JP2016141642A - 嚥下反射促進剤及び飲食品用の糊料製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】嚥下の反射を改善できる嚥下反射促進剤、及び、嚥下反射が促進されることに加え、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすく、また咽頭への付着感が小さい飲食品を調製可能な、飲食品用の糊料製剤を提供する。【解決手段】冷感を有するエステル化合物を含有する嚥下反射促進剤、及び冷感を有するエステル化合物と、増粘多糖類を含有する飲食品用の糊料製剤を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、飲食品を飲み込むという「嚥下」の反射を促進する、嚥下反射促進剤に関する。本発明はまた、飲食品に添加することで、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすい物性を有する飲食品や、咽頭への付着感が小さい飲食品を調製可能な糊料製剤に関する。
近年の高齢者人口の増加に伴い、食べ物を噛み砕き・飲み込む動作に障害を有する咀嚼・嚥下機能低下者が増えている。咀嚼・嚥下機能低下者は、加齢や疾病、筋肉の衰えなどから食塊を咽頭から食道へ送り込む機能が低下しているため、飲食品をスムースに飲み込むことが難しく、誤嚥を招きやすい。かかる課題を解決するために、対象飲食品に粘度を付与して飲み込みやすくする技術や、対象飲食品をゲル化させて飲み込みやすくする技術などが開発されている。
例えば、乳化剤を被覆した糊料を含有することを特徴とする咀嚼・嚥下困難者向け飲食品用の糊料組成物(特許文献1)や、糊料を水に溶解して流動性のある液体として調製され、水分を含む目的物に添加して粘性又はゲル化を発現させるようにしたことを特徴とする増粘用添加液(特許文献2)等が知られている。
特開2014−057575号公報 特許第3798913号公報
しかしながら、上記従来技術は増粘剤自体の商品設計(例えば、分散性、流動性等)に関する技術であり、ヒトの嚥下の反射に着眼する技術とは異なる技術である。また、従来技術は、増粘剤等を利用した飲食品の物理的な商品設計に関する技術であり、嚥下反射を改善する観点から十分とはいえないものである。
そこで本発明では、嚥下の反射を改善できる嚥下反射促進剤、及び嚥下反射促進剤を含有する飲食品用の糊料製剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、冷感を有するエステル化合物を経口摂取することで嚥下反射が促進され、嚥下を円滑に行うことできることを見出した。また、本発明者らは、冷感を有するエステル化合物と増粘多糖類を含有する糊料製剤を飲食品に添加することで、前記嚥下反射促進効果に加え、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすい飲食品や、喫食時に咽頭への付着感が小さい飲食品を調製できることを見出し、本発明に至った。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、以下の実施態様を包含する。
項1.冷感を有するエステル化合物を含有することを特徴とする、嚥下反射促進剤。
項2.前記冷感を有するエステル化合物として、エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート、メンチルラクテート、メンチルサクシネート、メンチルグルタレート、メンチル−3−ヒドロキシブチレート、メンチルアセトアセテート、メンチルピロリドンカルボキシレート及びメンチルエチレングリコールカルボネートからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする、項1に記載の嚥下反射促進剤。
項3.更に、増粘多糖類を含有する、項1又は2に記載の嚥下反射促進剤。
項4.項1又は2に記載の嚥下反射促進剤、並びに増粘多糖類を含有する、飲食品用の糊料製剤。
項5.前記増粘多糖類として、キサンタンガム、グァーガム、カラギナン及びペクチンからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項4に記載の飲食品用の糊料製剤。
項6.前記嚥下反射促進剤1質量部に対する、前記増粘多糖類の含量が3.5質量部以上である、項4又は5に記載の飲食品用の糊料製剤。
本発明によれば、嚥下反射を促進することができる嚥下反射促進剤を提供できる。これにより、嚥下をより円滑に行うことができ、食べる意欲を向上させることができる。また、本発明の飲食品用の糊料製剤を飲食品に添加することで、喫食時にまとまり感があり飲み込みく、また、付着感が小さい飲食品を提供することができる。
本発明では、嚥下反射促進剤として、冷感を有するエステル化合物を用いることを特徴とする。本発明において「冷感を有するエステル化合物」とは、水に化合物を添加し、経口摂取した場合に、冷たさを感じるエステル化合物を意味し、例えば、エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート、メンチルラクテート、メンチルサクシネート、メンチルグルタレート、メンチル−3−ヒドロキシブチレート、メンチルアセトアセテート、メンチルピロリドンカルボキシレート及びメンチルエチレングリコールカルボネートからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
好ましいエステル化合物は、エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート及び/又はメンチルラクテートである。
本発明の飲食品用糊料製剤における、冷感を有するエステル化合物の含量は特に制限されないが、好ましい含量は50〜3000ppmであり、より好ましくは100〜2500ppm、更に好ましくは200〜2000ppmである。
