JP5308288B2 - 多結晶シリコン製造用反応炉、多結晶シリコン製造システム、および多結晶シリコンの製造方法 - Google Patents

多結晶シリコン製造用反応炉、多結晶シリコン製造システム、および多結晶シリコンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は多結晶シリコンの製造技術に関し、より詳細には、反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の反応炉内壁からのドーパント不純物混入を低減して高純度の多結晶シリコンの提供を可能とする技術に関する。
半導体製造用単結晶シリコンの原料となる高純度の多結晶シリコンを製造する手法として、シーメンス法と流動床反応法が知られている。シーメンス法は、クロロシランを含む原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させ、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法で成長させる方法である。また、流動床反応法は、原料であるモノシランやトリクロロシランを供給して、流動ガス中で気相析出させて粒状ポリシリコンを得る方法である。
ところで、多結晶シリコンを製造させる際、シリコンの析出反応に用いられる反応容器の内壁面から不純物ガスが放出され、当該不純物ガスが多結晶シリコン中に取り込まれてその品質を低下させてしまうという現象が知られている。鋼製の反応容器を用いる場合、その内壁面の温度が400℃以上になると、トリクロロシランなどのシリコン原料ガスを水素ガスで希釈したプロセスガスに接する反応容器の内壁面が徐々に腐食され、内壁面を構成する鋼の成分元素のみならず、当該鋼に含有されている不純物元素も反応雰囲気中に放出される。このような不純物元素がシリコン結晶中でアクセプターやドナーとして作用する燐、硼素、アルミニウム、砒素などのドーパント不純物元素である場合には、多結晶シリコンの品質を著しく低下させてしまう結果となる。
特開平8−259211号公報(特許文献1)には、かかる問題に鑑み、アウトガスを放出し難い材料で作製した反応容器内でシリコンを析出させることにより高純度の析出シリコンを得る技術が開示されている。具体的には、ニッケルを28重量%以上含有する耐熱合金は600℃以下の温度ではアウトガスを殆ど放出しないという知見に基づき、ニッケルを28重量%以上含有する耐熱合金よりなる内壁を有する反応容器内でシラン類の分解・還元反応を行うことにより、得られる多結晶シリコンの高純度化を図るというものであり、上述の「ニッケルを28重量%以上含有する耐熱合金」として、インコロイ800、インコネル600、インコネル601、インコロイ825、インコロイ801、ハステロイB、ハステロイCなどが例示されている。
特開平8−259211号公報
半導体製造用の多結晶シリコンは極めて高純度であることが要求され、近年ではドーパント不純物総量は原子比で100ppt(ppt・atomic)以下であることが必要である。しかしながら、本発明者らが行った一連の実験によれば、例えばハステロイCからなる内壁面を有する反応容器内でシーメンス法により多結晶シリコンを析出させた場合でも、多結晶シリコンの析出反応の進行に伴い反応容器の内壁温度が上昇するにつれて多結晶シリコン中に取り込まれるドーパント不純物量が増加してしまうことが判明した。特に、反応容器の内壁温度が370℃を超える条件で析出反応が行なわれると、多結晶シリコン中に取り込まれるドーパント不純物の総量は100ppt・atomicを超えてしまうことが明らかとなった。
特許文献1には、従来技術として、反応炉の耐食性を得るため、反応炉が水冷されていることを開示しているが、室温付近の水を供給して反応炉を冷却する周知技術を記載するにすぎない。反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の反応炉内壁からのドーパント不純物の混入を低減し、高純度の多結晶シリコンを得るためには、従来提唱されていた上限温度よりも低く管理する必要がある。
そこで、本発明の課題は、高純度の多結晶シリコンを得ると共に、多結晶シリコンの製造するために供給した熱を効率的に回収する技術を提供することにある。
上述の課題を解決するために、本発明の多結晶シリコン製造用反応炉は、内壁の炉内表面側に、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、およびシリコン(Si)の含有質量%をそれぞれ[Cr]、[Ni]、および[Si]としたときに、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の第1の合金材料からなる耐食層が設けられ、更に前記反応炉には標準沸点以上の加圧冷却水を循環可能な冷却水路が配されており、前記耐食層と前記冷却水流路の間に、前記第1の合金材料よりも高い熱伝導率の第2の合金材料からなる熱伝導層が設けられている。好ましくは、前記R値が60%以上である。
