aと新品のタイヤ1のトレッド部10の表面との距離(位置関係)は、既知データである。第1基準点44Aと新品のタイヤ1のトレッド部10の表面に設定された第2基準点44Bとの距離Lに関するデータは、記憶部50mに記憶されている。処理装置50は、記憶部50mに記憶されている第1基準点44A(第1基準高さ)と第2基準点44B(第2基準高さ)との距離Lと、計側装置57で計測された計測点43と第1基準高さとの距離L1とに基づいて、第2基準高さと計測点43との距離L2を算出することができる。これにより、第2基準高さに対する径方向の計測点43の位置が算出される。
図28に示す例においても、第1基準点44Aと計測点43と第2基準点44Bとが同一直線上に配置された状態で、計測装置57による計測点43の位置(径方向の位置)の計測が行われる。
第2基準点44Bが新品のタイヤ1のトレッド部10の表面に相当する位置に設定されることにより、新品時からのタイヤ1の実際の摩耗量を求めることができる。タイヤ1の摩耗量の絶対値と、計測点43Aと計測点43Bとの段差量との関係を評価することができる。
なお、タイヤ1は、走行に伴ってわずかに径成長する場合がある。径成長とは、図29に示すように、走行中(回転中)の遠心力による外径成長とは異なり、走行に伴い、タイヤ1の構成材料・部材が経時的に変化することにより、中心軸AXに対する放射方向に関するタイヤ1の寸法(外径)が大きくなる現象をいう。
そのため、新品時からの摩耗量を求める場合は、走行に伴う径成長を考慮して、摩耗量を求める方がよい場合がある。この場合、径成長を考慮した摩耗量は、以下の式により求めることができる。
[摩耗量]=[新品時のタイヤ表面高さ]−[摩耗後のタイヤ表面高さ]+[走行に伴う径成長]
ここで、走行に伴う径成長は、例えば新品時の溝底における表面高さと、摩耗後の溝底における表面高さとの相違から求めることができ、径成長を考慮することで、摩耗量をより的確に算出することができる。
<第4実施形態>
第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図30は、本実施形態に係る計測点43の一例を示す模式図である。上述の実施形態においては、評価区画41において周方向に2つの計測点43(43A、43B)が設定される例について説明した。図30に示すように、評価区画41において周方向に3つの計測点43(43A、43B、43C)が設定されてもよい。
計測点43Aは、例えば評価区画41の先着部440に設定される。計測点43Bは、例えば評価区画41の後着部450に設定される。計測点43Cは、周方向に関して計測点43Aと計測点43Bとの間に配置される。
計測点43Cが設定されることにより、図30のラインSa、ラインSb、及びラインScで示すように、摩耗後の陸部の表面の形状をより詳細に評価することができる。例えば、2つの計測点43Aと計測点43Bとの段差量が同じでも、計測点43Cの計測高さも計測することによって、種々の偏摩耗の形態を評価することができる。
例えば、ラインSaで示すように、先着側から後着側にかけて直線的に勾配する偏摩耗形態もあれば、ラインSbに示すように、タイヤ1の表面側に凸となるような偏摩耗形態もあるし、ラインScで示すように、タイヤ1の表面において凹になるような偏摩耗形態もある。計測点43A及び計測点43Bに加えて、計測点43Cを設定し、それら少なくとも3つの計測点43(43A、43B、43C)に基づいて段差量を算出することによって、種々の偏摩耗形態を評価することができる。なお、より詳細に偏摩耗形態を判別するために、4点以上の計測点43が設定されてもよい。
なお、計測点43A、計測点43B、及び計測点43Cのうち、計測高さが最も高い計測点43(例えば計測点43A)と、計測高さが最も低い計測点43(例えば計測点43B)との段差量が算出されることにより、評価区画41における段差量の分布を評価することができる。隣り合う計測点43間の段差量(例えば計測点43Cと計測点43Bとの段差量)が算出されることにより、局所的な偏摩耗部分を評価することができる。
<第5実施形態>
第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、評価区画41がタイヤ1の周方向に複数規定され、複数の評価区画41のそれぞれについて少なくとも2つの計測点43間の段差量が算出され、その算出された段差量に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される例について説明する。
図31は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を模式的に示す側面図である。図31に示すように、タイヤ1は、周方向に複数のブロック32を有する。図31に示す例において、タイヤ1のブロック32は、周方向に配置されたブロック321、ブロック322、ブロック323、ブロック324、ブロック325、ブロック326、ブロック327、ブロック328、ブロック329、ブロック3210、ブロック3211、及びブロック3212を含む。すなわち、本実施形態において、ブロック32は、12個存在する。
本実施形態において、評価区画41は、周方向に配置された評価区画41A、評価区画41B、評価区画41C、及び評価区画41Dを含む。すなわち、本実施形態において、評価区画41は、周方向に4つ規定される。
図31に示す例では、評価区画41Aがブロック321で規定され、評価区画41Bがブロック324で規定され、評価区画41Cがブロック327で規定され、評価区画41Dがブロック3210で規定される。
複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれに、計測点43(43A、43B)が設定される。複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて、計測点43(43A、43B)間の段差量が算出される。
複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて、計測点43Aと基準点44との距離と、計測点43Bと基準点44との距離との相違が導出される。本実施形態において、処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Aの計測点43Aと基準点44との距離と計測点43Bと基準点44との距離との差D1を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Bの計測点43Aと基準点44との距離と計測点43Bと基準点44との距離との差D2を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Cの計測点43Aと基準点44との距離と計測点43Bと基準点44との距離との差D3を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Dの計測点43Aと基準点44との距離と計測点43Bと基準点44との距離との差D4を算出する。
