JP6453547B2 - 咀嚼・嚥下困難者向け水分補給用ゼリー飲料 - Google Patents

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Description

本発明はゼリー飲料に係る。より詳しくは、高齢者などの嚥下困難者の水分補給用として適し、口内や喉に付着したり詰まることなく、適度なスベリ性とまとまり性を有する美味しく安全に飲み込み易い水分補給用ゼリー飲料に関する。
現在、多くの嚥下困難者向け水分補給ゼリー飲料が市販されているが、いずれもクラッシュするとゼリーの小片に破砕され、全体の均一性が失われてしまうものばかりである。それらの小片には再凝集性がなく、口中での移動途中でばらけてしまい誤嚥につながる危険性があった。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の食事分類2013でも、ゼリー飲料について「ゼリー飲料全般についての難易度や危険性については、おおむね薄いとろみに近いものとして扱うこととする」と記述されていることからも嚥下適性は低いことがうかがわれる。
高齢者などの嚥下困難者用としては、幼児や高齢者などの嚥下困難者がストローや容器のスパウトからでも容易に飲み込めることを訴求したゼリー飲料(特許文献1参照)や嚥下困難者用の飲料を簡便に調製できる嚥下困難者用飲料粉末(特許文献2、特許文献3)。嚥下困難者用ではあるが、誤嚥し気管内に流入しても肺炎が起こりにくい安全性や消臭作用を訴求したもの(特許文献4)が知られている。特許文献1のゼリー飲料はゲル化剤としてカラギナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グルコマンナンから複数選ばれたもので、ゼリーとゼリーから離水した液体から構成されている。
離水量については全く規定がなく、物性の規定もスパウトやストローを通過し崩壊する前の物性値となっている。特許文献2の容器入り飲料粉末は密封容器にいれることで長期間保存してもダマにならず速やかに水に溶けて均一な性状の飲料にするものである。しかし、増粘多糖類はキサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、タマリンドまたはカラギナンを含有するとなっている。これらの増粘多糖類では、水を加えただけでは、いわゆる濃いトロミ状を呈するにとどまり、口中でのまとまり性や付着性は不十分としか言えず、ゼリー飲料とは言えない。特許文献3は葛粉を加えることで、風味やべたつきを改善するものであるが、トロミの域を脱しない。特許文献4は、物性より気管内に流入した際に肺炎が起こりにくい安全性と消臭作用を訴求したもので、ゼリーの物性については言及していない。
このように、従来の嚥下困難者向け水分補給ゼリー飲料において、容器から絞り出されたゼリーの物性を論じた文献は見当たらない。
特許文献1 特開2006−197838
特許文献2 特開2005−348676
特許文献3 特開2008−17766
特許文献4 特開2007−189958
本発明は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、スパウトを通過した後または口中で軽く咀嚼された後の崩壊したゼリーの物性こそ、嚥下適性を判断するものであるとの視点から、クラッシュしても再凝集して全体が均一なまとまり性を有し、口中でべたつき感がなく適度なスベリ性を有し、誤嚥につながる離水がないゼリー飲料を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、ローメトキシルペクチンの含有量とローメトキシルペクチン量に対するカルシウム塩の割合を調整することにより、ゼリーを崩壊しても再凝集して全体を均一に保つことを発見した。更に、14メッシュの篩を通過させ一旦崩壊させた後、再凝集したゼリーの物性値を、厚生労働省特別用途食品嚥下困難者食品基準(但し測定温度15℃)に準じてテクスチャーアナライザーで測定した時、最大応力(N/m)が500〜1000、付着性(J/m)が200以下であり、ろ紙法(外形125mmのろ紙上に直径30mm内径26mm高さ10mmのアクリル円筒を乗せ、検体5.5gを充填して5分後の離水円直径を測定)による離水円直径が32〜60mmであるときが、均一なまとまりが最もあり、かつ飲み込みやすく風味の面でもおいしいことがわかり本発明を完成するにいたった。
本発明の水分補給用ゼリー飲料は、従来のゼリー飲料のように、崩壊したゼリー片がまとまりなく集合した状態ではなく、崩壊後も全体が均一になりかつまとまり、適度な表面水を保有するため、嚥下困難者にとって非常に飲み込みやすいものとなる。
市販のゼリー飲料と本発明のゼリー飲料とを、スパウトから絞り出した後の状態を撮影した写真
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
本発明の水分補給用ゼリー飲料において、ペクチンの保存性を維持するためにpHは2.5〜4.5の範囲が望ましい。更に望ましくは3.1〜4.0である。
ローメトキシルペクチンとしては、アップル起源のもの、シトラス起源のものを問わない。エステル化度は25〜38が好ましく、望ましくは31〜38が好ましい。アミド化度は問わない。ローメトキシルペクチンのエステル化度が前記範囲より低い場合は寒天様に近いゼリーになり、崩壊後再凝集して均一な状態になることができなくなる。
カルシウム塩としては食品として使用できるものはすべて使用することができる。乳酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウムなどが挙げられる。カルシウム塩に代わって二価の金属イオンを遊離するものも使用することができる。硫酸マグネシウムなどである。
