JP6446800B2 - オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置 - Google Patents

オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6446800B2
JP6446800B2 JP2014056873A JP2014056873A JP6446800B2 JP 6446800 B2 JP6446800 B2 JP 6446800B2 JP 2014056873 A JP2014056873 A JP 2014056873A JP 2014056873 A JP2014056873 A JP 2014056873A JP 6446800 B2 JP6446800 B2 JP 6446800B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
oligofluorene
carbon atoms
optionally substituted
atom
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014056873A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015178477A (ja
Inventor
上原 久俊
久俊 上原
寛幸 林
寛幸 林
野上 弘之
弘之 野上
芳恵 ▲高▼見
芳恵 ▲高▼見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority to JP2014056873A priority Critical patent/JP6446800B2/ja
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to KR1020167023075A priority patent/KR102278717B1/ko
Priority to KR1020217004441A priority patent/KR102341901B1/ko
Priority to CN201810390230.1A priority patent/CN108586723A/zh
Priority to PCT/JP2015/055721 priority patent/WO2015129833A1/ja
Priority to CN201580010538.3A priority patent/CN106062035B/zh
Priority to TW104106555A priority patent/TWI673262B/zh
Publication of JP2015178477A publication Critical patent/JP2015178477A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6446800B2 publication Critical patent/JP6446800B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)

Description

本発明は、新規のオリゴフルオレン、それを含むオリゴフルオレン組成物、並びに、該オリゴフルオレンを用いて得られる樹脂組成物に関する。
近年、フルオレン環を側鎖に有するジヒドロキシ化合物から誘導されたポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂が報告されており、高い透明性や低い複屈折性を備えることから光学用途に有用な材料として提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特に、2つのフルオレン環を有するジフルオレン化合物を用いたポリエステルは、比較的高いガラス転移温度と負の複屈折性を備えることから、反射偏光板用途に有用であることが知られている(例えば、特許文献2参照)。さらに、樹脂原料として、末端の官能基が異なる、2種類のジフルオレン化合物を併用することが知られている。
一方で、ペプチド固相合成のアミノ基の保護基の用途において、末端に反応性官能基を1つだけ有するジフルオレン化合物が知られている(例えば、特許文献3、非特許文献1参照)。
特開平10−101786号公報 米国特許出願公開第2012/0170118号明細書 国際公開第1991/08190号パンフレット
Synthesis,1992,819.
特許文献2に記載されているように、樹脂に特定の物性を付与する方法としては、末端の反応性官能基が異なる、2種類のオリゴフルオレン化合物を併用する方法が挙げられる。しかしながら、オリゴフルオレン化合物の入手が難しく、所望の物性を有する樹脂を製造するためには、原料として2種類のオリゴフルオレン化合物を別途合成する必要があり、時間とコストを要し、工業製品としての実用性は十分とは言えなかった。
本発明者らが鋭意検討した結果、実用性が高く、樹脂に所望の物性を付与する方法として、両末端に異なる反応性官能基を有するオリゴフルオレン化合物を用いることが有用であることを見出した。そのようなオリゴフルオレン化合物の製造方法としては、先ず原料として反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン化合物を製造し、次いで前記オリゴフルオレン化合物に前記反応性官能基とは異なる反応性官能基を導入する方法が挙げられる。
反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン化合物の製造方法としては例えば非特許文献1に記載の方法が知られているが、この方法では反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン化合物を選択的に得ることが困難であるため、両末端に異なる反応性官能基を有するオリゴフルオレン化合物を効率よく製造することが困難であるという課題があった。
そこで本発明では、所望の反応性官能基を選択的に有し、光学用途の樹脂組成物のモノマー又はモノマー原料として好適に用いることができる、特定の反応性官能基を有するオリゴフルオレン化合物を提供することを目的とする。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、両末端が水素のオリゴフルオレン化合物を特定の反応性官能基を有するオレフィン化合物で置換することにより、高選択率かつ効率よく所望のオリゴフルオレン化合物が得られ、さらにこのオリゴフルオレン化合物が光学用途の樹脂組成物のモノマー又はモノマー原料として好適であることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1] 置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位aの9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位(以下、「オリゴフルオレン構造単位a」という。)を含むオリゴフルオレンであって、
該オリゴフルオレン構造単位aにおけるいずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に水素原子を有することを特徴とするオリゴフルオレン。
Figure 0006446800
(式中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。)
[2] 下記一般式(1)で表されることを特徴とする、[1]に記載のオリゴフルオレン。
Figure 0006446800
(式中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。)
[3] 置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位aの9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位aを含むオリゴフルオレンであって、
該オリゴフルオレン構造単位aにおけるいずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に該反応性官能基とは異なる反応性官能基を有することを特徴とするオリゴフルオレン。
Figure 0006446800
(式中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位の9位の炭素原子との結合手である。)
[4] 下記一般式(2)で表されることを特徴とする[3]に記載のオリゴフルオレン。
Figure 0006446800
(式中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
10は、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基、
又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基である。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基であり、
Aは水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。)
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のオリゴフルオレン(以下、「オリゴフルオレンA」という。)と、該オリゴフルオレンAとは異なる化学構造を有するオリゴフルオレン(以下、「オリゴフルオレンB」という。)と、を含むことを特徴とするオリゴフルオレン組成物であって、
前記オリゴフルオレンBは、置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位bの9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位(以下、「オリゴフルオレン構造単位b」という。)を含み、
該オリゴフルオレン構造単位bにおける両末端のフルオレン単位bの9位の炭素原子に下記式(B)で表される同一の反応性官能基を有することを特徴とする、オリゴフルオレン組成物。
Figure 0006446800
(式中、Rd〜Rfはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、X1はエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位bの9位の炭素原子との結合手である。)
[6] [1]〜[4]のいずれかに記載のオリゴフルオレンの重合体又は[5]に記載のオリゴフルオレン組成物の重合体からなる、又は該重合体を含むことを特徴とする樹脂組成物。
[7] [6]に記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[8] [7]に記載のフィルムを少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
[9] [8]に記載の延伸フィルムを有する画像表示装置。
[10] 塩基存在下、下記式(3)で表されるオリゴフルオレンを、下記式(4)で表される電子吸引性基を持つオレフィンと反応させて下記式(1)で表されるオリゴフルオレンを得ることを特徴とする、オリゴフルオレンの製造方法。
Figure 0006446800

Figure 0006446800
(式中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。)
[11] [10]の方法で得られた前記式(1)で表されるオリゴフルオレンと、求電子性を有する化合物とを反応させて下記式(2)で表されるオリゴフルオレンを得ることを特徴とする、オリゴフルオレンの製造方法。
Figure 0006446800
(式中、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnは前記式(5)と同じである。
10は直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基、
又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基であり、
Aは水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。)
本発明に係るオリゴフルオレン化合物は、所望の反応性官能基を選択的に有し、光学用途の樹脂組成物のモノマー又はモノマー原料として好適に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。本発明において、「重量」は「質量」と同義である。
本発明において繰り返し単位とは、重合体において任意の連結基に挟まれた部分構造を示す。重合体の末端部分で一方が連結基であり、もう一方が重合反応性基である部分構造も含む。
また本発明において、「置換基を有していてもよい」は「置換されていてもよい」と同義である。
<1 反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン化合物A1>
本発明の反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン(以下、「オリゴフルオレンA1」と略記する場合がある)は、置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位aの9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位aを含み、かつ、
該オリゴフルオレン構造単位aにおけるいずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に水素原子を有する。
Figure 0006446800
式(A)中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。
このように、反応性官能基を特定構造にすることで工業的に得ることが可能となり、さらに、光学用途の樹脂組成物のモノマーの原料として好適に用いることが可能となる。
<1.1 アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基>
本発明のオリゴフルオレンA1において、フルオレン単位aを結合するアルキレン基は特に限定されないが、後述のフルオレン比率を高めるとの観点からは、その炭素数が通常1以上であり、また、通常10以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。
前記アルキレン基の具体的な構造は以下に挙げられ、これに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレンなどの直鎖状のアルキレン基;メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、プロピルメチレン基、ブチルメチレン基、(1−メチルエチル)メチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基などの分岐鎖を含むアルキレン基(置換位置の数値は、フルオレン環側の炭素からつけるものとする);下記[A]群に示されるような脂環構造の任意の2箇所に直鎖状又は分岐状のアルキレン基の結合手を持つ脂環式アルキレン基
Figure 0006446800
(上記[A]群に示される各環構造における2つの結合手の置換位置については任意であり、同一炭素に2つの結合手が置換していてもよい。);下記[B]群に示されるような複素環構造の任意の2箇所に直鎖状又は分岐状のアルキレン基の結合手を持つ複素環式アルキレン基
Figure 0006446800
(上記[B]群に示される各環構造における2つの結合手の置換位置については任意であり、同一炭素に2つの結合手が置換していてもよい。)が挙げられる。
上記[A]群に示されるような脂環構造や、上記[B]群に示されるような複素環構造が、任意の2箇所に有している直鎖状又は分岐状のアルキレン基の結合手の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレンなどの直鎖状のアルキレン基;1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、1,1−ジメチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基などの分岐鎖を含むアルキレン基(ここで置換位置の数値は、上記環構造に結合した炭素からつけるものとする)が挙げられる。
当該アルキレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアルキレン基の具体例としては、シクロブチルメチレン基、シクロペンチルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、1−シクロヘキシルプロピレン基などのアルキル基置換アルキレン基;フェニルメチレン基、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロピレン基などのアリール基置換アルキレン基;1,1,2,2−テトラフルオロエチレン基、トリクロロメチルメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基などのハロゲン原子置換アルキレン基;2−メトキシメチル−2−メチルプロピレン基などのアルコキシ基置換アルキレン基などが挙げられる(置換位置の数値は、フルオレン環側の炭素からつけるものとする)。
また、本発明のオリゴフルオレンA1において、フルオレン単位aを結合するアリーレン基は特に限定されないが、後述のフルオレン比率を高めるとの観点からは、その炭素数が通常4以上であり、また、通常10以下であり、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である。
前記アリーレン基の具体的な構造は以下に挙げられ、これに限定されるものではないが、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等のフェニレン基;1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等のナフチレン基;2,5−ピリジレン基、2,4−チエニレン基、2,4−フリレン基などのヘテロアリーレン基が挙げられる。
当該アリーレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアリーレン基の具体例としては、2−メチル−1,4−フェニレン基、3−メチル−1,4−フェニレン基、3,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、3−メトキシ−1,4−フェニレン基、3−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−フェニレン基、3−ニトロ−1,4−フェニレン基、3−シアノ−1,4−フェニレン基などが挙げられる。
さらに、本発明のオリゴフルオレンA1において、フルオレン単位aを結合するアラルキレン基は特に限定されないが、後述のフルオレン比率を高めるとの観点からは、その炭素数が通常6以上であり、また、通常10以下であり、好ましくは9以下であり、より好ましくは8以下である。
前記アラルキレン基の具体的な構造は以下に挙げられ、これに限定されるものではないが、下記[C]群に示されるようなアラルキレン基
Figure 0006446800
が挙げられる。
当該アラルキレン基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアラルキレン基の具体例としては、2−メチル−1,4−キシリレン基、2,5−ジメチル−1,4−キシリレン基、2−メトキシ−1,4−キシリレン基、2,5−ジメトキシ−1,4−キシリレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−キシリレン基、α,α−ジメチル−1,4−キシリレン基、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,4−キシリレン基、などが挙げられる。
これらの中でもフルオレン比率が高く、剛直となる傾向があることから、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、又は1,4−キシリレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。さらに、メチレン基である場合は、選択的に反応性官能基を一つ有するオリゴフルオレンを合成することが容易となる傾向があることから、特に好ましい。
<1.2 フルオレン単位aが有していてもよい置換基>
本発明のオリゴフルオレンA1において、前記フルオレン単位aが有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
<1.3 反応性官能基>
本発明のオリゴフルオレンA1は、いずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有する。反応性官能基とは、そのまま重合反応に用いることのできる基だけではなく、変換反応を経て、重合反応に用いることができる基であってもよい。
Figure 0006446800
式(A)中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。
前記Ra〜Rcにおいて、「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル、n−デシルなどの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、2−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基などの分岐鎖を含むアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの環状のアルキル基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基における炭素数は、4以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。この範囲内であると、反応性官能基の導入が容易である傾向がある。
当該アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、メトキシメチル基などが挙げられる。
前記Ra〜Rcにおいて、「置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;2−ピリジル基、2−チエニル基、2−フリル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基における炭素数は、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、また、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。この範囲内であると、反応性官能基の導入が容易となる傾向がある。
当該アリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−ベンゾイルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−メチルフリル基などが挙げられる。
前記Ra〜Rcにおいて、「置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。
置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基における炭素数は、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、また、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。この範囲内であると、反応性官能基の導入が容易となる傾向がある。
当該アラルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−メトキシベンジル基などが挙げられる。
これらの中でも、反応性官能基の導入が容易となる傾向があることから、Ra及びRbが水素原子である下記一般式(A−1)が好ましい。さらに、原料を工業的に安価に入手できるという観点から、Rcは水素原子、又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Figure 0006446800
また、Xにおいて「エステル基」の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、末端基が炭素数1〜10の有機置換基であるエステル基が挙げられる。
炭素数1〜10の有機置換基の具体例は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル、n−デシルなどの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、2−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基などの分岐鎖を含むアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの環状のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;2−ピリジル基、2−チエニル基、2−フリル基などのヘテロアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、p−メトキシベンジル基などのアラルキル基などが挙げられる。
これらの中で、工業的に安価に入手できるとの観点から、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。この場合、合成中に加水分解を受けやすく、カルボン酸を生成しやすいとの観点から、炭素数は2以上であることが好ましく、また、ジヒドロキシ化合物とのエステル交換で生じる低沸点のアルコールを除去することでポリエステル及びポリエステルカーボネートを効率的に合成できるという観点から、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。特に好ましい置換基は、エチル基である。
一方で、炭素数6〜8のアリール基の場合、エステル交換反応が容易に進行するため、アリールエステル化合物とジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステルを一括添加で反応器に仕込むことで、好ましい重合体であるポリエステルカーボネートを1段階で合成することができるため、好ましい。特に、分子量が小さく、ポリエステルカーボネート合成後、フェノールとして留去できるフェニル基が特に好ましい。また、アリール基の場合、重合時の反応性の観点から、炭酸ジエステルとして後述のジアリールカーボネート類を用いることが好ましく、副生物を容易に除去できるとの観点からは、エステル基におけるアリール基と、ジアリールカーボネート類におけるアリール基とが同じであることがより好ましい。
また、エステル基は、還元することにより、ポリカーボネートやポリエステルの原料として有用なアルコールに変換することができる。
Xにおいて「アミド基」の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、(i)窒素原子に2つ水素原子を有する1級アミド基、(ii)窒素原子に水素原子と炭素数1〜10の有機置換基を有する2級アミド基、(iii)窒素原子にそれぞれ独立に炭素数1〜10の有機置換基を2つ有する3級アミド基が挙げられる。炭素数1〜10の有機置換基としては「エステル基」における炭素数1〜10の有機置換基として例示したものを好ましく用いることができる。
アミド基は還元することで、「アミノ基」となり、ポリアミドやポリイミドの原料とすることができる。これらの中でも、還元が容易で、且つ、還元後のアミノ基の反応性の観点から、1級アミド基、及び2級アミド基が好ましく、1級アミド基であることがより好ましい。
Xとしては、そのままポリエステルやポリエステルカーボネートの原料として用いることができるとの観点から、これらの中でもエステル基又はカルボキシル基が好ましく、メチルエステル基、エチルエステル基、フェニルエステル基又はカルボキシル基であることがより好ましい。
<1.4 具体的な構造>
本発明のオリゴフルオレンA1としては、具体的には、下記一般式(1)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 0006446800
式(1)中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。
前記式(1)において、R3としては、<1.1 アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基>にて例示したものを好ましく用いることができる。
また、Ra〜Rc及びXとしては、前記式(A)におけるRa〜Rc及びXとして例示したものを好ましく用いることができる。
4〜R9において「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル、n−デシルなどの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、2−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−エチルヘキシル基などの分岐鎖を含むアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの環状のアルキル基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基における炭素数は、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。この範囲内であると、フルオレン環同士の立体障害が生じにくく、フルオレン環に由来する所望の光学特性が得られる傾向がある。
当該アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基、メトキシメチル基などが挙げられる。
4〜R9において「置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;2−ピリジル基、2−チエニル基、2−フリル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基における炭素数は、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。この範囲内であると、フルオレン環同士の立体障害が生じにくく、フルオレン環に由来する所望の光学特性が得られる傾向がある。
当該アリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−ベンゾイルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−シアノフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−メチルフリル基などが挙げられる。
4〜R9において「置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、2−メチルプロピオニル基、2,2−ジメチルプロピオニル基、2−エチルヘキサノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、2−フリルカルボニル基などの芳香族アシル基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基における炭素数は、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。この範囲内であると、フルオレン環同士の立体障害が生じにくく、フルオレン環に由来する所望の光学特性が得られる傾向がある。
当該アシル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換されたアシル基の具体例としては、クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基、4−メトキシベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、4−トリフルオロメチルベンソイル基などが挙げられる。
4〜R9において「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、トリフルオロメトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基が挙げられる。
置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基における炭素数は、4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。この範囲内であると、フルオレン環同士の立体障害が生じにくく、フルオレン環に由来する所望の光学特性が得られる傾向がある。
4〜R9において「置換されていてもよいアミノ基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、アミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−メチルエチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基等の芳香族アミノ基;ホルムアミド基、アセトアミド基、デカノイルアミド基、ベンゾイルアミド基、クロロアセトアミド基等のアシルアミノ基;ベンジルオキシカルボニルアミノ基、tert−ブチルオキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
これらの中でも、酸性度の高いプロトンを持たず、分子量が小さく、フルオレン比率を高めることができる傾向があることから、N,N−ジメチルアミノ基、N−エチルアミノ基、又はN,N−ジエチルアミノ基が好ましく、N,N−ジメチルアミノ基であることがより好ましい。
4〜R9において「置換基を有する硫黄原子」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、スルホ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル基、p−トリルスルホニル基等のアリールスルホニル基;メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル基、p−トリルスルフィニル基等のアリールスルフィニル基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;フェニルチオ基、p−トリルチオ基等のアリールチオ基;メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等のアルコキシスルホニル基;フェノキシスルホニル基等のアリールオキシスルホニル基;アミノスルホニル基;N−メチルアミノスルホニル基、N−エチルアミノスルホニル基、N−tert−ブチルアミノスルホニル基、N,N−ジメチルアミノスルホニル基、N,N−ジエチルアミノスルホニル基等のアルキルスルホニル基;N−フェニルアミノスルホニル基、N,N−ジフェニルアミノスルホニル基等のアリールアミノスルホニル基等が挙げられる。なお、スルホ基は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム等と塩を形成していてもよい。
これらの中でも、酸性度の高いプロトンを持たず、分子量が小さく、フルオレン比率を高めることができる傾向があることから、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、又はフェニルスルフィニル基が好ましく、メチルスルフィニル基であることがより好ましい。
4〜R9において「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、比較的導入が容易で、電子吸引性の置換基のため、フルオレン9位の反応性を高める傾向があることから、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子であることがより好ましい。
隣接するR4〜R9は、互いに結合して環を形成していてもよい。その具体例としては、下記[D]群に示されるような置換フルオレン構造が挙げられる。
Figure 0006446800
このように、R4〜R9を上述のような特定の原子又は置換基にすることで、主鎖とフルオレン環との間や、フルオレン環同士の間の立体障害が少なく、フルオレン環に由来する所望の光学特性を得ることができる傾向がある。
これらR4〜R9の中で好ましくは、全て水素原子、或いはR4及び/又はR9がハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、シアノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R5〜R8が水素原子である。全て水素原子の場合、工業的にも安価なフルオレンから誘導できる。また、R4及び/又はR9がハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、シアノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかで、かつ、R5〜R8が水素原子の場合、フルオレン9位の反応性が向上するため、様々な誘導反応が適応可能となる傾向がある。より好ましくは、全て水素原子、或いはR4及び/又はR9がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びニトロ基からなる群から選ばれるいずれかで、かつ、R5〜R8が水素原子であり、特に好ましくは全て水素原子の場合である。また、上記のものとすることで、フルオレン比率を高めることができ、かつ、フルオレン環同士の立体障害が生じにくく、フルオレン環に由来する所望の光学特性が得られる傾向もある。
また、前記一般式(1)においてnは1〜5の整数値を表わすが、合成上の容易さの観点からは4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
<1.5 反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレンA1の具体例>
本発明のオリゴフルオレンA1の具体例としては、下記[E]群に示されるような構造が挙げられる。
Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800
<1.6 反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレンA1の物性>
本発明のオリゴフルオレンA1の物性値は特に限定されないが、以下に例示する物性値を満足するものであることが好ましい。
本発明のオリゴフルオレンA1中の塩素含有割合は、Cl換算質量で100質量ppm以下であることが好ましい。さらには10質量ppm以下であることが好ましい。塩素成分の含有割合が多い場合、オリゴフルオレンA1を原料として得たモノマー中にも塩素成分が多量に含まれ、重合反応に用いる触媒を失活させてしまい、所望の分子量まで重合が進行しなくなったり、反応が不安定化し、生産性が悪化する可能性がある。また、得られたポリマー中にも塩素成分が残存し、ポリマーの熱安定性を低下させるおそれがある。
本発明のオリゴフルオレンA1中には、塩基存在下、フルオレン類にホルムアルデヒド類を作用させて、架橋反応を行う工程由来のナトリウムやカリウムなどの長周期型周期表第1族の金属やカルシウムなどの第2族の金属が含有する可能性があり、これらの含有割合が500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。金属成分が多いと、オリゴフルオレンA1を原料として得たモノマー中にも金属成分が多量に含まれ、重合反応や樹脂を加工する際に、ポリマーが着色しやすくなる懸念がある。また、含有している金属成分が触媒作用や触媒失活作用を示し、重合が不安定化するおそれもある。
本発明のオリゴフルオレンA1、特に、オリゴフルオレンモノアリールエステル中には、エステル交換反応触媒存在下、炭酸ジアリール類を作用させて、エステル交換を行う工程に起因するチタン、銅、鉄などの遷移金属や、ナトリウム、カリウムなどの長周期型周期表第1族や、マグネシウム、カルシウムなどの第2族の金属や、亜鉛やカドミウムなどの第12族の金属や、スズなどの第14族の金属が含有する可能性があり、これらの含有割合が500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。金属成分が多いと、オリゴフルオレンを原料として得たモノマー中にも金属成分が多量に含まれ、重合反応や樹脂を加工する際に、ポリマーが着色しやすくなる懸念がある。また、含有している金属成分が触媒作用や触媒失活作用を示し、重合が不安定化するおそれもある。
本発明のオリゴフルオレンA1は、10質量%のテトラヒドロフラン溶液の色調が50以下であることが好ましい。さらには10以下であることが好ましい。オリゴフルオレンA1は可視光に近い領域まで吸収端が伸びており、重合や樹脂の加工により高温にさらされた時に着色しやすい性質がある。色相の良好なポリマーを得るためには、重合反応に用いるモノマーは可能な限り着色が少ないことが好ましく、係る観点から、モノマー原料であるオリゴフルオレンA1は可能な限り着色が少ないことが好ましい。色調は濃度に比例するので、異なる濃度で測定して、10質量%濃度に規格化した値であってもよい。ここで、オリゴフルオレンA1の色調(APHA値)は、JIS−K0071−1(1998年)に準じ、キシダ化学社製色度標準液(1000度)を希釈して作成した液とオリゴフルオレンA1を内径20mmの比色管に入れて比較することにより測定できる。
本発明のオリゴフルオレンA1は、熱重量測定における5%重量減少温度が230℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。さらには270℃以上であることが特に好ましい。フルオレンは非常に電子リッチな構造であり、フルオレン環に結合する置換基の反応性が高まっており、熱分解が起こりやすくなっている。重合反応に熱分解温度が低いモノマーを用いると、重合時に熱分解が起こり、所望の分子量まで重合が進行しなかったり、得られるポリマーが着色するおそれがあるため、モノマー原料であるオリゴフルオレンA1も熱分解温度が高いことが好ましい。
<1.7 反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレンA1の製造方法>
本発明のオリゴフルオレンA1の製造方法については特に限定されないが、例えば、塩基存在下、下記式(3)で表されるオリゴフルオレンを、下記式(4)で表される電子吸引性基を持つオレフィンと反応させることで、下記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1を製造する方法が挙げられる。
Figure 0006446800