処理装置50は、複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて導出された距離の差D1、差D2、差D3、及び差D4に基づいて、複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについての計測点43間の段差量を算出し、その算出された段差量に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能を評価する。
例えば、処理装置50は、差D1と差D2と差D3と差D4との平均値aveDを算出し、その平均値aveDに基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。平均値aveDを用いることにより、周方向に関するタイヤ1の平均的な段差量を評価することができる。
処理装置50は、差D1、差D2、差D3、及び差D4の最大値を導出し、その最大値に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。最大値を用いることにより、周方向に関するタイヤ1の段差量の最大値を評価することができる。
処理装置50は、差D1、差D2、差D3、及び差D4の最大値と最小値とを導出し、その最大値と最小値との差に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。最大値と最小値との差を用いることにより、周方向に関するタイヤ1の段差量の変動を評価することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、評価区画41をタイヤ1の周方向に複数規定し、複数の評価区画41のそれぞれについて算出された差(D1、D2、D3、D4)に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価することにより、タイヤ1において周方向に複数規定される評価区画41のそれぞれで発生するヒールアンドトゥ摩耗を的確に評価することができる。
本実施形態によれば、周方向に隣り合う複数の評価区画41ごとに摩耗を評価することができる。また、ヒールアンドトゥ摩耗によって発生する評価区画41の段差の形態を評価したり、評価区画41ごとの不規則なヒールアンドトゥ摩耗の形態を評価したりすることができる。また、タイヤ1に発生する全体的なヒールアンドトゥ摩耗の傾向を評価することができる。
評価区画41の段差とは、中心軸AXに対する放射方向に関して、中心軸AXと評価区画41の先着部440との距離と、中心軸AXと評価区画41の後着部450との距離との差をいう。評価区画41の先着部440は、周方向に関して評価区画41の一端部を含む。評価区画41の後着部450は、周方向に関して評価区画41の他端部を含む。
また、本実施形態によれば、周方向に関するブロック32の寸法の分散設計に起因して周方向に発生する偏摩耗、特定部位に局所的に発生する局所偏摩耗、及び多角形摩耗のような不規則なヒールアンドトゥ摩耗の形態について評価することができる。
なお、本実施形態においては、ブロック32が12個存在することとした。もちろん、ブロック32は、12個以上存在してもよい。また、本実施形態においては、評価区画41を4つ規定することとした。もちろん、評価区画41は、4つに限られない。例えば、評価区画41の数は、2以上20以下でもよい。なお、評価区画41の数は、4以上12以下であることが好ましい。
<第6実施形態>
第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、評価区画41が、周方向に関して異なる寸法の複数の評価区画41を含む例について説明する。すなわち、周方向に関して評価区画41の寸法が少なくとも2種類以上定められる例について説明する。
図32は、本実施形態に係るタイヤ1の一例を模式的に示す側面図である。図32に示すように、タイヤ1は、周方向に配置された複数のブロック32を有する。図32に示す例において、タイヤ1のブロック32は、中心軸AXの周方向に関して寸法Laのブロック32Laと、寸法Lbのブロック32Lbと、寸法Lcのブロック32Lcと、を含む。
寸法Laと寸法Lbと寸法Lcとは異なる。本実施形態において、寸法La、寸法Lb、及び寸法Lcのうち、寸法Laが最も大きく、寸法Laに次いで寸法Lbが大きく、寸法Lcが最も小さい。
図32に示すように、ブロック32Laは、3つ存在する。ブロック32Lbは、6つ存在する。ブロック32Lcは、3つ存在する。すなわち、本実施形態において、ブロック32は、12個存在する。
本実施形態において、評価区画41は、周方向に配置された評価区画41A、評価区画41B、評価区画41C、及び評価区画41Dを含む。すなわち、本実施形態において、評価区画41は、周方向に4つ規定される。
図32に示す例では、評価区画41Aがブロック32Laで規定され、評価区画41Bがブロック32Lbで規定され、評価区画41Cがブロック32Lcで規定され、評価区画41Dがブロック32Lbで規定される。
なお、ブロック32La、ブロック32Lb、及びブロック32Lcの少なくとも一つがサイプ23を有してもよい。
複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれに、計測点43A及び計測点43Bが定められる。複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて、基準点44に対する計測点43Aの位置(距離)及び計測点43Bの位置(距離)が計測される。
複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて、計測点43Aと計測点43Bとの段差量が算出される。本実施形態において、処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Aの計測点43Aと基準点44との距離と、評価区画41Aの計測点43Bと基準点44との距離との差D1を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Bの計測点43Aと基準点44との距離と、評価区画41Bの計測点43Bと基準点44との距離との差D2を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Cの計測点43Aと基準点44との距離と、評価区画41Cの計測点43Bと基準点44との距離との差D3を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、評価区画41Dの計測点43Aと基準点44との距離と、評価区画41Dの計測点43Bと基準点44との距離との差D4を算出する。
処理装置50は、複数の評価区画41(41A、41B、41C、41D)のそれぞれについて算出された差D1、差D2、差D3、及び差D4に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価する。
例えば、処理装置50は、差D1と差D2と差D3と差D4との平均値aveDを算出し、その平均値aveDに基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。平均値aveDを用いることにより、周方向に関するタイヤ1の平均的な段差量を評価することができる。
処理装置50は、差D1、差D2、差D3、及び差D4の最大値を導出し、その最大値に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。最大値を用いることにより、周方向に関するタイヤ1の段差量の最大値を評価することができる。
