JP6444272B2 - 車載用アンテナ装置及び設置方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車体のルーフの端部に配置される車載用アンテナ装置に関する。また、本発明は、車体のルーフの端部に、車載用アンテナ装置が備えている放射素子を設置する放射素子の設置方法に関する。
無線通信の用途拡大に伴い、従来から利用されていたFM/AM放送や地上波デジタル放送等の周波数帯域で動作するアンテナに加えて、3G(3rd Generation:第3世代携帯電話)やLTE(Long Term Evolution)等のより高周波な周波数帯域で動作するアンテナが自動車に搭載されるようになっている。
これらのアンテナを自動車に搭載する場合、アンテナそのものを窓ガラス等に張り付ける方法の他に、アンテナを内蔵した車載用アンテナ装置をルーフ等に取り付ける方法が取られている。後者の方法を採用する場合、車載用アンテナ装置をできるだけ目立たなくすることが自動車の美観を高めるうえで重要になる。
例えば、特許文献1には、スポイラーを筐体とする車載用アンテナ装置が開示されている。特許文献1の図5に示されているように、この車載用アンテナ装置は、車体のルーフの後端に配置されたスポイラーの内部に、デジタルテレビ用アンテナとラジオ用アンテナと内蔵したものである。この車載用アンテナ装置において、デジタルテレビ用アンテナの放射素子及びラジオ用アンテナの放射素子は、車体にスポイラーが取り付けられた状態において水平になるようにスポイラーに内蔵されている。
特開2008−283609号公報(2008年11月20日公開)
しかしながら、特許文献1に記載の車載用アンテナ装置には、車体前方への放射利得が小さいという問題があった。
すなわち、特許文献1に記載の車載用アンテナ装置においては、アンテナを構成する放射素子を水平に配置する構成が採用されている。このため、特許文献1に記載の車載用アンテナ装置から放射される電磁波は、水平偏波を主たる偏波成分とする電磁波になる。そして、ルーフの後端に配置された車載用アンテナ装置からルーフの前端に向かって放射された水平偏波は、偏波面と平行に延在する金属体であるルーフを横断する過程で減衰される。したがって、特許文献1に記載の車載用アンテナ装置においては、車体前方への放射利得が小さくなるという問題を生じる。
更に、このルーフによる減衰効果は、アンテナが放射する電磁波の波長が短くなるほど顕著になる。電磁波の波長が短くなるほど回折が生じ難くなるためである。近年、無線通信を用いて伝送する情報量は増加の一途をたどっており、無線通信に用いる電磁波の波長は短波長化される傾向がある。例えば、LTEの規格に準拠した電磁波の波長は、FM/AM放送の伝送に用いる電磁波の波長より短いため、ルーフによる減衰効果の影響をより大きく受けやすい。GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)のように天頂方向から送信される電磁波を受信するアンテナシステムの場合には、ルーフによる電磁波の減衰効果を無視し得る。しかし、3GやLTEなどのように地上に設置された基地局との通信を要するアンテナシステムの場合には、ルーフによる減衰効果に起因する利得低下は、大きな問題であり無視できない。
なお、ここでは、車載用アンテナ装置をルーフの後端に配置した場合に生じる問題について説明したが、車載用アンテナ装置をルーフの前端、右端、又は左端に配置した場合にも同様の問題を生じる。すなわち、車載用アンテナ装置をルーフの前端に配置した場合には、車体後方への放射利得が小さくなるという問題を生じ、車載用アンテナ装置をルーフの右端/左端に配置した場合には、車体左方/右方への放射利得が小さくなるという問題を生じる。すなわち、何れの場合においても、車載用アンテナ装置から見てルーフを横断する方向への放射利得が小さくなるという問題を生じる。
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車体のルーフの端部に搭載した場合に、ルーフを横断する方向への放射利得が従来よりも大きい車載用アンテナ装置を実現することである。
上記の課題を解決するために、本発明に係る車載用アンテナ装置は、車体のルーフの端部に搭載される車載用アンテナ装置において、当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、一方の給電点から上記ルーフに交わる第1の方向に引き出される部分を有する放射素子を備え、当該車載用アンテナ装置における上記放射素子の位置は、当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、(1)上記放射素子の少なくとも一部が上記ルーフ、又は、当該車載用アンテナ装置を上記ルーフの上記端部に固定するためのアンテナ固定部に重畳するように、かつ、(2)上記ルーフ又は上記アンテナ固定部と導通する金属製の構造体であって、上記ルーフに交わる方向に伸びる構造体から上記放射素子までの最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下となるように定められている、ことを特徴とする。