Figure 0006446800
式中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。
前記式(3)及び(4)において、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnとしては、前記式(1)においてR3〜R9、Ra〜Rc、X及びnとして例示したものを好ましく用いることができる。
<1.7.1 電子吸引性基を持つオレフィン>
また、前記式(4)で表される電子吸引性基を持つオレフィンとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸アリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類、2−エチルアクリル酸メチル、2−フェニルアクリル酸メチル等のα−置換不飽和エステル類、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチルなどのβ−置換不飽和エステル類、β−ニトロスチレン等の共役ニトロオレフィン類、アクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル類、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒドなどのα,β−不飽和アルデヒド類が挙げられる。中でも、反応性官能基を直接導入できる下記一般式(4−1)で表される不飽和カルボン酸エステル
Figure 0006446800
(式中、Rcは式(4)におけるRcと同じであり、Rgは炭素数1〜10の有機置換基を示す。)が好ましい。ここで、Rgの炭素数1〜10の有機置換基としては「エステル基」における炭素数1〜10の有機置換基として例示したものを好ましく用いることができる。
一般式(4−1)で表される不飽和カルボン酸の中でも、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類又はα−置換不飽和エステル類がより好ましく、Rcが水素原子又はメチル基であるアクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類が、反応速度と反応選択性の観点からさらに好ましい。Rgは、より小さいものが工業的に安価かつ蒸留精製も容易で、反応性も高いため、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸フェニル、又はメタクリル酸フェニルが特に好ましい。
一方で、式(4−1)で表される不飽和カルボン酸エステルは、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート基等のヒドロキシアルキル基を有するエステル類である場合、1段階でポリエステルカーボネート、ポリエステルの原料を得ることができるため、特に好ましい。
電子吸引性基を持つオレフィンを2種類以上用いてもよいが、精製の簡便性から、電子吸引性基を持つオレフィンを1種類用いることが好ましい。
電子吸引性基を持つオレフィンの使用量については特に限定されないが、選択的にモノ付加体を取得するという観点から、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.3当量以上、さらに好ましくは0.5当量以上、特に好ましくは0.7等量以上、また、好ましくは2.0当量以下、より好ましくは1.8当量以下、さらに好ましくは1.5当量以下、特に好ましくは1.2等量以下である。
<1.7.2 塩基>
塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸カリウムなどの燐酸のアルカリ金属塩、n−ブチルリチウム、ターシャリブチルリチウムなどの有機リチウム塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド、などのアルカリ金属のアルコキシド塩、水素化ナトリウムや水素化カリウムなどの水素化アルカリ金属塩、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどの三級アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウムヒドロキシドが用いられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
3がメチレン基の場合と、それ以外の場合では、式(3)で表されるオリゴフルオレンの反応性に大きな違いがある傾向がある。そのため、R3がメチレン基の場合と、それ以外の場合に分けて記載する。
3がメチレン基の場合、式(3)で表されるオリゴフルオレンは溶媒中、塩基存在下で容易に分解反応が進行する。そのため、有機層と水層の2層系で反応を行った場合に、分解反応などの副反応が抑制できることから、水溶性の無機塩基を用いることが好ましい。中でもコスト、反応性の面からアルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましい。
また、水溶液の濃度は、特に好ましい水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、濃度が薄いと反応速度が著しく低下するため、通常は5wt/wt%以上、好ましくは10wt/wt%以上、より好ましくは25wt/wt%以上の水溶液を用いるのが特に好ましい。
3がメチレン基以外の場合、有機層と水層の2層系でも反応は進行するが、有機層に溶解する有機塩基を用いて反応を行った場合に、速やかに反応が進行するため、有機塩基を用いることが好ましい。これらの中で好ましくは、本反応において十分な塩基性を有する、アルカリ金属のアルコキシドであり、より好ましくは、工業的に安価なナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドである。ここでアルカリ金属のアルコキシドは、粉状のものを用いてもよく、アルコール溶液等の液状のものを用いてもよい。また、アルカリ金属とアルコールを反応させて調製してもよい。
3がメチレン基の場合、塩基の使用量は、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して、上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると攪拌や反応後の精製負荷が大きくなる場合があるので、特に好ましい塩基である25wt/wt%以上の水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、通常、式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して20倍体積量以下、好ましくは10倍体積量以下、さらに好ましくは5倍体積量以下である。塩基量が少なすぎると反応速度が著しく低下するため、通常、塩基は、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して、0.2倍体積量以上である。好ましくは、0.5倍体積量以上、より好ましくは1倍体積量以上である。
3がメチレン基以外の場合、塩基の使用量は、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して、上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると攪拌や反応後の精製負荷が大きくなる場合があるので、特に好ましい塩基であるナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドを用いた場合、通常、式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して5倍モル以下、好ましくは2倍モル以下、さらに好ましくは1倍モル以下、特に好ましくは0.5倍モル以下である。塩基量が少なすぎると反応速度が著しく低下するため、通常、塩基は、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して、0.005倍モル以上である。好ましくは、0.01倍モル以上、より好ましくは0.05倍モル以上、特に好ましくは0.1倍モル以上である。
<1.7.3 相間移動触媒>
有機層と水層の2層系での反応を行う場合、反応速度を上げるため、相間移動触媒を用いることが好ましい。
相間移動触媒としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、メチルトリデシルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムヨージド、アセチルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどの四級アンモニウム塩のハライド(フッ素は除く)、N,N−ジメチルピロリジニウムクロリド、N−エチル−N−メチルピロリジニウムヨージド、N−ブチル−N−メチルピロリジニウムブロミド、N−ベンジル−N−メチルピロリジニウムクロリド、N−エチル−N−メチルピロリジニウムブロミドなどの四級ピロリジニウム塩のハライド(フッ素は除く)、N−ブチル−N−メチルモルホリニウムブロミド、N−ブチル−N−メチルモルホリニウムヨージド、N−アリル−N−メチルモルホリニウムブロミドなどの四級モルホリニウム塩のハライド(フッ素は除く)、N−メチル−N−ベンジルピペリジニウムクロリド、N−メチル−N−ベンジルピペリジニウムブロミド、N,N−ジメチルピペリジニウムヨージド、N−メチル−N−エチルピペリジニウムアセテート、N−メチル−N−エチルピペリジニウムヨージドなどの四級ピペリジニウム塩のハライド(フッ素は除く)、クラウンエーテル類などが挙げられる。好ましくは四級アンモニウム塩、更に好ましくはベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、又はベンジルトリエチルアンモニウムクロリドである。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
相間移動触媒の使用量は、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して、多すぎるとエステルの加水分解や逐次マイケル反応などの副反応の進行が顕著になる傾向があり、また、コストの観点からも、通常、式(3)で表されるオリゴフルオレンに対して5倍モル以下、好ましくは2倍モル以下、さらに好ましくは1倍モル以下である。相間移動触媒の使用量が少なすぎると反応速度が著しく低下する傾向があるため、通常、相間移動触媒の使用量は、原料のオリゴフルオレンに対して、0.01倍モル以上である。好ましくは、0.1倍モル以上、より好ましくは0.5倍モル以上である。
<1.7.4 溶媒>
前記式(4)で表される電子吸引性基を持つオレフィンの反応は溶媒を用いて行うことが望ましい。
具体的に使用可能な溶媒は、アルキルニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなど、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸フェニル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の直鎖状のエステル類;γ―ブチロラクトン、カプロラクトン等の環状エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類など、エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルシクロペンチルエーテル、ターシャリーブチルメチルエーテルなど、ハロゲン系溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなど、ハロゲン系芳香族炭化水素としては、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなど、アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドなど、スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホランなど、環状式脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの単環状式脂肪族炭化水素;その誘導体であるメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど;デカリンなどの多環状式脂肪族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカンなどの非環状式脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレンなど、芳香族複素環としては、ピリジンなど、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ターシャリーブタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
3がメチレン基である場合、水と相分離する溶媒を用いることで、式(3)で表されるオリゴフルオレンの分解反応などの副反応を抑制できる傾向があることが解っている。さらに、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンをよく溶解する溶媒を用いた場合に、反応の進行が良好となる傾向があることから、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンの溶解度が0.5質量%以上の溶媒を用いることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上の溶媒を用いることである。具体的には、ハロゲン系脂肪族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、芳香族炭化水素、又はエーテル系溶媒が好ましく、ジクロロメタン、クロロベンゼン、クロロホルム、1,2−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、又はメチルシクロペンチルエーテルが特に好ましい。
一方、R3がメチレン基以外の基である場合、有機塩基及び式(3)で表されるオリゴフルオレンの溶解性が反応速度に大きく影響を与える傾向があることが分かっており、その溶解性を確保するために一定値以上の誘電率を持った溶媒を使用することが望ましい。有機塩基及び式(3)で表されるオリゴフルオレンをよく溶解する溶媒としては、芳香族複素環、アルキルニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、が好ましく、ピリジン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランが特に好ましい。
上記溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
溶媒の使用量は、上限は特に制限はないが、反応器あたりの目的物の生成効率を考えると、通常、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンの20倍体積量、好ましくは15倍体積量、さらに好ましくは10倍体積量となるような量が使用される。一方、溶媒の使用量が少なすぎると試剤の溶解性が悪くなり攪拌が難しくなるとともに反応の進行が遅くなるので、下限としては、通常、原料である式(3)で表されるオリゴフルオレンの1倍体積量、好ましくは2倍体積量、さらに好ましくは4倍体積量となるような量が使用される。
<1.7.5 反応形式>
反応の形式はバッチ型反応でも流通型反応でもそれらを組み合わせたものでも特にその形式は制限なく採用できる。
バッチ式の場合の反応試剤の反応器への投入方法は、電子吸引性基を持つオレフィンを反応開始時に一括添加で仕込んだ場合、電子吸引性基を持つオレフィンが高濃度で存在するため、副反応の重合反応が進行し易い。よって原料である式(3)で表されるオリゴフルオレン、相間移動触媒、溶媒及び塩基を加えた後に、少量ずつ電子吸引性基を有するオレフィンを逐次添加するのが好ましい。
<1.7.6 反応条件>
温度が低すぎると十分な反応速度が得られず、逆に高すぎると電子吸引性基を有するオレフィンの重合反応が進行しやすい傾向があるため、温度管理が極めて重要である。そのため、反応温度としては、具体的には、通常、下限は0℃、好ましくは10℃、より好ましくは15℃で実施される。一方通常、上限は、40℃、好ましくは30℃、より好ましくは20℃で実施される。
一般的な反応時間は、通常下限が2時間、好ましくは4時間、さらに好ましくは6時間で、上限は特に限定はされないが通常30時間、好ましくは20時間、さらに好ましくは10時間である。
<1.7.7 目的物の分離・精製>
反応終了後、目的物である前記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1は、副生した金属ハロゲン化物、及び残存した無機塩基を濾過して反応液から除去した後に、溶媒を濃縮する方法、或いは目的物の貧溶媒を添加する方法などを採用して、目的物である前記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1を析出させることにより単離することができる。
また、反応終了後、反応液に酸性水と目的物である前記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1が可溶な溶媒とを添加して抽出してもよい。溶媒により抽出された目的物は、溶媒を濃縮する方法、或いは貧溶媒を添加する方法などにより単離することができる。
抽出の際に使用可能な溶媒としては、目的物である前記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1が溶解するものであれば良く、特に制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物、ジクロロメタン、クロロホルムなどハロゲン系溶媒などの1種又は2種以上が好適に用いられる。
ここで得られる式(1)で表されるオリゴフルオレンA1のうち、Xがエステル基である場合は、ポリエステル、又は、ポリエステルカーボネート原料モノマーの前駆体として使用することなどが可能であるが、精製を行ってから使用しても良い。精製法としては、通常の精製法、例えば、再結晶や、再沈法、抽出精製、カラムクロマトグラフィーなど制限なく採用可能である。また、オリゴフルオレンA1を適当な溶媒に溶解して活性炭で処理することも可能である。その際に使用可能な溶媒は、抽出の際に使用可能な溶媒と同じである。
ここで得られる式(1)で表されるオリゴフルオレンA1のうち、Xがカルボキシル基である場合は、そのままポリエステル、又は、ポリエステルカーボネート原料モノマーの前駆体として使用することなどが可能である。また、エステル化反応により、Xがエステル基であるオリゴフルオレンへと変換可能である。
ここで得られる式(1)で表されるオリゴフルオレンA1のうち、Xがニトロ基又はシアノ基である場合は、水素雰囲気下でのパラジウム炭素等の方法による水素添加や、水素化リチウムアルミニウム等の還元剤によるヒドリド還元により、アミノ基を有するオリゴフルオレンを製造できる。また、Xがシアノ基である場合は、米国特許第3280169号明細書及び米国特許第3324084号明細書等の方法により、Xがエステル基であるオリゴフルオレンへと変換できる。
<2 異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレン化合物A2>
本発明の異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレン(以下、「オリゴフルオレンA2」と略記する場合がある)は、置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位aの9位の炭素原子同士が置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位aを含むオリゴフルオレンであって、
該オリゴフルオレン構造単位aのいずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に該反応性官能基とは異なる任意の反応性官能基を有することを特徴とするオリゴフルオレン。
Figure 0006446800
式(A)中、Ra〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。
フルオレン単位aを結合するアルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基としては、それぞれ、<1.1 アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基>において例示したものを好ましく採用することができる。
同様に、フルオレン単位aが有していてもよい置換基としては、<1.2 フルオレン単位aが有していてもよい置換基>において例示したものを好ましく採用することができる。
同様に、式(A)におけるRa〜Rc及びXとしては、それぞれ、<1.3 反応性官能基>において例示したものを好ましく採用することができる。
<2.1 任意の反応性官能基>
前述のとおり、本発明のオリゴフルオレンA2は、いずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に前記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位aの9位の炭素原子に該反応性官能基とは異なる任意の反応性官能基を有するものである。
前記任意の反応性官能基については特に限定されないが、式(A)の規定を満足しないものであってもよく、また、式(A)の規定を満足するが一方の反応性官能基とは同一ではないものであってもよい。
このように、1つのオリゴフルオレンが異なる反応性官能基を2つ有することで、2種類の反応性官能基に由来する特定の物性を、簡便に樹脂に付与することができる傾向がある。
前記任意の反応性官能基の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシメチル−2−メチルプロピレン基、4−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル基、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル基、(4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−1−イル)メチル基等のヒドロキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、エトキシカルボニルメチル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基、2−(メトキシカルボニル)エチル基、2−(フェノキシカルボニル)エチル基、2−メチル−2−(エトキシカルボニル)エチル基、2−メチル−2−(メトキシカルボニル)エチル基、2−メチル−2−(フェノキシカルボニル)エチル基、2−(メトキシカルボニル)プロピル基等のエステル基;2−ヒドロキシエトキシカルボニル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニルエチル基、2−メチル−2−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニルエチル基、2−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニルプロピル基、2−(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニルエチル基、2−メチル−2−(4−ヒドロキシブトキシ)カルボニルエチル基、2−[[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−1−イル]メトキシ]カルボニルエチル基、2−メチル−2−[[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン−1−イル]メトキシ]カルボニルエチル基等のヒドロキシエステル基;カルボキシル基、カルボキシルメチル基、2−カルボキシルエチル基、2−メチル−2−カルボキシルエチル基等のカルボキシル基;アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノ基;アクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシメチル基、2−(アクリロイルオキシ)エチル基、2−(メタクリロイルオキシ)エチル基、3−(アクリロイルオキシ)プロピル基、3−(メタクリロイルオキシ)プロピル基等のアクリル基;2,3−エポキシプロピル基、2,3−エポキシプロポキシメチル基、2−(2,3−エポキシプロポキシ)エチル基等のエポキシ基等が挙げられる。
なお、本発明のオリゴフルオレンA2は、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体の原料として用いることができるが、反応性官能基は、2か所のみであることが好ましく、種々の樹脂組成物を製造するための重合条件で、重合反応性基として働くような置換基は、含まれないことが好ましい。
これらの中で、式(A)で表される反応性官能基と他方の反応性官能基の好ましい組み合わせは、ポリエステルを1種類のオリゴフルオレン化合物で製造することができることから、式(A)がエステル基で、他方の反応性官能基がヒドロキシ基の組み合わせ、式(A)がカルボキシル基で、他方の反応性官能基がヒドロキシ基の組み合わせ、及び、式(A)がエステル基で、他方の反応性官能基がヒドロキシエステル基の組み合わせが挙げられる。また、この段落におけるエステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及びヒドロキシエステル基は、前段落で例示した反応性官能基の具体的な構造であるエステル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及びヒドロキシエステル基と同義である。
<2.2 具体的な構造>
本発明のオリゴフルオレンA2としては、具体的には、下記一般式(2)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 0006446800
式(2)中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
10は、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基、
又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基である。Aは水酸基、アミノ基、エステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。
前記式(2)において、R3としては、<1.1 アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基>にて例示したものを好ましく用いることができる。
さらに、R4〜R9としては、前記式(1)におけるR4〜R9として例示したものを好ましく用いることができる。
また、Ra〜Rc及びXとしては、前記式(A)におけるRa〜Rc及びXとして例示したものを好ましく用いることができる。
10としては、後述の<4.1 2価のオリゴフルオレン>において、置換基α1及びα2として例示したものを好ましく用いることができる。
Aにおける「エステル基、アミド基」は、前記式(A)におけるXの「エステル基、アミド基」として例示したものを好ましく用いることができる。
また、Aにおいて「アミノ基」の具体的な構造は特に限定されないが、例えば、(i)窒素原子に2つ水素原子を有する1級アミノ基、(ii)窒素原子に水素原子と炭素数1〜10の有機置換基を有する2級アミノ基、(iii)窒素原子にそれぞれ独立に炭素数1〜10の有機置換基を2つ有する3級アミノ基が挙げられる。炭素数1〜10の有機置換基としては、前記式(A)のXの「エステル基」における炭素数1〜10の有機置換基として例示したものを好ましく用いることができる。
これらの中でも、1種類の本発明のオリゴフルオレンA2を用いることで、ポリエステル、ポリアミドで製造できることから、Aが水酸基又はアミノ基であることが好ましく、製造が容易であることから、水酸基であることがより好ましい。
<2.3 異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレンA2の具体例>
本発明のオリゴフルオレンA2の具体例としては、下記[F]群に示されるような構造が挙げられる。
Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800
<2.4 異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレンA2の物性>
本発明のオリゴフルオレンA2の物性値は特に限定されないが、以下に例示する物性値を満足するものであることが好ましい。
本発明のオリゴフルオレンA2中の塩素含有割合は、Cl換算質量で100質量ppm以下であることが好ましい。さらには10質量ppm以下であることが好ましい。塩素成分の含有割合が多い場合、重合反応に用いる触媒を失活させてしまい、所望の分子量まで重合が進行しなくなったり、反応が不安定化し、生産性が悪化する可能性がある。また、得られたポリマー中にも塩素成分が残存し、ポリマーの熱安定性を低下させるおそれがある。
本発明のオリゴフルオレンA2中には、塩基存在下、ホルムアルデヒド類を作用させて、ヒドロキシメチル化を行う工程由来のナトリウムやカリウムなどの長周期型周期表第1族の金属やカルシウムなどの第2族の金属が含有する可能性があり、これらの含有割合が500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。金属成分が多いと、重合反応や樹脂を加工する際に、ポリマーが着色しやすくなる懸念がある。また、含有している金属成分が触媒作用や触媒失活作用を示し、重合が不安定化するおそれもある。
本発明のオリゴフルオレンA2、特に、オリゴフルオレンアリールエステル中には、エステル交換反応触媒存在下、炭酸ジアリール類を作用させて、エステル交換を行う工程に起因するチタン、銅、鉄などの遷移金属や、ナトリウム、カリウムなどの長周期型周期表第1族や、マグネシウム、カルシウムなどの第2族の金属や、亜鉛やカドミウムなどの第12族の金属や、スズなどの第14族の金属が含有する可能性があり、これらの含有割合が500質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下である。金属成分が多いと、重合反応や樹脂を加工する際に、ポリマーが着色しやすくなる懸念がある。また、含有している金属成分が触媒作用や触媒失活作用を示し、重合が不安定化するおそれもある。
本発明のオリゴフルオレンA2は、10質量%のテトラヒドロフラン溶液の色調が50以下であることが好ましい。さらには10以下であることが好ましい。オリゴフルオレンは可視光に近い領域まで吸収端が伸びており、重合や樹脂の加工により高温にさらされた時に着色しやすい性質がある。色相の良好なポリマーを得るためには、重合反応に用いるモノマーは可能な限り着色が少ないことが好ましい。色調は濃度に比例するので、異なる濃度で測定して、10質量%濃度に規格化した値であってもよい。ここで、オリゴフルオレンA2の色調(APHA値)は、JIS−K0071−1(1998年)に準じ、キシダ化学社製色度標準液(1000度)を希釈して作成した液とオリゴフルオレンA2を内径20mmの比色管に入れて比較することにより測定できる。
本発明のオリゴフルオレンA2は、熱重量測定における5%重量減少温度が230℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。さらには270℃以上であることが特に好ましい。フルオレンは非常に電子リッチな構造であり、フルオレン環に結合する置換基の反応性が高まっており、熱分解が起こりやすくなっている。重合反応に熱分解温度が低いモノマーを用いると、重合時に熱分解が起こり、所望の分子量まで重合が進行しなかったり、得られるポリマーが着色するおそれがある。
<2.5 異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレンA2の製造方法>
本発明のオリゴフルオレンA2の製造方法については特に限定されないが、例えば、前記式(1)で表されるオリゴフルオレンと、求電子性を有する化合物とを反応させることで、前記式(2)で表されるオリゴフルオレンA2を製造する方法が挙げられる。
Figure 0006446800
以下、前記式(2)で表されるオリゴフルオレンA2の製造方法を、求電子性を有する化合物の種類ごとに製造法A、製造法B、製造法C、製造法Dに分けて記載する。
<2.5.1 製造法A:ホルムアルデヒド類の付加による製造方法>
反応性官能基としてヒドロキシメチル基を有する、下記式(2a)で表されるオリゴフルオレンは、下記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1及びホルムアルデヒド類から、塩基存在下、製造法Aで表される反応に従って製造することができる。
Figure 0006446800
式(2a)中、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnは前記式(1)と同じである。
<2.5.1.1 ホルムアルデヒド類>
製造法Aで用いられるホルムアルデヒド類とは、反応系中にホルムアルデヒドを供給できる物質であれば特に限定されないが、ガス状のホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド水溶液、ホルムアルデヒドが重合したパラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。これらの中で、パラホルムアルデヒドを用いることが、工業的に安価かつ粉末状のため操作性が容易で正確に秤量することが可能であることから、特に好ましい。
ホルムアルデヒド類の使用量は、原料であるオリゴフルオレンA1に対して、上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると反応後の精製負荷が大きくなる傾向があるので、通常、オリゴフルオレンA1に対して10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、さらに好ましくは3倍モル以下である。下限は、原料に対して理論量で1倍モルであるので、通常は1倍モル以上である。反応の進行を速めまた原料や中間体を残存させないために、ホルムアルデヒド類を原料のオリゴフルオレンA1に対して多少過剰に使用することは何ら問題ない。その際の好ましいホルムアルデヒド類の使用量は、原料のオリゴフルオレンA1に対して1.1倍モル以上、さらに好ましくは1.2倍モル以上である。
<2.5.1.2 塩基>
塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、燐酸ナトリウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸カリウムなどの燐酸のアルカリ金属塩、n−ブチルリチウム、ターシャリブチルリチウムなどの有機リチウム塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド、などのアルカリ金属のアルコキシド塩、水素化ナトリウムや水素化カリウムなどの水素化アルカリ金属塩、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどの三級アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウムヒドロキシドなどが用いられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらの中で好ましくは、本反応において十分な塩基性を有する、アルカリ金属のアルコキシドであり、より好ましくは、工業的に安価なナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドである。ここでアルカリ金属のアルコキシドは、粉状のものを用いてもよく、アルコール溶液等の液状のものを用いてもよい。また、アルカリ金属とアルコールを反応させて調製してもよい。
塩基の使用量の上限は特にないが、使用量が多すぎると反応後の精製負荷が大きくなる傾向があるので、オリゴフルオレンA1に対し1倍モル以下、好ましくは0.5倍モル以下、さらに好ましくは0.2倍モル以下がよい。一方、塩基の使用量が少なすぎると反応の進行が遅くなるので、下限としては、通常、原料のオリゴフルオレンA1に対して0.01倍モル以上、好ましくは0.05倍モル以上である。
<2.5.1.3 溶媒>
製造法Aは溶媒を用いて行うことが望ましい。
具体的に使用可能な溶媒は、アルキルニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリルなど、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸フェニル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の直鎖状のエステル類;γ―ブチロラクトン、カプロラクトン等の環状エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類など、エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルシクロペンチルエーテル、ターシャリーブチルメチルエーテルなど、ハロゲン系溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタンなど、ハロゲン系芳香族炭化水素としては、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼンなど、アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど、スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホランなど、環状式脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの単環状式脂肪族炭化水素;その誘導体であるメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど;デカリンなどの多環状式脂肪族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカンなどの非環状式脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレンなど、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ターシャリーブタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
中でもオリゴフルオレンA1から生じるアニオンの溶解性が高く、反応の進行が良好である傾向があることから、極性溶媒のアミド系溶媒、又はスルホキシド系溶媒が好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
これらの溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。溶媒の使用量は、上限は特に制限はないが、反応器あたりの目的物の生成効率を考えると、通常、原料のオリゴフルオレンA1の10倍体積量、好ましくは7倍体積量、さらに好ましくは4倍体積量となるような量が使用される。一方、溶媒の使用量が少なすぎると、攪拌が難しくなるとともに反応の進行が遅くなる傾向があるので、下限としては、通常、原料のオリゴフルオレンA1の1倍体積量、好ましくは2倍体積量、さらに好ましくは3倍体積量となるような量が使用される。
<2.5.1.4 反応形式>
製造法Aを行う際、反応の形式はバッチ型反応でも流通型反応でもそれらを組み合わせたものでも特にその形式は制限なく採用できる。
バッチ式の場合の反応試剤の反応器への投入方法は、塩基を反応開始時に一括添加で仕込んだ場合、分解反応が進行しやすいことが解っているので、原料のオリゴフルオレンA1、ホルムアルデヒド類、及び溶媒を加えた後に、少量ずつ塩基を添加する方法が好ましい。
<2.5.1.5 反応条件>
製造法Aは温度が低すぎると十分な反応速度が得られず、逆に高すぎると分解反応が進行する傾向があることが解っており、温度管理を行うことが望ましい。そのため、最適な溶媒であるN,N,−ジメチルホルムアミドと最適な塩基であるナトリウムエトキシドを用いた場合、通常、下限を−50℃、上限を30℃で実施される。具体的には、R3がメチレン基の場合、反応温度の上限は、好ましくは20℃、より好ましくは10℃で実施される。一方、下限は、好ましくは−20℃、より好ましくは0℃以上で実施される。R3がエチレン基の場合、反応温度の上限は、好ましくは25℃、より好ましくは20℃で実施される。下限は、好ましくは0℃、より好ましくは10℃以上で実施される。
<2.5.1.6 目的物の分離・精製>
反応終了後、目的物である式(2a)で表されるオリゴフルオレンは、反応液を希塩酸などの酸性水に添加し、あるいは希塩酸などの酸性水を反応液に添加し、析出させることにより単離することができる。
また、反応終了後、目的物である式(2a)で表されるオリゴフルオレンが可溶な溶媒と水を反応液に添加して抽出してもよい。溶媒により抽出された目的物は、溶媒を濃縮する方法、或いは貧溶媒を添加する方法などにより単離することができる。
得られた式(2a)で表されるオリゴフルオレンは、ポリマー原料としてそのまま重合に使用することも可能であるが、精製を行った後に重合しても良い。精製法としては、通常の精製法、例えば、再結晶や、再沈法、抽出精製、カラムクロマトグラフィーなど制限なく採用可能である。
金属成分の存在は重合反応では問題となることが多く、長周期型周期表第1族と第2族の金属のモノマー中の含有割合は、500質量ppm以下、より好ましくは200質量ppm以下、更に好ましくは50質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下とすることができる。金属成分を除くためには、一般的に分液操作が非常に有効であるが、目的物である式(2a)で表されるオリゴフルオレンは、N,N−ジメチルホルムアミドやテトラヒドロフランなどの高極性溶媒にのみ溶解する傾向があるため、2層系で行う分液操作は非常に困難である場合が多い。一方、反応停止後の析出物に対して、水洗、任意の溶媒による熱懸洗などの通常の精製処理を行っても、混入している金属成分を充分に除くことは困難であり、析出物中には数100質量ppmオーダーの金属成分が残存する場合がある。金属成分を除くための良好な精製法としては、不純物を含む反応析出物を、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの比較的溶解性の高い溶媒に溶解させた後、水に添加して析出させる方法が、簡便かつ効果的な無機塩除去法として好ましい。
<2.5.2 製造法B:電子吸引性基を持つオレフィンの付加反応による製造方法>
下記式(2b)で表されるオリゴフルオレンは、下記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1、及び前記式(4)とは異なる、電子吸引基を持つオレフィン(4−2)から、塩基存在下、製造法Bで表される反応に従って製造することができる。
Figure 0006446800
式(2b)中、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnは前記式(1)と同じである。また、Ra2〜Rc2はそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。ただし、Ra〜Rc及びXと、Ra2〜Rc2及びXaとで、少なくともいずれか1つは同じではない。
a2〜Rc2及びXaとしては、式(A)におけるRa〜Rc及びXとして例示したものを好ましく採用することができるが、Ra〜Rc及びXと、Ra2〜Rc2及びXaとで、少なくともいずれか1つを異なるものにする必要がある。特に、異なる反応性官能基に由来する特定の物性を簡便に樹脂に付与するとの観点からは、式(2b)においてXとXaとが同一ではないことが好ましい。
式(2b)で表されるオリゴフルオレンは、前記式(1)で表されるオリゴフルオレンA1を製造する方法に準じて製造することができる。この際、オリゴフルオレンA1を製造した後に、単離、精製してから製造してもよく、式(3)で表されるオリゴフルオレンと式(4)で表される電子吸引性基を持つオレフィンを反応させた後に、続けて式(4−2)で表される電子吸引性基を持つオレフィンを反応させてもよい。
<2.5.3 製造法C:オリゴフルオレンA1のアルキル化、加水分解反応による式(2c)で表されるオリゴフルオレンの製造法)>
下記式(2c)で表されるオリゴフルオレンは、オリゴフルオレンA1と、式(8)で表されるアルキル化剤のアルキル化反応により、式(2c−1)で表される脱離基を有するオリゴフルオレンを合成する工程(工程(ia))と、続く加水分解反応(工程(iia))を経る方法で製造することができ、また、オリゴフルオレンA1と式(9)で表されるアルキル化剤のアルキル化反応により、式(2c−2)で表される保護基を有するオリゴフルオレンを合成する工程(工程(ib))と、続く加水分解反応(工程(iib))を経る方法等の方法により製造することもできる。
Figure 0006446800
式(2c)中、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnは前記式(1)と同じである。R10は、前記式(2)のR10と同じである。
また、Xb及びXcは、脱離基を表す。脱離基の例としては、ハロゲン原子(フッ素を除く。)、メシル基、またはトシル基などが挙げられる。
Tは、保護基を表す。保護基の例としては、メトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基やターシャリーブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、又はターシャリーブチルジメチルシリル基などが挙げられる。)
フルオレン類のアルキル化反応は広く知られており、例えば、9,9−ビス(ブロモへキシル)フルオレンや9,9−ビス(ヨードへキシル)フルオレンなどの9,9−ビス(ハロアルキル)フルオレンが報告されている(J.Org.Chem.,2010,75,2714.)。これらの知見から、オリゴフルオレンAを原料とすることで、脱離基を有するオリゴフルオレンの合成は可能である。また、ハロゲンの加水分解に関しても、多数報告例が知られていることから(Bull.Korean Chem.Soc.,2008,29.2491.)、この経路により式(2c)で表されるオリゴフルオレンが合成できうる。
工程(ia)で用いられるアルキル化剤としては、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨードプロパン、1,4−ジヨードブタン、1,5−ジヨードペンタン、1,6−ジヨードヘキサン、ジブロモメタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジブロモブタン、1,5−ジブロモペンタン、1,6−ジブロモヘキサン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,5−ジクロロペンタン,1,6−ジクロロへキサン、1−ブロモ−3−クロロプロパンなどの直鎖状のアルキルジハライド(フッ素原子を除く)、2,2−ジメチル−1,3−ジクロロプロパンなどの分岐鎖を含むアルキルジハライド(フッ素原子を除く)、1,4−ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ブロモメチル)ベンゼンなどのアラルキルジハライド(フッ素原子を除く)、エチレングリコールジメシラート、エチレングリコールジトシラート、プロピレングリコールジメシラート、テトラメチレングリコールジメシラート、などのグリコールのジスルホネートなどが挙げられる。
工程(ib)で用いられるアルキル化剤としては、3−ブロモプロパノール、2−ブロモプロパノール、3−クロロ−2,2−ジメチル−1−プロパノールなどのハロアルキルアルコールの保護化体などが挙げられる。
<2.5.4.製造法D:オリゴフルオレンA1のアルキル化による、式(2d)で表されるオリゴフルオレンの製造法)>
式(2d)で表されるオリゴフルオレンは、オリゴフルオレンA1と式(10)で表されるアルキル化剤のアルキル化反応により製造することができる。
Figure 0006446800
式(10)中、Xb及びR10は、前記式(8)と同じである。R21は、Rgと同じである。
式(2d)中、R3〜R9、Ra〜Rc、X及びnは前記式(1)と同じである。
式(2d)のオリゴフルオレンであって、R10が直接結合以外であるものは、塩基存在下、オリゴフルオレンA1と式(10)で表されるアルキル化剤を<2.5.3 製造法C>における工程(ia)又は(iib)として記載した方法と同様の方法で、アルキル化反応を行うことにより、製造することができる。
製造法Dで用いられるアルキル化剤としては、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸プロピル、クロロ酢酸n−ブチル、クロロ酢酸tert−ブチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸tert−ブチル、ヨード酢酸メチル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸tert−ブチル、クロロプロピオン酸メチル、クロロプロピオン酸エチル、クロロプロピオン酸tert−ブチル、ブロモプロピオン酸メチル、ブロモプロピオン酸エチル、ブロモプロピオン酸tert−ブチル、ヨードプロピオン酸メチル、ヨードプロピオン酸エチル、ヨードプロピオン酸tert−ブチルなどのハロアルカン酸アルキル、4−クロロメチル安息香酸メチル、4−ブロモメチル安息香酸メチル、4−クロロメチル安息香酸エチル、4−ブロモメチル安息香酸エチル、3−クロロメチル安息香酸メチル、3−ブロモメチル安息香酸メチルなどハロアルキル安息香酸アルキルなどが挙げられる。
<3 オリゴフルオレン組成物>
本発明のオリゴフルオレン組成物は、オリゴフルオレンA1(反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレン化合物)及び/又はオリゴフルオレンA2(異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレン化合物)(以下、これらをまとめて「オリゴフルオレンA」と略記する場合がある。)と、該オリゴフルオレンAとは異なる化学構造を有する後述のオリゴフルオレンBとを含む。特に、樹脂の重合速度や分子量等を制御するとの観点からはオリゴフルオレンA1を含むことが好ましく、一方で、2種以上の反応性官能基に起因する樹脂物性等を簡便に得るとの観点からはオリゴフルオレンA2を含むことが好ましい。
<3.1 オリゴフルオレンB>
前記オリゴフルオレンBは、置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位bの9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位(以下、オリゴフルオレン構造単位bという。)を含み、
該オリゴフルオレン構造単位bにおける両末端のフルオレン単位bの9位の炭素原子に下記式(B)で表される同一の反応性官能基を有する。
Figure 0006446800
式(B)中、Rd〜Rfはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、X1はエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。*はフルオレン単位bの9位の炭素原子との結合手である。
フルオレン単位bを結合するアルキレン基、アリーレン基、及びアラルキレン基としては、それぞれ、<1.1 アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基>において例示したものを好ましく採用することができる。また、フルオレン単位bを結合する基は、オリゴフルオレンにおいてフルオレン単位aを結合する基と同一であってもよく、異なっていてもよい。同時に製造できるとの観点からは、同一であることが好ましい。
同様に、フルオレン単位aが有していてもよい置換基としては、<1.2 フルオレン単位aが有していてもよい置換基>において例示したものを好ましく採用することができる。
同様に、式(B)におけるRd〜Rf及びX1としては、それぞれ、<1.3 反応性官能基>においてRa〜Rc及びXとして例示したものを好ましく採用することができる。また、式(B)におけるRd〜Rf及びX1は、オリゴフルオレンにおける式(A)の、Ra〜Rc及びXと同一であってもよく、異なっていてもよい。同時に製造できるとの観点からは、同一であることが好ましい。
<3.2 オリゴフルオレンBの具体的な構造>
本発明に係るオリゴフルオレンBとしては、具体的には、下記一般式(7)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 0006446800
式(7)中、R13は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
14〜R19は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R14〜R19のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
d〜Rfはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基であり、
1はエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。
式(7)におけるR13としては、式(1)におけるR3として例示したものを好ましく採用することができる。同様に、式(7)におけるR14〜R19としては、式(1)におけるR4〜R9として例示したものを好ましく採用することができる。また、式(7)におけるRd〜Rfとしては、式(1)におけるRa〜Rcとして例示したものを好ましく採用することができる。さらに、式(7)におけるX1としては、式(1)におけるXとして例示したものを好ましく採用することができる。式(7)におけるnとしては、式(1)におけるnとして例示したものを好ましく採用することができる。
<3.3 オリゴフルオレンBの具体例>
本発明に係るオリゴフルオレンBの具体例としては、下記[G]群に示されるような構造が挙げられる。
Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800

