JP6452475B2 - 多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置、評価用試料作製方法、及び評価方法 - Google Patents

多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置、評価用試料作製方法、及び評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置、評価用試料作成方法、及び評価方法に関する。また、本発明は該評価方法に基づいて決定された無機材料を部材に用いた多結晶シリコン製造装置、該多結晶シリコン製造装置を用いた多結晶シリコンの製造方法、及び該製造方法で得られる多結晶シリコンに関する。
従来から、半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用される高純度な多結晶シリコンを製造する方法のひとつとして、ジーメンス法と呼ばれる方法がある。この方法は、底盤をベルジャーで覆うことにより形成された反応室の内部にシリコン芯線を配置し、該シリコン芯線に通電することによってシリコン芯線をシリコンの析出温度に加熱し、ここにシラン系化合物と水素等の還元性ガスとを供給することによってシリコンをシリコン芯線上に析出させ多結晶シリコンロッドを得る方法である。この方法は、高純度な多結晶シリコンが得られることが特徴であり、最も一般的な方法として工業的に実施されている。
半導体あるいは太陽光発電用ウェハーの原料として使用される多結晶シリコンは、不純物濃度の低い高純度なものである必要があり、具体的には、半導体用では比抵抗が1000Ωcm以上の高抵抗のものであることが求められ、太陽光発電用ウェハー用では300Ωcm以上が求められる。ここで、多結晶シリコンへの混入が懸念される不純物としては、主にP、BなどのドーパントやFe、Ni、Crなどの金属が挙げられる。
これまでに、これらの不純物が、多結晶シリコンに取り込まれないようにするために、様々な技術が検討されている。
例えば、原料由来の不純物の混入を低減させるために、原料であるシラン系化合物を精製する技術が数多く開示されている(例えば特許文献1)。
一方、これらの不純物は、原料以外にも多結晶シリコン製造装置から混入する恐れもある。即ち、多結晶シリコン製造過程では、シリコン芯線を加熱する際、そして、シリコン芯線を通電して化学気相成長が進む際、反応室内は非常に高温となる。更に、化学気相成長が進む間、反応室内は、反応性ガスと反応により生成した副生成ガス(シラン系化合物のガス、水素ガス、テトラクロロシラン、及び、塩化水素等)に高温下で曝されることとなり、ベルジャー炉の内壁の炉材やベルジャー内部に設置される電極、ノズル、ホルダー等の多結晶シリコン製造装置に用いられる部材には、一般にステンレス鋼、カーボンといった無機材料が用いられるが、これらの無機材料が、高温下で反応性ガス及び副生成ガスと接触した場合、不純物の生成・放出、金属シリサイドの析出、無機材料の劣化が生じ、得られる多結晶シリコンの不純物濃度が増大する恐れがある。
そこで、多結晶シリコン製造装置由来の不純物の混入を低減させる技術も検討されている。例えば、特許文献2には、原料ガスを供給するためのカーボン製のノズルから発生する不純物が、原料ガスに混入することを防ぐために、コーティング層で被覆されたノズルが開示されている。また、特許文献3には、多結晶シリコンの製造装置に用いられるカーボン部品由来の不純物がシリコンロッド内に取り込まれることを防ぐために、多結晶シリコン製造用カーボン部品として使用されるカーボン部品を精製する方法が開示されている。
特許第5368909号 特許第5182608号 特許第5428692号
しかしながら、これらの手法で得られた多結晶シリコン製造装置の部材に用いられる無機材料が実際に多結晶シリコンの純度にどの程度影響を及ぼすのか、多結晶シリコン製造用部材と得られる多結晶シリコンの純度の関係を調べるためには、実際にその無機材料を用いたベルジャー炉を作製し、該ベルジャー炉で多結晶シリコンを析出させ、析出した多結晶シリコンを分析する必要があり、多大な手間及びコストを要する。