上記放射素子のうち上記ルーフに交わる第1の方向に引き出された部分に高周波電流が流れると、当該部分から垂直偏波が放射される。また、上記放射素子のうち上記ルーフに重畳している部分に高周波電流が流れると、上記ルーフ及び上記構造体に誘導電流が流れ、その結果、上記構造体から垂直偏波が放射される。
発明者らが得た知見によれば、上記構造体から上記放射素子までの最短距離を上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下としたときに得られる、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得は、上記構造体を省略したときに得られる同利得よりも大きくなる。これは、上記構造体から上記放射素子までの最短距離を上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下とすることによって、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に関し、上記放射素子から放射される垂直偏波と上記構造体から放射される垂直偏波とが互いに強め合うように干渉するためであると考えられる。
すなわち、上記の構成によれば、上記車体を構成する金属製の構造体(例えば、ピラー)を利用して、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得を高めた車載用アンテナ装置を実現することができる。
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置において、当該車載用アンテナ装置における上記放射素子の位置は、当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、上記最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/2倍となるように定められている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記車体を構成する金属製の構造体(例えば、ピラー)を利用して、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得を更に高めることができる。
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置において、上記構造体は、ピラーであってもよい。
上記構成によれば、上記車両の元来の構成部品である上記ピラーを用いて、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する利得を高めることができる。すなわち、上記車両に新たな構成部品を追加することなく、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得を高めることができる。
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置において、上記構造体は、リヤガラス又はフロントガラスを支持する枠体の縦柱であってもよい。
上記構成によれば、上記車両の元来の構成部品である上記枠体の上記縦柱を用いて、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する利得を高めることができる。すなわち、上記車両に新たな構成部品を追加することなく、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得を高めることができる。
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置において、上記放射素子は、上記一方の給電点から上記第1の方向に引き出される第1の導体片と、他方の給電点から上記ルーフに沿う第2の方向に引き出され、少なくとも一部が上記ルーフ又は上記アンテナ固定部に重畳する第2の導体片からなるダイポールアンテナを構成する、ことが好ましい。
上記の構成によれば、ルーフを横断する方向に対する垂直偏波は、第1の導体片に流れる高周波電流に起因して第1の導体片から放射される垂直偏波と、第2の導体片に流れる高周波電流に起因して構造体から放射される垂直偏波とが互いに強め合うように干渉することによって得られる。