Figure 0006446800
<3.4 含有量>
本発明のオリゴフルオレン組成物における前記オリゴフルオレンAの含有量については特に限定されないが、ポリマーの分子量を制御するとの観点からは、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがよりさらに好ましい。
本発明のオリゴフルオレン組成物における前記オリゴフルオレンBの含有量については特に限定されないが、ポリマーの重合度を上げるとの観点からは、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがよりさらに好ましい。また、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがよりさらに好ましい。
また、オリゴフルオレン組成物に含まれる、オリゴフルオレンA及びオリゴフルオレンBの含有割合については特に限定されないが、ポリマーの分子量を制御するとの観点からは、組成物中に含まれるオリゴフルオレンAとオリゴフルオレンBのモル比(オリゴフルオレンAのモル数/オリゴフルレオンBのモル数)が0.001以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましく、また、ポリマーの重合度を上げるとの観点からは、0.05以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることがさらに好ましい。
オリゴフルオレン組成物中に含まれるオリゴフルオレンAやオリゴフルオレンBのモル数は、例えば、HPLC分析の面積%から、検量線を用いて見積もることができる。
<4 樹脂組成物>
本発明のオリゴフルオレンを用いて、樹脂組成物を製造することができる。
オリゴフルオレンとしてオリゴフルオレンAを用いた場合には、例えば、末端に下記式(5)に示す構造を有する重合体からなる又は該重合体を含有する樹脂組成物を得ることができる。
Figure 0006446800
式(5)中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
a〜Rcはそれぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキル基である。
Xはエステル基、アミド基、カルボキシル基、シアノ基、又はニトロ基である。
nは1〜5の整数値を示す。
*は連結基との結合手である。
式(5)におけるR3〜R9、Ra〜Rc及びnとしては、式(1)におけるR3〜R9、Ra〜Rc及びnとして例示したものを好適に採用することができる。
<4.1 2価のオリゴフルオレン>
本発明の樹脂組成物に係る重合体は、好ましくは、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する。
この場合、本発明の樹脂組成物は2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体のほか、後述するその他の重合体を含んでいてもよく、また、添加剤等を含んでいてもよい。
2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体を得る方法については特に限定されないが、例えば、オリゴフルオレンとしてオリゴフルオレン化合物A2を用いた場合には、反応性官能基に由来する2種類以上の連結基を有し、かつ、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体を得ることができる。またオリゴフルオレンBを用いることによっても、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体を得ることができる。
2価のオリゴフルオレンは、置換基を有していてもよい2以上のフルオレン単位を含み、かつ、該フルオレン単位の9位の炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたものである。
フルオレン単位としては、オリゴフルオレンAのフルオレン単位aとして例示したものや、オリゴフルオレンBのフルオレン単位bとして例示したものを好ましく用いることができる。
同様に、フルオレン単位を結合するアルキレン基としては、オリゴフルオレンAのフルオレン単位aを結合するアルキレン基として例示したものや、オリゴフルオレンBのフルオレン単位bを結合するアルキレン基として例示したものを好ましく用いることができる。
また、フルオレン単位を結合するアリーレン基としては、オリゴフルオレンAのフルオレン単位aを結合するアリーレン基として例示したものや、オリゴフルオレンBのフルオレン単位bを結合するアリーレン基として例示したものを好ましく用いることができる。
さらに、フルオレン単位を結合するアラルキレン基としては、オリゴフルオレンAのフルオレン単位aを結合するアラルキレン基として例示したものや、オリゴフルオレンBのフルオレン単位bを結合するアラルキレン基として例示したものを好ましく用いることができる。
前記2価のオリゴフルオレンは、2以上のフルオレン単位のうち、両末端に位置するフルオレン単位の9位の炭素原子にそれぞれ置換基α1及びα2を結合させ、該置換基α1及びα2を2価の基とすることもできる。この場合、α1とα2とは同じであっても異なっていてもよい。また、置換基α1及びα2には直接結合が含まれ、つまり、フルオレン単位の9位の炭素原子を2価の基とすることもできる。
置換基α1及びα2としては特に限定されないが、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基が挙げられる。
「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」としては、フルオレン単位aを結合するアルキレン基として例示したものを好ましく用いることができる。この場合、逆波長分散性を発現するとの観点からは、炭素数が2以上のものを用いることが好ましい。一方で、フラット分散性を発現するとの観点からは、その炭素数を1とすることが好ましい。さらに、逆波長分散性を発現させる場合においては、フルオレン環の配向を主鎖に対して固定しやすくし、効率的に逆波長分散特性を得るとの観点からは炭素数は5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、2以下であることが特に好ましい。一方で樹脂組成物に柔軟性を付与するとの観点からは、その炭素数は2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。
「置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基」としては、フルオレン単位aを結合するアリーレン基として例示したものを好ましく用いることができる。同様に、「置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基」としては、フルオレン単位aを結合するアラルキレン基として例示したものを好ましく用いることができる。
「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子またはカルボニル基で連結された基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[H]群に示されるような2価の基
Figure 0006446800
が挙げられる。これらの中で好ましくは、樹脂組成物の透明性と安定性を保持したまま柔軟性を付与することができる、アルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基から選ばれる2つ以上の基が酸素原子で連結された基であり、より好ましくは、柔軟性を付与しつつ樹脂組成物のガラス転移温度を高くできる、下記[I]群に示されるようなアルキレン基が酸素原子で連結された基である。
Figure 0006446800
また、フルオレン比率を高めるとの観点からは、これらの連結された基とする場合には、その炭素数を2以上とすることが好ましく、また、6以下とすることが好ましく、4以下とすることがより好ましい。
これらの中でも、置換基α1及びα2の少なくとも1つが直接結合であるか、置換基α1及びα2の少なくとも1つの炭素数が2以上である場合には、フルオレン環(フルオレン単位)が主鎖に対して略垂直に配向するため、樹脂組成物中の2価のオリゴフルオレンの割合が少量であっても、逆波長分散性を発現しやすくなる傾向がある。後者の場合には、同様の観点から、α1及びα2の両方を、炭素数2以上のものとすることが好ましい。一方で、置換基α1及びα2の両方を炭素数1のもの(すなわち、置換されていてもよいメチレン基)とした場合には、フルオレン環(フルオレン単位)が主鎖に対して略垂直に配向せず、大きく傾いて配向するために、樹脂組成物中の2価のオリゴフルオレンの割合を広い範囲で変化させても、広帯域で位相差の差が小さいフラット分散性となりやすい傾向がある。
これらの中で好ましくは、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基である。
より好ましくは、直接結合、直鎖状のアルキレン基、分岐鎖を含むアルキレン基、上記[A]群に示されるような脂環構造の任意の2箇所に直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基の結合手を持つ脂環式アルキレン基、フェニレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子で連結された基である。
さらに好ましくは、芳香環を有さないことで光学フィルムに求められる低い光弾性係数を達成できる傾向がある、直接結合、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−メトキシメチル−2−メチルプロピレン基又は下記[J]群に示されるような脂環式アルキレン基
Figure 0006446800
(上記[J]群に示される各環構造における2つの結合手の置換位置については任意であり、同一炭素に2つの結合手が置換していてもよい。)である。
よりさらに好ましくは、直接結合、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、又は2,2−ジメチルプロピレン基である。特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、又はn−プロピレン基である。
鎖長が長いとガラス転移温度が低くなる傾向があるため、短い鎖状の基、例えば炭素数2以下の基が好ましい。さらに、分子構造が小さくなるので繰り返し単位中のフルオレン環の濃度(フルオレン比率)を高くすることができる傾向があることから、所望とする光学物性を効率良く発現させることができる。また、樹脂組成物全体の質量に対して任意の質量で含まれていても、位相差の波長分散性の小さいフラット分散にできる傾向があり、さらに、短段階かつ工業的に安価に導入できる優位性もあるメチレン基であることが好ましい。
一方、得られたフィルムの機械強度や高温での信頼性を改善する目的で、樹脂組成物のガラス転移温度を高くすることのできる、炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基及び置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子で連結された基が好ましく、1,4−フェニレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、又は下記[H2]群に示されるような2価の基がより好ましい。
Figure 0006446800
また、逆波長分散性を有する位相差フィルムへ適用する場合、置換基α1及びα2を適切に選択することが重要である。例えばメチレン基に代表される炭素数1の基は予想外に逆波長分散性が低い傾向があるので、α1及びα2は直接結合であるか、その少なくともいずれか一方が炭素数2以上の基であることが好ましい。
より好ましくは直接結合、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基である。
さらに好ましくは直接結合、直鎖状のアルキレン基、分岐鎖を含むアルキレン基、上記[A]群に示されるような脂環構造の任意の2箇所に直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基の結合手を持つ脂環式アルキレン基、フェニレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子で連結された基である。
より好ましくは、芳香環を有さないことで光学フィルムに求められる低い光弾性係数を達成できる、直接結合、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−メトキシメチル−2−メチルプロピレン基又は上記[J]群に示されるような脂環式アルキレン基、或いは、樹脂組成物のガラス転移温度を高くできる、1,4−フェニレン基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基及び置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子で連結された基である。
特に好ましくは、直接結合、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、メチルメチレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、又は2,2−ジメチルプロピレン基である。
最も好ましくは、エチレン基、又はn−プロピレン基である。鎖長が長いとガラス転移温度が低くなる傾向があるため、短い鎖状の基、例えば炭素数3以下の基が好ましい。さらに、分子構造が小さくなるので繰り返し単位中のフルオレン環の濃度(フルオレン比率)を高くすることができることから、所望とする光学物性を効率良く発現させることができる。
また、置換基α1及びα2は同一であることが、製造を容易にするため好ましい。
このように、本発明の樹脂組成物は、2以上のフルオレン単位bの9位の炭素原子同士を特定の炭素−炭素結合で連結した繰り返し単位を有する重合体からなる、又は該重合体を含有することによって、フルオレン環に由来する光学特性をより効果的に得ることができる傾向がある。
前記2価のオリゴフルオレンとしては、具体的には、下記一般式(11)で表されるものを好ましく用いることができる。
Figure 0006446800
式(11)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、直接結合、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、若しくは置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基、又は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基及び置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基からなる群から選ばれる2つ以上の基が、酸素原子、置換されていてもよい硫黄原子、置換されていてもよい窒素原子若しくはカルボニル基で連結された基であり、
3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素数6〜10のアラルキレン基であり、
4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。nは1〜5の整数値を示す。
前記式(11)におけるR1及びR2としては、それぞれ、置換基α1及びα2として例示したものを好ましく用いることができる。
また、前記式(11)におけるR3〜R9及びnとしては、それぞれ、前記式(1)におけるR3〜R9及びnとして例示したものを好ましく用いることができる。
<4.2 重合体>
本発明の樹脂組成物に含有される重合体は、2価のオリゴオレンを繰り返し単位として有するものである。例えば、2価のオリゴフルオレン同士が任意の連結基により連結した重合体が挙げられる。また、該重合体は、2価のオリゴフルオレン以外の任意の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
<4.3 連結基>
前記重合体において用いられる連結基の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[K]群に示される連結基
Figure 0006446800
(上記[K]群に示される各連結基において、Zは繰り返し単位が連結する部位を示し、Z1は他の連結基との結合部位、又は連結基同士を結合させる任意の構造単位が連結する部位を示す。)が挙げられ、これらの連結基のうち複数種を併用してもよい。また、連結基が非対称である場合、連結基は、繰り返し単位に対して、任意の向きで連結してよい。これらのうち好ましくは、耐熱性と溶融加工性や機械強度とのバランスに優れるポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートを構成する、下記[L]群に示される連結基である。
Figure 0006446800
(上記[L]群に示される各連結基において、Zは繰り返し単位が連結する部位を示す。)
連結基は1種類のものを単独で用いてもよく、複数種類の連結基を併用してもよい。
繰り返し単位を連結基で連結した重合体として具体的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、若しくはポリスルホンを含む重合体及びそれらを併用した重合体が挙げられ、好ましくは、一般に透明性の高いポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、又はポリアクリレートを含む重合体であり、特に好ましくは、耐熱性と溶融加工性や機械強度とのバランスに優れるポリエステル、又はポリカーボネートを含む重合体、特に好ましくは一般に耐熱性や耐薬品性に優れるポリカーボネートを含む重合体である。
複数種類の連結基を併用した重合体とする場合、連結基の組み合わせについては特に限定されないが、例えば、連結基としてカーボネート構造とエステル構造を併用した重合体、連結基としてカーボネート構造とウレタン構造を併用した重合体、連結基としてエステル構造とアミドを併用した重合体などが挙げられるが、好ましくは連結基としてカーボネート構造とエステル構造を併用した重合体が挙げられる。ここで、複数種の連結基を併用する重合体の具体例としては、ポリエステルカーボネート、カーボネート結合を有するポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド等が挙げられ、これらの中で好ましくは、耐熱性と溶融加工性や機械強度とのバランスに優れるポリエステルカーボネートである。本明細書中において、カーボネート結合を有する重合体をポリカーボネートと呼び、カーボネート結合のみを連結基として有する重合体の他、ポリエステルカーボネート(エステル結合とカーボネート結合を有する重合体)、カーボネート結合を有するポリウレタン等も含まれる。ここで、ポリカーボネートを含む重合体中のカーボネート結合の割合は任意の値でよいが、カーボネート結合に起因する、耐熱性や耐薬品性等の優れた特性を樹脂組成物に付与するために、一定割合以上であることが好ましく、全連結基におけるカーボネート結合のモル分率は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上であり、通常100%以下である。
<4.4 共重合体>
2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体は、さらに任意の2価の有機基(ただし、2価のオリゴフルオレンを除く)を繰り返し単位として含む共重合体であってもよい。この場合、繰り返し単位同士は前述の連結基により連結したものであることが好ましい。
共重合体において、2価のオリゴフルオレンと併用してもよい任意の2価の有機基としては、樹脂組成物に必要とされる光学特性及び物性の範囲に制御するとの観点から、以下の一般式(13)で表される2価の有機基を好ましく用いることができる。この場合、任意の2価の有機基として、一般式(13)で表される2価の有機基以外の2価の有機基をさらに併用してもよい。
Figure 0006446800
(式中、R20は、置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜20のアリーレン基、置換されていてもよい炭素数2〜100のアルキレンエーテル基、置換されていてもよい炭素数4〜20の脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい炭素数4〜20の複素環構造を持つ有機基を示す。)
重合体が前記一般式(13)で表される2価の有機基を含む場合、樹脂組成物に正の屈折率異方性を付与する機能を担うことができる他、位相差の波長分散性や光弾性係数といった光学物性や、機械強度、耐熱性、溶融加工性などの種々の樹脂物性を好ましい範囲に制御する等、樹脂組成物の物性を任意に制御することができる傾向がある。
なお、主鎖に対して垂直に配向した芳香環を持たないか、そのような芳香環を持っていてもその割合が全体の中で少ない樹脂組成物は、一般に正の屈折率異方性を示すことが知られている。前記一般式(13)で表される2価の有機基の繰り返し単位においても、側鎖に芳香環を有するもの以外は、全て正の屈折率異方性を示す構造であるため、前記一般式(13)で表される2価の有機基を50モル%以上含む樹脂組成物は正の屈折率異方性を示すと考えられる。
<4.5 有機基の具体例>
前述のとおり、一般式(13)におけるR20は、置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、置換されていてもよい炭素数4〜20のアリーレン基、置換されていてもよい炭素数2〜100のアルキレンエーテル基、置換されていてもよい炭素数4〜20の脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい炭素数4〜20の複素環構造を持つ有機基を示す。
「置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレンなどの直鎖状のアルキレン基;1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基などの分岐鎖を含むアルキレン基が挙げられる。その炭素数は、2以上であり、また、12以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。これらの中で好ましくは、適度な疎水性と柔軟性があり、低い光弾性係数を与える傾向がある、下記一般式(15)で表される直鎖状のアルキレン基である。
Figure 0006446800
(式中、R21は置換されていてもよい炭素数0〜18の直鎖状アルキレン基を示す。)
「置換されていてもよい炭素数0〜18の直鎖状アルキレン基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないがエチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基などが挙げられる。その炭素数は2以上であることが好ましく、また、10以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
「置換されていてもよい炭素数4〜20のアリーレン基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等のフェニレン基;、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等のナフチレン基;2,5−ピリジレン基、2,4−チエニレン基、2,4−フリレン基などのヘテロアリーレン基が挙げられる。その炭素数は、4以上であり、また、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。これらの中でも、工業的に安価に入手できるとの観点から、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
「置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基」、「置換されていてもよい炭素数2〜20の直鎖状アルキレン基」及び「置換されていてもよい炭素数4〜20のアリーレン基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換基を有するアルキレン基の具体例としては、フェニルエチレン基、1−フェニルプロピレン基、1−シクロヘキシルプロピレン基、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン基等が挙げられる。
置換基を有するアリーレン基の具体例としては、2−メチル−1,4−フェニレン基、5−メチル−1,3−フェニレン基、2,5−ジメチル−1,4−フェニレン基、2−メトキシ−1,4−フェニレン基、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン基、2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基などの置換アリーレン基が挙げられる。
「置換されていてもよい炭素数6〜20のアラルキレン基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[M]群に示されるようなアラルキレン基が挙げられる。
Figure 0006446800
その炭素数は、6以上であり、また、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。これらの中でも、工業的に安価に入手できるとの観点から、o−キシリレン基、m−キシリレン基又はp−キシリレン基が好ましい。
「置換されていてもよい炭素数6〜20のアラルキレン基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
「置換されていてもよい炭素数2〜100のアルキレンエーテル基」とは、1つ以上のアルキレン基とエーテル性酸素原子を有する2価の基である。その炭素数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、また、60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、40以下であることがさらに好ましく、30以下であることが特に好ましい。より具体的には、下記一般式(17)
Figure 0006446800
(式中、R23は置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示し、pは1〜40の整数である。)で表される基、又は下記一般式(18)
Figure 0006446800
(式中、R24は置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R25は置換されていてもよい炭素数12〜30のアリーレン基を示す。)が挙げられる。
式(17)及び式(18)において、R23及びR24は、置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示す。その具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレンなどの直鎖状のアルキレン基;1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、1−エチルエチレン基、2−エチルエチレン基、1−メチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3−メチルプロピレン基などの分岐鎖を含むアルキレン基(ここで置換位置の数値は、末端側の炭素からつけるものとする)などが挙げられる。
その炭素数は、2以上であり、また、8以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。
「置換されていてもよい炭素数2〜100のアルキレンエーテル基」及び「置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
置換基を有するアルキレン基の具体例としては、フェニルエチレン基、1−フェニルプロピレン基、1−シクロヘキシルプロピレン基、1,1,2,2−テトラフルオロエチレン基等が挙げられる。
これらR23及びR24の中で好ましくは、不斉点を有さないためモノマーの品質管理が容易な直鎖状のアルキレン基であり、より好ましくは工業的に安価に導入でき、柔軟性と吸水性を与えることができるエチレン基である。
式(17)において、pは1〜40の整数であるが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、また、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
式(18)において、R25は、置換されていてもよい炭素数12〜30のアリーレン基を示す。その具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、樹脂組成物のガラス転移温度を高くすることができるとの観点からは下記[N]群に示されるようなアリーレン基が好ましく挙げられる。
Figure 0006446800
「置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
式(17)の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[O]群に示されるようなアルキレンエーテル基
Figure 0006446800
(上記[O]群において、ジアステレオマーが可能な構造については、いずれのジアステレオマーであってもよく、ジアステレオマー混合物であってもよい。)が挙げられる。
式(18)の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[P]群に示されるようなアルキレンエーテル基
Figure 0006446800
(上記[P]群において、ジアステレオマーが可能な構造については、いずれのジアステレオマーであってもよく、ジアステレオマー混合物であってもよい。)が挙げられる。
「置換されていてもよい炭素数4〜20の脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい炭素数4〜20の複素環構造を持つ有機基」の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ガラス転移温度を高くすることができ、光弾性係数を低くすることができる傾向があることから、下記[Q]群に示されるような脂環構造または複素環構造の任意の2箇所に直鎖状又は分岐状のアルキレン基の結合手を持つ有機基が好ましく挙げられる。
