JP6453747B2 - 弾性シール部材及びコネクタ - Google Patents

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Description

本発明は、ワイヤハーネスの端末に設けられるコネクタに取り付けられる弾性シール部材と、そのような弾性シール部材を備えたコネクタに関するものである。
移動体としての自動車には、多種多様な電子機器が搭載されている。これらの電子機器は、互いの間で電力や制御信号などを伝えるためにワイヤハーネスによって接続されている。ワイヤハーネスは、複数の電線が束ねられた電線束と、この電線束の端末に取り付けられるコネクタとを備えている。このようなコネクタとしては、端子付き電線を複数収容するハウジングと、このハウジングの内部に設けられて外部からの水の浸入を防ぐ弾性シール部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような弾性シール部材としては、例えばシリコーンゴム等の弾性材料で板状に形成されてハウジングの開口に嵌め込まれるとともに、端子付き電線が挿通される電線挿通孔が設けられるものが多い。図8に、従来の弾性シール部材の一例を示す。
図8に示されている弾性シール部材510は、弾性材料で板状に形成されており、端子付き電線520が厚み方向に沿った挿通方向に挿通される電線挿通孔511が複数配列されて設けられている。
特開2010−27231号公報
ここで、図8に示されている従来の弾性シール部材510では、電線挿通孔511に端子付き電線520が挿通されることで、その電線挿通孔511が拡径する。その結果、その拡径した電線挿通孔511の隣に位置する他の電線挿通孔511は歪む。そして、この歪みの程度が大き過ぎる場合には、その歪んだ電線挿通孔511への端子付き電線520の挿通抵抗が大きく挿通し難くなることがある。また、このような歪みを見越して電線挿通孔511を大きく形成したりすると、電線挿通孔511の内面と端子付き電線520との接触圧が低下してシール性が低下する恐れがある。
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、電線挿通孔への挿通抵抗を抑えつつも、シール性の低下を抑えることができる弾性シール部材及びコネクタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の弾性シール部材は、弾性材料で板形状に形成され、筒形状のコネクタハウジングの一端側の開口に嵌入される弾性シール部材であって、端子付き電線が厚み方向に挿通される電線挿通孔が複数配列されて設けられ、前記板形状における表裏面のうち少なくとも一方の面において、前記電線挿通孔に隣接して肉抜き溝が設けられ、前記肉抜き溝は、前記一方の面を見たときの平面視で、前記電線挿通孔を中心とした円形の範囲であって前記肉抜き溝を挟んで隣り合う前記電線挿通孔同士では互いに重複しない円形範囲、と重ならない形状に形成されており、前記電線挿通孔が、相対的に内径が小さい小径部と、相対的に内径が大きい大径部と、を有し、前記肉抜き溝を挟まずに隣り合う2つの前記電線挿通孔は、それぞれの前記大径部の相互間に所定距離が開くように設けられており、前記円形範囲が、前記大径部の内径に前記所定距離を2つ分加えた長さ以上の直径を有する円形の範囲であることを特徴としている。
本発明の弾性シール部材によれば、電線挿通孔に端子付き電線が挿通されることで、その電線挿通孔が拡径したとしても、電線挿通孔に隣接して設けられた肉抜き溝が収縮することで、電線挿通済みの電線挿通孔の隣の電線挿通孔の歪みが抑えられる。これにより、電線挿通孔への挿通抵抗が抑えられる。このとき、肉抜き溝が、電線挿通孔を中心とした円形の範囲であって肉抜き溝を挟んで隣り合う前記電線挿通孔同士では互いに重複しない円形範囲、と重ならない形状に形成されている。これにより、電線挿通孔の周囲に一定の肉厚が確保されることとなり、電線挿通孔の内面と端子付き電線との接触圧の低下が抑えられてシール性の低下が抑えられる。このように、本発明の弾性シール部材によれば、電線挿通孔への挿通抵抗を抑えつつも、シール性の低下を抑えることができる。