以上のほかに、他の増粘多糖類を適量使用することも可能である。増粘多糖類としては、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドガム、タラガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
本発明における水分補給用ゼリー飲料の物性測定は厚生労働省特別用途食品嚥下困難者食品基準の方法に準拠して行うことができる。すなわち、テクスチャーアナライザーに使用するプランジャーはシリコン製直径20mmの円筒状で、シャーレは直径40mm、深さ15mmのステンレス製を用いる。プランジャーの圧縮速度は10mm/sで、クリアランスは5mmとする。圧縮は2回行い最大応力(N/m)、付着性(J/m)を計算する。測定温度だけは上記基準と異なり15℃とした。
最大応力は500〜1000N/mが望ましく、500N/m以下であると口中でまとまり感を維持することができない。1000N/m以上であると固まり感が強くなり、飲み込むときの力が必要となり、飲料という概念からは外れてしまう。
付着性(J/m)は200以下が望ましい。200以上では飲み込むとき、のど奥での張り付き感が強くなる。離水性は付着性と表裏一帯の面もあるが、付着性が200J/m以下であっても離水性が高すぎては速く滑りすぎたり、凝集性が低下する。
離水性の測定は、125mmのろ紙(ADVANTEC101)に外径30mm、内径26mm、高さ10mmのアクリル製円筒をセンターに置き、中に試料5.5g充填して5分後の離水円の直径を測定して行われる。離水円の直径が32〜60mmが望ましく、更に望ましくは32〜45mmである。60mm以上の離水性になると付着性は減少するが、まとまり性も低下することになる。32mm以下では表面を潤す水分もないことになり、スベリ性が悪くなる。
上記の物性を達成するために、ローメトキシルペクチンの含量はゼリー飲料の全体に対して0.6〜1.5%であり、ローメトキシルペクチンに対する遊離カルシウムイオンの含量が2.5〜4.0%であることが望ましい。ローメトキシルペクチンの含量が0.6%より低い場合は最大応力400N/m以上にするのは難しくなり、口中でのまとまり感が感じられなくなる。1.5%以上であると最大応力が1000N/m以上となり、硬過ぎて飲みにくく感じるようになる。
クラッシュ後の再凝集性と均一性を確保するにはローメトキシルペクチンに対する遊離カルシウムイオンの含量は2.5〜4.0%であることが望ましい。2.5%以下の場合は架橋点が少なくなるため、まとまり性が減少してしまう。4%以上の場合は架橋が進み過ぎて寒天様のさくいゼリーになるため、崩壊後のゼリーの凝集と均一性が減少してしまう。物性を上記範囲になるように、キレート剤を使用することもできる。
<既存嚥下困難者用ゼリー飲料とのクラッシュ後の均一性の比較>
ペクチン:0.9、乳酸Ca:0.14、イオン飲料:98.96を配合してゼリー飲料とした。
従来品の既存嚥下困難者用ゼリー飲料として、ラクーナ飲むゼリー3S(バランス株式会社)、経口補水液OS−1(株式会社大塚製薬工場)、アクアケアゼリー(味の素株式会社)、アクアジュレパウチ(株式会社フードケア)、アイソトニックゼリー(ニュートリー株式会社)を使用した。
図1の写真は、上記市販のゼリー飲料と本発明のゼリー飲料とを、スパウトから絞り出した後の状態を撮影したもので、従来品は、細長いゼリー片の集合であり、全体が均一にはなっていないのに対し、実施例1のゼリー飲料は、それらに比較して全体が凝集して均一であることがわかる。
<ペクチンと乳酸カルシウムの配合量の影響>
市販のイオン飲料に対するペクチンの配合量を0.5%〜1.7%まで変化させ、同時に乳酸カルシウムの配合量をペクチンに対して17%〜24%まで変化させて、クラッシュ後のゼリー飲料の物性と離水性と均一性、まとまり感を評価した。クラッシュは14メッシュ篩を通過させて行った。離水性は「課題を解決するための手段」で記載したろ紙法で行った。ペクチンはエステル化度34であった。
ゼリー飲料の調製は、イオン飲料80%に粉末のペクチンをダマにならないように分散させ、90℃まで加熱し、そこに残りのイオン飲料(18.0%〜19.4%)に乳酸カルシウムを溶かし90℃まで加熱したものを混合し、容器に充填し、容器ごと90℃、30分間湯煎で殺菌し、冷却水にて10℃まで冷却した。結果を表1に示す。
ペクチンの含量が0.5%ではゼリーの硬さが不十分で口中で溶けるような感触を感じた。1.7%では逆に硬すぎて飲料という範疇ではなく、食べるイメージに近づいた。また、クラッシュした後、クラッシュしたゼリーの小片が残り、均一感が損なわれた。離水量も多くなった。ペクチンに対する乳酸カルシウムの配合割合を24%と高くしたものは、クラッシュした後の離水が多くなり、そのため均一性とまとまり感が損なわれた。
<各種飲料への応用>
飲料に対するペクチンの配合量を0.9%、乳酸カルシウムの配合量をペクチンに対して17%と固定し、以下の3種の飲料を実施例1と同様に調整し、同様に評価した。
粉末イオン飲料での試料の調整は、粉末イオン飲料にペクチンを予備混合し、これを水に分散し、加熱し、一部の水に溶いた乳酸カルシウム溶液を加熱した状態で同様に混合した。結果を表2に示す。

Claims (2)

  1. エステル化度25〜38のローメトキシルペクチンを含有し、その含量が0.9〜1.2質量%であり、遊離カルシウムイオンの含量がローメトキシルペクチンに対して2.8〜3.1質量%であるクラッシュしても全体が均一に再凝集し離水がないことを特徴とする咀嚼・嚥下困難者向け水分補給ゼリー飲料。
  2. pHが2.5〜4.5であり、温度15℃で厚生労働省特別用途食品嚥下困難者食品基準に沿ってテクスチャーアナライザーで物性を測定した時、最大応力(N/m2)が500〜1000、付着性(J/m3)が200以下であり、ろ紙法による離水試験で離水円直径が32〜60mmである請求項1記載の咀嚼・嚥下困難者向け水分補給ゼリー飲料。
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