以下、本発明に係る燃料電池システムの実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、燃料電池システムは、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。発電ユニット10は、筐体10aと、筐体10a内に収容された燃料電池モジュール11、熱交換器12、インバータ装置13、水タンク14、および制御装置15を備えている。
燃料電池モジュール11は、後述する燃料電池34を少なくとも含んで構成されるものである。燃料電池モジュール11には、改質用原料、改質水およびカソードエアが供給されるようになっている。具体的には、燃料電池モジュール11には、一端が供給源Gsに接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11a(燃料供給管)の他端が接続されている。改質用原料供給管11aには、原料ポンプ11a1が設けられている。
また、燃料電池モジュール11には、一端が水タンク14に接続されて改質水が供給される改質水供給管11bの他端が接続されている。改質水供給管11bには、改質水ポンプ11b1が設けられている。さらに、燃料電池モジュール11には、一端が酸化剤ガス供給装置としてのカソードエアブロワ11c1に接続されてカソードエアが供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。
燃料電池モジュール11は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池34を備えている。ケーシング31は、断熱性材料で形成されている。蒸発部32は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部32は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して改質部33に供給するものである。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
蒸発部32には、一端(下端)が水タンク14に接続された改質水供給管11bの他端が接続されている。また、蒸発部32には、一端が供給源Gsに接続された改質用原料供給管11aの他端が接続されている。供給源Gsは、例えば都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。
改質部33は、上述した燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素などを含んだガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部33は改質用原料と改質水とから改質ガス(燃料)を生成して燃料電池34に供給する。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応である。
燃料電池34は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34aが積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。動作温度は400〜1000℃程度である。
セル34aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34bが形成されている。セル34aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34cが形成されている。
燃料電池34は、マニホールド35上に設けられている。マニホールド35には、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管38を介して供給される。燃料流路34bは、その下端(一端)がマニホールド35の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され、上端から導出されるようになっている。カソードエアブロワ11c1によって送出されたカソードエアはカソードエア供給管11cを介して供給され、空気流路34cの下端から導入され、上端から導出されるようになっている。
燃焼部36は、燃料電池34と蒸発部32および改質部33との間に設けられている。燃焼部36は、燃料電池34からのアノードオフガス(燃料オフガス)と燃料電池34からのカソードオフガス(酸化剤オフガス)とが燃焼されて改質部33を加熱する。
燃焼部36では、アノードオフガスが燃焼されて火炎37が発生している。燃焼部36では、アノードオフガスが燃焼されてその燃焼排ガスが発生している。燃焼部36には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火装置36a1,36a2が設けられている。
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。具体的には、貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図1の矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、貯湯槽21の下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、燃料電池モジュール11からの排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。水タンク14には、水タンク14内に貯留された改質水の温度を検出する改質水温度検出センサ29が設けられている。改質水温度検出センサ29の検出温度(検出出力)は、制御装置15に送信される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
