JP6450256B2 - モータ駆動制御装置 - Google Patents
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Description
使用回転速度が決まっているモータでは、使用回転速度での共振を避けることで回避できるが、例えば、軸流ファンモータのように、停止から最高回転速度の間のあらゆる回転速度での振動ピーク値を一定値以下に抑えなければならないモータでは、上記手法は使用できず、対策に苦慮する。
ロータの回転位置を検出して、回転位置情報を生成する回転位置検出回路と、検出された前記回転位置情報に基づいて、通電切替タイミング毎に、通電切替時の進角と遅角とを交互に繰り返して調整する駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部と、を備える。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
図1は、本実施形態におけるモータ20の駆動制御装置1の回路構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態に係るモータ20は、3相のブラシレスDCモータであり、各相のコイルLu,Lv,Lwとロータ(不図示)とを備えている。これらコイルLu,Lv,Lwの一端は、Y結線されている。コイルLu,Lv,Lwの他端は、それぞれインバータ回路2のU相出力、V相出力、W相出力に接続され、インバータ回路2から3相交流が供給されることによりモータ20は回転駆動される。
駆動制御装置1は、直流電源Vdに接続され、U相配線、V相配線、W相配線の3相によってモータ20に接続される。駆動制御装置1は、モータ20に駆動電圧を印加して、モータ20の回転を制御する。U相、V相、W相には、それぞれ、端子間電圧Vu、Vv、Vwが印加される。
インバータ回路2は、プリドライブ回路3(モータ駆動部の一部)とモータ20が備える各相のコイルLu,Lv,Lwとに接続される。インバータ回路2は、プリドライブ回路3の駆動信号Vuu〜Vwlに基づき、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに通電する。
インバータ回路2は、スイッチング素子Q1,Q2が直列接続されるU相のスイッチングレッグと、スイッチング素子Q3,Q4が直列接続されるV相のスイッチングレッグと、スイッチング素子Q5,Q6が直列接続されるW相のスイッチングレッグとを有している。これらスイッチング素子Q1〜Q6は、例えばFET(Field Effect Transistor)である。インバータ回路2は、直流電源Vdに接続され、更に抵抗R0に接続されている。
プリドライブ回路3(モータ駆動部の一部)は、接続されるインバータ回路2との組合せでモータ駆動部を構成し、制御部4に接続される。プリドライブ回路3は、例えば、6個のゲートドライブ回路を備え、インバータ回路2を駆動するための駆動信号Vuu〜Vwlを生成する。
回転位置算出部41は、抵抗素子R1〜R6を含む回転位置検出回路5により検出されるロータの回転位置情報(相電圧V1、V2、V3)を入力し、それに対応した位置検出信号S1を生成する。回転位置検出回路5は、本実施形態では、各相の逆起電圧を検出して、回転位置を検出する。なお、回転位置の検出方法は、本実施形態のように逆起電圧を検出する構成に限定されず、例えば、ホールセンサなどの各種センサを用いて検出する構成であってもよい。
回転速度算出部42は、位置検出信号S1を基に回転速度を算出し、回転速度情報S2を生成する。
通電タイミング調整部43は、回転速度算出部42から出力される回転速度情報S2を基に、所定の回転速度範囲のときに進角と遅角を調整する通電タイミング信号S3を生成する。
通電信号生成部44は、位置検出信号S1と通電タイミング信号S3を入力して、駆動制御信号S4を生成する。
本明細書において、進角とは通電期間を短くすることをいい、遅角とは通電期間を長くすることをいう。
制御部4は、モータ20が所定の回転速度範囲にあるならば、通電切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する。本発明では、1回転当たりを1周期として1回発生する現象を1次成分としてとらえ、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する周期をn次成分と定義し、所定の回転速度範囲は、このn次成分とモータの固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む。
制御部4は、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分の電源電流を低減するように駆動制御信号S4を出力する。
制御部4は、モータ駆動部が通電切替時の進角と遅角を交互に行うように制御する。その結果、駆動制御装置1は、(n/2)次成分の電源電流は増大するが、n次成分の電源電流が低減する。
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
一般的に、モータを効率的に駆動させるためには、電流波形をムラ無く均一に統一することを目指す。しかし、電流波形をムラ無く均一に統一すると、通電タイミングをきっちりと揃えることになり、結果として、ある一定の回転次数成分を生み出すこととなる。
例えば、6極9スロットのブラシレスモータであれば、1回転につき18回の通電切替が発生する。このため、電流波形をFFT(Fast Fourier Transform)により分析すると、理想的には18次成分のみが発生する。この18次成分が、モータの固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となってしまう。