すなわち、第1の導体片に流れる高周波電流及び第2の導体片に流れる高周波電流の各々がルーフを横断する方向に対する垂直偏波に寄与するため、放射素子に投入された電力を効率よく使ってルーフを横断する方向に対する垂直偏波を生じさせることができる。したがって、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向に対する垂直偏波の利得を更に高めることができる。
本発明の一態様に係る車載用アンテナ装置は、スポイラーを筐体とするものである、ことが好ましい。
上記の構成によれば、車体の美観及び空力特性を損なうことなく、上記放射素子から見て上記ルーフを横断する方向への放射利得が従来よりも大きい車載用アンテナ装置を実現することができる。
上記の課題を解決するために、本発明に係る設置方法は、車体のルーフの端部に放射素子を備えた車載用アンテナ装置を設置する設置方法において、
(1)上記放射素子が一方の給電点から上記ルーフに交わる第1の方向に引き出され、
(2)上記放射素子の少なくとも一部が上記ルーフ、又は、当該車載用アンテナ装置を上記ルーフの上記端部に固定するためのアンテナ固定部に重畳し、かつ、
(3)上記ルーフ又は上記アンテナ固定部と導通する金属製の構造体であって、上記ルーフに交わる方向に伸びる構造体から上記放射素子までの最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下となるように、上記車載用アンテナ装置を上記ルーフの端部に設置する、ことを特徴とする。
上記の構成によれば、本発明の車載用アンテナ装置と同様の効果を奏する。
本発明によれば、ルーフを横断する方向への放射利得が従来よりも大きい車載用アンテナ装置を実現することができる。
(a)は、本発明の第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置を搭載する車体の外観を示す斜視図であり、(b)は、上記車載用アンテナ装置を搭載する上記車体の一部を拡大した断面図である。 上記車載用アンテナ装置が備えている放射素子の展開図である。 (a)は、本発明の各実施例において、車載用アンテナ装置の放射利得を計算するために用いた、車載用アンテナ装置を搭載した車体のモデルの構成を示す上面図である。(b)は、上記モデルの構成を示す側面図である。 (a)は、図3の(a)に示した上記モデルの一部を拡大した上面図である。(b)は、図3の(b)に示した上記モデルの一部を拡大した側面図である。 図3に示す車体に搭載した車載用アンテナ装置、及び、図6に示す車体に搭載した車載用アンテナ装置の前方放射利得の最短距離Dx依存性を示すグラフである。 (a)は、本発明の比較例において、車載用アンテナ装置の放射利得を計算するために用いた車載用アンテナ装置を搭載した車体のモデルの構成を示す上面図である。(b)は、上記モデルの構成を示す側面図である。 図3に示す車体に搭載した、本発明の実施例の車載用アンテナ装置、及び、第1の変形例の車載用アンテナ装置の前方放射利得の最短距離Dx依存性を示すグラフである。 図3に示す車体に搭載した、本発明の実施例の車載用アンテナ装置、第2の変形例の車載用アンテナ装置、及び第3の変形例の車載用アンテナ装置の前方放射利得の最短距離Dx依存性を示すグラフである。
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、ルーフの後端に配置されるスポイラーを筐体とする車載用アンテナ装置について説明するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、ルーフの前端、右端、又は左端に配置される車載用アンテナ装置にも適用することができる。
〔車載用アンテナ装置10の概要〕
初めに図1の(a)を参照して、本発明の第1の実施形態に係る車載用アンテナ装置の概要について説明する。図1の(a)は、本実施形態に係る車載用アンテナ装置の一例である、車載用アンテナ装置10を搭載する車体1の外観を示す斜視図である。
なお、以降の説明では、車体1の前進方向(図1におけるy軸正方向)を「前方向」と称し、その後進方向(図1におけるy軸負方向)を「後方向」と称する。また、車体1に搭乗する搭乗者の右手方向(図1におけるx軸正方向)を「右方向」と称し、その左手方向(図1におけるx軸負方向)を「左方向」と称する。また、車体1のシャシーからルーフへと向かう方向(図1におけるz軸正方向)を「上方向」と称し、車体1のルーフからシャシーへと向かう方向(図1におけるz軸負方向)を「下方向」と称する。また、左方向及び右方向を、向きを区別せずに指すとときには、「左右方向」といい、上方向及び下方向を、向きを区別せずに指すときには、「上下方向」という。