例えば、前記第1の合金材料のCr、Ni、およびSiの含有質量%はそれぞれ、[Cr]:14.6〜25.2質量%、[Ni]:19.6〜77.5質量%、[Si]:0.3〜0.6質量%の範囲内にある。
また、前記第2の合金材料は、例えば、単一鋼材又は複数種類の金属を張り合わせたクラッド鋼材である。
本発明の多結晶シリコン製造システムは、上記多結晶シリコン製造用反応炉と、前記反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の炉内側表面温度を370℃以下に制御し得る温度制御機構とを備えている。
本発明の多結晶シリコンの製造方法は、炉内表面側が、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びシリコン(Si)の含有質量%をそれぞれ[Cr]、[Ni]、および[Si]としたときに、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の合金材料からなる反応炉内壁の炉内側表面温度を100℃以上370℃以下に制御した状態で前記内壁内部にシリコン原料ガスを供給して多結晶シリコンの析出反応を行なうことを特徴とする。
好ましくは、前記R値が60%以上となる組成の合金材料からなる反応炉内壁を使用し、前記反応炉内壁の炉内側表面温度を300℃未満に制御する。
本発明では、反応炉の内壁の炉内側に設けられる耐食層の材料として、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の合金材料を用いることとしたので、反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の反応炉内壁からのドーパント不純物の混入を低減し、高純度の多結晶シリコンを得るための技術を提供することができる。
さらに、耐食層と冷却水流路の間に第1の合金材料よりも高い熱伝導率の第2の合金材料からなる熱伝導層を設けることにより、多結晶シリコンを製造するために供給した熱を冷却水を介して効率的に回収することができる。冷却水を介して回収した熱は、例えばスチームとして再利用することができる。
本発明の多結晶シリコン製造システムの構成例を説明するための図である。 本発明の多結晶シリコン製造用反応炉の壁部の構造(内壁、外壁、および冷媒流路部)を説明するための断面図である。 Cr−Ni−Si系合金材料の耐食性の組成(含有質量%:R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si])依存性を説明するための図である。 Cr−Ni−Si系合金材料であるSUS310SおよびHastelloy Cからなる内壁の反応炉につき、多結晶シリコン析出工程終了直前における冷却媒体出口端側の内壁面温度と多結晶シリコン中に取り込まれたドーパント不純物濃度との関係を示す図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の多結晶シリコン製造システムの構成例を説明するための図で、この図では、多結晶シリコンをシーメンス法で析出させる多結晶シリコン製造システム100が例示されている。
反応炉10はベースプレート1上に設けられ、内部には、両端が電極2a、2bに接続されて通電可能とされた逆U字状のシリコン芯線5がセットされる。多結晶シリコン析出用のトリクロロシランガスなどの原料ガスや窒素ガス、水素ガス等のプロセスガスはガスノズル3から反応炉10内へと供給され、電極2a、2bからの電流供給により加熱されたシリコン芯線5の表面に多結晶シリコン6が気相成長により析出する。反応炉10内からのガス排気は排気口4から行なわれる。
反応炉10の下方からは加圧冷却水供給ポンプ21を介してスチームドラム20から冷却媒体としての標準沸点以上の加圧冷却水(熱水)15が、反応炉中の加圧冷却水を循環可能とされた流路に供給される。熱水15は反応炉10の上方から排出され、その圧力は、反応炉10の下流側に設けられた第1圧力制御部、すなわち、圧力指示調節計PIC22により検知され、調節弁23の開度を調節することにより圧力制御されて所定の圧力にまで減圧される。
高いエネルギーを持ったまま他の加熱にこの熱水15を使用しても良いが、より利用し易いスチームとするため、減圧された熱水15はスチームドラム20内にフラッシュされ、スチームを発生しながら冷却する。当該スチームの発生に伴って上昇したスチームドラム20内の圧力は第2圧力制御部、すなわち、圧力指示調節計PIC31で検知され、調節弁32を介してスチームの回収が行なわれる。このように冷媒の単位量当たりの持つエネルギーが高い状態で回収された冷却媒体は、温水よりも価値の高いスチームとして、別用途の加熱源として再利用することができる。