処理装置50は、差D1、差D2、差D3、及び差D4の最大値と最小値とを導出し、その最大値と最小値との差に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。最大値と最小値との差を用いることにより、周方向に関するタイヤ1の段差量の変動を評価することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、周方向に関して評価区画41の寸法が少なくとも2種類定められる。すなわち、本実施形態においては、中心軸AXの周方向に関して寸法が異なるように複数の評価区画41が規定される。これにより、周方向の寸法に応じた評価区画41ごとのヒールアンドトゥ摩耗の形態を評価することができる。また、タイヤ1に発生する全体的なヒールアンドトゥ摩耗の傾向を評価することができる。
また、本実施形態によれば、周方向に関するブロック32の寸法の分散設計に起因して周方向に発生する偏摩耗、特定部位に局所的に発生する局所偏摩耗、及び多角形摩耗のような不規則なヒールアンドトゥ摩耗の形態について評価することができる。
本実施形態においては、最も大きい寸法Laの評価区画41Aと、寸法Laに次いで大きい寸法Lbの評価区画41B及び評価区画41Dと、最も小さい寸法Lcの評価区画41Cとが規定される。
最も大きい寸法Laの評価区画41Aについて計測点43間の段差量を算出することにより、ブロック32Laの接地拘束の強さに起因するヒールアンドトゥ摩耗を評価することができる。
最も小さい寸法Lcの評価区画41Cについて計測点43間の段差量を算出することにより、ブロック32Lcの倒れこみに起因するヒールアンドトゥ摩耗を評価することができる。
寸法Laと寸法Lcとの間の寸法Lbの評価区画41B及び評価区画41Dについて計測点43間の段差量を算出することにより、タイヤ1の代表的なヒールアンドトゥ摩耗を評価することができる。
なお、本実施形態において、最も大きい寸法Laの評価区画41Aは、寸法が最大値Lmaxを示す評価区画41のみならず、0.9Lmax以上1.0Lmax以下の評価区画41から抽出されてもよい。最も小さい寸法Lcの評価区画41Cは、寸法が最小値Lminを示す評価区画41のみならず、1.0Lmin以上1.1Lmin以下の評価区画41から抽出されてもよい。中間の寸法Lbの評価区画41Bは、寸法が中間値Lmidを示す評価区画41のみならず、0.95Lmid以上1.05Lmid以下の評価区画41から抽出されてもよい。
なお、本実施形態においては、周方向に関して異なる3種類(3水準)の寸法(La、Lb、Lc)の評価区画41を規定することとした。本実施形態において、周方向に関して異なる少なくとも2種類(2水準)の寸法の評価区画が規定されればよい。すなわち、評価区画41は、周方向に関して第1寸法の第1評価区画41と、第1寸法とは異なる第2寸法の第2評価区画41と、を含めばよい。もちろん、4種類(4水準)以上の任意の数の水準の寸法の評価区画41が規定されてもよい。
<第7実施形態>
第7実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図33は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を示す平面図である。本実施形態においては、中心軸AXと平行な方向に関して所定幅を有するレーン領域60が少なくとも2つ以上設定され、計測点43A及び計測点43Bは、複数のレーン領域60のそれぞれに設定される例について説明する。
図33に示すように、本実施形態においては、幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して所定幅LWを有するレーン領域60が幅方向に複数設定される。計測点43A及び計測点43Bが複数のレーン領域60のそれぞれに設定される。
図33に示す例においては、レーン領域60は、第1レーン領域61と、幅方向に関して第1レーン領域61とは異なる位置に設定される第2レーン領域62とを含む。
幅方向に関する第1レーン領域61の寸法LWと、幅方向に関する第2レーン領域62の寸法LWとは等しい。本実施形態において、寸法LWは、5mm以下に定められる。
第1レーン領域61は、−Y側のショルダー部12に設定される。第2レーン領域62は、+Y側のショルダー部12に設定される。
計測点43A及び計測点43Bは、第1レーン領域61及び第2レーン領域62のそれぞれに設定される。第1レーン領域61の評価区画41において、計測点43Aと計測点43Bとが設定される。第1レーン領域61の計測点43Aと計測点43Bとの段差量に基づいて、第1レーン領域61におけるタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗が評価される。
同様に、第2レーン領域62の評価区画41において、計測点43Aと計測点43Bとが設定される。第2レーン領域62の計測点43Aと計測点43Bとの段差量に基づいて、第2レーン領域62におけるタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗が評価される。
本実施形態において、処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、第1レーン領域61における基準点44と計測点43Aとの距離と基準点44と計測点43Bとの距離との差D1を算出する。処理装置50は、計測装置57の計測結果に基づいて、第2レーン領域62における基準点44と計測点43Aとの距離と基準点44と計測点43Bとの距離との差D2を算出する。
第1レーン領域61において、計測点43A及び計測点43Bは複数設定されてもよい。第1レーン領域61において、差D1は複数算出されてもよい。同様に、第2レーン領域62において、計測点43A及び計測点43Bは複数設定されてもよい。第2レーン領域62において、差D2は複数算出されてもよい。
処理装置50は、複数のレーン領域60(61、62)のそれぞれについて導出された差D1及び差D2に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価する。
処理装置50は、第1レーン領域61について算出された複数の差D1のうち、最大値を示す差D1を算出し、その最大値に基づいて、第1レーン領域61におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。
処理装置50は、第2レーン領域62について算出された複数の差D2のうち、最大値を示す差D2を算出し、その最大値に基づいて、第2レーン領域62におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。
処理装置50は、複数の差D1の最大値、及び複数の差D2の最大値のそれぞれを算出し、その最大値に基づいて、タイヤ1におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。最大値を用いることにより、タイヤ1における幅方向の段差量の最大値を評価することができる。