例えば、6極9スロットのブラシレスモータであれば、18次成分がモータの固有値と共振してしまう特定の回転速度領域で、通電切替タイミング毎に、進角と遅角を交互に行うように通電波形を制御する。これにより、18次成分の半分の周波数の9次成分の電源電流が増加する。9次成分の電源電流が増加する一方、18次成分の電源電流が抑制される。これにより、モータの固有振動数との共振を回避することができる。
[比較例]
図2は、比較例の6極9スロットのブラシレスモータの電源電流波形図である。図2の縦軸は、図1の電流Iの電流波形を示し、横軸は、時刻を示している。
図2の符号A0,B0は、6極9スロットのブラシレスモータの通電切替タイミングを示している。図2では、通電切替が周期的に行われている電源電流の波形を示す。
図2に示すように、通電切替タイミングA0,B0間の通電期間Cと、通電切替タイミングB0,A0間の通電期間Dとは、ほぼ同じ長さである。また、図2の破線は、電流波形の最大振幅を繋いだ包絡線を示し、通電切替タイミング毎に、同じような電流波形が繰り返される。
図3は、本実施形態のモータ駆動制御装置の電源電流波形図であり、図2の比較例の電源電流波形図に対応している。図3の縦軸は、図1の電流Iの電流波形を示し、横軸は、時刻を示している。
図3の符号A,Bは、本実施形態の進角遅角設定による通電切替タイミングを示している。
本実施形態は、(n/2)次成分の電源電流を増大させ、n次成分の電源電流を低減する。ここでは、18次成分を低減するために、9次成分を含ませる通電切替を行う場合を例に採る。
9次成分を含ませるようにするために、通電切換時、2回に1回電流の振幅を大きくするような通電切替にする。一例として、通電切替時の進角と遅角とを所定パターン(例えば、交互)で繰り返して調整する。具体的には、以下の制御を行う。
(1) 図3に示すように、通電切替タイミングAでは、通常より遅く通電を切り替える遅角制御を行う。
(2) 図3に示すように、通電切替タイミングBでは、通常より早く通電を切り替える進角制御を行う。
(3) 上記(1)(2)の進角遅角設定は、所定パターン(ここでは、交互)で繰り返す。すなわち、上記(1)の通電切替タイミングAでの遅角分を、次の通電切替タイミングBでの進角分で相殺する。このため、ロータの1回転あたりの通電切替でみると、進角遅角の影響はない。
具体的には、図3に示すように、通電切替タイミングA,B間の通電期間Eと、通電切替タイミングB,A間の通電期間Fとは、異なる長さである。通電期間Eは、通常時よりも短く、通電期間Dは、通常時より長くなり、通電期間Eと通電期間Fとの合計は通常の通電切替2回分の期間と同じにすることで、ロータの1回転あたりでは、進角遅角の影響がなくなる。
ステップS101において、制御部4は、モータ20(図1参照)が所定の回転速度範囲にあるか否かを判別する。所定の回転速度範囲は、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む。モータ20の回転速度は、回転位置算出部41(図1参照)が、回転位置検出回路5からの回転位置情報(相電圧V1、V2、V3)に対応した位置検出信号S1を生成し、回転速度算出部42が位置検出信号S1を基に回転速度を算出し、回転速度情報S2を生成することで算出する。
一方、上記ステップS101でモータ20が所定の回転速度範囲にない場合(NOの判定)は、制御部4は上記ステップS102の進角遅角設定をスキップしてステップS103に進む。
ステップS103において、制御部4は通常の通電制御を行って本フローを終了する。
進角遅角設定は、切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する。以下、例示する。
<例1>
図4(b)に示すように、ステップS11において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS12において、通電タイミング調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時の進角と遅角を交互に行う。
これにより、(n/2)次成分の電源電流を増大させてn次成分の電源電流を低減させることができる。例えば、9次成分の電源電流を増大させて18次成分の電源電流を低減させる。
図4(c)に示すように、ステップS21において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS22において、通電タイミング調整部43が、通電切替の進角と遅角を所定パターンで繰り返す。
これにより、ロータの1回転あたりの通電切替回数nにとしたときのn次成分の電源電流を低減させることができる。
図5の符号aに示すように、比較例では、ロータの1回転につき18回の通電切替に伴い18次成分が発生する。上述したように、この18次成分は、モータ20の固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となる。
本実施形態では、通電切替時の進角と遅角を交互に行うことで、9次成分を増大させて18次成分を低減させる。
図5の破線での囲み領域で示すように、本実施形態では、18次成分に相当する周波数範囲(3200Hz〜4200Hz)における電流値を抑制している(図5の符号b参照)。図5では、所定の回転速度範囲(上記の周波数範囲に対応する回転速度10667rpm〜14000rpmを含む範囲)の区間において、通電制御(進角遅角設定)を行うことで、モータ20の固有値と18次成分との共振を回避している。