本発明において「嚥下反射」とは、口の中でひとかたまりにした食べ物などを、咽頭から食道まで一気に運ぶ反射運動のことを意味し、本発明の嚥下反射促進剤は、当該嚥下反射を促進できることを特徴とする。このように、本発明はヒトの嚥下反射を利用した嚥下を改善する技術であり、増粘剤等を利用した飲食品の物理的な商品設計を目的とする従来技術とは、着想が異なる技術である。
本発明はまた、増粘多糖類と前記嚥下反射促進剤(冷感を有するエステル化合物)を含有する、嚥下反射促進剤、及び飲食品用の糊料製剤にも関する。増粘多糖類としては、飲食品に利用可能なものを広く利用できる。例えば、キサンタンガム、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム)、カラギナン、グルコマンナン、ジェランガム(脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランラム)、寒天、アルギン酸、アルギン酸塩類、ペクチン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、ガティガム、トラガントガム、カラヤガム、カシアガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、発酵セルロース、α化澱粉、α化加工澱粉などが挙げられる。好ましい増粘多糖類は、キサンタンガム、ガラクトマンナン、カラギナン、ペクチン、ジェランガム及びウェランガムからなる群から選択される1種以上であり、より好ましい増粘多糖類は、キサンタンガム、グァーガム、カラギナン及びペクチンからなる群から選択される1種以上である。
そして、本発明では、前記嚥下反射促進剤と、増粘多糖類を含有する糊料製剤を飲食品に添加することで、嚥下反射が促進されるのみならず、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすく、また、付着感が小さい飲食品を提供できることを特徴とする。
飲食品用の糊料製剤における、増粘多糖類の含量は特に制限されないが、例えば1〜95質量%が挙げられる。糊料製剤における増粘多糖類の好ましい含量は5〜80質量%であり、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜50質量%、更により好ましくは20〜45質量%である。
また、本発明では、飲食品用の糊料製剤に含まれる、冷感を有するエステル化合物1質量部に対し、増粘多糖類を、好ましくは3.5〜10000質量部、より好ましくは4〜5000質量部、更に好ましくは5〜2500質量部含有させることが望ましい。当該割合で増粘多糖類及び冷感を有するエステル化合物を併用することで、嚥下反射をより改善させることができ、また、当該糊料製剤を飲食品に用いることで、喫食時のまとまり感や、飲み込みやすさ及び付着感などに関して、より優れた飲食品を提供することができる。
本発明の飲食品用の糊料製剤は、冷感を有するエステル化合物及び増粘多糖類が含まれていれば、形態は特に制限されない。例えば、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状など)、ペースト状、液体状など、各種形態をとることが出来る。
本発明の飲食品用の糊料製剤はまた、常法に従って製造することができ、製法は特に制限されない。例えば、冷感を有するエステル化合物と増粘多糖類を粉体混合する若しくは液体混合する、又は、増粘多糖類に冷感を有するエステル化合物の液体を噴霧するなどの各種方法をとることができる。
本発明の飲食品用の糊料製剤は更に、可食性金属塩を含有することがより好ましい。可食性金属塩の種類は特に制限されず、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム等)、カリウム塩(例えば、塩化カリウム、クエン酸カリウム等)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム等)などが挙げられる。飲食品用の糊料製剤における可食性金属塩の含量は特に制限されないが、例えば、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%が挙げられる。また、本発明の飲食品用の糊料製剤は賦形剤を含有してもよい。賦形剤としては、例えば、単糖類(例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース等)、二糖類(例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖等)、糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール等)、澱粉分解物(例えば、デキストリン、粉飴等)又はオリゴ糖などが挙げられる。
本発明の飲食品用の糊料製剤は、飲食品に添加することで、対象飲食品を増粘又はゲル化させることができる。本観点から、本発明の糊料製剤は、飲食品用の増粘剤又はゲル化剤として好適であり、飲食品用の増粘剤としてより好適である。また、本発明の糊料製剤は飲食品に用いることで、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすく、付着感が小さい飲食品を調製できる観点から、嚥下機能低下者用の糊料製剤として好適である。
本発明の糊料製剤が対象とする飲食品は特に制限されず、各種の飲食品に適用できる。例えば、水、飲料(例えば、お茶、ジュース、牛乳等)、スープ、味噌汁、流動食、主食、惣菜、ミキサー食又はペースト食等が挙げられる。飲食品に含まれる水分含量は特に制限されないが、飲食品用の糊料製剤が増粘やゲル化効果を十分に発揮させる観点からは、本発明の飲食品用の糊料製剤を添加する前の飲食品の水分含量が60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であることが望ましい。従って、飲食品の水分含量が少ない場合は、本発明の飲食品用の糊料製剤を添加する前に、飲食品の水分含量が上記範囲内となるように水を添加するなどして、対象飲食品の水分含量を調整することが望ましい。