処理装置50は、複数の差D1の平均値、及び複数の差D2の平均値のそれぞれを算出し、その平均値に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。
処理装置50は、複数の差D1及び複数の差D2の平均値を算出し、その平均値に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。平均値を用いることにより、タイヤ1の幅方向における平均的な段差量を評価することができる。
処理装置50は、第1レーン領域61について算出された複数の差D1のうち、最大値を示す差D1と最小値を示す差D1との差を算出し、その差に基づいて、第1レーン領域61におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。
処理装置50は、第2レーン領域62について算出された複数の差D2のうち、最大値を示す差D2と最小値を示す差D2との差を算出し、その差に基づいて、第2レーン領域62におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。
処理装置50は、最大値を示す差D1と最小値を示す差D2との差を算出し、その差に基づいて、タイヤ1におけるヒールアンドトゥ摩耗を評価してもよい。差を用いることにより、タイヤ1における幅方向の段差量の変動を評価することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、タイヤ1の幅方向に関して複数のレーン領域60を設定し、それらレーン領域60のそれぞれに計測点43(43A、43B)を設定するようにしたので、幅方向に関して溝パターンが異なるタイヤ1(所謂、左右非対称パターンのタイヤ1)についても、それら溝パターンに応じたヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
左右非対称パターンのタイヤ1において、タイヤ1の左側(−Y側)のショルダー部12と、右側(+Y側)のショルダー部12とで、摩耗量が異なる可能性が高い。第1レーン領域61を左側のショルダー部12に設定し、第2レーン領域62を右側のショルダー部12に設定することによって、左右非対称パターンのタイヤ1において、左右における摩耗量の差異を加味して、タイヤ1の左側のショルダー部12のヒールアンドトゥ摩耗及びタイヤ1の右側のショルダー部12のヒールアンドトゥ摩耗のそれぞれを的確に評価することができる。
なお、タイヤ1は、左右非対称パターンのタイヤ1に限られない。左右対称パターンのタイヤ1においても、タイヤ1の幅方向に関して摩耗量が異なる可能性がある。そのため、幅方向に関して複数のレーン領域60を設定し、それらレーン領域60のそれぞれに設定された計測点43(43A、43B)と基準点44との距離を計測することによって、幅方向に関する摩耗量の差異を加味して、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗を的確に評価することができる。
なお、本実施形態において、レーン領域60(61、62)は、ショルダー部12に設定されることとした。レーン領域60は、センター部11に設定されてもよい。
なお、本実施形態において、レーン領域60は、第1レーン領域61と第2レーン領域62とを含むこととした。幅方向に関するレーン領域60の数は、2つに限られず、3つ以上の任意の数でもよい。
<第8実施形態>
第8実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図34は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を示す平面図である。図34に示すように、本実施形態においては、タイヤ1のトレッド展開幅TDWの一端部(−Y側の端部)の部位71Aと部位71Aよりもタイヤ1の赤道面CL側の部位71Bとの間の第1領域71に計測点43(43A、43B)が設定される。また、本実施形態においては、タイヤ1のトレッド展開幅TDWの他端部(+Y側の端部)の部位72Aと部位72Aよりもタイヤ1の赤道面CL側の部位72Bとの間の第2領域72に計測点43(43A、43B)が設定される。
タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、部位71Aと部位71Bとの距離、及び部位72Aと部位72Bとの距離はそれぞれ、トレッド展開幅TDWの30%以下に定められる。部位71Aと部位71Bとの距離は、Y軸方向に関する第1領域71の寸法(幅)である。部位72Aと部位72Bとの距離は、Y軸方向に関する第2領域72の寸法(幅)である。
第1領域71は、−Y側のショルダー部12を含む。第2領域72は、+Y側のショルダー部12を含む。ショルダー部12は、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。ショルダー部12は、センター部11との有効半径差が大きく、すべり量が大きい。そのため、ショルダー部12は、幅方向において、ヒールアンドトゥ摩耗が最も発生し易い部分である。計測点43が第1領域71及び第2領域72に設定されることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である、タイヤ1のショルダー部12におけるヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
ショルダー部12は、センター部11との有効半径差が大きく、すべり量が大きいため、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。第1領域71及び第2領域72の幅をトレッド展開幅TDWの30%以下とすることによって、このヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分のヒールアンドトゥ摩耗性能を評価できるため、計測点43を計測するレーンを増やさずに、試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能を的確に効率的に評価することができる。
第1領域71及び第2領域72の幅がトレッド展開幅TDWの30%を超える場合は、領域の幅が広くなるため、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分を的確に評価するためには、計測点43を計測するレーン領域を増やす必要があり、計測点43を計測する工数が増加してしまう。
なお、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分を見落とさないようにするためには、第1領域71及び第2領域72の幅は、トレッド展開幅TDWの20%以下とするのが好ましい。
<第9実施形態>
第9実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図35は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を示す平面図である。図36は、図35のB部分を拡大した図である。図35及び図36に示すように、本実施形態においては、タイヤ1の接地端の部位81Aと部位81Aよりもタイヤ1の赤道面CL側の部位81Bとの間の第3領域81に計測点43が設定される。また、本実施形態においては、タイヤ1の主溝21において最も接地端に近い部位82Aと部位82Aよりも接地端側の部位82Bとの間の第4領域82に計測点43(43A、43B)が設定される。