さらに、インバータ装置13は、燃料電池34から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。また、インバータ装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して補機(各ポンプ、ブロワなど)や制御装置15に出力する。制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システムの運転を制御する。
改質水供給管11bには、改質水ポンプ11b1と蒸発部32との間に、改質水供給管11bの温度を検出する温度センサ27が配置されている。温度センサ27は、例えば、改質水供給管11bの外表面の温度を検出するように設けられている。温度センサ27の検出温度(検出出力)は、制御装置15に送信される。温度センサ27は、燃料電池モジュール11の熱の影響を受けないように、燃料電池モジュール11のケーシング31の外側であって、かつ蒸発部32にできるだけ接近した蒸発部32の入口32a付近に配置するのがよい。
温度センサ27が配置された部位の改質水供給管11bには、改質水供給管11bを加熱するヒータ28が設けられている。ヒータ28は、例えば、電熱線を改質水供給管11bの周囲に螺旋状に巻き付けたもので構成できる。しかしながら、ヒータ28は、電熱ヒータに限らず、セラミックヒータ等、改質水供給管11bを加熱できるものであればどのような種類のヒータであってもよい。
ヒータ28は、低温環境時において、改質水供給管11bが凍結することを防止する凍結防止ヒータを兼ねてもよい。凍結防止ヒータとするためには、改質水供給管11bを加熱する部分の長さを長くする(分割型でもよい)ことが有効である。なお、ヒータ28を設けた場合には、改質水供給管11bの温度を検出する温度センサ27は、ヒータ28の過加熱や、短絡等による異常昇温を検知し、燃料電池システムを停止させる機能を兼ねてもよい。
本実施の形態においては、改質水ポンプ11b1は、モータ25によって正回転および逆回転可能である。すなわち、モータ25は、制御装置15により、正方向に回転して水タンク14内の水を改質水ポンプ11b1の吐出ポートから蒸発部32の入口32aに向かって供給する正回転モードと、逆方向に回転して改質水供給管11b内の水を水タンク14内に戻す逆回転モードとに切り替え可能となっている。
次に、燃料電池システムの動作について簡単に説明する。燃料電池システムが、停止/待機モードである場合には、原料ポンプ11a1およびカソードエアブロワ11c1は、それぞれ停止されている。
燃料電池システムの図略の起動スイッチがオンされると、燃料電池システムの起動運転が開始され、暖機モード(燃料電池システムが発電しないものの改質部33および燃料電池34を発電に必要な温度まで昇温させる)による運転を開始する。
暖機モードによる運転が開始されると、制御装置15は、補機を作動させる。具体的には、制御装置15は、原料ポンプ11a1,改質水ポンプ11b1を作動させ、蒸発部32に改質用原料および凝縮水(改質水)の供給を開始する。また、カソードエアブロワ11c1を作動させ、燃料電池34にカソードエアの供給を開始する。そして、燃焼部36において、燃料電池34から導出されたアノードオフガスが着火装置36a1,36a2によって着火される。改質部33や燃料電池34などの温度が所定温度以上となれば、暖気モードによる運転が終了し、発電モード運転を開始する。発電モード運転では、制御装置15は、燃料電池34の発電する電力が、外部電力負荷16cの消費電力となるように補機を制御して、改質ガスおよびカソードエアを燃料電池34に供給する。
燃料電池システムの図略の起動スイッチがオフされると、燃料電池システムは、発電モード運転から停止/待機モードに移行される。燃料電池システムが、停止/待機モードに移行されると、制御装置15は、原料ポンプ11a1およびカソードエアブロワ11c1を停止させ、改質用原料およびカソードエアの供給を停止させる。
燃料電池システムの起動運転開始前に、制御装置15は、図2のフローチャートに示す水張り制御プログラムを実行する。以下、水張り制御プログラムの一例を、図2のフローチャートおよび図3のタイムチャートに基づいて説明する。
制御装置15は、ステップS102において、温度センサ27によって検出された改質水供給管11bの温度T1、すなわち、改質水供給管11bの所定の部位に配置された温度センサ27によって検出された温度T1の読み込みを開始する。次いで、制御装置15は、ステップS104において、モータ25を逆回転制御し、改質水ポンプ11b1を逆回転駆動する。これにより、改質水供給管11b内に充満された改質水が水タンク14に回収される。このステップS104は、燃料電池システムの起動運転開始前に、改質水供給管11bに改質水が充満されている場合を想定して、改質水供給管11b内に充満された改質水を一旦水タンク14に戻すためのものである。
次いで、ステップS106において、ヒータ28に通電(ヒータON)し、改質水供給管11bの温度センサ27が配置された部位を加熱する(図3のtm1参照)。これにより、図3のタイムチャートに示すように、温度センサ27によって検出される改質水供給管11bの温度T1が上昇する。