また、一般に、多結晶シリコンの製造過程では、多結晶シリコンの析出効率の最適化やロッド外観の最適化を目的として、炉内温度や炉から発生する排ガスの温度を測定し、予熱ヒーター及びシリコン芯線への通電をプログラムに従って電流制御することにより温度管理を行うが、ベルジャー炉の各部材からの不純物混入を低減させることを目的とした温度管理はされていなかった。
よって、多結晶シリコン製造装置の各部材に用いる無機材料は、融点や純度の高い部材を選択したり、コーティングを施した部材を選択したりすることにより、汚染の可能性が低いものを選択するほかなく、実際にその無機材料を選択した部材を用いた多結晶シリコン製造装置において、各部材に用いられた無機材料が、得られたポリシリコンの純度にどの程度影響を及ぼすかの正確な評価はできていなかった。
従って、本発明の目的は、ジーメンス法による多結晶シリコンの製造において、得られる多結晶シリコンへの不純物の混入が少ない無機材料を多結晶シリコン製造装置の部材として選択するための、無機材料評価用試料作製装置、評価用試料作製方法、及び評価方法を提供することにある。
また、本発明の目的は該評価方法に基づいて決定された無機材料を部材に用いた多結晶シリコン製造装置、該多結晶シリコン製造装置を用いた多結晶シリコンの製造方法、及び該製造方法で得られる不純物の混入が少ない多結晶シリコンを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、多結晶シリコン製造装置に用いる部材の候補となる無機材料を、多結晶シリコン製造装置内を再現した環境下に設置し、設置した無機材料に接触した原料ガスを用いて単結晶シリコンを析出させ、その単結晶シリコン中の不純物量を評価することで、多結晶シリコン製造装置の部材に用いる無機材料の選定、及び製造条件の設定の最適化を行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、第一の本発明は、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置であって、
評価対象とする無機材料を支持するための無機材料支持手段、及び加熱手段を具えた無機材料加熱部、
加熱手段、及び単結晶シリコンを析出させるためのシリコン芯線を支持するシリコン芯線支持手段を有する反応室、
並びに、
無機材料加熱部に、原料ガスである
A)シラン系化合物、及び
B)還元性ガス
を供給する原料ガス供給口及び供給手段を有し、
前記原料ガス供給口と前記反応室の間に、前記無機材料加熱部を有することを特徴とする無機材料評価用試料作製装置である。
また、第二の本発明は、原料ガスである
A)シラン系化合物、及び
B)還元性ガス、
を加熱させた無機材料と接触させた後に、シリコン芯線上に単結晶シリコンを析出させる、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製方法である。
第二の本発明においては、第一の本発明の試料作製装置を用いることが好ましい。
また、第三の本発明は、第二の本発明又は第三の本発明の試料作製方法で作製した無機材料評価用試料の不純物濃度を測定することによる、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価方法である。
第三の本発明は、測定する不純物濃度が、P、B、C、及び無機材料を構成する主たる元素の濃度であることが好ましい。
第四の本発明は、第三の本発明の評価結果に基づいて選択された無機材料を、反応室内部で使用する部材として用いることを特徴とする、多結晶シリコン製造装置である。第四の本発明は、反応室内部で使用する部材が、反応室の内壁、底盤、ノズル及び/又は電極であることが好ましい。
第五の本発明は、第四の本発明の製造装置を用いることを特徴とする多結晶シリコン製造方法である
更に、第の本発明は、第四の本発明の製造装置を用いて、第三の本発明の評価結果に基づいて決定した運転条件で、多結晶シリコンを製造する多結晶シリコン製造方法である。

本発明は、多結晶シリコン製造装置の部材に用いる無機材料を、実際の多結晶シリコン製造環境に近い環境下に置き、実際に該無機材料に接触した原料ガスを用いて単結晶シリコンを析出させ、その不純物量を評価することで、各無機材料を用いた多結晶シリコン製造装置によって得られる多結晶シリコンに及ぼす該無機材料の影響を直接評価することができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、実際に各無機材料を用いた実機サイズの部材を作ったり、実機での多結晶シリコンの生産を行ったりすることなく、容易に評価用の試料を作製することができるため、様々な無機材料を低コストかつ少ない手間で評価することができる。