接地端とは、トレッド接地幅Wの端部をいう。図35及び図36においては、トレッド接地幅Wの+Y側の接地端及び−Y側の接地端のうち、−Y側の接地端について説明する。主溝21は、幅方向に配置される複数(4本)の主溝21のうち、−Y側の接地端に最も近い主溝21である。
タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、部位81Aと部位81Bとの距離は、5mm以下に定められる。タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、部位82Aと部位82Bとの距離は、10mm以下に定められる。部位81Aと部位81Bとの距離は、Y軸方向に関する第3領域81の寸法(幅)である。部位82Aと部位82Bとの距離は、Y軸方向に関する第4領域82の寸法(幅)である。
第3領域81及び第4領域82は、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。第3領域81は、センター部11との有効半径差が大きく、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。第4領域82は、ブロック32の倒れこみ量が大きく、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。計測点43(43A、43B)が第3領域81及び第4領域82に定められることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分におけるヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
ショルダー部12は、センター部11との有効半径差が大きく、すべり量が大きいため、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。その中でも、センター部11との有効半径差がより大きい接地端近傍と、陸部剛性が低く倒れこみ量の大きい主溝21付近では、よりヒールアンドトゥ摩耗が発生し易くなる。
一方、試験タイヤ1のヒールアンドトウ摩耗を、効率的に、かつ的確に評価するには、少なくともヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い場所で評価を実施することが有効である。接地端近傍と主溝21付近の領域は、ショルダー部12の中でもよりヒールアンドトゥ摩耗の発生し易い場所であるため、それらの場所で評価を実施することで、より的確かつ効率的に、試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗を評価することができる。
なお、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い場所を的確に捉えるために、主溝近傍領域については、主溝から5mm以内の領域で評価を実施することがより好ましい。
なお、本実施形態においては、トレッド接地幅Wの−Y側の接地端及び幅方向に配置される複数(4本)の主溝21のうち−Y側の接地端に最も近い主溝21について説明した。トレッド接地幅Wの+Y側の接地端及び幅方向に配置される複数(4本)の主溝21のうち+Y側の接地端に最も近い主溝21についても同様である。
<第10実施形態>
第10実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図37は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を拡大した図である。図37に示すように、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22において幅が最大である最大幅部位85が抽出される。計測点43(43A、43B)は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、ラグ溝22の最大幅部位85から5mm以内の範囲86に設定される。
すなわち、幅方向に関して、範囲86の一側の端部86Aと最大幅部位85との距離が5mm以下に定められる。幅方向に関して、範囲86の他側の端部86Bと最大幅部位85との距離が5mm以下に定められる。
最大幅部位85又はその近傍は、接地の不連続性が強く、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。計測点43(43A、43B)が最大幅部位85を含む範囲86に定められることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分におけるヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
ラグ溝22の幅又はサイプ23の幅が広い場所は、接地の不連続性が強いため、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。ラグ溝22の幅又はサイプ23の幅が最大となる部分から幅方向に5mm以内の領域で評価することによって、ラグ溝22の幅又はサイプ23の幅の影響を的確に評価することが可能となる。5mmを超える領域で評価すると、ラグ溝22の幅又はサイプ23の幅の影響を的確に評価することが難しくなる。
なお、ラグ溝22の幅又はサイプ23の幅の影響をより的確に捉えるために、ラグ溝22又はサイプ23の幅が最大である部分に対して、幅方向に3mm以内の領域で評価を実施することがより好ましい。
なお、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22の最大幅部位85について説明した。評価区画41を規定するサイプ23についても同様である。評価区画41がサイプ23に基づいて規定される場合、評価区画41を規定するサイプ23において幅が最大である最大幅部位85が抽出される。計測点43は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、サイプ23の最大幅部位85から5mm以内の範囲86に定められる。
<第11実施形態>
第11実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図38は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を拡大した図である。図38は、ラグ溝22の断面図とトレッド部10の断面図とを合わせた図である。図38に示すように、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22において深さが最大である最大深さ部位87が抽出される。計測点43(43A、43B)は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、ラグ溝22の最大深さ部位87から5mm以内の範囲88に設定される。