スチームドラム20内の熱水15の液面高さはレベル調節計LIC41により検知され、上述のスチーム回収により失われた熱水15に相当する量乃至は若干の過剰量の純水を、調節弁42の開度を調節することで補給する。冷却媒体である熱水の温度は、上述の熱水15が第1圧力制御部の圧力制御弁23を通過してスチームドラム20内にフラッシュされる際に冷却され、更に調節弁42を介して純水が供給されることによっても冷却されるが、スチームドラム20内の熱水の温度を決定するのは、第2圧力制御部による圧力調節である。このようにしてスチームドラム20内の温度制御された熱水15は、更に供給ポンプ21を介して反応炉10に循環される。
図2は、本発明の反応炉10の壁部の構造を説明するための断面図で、内壁11の炉外側、即ち、炉内側の内壁11と炉外側の外壁12との間に、冷却媒体としての熱水15を循環させるための耐圧性が確保された冷媒流路部13が、例えば螺旋状に設けられており、熱水15は反応炉10の下部から供給されて頭頂部から排出されることになる。
内壁11は、2層構造を有し、腐食性のプロセスガスに接する炉内側には、耐食性の高い合金材料からなる耐食層11aが設けられ、耐食層11aと冷却水流路13との間には、反応炉10内の熱を内壁面から冷却媒体流路13へと効率的に伝導させるための熱伝導層11bが設けられている。
この熱伝導層11bは、耐食層11aに用いられる合金材料よりも高い熱伝導率の合金材料からなり、例えば、SB鋼(ボイラ及び圧力容器用炭素鋼)やSGV鋼(中・常温圧力容器用炭素鋼)などの材料からなる。なお、熱伝導層11bは、単一鋼材からなるものに限定する必要はなく、複数種類の金属を張り合わせたクラッド鋼材からなるものとしてもよい。外壁12の材質は特に定める必要はないが、熱伝導層11bと同じ合金材料を用いてもよいし、SUS304等のステンレス鋼を用いることもできる。
耐食層に用いられる合金材料は、後述する理由により、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、およびシリコン(Si)の含有質量%をそれぞれ[Cr]、[Ni]、および[Si]としたときに、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の合金材料であり、好ましくは、R値が60%以上の合金材料を選択する。
以下に、上記組成の合金材料を選択することとした背景である腐食試験について説明する。
腐食試験は、検体となる各種合金材料を、縦30mm、横25mm、厚さ2mmの大きさに切断して試験片とし、その重量を精密秤量した後、試験炉として準備した石英炉の均熱部に吊り下げ、石英炉内に多結晶シリコン反応炉からの排気ガスを導入し、所定の温度および時間経過後の重量を秤量して重量変化を求めるという手法で実行した。
第1条件として温度と時間を200℃と9日、第2条件として温度と時間を300℃と9日を選択し、これら第1及び第2条件下で腐食実験を実行した。
先ず、石英炉内を窒素で置換し、更に水素で置換した後に、シーメンス方式の多結晶シリコン反応炉からの排気ガスの一部を、試験片を均熱部に吊り下げた石英炉内に導入する。なお、上述の多結晶シリコン反応炉からの排気ガスは、H、HCl、SiHnCl4−n(n=0〜3)を主成分とする混合ガスである。
腐食試験終了後、石英炉内への排気ガスを水素に切り替えて冷却し、次いで窒素置換を行ってから炉内を大気開放した後、石英炉内から試験片を取り出して水洗と乾燥を行なって試験片重量を精密秤量した。その結果、上記第1及び第2条件下では、何れの合金材料の試験片においても重量変化は殆ど認められなかった。つまり、200℃以上300℃以下の範囲では、内壁面を構成する合金材料の腐食は殆ど進行しないことが確認された。
そこで、第3及び第4条件として、合金材料の腐食を加速させるため、温度をそれぞれ400℃と500℃とし、時間は何れも19日を選択した。なお、その他は上述の同様の手順で再度腐食試験を行った。
表1および図3は、上述の第3条件(温度400℃、時間:19日)での腐食試験の結果を纏めたものである。表1は合金材料(鋼種)の具体的な組成および腐食試験後の重量変化を纏めたものであり、図3はその結果をグラフ化したもので、横軸は合金組成(R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si])であり縦軸は腐食試験後の重量変化である。
なお、「NAR」は住友金属工業株式会社の登録商標であり、「Incoloy」、及び「Inconel」はインコ社の登録商標であり、「Hastelloy」はハイネス・ステライト社の登録商標であり、「Carpenter」はカーペンタ社の登録商標である。
表1および図3から明らかなように、クロム、ニッケル、シリコンの含有質量%の関係式R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]の値が40%未満の鋼種は、これを反応炉の内壁材料として用いると、反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際に腐食が進行し易い。