多結晶シリコンは、そのままではフォトルミネセンス法やフーリエ変換赤外分光法といった、低濃度の不純物濃度評価を行うことができないが、本発明では、無機材料評価用試料として単結晶シリコンを得ることができ、該単結晶シリコンを分析に用いるため、無機材料評価用試料の不純物濃度を評価する際、得られた試料に簡易な前処理を施すことで、フォトルミネセンス法による分析やフーリエ変換赤外分光法による分析に供することができ、低濃度の不純物濃度評価を容易に低コストで行うことができる。
さらに、本発明による評価結果に基づいて選択された無機材料を部材に用いた多結晶シリコン製造装置は、多結晶シリコン製造装置の部材由来の汚染が少ない多結晶シリコンを得ることができる。
また、上記多結晶シリコン製造装置を用い、本発明による評価結果に基づいて決定した運転条件で多結晶シリコンを製造することで、選択した無機材料に応じて最適な運転条件で多結晶シリコンを製造することができ、多結晶シリコン製造装置の部材由来の汚染が少ない多結晶シリコンを得ることができる。
図1に装置の一態様の概略を示す断面図を示す。 図2に装置の一態様のライン図を示す。
本発明のジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、本発明を実施するために好適な一態様を示すものであって、本発明は図1及び図2に限定されるものではない。
[装置の概要]
図1に示すように、本発明の無機材料評価用試料作製装置1は、評価対象とする無機材料を配置・加熱するための無機材料加熱部2、及び単結晶シリコンを析出させるための反応部3を有する。また、本発明の無機材料評価用試料作製装置1は、原料ガス供給手段4より供給された原料ガスを、無機材料加熱部2に供給するための原料ガス供給口5、無機材料加熱部2を通過した原料ガスを反応部3に供給するための原料ガス供給路6、及び反応部3を通過した未反応の原料ガスを排気するための原料ガス排出路7が設けられる。無機材料加熱部2は、原料ガス供給口5と反応部3の間に位置する。
また、無機材料加熱部2は、評価対象とする無機材料を支持する無機材料支持部9、及び無機材料を加熱する加熱手段10を有し、反応部3は、単結晶シリコンを析出させるためのシリコン芯線を支持するシリコン芯線支持部16、及び加熱手段12を有する。
[無機材料加熱部]
無機材料加熱部2は、多結晶シリコン製造プロセスにおいて、多結晶シリコン製造装置の部材が暴露される環境を再現した加熱炉である。
上記したように、無機材料加熱部2には、原料ガス供給口5より原料ガスが供給される。また、無機材料加熱部2に供給された原料ガスは、加熱された無機材料8と接触した後、原料ガス供給路6により反応室へ導かれ、単結晶シリコンの析出に供される。よって、原料ガスが無機材料と接触した際に無機材料から原料ガスに不純物が混入した場合、該不純物の一部は反応部で析出する単結晶シリコンに混入する。
無機材料加熱部2は、評価対象とする無機材料を支持する無機材料支持部9、及び無機材料を加熱する加熱手段10を有する。
無機材料支持部9は、先端部にねじ山を有し、評価対象とする無機材料8にねじ穴加工を施し、これを無機材料支持部9にねじ止めにより固定することで支持が可能であることが好ましい。無機材料支持部9は加熱されないため、構成する材料は、不純物を発生せず、無機材料を支持するのに十分な強度を有するものであれば制限されないが、ステンレス鋼等を用いることができ、オーステナイト系ステンレス鋼が特に好ましい。
一般に、多結晶シリコン製造装置の部材は、その製造プロセスにおいて、100℃〜700℃に加熱されるため、加熱手段10は評価対象となる無機材料をこの温度以上に加熱することが可能であるように構成されることが好ましい。
加熱手段10は、一般に用いられる加熱手段であれば制限されず、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、光加熱方式のいずれを用いてもよいが、抵抗加熱方式が好ましい。抵抗加熱方式の場合、ヒーターを構成する材料は、所望の温度まで加熱可能であれば、制限されないが、例えばタングステンフィラメントを使用することができる。