すなわち、幅方向に関して、範囲88の一側の端部88Aと最大深さ部位87との距離が5mm以下に定められる。幅方向に関して、範囲88の他側の端部88Bと最大深さ部位87との距離が5mm以下に定められる。
最大深さ部位87又はその近傍は、陸部の倒れこみ量が大きく、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。計測点43(43A、43B)が最大深さ部位87を含む範囲88に設定されることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分におけるヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
ラグ溝22又はサイプ23が深い場所は、陸部の倒れこみ量が大きいため、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。ラグ溝22の深さ又はサイプ23の深さが最大となる部分から幅方向に5mm以内の領域で評価することによって、ラグ溝22又はサイプ23の深さの影響を的確に評価することが可能となる。5mmを超える領域で評価すると、ラグ溝22の深さ又はサイプ23の深さの影響を的確に評価することが難しくなる。
なお、ラグ溝22の深さ又はサイプ23の深さの影響をより的確に捉えるために、ラグ溝22又はサイプ23の深さが最大である部分に対して、幅方向に3mm以内の領域で評価を実施することがより好ましい。
なお、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22の最大深さ部位87について説明した。評価区画41を規定するサイプ23についても同様である。評価区画41がサイプ23に基づいて規定される場合、評価区画41を規定するサイプ23において深さが最大である最大深さ部位87が抽出される。計測点43は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、サイプ23の最大深さ部位87から5mm以内の範囲88に定められる。
<第12実施形態>
第12実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
図39は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド部10の一部を拡大した図である。図39に示すように、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22においてタイヤ幅方向に対する傾斜角度が最大である最大傾斜部位89が抽出される。計測点43(43A、43B)は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、ラグ溝22の最大傾斜部位89から5mm以内の範囲90に設定される。
すなわち、幅方向に関して、範囲90の一側の端部90Aと最大傾斜部位89との距離が5mm以下に定められる。幅方向に関して、範囲90の他側の端部90Bと最大傾斜部位89との距離が5mm以下に定められる。
最大傾斜部位89又はその近傍は、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。計測点43(43A、43B)が最大傾斜部位89を含む範囲90に定められることにより、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分におけるヒールアンドトゥ摩耗の形態を的確に評価することができる。
ラグ溝22の傾斜又はサイプ23の傾斜が大きい場所は、ヒールアンドトゥ摩耗が発生し易い部分である。ラグ溝22又はサイプ23の傾斜角度が最大となる部分から幅方向に5mm以内の領域で評価することによって、ラグ溝22又はサイプ23の傾斜による影響を的確に評価することが可能となる。5mmを超える領域で評価すると、ラグ溝22又はサイプ23の傾斜による影響を的確に評価することが難しくなる。
なお、ラグ溝22又はサイプ23の傾斜による影響をより的確に捉えるために、ラグ溝22又はサイプ23の傾斜角度が最大である部分に対して、幅方向に3mm以内の領域で評価を実施することがより好ましい。
なお、本実施形態においては、評価区画41を規定するラグ溝22の最大傾斜部位89について説明した。評価区画41を規定するサイプ23についても同様である。評価区画41がサイプ23に基づいて規定される場合、評価区画41を規定するサイプ23においてタイヤ幅方向に対する傾斜角度が最大である最大傾斜部位89が抽出される。計測点43は、タイヤ1の幅方向(中心軸AXと平行な方向)に関して、サイプ23の最大傾斜部位89から5mm以内の範囲90に定められる。
ラグ溝22のタイヤ幅方向に対する傾斜角度は、トレッド部10の陸部とラグ溝22又はサイプ23との境界部(評価区画41の踏込み側の溝ライン)の傾斜角度を含む。
<第13実施形態>
第13実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、段差量に関する基準値と、タイヤ1の計測点43間の段差量とが比較され、その比較結果に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗が評価される例について説明する。以下の説明においては、ヒールアンドトゥ摩耗が評価されるタイヤ1を適宜、試験タイヤ1、と称する。
図40は、本実施形態に係る試験タイヤ1の摩耗評価方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図40に示すように、本実施形態に係る試験タイヤ1の摩耗評価方法は、同一の又は類似するデザインの溝パターンが中心軸AXの周方向に複数設けられた基準タイヤ1Rを準備する工程(ステップSD1)と、基準タイヤ1Rについて、評価区画41を規定する工程(ステップSD2)と、試験タイヤ1の計測点43と同一条件で、基準タイヤ1Rの評価区画41に計測点43を設定する工程(ステップSD3)と、基準点44を設定する工程(ステップSD4)と、試験タイヤ1の計測と同一条件で、基準タイヤ1Rの計測点43を計測して、基準タイヤ1Rの計測点43と基準点44との距離を計測する工程(ステップSD5)と、基準タイヤ1Rの計測点43の計測結果に基づいて、基準タイヤ1Rについての計測点43間の段差量を算出する工程(ステップSD6)と、基準タイヤ1Rについての段差量と試験タイヤ1についての段差量とを比較する工程(ステップSD7)と、比較した結果に基づいて、試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能を評価する工程(ステップSD8)と、を含む。
基準タイヤ(リファレンスタイヤ)1Rが準備される(ステップSD1)。本実施形態において、基準タイヤ1Rは、過去の市場実績においてヒールアンドトゥ摩耗が良好であったタイヤである。例えば、ヒールアンドトゥ摩耗後の騒音性能が、音圧レベル又はフィーリング評価(音質)において問題ないレベルと判断されたタイヤが基準タイヤ1Rとして準備されてもよい。なお、基準タイヤ1Rは、過去の市場実績においてヒールアンドトゥ摩耗が不良であったタイヤでもよい。基準タイヤ1Rとして、車両に装着され、実際に走行した後の基準タイヤが準備される。
基準タイヤ1Rの溝パターンのデザインは、試験タイヤ1と同一の又は類似するデザインでもよい。なお、基準タイヤ1Rの溝パターンのデザインは、試験タイヤ1と異なるデザインでもよい。