図1の(a)に示す車体1は、ハッチバック型の車体である。車体1において、ルーフ2及びハッチゲート5を含む外板(ボディパネル)は、鋼板及びアルミ板によって構成されている。すなわち、車体1の外板は、金属製である。本実施形態に係る車載用アンテナ装置10は、スポイラー11を筐体とする車載用アンテナ装置であり、ルーフ2の後端に搭載される。
車体1の側面上側は、ピラー3と、前ドア及び後ろドアに組み付けられた窓ガラス4a〜4cとにより構成されている。本実施形態に係る車体1において、ピラー3は、Aピラー3a、Bピラー3b、Cピラー3c、及びDピラー3dにより構成されている。
窓ガラス4aは、前ドアに対して、開閉自在なように取り付けられている窓である。同様に窓ガラス4bは、後ろドアに対して、開閉自在なように取り付けられている窓である。窓ガラス4cは、Cピラー3cとDピラー3dとの間に設けられた窓であって、嵌め殺し式の窓ガラスである。
Aピラー3aは、ルーフ2を支持するとともにフロントガラスを支持する。Bピラー3bは、前ドア及び後ろドアの内側に配置されており、ルーフ2を支持するとともに前ドア及び後ろドアの設置に伴い設けられた開口部の強度を高める。Cピラー3c及びDピラー3dは、ルーフ2を支持するとともに窓ガラス4cを保持する。
車体1のハッチゲート5は、ハッチゲートパネル51と、ハッチゲートパネル51の上方に配置されたリヤガラス52と、ハッチゲートパネル51と共にリヤガラス52を支持する枠体53とにより構成されている。リヤガラス52は、運転手からの後方視界を確保すると共に、ウィンドシールドとしても機能する。ハッチゲート5の上端に位置する枠体53の横柱は、図示しないヒンジによってルーフ2の後端に取り付けられている。
ハッチゲート5の上端に位置する枠体53は、一対の横柱と一対の縦柱とによって構成されている。一対の横柱のうちルーフ2に近接する側の横柱には、スポイラー固定部54(請求の範囲に記載のアンテナ固定部)が設けられている。スポイラー固定部54は、枠体53の横柱から後方に迫り出した金属部材である。スポイラー固定部54は、枠体53と一体に形成された金属部材でもよいし、枠体53とは別体に成形され枠体53にボルト等によって固定された金属部材であってもよい。
スポイラー固定部54には、図示しない固定手段(例えばボルト等)によってスポイラー11が取り付けられている。スポイラー固定部54に固定されることによって、スポイラー11の上面とルーフ2とが面一に並ぶ。スポイラー11は、車載用アンテナ装置10の筐体として機能するほかに、車体1の美観を向上させる、車体1の空力特性を改善するなどの機能を有する。スポイラー11には、放射素子12が絶縁基板13上に形成されているフィルムアンテナ14が内蔵されている。また、スポイラー11には、ストップランプ11aが内蔵されていてもよい。スポイラー11は、誘電体(例えば樹脂等)からなり、電磁波を透過する。
フィルムアンテナ14は、スポイラー11の内部のストップランプ11aに干渉しない位置に配置されている。具体的には、フィルムアンテナ14は、スポイラー11の左右方向の中心に配置されたストップランプ11aを避けて、ストップランプ11aの左側に配置されている。換言すれば、放射素子12は、枠体53を構成する一対の縦柱のうち一方の縦柱53aとストップランプ11aとの間に配置されている。縦柱53aは、スポイラー固定部54と導通する金属製の構造体であって、ルーフ2に交わる方向に伸びる構造体である。
〔車載用アンテナ装置10〕
次に、車載用アンテナ装置10の構成について、図1の(b)と図2を参照して具体的に説明する。図1の(b)は、車載用アンテナ装置10を搭載する車体1の一部を拡大した断面図であり、図1の(a)に示した放射素子12を通るyz平面における断面図である。図2は、車載用アンテナ装置10が備えている放射素子12を平面に展開した展開図である。
図1の(b)に示すように、車載用アンテナ装置10は、放射素子12をスポイラー11の内部に折り曲げられた状態で載置するように構成されている。具体的には、絶縁基板13上に放射素子12が形成されたフィルムアンテナ14を、放射素子12が内周側に配置され、絶縁基板13が外周側に配置されるようにU字型(あるいはコの字型)に折り曲げ、スポイラー11の内部に固定している。スポイラー11の内部にフィルムアンテナ14を固定する固定手段の例としては、粘着シート、両面テープや樹脂製のファスナー等が挙げられる。固定手段は、限定されるものではないが、電磁波の送信及び受信を妨げないために導体ではないものからなることが好ましい。放射素子12の具体的な折り曲げ方などについては、図2を参照しながら後述する。