Figure 0006446800
(上記[Q]群に示される各環構造における2つの結合手の置換位置については任意であり、同一炭素に2つの結合手が置換していてもよい。)ここで結合手とは、直接結合、又は炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基であり、2つの結合手の長さは異なっていてもよい。好ましい結合手は、ガラス転移温度の低下が少ない直接結合、又はメチレン基である。
「置換されていてもよい炭素数4〜20の脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい炭素数4〜20の複素環構造を持つ有機基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
「置換されていてもよい炭素数4〜20の脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい炭素数4〜20の複素環構造を持つ有機基」の好ましい具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、高い透明性とガラス転移温度、吸水性、複屈折、低い光弾性係数を与える傾向がある、下記一般式(14)
Figure 0006446800
で表される基、下記一般式(16)
Figure 0006446800
(式中、R22は置換されていてもよい炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)で表される基、又は下記一般式(19)
Figure 0006446800
(式中、R26は置換されていてもよい炭素数2〜20のアセタール環を有する基を示す。)で表される基が挙げられる。
式(16)において、R22は、置換されていてもよい炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。その具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ガラス転移温度を高くすることができ、光弾性係数を低くすることができる傾向があることから、下記[R]群に示されるようなシクロアルキレン基
Figure 0006446800
(上記[R]群において、ジアステレオマーが可能な構造については、いずれのジアステレオマーであってもよく、ジアステレオマー混合物であってもよい。)が好ましく挙げられる。
「置換されていてもよい炭素数4〜20のシクロアルキレン基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
式(16)の具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、下記[S]群に示されるような脂環構造を持つ有機基
Figure 0006446800
(上記[S]群において、ジアステレオマーが可能な構造については、いずれのジアステレオマーであってもよく、ジアステレオマー混合物であってもよい。)が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できるとの観点から下記[S−2]群に示される脂環構造を持つ有機基が好ましい。
Figure 0006446800
式(19)において、R26は、置換されていてもよい炭素数2〜20のアセタール環を有する基を示す。その具体的な構造は以下に挙げられ、これらに限定されるものではないが、ガラス転移温度と複屈折を高くすることができ、光弾性係数を低くすることができる傾向があることから、下記[T]群に示されるようなアセタール環を有する基
Figure 0006446800
(上記[T]群において、ジアステレオマーが可能な構造については、いずれのジアステレオマーであってもよい。)が好ましく挙げられる。
「置換されていてもよい炭素数2〜20のアセタール環」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子);炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等);炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等);炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等);炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等);ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子(例、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜10のアルキル基(例、メチル基、エチル基、イソプロピル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数1〜10のアシル基(例、アセチル基、ベンゾイル基等)、炭素数1〜10のアシルアミノ基(例、アセトアミド基、ベンゾイルアミド基等)、ニトロ基、シアノ基などから選ばれる1〜3個の置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基(例、フェニル基、ナフチル基等)等が挙げられる。当該置換基の数は、特に限定されないが、1〜3個が好ましい。置換基が2個以上ある場合は、置換基の種類は同一でも異なっていてもよい。また、工業的に安価に製造できるとの観点からは無置換であることが好ましい。
一般式(13)で表される2価の有機基の中で好ましいものは、主鎖に芳香環を有さない、又は主鎖に芳香環以外の部分構造を多く含むため、光学フィルムに求められる低い光弾性係数を達成できる傾向がある、置換されていてもよいアルキレン基、置換されていてもよいアルキレンエーテル基、置換されていてもよい脂環構造を持つ有機基又は置換されていてもよい複素環構造を持つ有機基である。より好ましくは、高い透明性とガラス転移温度、吸水性、複屈折、低い光弾性係数を与える傾向がある、下記一般式(14)
Figure 0006446800
又は、適度な疎水性と柔軟性があり、低い光弾性係数を与える傾向がある、下記一般式(15)
Figure 0006446800
(式中、R21は置換されていてもよい炭素数0〜18の直鎖状アルキレン基を示す。)、又は、高い透明性とガラス転移温度、適度な柔軟性を与える傾向がある、下記一般式(16)
Figure 0006446800
(式中、R22は置換されていてもよい炭素数4〜20のシクロアルキレン基を示す。)、又は、柔軟性と吸水性、低い光弾性係数を与える傾向がある、下記一般式(17)
Figure 0006446800
(式中、R23は置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示し、pは1〜40の整数である。)又は、高い透明性とガラス転移温度を与える傾向がある、下記一般式(18)
Figure 0006446800
(式中、R24は置換されていてもよい炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R25は置換されていてもよい炭素数12〜30のアリーレン基を示す。)又は、高い透明性とガラス転移温度、複屈折を与える傾向がある、下記一般式(19)
Figure 0006446800
(式中、R26は置換されていてもよい炭素数2〜20のアセタール環を有する基を示す。)から選ばれる少なくとも1種である。更に好ましくは、高い透明性とガラス転移温度、吸水性、低い光弾性係数を与えることで、位相差フィルムとして優れた物性を付与する傾向がある、上記一般式(14)で表される基である。
一般式(13)で表される2価の有機基は、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上のものを併用して用いてもよい。光学物性や機械物性のロットごとのばらつきを減らすなどといった品質管理の観点からは1種類のものを単独で用いるのが好ましい。一方で光学特性や機械物性を両立させるとの観点からは2種類以上のものを併用して用いるのが好ましく、また、通常4種類以下であり、3種類以下で用いるのが好ましい。
一般式(13)で表される2価の有機基を2種類以上併用して用いる場合、その組み合わせについては特に限定されない。例えば、高い透明性とガラス転移温度、複屈折を与える目的では、上記一般式(14)で表される有機基又は、上記一般式(19)で表される有機基が好ましく、柔軟性を付与する目的では、上記一般式(15)で表される有機基、又は上記一般式(17)で表される有機基が好ましく、一方で、高い透明性とガラス転移温度、適度な柔軟性を与える目的では、上記一般式(16)で表される有機基が好ましく、これらのうち、要求される目的の組み合わせに応じて、それに対応する有機基の組み合わせを選択すればよい。具体的には、上記一般式(14)で表される有機基に該当するISB(イソソルビド)由来の繰り返し単位と上記一般式(16)で表される有機基に該当するCHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)由来の繰り返し単位の組み合わせ、又は上記一般式(19)で表される有機基に該当するSPG(スピログリコール)由来の繰り返し単位と上記一般式(16)で表される有機基に該当するCHDM由来の繰り返し単位の組み合わせであることが好ましい。
<4.6 共重合組成>
このように、2価のオリゴフルオレンと、一般式(13)で表される2価の有機基の、少なくとも2種類以上を繰り返し単位として含有する共重合体を用いる場合において、2価のオリゴフルオレンと、一般式(13)で表される2価の有機基は、後述する光学物性が発現する範囲内であれば、前記共重合体中に任意の質量で含まれていてよい。
2価のオリゴフルオレンの含有割合は、逆波長分散性を発現させ、かつ、溶融加工性や機械強度を保つためには、前記共重合体全体の質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることが特に好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。
また柔軟性の観点から、一般式(13)で表される2価の有機基の好ましい含有割合は、前記共重合体全体の質量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましく、85質量%以下であることが特に好ましく、80質量%以下であることが最も好ましい。
<4.7 重合体ブレンド>
本発明の樹脂組成物は、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体を含有するものである。また、本発明の樹脂組成物は該重合体以外に、さらにその他の成分を含有していてもよい。
本発明の樹脂組成物は、ブレンドに起因する他の効果の発現を期待して、その他の成分として任意の重合体を含んでいてもよい。つまり、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体の他に任意の重合体を共存在させてもよい。
ここで、共存在させるとは、樹脂組成物の中に2種以上の重合体が存在していることを意味し、その手法は問わないが、2種以上の重合体を溶液の状態、または溶融の状態で混合する方法、1つ以上の重合体を含む溶液中又は溶融液中で重合を進行させる方法などが挙げられる。
例えば、一般式(13)で表される2価の有機基を繰り返し単位として有する重合体をブレンドしてもよく、任意の繰り返し単位を有する重合体をブレンドしてもよい。なお、一般式(13)で表される2価の有機基を繰り返し単位として有する重合体は、一般式(13)以外の2価の有機基をさらに繰り返し単位として有するものであってもよく、一般式(13)で表される2価の有機基を2種類以上繰り返し単位として有するものであってもよい。ここで、一般式(13)で表される2価の有機基としては、共重合体において好ましく例示したものを用いることができる。
特に、位相差フィルム用として好適に用いられるとの観点からは、正の屈折率異方性を示すポリマーまたはオリゴマーのブレンド若しくは共重合体を共存在させることが好ましく、光学性能が良好で、溶融製膜や溶液キャスト製膜ができる傾向があることから、熱可塑性樹脂を共存在させることがより好ましい。共存在させるものとしては、具体的には、重縮合系ポリマー、オレフィン系ポリマー、又は付加重合系ポリマーがあげられ、重縮合系ポリマーが好ましい。重縮合系ポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等があげられ、中でもポリエステル又はポリカーボネートが好ましい。
より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー;ビスフェノールAやビスフェノールZ、イソソルビド等由来の構造単位を有するポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリエステル等が挙げられ、これらのうち2種以上の重合体を併用していてもよい。
本発明の樹脂組成物をフィルム成形した場合、フィルムが光学的に透明であることが好ましいため、ブレンドされる重合体は、2価のオリゴフルオレンを繰り返し単位として有する重合体と屈折率が近いものや、相溶性を有する組み合わせを選択するのが好ましい。
<4.8 樹脂組成物の組成>
逆波長分散性を発現させ、かつ、溶融加工性や機械強度を保つとの観点から、樹脂組成物における2価のオリゴフルオレンの含有割合は、樹脂組成物全体の質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることが特に好ましく、20質量%以上であることが最も好ましく、また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることが特に好ましい。また同様の観点から、一般式(13)で表される2価の有機基の好ましい含有割合は、樹脂組成物全体の質量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、88質量%以下であることがさらに好ましく、85質量%以下であることが特に好ましく、80質量%以下であることが最も好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、前記一般式(13)で表される2価の有機基を2種類以上含んでいてもよく、例えば、ISB由来の繰り返し単位とCHDM由来の繰り返し単位を組み合わせて用いる場合、その含有割合については特に限定されないが、高いガラス転移温度と複屈折、吸水率の観点からは樹脂組成物に対するISB由来の繰り返し単位のモル分率で、20質量%以上であることが好ましく、30質量モル%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
また、ISB由来の繰り返し単位とCHDM由来の繰り返し単位を組み合わせて用いる場合、その含有割合については特に限定されないが、柔軟性の観点からは樹脂組成物に対するCHDM由来の繰り返し単位のモル分率で、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
SPG由来の繰り返し単位とCHDM由来の繰り返し単位を組み合わせて用いる場合、その含有割合については特に限定されないが、高いガラス転移温度と複屈折、吸水率の観点からは樹脂組成物に対するSPG由来の繰り返し単位のモル分率で、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、また、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましく、85モル%以下であることがさらに好ましい。
また、SPG由来の繰り返し単位とCHDM由来の繰り返し単位を組み合わせて用いる場合、その含有割合については特に限定されないが、柔軟性の観点からは樹脂組成物に対するCHDM由来の繰り返し単位のモル分率で、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、また、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
<4.9 物性値>
本発明の樹脂組成物の物性値は特に限定されないが、以下に例示する物性値を満足することが好ましい。
<4.10 屈折率異方性>
本発明の樹脂組成物の屈折率異方性は正負のどちらであっても、後述の<4.11 位相差比>に記載の逆波長分散フィルムに用いる場合の条件を満足することで、逆波長分散性を示す。ここで、負の屈折率異方性を有する逆波長分散フィルムを得るには、正の屈折率異方性を有し、短波長ほど波長分散が大きくなる波長分散性の大きな繰り返し単位と、大きな負の屈折率異方性を有し、波長分散性の小さな繰り返し単位を組み合わせて用いることが必要となるが、後者の材料は一般には知られておらず、負の屈折率異方性を有する逆波長分散フィルムを得ることは一般には難しい。そのため、本発明の樹脂組成物は、逆波長分散性やフラット分散性などの所望の光学特性を示す光学材料として用いる場合には、正の屈折率異方性を有するものであることが好ましい。
本発明において「正の屈折率異方性を有する樹脂組成物」とは、延伸フィルムに成形した際に、以下の測定条件において正の屈折率異方性を示す樹脂組成物を意味する。また「負の屈折率異方性」についても同様に定義される。
本発明において、樹脂組成物の屈折率異方性は次の方法で測定される。まず、熱プレス機にて樹脂組成物をプレスし、フィルムを作成する。そのフィルムを所定のサイズに切り出して、自由端一軸延伸して延伸フィルムを作成する。位相差測定装置(王子計測機器社製KOBRA−WPR)を用いて、この延伸フィルムの位相差を測定する。延伸方向に対して、正の位相差が発現する場合、この樹脂組成物は正の屈折率異方性を示すことになり、負の位相差が発現する場合、この樹脂組成物は負の屈折率異方性を示すことになる。詳細な測定条件は後述する。
<4.11 位相差比>
本発明の樹脂組成物は、位相差フィルム用途を想定した場合、波長450nmで測定した位相差(Re450)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比、すなわち位相差比が下記式(20)を満足することが好ましい。
Re450/Re550 ≦ 1.0 (20)
ここで、「本発明の樹脂組成物は、位相差比が上記式(20)を満足する」とは、延伸フィルムに成形した際に、以下の測定条件において波長450nmで測定した位相差(Re450)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比が上記式(20)を満足することを意味する。
位相差比は次の方法で測定される。熱プレス機にて樹脂組成物をプレスし、フィルムを作成する。そのフィルムを所定のサイズに切り出して、自由端一軸延伸して延伸フィルムを作成する。位相差測定装置(王子計測機器社製KOBRA−WPR)を用いて、この延伸フィルムの波長450nmでの位相差(Re450)と波長550nmでの位相差(Re550)を測定する。延伸方向に対して、位相差比(Re450/Re550)が上記式(20)を満足する場合、この樹脂組成物は位相差フィルムとして有用な、波長分散性を示す。詳細な測定条件は後述する。
本発明の樹脂組成物は、位相差フィルムのうち逆波長分散フィルム用途を想定した場合、位相差比(Re450/Re550)の上限が、1.0以下であることが好ましく、1.0未満であることがより好ましく、0.95以下であることが更に好ましく、0.93以下であることがより更に好ましく、0.91以下が特に好ましい。また、位相差比(Re450/Re550)の下限は、0以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましく、0.50超過であることがさらに好ましく、0.70以上であることがより更に好ましく、0.75以上であることが特に好ましく、0.80以上が最も好ましい。
位相差比(Re450/Re550)の値が上記範囲内であれば、長波長ほど位相差が発現し、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を得ることができる。例えば、互いに垂直な方向に振動する偏光の位相を1/4波長(90°)変化させる1/4λ板として、このような波長分散性を有する本発明の樹脂組成物から得た位相差フィルムを用いて、それを偏光板と貼り合わせることにより円偏光板等を作製することができ、あらゆる波長において外光反射防止機能を有する黒色性に優れた円偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。一方、位相差比(Re450/Re550)の値が上記範囲外の場合には、波長による色抜けが大きくなり、円偏光板や画像表示装置に着色の問題が生じる傾向がある。
また、本発明の樹脂組成物は、逆波長分散フィルム用途を想定した場合、波長630nmで測定した位相差(Re630)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比、すなわち位相差比’が下記式(25)を満足することが好ましい。
1.0 ≦ Re630/Re550 (25)
ここで、「本発明の樹脂組成物は、位相差比’が上記式(25)を満足する」とは、延伸フィルムに成形した際に、以下の測定条件において波長630nmで測定した位相差(Re630)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比が上記式(25)を満足することを意味する。
位相差比’は次の方法で測定される。熱プレス機にて樹脂組成物をプレスし、フィルムを作成する。そのフィルムを所定のサイズに切り出して、自由端一軸延伸して延伸フィルムを作成する。位相差測定装置(王子計測機器社製KOBRA−WPR)を用いて、この延伸フィルムの波長630nmでの位相差(Re630)と波長550nmでの位相差(Re550)を測定する。延伸方向に対して、位相差比’(Re630/Re550)が上記式(25)を満足する場合、この樹脂組成物は位相差フィルムとして有用な、波長分散性を示す。
本発明の樹脂組成物は、位相差フィルムのうち逆波長分散フィルム用途を想定した場合、位相差比’(Re630/Re550)の上限が、1.25以下であることが好ましく、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下が特に好ましい。また、位相差比(Re630/Re550)の下限は、1.00以上であることが好ましく、1.01以上であることがより好ましく、1.02以上であることがさらに好ましく、1.03以上であることが特に好ましい。
位相差比’(Re630/Re550)の値が上記範囲内であれば、長波長ほど位相差が発現し、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を得ることができる。例えば、1/4λ板としてこのような波長分散性を有する本発明の樹脂組成物から得た位相差フィルムを用いて、それを偏光板と貼り合わせることにより円偏光板等を作製することができ、あらゆる波長において外光反射防止機能を有する黒色性に優れた円偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。一方、位相差比’(Re630/Re550)の値が上記範囲外の場合には、波長による色抜けが大きくなり、円偏光板や画像表示装置に着色の問題が生じる傾向がある。特に、波長に寄らずに外交反射防止機能を得るとの観点からは、位相差比(Re450/Re550)と位相差比’(Re630/Re550)の両者の値を、共に上記範囲内にすることが好ましい。
このように、位相差比(Re450/Re550)や位相差比’(Re630/Re550)を上記範囲内にするための具体的な方法については何ら限定されないが、例えば、2価のオリゴフルオレンとして、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子を2価の基としたものや、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子にそれぞれ結合したR1
及びR2を2価の基とし、かつ、R1とR2の少なくともいずれか一方の炭素数を2以上としたものを、所定量使用する方法が挙げられる。この場合において、さらに、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子にそれぞれ結合した炭素数が1のR1及びR2を2価の基とした、2価のオリゴフルオレンを併用してもよい。
また、画像表示装置の色漏れを補正する逆波長分散フィルム用途を想定した場合は、装置に応じて色漏れを補正するために最適な位相差比(Re450/Re550)を設定すればよく、上限が1.0未満であれば、特に下限は設定しない。
一方で、本発明の樹脂組成物において、位相差の波長分散性の小さいフラット分散材料を想定した場合、位相差比が下記式(23)を満足することが好ましい。
0.9 < Re450/Re550 < 1.1 (23)
ここで、「本発明の樹脂組成物において、位相差比が上記式(23)を満足する」とは、延伸フィルムに成形した際に、以下の測定条件において波長450nmで測定した位相差(Re450)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比が上記式(23)を満足することを意味する。
本発明の樹脂組成物は、位相差の波長分散性の小さいフラット分散材料を想定した場合、位相差比(Re450/Re550)が、0.93以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.98以上であることが特に好ましく、また、1.08以下であることが好ましく、1.06以下であることがより好ましく、1.05以下であることが特に好ましい。
位相差比(Re450/Re550)の値が上記範囲内である場合には、本発明の樹脂組成物を用いることでVAモードの液晶表示装置の色抜けを補正する位相差フィルムを得ることができ、波長による色抜けの少ない液晶表示装置の実現が可能となる。さらに、後述の<4.18 複屈折>に記載の条件を満足させることで、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を得ることができ、広帯域ゼロ複屈折材料とすることができる。また、液晶表示装置の偏光板保護フィルムとして、本発明の広帯域ゼロ複屈折材料を偏光板と貼り合わせることにより、波長による色抜けの少ない偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。
また、本発明の樹脂組成物は、フラット分散材料を想定した場合、波長630nmで測定した位相差(Re630)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比、すなわち位相差比’が下記式(26)を満足することが好ましい。
0.97 < Re630/Re550 < 1.02 (26)
ここで、「本発明の樹脂組成物は、位相差比’が上記式(26)を満足する」とは、延伸フィルムに成形した際に、以下の測定条件において波長630nmで測定した位相差(Re630)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比が上記式(26)を満足することを意味する。
本発明の樹脂組成物は、フラット分散材料を想定した場合、位相差比’(Re630/Re550)の上限が、1.02以下であることが好ましく、1.01以下であることがより好ましく、1.00以下が特に好ましい。また、位相差比(Re630/Re550)の下限は、0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましく、0.99以上であることが特に好ましい。
位相差比’(Re630/Re550)の値が上記範囲内である場合には、本発明の樹脂組成物を用いることでVAモードの液晶表示装置の色抜けを補正する位相差フィルムを得ることができ、波長による色抜けの少ない液晶表示装置の実現が可能となる。さらに、後述の<4.18 複屈折>に記載の条件を満足させることで、可視領域の波長において理想的な位相差特性を得ることができ、広帯域ゼロ複屈折材料とすることができる。また、液晶表示装置の偏光板保護フィルムとして、本発明の広帯域ゼロ複屈折材料を偏光板と貼り合わせることにより、波長による色抜けの少ない偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。さらに、位相差比(Re450/Re550)と位相差比’(Re630/Re550)の両者の値を、共に上記範囲内にすることが特に好ましい。
このように、位相差比(Re450/Re550)や位相差比’(Re630/Re550)を上記範囲内にするための具体的な方法については何ら限定されないが、例えば、2価のオリゴフルオレンとして、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子にそれぞれ結合した炭素数が1のR1及びR2を2価の基としたものを、所定量使用する方法が挙げられる。この場合において、さらに、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子を2価の基としたものや、両末端に位置するフルオレンの9位の炭素原子にそれぞれ結合した炭素数が2以上のR1及びR2を2価の基としたものを併用してもよい。
<4.12 フルオレン比率>
フルオレンを繰り返し単位として有する重合体を含有する樹脂組成物は、芳香環を有するフルオレン環が主鎖に配向することで所望の光学特性を発現する傾向がある。例えば、フルオレン環が主鎖に略垂直に配向した場合、逆波長分散性を示し、フルオレン環が主鎖に対して45度程度傾いて配向した場合、フラット分散性を示すようになる。そのため、逆波長分散性、フラット分散性や、広帯域ゼロ複屈折などの所望の光学物性を効率よく発現するためには、繰り返し単位中のフルオレン環の割合を高めることが望ましい。これを本明細書中では、フルオレン比率と呼び、下記式(27)にて定義することとする。ここで、フルオレン環の分子量は炭素原子13個分の原子量の総和とし、水素原子は該分子量には含まず、また、置換基を有する場合であっても置換基は該分子量には含まれない。また、フルオレン環の分子量の総和とは、フルオレンを有する繰り返し単位に含まれる、全てのフルオレン環の分子量の合計値を意味し、例えば、2つフルオレン環を有する場合にはフルオレン環2つ分の分子量となり、同様に3つ有する場合にはフルオレン環3つ分の分子量となる。一方で、フルオレンを有する繰り返し単位の分子量とは、該繰り返し単位そのものの分子量を意味する。
フルオレン比率(%) = フルオレン環の分子量の総和/フルオレンを有する繰り返し単位の分子量 × 100 (27)