試験タイヤ1と同様、基準タイヤ1Rも、ピッチ31及びブロック32を有する。ピッチ31及びブロック32の少なくとも一方に基づいて、基準タイヤ1Rの評価区画41が規定される(ステップSD2)。
基準タイヤ1Rの評価区画41において周方向に少なくとも2つの計測点43が設定される(ステップSD3)。基準タイヤ1Rの計測点43は、試験タイヤ1の計測点43と同一条件で設定される。
計測における基準点44が設定される(ステップSD4)。
計測装置57により、基準タイヤ1Rの計測点43が計測される(ステップSD5)。
基準タイヤ1Rの計測点43の計測は、試験タイヤ1の計測点43の計測と同一条件で実施される。計測装置57は、基準タイヤ1Rに設定された少なくとも2つの計測点43のうち第1の計測点43Aと基準点44との距離、及び第2の計測点43Bと基準点44との距離を計測する。
処理装置50は、第1の計測点43Aと基準点44との距離と、第2の計測点43Bと基準点44との距離との相違に基づいて、基準タイヤ1Rについての第1の計測点43Aと第2の計測点43Bとの段差量を算出する(ステップSD6)。本実施形態においては、基準タイヤ1Rについての段差量が、段差量の基準値として使用される。基準タイヤ1Rについての段差量を示すデータは、記憶部50mに記憶される。
上述の実施形態に従って、試験タイヤ1について、評価区画41が規定され、試験タイヤ1についての計測点43間の段差量が算出される。
処理装置50は、記憶部50mに記憶されている基準値(基準タイヤ1Rについての段差量)と、試験タイヤ1についての段差量とを比較する(ステップSD7)。例えば、試験タイヤ1の段差量の最大値、最小値、及び平均値の少なくとも一つが、基準値と比較されてもよい。
処理装置50は、ステップSD7において比較した結果に基づいて、試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能を評価する(ステップSD8)。
以上説明したように、本実施形態によれば、基準タイヤ1Rを使って段差量の基準値を決定し、その基準値と試験タイヤ1の段差量とを比較することによって、試験タイヤ1についてのヒールアンドトゥ摩耗を的確に評価することができる。
本実施形態において、基準タイヤ1Rは、過去の市場実績によって、ヒールアンドトゥ摩耗が良好な仕様のタイヤ、又は不良な仕様のタイヤである。それらの仕様のタイヤを基準タイヤ1Rとして、その基準タイヤ1Rから得られた摩耗量のデータを基準値として、試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗を評価することにより、過去の市場実績をベースとした、より的確な摩耗性能を評価することができる。
なお、本実施形態において、基準タイヤ1Rは、車両走行試験においてヒールアンドトゥ摩耗が良好であったタイヤでもよい。基準タイヤ1Rは、車両走行試験においてヒールアンドトゥ摩耗が不良であったタイヤでもよい。
なお、本実施形態においては、同一の計測条件で、基準タイヤ1Rの計測点43と試験タイヤ1の計測点43とを計測することとした。異なる計測条件で、同一の試験タイヤ1の計測点43を計測し、それら異なる計測条件で計測された結果に基づいて算出された段差量を比較してもよい。
例えば、基準使用条件及び評価使用条件のそれぞれで、試験タイヤ1の評価区画41に定められた計測点43を計測することと、基準使用条件で計測された試験タイヤ1の計測点43間の段差量(基準値)を算出することと、基準値と評価使用条件で計測された試験タイヤ1の計測点43間の段差量とを比較することと、比較した結果に基づいて、評価使用条件における試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗を評価することと、が実施されてもよい。
例えば、A車で使用するために開発した試験タイヤ1を、A車とは車重が異なるB車に装着する場合、A車に装着されたときの試験タイヤ1の使用条件が基準使用条件であり、B車に装着されたときの試験タイヤ1の使用条件が評価使用条件である。すなわち、基準使用条件とは、基準の計測条件であり、評価使用条件とは、評価しようとする計測条件である。
試験タイヤ1をA車に装着して計測した結果に基づいて算出された段差量が、基準使用条件における段差量である。試験タイヤ1をB車に装着して計測した結果に基づいて算出された段差量が、評価使用条件における段差量である。
なお、A車で使用するために開発した試験タイヤ1について空気圧を変更する場合、基準空気圧における試験タイヤ1の使用条件が基準使用条件であり、評価空気圧における試験タイヤ1の使用条件が評価使用条件である。基準空気圧で計測したときの試験タイヤ1の段差量が、基準使用条件における段差量である。評価空気圧で計測したときの試験タイヤ1の段差量が、評価使用条件における段差量である。
このような場合、基準使用条件で計測された試験タイヤ1の第1の計測点と第2の計測点との相違に基づいて、段差量に関する基準値が決定されてもよい。その決定された基準値と、評価使用条件で計測された試験タイヤ1の計測点間の段差量とを比較し、その比較した結果に基づいて、評価使用条件における試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗が評価されてもよい。
これにより、同一の試験タイヤ1を用いて、基準使用条件における段差量(基準値)に基づいて、評価使用条件における試験タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗を的確に評価することができる。
<第14実施形態>
第14実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、算出されたタイヤ(試験タイヤ)1の段差量が次数分析され、その次数分析の結果に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される例について説明する。
図41は、計測装置57で計測された、周方向に関するタイヤ1の表面プロファイル(表面形状)の一例を示す図である。図41に示すグラフにおいて、横軸は、タイヤ周上の位置である。縦軸は、タイヤ1の表面の位置である。図41において、部分101は、タイヤ1の陸部(トレッド部10)に相当する。部分102は、タイヤ1の溝に相当する。図41は、タイヤ1にヒールアンドトゥ摩耗が発生し、陸部が不均一に摩耗している例を示す。
図42は、図41で示した表面プロファイルを次数分析した結果の一例を示す。図42に示すグラフにおいて、横軸は、次数である。縦軸は、次数成分の大きさである。
次数分析とは、タイヤのような回転体の周上の変動を、1回転あたりn周期となる正弦波の成分に分解する分析方法である。nは自然数であって、次数という。
図42に示すグラフにおいて、例えば、振幅の大きい次数成分が評価されてもよい。
次数分析した結果に基づいて、ヒールアンドトゥ摩耗が評価されることにより、摩耗後のタイヤ1の状態から、ヒールアンドトゥ摩耗による騒音性能の悪化及び振動性能の悪化を見積もることができる。
図43は、図42で示した次数分析結果を周波数分析結果に換算した例を示す。図43に示すグラフにおいて、横軸は、次数相当の周波数である。縦軸は、周波数成分の大きさである。