なお、本実施形態においては、ルーフ2の後端に車載用アンテナ装置10が搭載される例を用いて説明する。しかし、車載用アンテナ装置10を搭載するルーフ2の端部は、後端に限定されず、車体の形状及び車載用アンテナ装置10の筐体(本実施形態においてはスポイラー11)の形状に応じて適宜変更することができる。
〔放射素子12〕
放射素子12は、図2に示すように、絶縁基板13上に形成されている。絶縁基板13の一例としては、誘電体フィルム(例えば、ポリイミド)が挙げられるが、これに限定されない。
図2の例では、絶縁基板13の表面に形成された放射素子12は、給電部12bと、第1の導体片12c及び第2の導体片12dとを有している。第1の導体片12c及び第2の導体片12dは、導体からなる薄板状の部材である。例えば、第1の導体片12c及び第2の導体片12dとしては、銅箔が用いられるが、これに限定されない。
給電部12bは、図示しない同軸線と導体片12c,12dとを接続する部位であり、2つの給電点(第1の給電点12b1,第2の給電点12b2)からなる。給電部12bには、同軸線の一方の端部が接続可能である。同軸線の他方の端部をチューナーなどの車載機器に接続することによって、車載用アンテナ装置10は、無線を送受信可能になる。
給電部12bの一方の給電点である第1の給電点12b1は、第1の導体片12cに接続されており、給電部12bの他方の給電点である第2の給電点12b2は、第2の導体片12dに接続されている。本実施形態においては、放射素子12としてダイポールアンテナを採用しているが、ループアンテナ、モノポールアンテナ、及び逆F型アンテナを放射素子12として使用してもよい。また、それぞれの放射素子は、本実施形態の導体片12c,12dのように面状のアンテナパターンであってもよいし、線状のアンテナパターンであってもよい。
本実施形態では、ダイポールアンテナの一例として、第1の導体片12cとして釣鐘型の銅箔を採用し、第2の導体片12dとして矩形の銅箔を採用している。釣鐘型の第1の導体片12cは、矩形の銅箔をベースとしている。釣鐘型の第1の導体片12cは、その矩形の銅箔が有する4つの角のうち第2の導体片12dに近接する2つの角の各々を、四分楕円12c2及び四分楕円12c3に置き換えることによって得られる。第1の導体片12cの形状を長方形から釣鐘型に変更することによって、第1の導体片12cの給電点近傍部12c1と第2の導体片12dとの間隔を連続的に変化させることができる。その結果、放射素子12の共振周波数を調整することができ、動作帯域を調整することができる。
放射素子12は、図2に示すB−B’線及びC−C’線に沿って谷折りされ、図1(b)に示すように、U字型に折り曲げられた状態でスポイラー11の内部に固定される。また車載用アンテナ装置10を車体1の後端に搭載したとき、放射素子12は、第1の給電点12b1からルーフ2に交わる第1の方向に引き出される部分を有し、かつ放射素子12の少なくとも一部がルーフ2、又は、車載用アンテナ装置10をルーフ2の後端に固定するためのアンテナ固定部54に重畳するように定められている。
本実施形態では、図1の(b)に示すように、車載用アンテナ装置10を車体1の後端に搭載したときに、(1)第1の導体片12cは、第1の給電点12b1からルーフ2に交わる方向である車体1の下方向(請求の範囲に記載の第1の方向に相当する)に引き出されており、(2)第2の導体片12dは、第2の給電点12b2からルーフ2に沿う方向である前方向(請求の範囲に記載の第2の方向に相当する)に引き出されており、(3)放射素子12の一部である重畳部12d1がスポイラー固定部54に重畳している構成を採用している。重畳部12d1は、第2の導体片12dの中間から終端までの部分である。
第1の導体片12cにおいて、第1の給電点12b1から下方向に引き出されている部分、すなわち、第1の給電点12b1に接続されている第1の導体片12cの始端(根元)から、谷折りされる線であるC−C’線までの部分を給電点近傍部12c1とする。
給電点近傍部12c1が第1の給電点12b1から下方向に引き出されているため、給電点近傍部12c1を流れる電流の方向は、主に上下方向である。したがって、給電点近傍部12c1は、垂直偏波を放射する。垂直偏波は、ルーフ2を横断するときに、水平偏波と比べてルーフ2による減衰効果を受け難い。給電点近傍部12c1が垂直偏波を放射することによって、車載用アンテナ装置10をルーフ2の後端に搭載した場合に、車体1の前方向に対する放射利得が、ルーフ2による減衰効果により損なわれることを抑制することができる。