また、本発明の弾性シール部材によれば、肉厚が薄くなりがちな上記の大径部の周囲に、肉抜き溝の方向も含めて、全周に亘って少なくとも上記の所定距離に相当する肉厚が確保されることとなる。その分、挿通後の端子付き電線と電線挿通孔の内面との接触圧の低下が抑えられるので、シール性の低下を一層抑えることができる。
また、本発明の弾性シール部材において、前記電線挿通孔の間に位置する前記肉抜き溝は、前記平面視で、その外縁の少なくとも一部が、当該肉抜き溝を挟んで隣り合う前記電線挿通孔それぞれに対応した前記円形範囲の外周と一致していることが好適である。
この好適な弾性シール部材によれば、上記のようにシール性の低下が抑えられるとともに、肉抜き溝が上記の平面視で十分な大きさに形成されることとなり、その結果、電線挿通孔への挿通抵抗が一層抑えられることとなる。
また、本発明の弾性シール部材において、複数の前記電線挿通孔は、前記平面視で、第1方向に第1間隔を開けて配列され、前記第1方向と交差する第2方向には前記第1間隔よりも広い第2間隔を開けて配列されており、前記肉抜き溝が、前記第2方向について前記電線挿通孔に隣接して設けられていることも好適である。
この好適な弾性シール部材によれば、肉抜き溝が、電線挿通孔の配列間隔が相対的に広い上記第2方向について電線挿通孔に隣接して設けられている。つまり、広さに余裕のある場所に肉抜き溝が設けられることで、電線挿通孔の周囲にはより広い範囲で一定の肉厚が確保されることとなり、シール性の低下を一層抑えることができる。
また、本発明の弾性シール部材において、前記電線挿通孔の内周面には、当該電線挿通孔に挿通された前記端子付き電線の電線部分の外周面に密接するように全周にわたり突出したリップ環が、前記厚み方向に4列以上に設けられており、前記肉抜き溝が、前記板形状における表裏面の双方に、当該板形状における厚み方向について相互間に、少なくとも前記リップ環の2列分に相当する余肉部分を残して形成されていることも好適である。
この好適な弾性シール部材によれば、弾性シール部材の表裏面の双方に肉抜き溝が設けられることで端子付き電線の挿通抵抗を一層抑えることができる。そして、表裏面の肉抜き溝の相互間に、リップ環の2列分に相当する余肉部分が残されていることで、挿通後の端子付き電線と電線挿通孔の内面との接触圧の低下が抑えられるので、シール性の低下を一層抑えることができる。
上記課題を解決するために、本発明のコネクタは、筒形状のコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングの一端側の開口に嵌入される弾性シール部材と、を備えたコネクタであって、前記弾性シール部材が、上述した本発明の弾性シール部材であることを特徴としている。
本発明のコネクタによれば、前記弾性シール部材が、上述した本発明の弾性シール部材であるので、電線挿通孔への挿通抵抗を抑えつつも、シール性の低下を抑えることができる。
本発明によれば、電線挿通孔への挿通抵抗を抑えつつも、シール性の低下を抑えることができる。
本発明の一実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。 図1に示されている端子付き電線を示す図である。 本発明の一実施形態である弾性シール部材を、図1に示されているコネクタのフロント側から見た面を示す平面図である。 図3中の範囲A1の拡大図である。 図3に示されている弾性シール部材の、図3中のV1−V1断面を示す断面図である。 図4に示されている円形範囲の大きさを示す模式図である。 図3に示されている弾性シール部材のシール挿通孔に端子付き電線が挿通されるときの様子を模式的に示す図である。 従来の弾性シール部材の一例を示す図である。
本発明の実施形態にかかる弾性シール部材を図1〜図7を参照して説明する。