次数相当の周波数は、当該次数と、タイヤ外径と、タイヤ回転速度(想定される車両の走行速度)とに基づいて算出することができる。図43に示すグラフから、摩耗後のタイヤ1の騒音性能及び振動性能を評価することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、次数分析が実施されることにより、ヒールアンドトゥ摩耗(周方向偏摩耗)をより的確に評価することができる。また、走行時においてタイヤ1から発生する音及び振動を評価することができる。
<第15実施形態>
第15実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、タイヤ1が四輪車両に装着され、前輪のタイヤ1の段差量の平均値及び最大値が算出され、後輪のタイヤ1の段差量の平均値及び最大値が算出され、平均値及び最大値の少なくとも一方に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される例について説明する。
図44は、右前輪(FR)のタイヤ1、左前輪(FL)のタイヤ1、右後輪(RR)のタイヤ1、及び左後輪(RL)のタイヤ1と、それらタイヤ1の段差量との関係の一例を示す図である。
本実施形態においては、前輪(右前輪及び左前輪)のタイヤ1の計測点43間の段差量(計測点43Aと計測点43Bとの間の段差量)の最大値が算出される。図44に示す例では、右前輪のタイヤ1に、段差量が最大値を示す段差が形成される。以下の説明においては、前輪(右前輪及び左前輪)において最大値を示す段差量を適宜、前輪最大値、と称する。
また、本実施形態においては、後輪(右後輪及び左後輪)のタイヤ1の計測点43間の段差量の最大値が算出される。図44に示す例では、左後輪のタイヤ1に、段差量が最大値を示す段差が形成される。以下の説明においては、後輪(右後輪及び左後輪)において最大値を示す段差量を適宜、後輪最大値、と称する。
また、本実施形態においては、前輪(右前輪及び左前輪)のタイヤ1の計測点43間の段差量の平均値が算出される。以下の説明においては、前輪(右前輪及び左前輪)における段差量の平均値を適宜、前輪平均値、と称する。
また、本実施形態においては、後輪(右後輪及び左後輪)のタイヤ1の計測点43間の段差量の平均値が算出される。以下の説明においては、後輪(右後輪及び左後輪)における段差量の平均値を適宜、後輪平均値、と称する。
本実施形態においては、前輪最大値、後輪最大値、前輪平均値、及び後輪平均値の少なくとも一つに基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される。
例えば、前輪最大値と後輪最大値との比較結果に基づいてタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能が評価されることにより、実際の走行(実走)において発生したワーストケースにおける摩耗性能を評価することができる。これにより、様々な使用条件下で成長し得る段差量を把握することができる。
例えば、前輪平均値と後輪平均値との比較結果に基づいてタイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能が評価されることにより、使用条件が異なる前輪及び後輪のそれぞれについて、市場で発生し得る一般的なレベルの段差量を把握することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、タイヤ1の使用条件によって変化する摩耗形態を評価することができる。タイヤ1の使用条件は、タイヤ1が装着される四輪車両の車種の違い、及びその四輪車両を運転する運転者の違いを含む。
また、前輪と後輪とでは、荷重の違い、駆動の有無、及び操舵の有無などに基づいて、使用条件が異なる可能性が高い。本実施形態においては、前輪の段差量と後輪の段差量とをそれぞれ個別に扱って摩耗性能を評価することにより、タイヤ1の使用条件によって変化する摩耗形態を適切に評価することができる。
<第16実施形態>
第16実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
本実施形態においては、タイヤ1の複数の走行距離のそれぞれにおいて、そのタイヤ1の計測点43間の段差量の算出が実施され、算出された複数の段差量の最大値に基づいて、タイヤ1のヒールアンドトゥ摩耗性能(周方向偏摩耗性能)が評価される例について説明する。
図45は、本実施形態に係る走行距離とタイヤ1の段差量との関係の一例を示す図である。図45に示すグラフにおいて、横軸は、タイヤ1の走行距離である。縦軸は、タイヤ1の計測点43間の段差量である。
例えば、タイヤ1の走行距離が1000[km]に達したとき、そのタイヤ1の計測点43の計測及び段差量が算出される。タイヤ1の走行距離が2000[km]に達したとき、そのタイヤ1の計測点43の計測及び段差量が算出される。同様に、タイヤ1の走行距離が3000[km]、4000[km]、5000[km]、…、30000[km]のそれぞれに達したとき、そのタイヤ1の計測点43の計測及び段差量が算出される。
なお、本例でいう走行距離は一例である。段差量の算出は、走行距離が1000[km]ごとに実施されることに限定されない。走行距離が100[km]ごとにタイヤ1の計測点43の計測及び段差量の算出が実施されてもよいし、走行距離が500[km]ごとにタイヤ1の計測点43の計測及び段差量の算出が実施されてもよい。
図45は、種類が異なる2つのタイヤ(Aタイヤ及びBタイヤ)についての走行距離と段差量との関係を示す。
図45に示すように、Aタイヤにヒールアンドトゥ摩耗が発生する場合、走行距離が0[km]からPa[km]までの間においては、段差量が徐々に大きくなる。走行距離がPa[km]を超えると、段差量は徐々に小さくなる。
Bタイヤにヒールアンドトゥ摩耗が発生する場合、走行距離が0[km]からPb[km]までの間においては、段差量が徐々に大きくなる。走行距離がPb[km]を超えると、段差量は徐々に小さくなる。
本実施形態においては、Aタイヤの走行距離に応じて複数回算出された段差量のうち、走行距離がPa[km]のときの段差量の最大値に基づいて、Aタイヤの摩耗性能が評価される。Bタイヤの走行距離に応じて複数回算出された段差量のうち、走行距離がPb[km]のときの段差量の最大値に基づいて、Bタイヤの摩耗性能が評価される。
以上説明したように、本実施形態によれば、段差量の履歴のうち、最大値を示す段差量に基づいてヒールアンドトゥ摩耗性能を評価することにより、市場走行において成長し得る最大レベルの段差量を的確に評価することができる。
なお、上述の各実施形態において、第1の計測点43Aと基準点44との距離(第1の距離)と、第2の計測点43Bと基準点44との距離(第2の距離)との相違に基づいて、第1の計測点43Aと第2の計測点43Bとの段差量を算出する場合、その段差量は、第1の距離と第2の距離との差に基づいて算出されてもよいし、第1の距離と第2の距離との比に基づいて算出されてもよい。すなわち、上述の各実施形態において、第1の距離と第2の距離との相違は、第1の距離と第2の距離との差、及び第1の距離と第2の距離との比の一方又は両方含む概念である。
なお、上述の各実施形態において、周方向偏摩耗は、ヒールアンドトゥ摩耗でもよいし、多角形摩耗でもよい。