無機材料8及び無機材料支持部9は、筒形状の無機材料加熱室17内に設置され、その外周に加熱手段10を有することが好ましい。無機材料加熱室17を構成する材料は、加熱温度及び原料ガス存在雰囲気で不純物を発生しないものであれば制限されず、例えば、石英等を用いることができる。また、加熱手段10による熱を輻射して効率的に無機材料を加熱するために、加熱手段10の内側に、熱輻射率の高い材料でコーティングを施すこともできる。コーティングは、例えば金メッキにより施すことができる。
無機材料加熱部2は、適宜、冷却水が流通可能な構造とし、無機材料加熱部2自体の過熱や変形を抑制する手段を具えてもよい。
また、無機材料加熱部2は、支持された無機材料8の温度を測定する測温手段11を有することが好ましい。無機材料測温方法は、一般に用いられる方法であれば制限されず、例えば、熱電対、放射温度計のいずれを用いてもよいが、無機材料の加熱温度範囲、及び精度等を考慮すれば、熱電対が好ましい。この場合、測温手段11は無機材料8に接するように設置されることが好ましい。
[反応部]
反応部3では、原料ガス供給路6により供給される、無機材料加熱部で加熱された無機材料と接触した原料ガスを用いて、単結晶シリコンを析出させる。
反応部3は、加熱手段12及び単結晶シリコンを析出させるためのシリコン芯線支持部16を有する。
一般に、ジーメンス法による多結晶シリコンの製造の際、芯線は約800〜1200℃に加熱されるため、反応室18及び加熱手段12はこの温度以上とすることが可能であるように構成されることが好ましい。
加熱手段12は、加熱手段10と同様、一般に用いられる加熱手段であれば制限されず、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、光加熱方式のいずれを用いてもよいが、抵抗加熱方式が好ましい。抵抗加熱方式の場合、ヒーターを構成する材料は、所望の温度まで加熱可能であれば制限されないが、例えばタングステンフィラメントを使用することできる。
単結晶シリコンを析出させるためのシリコン芯線13は、シリコン芯線支持部16により支持されている。シリコン芯線は、先端部にねじ山を有するシリコン芯線支持部に、チャック14を介し、ねじ止めにより固定することで支持が可能である。シリコン芯線支持部16を構成する材料は、加熱温度及び原料ガス存在雰囲気で不純物を発生せず、無機材料を支持するのに十分な強度を有し、かつシリコン芯線から後述する測温手段15への伝熱を阻害しないものであれば制限されないが、ステンレス鋼等を用いることができる。チャック14を介する場合、チャックの素材には、石英等の加熱温度及び原料ガス存在雰囲気で不純物を発生せず、無機材料を支持するのに十分な強度を有する材料を用いることができる。また、後述する測温手段15は、シリコン芯線と一緒に、チャック14を介しシリコン芯線支持部16に固定することが好ましい。
ここで、シリコン芯線とは、シリコンから成る単結晶シリコン被析出体であればその形状は制限されず、棒(多角柱、円柱)状、板状等の単結晶シリコンを用いることができる。
シリコン芯線13及びチャック14は、筒形状の反応室18内に設置され、その外周に加熱手段12を有することが好ましい。反応室18を構成する材料は、加熱温度及び原料ガス存在雰囲気で不純物を発生しないものであれば制限されないが、例えば石英等を用いることができる。また、加熱手段12による熱を輻射して効率的にシリコン芯線を加熱するために、加熱手段12の内側に、熱輻射率の高い材料でコーティングを施すこともできる。コーティングは、例えば金メッキにより施すことができる。
反応部3は、適宜、冷却水が流通可能な構造とし、反応部3自体の過熱や変形を抑制する手段を具えてもよい。
また、反応部3は、反応室温度を測定する測温手段15を有することが好ましい。測温方法は、一般に用いられる方法であれば制限されず、例えば、熱電対、放射温度計のいずれを用いてもよいが、無機材料の加熱温度範囲、及び精度等を考慮すれば、熱電対が好ましい。
[原料ガス供給手段]
原料ガスは、原料ガス供給口5から供給される。原料ガスとしてはシラン系化合物及び還元性ガスが用いられる。