続いて、制御装置15は、ステップS108において、温度センサ27によって検出された温度T1が、予め定められた所定温度(T1−b)より高いか否かを判断する。温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−b)より低いと判断された場合、すなわち、ステップS108の判断結果がN(NO)の場合には、制御装置15は、プログラムをステップS110に移行する。そして、制御装置15は、ステップS110において、ヒータ28への通電を開始してから所定時間(tm−b)経過したか否かを判断し、所定時間(tm−b)経過していない場合(ステップS110の判断結果がNの場合)には、ステップS106に戻り、ヒータ28への通電を継続する。
しかしながら、所定時間(tm−b)経過しても、改質水供給管11bの温度が所定温度(T1−b、例えば50℃)以上に変化しない場合には、制御装置15は、ヒータ28の故障等によって改質水供給管11bが加熱されていないと判断し、プログラムをステップS112に移行して、燃料電池システムが異常であると判定し、燃料電池システムを異常停止する。
上記ステップS108において、温度センサ27にて検出された検出温度T1が所定温度(T1−b)以上に上昇したと判断されると、制御装置15は、プログラムをステップS114に移行する。制御装置15は、ステップS114において、モータ25を正回転制御し、改質水ポンプ11b1を正回転駆動する(図3のtm2参照)。これにより、水タンク14に貯留された改質水が、改質水ポンプ11b1の吐出ポートより蒸発部32の入口32aに向かって所定の流量(Lcm3/m)で改質水供給管11bに供給され、図3のタイムチャートに示すように、改質水供給管11b内の水位(H)が上昇する。例えば、モータ25の回転数は、改質水ポンプ11b1より、毎分数十cm3吐出する程度に設定され、改質水供給管11bの径や管長さにもよるが、改質水が温度センサ27が配置された部位の水位H1まで到着するのに数分程度要する。
次いで、制御装置15は、ステップS116において、温度センサ27によって検出された温度T1の変化量(低下量)ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より大きいか否かが判断される。温度センサ27によって検出された温度T1の変化量ΔT1が、所定変化量(ΔT1−a)より小さいと判断された場合、すなわち、ステップS116の判断結果がN(NO)の場合には、制御装置15は、プログラムをステップS118に移行する。
ステップS118において、制御装置15により、改質水ポンプ11b1が改質水の供給を開始(ステップS114)してから、所定時間(tm−a)経過していないと判断された場合(ステップS118の判断結果がNの場合)には、制御装置15は、プログラムをステップS114に戻し、改質水ポンプ11b1の正回転を継続する。
改質水ポンプ11b1の改質水の供給作用により、図3のタイムチャートに示すように、改質水が改質水供給管11bの温度センサ27が配置された水位H1まで供給されると、ヒータ28によって加熱された改質水供給管11bが、供給された改質水によって冷却されるため、温度センサ27によって検出される温度T1が低下し始める(図3のtm3参照)。これによって、温度T1の変化量ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より大きくなるため、ステップS116の判断結果がY(YES)となり、制御装置15は、プログラムをステップS120に移行する。
そして、制御装置15は、ステップS120において、改質水が所定の水位(H1)まで供給されたと判断する。すなわち、燃料電池システムの起動運転開始前に、改質水が蒸発部32の入口32a付近まで供給されたと判断する。その結果、その後の燃料電池システムの起動運転の開始によって改質水ポンプ11b1が駆動された場合に、改質水が蒸発部32に遅滞なく供給されるようになる。
上記したステップS120において、改質水が所定水位(H1)まで供給されたと判断されると、次いで、制御装置15は、ステップS122において、ヒータ28への通電を停止(ヒータOFF)する(図3のtm4参照)。次いで、制御装置15は、ステップS124において、モータ25の回転を停止し、改質水ポンプ11b1からの改質水の供給を停止する。その後、制御装置15は、ステップS126において、燃料電池システムを起動運転へ移行する。
ところで、改質水ポンプ11b1等の故障等により、改質水が改質水供給管11bに供給されない場合には、改質水ポンプ11b1を正回転駆動してから、所定時間(tm−a)経過しても、改質水が改質水供給管11bの温度センサ27が配置された水位(H1)まで供給されることがないので、温度T1の変化量ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より大きくなることはない。従って、このような場合には、ステップS118の判断結果がYとなり、制御装置15は、プログラムをステップS130に移行して、異常と判定され、燃料電池システムが異常停止される。
なお、改質水温度検出センサ29で検出された水タンク14内の改質水の温度を制御装置15に取り込んで、改質水供給管11bの温度を検出する温度センサ27の検出温度と比較することにより、筐体10a内温度が高い等の影響によって、温度センサ27の検出温度が、改質水温度検出センサ29の検出温度よりも十分に高い場合には、改質水供給管11bの加熱作用を不要と判断し、ヒータ28への通電を停止することができる。