ただし、図5の符号cに示すように、本実施形態では、9次成分が増大することになる。しかし、この9次成分は、モータ20の固有値(固有振動数)と共振しないので電磁振動成分が生じることはない。また、9次成分近傍の周波数領域は、電流値も小さいので系への影響はない。
モータ20の固有値(固有振動数)は、測定により既知であるとする。この固有振動数と共振することで大きな電磁振動成分が生じることになる。図5の場合、共振点(電磁振動成分)が3200[Hz]から4200[Hz]の間にある。それをそれぞれ回転速度に換算すると、3200[Hz]×60÷18=10667[rpm]、4200[Hz]×60÷18=14000[rpm]となる。
すなわち、n次成分の周波数範囲がf1[Hz]〜f2[Hz]に対応する回転速度範囲の下限Rmin[rpm]と上限Rmax[rpm]は、それぞれ、(f1×60÷n)[rpm]、(f2×60÷n)[rpm]となる。
そして、所定の回転速度範囲は、少なくともn次成分に対応する回転速度範囲を含む、すなわち、n次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含むように設定される。
図6の破線で囲んだ18次成分に対応する電磁振動成分の周波数範囲では、振動ピーク値が50%以上低減できるという、大きな振動低減効果が得られた。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(g)のようなものがある。
(b) 駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
(c) 本実施形態では、モータ20は、6極9スロットのブラシレスモータとして説明したが、磁極数、スロット数、モータの種類は特に限定されない。また、モータ20の相数も特に限定されない。
(d) 回転位置検出回路は、本実施形態(逆起電圧の検出回路)に限定されず、例えばホールセンサなどであってもよい。
(e) 駆動制御装置は、少なくともその一部を集積回路(IC:Integrated Circuit)としてもよい。
(g) 図5に示した制御フローは一例であって、これらのステップの処理に限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されてもよい。
2 インバータ回路 (モータ駆動部の一部)
3 プリドライブ回路 (モータ駆動部の一部)
4 制御部
41 回転位置算出部
42 回転速度算出部
43 通電タイミング調整部
44 通電信号生成部
5 回転位置検出回路
S1 位置検出信号
S2 回転速度情報
S3 通電タイミング信号
S4 駆動制御信号
Lu,Lv,Lw コイル
V1,V2,V3 相電圧
Vcc 電源電圧
Vd 直流電源
Vu,Vv,Vw 端子間電圧
Vuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwl 駆動信号
I 電流
Q1〜Q6 スイッチング素子
Claims (7)
- 三相モータの各相に電圧を印加して駆動するモータ駆動部と、
ロータの回転位置を検出して、回転位置情報を生成する回転位置検出回路と、
検出された前記回転位置情報に基づいて、通電切替タイミング毎に、通電切替時の進角と遅角とを交互に繰り返して調整する駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部と、
を備えることを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記三相モータが所定の回転速度範囲にあるならば、通電切替時の進角と遅角とを交互に繰り返して調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御装置。 - モータの各相に電圧を印加して駆動するモータ駆動部と、
ロータの回転位置を検出して、回転位置情報を生成する回転位置検出回路と、
検出された前記回転位置情報に基づいて、通電切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータが所定の回転速度範囲にあるならば、通電切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整し、
前記所定の回転速度範囲は、前記ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分と前記モータの固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記n次成分の電源電流を低減するように前記駆動制御信号を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、(n/2)次成分の電源電流を増大させて前記n次成分の電源電流を低減する
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記モータ駆動部が通電切替時の進角と遅角を交互に行うように制御する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、
前記回転位置情報に対応した信号を基に、回転速度を算出する回転速度算出部と、
前記回転速度算出部から出力される回転速度情報を基に、通電切替タイミング毎に、通電切替時の進角と遅角を調整する通電タイミング信号を生成する通電タイミング調整部と、
前記回転位置情報に対応した信号と前記通電タイミング信号を入力して、前記駆動制御信号を生成する通電信号生成部と、を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のモータ駆動制御装置。
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