まず、本発明の一実施形態のコネクタの全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態のコネクタを示す分解斜視図である。図2は、図1に示されている端子付き電線を示す図である。
図1に示されているコネクタ1は、嵌合レバー15の回動によって不図示の相手側コネクタとの嵌合を行うレバー嵌合式のコネクタである。このコネクタ1は、コネクタハウジング11と、弾性シール部材12と、リアグリッド13と、端子付き電線14と、嵌合レバー15と、端子位置保証(TPA)部材16と、パッキン17と、ダミー栓18と、を備えている。尚、ここでは、コネクタ1において図2に示されている端子付き電線14の電線部分142が延出する側をリア、その反対側で不図示の相手側コネクタが嵌合する側をフロントと呼ぶ。
コネクタハウジング11は、筒形状に形成され、その内部に、端子付き電線14の端子141が収容される端子収容室111が複数設けられている。
複数の端子収容室111それぞれには、端子付き電線14の端子141が1つずつ、図中に矢印で示されている弾性シール部材12の厚み方向D1に沿った挿通方向D11に挿通されて収容される。複数の端子収容室111の一部がフロント側に露出しており、これら複数の端子収容室111にTPA部材16が被せられる。
コネクタハウジング11のリア側は開口112となっており、この開口112から弾性シール部材12が挿通方向D11に嵌入され、その弾性シール部材12を端子収容室111側に押し込むように押圧しながらリアグリッド13が挿通方向D11に嵌入される。
また、コネクタハウジング11の外壁には、嵌合レバー15の回動軸113が突出して設けられている。
弾性シール部材12は、例えばシリコーンゴム等の弾性材料で板状に形成されて、上記のようにコネクタハウジング11の開口112に嵌入される。そして、端子付き電線14が弾性シール部材12の厚み方向D1に沿った挿通方向D11に挿通されるシール挿通孔121(電線挿通孔)が複数設けられている。各シール挿通孔121は、コネクタハウジング11の開口112に嵌入されたときに各端子収容室111に連通する。この弾性シール部材12については、後で詳細に説明する。
リアグリッド13は、上記のようにコネクタハウジング11の開口112に嵌入される。このリアグリッド13の外周面には、図1に示されているように係止爪131が設けられている。コネクタハウジング11の外壁に設けられた係止孔114にこの係止爪131が係止することで、弾性シール部材12を上記のように押圧した状態でリアグリッド13がコネクタハウジング11に固定される。リアグリッド13には、上記のシール挿通孔121に連通するグリッド挿通孔132が複数設けられている。
端子付き電線14は、図2に示されているように端子141と電線部分142とで構成される。尚、本実施形態では、コネクタハウジング11には、サイズの異なる2種類の端子付き電線が収容される。2種類の端子付き電線は、そのサイズを除いて互いに同等な構成を有している。そこで、以下では、2種類の端子付き電線について、特に断らない限りは区別せずに単に端子付き電線14と呼んで説明を行う。図1には、端子付き電線14が1本だけ代表的に示されている。端子付き電線14の端子141は、四角筒状のメス端子となっており、相手側コネクタのオス端子と接続される。この端子付き電線14は、挿通方向D11にグリッド挿通孔132及びシール挿通孔121に挿通され、端子141が端子収容室111に収容される。
嵌合レバー15は、コネクタハウジング11を図1中の上下方向に挟むように略C字状に形成された部材である。そして、上下2つの腕部151のそれぞれに、コネクタハウジング11の外壁から突出する回動軸113が嵌め込まれる軸受孔152が設けられている。図1に矢印D2で示されているように、この軸受孔152に回動軸113が嵌め込まれることで、コネクタハウジング11に嵌合レバー15が回動自在に固定される。また、各腕部151には、相手側コネクタに係止して本実施形態のコネクタ1へと引寄せる方向に案内する案内溝153が設けられている。2つの腕部151を繋ぐ部分が、作業者によって操作される操作部154となっている。案内溝153が相手側コネクタに係止した状態で、作業者が操作部154を操作して嵌合レバー15を回動させることで、相手側コネクタが本実施形態のコネクタ1へと引寄せられて両者が嵌合する。