上記した実施の形態においては、ヒータ28によって、改質水供給管11bを加熱することにより、水タンク14より供給される改質水の温度と、温度センサ27が配置された改質水供給管11bの所定部位の温度との間に温度差を持たせる例について述べた。しかしながら、改質水供給管11bに供給される改質水の温度と、改質水供給管11bの温度とが元々温度差を有している場合には、ヒータ28を省略することができる。
元々温度差を有している場合とは、例えば、改質水の温度に対して、燃料電池モジュール11の影響を受けて改質水供給管11bの温度が高くなっている場合がある。このような場合には、温度センサ27が配置された改質水供給管11bの所定の部位まで改質水が供給されると、改質水によって改質水供給管11bの温度が変化(低下)することになるので、この温度変化を温度センサ27によって検出することにより、ヒータ28を設けなくても改質水供給の有無を判定することが可能となる。以下、ヒータを用いない水張り制御プログラムの一例について、図4のフローチャートおよび図5のタイムチャートに基づいて説明する。
制御装置15は、図2のフローチャートで述べたと同様に、ステップS202において、温度センサ27によって検出された温度(改質水供給管11bの温度)T1の読み込みを開始する。次いで、制御装置15は、ステップS204において、モータ25を逆回転制御し、改質水ポンプ11b1を逆回転駆動する。これにより、改質水供給管11b内に充満された改質水が一旦水タンク14に戻される。
次いで、制御装置15は、ステップS206において、モータ25を逆回転してから所定時間経過したか否かが判断され、所定時間経過していない場合には、ステップS204に戻って、改質水ポンプ11b1の逆回転を継続し、所定時間経過した場合には、ステップS208に移行する。
ステップS208において、制御装置15は、モータ25を正回転制御し、改質水ポンプ11b1を正回転駆動する(図5のtmm参照)。これにより、水タンク14に貯留された改質水が、改質水ポンプ11b1の吐出ポートより蒸発部32の入口32aに向かって改質水供給管11bに供給される。
次いで、制御装置15は、ステップS210において、温度センサ27によって検出された温度T1の変化量(低下量)ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より大きいか否かが判断される。温度センサ27によって検出された温度T1の変化量ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より小さいと判断された場合には、ステップS212に移行する。
ステップS212においては、制御装置15は、改質水ポンプ11b1が改質水の供給を開始(ステップS208)してから、所定時間(tm−a)経過したか否かを判断し、所定時間(tm−a)経過していない場合には、ステップS208に戻り、改質水ポンプ11b1の正回転を継続する。改質水ポンプ11b1の改質水の供給作用により、改質水が改質水供給管11bの温度センサ27が配置された水位(H1)まで供給されると、供給された改質水によって改質水供給管11bが冷却されるため、温度センサ27によって検出される温度T1が低下される。これによって、温度T1の変化量ΔT1が、予め定められた所定変化量(ΔT1−a)より大きくなると、ステップS210の判断結果がYとなり、制御装置15は、プログラムをステップS214に移行する。
なお、所定時間(tm−a)経過しても、温度センサ27によって検出された温度T1の変化量ΔT1が、所定変化量(ΔT1−a)より大きくならない場合には、何らかの異常があったものとして、ステップS220に移行し、燃料電池システムを異常停止する。ここで、何らかの異常とは、例えば、改質水ポンプ11b1を含む改質水供給系の異常等が想定される。
ステップS214において、制御装置15は、改質水が所定の水位(H1)まで供給されたと判断する。すなわち、燃料電池システムの起動運転開始前に、改質水が蒸発部32の入口32a付近まで供給されたと判断する。次いで、ステップS216において、制御装置15は、モータ25の正回転を停止し、改質水ポンプ11b1からの改質水の供給を停止する。その後、ステップS218において、制御装置15は、燃料電池システムを起動運転へ移行する。
なお、ヒータ28を省略できる別のケースとして、燃料電池システムが、例えば寒冷地の屋外に設置される場合、水タンク14内の改質水の温度に対して、改質水供給管11bの温度が低くなっている場合がある。このような場合には、改質水が温度センサ27が配置された改質水供給管11bの所定部位まで供給されると、改質水供給管11bによって改質水の温度が変化(低下)するため、この改質水の温度変化を温度センサ27によって検出することにより、ヒータ28を設けなくても改質水供給の有無を判定することが可能となる。
図6は、燃料電池システムの起動運転時の改質水供給異常の制御例を示すフローチャートである。同図のステップS302において、制御装置15は、温度センサ27によって検出された温度(改質水供給管11bの温度)T1の読み込みを開始する。次いで、制御装置15は、ステップS304において、ヒータ28に通電し、改質水供給管11bの温度センサ27が配置された部位を加熱する。次いで、制御装置15は、ステップS306において、温度センサ27によって検出された温度T1が、予め定められた所定温度(T1−c)より低いか否かを判断する。
ここで、燃料電池システムの起動運転時に、改質水ポンプ11b1によって改質水が改質水供給管11bに正常に供給されている場合には、ヒータ28で加熱された改質水供給管11bが、温度センサ27が配置された部位まで供給された改質水によって冷却され、温度センサ27によって検出された温度T1は、所定温度(T1−c)以上には上昇しない。