つまり、多結晶シリコン製造用反応炉内壁の耐食層材料としては、上記R値が40%以上の合金材料が好ましく、より好ましいR値は60%以上である。なお、上述の第4条件(温度500℃、時間:19日)での腐食試験では、第3条件のものよりも顕著な重量変化が認められた。
上記検討に基づき、R値40%以上の条件を満足する鋼種であるSUS310S(R値:41〜46%)およびHastelloy C(R値:62%以上)を内壁耐食層とした反応炉をそれぞれ試作し、これらの反応炉を用いて実際に多結晶シリコンを析出させ、得られた多結晶シリコン棒中のドーパント不純物濃度の内壁面温度依存性を求める検討を実行した。
鋼種SUS310S及びHastelloy Cからなる内壁耐食層を有するそれぞれの反応炉10内に、ガスノズル3から水素ガスとトリクロロシランガスを主原料として供給しつつ、1000℃以上1100℃以下の温度で直径120〜130mmの多結晶シリコン棒を成長させた。
図4は、Cr−Ni−Si系合金材料であるSUS310SおよびHastelloy Cからなる内壁のそれぞれの反応炉につき、多結晶シリコン析出工程終了直前における冷却媒体出口端側の内壁面温度(横軸)と多結晶シリコン中に取り込まれたドーパント不純物濃度との関係を示す図である。なお、縦軸に示したドーパント総量は、フォトルミネッセンス分析で得られたドーパント総量であり、具体的には、燐、砒素、硼素、及びアルミニウムの含有量の総和である。
半導体の用途に用いられるCZ単結晶成長時またはFZ単結晶成長時に抵抗率制御を行う上での実用上の要求により、多結晶シリコン中のドーパント総量は100ppt・atomic以下であることが望ましい。図4に示すように、内壁面にSUS310Sを用いた場合は該内壁面の温度を220℃以下に保つことにより、多結晶シリコン中のドーパント総量を100ppt・atomic以下にすることができる。また、内壁面にHastelloy Cを用いた場合は該内壁面の温度を370℃以下に保つことにより、多結晶シリコン中のドーパント総量を100ppt・atomic以下にすることができる。
さらに、R値60%以上の条件を満足する鋼種を内壁耐食層とした反応炉内で、内壁面の温度を300℃以下に保ちながら多結晶シリコンを析出させると、多結晶シリコン中のドーパント総量を10ppt・atomic以下にすることが期待できる。
ここで、反応炉10は標準沸点以上の加圧冷却水(熱水)15により冷却されるので、内壁面の温度は100℃以上に制御される。
R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上の合金材料であって、多結晶シリコン製造用反応炉内壁の耐食層用材料として好ましい合金材料を例示すると、表2のようになる。
本発明の反応炉を用いて多結晶シリコンの析出反応を行なう手順は、概ね下記のとおりである。先ず、電極2にシリコン芯線5を接続し、反応炉10をベースプレート1上に密着載置し、ガスノズル3から窒素ガスを供給して反応炉10内の空気を窒素に置換する。反応炉10内の空気と窒素は、排気口4から排出される。
反応炉10内を窒素雰囲気に置換開始後、冷却媒体流路13に熱水15を供給し、反応炉10内の加温を開始する。反応炉10内を窒素雰囲気に置換終了後、窒素ガスに代えてガスノズル3から水素ガスを供給し、反応炉10内を水素雰囲気にする。
次に、図示しないヒータを用いてシリコン芯線5を250℃以上の温度に予備加熱し、電流が効率的に流れるほどの導電性にする。続いて、電極2からシリコン芯線5に電流を供給し、シリコン芯線5を900℃以上に加熱する。さらに、水素ガスとともにトリクロロシランガスを原料ガスとして供給し、シリコン芯線5上に多結晶シリコン6を900℃以上1200℃以下の温度範囲で気相成長させる。未反応ガスと副生成ガスは、排気口4から排出される。
シリコン芯線5の加熱開始から多結晶シリコン6の析出反応工程中(あるいは析出反応工程終了後の多結晶シリコン棒の冷却中)は、熱水15を冷却媒体として供給して反応炉10を冷却する。そして、少なくとも多結晶シリコン6の析出反応中は、下記の温度制御機構により、反応炉10の内壁面を370℃以下に保つ。
すなわち、ここでの温度制御機構は、炉内側表面の温度計測機を更に設置して、計測された温度に基づき冷媒の温度と循環量を決める制御機構により制御を行うものとしても良い。しかし、実生産用には、炉内および冷却系の熱収支を監視し、冷却系の熱水循環量および熱水温度の調整によって炉内側表面温度の制御を行うシステムが好ましい。