飲食品に対する本発明の飲食品用の糊料製剤の添加量は特に制限されないが、最終飲食品における冷感を有するエステル化合物の濃度が1〜60ppm、好ましくは2〜50ppm、より好ましくは4〜40ppmとなるように添加することが望ましい。また、最終飲食品における増粘多糖類の濃度が0.02〜1質量%、好ましくは0.06〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.9質量%となるように添加することが望ましい。
以下に実施例を用いて本発明を更に説明する。ただし、これらの例は本発明を限定するものではない。
実験例1:嚥下反射促進剤、飲食品用の糊料製剤(増粘剤)
表1に示す処方に従って、嚥下反射促進剤、飲食品用の糊料製剤(増粘剤)を調製した。
具体的には、キサンタンガム、グァーガム、塩化カリウム及びデキストリンの粉体混合物を顆粒化した増粘多糖類含有製剤に、適宜、冷感を有するエステル化合物を添加した。
注1)キサンタンガム、グァーガム、塩化カリウム及びデキストリンの粉体混合物を顆粒化した顆粒品(キサンタンガム36質量%、グァーガム2質量%、塩化カリウム2.5質量%、デキストリン59.5質量%)。製剤中の増粘多糖類含量は38質量%である。
(飲食品の調製(モデル系))
200mLビーカーに20℃の水98gを入れ、実施例1−1、1−2及び比較例1の嚥下反射促進剤/飲食品用の糊料製剤を各々2g添加し、30秒間攪拌後、30分間静置し、粘度が付与された飲食品(水)を調製した。
(嚥下反射試験)
実施例1−1及び1−2の嚥下反射促進剤を用いて調製した粘度が付与された飲食品(水)、及び水を用いて、嚥下反射試験を行った。本実験例では、嚥下反射を試験する方法として、嚥下と嚥下の間隔時間を測定する方法を採用した。
具体的には、被験者(4名)に嚥下音測定用の咽喉マイクを装着し、20℃に調温した前記飲食品15gを一口で口に含み、一回で嚥下させた。嚥下後、カテーテル(TERUMOサフィードフィーディングチューブ、Fr.5)の先端が口内の舌根部にくるように固定し、注水速度0.2ml/secで、20℃の水を口内に注水した。注水と同時に嚥下音測定を開始し、12回目の嚥下が終了した時点で注水及び嚥下音測定を停止した。測定した嚥下音から、嚥下同士の間隔(時間)の平均値を算出し、これを嚥下反射時間(平均)とした。結果を表2に示す。
表2に示すように、冷感を有するエステル化合物(エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート、及びメンチルラクテート)を含有する飲食品(実施例1−1及び1−2の嚥下反射促進剤を含有する飲食品)は、これらを含有しない飲食品(水)に比べて嚥下反射時間が短縮され、嚥下反射が促進されていることが分かった。
(喫食時の官能評価試験)
実施例1−1、1−2及び比較例1の飲食品用の糊料製剤を用いて調製した粘度が付与された飲食品(水)を経口摂取し、喫食時のまとまり感、飲み込みやすさ及び咽頭への付着感を評価した。評価は専門のパネリスト4名で行った。結果を表3に示す。
(飲食品の評価)
[まとまり感]
飲食品を口腔内に含んだときに、飲食品がまとまりやすいか否かを官能評価した。官能評価は口腔内で非常にまとまりやすいものを◎、まとまりやすいものを○、まとまりにくいものを×の3段階で評価した。
[飲み込みやすさ]
飲食品の飲み込みやすさ(嚥下のしやすさ)を官能評価した。官能評価は、非常に飲み込みやすいものを◎、飲み込みやすいものを○、飲み込みにくいものを×の3段階で評価した。
[付着感]
飲食品を飲み込むときの、咽頭への食品の付着感を官能評価した。官能評価は、付着感が非常に小さいものを◎、付着感が小さいものを○、付着感が大きいものを×の3段階で評価した。
表3に示すように、冷感を有するエステル化合物(エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート、及びメンチルラクテート)及び増粘多糖類を含有する飲食品(実施例1−1及び1−2の糊料製剤を含有する飲食品)は、増粘多糖類を含有し、冷感を有するエステル化合物を含有しない飲食品(比較例1の糊料製剤を含有する飲食品)に比べて、喫食時にまとまり感があり、飲み込みやすく、また咽頭への付着感が小さかった。

Claims (6)

  1. 冷感を有するエステル化合物を含有することを特徴とする、嚥下反射促進剤。
  2. 前記冷感を有するエステル化合物として、エチル−3−(p−メンタン−3−カルボキサミド)アセテート、メンチルラクテート、メンチルサクシネート、メンチルグルタレート、メンチル−3−ヒドロキシブチレート、メンチルアセトアセテート、メンチルピロリドンカルボキシレート及びメンチルエチレングリコールカルボネートからなる群から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の嚥下反射促進剤。
  3. 更に、増粘多糖類を含有する、請求項1又は2に記載の嚥下反射促進剤。
  4. 請求項1又は2に記載の嚥下反射促進剤、並びに増粘多糖類を含有する、飲食品用の糊料製剤。
  5. 前記増粘多糖類として、キサンタンガム、グァーガム、カラギナン及びペクチンからなる群から選択される1種以上を含有する、請求項4に記載の飲食品用の糊料製剤。
  6. 前記嚥下反射促進剤1質量部に対する、前記増粘多糖類の含量が3.5質量部以上である、請求項4又は5に記載の飲食品用の糊料製剤。

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