従って、温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−c)より低いと判断された場合(ステップS306の判断結果がYの場合)には、制御装置15は、プログラムをステップS308に移行して、改質水が正常に供給されていると判定するとともに、続くステップS310において、ヒータ28への通電を停止する。
これに対し、温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−c)より高いと判断された場合には、制御装置15は、プログラムをステップS312に移行して、ヒータ28が通電されてから所定時間経過したか否かが判断される。そして、所定時間が経過していない間は、ヒータ28の通電が継続されるが、所定時間が経過しても、温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−c)より低くならない場合には、制御装置15は、プログラムをステップS312に移行して、異常と判定され、故障部品の交換等を促す。
すなわち、改質水ポンプ11b1等の故障によって、温度センサ27が配置された部位に改質水が正常に供給されていないために、温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−c)より低くならないと判断し、ステップS312で異常と判定する。
なお、上記ステップS306においては、温度センサ27によって検出された温度T1が、所定温度(T1−c)より低いか否かを絶対値で判定するようにしたが、温度センサ27によって検出された温度T1の変化量(上昇量)ΔT1によって判断するようにしてもよい。
上記した実施の形態によれば、燃料電池システムは、水素を含む燃料と酸化剤ガスとにより発電する燃料電池34と、改質水から水蒸気を生成する蒸発部32と、改質用原料と水蒸気とから燃料を生成して燃料電池34に供給する改質部33と、改質水を貯水する水タンク14と、水タンク14に貯水された改質水を改質水供給管11bを通じて蒸発部32に供給する改質水ポンプ11b1とを備えるとともに、改質水供給管11bの改質水ポンプ11b1と蒸発部32との間に配置された温度センサ27と、燃料電池システムの起動運転開始前に、改質水ポンプ11b1の駆動によって改質水供給管11bに供給される改質水による温度センサ27の検出温度の変化に基づいて、温度センサ27が配置された改質水供給管の所定水位まで改質水が供給されたと判定する制御装置15とを有する。
これにより、安価な温度センサ27を用いて、改質水が改質水供給管11bの所定の水位まで供給されたことを判定することができ、燃料電池システムの起動運転開始前に、改質水を蒸発部32の入口32a近くまで供給されたことを的確に検出することが可能となる。
上記した実施の形態によれば、改質水供給管11bの温度センサ27を配置した部位に、改質水供給管11bを加熱するヒータ28を設けたので、ヒータ28によって、予め改質水供給管11bを加熱させることにより、水タンク14より供給される改質水の温度と、蒸発部32に近い位置の改質水供給管11bの温度との間に温度差を確実に持たせることができる。
上記した実施の形態によれば、温度センサ27を、燃料電池モジュール11の外部で、かつ蒸発部32の入口32aに近い位置に配置したので、燃料電池モジュール11の熱の影響を受けにくくすることができるとともに、燃料電池システムの起動運転による改質水ポンプ11b1の駆動によって、改質水を蒸発部32に遅滞なく供給することができる。
上記した実施の形態によれば、制御装置15は、改質水ポンプ11b1によって改質水供給管11bへの改質水の供給が開始されてから所定時間経過しても、改質水が所定水位まで供給されたと判定されない場合に、改質水供給異常と判定するので、改質水の供給系の異常を的確に検出することができる。
上記した実施の形態によれば、ヒータ28は、改質水供給管11bの凍結防止機能を兼ねるので、燃料電池システムを寒冷地に設置する場合であっても、改質水供給管11bの凍結防止用のヒータ28を別個に設ける必要がない。
上記した実施の形態によれば、水タンク14に貯留された改質水の温度を検出する改質水温度検出センサ29をさらに設けたので、改質水供給管11bに配置された温度センサ27の検出温度と、改質水温度検出センサ29の検出温度との比較によって、改質水供給管11bの加熱が不要時には、ヒータ28への通電を停止することができる。
上記した実施の形態においては、水張り制御プログラムを実行するに当たり、改質水供給管11bに改質水が充満している場合を想定して、ステップS104、S204にて、改質水ポンプ11b1を逆回転させ、改質水供給管11b内の改質水を、一旦水タンク14に戻す水抜き動作を実施する例について述べた。しかしながら、水抜き動作は、燃料電池システムの停止後に実施し、水張り制御プログラムの実行時には、水抜き動作を省略することもできる。また、燃料電池システムの停止後に、改質水供給管11b内の改質水が水タンク14内に自然落下するものにおいては、水抜き動作自体を省略することができる。
斯様に、上記した実施の形態で述べた具体的構成は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明はそのような具体的構成に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の態様を採り得るものである。