コネクタハウジング11のフロント側には、パッキン17を間に挟んでTPA部材16が矢印D3方向に取り付けられる。
TPA部材16は、フロント側に露出した複数の端子収容室111に被せられるキャップ状の部材であり、各端子収容室111内で端子141が動かないように保持する役割を果たす。パッキン17は、TPA部材16とコネクタハウジング11との間隙を塞いで防水の役割を果たす部材である。このTPA部材16には、コネクタハウジング11の端子収容室111に連通し、相手側コネクタの端子が進入する端子進入孔161が複数設けられている。
ダミー栓18は、端子付き電線14が挿通されない不使用の端子収容室111に至るグリッド挿通孔132やシール挿通孔121を塞ぐ樹脂製のピンである。このダミー栓18により、これらのグリッド挿通孔132やシール挿通孔121からの水の浸入が防止される。このダミー栓18も、図示は省略されているが、大サイズと小サイズの2種類のものが設けられている。
次に、本発明の一実施形態である弾性シール部材12について図3〜図7を参照して詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態である弾性シール部材を、図1に示されているコネクタのフロント側から見た面を示す平面図である。図4は、図3中の範囲A1の拡大図であり、図5は、図3に示されている弾性シール部材の、図3中のV1−V1断面を示す断面図である。図6及び図7については、後で参照する。
弾性シール部材12は、シリコーンゴム等の弾性材料で長方形の板形状に形成された部材であり、コネクタハウジング11内への水の浸入を防ぐ役割を果たす。この弾性シール部材12は、コネクタハウジング11の開口112から嵌入される。また、弾性シール部材12には、端子付き電線14が挿通方向D11に挿通するシール挿通孔121が複数配列されて設けられている。シール挿通孔121は、小サイズの端子付き電線14を挿通させる小サイズ用シール挿通孔121Sと、大サイズの端子付き電線14を挿通させる大サイズ用シール挿通孔121Lとからなる。尚、小サイズ用シール挿通孔121Sと大サイズ用シール挿通孔121Lは、そのサイズを除いて互いに同等な構成を有している。そこで、以下では、これら2種類のシール側挿通孔121S,121Sを、特に断らない限りは、単にシール挿通孔121と呼んで説明を行う。
本実施形態では、シール挿通孔121の内部が、図5の断面図に示された構造を有している。尚、図5には、端子付き電線14については1本のみが代表的に示されている。
弾性シール部材12にはシール挿通孔121が複数設けられている。そして、図5に示されているように、各シール挿通孔121の内周面には、端子付き電線14の電線部分142の外周面に密接するように全周にわたって突出したリップ環121aが挿通方向D11に4列配列されて設けられている。端子付き電線14が挿通されると、これらのリップ環121aが電線部分142の外周面に密接することで水の浸入が防がれる。また、各シール挿通孔121の両端の出口周辺には、漏斗状に凹んだ広口となって、端子付き電線14のシール挿通孔121への挿通を案内する呼込み部124が設けられている。
弾性シール部材12には、その表裏面の双方において、図3〜図5のそれぞれに示されているように、シール挿通孔121に隣接して肉抜き溝122が設けられている。そして、この肉抜き溝122は、図4に示されているように、肉抜き溝122が設けられている面を見たときの平面視で、次のような円形範囲121bと重ならない形状に形成されている。円形範囲121bは、シール挿通孔121を中心とした円形の範囲であって肉抜き溝122を挟んで隣り合う(図4の例では斜め方向に隣り合う)シール挿通孔121同士では互いに重複しない範囲となっている。また、本実施形態では、シール挿通孔121の間に位置する肉抜き溝122は、平面視で、その外縁の少なくとも一部が、上記の円形範囲121bの外周と一致している。