本発明では特定の2価のオリゴフルオレンを用いることで、繰り返し単位中のフルオレン環の割合を高めることができるため、その含有割合が少なくても、所望の光学物性を発現することができる傾向がある。係る観点からフルオレン比率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが好ましく、また、通常、90%以下である。
<4.13 ガラス転移温度>
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましく、また、170℃以下であることが好ましく、160℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。この範囲を下回ると、使用環境下において、光学物性が設計値から変化してしまうおそれがあり、実用的に必要な耐熱性を満たさない可能性がある。また、この範囲を上回ると、樹脂組成物の溶融加工性が低下し、良好な外観や寸法精度の高い成形体が得られない可能性がある。さらに、耐熱性が高すぎてしまい、その反面、機械強度は低下するため、樹脂組成物が脆くなって、加工性や成形体の取り扱い性が悪化する場合があることが考えられる。
<4.14 溶融粘度>
本発明の樹脂組成物の溶融粘度は、測定温度240℃、剪断速度91.2sec-1において、500Pa・s以上であることが好ましく、800Pa・s以上であることがより好ましく、1000Pa・s以上であることがさらに好ましく、また、5000Pa・s以下であることが好ましく、4500Pa・s以下であることがより好ましく、4000Pa・s以下であることがさらに好ましい。この範囲を下回ると、実用に耐えうる機械強度が得られない可能性がある。また、後述する溶融製膜法に適切な溶融粘度範囲から外れてしまう可能性がある。この範囲を上回ると、前記のガラス転移温度が高すぎる場合と同様に、成形性が悪化する可能性がある。
<4.15 分子量>
本発明の樹脂組成物の分子量は、還元粘度で表すことができる。本発明の樹脂組成物の還元粘度は、後掲の実施例の項に記載されるように、溶媒として塩化メチレンを用い、高分子濃度を0.6g/dLに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定される。本発明の樹脂組成物の還元粘度に特に制限は無いが、好ましくは0.30dL/g以上であり、より好ましくは0.35dL/g以上である。還元粘度の上限は、好ましくは1.20dL/g以下、より好ましくは0.60dL/g以下、更に好ましくは0.50dL/g以下である。
<4.16 金属含有割合>
本発明の樹脂組成物は、多量の金属および金属イオンを含有すると、重合や加工時に着色したり、熱分解が起こりやすくなるおそれがある。例えば、樹脂組成物を製造する際に用いた触媒の残存物や、樹脂組成物の原料中にコンタミしている金属成分や、反応装置などから溶出する金属なども可能な限り低減することが重要である。特にNa、K、Cs、Feの影響が顕著であるため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、Na、K、Cs、Feの含有割合の合計が3質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましく、0.8質量ppm以下であることがさらに好ましく、0.5質量ppm以下であることが特に好ましい。樹脂組成物中の金属量は、湿式灰化などの方法で樹脂組成物中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、ICP等の方法を使用して測定することが出来る。
<4.17 光弾性係数>
本発明の樹脂組成物の光弾性係数は45×10-12Pa-1以下であることが好ましい。さらに好ましくは40×10-12Pa-1以下であり、特に好ましくは35×10-12Pa-1以下であり、また、通常5×10-12Pa-1以上である。光弾性係数が高くなると、大型の成形品に使用する場合や、成形品を折り曲げたりする場合に、応力が発生する部分において、材料の複屈折が変化し、光学物性の均一性が損なわれる可能性がある。
<4.18 複屈折>
本発明の樹脂組成物は、逆波長分散性を示す位相差フィルムや、フラット分散性を示す位相差フィルム用途を想定した場合、フィルムにした際に、550nmにおける複屈折が0.001以上であることが好ましい。後述のように本発明の樹脂組成物を用いて成形するフィルムの厚みを非常に薄く設計するためには、複屈折が高い方が好ましい。従って、550nmにおける複屈折は0.002以上であることが更に好ましく、また、通常0.005以下である。550nmにおける複屈折が0.001未満の場合には、フィルムの厚みを過度に大きくする必要があり、製膜材料の使用量が増え、厚み・透明性・位相差の点から均質性の制御が困難となる傾向がある。そのため、550nmにおける複屈折が0.001未満の場合には、精密性・薄型・均質性を求められる機器に適合できない可能性がある。
複屈折は、位相差をフィルム厚みで割ったものであるので、位相差測定装置(王子計測機器社製KOBRA−WPR)を用いてフィルムの位相差を測定し、フィルム厚みを測定することで求めることができる。
一方で本発明の樹脂組成物は、広帯域ゼロ複屈折材料を想定した場合には、フィルムにした際に、550nmにおける複屈折が0.0005以下であることが好ましい。前述のように本発明の樹脂組成物を用いて広帯域ゼロ複屈折を有する偏光板保護フィルムを設計するためには、複屈折が低い方が好ましい。従って、550nmにおける複屈折は0.0002以下であることが更に好ましく、0.0001以下が特に好ましく、また、通常0.00001以上である。550nmにおける複屈折が0.0005超過の場合には、複屈折が十分に小さくないため、フィルムの厚みが厚いと色抜けが起こる可能性がある。
この光学フィルムは、特に液晶表示装置の偏光板の保護フィルムに用いた時、極めて優れた特性を発現する。ただし、偏光板の保護フィルムに限らず、位相差フィルム、プラセル基盤フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルムなど他の用途に用いても良い。
<4.19 屈折率>
本発明の樹脂組成物は、光学レンズなどの広帯域ゼロ複屈折材料を想定した場合には、589nmにおける屈折率が1.54以上であることが好ましい。本発明の樹脂組成物を用いて光学レンズを設計するためには、レンズを薄くするためにも、屈折率が高い方が好ましい。従って、589nmにおける屈折率は、1.56以上であることが更に好ましく、1.58以上が特に好ましく、通常1.65以下である。
<4.20 アッベ数>
本発明の樹脂組成物は、撮像系光学レンズなどの広帯域ゼロ複屈折材料を想定した場合には、アッベ数が35以下であることが好ましい。本発明の樹脂組成物を用いて撮像系光学レンズを設計するためには、アッベ数が低い方が好ましい。従って、アッベ数は、30以下であることが更に好ましく、25以下が特に好ましく、通常15以上である。
<4.21 フルオレン環の配向>
本発明の樹脂組成物は、フルオレン環の配向に由来する740cm-1の吸収の延伸方向と垂直方向の強度比が、1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることがさらに好ましく、また、通常2.0以下である。本発明の樹脂組成物を逆波長分散フィルム用途として用いる場合、フルオレン環の配向に由来する740cm-1の吸収の延伸方向と垂直方向の強度比が高い方が、その樹脂組成物中に含まれるフルオレン環を有する繰り返し単位はその割合が少なくても逆波長分散性を示す傾向にある。なお、前記強度比は以下の方法にて測定することができる。
まず本発明の樹脂組成物から延伸フィルムを作成し、偏光ATR分析を実施する。その分析結果において、カルボニルの配向に由来する1245cm-1の吸収の延伸方向と垂直方向の強度比(2色比:延伸方向の強度/垂直方向の強度)が1.2以上であり、主鎖が延伸方向へ配向していることを確認する。次に、フルオレン環の配向に由来する740cm-1の吸収の延伸方向と垂直方向の強度比を算出する。
<4.22 主鎖とフルオレンのなす角度>
本発明の樹脂組成物は、2価のオリゴフルオレンの特定配座(コンフォメーション)が、ゴーシュ配座を安定配座としない場合であって、トランス配座の主鎖とフルオレン環のなす角度が50°以上、好ましくは60°以上、より好ましくは70°以上の時に、逆波長分散性が発現されると予想できる。
2価のオリゴフルオレンの特定配座(コンフォメーション)のエネルギー計算及び該配座におけるフルオレン環と主鎖がなす角度の計算は以下の通りに算出することができる。
ソフトウェアは、AM1法について米国Wavefunction社製PC Spartan Pro 1.0.5(Windows(登録商標)32bit版)を使用する。なお、収束判定値等、計算精度にかかわる入力値は全て当該ソフトウェアのデフォルト値を使用する。
ここで、2価のオリゴフルオレンに関しては、ポリカーボネート樹脂組成物の場合には繰り返し単位の両末端をメチルカーボネート化した構造に対して、ポリエステル又はポリエステルカーボネート樹脂組成物の場合には繰り返し単位の両末端をメチルエステル化した構造に対して計算する。
AM1法を用いて各モノマーに存在する2つの側鎖の両方がトランス配座と、2種類のゴーシュ配座であるコンフォマーのエネルギー差を計算する。また、トランス配座とゴーシュ配座(2種類のゴーシュ配座のうち安定なもの)について、主鎖とフルオレン環のなす角度を計算する。
なお、主鎖とフルオレン環のなす角度は、以下のように定める。まず、両末端のメチル基の炭素原子同士を結ぶ直線を主鎖方向、フルオレンの3位、6位、9位の炭素原子を通る平面をフルオレン平面とする。このとき、主鎖方向と交差するフルオレン平面上の直線は無限に存在するが、主鎖方向との角度が最小となるフルオレン平面上の直線は一意に定まる。その角度を主鎖とフルオレン環のなす角度とする。
<4.23 有機基の導入方法>
本発明の樹脂組成物に上記一般式(13)で表される2価の有機基を繰り返し単位として導入する方法としては、得られる樹脂組成物の透明性や均一性の観点から、
1. オリゴフルオレンを有するジヒドロキシ化合物と、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記式(21)で表されるジヒドロキシ化合物とを共重合する方法、
2. オリゴフルオレンジエステル化合物を、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記式(21)で表されるジヒドロキシ化合物でエステル交換をした後に、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記式(21)で表されるジヒドロキシ化合物とを共重合する2段階で導入する方法、
3. オリゴフルオレンと、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記式(21)で表されるジヒドロキシ化合物とを共重合する方法、
4. オリゴフルオレンを有するジヒドロキシ化合物、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記一般式(28)で表されるジカルボン酸化合物、及び、前記一般式(13)で表される有機基を有する下記一般式(21)で表されるジヒドロキシ化合物とを共重合する方法、
が好ましい。
HO−R20−OH (21)
HOCOR20−COOH (28)
(式(21)及び式(28)中、R20は、前記一般式(13)のそれと同じである。)
ここで、上記一般式(13)で表される2価の有機基は単一種類のものを用いてもよく、異なる複数種類の有機基を組み合わせて用いてもよい。異なる複数種類の有機基を組み合わせて用いることは、異なる複数種類の上記一般式(21)で表されるジヒドロキシ化合物、及び/又は、上記一般式(28)で表されるジカルボン酸化合物を用いることで達成される。
<4.24 重合体の製造方法>
前述のとおり、重合体としてはポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートが好ましく、一般的に、ポリエステルよりもポリカーボネートの方が十分なガラス転移温度を有し、耐加水分解性に優れていることから、ポリカーボネートが特に好ましい。一方で、一般的に、柔軟性においては、ポリカーボネートよりもポリエステルの方が優れていることから、ポリエステルが特に好ましい。ポリエステルカーボネートは、ガラス転移温度と耐加水分解性、及び、柔軟性のバランスが優れていることから、特に好ましい。
なお、ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは<4.25 ポリカーボネートの重合方法>等の方法により製造することができる。また、ポリエステルについても同様の方法により製造することができ、具体的には<4.26 ポリエステルの重合方法>等の方法により製造することができる。
<4.25 ポリカーボネートの重合方法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、ジヒドロキシ化合物と、下記一般式(31)で表される炭酸ジエステルとを溶融重縮合する方法(溶融重合法)を含むことが好ましい。もう一つの一般的なポリカーボネートの製造方法として知られる界面重合法は、使用できるモノマーが芳香族ジヒドロキシ化合物に限定されるため、アルコール性ヒドロキシ基を有するジヒドロキシ化合物も含む、より幅広い構造に適用できる溶融法を用いることが好ましい。また、界面法は毒性の強いホスゲンや塩化メチレン、クロロベンゼン等の含塩素溶媒を用いる必要もあり、環境負荷も高い傾向がある。
Figure 0006446800
上記一般式(31)中、A1およびA2は、それぞれ置換もしくは無置換の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基であり、A1とA2とは同一であっても異なっていてもよい。
<4.25.1 炭酸ジエステル等>
この溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、前記一般式(31)で表されるものが挙げられる。前記式(31)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネートなどに代表されるジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどに代表されるジアルキルカーボネート類が挙げられる。なかでも、好ましくはジアリールカーボネート類が用いられ、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いてもよい。
炭酸ジエステルは、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物に対して、0.90以上のモル分率で用いることが好ましく、より好ましくは0.96以上、さらに好ましくは0.98以上、また、1.10以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましく、1.03以下であることがさらに好ましい。また、ジカルボン酸構造を導入する場合には、全ジヒドロキシ化合物のモル数から全ジカルボン酸のモル数を差し引いたジヒドロキシ化合物のモル数に対し、0.90以上のモル分率で用いることが好ましく、より好ましくは0.96以上、さらに好ましくは0.98以上、また、1.10以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましく、1.03以下であることがさらに好ましい。このモル比率が前記下限値より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端水酸基が増加して、ポリカーボネートの熱安定性が悪化したり、所望する高分子量体が得られなかったりする。また、このモル比率が前記上限値より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネートの製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネート中の残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、原反製膜時や延伸時に揮発し、フィルムの欠陥を招く可能性がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含有されるポリカーボネートは、ジヒドロキシ化合物に由来する繰り返し単位が、カーボネート結合で連結された構造を有するポリマーであるが、本発明においては、カーボネート結合の一部がジカルボン酸構造に置換されたポリエステルカーボネートの他、カーボネート結合を有するポリウレタン等も含むものとする。
<4.25.2 ポリエステルカーボネート>
重合に用いる炭酸ジエステルの一部を上記一般式(28)で表されるジカルボン酸化合物と置換する、重合に用いるジヒドロキシ化合物の一部としてジヒドロキシエステル、及び/又はジヒドロキシエステルオリゴマーを用いる等の方法により、ポリエステルカーボネートが得られる。ここで用いることのできるジヒドロキシエステル、及び/又はジヒドロキシエステルオリゴマーは、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物の反応により、合成することが可能である。上記一般式(28)で表されるジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができ、得られたポリエステルカーボネートの耐熱性や熱安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましく、特には取扱いや入手のし易さから、テレフタル酸、又はイソフタル酸が好ましく、中でもテレフタル酸が好適である。これらのジカルボン酸成分はジカルボン酸そのものとして前記ポリエステルカーボネートの原料とすることができるが、製造法に応じて、メチルエステル体、フェニルエステル体等のジカルボン酸エステルや、ジカルボン酸ハライド等のジカルボン酸誘導体を原料とすることもできる。
前記ポリエステルカーボネートにおいて、全ジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位構造の含有割合は、全ジヒドロキシ化合物に由来する繰り返し単位構造と全カルボン酸化合物に由来する構造単位の合計を100モル%とした場合に、通常45モル%以下であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは0モル%である。ここでジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位構造の含有割合におけるジカルボン酸化合物とは、重合に用いられる全ジカルボン酸化合物のことである。ジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位構造の含有比率が前記上限値よりも多くなると、重合性が低下し、所望とする分子量まで重合が進行しなくなることがある。
<4.25.3 重合触媒>
溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、例えば長周期型周期表第1族及び/又は、第2族の金属化合物が使用される。エステル交換触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、反応速度または重縮合して得られるポリカーボネート樹脂組成物の品質に非常に大きな影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂組成物の透明性、色相、耐熱性、耐候性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されない。例えば、長周期型周期表における1族及び/又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物が挙げられる。
前記の1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩および2セシウム塩等が挙げられる。中でも重合活性と得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相の観点から、リチウム化合物が好ましい。
前記の2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物またはバリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
長周期型周期表第1族と第2族の金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、長周期型周期表第1族及び/又は、第2族の金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
前記の塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンおよび四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
前記の塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドおよびブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
前記のアミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンおよびグアニジン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、長周期型周期表第1族と第2族の金属化合物を用いる場合、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1μmol〜100μmolの範囲内で用い、好ましくは0.5μmol〜50μmolの範囲内であり、さらに好ましくは1μmol〜25μmolの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得られない場合があり、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリマーの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネートの製造が困難になる場合がある。
中でも長周期型周期表における2族からなる群及びリチウムより選ばれた少なくとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いる場合は、金属換算量として、前記全ジヒドロキシ化合物1モル当たり、0.1μmol以上が好ましく、より好ましくは0.3μmol以上、特に好ましくは0.5μmol以上とする。また上限としては、20μmol以下が好ましく、より好ましくは10μmol以下であり、さらに好ましくは5μmol以下で、特に好ましくは3μmol以下である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量のポリカーボネート樹脂組成物を得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる傾向がある。そのために、得られたポリカーボネート樹脂組成物の色相が悪化する可能性が高くなり、また、未反応の原料が重合途中で揮発してジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られるポリカーボネート樹脂組成物の色相の悪化または成形加工時の樹脂の着色を招く可能性がある。
ただし、1族金属の中でもナトリウム、カリウム又はセシウムは、ポリカーボネート樹脂組成物中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料または反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、ポリカーボネート樹脂組成物中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、1重量ppm以下であることが好ましく、さらには0.5重量ppm以下であることがより好ましい。
また、ジカルボン酸構造を導入する場合には、上記塩基性化合物と併用して、または併用せずに、チタン化合物、スズ化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、鉛化合物、オスミウム化合物等のエステル交換触媒を用いることもできる。これらのエステル交換触媒の使用量は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物1molに対して、金属換算量として、通常、10μmol以上、好ましくは20μmol以上、より好ましくは50μmol以上、また、通常1mmol以下、好ましくは800μmol以下、より好ましくは500μmol以下である。
<4.25.4 重合法>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含有されるポリカーボネートを溶融重合法で製造する方法としては、ジヒドロキシ化合物と、必要に応じジカルボン酸化合物を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる。重合は、通常、2段階以上の多段工程で実施され、重合反応器は1つで条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいし、2つ以上の反応器を用いて、それぞれの条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいが、生産効率の観点からは、2つ以上、好ましくは3つ以上、更に好ましくは3〜5つ、特に好ましくは、4つの反応器を用いて実施する。重合反応はバッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせの何れでも構わないが、生産効率と品質の安定性の観点から、連続式が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含有されるポリカーボネートを得るための溶融重合反応においては、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが反応系外に留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比率が変化し、所望の高分子が得られない場合がある。
具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、通常130℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、また、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。また、圧力は通常110kPa以上、好ましくは70kPa以上、より好ましくは30kPa以上、また、通常5kPa以下、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下(絶対圧力)の圧力下である。また、反応時間は通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは3時間以下であり、、発生する炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物(炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合、モノヒドロキシ化合物とはフェノールのことを示す。)を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を5kPa以下、好ましくは3kPaにして、内温の最高温度を通常210℃以上、好ましくは220℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは260℃以下で、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、また、通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは3時間以下行う。
特に本発明のポリカーボネート樹脂組成物の着色や熱劣化を抑制し、色相や耐光性の良好なポリカーボネート樹脂組成物を得るには、全反応段階における内温の最高温度が270℃以下、特に260℃以下であることが好ましい。
<4.25.5 ペレット化>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化することができる。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。後述するように、副生する炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物がポリカーボネート中に多く含まれると、位相差フィルムに加工した後に、環境変化による光学的特性の変化を招くことがあるため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、押出機を使用して炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物を除去することが好ましく、中でも、最終重合反応器から溶融状態で単数または複数のベント口を有する一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、ベント口を減圧にしてモノヒドロキシ化合物を除去しつつ溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法が好ましい。
<4.25.6 炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物含量>