また、実際の多結晶シリコン製造装置内の環境をより正確に再現するために、実際の多結晶シリコン製造工程に用いるシラン系化合物及び還元性ガスに加え、多結晶シリコン製造工程で副生する可能性のあるガス(シラン系化合物のガス、水素ガス、テトラクロロシラン、ポリマー、及び、塩化水素等)を原料ガスとして適宜追加して流すこともできる。
原料ガスは、多結晶シリコン製造装置内の環境をより正確に再現するために、あらかじめ混合、加熱した上で無機材料加熱部2に供給されることが好ましい。例えば、原料ガスとしてトリクロロシラン及び水素ガスを用いる場合、図2に示すように、両者を予め混合した上で、加熱したラインを通過させ加熱した後、無機材料加熱部2に供給することが好ましい。これは、トリクロロシラン等の一部の原料ガスはその沸点が室温より高いため、室温では液体であるが、液体のまま無機材料加熱部に供給された場合、液自体が冷却効果を持ってしまうこと、及び気相反応とならないことにより、実際の多結晶シリコン製造装置内の環境を正確に再現できないためである。そのため、原料ガス供給口5に続くラインは、装置に原料ガスを供給する前にリボンヒータ等の加熱手段を有することが好ましい。この場合、原料ガスが十分にガス状態を保つことができる温度が好適であり、例えばトリクロロシランの場合は35℃〜100℃に加熱することが好ましく、更には、70℃〜100℃とすることが好ましい。
原料ガスの供給量は、装置のサイズや多結晶シリコンの製造条件に合わせて適宜調整を行う。原料ガスの供給量はマスフローコントローラによって調整されることが好ましい。
原料ガス供給口5、原料ガス排出路7は、原料ガスであるシラン系化合物及び還元性ガス等に腐食されない材料であれば制限されず、ステンレス鋼等を用いることができオーステナイト系ステンレスが好適である。
また、原料ガス供給路6は、原料ガスであるシラン系化合物及び還元性ガス等に腐食されず、加熱温度及び原料ガス存在雰囲気で不純物を発生しない材料であれば制限されず、温度・雰囲気を考慮すれば、石英等が好適である。
[無機材料評価用試料作製方法]
次に、無機材料の評価用試料作製方法について説明する。
無機材料の評価用試料は、まず、原料ガスであるA)シラン系化合物、及びB)還元性ガスを、加熱させた無機材料と接触させた後に、該原料ガスを用い、シリコン芯線上に単結晶シリコンを析出させることにより作製する。
原料ガスには、シラン系化合物及び還元性ガスが用いられる。シラン系化合物には、モノシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシランなどシラン及びクロロシラン類のガスを使用することができ、一般的に、トリクロロシランガスが好適に使用される。また、上記還元性ガスとしては、通常、水素ガスが好適に使用される。
また、上記したように、実際の多結晶シリコン製造装置内の環境をより正確に再現するために、多結晶シリコン製造工程で副生する可能性のあるガス(シラン系化合物のガス、水素ガス、テトラクロロシラン、ポリマー、及び、塩化水素等)を適宜追加して流すこともできる。
無機材料の評価用試料の作製には、上記無機材料評価用試料作製装置を用いることが好ましい。
原料ガスは、予め混合、加熱した上で、無機材料加熱部に供給することが好ましい。供給する原料ガスの温度は、原料ガスが十分にガス状態を保つことができる温度が好適であり、例えばトリクロロシランの場合は35℃〜100℃に加熱することが好ましく、更には、70℃〜100℃とすることが好ましい。
無機材料加熱部に配置された無機材料は、多結晶シリコンの製造プロセスにおいて、各部材が達する可能性がある温度に加熱されることが好ましく、その温度は各部材の位置や製造条件にもよるが、例えば、反応室内壁に用いる部材、底盤に用いる部材、ノズルに用いる部材、及び電極に用いる部材を想定する場合は100〜700℃とすることが好ましい。
無機材料加熱部に供給された原料ガスは、加熱された無機材料と接触しながら無機材料加熱部を通過した後、反応室へ供給される。反応室に供給された原料ガス(シラン系化合物のガス、還元性ガス、副生する可能性のあるガス)は、還元反応によって加熱されたシリコン芯線の表面に単結晶シリコンを生成させる。
単結晶シリコンを析出させる温度は、適宜実際の製造条件に合わせたものとするが、800〜1200℃が好ましく、1000〜1200℃とするのが更に好ましい。