また、本実施形態では、円形範囲121bが次のような大きさの範囲となっている。
図6は、図4に示されている円形範囲の大きさを示す模式図である。図6(A)には、図4と同様の平面図で円形範囲121bの大きさが示されている。また、図6(B)には、図6(A)で参照するためのシール挿通孔121の断面図が示されている。
図5を参照して説明したように、また、図6(B)にも示されているように、シール挿通孔121の内周面には、リップ環121aが挿通方向D11に4列配列されて設けられている。このため、シール挿通孔121は、リップ環121aの内径に相当する小径φSを有し孔が狭くなった小径部121cと、リップ環121aの相互間の谷部の内径に相当する大径φLを有し孔が広くなった大径部121dと、を有することとなっている。
そして、図6(A)に示されているように、肉抜き溝122を挟まずに隣り合う2つのシール挿通孔121は、それぞれの大径部121dが、相互間に所定距離L1を開けて隣り合っている。上述した円形範囲121bは、シール挿通孔121における上記の大径φLに、大径部121dの相互間隔である上記の所定距離L1を2つ分加えた直径φCを有する円形の範囲となっている。
尚、本実施形態では、本発明にいう円形範囲の一例として、シール挿通孔121の大径φLに上記の所定距離L1を2つ分加えた直径φCを有する円形範囲121bが例示されている。しかしながら、本発明にいう円形範囲は、これに限るものではなく、例えば上記の直径φCよりも若干長めの直径を有する円形の範囲等であってもよい。
ここで、図4に示さているように、肉抜き溝122は、平面視で、シール挿通孔121の出口に設けられた呼込み部124と重ならない形状に設けられている。
ここで、弾性シール部材12では、図3に示されているように、上記の平面視で、シール挿通孔121が、次のように配列されている。即ち、シール挿通孔121は、弾性シール部材12の長辺方向D4(第1方向)に第1間隔d1を開けて配列され、長辺方向D3と交差する短辺方向D5(第2方向)には第1間隔d1よりも広い第2間隔d2を開けて配列されている。そして、本実施形態では、肉抜き溝122が、短辺方向D5についてシール挿通孔121に隣接して設けられている。
さらに、本実施形態では、弾性シール部材12の表裏面の双方に設けられた肉抜き溝122は、弾性シール部材12における厚み方向D1の中央部に、上記のリップ環121aの2列分に相当する厚みd3の余肉部分123を残す深さd4で形成されている。
以上に説明した本実施形態の弾性シール部材12、及び、その弾性シール部材12を備えたコネクタ1によれば、端子付き電線14は、シール挿通孔121に次のように挿通されることとなる。
図7は、図3に示されている弾性シール部材のシール挿通孔に端子付き電線が挿通されるときの様子を模式的に示す図である。図7(a)には、挿通の初期で、端子付き電線14の端子141がシール挿通孔121を押し広げながら内部に進入する様子が示されている。図7(b)には、端子141がシール挿通孔121を通過し、シール挿通孔121の内部に電線部分142が位置している様子が示されている。
図7(a)に示されているように、端子付き電線14の端子141がシール挿通孔121に進入する際には、端子141によってシール挿通孔121が拡径される。その結果、挿通方向D11と交差するとともにシール挿通孔121の外側へと向かう矢印D6で示された圧力が生じる。
また、端子141の通過後には、図7(b)に示されているように、主に、リップ環121aを電線部分142に圧接させる矢印D7で示された圧力が生じる。また、このときは、端子141の通過時に比べるとその程度が小さいものの電線部分142によってシール挿通孔121が拡径される。その結果、図7(a)の矢印D6と同方向(即ち、矢印D7方向とは逆方向)の圧力が生じる。
ここで、本実施形態の弾性シール部材12には、シール挿通孔121に隣接して肉抜き溝122が設けられている。このため、端子141の通過時に生じる圧力は、図7(a)に示されているように肉抜き溝122が収縮することで吸収される。その結果、端子141の通過時の挿通抵抗が抑えられる。