溶融重合法では重合反応において炭酸ジエステルからフェノール等のモノヒドロキシ化合物が副生するため、これが本発明のポリカーボネート樹脂組成物中に残存し、フィルム製膜時や延伸時に揮発して、臭気の原因となったり、フィルムの欠陥を招いたりすることがある。また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物が位相差フィルムに加工された後に、該フィルム中に残存している炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物は、環境変化により位相差フィルムの光学的特性を変化させることがあるため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれる炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物は1500質量ppm以下であることが好ましい。さらには1000質量ppm以下であることが好ましい。下限については、上記問題を解決するために少ない方がよいが、溶融重合法では高分子中に残存するモノヒドロキシ化合物をゼロにすることは困難であること、除去のためには過大な労力が必要であることから、通常1質量ppmである。本発明のポリカーボネート樹脂組成物中に残存する炭酸ジエステル由来のモノヒドロキシ化合物を低減するためには、上記のように高分子を押出機で脱揮処理すること、重合終盤の圧力を3kPa以下、好ましくは2kPa以下にすることが効果的であるが、圧力を下げすぎると分子量が急激に上昇して、反応の制御が困難になる場合があるため、高分子の末端基濃度を水酸基過剰かアリール基過剰にして、末端基バランスを偏らせて製造することが好ましい。中でも熱安定性の観点から、水酸基末端濃度を50mol/ton以下、特には30mol/ton以下にすることが好ましい。水酸基末端濃度は、1H−NMR等で定量することができる。水酸基末端濃度は炭酸ジエステルと全ジヒドロキシ化合物の仕込みのモル比により調節することができる。
<4.26 ポリエステルの重合方法>
重合に用いる炭酸ジエステルを上記一般式(28)で表されるジカルボン酸化合物と置換する等の方法により、ポリエステルが得られる。
好ましいジカルボン酸、重合触媒、重合条件等は<4.25 ポリカーボネートの重合方法>記載の方法と同じである。
<4.27 添加剤>
本発明の樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させてもよい。同様に、本発明の樹脂組成物に含有される重合体にも、任意の添加剤を含有させてもよい。
<4.27.1 熱安定剤>
本発明の樹脂組成物には、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。同様に、本発明の樹脂組成物に含有される重合体にも、同様の理由から、熱安定剤を配合することができる。
かかる熱安定剤としては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤および/またはリン系熱安定剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(6−シクロヘキシル−4−メチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]−メタン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが挙げられる。
リン系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の熱安定剤を配合して、本発明の樹脂組成物又は本発明のポリカーボネート樹脂組成物を得た後に、さらに熱安定剤を配合すると、ヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。また、熱安定剤は、例えば、溶融押出し法等の押出機を用いてフィルムを製膜する場合、押出機に前記熱安定剤等を添加して製膜してもよいし、予め押出機を用いて、樹脂組成物又はポリカーボネート樹脂組成物中に前記熱安定剤等を添加して、ペレット等の形状にして用いてもよい。
これらの熱安定剤の配合量は、本発明の樹脂組成物を100質量部とした場合、0.0001質量部以上が好ましく、0.0005質量部以上がより好ましく、0.001質量部以上がさらに好ましく、また、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましい。
<4.27.2 酸化防止剤>
また、本発明の樹脂組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。これら酸化防止剤の配合量は、本発明の樹脂組成物又は本発明のポリカーボネート樹脂組成物を100質量部とした場合、0.0001質量部以上が好ましく、また、0.5質量部が好ましい。
更に、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
上記の添加剤は、本発明の樹脂組成物に上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができるが、中でも押出機、特には二軸押出機により混練することが、分散性向上の観点から好ましい。
<3.27.3 触媒失活剤>
本発明の樹脂組成物には、重合触媒を失活させるために触媒失活剤を配合することができる。
かかる触媒失活剤としては例えば、リン系化合物が挙げられる。なお、リン系化合物は、高温下での樹脂組成物の着色を抑制するための熱安定剤として作用させることもできる傾向がある。このリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル、脂肪族環状亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホン酸エステルであり、特にホスホン酸エステルが好ましい。
ホスホン酸としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2−ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p−メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert−ブチル、(4−クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、またはジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
脂肪族環状亜リン酸エステルは、リン原子を含む環状構造中に芳香族基を含まない亜リン酸エステル化合物と定義する。例えば、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマーなどジヒドロキシ化合物とペンタエリスリトールジホスファイトからなるポリマー型の化合物などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
前記リン系化合物の含有量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえって樹脂組成物が着色してしまう傾向があるため、リン系化合物の含有量は、樹脂組成物中のリン原子の含有量として1質量ppm以上、8質量ppm以下とすることが好ましく、さらには1.2質量ppm以上、7質量ppm以下が好ましく、特には1.5質量ppm以上、6質量ppm以下が好ましい。
前記リン系化合物は通常、三塩化リンを出発原料に用いられるため、未反応物や脱離した塩酸由来の含塩素成分が残存する場合があるが、前記リン系化合物に含有される塩素原子の量は5質量%以下であることが好ましい。塩素原子の残存量が多いと、前記リン系化合物を添加する製造設備の金属部を腐食させたり、樹脂組成物の熱安定性を低下させたり、着色や熱劣化による分子量低下を促進させたりする懸念がある。
前記リン系化合物は、押出機を用いて樹脂組成物に添加、混練されることが好ましい。特に、樹脂組成物を重合後に溶融状態のまま押出機に供給し、ただちに前記リン系化合物を樹脂組成物に添加することが最も効果的である。さらに、触媒を失活させた状態で、押出機で真空ベントにより脱揮処理を行うと、効率的に低分子成分を脱揮除去することができる傾向がある。
<4.28 用途>
本発明にかかる樹脂組成物は光弾性係数が小さく、耐熱性および成形性にも優れ、さらに着色が少なく高い透明性を兼ね備えている傾向があるため、それらを成形して得られる成形体はフィルムやレンズ、プリズムといった光学部材に好適である。例えば、本発明にかかるフィルムは、各種ディスプレイ(液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED電界放出表示装置、SED表面電界表示装置)の視野角補償用、外光の反射防止用、色補償用、直線偏光の円偏光への変換用などの位相差フィルムとして用いることができる。また、本発明にかかるレンズ、プリズムは、フレネルレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズや光学プリズムにも用いることもできる。
<4.28.1 フィルム>
本発明の樹脂組成物は、フィルムとして好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物を製膜することでフィルムを得ることができる。
<4.28.2 フィルム製造法>
本発明の樹脂組成物を用いて原反フィルムを製膜する方法としては、本発明の樹脂組成物を溶媒に溶解させてキャストした後、溶媒を除去する流延法、溶媒を用いず溶融製膜する方法、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレーション成形法等があり、特に限定されないが、流延法は、残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、好ましくは溶融製膜法、中でも後の延伸処理のし易さから、Tダイを用いた溶融押出法が好ましい。
溶融製膜法で原反フィルムを成形する場合、成形温度は好ましくは265℃以下であって、より好ましくは260℃以下、特には258℃以下とすることが好ましい。成形温度が高過ぎると、得られる原反フィルム中の異物や気泡の発生による欠陥が増加したり、原反フィルムが着色したりする可能性がある。ただし、成形温度が低過ぎると本発明の樹脂組成物又は本発明のポリカーボネート樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、原反フィルムの成形が困難となり、厚みの均一な原反フィルムを製造することが困難になる可能性があるので、成形温度の下限は通常200℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上である。ここで、原反フィルムの成形温度とは、溶融製膜法における成形時の温度であって、通常、溶融樹脂を押出すダイス出口の温度を測定した値である。
原反フィルムの厚みに制限はないが、厚すぎると厚み斑が生じやすく、薄すぎると延伸時の破断を招く可能性があるため、通常50μm以上、好ましくは70μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは120μm以下である。また、原反フィルムに厚み斑があると、位相差フィルムの位相差斑を招く可能性があるため、位相差フィルムとして使用する部分の厚みは設定厚み±3μm以下であることが好ましく、設定厚み±2μm以下であることが更に好ましく、設定厚み±1μm以下であることが特に好ましい。
<4.28.3 フィルム物性>
本発明のフィルムは、内部ヘイズが3%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。位相差フィルムの内部ヘイズが上記上限値よりも大きいと光の散乱が起こり、例えば偏光子と積層した際、偏光解消を生じる原因となる場合がある。内部ヘイズの下限値は特に定めないが、通常0.2%以上である。測定サンプルは、事前にヘイズ測定を行っておいた粘着剤付き透明フィルムを、試料フィルムの両面に貼り合せ、外部ヘイズの影響を除去した状態のものを作成して用い、測定値は、粘着剤付き透明フィルムのヘイズ値の差分を用いる。
本発明のフィルムは、b*値が3以下であることが好ましい。フィルムのb*値が大き過ぎると着色等の問題が生じる。本発明のフィルムのb*値はより好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。
本発明のフィルムは、厚みによらず、当該フィルムそのものの全光線透過率が80%以上であることが好ましく、この透過率は90%以上であることが更に好ましい。透過率が上記下限以上であれば、着色の少ないフィルムが得られ、偏光板と貼り合わせた際、偏光度や透過率の高い円偏光板となり、画像表示装置に用いた際に、高い表示品位を実現することが可能となる。なお、本発明のフィルムの全光線透過率の上限は特に制限はないが通常99%以下である。
本発明のフィルムは、後述する折り曲げ試験において脆性破壊しないことが好ましい。脆性破壊が生じるフィルムでは、フィルムの製膜時や延伸時にフィルムの破断が起こりやすく、製造の歩留まりを悪化させるおそれがある。脆性破壊しないフィルムとするには、本発明の樹脂組成物の分子量や溶融粘度、ガラス転移温度を、前述の好ましい範囲に設計することが重要である。また、樹脂組成物中に柔軟性を付与できる成分を共重合したり、ブレンドすることにより、フィルムの物性を調整する方法も効果的である。
<4.28.4 延伸フィルムの製造法>
このようにして得られる原反フィルムは、少なくとも一方向に延伸することにより本発明の延伸フィルムとすることができる。その延伸の方法は、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮等、様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。また、延伸方向に関しても、水平方向・垂直方向・厚さ方向、対角方向等、様々な方向や次元に行なうことが可能であり、特に限定されない。好ましくは、横一軸延伸方法、縦横同時二軸延伸方法、縦横逐次二軸延伸方法等が挙げられる。延伸する手段としては、テンター延伸機、二軸延伸機等、任意の適切な延伸機を用いることができる。
延伸温度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。好ましくは、延伸は、原反フィルム(即ち、原反フィルムの製膜材料である樹脂組成物)のガラス転移温度(Tg)に対し、通常Tg−20℃以上、好ましくはTg−10℃以上、より好ましくはTg−5℃以上、また、通常Tg+30℃以下、好ましくはTg+20℃以下、より好ましくはTg+10℃以下の範囲で行なう。このような条件を選択することによって、位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが白濁しにくくなる。具体的には、上記延伸温度は通常90℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常210℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
延伸倍率は、目的に応じて適宜選択され、未延伸の場合を1倍として、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.8倍以上、特に好ましくは2倍以上、また、好ましくは6倍以下、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは3倍以下であり、特に好ましくは2.5倍以下である。延伸倍率が過度に大きいと延伸時の破断を招く可能性があるだけでなく、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動が大きくなる可能性があり、過度に低いと所望の厚みにおいて意図した光学的特性が付与できなくなる可能性がある。
延伸速度も目的に応じて適宜選択されるが、下記式で表される歪み速度で通常50%以上、好ましくは100%以上、より好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上、また、通常2000%以下、好ましくは1500%以下、より好ましくは1000%以下、特に好ましくは500%以下である。延伸速度が過度に大きいと延伸時の破断を招いたり、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動が大きくなったりする可能性がある。また、延伸速度が過度に小さいと生産性が低下するだけでなく、所望の位相差を得るのに延伸倍率を過度に大きくしなければならない場合がある。
歪み速度(%/分)= 延伸速度(mm/分)/原反フィルムの長さ(mm) ×100
また、延伸後加熱炉で熱固定処理を行っても良いし、テンターの幅を制御したり、ロール周速を調整したりして、緩和工程を行っても良い。この処理を行うことで、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動を抑制することができる。
本発明の延伸フィルムは、このような延伸工程における処理条件を適宜選択・調整することによって作製することができる。
<4.28.5 延伸フィルム物性>
本発明の延伸フィルムは、波長450nmで測定した位相差(Re450)と波長550nmで測定した位相差(Re550)の比が下記式(20)を満足する位相差フィルムであることが好ましい。
Re450/Re550 ≦ 1.0 (20)
Re450/Re550が0.50以上1.00以下であることが好ましく、0.5超過1.00未満であることがより好ましく、0.70以上0.95以下であることがさらに好ましく、0.75以上0.93以下であることがよりさらに好ましく、0.80以上0.91以下であることが特に好ましい。Re450/Re550の値が上記範囲であれば、長波長ほど位相差が発現し、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を得ることができる。例えば1/4λ板としてこのような波長依存性を有する本発明の位相差フィルムを偏光板と貼り合わせることにより、円偏光板等を作製することができ、あらゆる波長において外光反射防止機能を有する黒色性に優れた円偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。一方、Re450/Re550の値が上記範囲外の場合には、波長による色抜けが大きくなり、円偏光板や画像表示装置に着色の問題が生じる傾向がある。
また、本発明の延伸フィルムは、<4.11 位相差比>に記載した物性値を満足することが好ましい。同様に、<4.17 光弾性係数>に記載した物性値を満足することが好ましい。同様に、<4.18 複屈折>に記載した物性値を満足することが好ましい。
本発明の延伸フィルムの厚みは、通常150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、60μm以下であることがより好ましい。位相差フィルムの厚みが過度に厚いと、同じ面積のフィルムを製造するのにより多くの製膜材料が必要になり非効率であったり、当該フィルムを使用する製品の厚みが厚くなったりする可能性があると共に、均一性の制御が困難となり、精密性・薄型・均質性を求められる機器に適合できない場合がある。本発明の位相差フィルムの厚みの下限としては、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。位相差フィルムの厚みが過度に薄いとフィルムの取り扱いが困難になり、製造中にしわが発生したり、保護フィルムなどの他のフィルムやシートなどと貼合わせることが困難になったりすることがある。
本発明の延伸フィルムは、複屈折が、0.001以上であることが好ましい。後述の本発明の樹脂組成物を用いて成形するフィルムの厚みを非常に薄く設計するためには、複屈折が高い方が好ましい。従って、複屈折は0.002以上であることが更に好ましい。複屈折が0.001未満の場合には、フィルムの厚みを過度に大きくする必要があるため、製膜材料の使用量が増え、厚み・透明性・位相差の点から均質性の制御が困難となる。そのため、複屈折が0.001未満の場合には、精密性・薄型・均質性を求められる機器に適合できない可能性がある。
<4.28.6 吸水率>
本発明のフィルムは、飽和吸水率が1.0質量%より大きいことが好ましい。飽和吸水率が1.0質量%より大きければ、このフィルムを他のフィルムなどと貼りあわせる際、容易に接着性を確保することができる傾向がある。例えば、偏光板と貼りあわせる際、フィルムが親水性であるため、水の接触角も低く、接着剤を自由に設計し易く、高い接着設計ができる。飽和吸水率が1.0質量%以下の場合は、疎水性となり、水の接触角も高く、接着性の設計が困難になる。また、フィルムが帯電し易くなり、異物の巻き込み等、円偏光板、画像表示装置に組み込んだ際、外観欠点が多くなるという問題が生じる傾向がある。一方、飽和吸水率が2.0質量%より大きくなると湿度環境下での光学特性の耐久性が悪くなる傾向があるため好ましくない。本発明のフィルムは、飽和吸水率が1.0質量%より大きいことが好ましく、1.1質量%以上であることがより好ましく、また、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
一方で、フィルムやそれを用いた画像表示装置の使用条件によっては、飽和吸水率を1.0質量%以下としてもよい。
<4.28.7 デバイス用途など>
本発明にかかるフィルムは、各種ディスプレイ(液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマ表示装置、FED電界放出表示装置、SED表面電界表示装置)の視野角補償用、外光の反射防止用、色補償用、直線偏光の円偏光への変換用などの位相差フィルムとして用いることができる。
本発明にかかる樹脂組成物及びポリカーボネート樹脂組成物は光弾性係数が小さく、耐熱性および成形性にも優れ、さらに着色が少なく高い透明性を兼ね備えている傾向があるため、その他の光学フィルムや光ディスク、光学プリズム、ピックアップレンズ等にも用いることもできる。
本発明にかかる延伸フィルムの用途には特に制限はないが、可視領域の各波長において理想的な位相差特性を備え、光弾性係数が小さく、耐熱性および成形性にも優れ、さらに着色が少なく高い透明性を兼ね備えている傾向があるため、1/4λ板、円偏光板、画像表示装置等に好適である。
例えば、本発明の延伸フィルムを前述の<4.11 位相差比>に記載の条件を満足させることで、1/4λ板として用いることができる。このようにして作成した本発明の1/4λ板を偏光板と貼り合わせることにより、円偏光板等を作製することができ、あらゆる波長において外光反射防止機能を有する黒色性に優れた円偏光板とすることができ、さらには画像表示装置に適用した場合には黒色の再現性が極めて良好な画像表示装置の実現が可能である。前記偏光板としては、公知の様々な構成のものを採用することができる。例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製した偏光子に保護フィルムを積層させたもの等が使用できる。
また、本発明の延伸フィルムを前述の<4.11 位相差比>に記載の条件を満足させることで、VAモードの液晶表示装置の色抜けを補正する位相差フィルムを得ることができ、波長による色抜けの少ない液晶表示装置の実現が可能となる。さらに、前述の<3.18.複屈折>に記載の条件を満足させることで、可視領域の波長において理想的な位相差特性を得ることができ、広帯域ゼロ複屈折材料とすることができる。また、液晶表示装置の偏光板保護フィルムとして、本発明の広帯域ゼロ複屈折材料を偏光板と貼り合わせることにより、波長による色抜けの少ない偏光板及び画像表示装置の実現が可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。本発明のオリゴフルオレンモノマーの品質評価、および樹脂組成物と透明フィルムの特性評価は次の方法により行った。なお、特性評価手法は以下の方法に限定されるものではなく、当業者が適宜選択することができる。
また、以下の実施例で用いた化合物の略号等は以下の通りである。
ISB;イソソルビド(ロケットフルーレ社製、商品名:POLYSORB)
DPC;ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)
CHDM;1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物、SKケミカル社製)
THF:テトラヒドロフラン(安定剤不含、WAKO社製)
[モノマーの実施例]
<実施例1> 9−{[(2−エトキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]−メチル}フルオレン(化合物2)の合成
Figure 0006446800
<合成例1A> ビス(フルオレン−9−イル)メタン(化合物1)の合成
1L四口フラスコにフルオレン(120g、722mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(480ml)を入れ、窒素置換後、5℃以下に冷却した。ナトリウムエトキシド(24.6g、361mmol)を加え、パラホルムアルデヒド(8.7g、289mmol)を10℃を越えないように少量ずつ添加し、撹拌した。2時間後、1N塩酸(440ml)を滴下し、反応を停止した。得られた懸濁溶液を吸引ろ過し、脱塩水(240ml)でふりかけ洗浄した。その後、得られた粗生成物を脱塩水(240ml)に分散させ、1時間撹拌した。この懸濁液を吸引ろ過後、脱塩水(120ml)でふりかけ洗浄した。得られた粗生成物をトルエン(480ml)に分散させた後、ディーン−スターク装置を用いて、加熱還流条件下で脱水を行なった。室温(20℃)に戻した後、吸引ろ過し、80℃で恒量になるまで減圧乾燥することで、白色固体としてビス(フルオレン−9−イル)メタン(化合物1)を84.0g(収率:84.5%、HPLC純度:94.0%)得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ7.83(d,J=7.6Hz,4H),7.56(dd,J1=7.6Hz,J2=0.8Hz,4H),7.41(t,J=7.3Hz,4H),7.29(dt,J1=7.3Hz,J2=1.3Hz,4H),4.42(t,J=7.6Hz,2H),2.24(d,J=7.6Hz,2H).
<合成例1B−1> 9−{[(2−エトキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]−メチル}フルオレン(化合物2)の合成
1Lセパラブルフラスコに合成例1Aで得られたビス(フルオレン−9−イル)メタン(化合物1、34.0g、98.7mmol)、N−ベンジル−N,N,N−トリエチルアンモニウムクロリド(4.47g、19.6mmol)、テトラヒドロフラン(170ml)を入れ、窒素置換後、内温を15℃〜18℃に制御し、50wt/wt%水酸化ナトリウム水溶液(25.93g)を加えたところ、溶液の色は淡黄色に変化した。その後、アクリル酸エチル(10.7ml、103mmol)を30分かけて滴下した後、HPLCで分析を行った。
(HPLC条件)
カラム:Inertsil ODS−3V 150mm×4.8mmφ
温度:40℃
溶離液条件:0〜5min:テトラヒドロフラン/水=50/50、20min:テトラヒドロフラン/水=100/0
流速:1.0ml/min
注入量:2μL
(HPLC分析結果)
化合物1(13.9min):15面積%、化合物2(13.1min):61面積%、化合物3(13.5min):15面積%
<合成例1B−2> 9−{[(2−エトキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]−メチル}フルオレン(化合物2)
50mL三口フラスコに化合物1(1.0g、2.9mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(132mg、0.58mmol)、THF(5mL)を添加して窒素雰囲気下、室温にて攪拌した。エチルアクリレート(290mg、2.9mmol)を30分かけて添加後、室温にて3時間熟成した。16℃にて1時間熟成後、3N塩酸にて中和した。ここにトルエン(5mL)を添加して、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL)で1回、水(5mL)で3回トルエン相を洗浄した。トルエンをエバポレーターにて留去後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、化合物2(0.63g、1.4mmol、収率:49%、白色結晶)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δ7.74−7.80(m,2H),7.53−7.56(m,4H),7.38−7.45(m,4H),7.19(t,J=7.5Hz,2H),7.03(dt,J1=7.5Hz,J2=1.0Hz,2H),6.60(d,J=7.5Hz,2H),3.93(q,J=7.0Hz,2H),3.12(t,J=4.6Hz,1H)2.73(d,J=4.6Hz,2H),2.48−2.52(m,2H),1.58−1.62(m,2H),1.10(t,J=7.0Hz,3H).
実施例1B−1より、化合物1を原料としてアクリル酸エチルを1等量付加させた場合には、アクリル酸エチルの付加反応の速度が、一つ目の付加と二つ目の付加とで同じ場合、理論上は化合物1と化合物2と化合物3の比が1:2:1となるように生成するはずである。しかしながら、驚くべきことに本反応では、HPLCの面積比は1:4:1となっており、選択的にモノ付加体の化合物2が生成していることが分かる。これは、化合物3は2つのフルオレン環がスタッキングした構造が最安定構造であるのに対して、化合物1と化合物2は2つのフルオレン環が反転した構造が最安定構造であるため、化合物2に2つ目のアクリル酸エチルが付加する際には、一つのフルオレン環が反転して付加する必要があるためと考えられる。化合物1と化合物2のフルオレン環由来のプロトンが、1H−NMRでδ6.60−7.80ppmと全体的に低磁場側に観測されているのに対し、化合物3のフルオレン環由来のプロトンは、δ6.77−7.03ppmと高磁場側に観測されており、強い遮蔽効果の影響が見られることからも、フルオレン環がスタッキング構造を取っていることが支持されている。
通常2か所の置換基導入部位を持つ場合、選択的に1か所だけに反応性官能基を導入することは困難となる場合があるが、特定のオリゴフルオレン化合物の場合には、立体的な反応性の違いなどにより、特定の反応性官能基を選択的に1ヶ所だけに導入しやすくできる傾向があり、工業的にも製造できると考えられる。
また、化合物1のようなオリゴフルオレン化合物に対して付加反応や、置換反応で反応性置換基を導入する場合には、同様に反応性官能基を1つ有するオリゴフルオレンが選択的に生成できる傾向があると考えられるので、アクリル酸エチル以外にも広く適用できると考えられる。
<反応性置換基を1つ有するオリゴフルオレンの樹脂原料としての利用>
例えば、化合物2のようなモノエステル体は、ポリエステルやポリエステルカーボネートの原料として用いることで、末端停止剤として作用することが考えられるため、ポリエステルやポリカーボネートの分子量の調整剤として有用であると考えられる。
<異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレン化合物の樹脂原料としての利用>
例えば、化合物2のようなモノエステル体は、さらに反応性置換基として、水酸基を導入することで、異なる反応性官能基を2つ有するオリゴフルオレン化合物を合成することができ、それだけでフルオレン含有量の高いポリエステルを得ることができるため、有用であると考えられる。