この熱収支による炉内側表面温度制御機構は、システム設計時の基礎データ、即ち、シリコン芯線5への通電量、水素およびシランガスの導入量および温度、成長中の多結晶シリコン6の表面温度、反応炉材質の持つ熱伝導率、熱水の入り口温度および出口温度と循環量などから得られる熱収支より炉内側表面温度を求め、かつ冷却系の熱水入口温度および循環量を調整することによって炉内側表面温度を制御温度範囲内に制御する方法である。これは、簡易的には、反応炉材質の持つ熱伝導率及び厚さ、熱水の入り口温度および出口温度と循環量より炉内側表面温度を推定し、供給冷却水の温度および/または循環量によって制御することができる。
反応炉10を冷却する冷却媒体として供給される熱水15は、標準沸点温度を超えた100℃超200℃未満の温度範囲に設定されており、熱伝導層11bの除熱面境膜での沸騰を防止するために、その境膜温度における蒸気圧を超える圧力に制御される。
圧力制御された熱水15は、熱水供給ポンプ21により反応炉10の下方から供給され、熱伝導層11bに接する冷却媒体流路13を通って内壁11を冷却する一方、熱伝導層11bにより加熱されて昇温して反応炉10の上方から排出される。
多結晶シリコン6が所望の直径まで成長した後、多結晶シリコン6への原料ガスの供給と電流供給をこの順に停止し、反応炉10内の温度を下げる。反応炉10内の温度が十分に低下した後、熱水15を冷水に切り換え、反応炉10を室温付近まで冷却する。最後に、反応炉10内の雰囲気を水素から窒素に置換した後に反応炉10を大気開放し、成長した多結晶シリコン6を刈り取る。
本発明では、反応炉の内壁の炉内側に設けられる耐食層の材料として、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の第1の合金材料を用いることにより、反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の反応炉内壁からのドーパント不純物の混入を低減するとともに、耐食層と冷却水流路の間に第1の合金材料よりも高い熱伝導率の第2の合金材料からなる熱伝導層を設けることにより、多結晶シリコンを製造するために供給した熱を冷却水を介して効率的に回収することのできる技術を提供する。
1 ベースプレート
2a、2b 電極
3 ガスノズル
4 排気口
5 シリコン芯線
6 多結晶シリコン
10 反応炉(反応容器)
11 内壁
11a 耐食層
11b 熱伝導層
12 外壁
13 冷却媒体流路
15 熱水
20 スチームドラム
21 熱水供給ポンプ
22 圧力指示調節計
23 調節弁
31 圧力指示調節計
32 調節弁
41 レベル調節計
42 調節弁
100 多結晶シリコン製造システム

Claims (7)

  1. 多結晶シリコン製造用の反応炉であって、内壁の炉内表面側に、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、およびシリコン(Si)の含有質量%をそれぞれ[Cr]、[Ni]、および[Si]としたときに、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の第1の合金材料からなる耐食層が設けられ、更に前記反応炉には標準沸点以上の加圧冷却水を循環可能な冷却水流路が配されており、前記耐食層と前記冷却水流路の間に、前記第1の合金材料よりも高い熱伝導率の第2の合金材料からなる熱伝導層が設けられている多結晶シリコン製造用反応炉。
  2. 前記R値が60%以上である、請求項1に記載の多結晶シリコン製造用反応炉。
  3. 前記第1の合金材料のCr、Ni、およびSiの含有質量%はそれぞれ、[Cr]:14.6〜25.2質量%、[Ni]:19.6〜77.5質量%、[Si]:0.3〜0.6質量%の範囲内にある、請求項1又は2に記載の多結晶シリコン製造用反応炉。
  4. 前記第2の合金材料は、単一鋼材又は複数種類の金属を張り合わせたクラッド鋼材である、請求項1に記載の多結晶シリコン製造用反応炉。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の多結晶シリコン製造用反応炉と、前記反応炉内で多結晶シリコンを析出させる際の炉内側表面温度を370℃以下に制御し得る温度制御機構と、を備えている多結晶シリコン製造システム。
  6. 炉内表面側が、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びシリコン(Si)の含有質量%をそれぞれ[Cr]、[Ni]、および[Si]としたときに、R=[Cr]+[Ni]−1.5[Si]で定義付けられるR値が40%以上となる組成の合金材料からなる反応炉内壁の炉内側表面温度を100℃以上370℃以下に制御した状態で前記内壁内部にシリコン原料ガスを供給して多結晶シリコンの析出反応を行なうことを特徴とする、多結晶シリコンの製造方法。
  7. 前記R値が60%以上となる組成の合金材料からなる反応炉内壁を使用し、前記反応炉内壁の炉内側表面温度を300℃未満に制御する、請求項6に記載の多結晶シリコンの製造方法。
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