同様に、シール挿通孔121の内部に電線部分142が位置している状態に生じる圧力も、肉抜き溝122が収縮することで吸収される。このため、端子付き電線14が挿通されたシール挿通孔121の隣に位置し、端子付き電線14が未挿通のシール挿通孔121の歪みが抑えられる。その結果、その未挿通のシール挿通孔121に端子付き電線14が挿通される際には、その挿通時の圧力が上記のように肉抜き溝122で吸収されることと相俟って挿通抵抗が抑えられることとなる。
このとき、本実施形態では、図4に示されているように、肉抜き溝122が、シール挿通孔121を中心とした円形の範囲であって肉抜き溝122を挟んで隣り合うシール挿通孔121同士では互いに重複しない円形範囲121b、と重ならない形状に形成されている。これにより、シール挿通孔121の周囲に一定の肉厚が確保されることとなり、シール挿通孔121の内面と端子付き電線14との接触圧の低下が抑えられてシール性の低下が抑えられる。このように、本実施形態の弾性シール部材12によれば、シール挿通孔121への挿通抵抗を抑えつつも、シール性の低下を抑えることができる。
また、本実施形態の弾性シール部材12では、肉抜き溝122は、シール挿通孔121の出口に設けられた呼込み部124と重ならない形状に設けられている。これにより、シール挿通孔121の周囲に一層厚みのある肉厚が確保されることとなり、シール挿通孔121の内面と端子付き電線14との接触圧の低下が一層抑えられてシール性の低下がさらに抑えられる。
また、本実施形態の弾性シール部材12では、シール挿通孔121の間に位置する肉抜き溝122は、上記の平面視で、その外縁の少なくとも一部が、その肉抜き溝122を挟んで隣り合うシール挿通孔121それぞれに対応した円形範囲121bの外周と一致している。これにより、上記のようにシール性の低下が抑えられるとともに、肉抜き溝122が上記の平面視で十分な大きさに形成されることとなり、その結果、シール挿通孔121への挿通抵抗が一層抑えられることとなる。
また、本実施形態の弾性シール部材12では、図3に示されているように、相対的に配列間隔が広い短辺方向D5についてシール挿通孔121に隣接して肉抜き溝122が設けられている。つまり、広さに余裕のある場所に肉抜き溝122が設けられることで、シール挿通孔121の周囲にはより広い範囲で一定の肉厚が確保されることとなり、シール性の低下を一層抑えることができる。
また、本実施形態の弾性シール部材12では、シール挿通孔121の内周面にはリップ環121aが4列に設けられている。これにより、弾性シール部材12の表裏面の双方に肉抜き溝122が設けられることで端子付き電線14の挿通抵抗を一層抑えることができる。そして、表裏面の肉抜き溝122の相互間に、リップ環121aの2列分に相当する余肉部分123が残されていることで、挿通後の端子付き電線14とシール挿通孔121の内面との接触圧が低下が抑えられるので、シール性の低下を一層抑えることができる。
また、本実施形態の弾性シール部材12では、図6を参照して説明したように、円形範囲121bは、シール挿通孔121の大径部121dの内径(大径φL)に、大径部121dの相互間隔である上記の所定距離L1を2つ分加えた直径φCを有する円形の範囲となっている。
上述したように、肉抜き溝122は、円形範囲121bと重ならない形状に形成されている。このため、上述した大きさの円形範囲121bを採用することで、肉厚が薄くなりがちなシール挿通孔121における大径部121dの周囲に、肉抜き溝122の方向も含めて、全周に亘って上記の所定距離L1に相当する肉厚が確保されることとなる。その分、挿通後の端子付き電線14とシール挿通孔121の内面との接触圧の低下が抑えられるので、シール性の低下を一層抑えることができる。