Claims (9)

  1. 置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位aの9位の炭素原子同士が、置換基を有
    していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は置換基を有
    していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオリゴフルオレン構造単位(以
    下、「オリゴフルオレン構造単位a」という。)を含むオリゴフルオレンであって、
    該オリゴフルオレン構造単位aにおけるいずれか一方の末端のフルオレン単位aの9位
    の炭素原子に下記式(A)で表される反応性官能基を有し、他方の末端のフルオレン単位
    aの9位の炭素原子に水素原子を有し、
    該オリゴフルオレンが下記一般式(1)で表されることを特徴とするオリゴフルオレン

    Figure 0006446800
    (式中、Ra及びRは水素原子であり、Rcは水素原子又はメチル基であり、Xはメトキ
    シカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はカルボキシル基
    、である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。)
    Figure 0006446800
    (式中、R3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基
    、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素
    数6〜10のアラルキレン基であり、 R4〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、置換さ
    れていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のア
    リール基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素
    数1〜10のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、
    置換されていてもよいアミノ基、置換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又
    はシアノ基である。ただし、R4〜R9のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合し
    て環を形成していてもよい。Ra〜Rc 、およびXは式(A)におけると同義を示す。nは
    1〜5の整数値を示す。)
  2. が炭素数1〜10のアルキレン基であり、(1)R4〜R9の全てが水素原子である
    か、或いは、(2)R4及び/又はR9がハロゲン原子、アシル基、ニトロ基、シアノ基、
    及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R5〜R8が水素原子であり
    、nは4以下である請求項1に記載のオリゴフルオレン。
  3. 4〜R9が全て水素原子である請求項1又は2に記載のオリゴフルオレン。
  4. が炭素数1〜3のアルキレン基であり、R4〜R9は全てが水素原子であり、nは4
    以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のオリゴフルオレン。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴフルオレン(以下、「オリゴフルオレンA
    1」という。)と、該オリゴフルオレンA1とは異なる化学構造を有するオリゴフルオレ
    ン(以下、「オリゴフルオレンB」という。)と、を含むことを特徴とするオリゴフルオ
    レン組成物であって、
    前記オリゴフルオレンBは、置換基を有してもよい2以上のフルオレン単位bの9位の
    炭素原子同士が、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいア
    リーレン基、又は置換基を有していてもよいアラルキレン基を介して鎖状に結合されたオ
    リゴフルオレン構造単位(以下、「オリゴフルオレン構造単位b」という。)を含み、
    該オリゴフルオレン構造単位bにおける両末端のフルオレン単位bの9位の炭素原子に
    下記式(B)で表される同一の反応性官能基を有し、
    前記オリゴフルオレンBが、下記一般式(7)で表されることを特徴とするオリゴフル
    オレン組成物。
    Figure 0006446800
    (式中、Rd及びRは水素原子であり、Rfは水素原子又はメチル基であり、
    メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はカ
    ルボキシル基、である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。)*
    はフルオレン単位bの9位の炭素原子との結合手である。)
    Figure 0006446800
    (式中、R13は、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基
    、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリーレン基、又は置換されていてもよい炭素
    数6〜10のアラルキレン基であり、
    14〜R19は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜10のア
    ルキル基、置換されていてもよい炭素数4〜10のアリール基、置換されていてもよい炭
    素数1〜10のアシル基、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、置換さ
    れていてもよい炭素数1〜10のアリールオキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置
    換基を有する硫黄原子、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。ただし、R14
    19のうち隣接する少なくとも2つの基が互いに結合して環を形成していてもよい。
    d及びRは水素原子であり、Rfは水素原子又はメチル基であり、
    メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、又はカ
    ルボキシル基、である。*はフルオレン単位aの9位の炭素原子との結合手である。)
  6. 13が炭素数1〜10のアルキレン基であり、(1)R14〜R19の全てが水素原
    子であるか、或いは、(2)R14及び/又はR19がハロゲン原子、アシル基、ニトロ
    基、シアノ基、及びスルホ基からなる群から選ばれるいずれかであり、かつ、R15〜R
    18が水素原子であり、nは4以下である請求項5に記載のオリゴフルオレン組成物。
  7. 4〜R9は全てが水素原子である請求項5又は6に記載のオリゴフルオレン組成物。
  8. 13が炭素数1〜3のアルキレン基であり、R14〜R19は、全て水素原子であり
    、nは4以下である請求項5〜7の何れか1項に記載のオリゴフルオレン組成物。
  9. 請求項1に記載の式(1)で表されるオリゴフルオレンの製造方法であって、塩基存在
    下、下記式(3)で表されるオリゴフルオレンを、下記式(4)で表される電子吸引性基
    を持つオレフィンと反応させることを特徴とする、オリゴフルオレンの製造方法。
    Figure 0006446800
    (式中、R3〜R9、n、Ra〜Rc 、およびXは前記式(1)におけると同義を示す。)
JP2014056873A 2014-02-27 2014-03-19 オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置 Active JP6446800B2 (ja)