本発明において、析出させる単結晶シリコンの厚みは、装置のサイズや性能に合わせ、適宜調整するものとするが、試料評価の信頼性及び試料作製の簡易性を考慮すれば2〜5mmが好ましい。
以上のようにして、一定の厚みの単結晶シリコンが得られた段階で、反応性ガスの供給、並びに無機材料加熱部及び反応室の加熱を停止し、反応室から未反応のシラン系化合物のガス、還元性ガス、及び副生成したテトラクロロシランや塩化水素等を排気した後、反応室を開放し、単結晶シリコンを取り出す。
[評価方法]
まず、得られた単結晶シリコンをシリコン芯線ごとカッティングする。カッティングの方法としては、クリスタルカッターや平面研削機等一般の加工機器を用いることができる。カッティングにより、シリコン芯線が棒状の場合、棒状のカッティングされた試料を得ることができる。カッティングされた試料は、断面の外観及び抵抗値から、シリコン芯線部と単結晶シリコン析出層を区別することができる。カッティングされた試料のシリコン芯線部を回転研磨機やペーパー研磨機等を用い削り落とし、単結晶シリコン析出層のみからなる試料を得る。得られた単結晶シリコン析出層は、上述のクリスタルカッター等の一般の加工機器を用い、適宜分析に適したサイズに調整する。
得られた単結晶シリコン析出層を分析して、不純物濃度を測定して評価する。不純物濃度は、P、B、金属、C等の濃度分析を行えばよい。分析方法としては公知の各種方法を用いることができる。
P及びBを分析する場合には、フォトルミネセンス法(PL法)が一般的である。PL法による分析を行う場合、上述の方法で得られた単結晶シリコン析出層の表面を研磨し、鏡面を出し分析に供し、発光波長から不純物の特定を、発光強度から不純物の定量を行う。同様の方法で、Al及びAsも分析を行うことが可能である。
また、金属を分析する場合には、誘電結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)が一般的である。ICP−MSによる分析を行う場合、上述の方法で得られた単結晶シリコン析出層をフッ硝酸に溶解し、蒸発乾固させ、硝酸液に溶解した溶液を分析に供する。分析対象とする金属には、評価対象とする無機材料を構成する主たる元素を含むことが好ましい。また、分析対象とする無機材料に含まれる可能性のある金属や、多結晶シリコンに含まれる可能性のある金属を含むことが好ましい。具体的には、Na、Al,K、Cr、Fe、Ni,Cu、Mg、Zn、Cd、Pb等を挙げることができる。
Cを分析する場合には、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)が一般的である。FT−IR法で分析を行う場合、上述の方法でカッティングした単結晶シリコン析出層の表面を研磨し、鏡面を出した後分析に供する。炭素の定量は、Si−Cの吸収波長のピーク強度を定量することにより行うが、Si−Cの吸収波長はSi−Siの吸収波長と重複するため、予めSi−Cの吸収がない標準試料を準備し、標準試料とのピークの差をとることにより定量を行う。
上記評価方法により評価された無機材料のうち、得られた無機材料評価用試料である単結晶シリコン中の不純物濃度が少ない無機材料を多結晶シリコン製造装置の部材として用いることが好ましい。
不純物濃度は、所望する多結晶シリコンの純度によるため一該には言えないが、半導体用途の場合には、PL法による分析で、P<0.1ppba、B<0.01ppba、Al<0.01ppba、As<0.01ppbaであることが好ましく、さらには、P<0.05ppba、B<0.005ppba、Al<0.005ppba、As<0.005ppbaであることが好ましい。また、ICP−MSによる分析で各金属の濃度が、それぞれ200pptw未満であることが好ましく、さらには、100pptw未満であることが好ましく、さらには80pptw未満であることが好ましい。また、FT-IRによる分析でC<0.05ppmaであることが好ましく、さらには、C<0.025ppmaであることが好ましい。
[多結晶シリコン製造装置、多結晶シリコン製造方法及び多結晶シリコン]