尚、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の弾性シール部材の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態では、本発明にいう弾性シール部材の一例として、大小2種類の端子付き電線14を用いるべく、シール挿通孔121(電線挿通孔)を、それぞれ大小2サイズ設ける形態の弾性シール部材12が例示されている。しかしながら、本発明にいう弾性シール部材はこれに限るものではない。本発明にいう弾性シール部材は、例えば、1種類の端子付き電線を用い、電線挿通孔を1サイズに対応したもののみ設ける形態であってもよく、あるいは、3種類以上の端子付き電線を用い、電線挿通孔を、各サイズに対応して3種類以上設ける形態であってもよい。
また、前述した実施形態では、本発明にいうリップ環の一例として、4列に配列されたリップ環121aが例示されている。しかしながら、本発明にいうリップ環はこれに限るものではなく、本発明にいうリップ環の数は4列以上であれば4列や5列等の任意の数であってもよい。
1 コネクタ
11 コネクタハウジング
12 弾性シール部材
14 端子付き電線
112 開口
121 シール挿通孔(電線挿通孔)
121a リップ環
121b 円形範囲
121c 小径部
121d 大径部
122 肉抜き溝
123 余肉部分
141 端子
142 電線部分
D1 厚み方向
D2,D3 矢印
D4 長辺方向(第1方向)
D5 短辺方向(第2方向)
d1 第1間隔
d2 第2間隔
L1 所定距離
φS 小径
φL 大径
φC 直径

Claims (5)

  1. 弾性材料で板形状に形成され、筒形状のコネクタハウジングの一端側の開口に嵌入される弾性シール部材であって、
    端子付き電線が厚み方向に挿通される電線挿通孔が複数配列されて設けられ、
    前記板形状における表裏面のうち少なくとも一方の面において、前記電線挿通孔に隣接して肉抜き溝が設けられ、
    前記肉抜き溝は、前記一方の面を見たときの平面視で、前記電線挿通孔を中心とした円形の範囲であって前記肉抜き溝を挟んで隣り合う前記電線挿通孔同士では互いに重複しない円形範囲、と重ならない形状に形成されており、
    前記電線挿通孔が、相対的に内径が小さい小径部と、相対的に内径が大きい大径部と、を有し、
    前記肉抜き溝を挟まずに隣り合う2つの前記電線挿通孔は、それぞれの前記大径部の相互間に所定距離が開くように設けられており、
    前記円形範囲が、前記大径部の内径に前記所定距離を2つ分加えた長さ以上の直径を有する円形の範囲であることを特徴とする弾性シール部材。
  2. 前記電線挿通孔の間に位置する前記肉抜き溝は、前記平面視で、その外縁の少なくとも一部が、当該肉抜き溝を挟んで隣り合う前記電線挿通孔それぞれに対応した前記円形範囲の外周と一致していることを特徴とする請求項1に記載の弾性シール部材。
  3. 複数の前記電線挿通孔は、前記平面視で、第1方向に第1間隔を開けて配列され、前記第1方向と交差する第2方向には前記第1間隔よりも広い第2間隔を開けて配列されており、
    前記肉抜き溝が、前記第2方向について前記電線挿通孔に隣接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性シール部材。
  4. 前記電線挿通孔の内周面には、当該電線挿通孔に挿通された前記端子付き電線の電線部分の外周面に密接するように全周にわたり突出したリップ環が、前記厚み方向に4列以上に設けられており、
    前記肉抜き溝が、前記板形状における表裏面の双方から形成され、当該板形状における厚み方向について相互間に、少なくとも前記リップ環の2列分に相当する余肉部分が残されていることを特徴とする請求項1〜3のうち何れか一項に記載の弾性シール部材。
  5. 筒形状のコネクタハウジングと、
    前記コネクタハウジングの一端側の開口に嵌入される弾性シール部材と、
    を備えたコネクタであって、
    前記弾性シール部材が、請求項1〜のうち何れか一項に記載の弾性シール部材であることを特徴とするコネクタ。
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