Priority Applications (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014056873A JP6446800B2 (ja) 2014-03-19 2014-03-19 オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置
KR1020217004441A KR102341901B1 (ko) 2014-02-27 2015-02-26 중축합계 수지 및 그것으로 이루어지는 광학 필름
CN201810390230.1A CN108586723A (zh) 2014-02-27 2015-02-26 缩聚系树脂和由其形成的光学膜
PCT/JP2015/055721 WO2015129833A1 (ja) 2014-02-27 2015-02-26 重縮合系樹脂及びそれよりなる光学フィルム
KR1020167023075A KR102278717B1 (ko) 2014-02-27 2015-02-26 중축합계 수지 및 그것으로 이루어지는 광학 필름
CN201580010538.3A CN106062035B (zh) 2014-02-27 2015-02-26 缩聚系树脂和由其形成的光学膜
TW104106555A TWI673262B (zh) 2014-02-27 2015-03-02 聚縮合系樹脂及由該樹脂所成之光學膜

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014056873A JP6446800B2 (ja) 2014-03-19 2014-03-19 オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015178477A JP2015178477A (ja) 2015-10-08
JP6446800B2 true JP6446800B2 (ja) 2019-01-09

Family

ID=54262811

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014056873A Active JP6446800B2 (ja) 2014-02-27 2014-03-19 オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6446800B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015212368A (ja) * 2014-04-16 2015-11-26 三菱化学株式会社 重縮合系樹脂及びそれよりなる光学フィルム
JP7210148B2 (ja) * 2017-03-30 2023-01-23 大阪ガスケミカル株式会社 フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂及びその製造方法、並びに成形体
JP6873208B2 (ja) * 2019-10-21 2021-05-19 日東電工株式会社 位相差フィルムおよびその製造方法、ならびに、該位相差フィルムを用いた円偏光板および画像表示装置
CN116178184A (zh) * 2023-04-21 2023-05-30 淄博鸿润新材料有限公司 一种2,2’-二氨基二苯氧基乙烷的制备方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3205257A (en) * 1962-09-10 1965-09-07 Union Carbide Corp Bis[9-(2-cyanoalkyl) fluoren-9-yl] alkane compound
US3280169A (en) * 1962-09-18 1966-10-18 Union Carbide Corp Sulfo-substituted aromatic dicarboxylic compounds
JP4865411B2 (ja) * 2006-06-15 2012-02-01 キヤノン株式会社 有機発光素子、ディスプレイ装置および表示装置
US8854730B2 (en) * 2010-12-30 2014-10-07 3M Innovative Properties Company Negatively birefringent polyesters and optical films
EP3385300B1 (en) * 2012-10-16 2020-12-30 Mitsubishi Chemical Corporation Resin composition, stretched film, circularly polarizing plate, and image display device
JP6447228B2 (ja) * 2014-02-27 2019-01-09 三菱ケミカル株式会社 トリフルオレンジエステル、オリゴフルオレンジエステル組成物、樹脂組成物、延伸フィルム、円偏光板及び画像表示装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015178477A (ja) 2015-10-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6562091B2 (ja) 樹脂組成物、延伸フィルム、円偏光板及び画像表示装置
JP6447228B2 (ja) トリフルオレンジエステル、オリゴフルオレンジエステル組成物、樹脂組成物、延伸フィルム、円偏光板及び画像表示装置
JP6189355B2 (ja) 位相差フィルム、円偏光板及び画像表示装置
JP6398242B2 (ja) 樹脂組成物及びそれを用いたフィルム
CN106461836B (zh) 相位差膜、圆偏振片及图像显示装置
CN106489085B (zh) 相位差膜、圆偏振片及图像显示装置
JP6446800B2 (ja) オリゴフルオレン、オリゴフルオレン組成物、樹脂組成物、フィルム及び画像表示装置
WO2015129833A1 (ja) 重縮合系樹脂及びそれよりなる光学フィルム
JP6911972B2 (ja) 重縮合系樹脂及びそれよりなる光学フィルム
KR20220023967A (ko) 열가소성 수지, 그것으로 이루어지는 광학 필름, 디올 화합물, 디에스테르 화합물
JP2015199706A (ja) オリゴフルオレンジエステル、及びそれを用いた樹脂組成物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161017

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20170418

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171205

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180131

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A132

Effective date: 20180703

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180829

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181119

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6446800

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151