上述の評価結果に基づいて選択された無機材料を、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置の反応室内部で使用する部材として用いることが好ましい。反応室内部で使用する部材としては、反応室の内壁、底盤、ノズル及び/又は電極を挙げることができる。
例えば、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置の反応室内壁に用いる部材を想定して無機材料の評価を行った場合、評価対象とする無機材料を、反応室内壁が達する可能性のある温度に加熱し、該加熱された無機材料と接触した原料ガスを用いて析出させた単結晶シリコンに含まれる不純物濃度が、上記好ましい濃度範囲内である無機材料を反応室内壁に用いる部材として選択することが好ましい。
上記した判断基準に基づいて選択された無機材料を部材として用いた多結晶シリコン製造装置を用いて多結晶シリコンを製造すれば、多結晶シリコン製造装置由来の汚染が少ない多結晶シリコンを得ることができる。多結晶シリコン中の不純物濃度は、多結晶シリコン製造装置由来の汚染以外にも、原料ガスの不純物濃度等その他の因子にも依存するため一該には言えないが、本発明の多結晶シリコン製造装置を用いて製造された多結晶シリコンは、PL法による分析で、P<0.1ppba、B<0.01ppba、Al<0.01ppba、As<0.01ppba、ICP-MSによる分析で各金属の濃度を、それぞれ200pptw未満、FT−IRによる分析でC<0.05ppmaとすることが可能である。
また、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置の反応室内壁に用いる部材を想定して無機材料の評価を行った場合、評価対象とする無機材料を種々の温度で加熱して、各温度で加熱された無機材料と接触した原料ガスを用いて析出させた無機材料評価用試料を複数作製し、評価対象とした無機材料を反応室内壁として用いた多結晶シリコン製造装置により、析出した多結晶シリコンに含まれる不純物濃度が上記好ましい濃度範囲内となるような運転条件で多結晶シリコンの製造を行うことが好ましい。
上記したように、多結晶シリコン中の不純物濃度は、多結晶シリコン製造装置由来の汚染以外にも、原料ガスの不純物濃度等その他の因子にも依存するため一該には言えないが、上記運転条件で製造した多結晶シリコンは、PL法による分析で、P<0.1ppba、B<0.01ppba、Al<0.01ppba、As<0.01ppba、ICP-MSによる分析で各金属の濃度を、それぞれ200pptw未満、FT−IRによる分析でC<0.05ppmaとすることが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
(1)P、B、Al及びAs濃度の測定方法
得られた単結晶シリコンをクリスタルカッターでカッティングし、カッティングされた試料のシリコン芯線部を回転研磨機及びペーパー研磨機等を用い削り落とし、単結晶シリコン析出層のみからなる試料を得た。得られた単結晶シリコン析出層を平面研磨した後、鏡面研磨し、フォトルミネセンス法(PL法)(メーカー:(株)堀場製作所、型番:Photoluminor-D、波長領域1.076μm〜1.142μm)でP、B、Al及びAs濃度の分析を行った。
(2)金属濃度の測定方法
(1)と同様の方法で得られた単結晶シリコン析出層をフッ硝酸に溶解し、蒸発乾固させ、硝酸液に溶解した溶液をICP−MS(メーカー:アジレント・テクノロジー(株)、型番:Agilent7500)で分析した。
実施例1
エッチング洗浄をした7mm×7mm×140mmの単結晶シリコン芯線13、チャック14を反応室18内のシリコン芯線支持部16に、アルコール洗浄をした無機材料8を、無機材料加熱室17内の無機材料支持部9にセットした。無機材料8にはSUS304Lを用いた。原料ガス供給口5から水素を流入させ、加熱手段10により無機材料8を200℃まで、加熱手段12により芯線13を1050℃に達するまで加熱した。それぞれの温度に達したら、水素に加えてトリクロロシランガスを原料ガス供給口5から流入させた。水素とトリクロロシランのモル比は、水素:トリクロロシラン=10:1とした。その状態で4時間析出を行った。析出した単結晶シリコンを、上述の(1)〜(2)の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。
実施例2
無機材料8の加熱温度を500℃とする以外は、実施例1と同様に評価用試料を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。
実施例3
評価試料をNi201とし、無機材料8の加熱温度を500℃とした以外は、実施例1と同様に評価用試料を作製し、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1及び表2に示す。
表1及び表2に示されるように、各不純物濃度は評価対象とする試料及び温度によって異なった。評価対象とする無機材料をSUS304Lとした場合の方が、無機材料をNi201よりも、得られた無機材料評価用試料である単結晶シリコン中のP、B濃度、重金属濃度が低かったため、SUS304Lの方が、多結晶シリコン製造装置に用いる部材として適すると考えられる。また、同じSUS304Lでも加熱温度を低く保てばP濃度を低減できることが明らかとなった。
Figure 0006452475
Figure 0006452475
1・・・無機材料評価用試料作製装置
2・・・無機材料加熱部
3・・・反応部
4・・・原料ガス供給手段
5・・・原料ガス供給口
6・・・原料ガス供給路
7・・・原料ガス排出路
8・・・無機材料
9・・・無機材料支持部
10・・・加熱手段
11・・・測温手段
12・・・加熱手段
13・・・シリコン芯線
14・・・チャック
15・・・測温手段
16・・・シリコン芯線支持部
17・・・無機材料加熱室
18・・・反応室

Claims (9)

  1. ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製装置であって、
    評価対象とする無機材料を支持するための無機材料支持手段、及び加熱手段を具えた無機材料加熱部、
    加熱手段、及び単結晶シリコンを析出させるためのシリコン芯線を支持するシリコン芯線支持手段を有する反応室、
    並びに、
    無機材料加熱部に、原料ガスである
    A)シラン系化合物、及び
    B)還元性ガス
    を供給する原料ガス供給口及び供給手段を有し、
    前記原料ガス供給口と前記反応室の間に、前記無機材料加熱部を有することを特徴とする無機材料評価用試料作製装置。
  2. 原料ガスである
    A)シラン系化合物、及び
    B)還元性ガス、
    を加熱させた無機材料と接触させた後に、シリコン芯線上に単結晶シリコンを析出させる、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製方法。
  3. 請求項1に記載の試料作製装置を用い、
    原料ガスである
    A)シラン系化合物、及び
    B)還元性ガス、
    を前記無機材料加熱部において加熱させた無機材料と接触させた後に、前記反応室に供給し、
    加熱された反応室内に配置されたシリコン芯線上に単結晶シリコンを析出させる、
    ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価用試料作製方法。
  4. 請求項2又は3に記載の試料作製方法で作製した無機材料評価用試料の不純物濃度を測定することによる、ジーメンス法による多結晶シリコン製造装置に用いる無機材料の評価方法。
  5. 測定する不純物濃度が、P、B、C、及び無機材料を構成する主たる元素の濃度である、請求項4に記載の評価方法。
  6. 請求項4又は5に記載の評価結果に基づいて選択された無機材料を、反応室内部で使用する部材として用いることを特徴とする、多結晶シリコン製造装置。
  7. 請求項6に記載の反応室内部で使用する部材が、反応室の内壁、底盤、ノズル及び/又は電極であることを特徴とする多結晶シリコン製造装置。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の製造装置を用いることを特徴とする多結晶シリコン製造方法。
  9. 請求項6又は請求項7に記載の製造装置を用いて、請求項4又は5に記載の評価方法による評価結果に基づいて決定した運転条件で、多結晶シリコンを製造する多結晶シリコン製造方法。
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