重畳部12d1に高周波電流が流れると、スポイラー固定部54及び縦柱53aに誘導電流が流れる。縦柱53aは、ルーフ2に交わる方向、すなわち車体1の上下方向に延伸されている。したがって、縦柱53aを流れる誘導電流の方向は、主に上下方向である。したがって、縦柱53aは、垂直偏波を放射する。すなわち、車載用アンテナ装置10は、ルーフ2の後端に搭載された場合に、放射素子12からのみならず縦柱53aからも、ルーフ2による減衰効果を受け難い垂直偏波を放射することができる。
詳しくは、図3〜図5を参照して説明するが、車載用アンテナ装置10における放射素子12の位置は、車載用アンテナ装置10を車体1に搭載したときに、縦柱53aから放射素子12までの最短距離が放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下となるように定められている。
発明者らが得た知見によれば、縦柱53aから放射素子12までの最短距離が動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下のとき得られる、車体1の前方向(放射素子12から見てルーフ2を横断する方向)に対する垂直偏波の利得は、縦柱53aを省略したときに得られる同利得よりも大きくなる。これは、縦柱53aから放射素子12までの最短距離を動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下とすることによって、車体1の前方向に関し、放射素子12から放射される垂直偏波と縦柱53aから放射される垂直偏波とが互いに強め合うように干渉するためであると考えられる。
すなわち、本実施形態に係る車載用アンテナ装置10によれば、縦柱53aを利用して、車体1の前方向に対する垂直偏波の利得を高めた車載用アンテナ装置を実現することができる。そのため、車載用アンテナ装置10は、LTE用の電磁波に代表される波長が短い周波数帯を利用する車載用アンテナ装置としても好適に利用することができる。
また、縦柱53aから放射素子12までの最短距離は、動作帯域の中心周波数の波長λoの1/2倍であることが好ましい。この構成によれば、縦柱53aを利用して、車体1の前方向に対する垂直偏波の利得を更に高めることができる。
なお、本実施形態では、スポイラー11がスポイラー固定部54に固定されるものとして説明しているが、スポイラー11は、ルーフ2に直接固定されていてもよい。スポイラー11がルーフ2に固定されている場合、車体1の上下方向に伸びるDピラー3dが金属製の構造体として機能する。その場合、車載用アンテナ装置10における放射素子12の位置は、車載用アンテナ装置10を車体1に搭載したときに、Dピラー3dから放射素子12までの最短距離が動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下となるように定められていればよい。
また、金属製の構造体は、縦柱53a及びDピラー3dのように車体1を構成する部材であることが好ましいが、スポイラー固定部54又はルーフ2に対して設置され、ルーフ2に交わる方向に伸びる導体板、導体棒、及び導体パイプの何れかであってもよい。
〔放射素子の設置方法〕
本発明の一実施形態に係る設置方法は、以下の3つの条件を満たすように、車載用アンテナ装置10を車体1のルーフ2の端部に設置する方法である。
条件1:放射素子12は、一方の給電点からルーフ2に交わる第1の方向に引き出されている。
条件2:放射素子12の少なくとも一部がルーフ2、又は、車載用アンテナ装置10をルーフ2の後端に固定するためのアンテナ固定部54に重畳している。
条件3:ルーフ2又はアンテナ固定部54と導通する金属製の構造体(本実施形態においては、縦柱53a)であって、ルーフ2に交わる方向に伸びる構造体から放射素子12までの最短距離Dxが放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下となる。
この設置方法によれば、車載用アンテナ装置10と同様の効果を奏する。
〔実施例〕
本発明の実施例に係る車載用アンテナ装置10について、図3〜図5を参照して説明する。図3の(a)は、本実施例において、車載用アンテナ装置10の放射利得を計算するために用いた、車載用アンテナ装置10を搭載した車体1のモデルの構成を示す上面図である。図3の(b)は、上記モデルの構成を示す側面図である。図4の(a)は、図3の(a)に示した上記モデルの一部を拡大した上面図である。図4の(b)は、図3の(b)に示した上記モデルの一部を拡大した側面図である。図5は、本実施例に係る車載用アンテナ装置10の放射利得であって、車体1の前方向に対する放射利得を示すグラフである。
図3及び図4において、放射素子12と縦柱53aとの関係をわかりやすくするために、車載用アンテナ装置10の筐体であるスポイラー11は、省略され図示されていない。
図3の(a)及び(b)に示されているように、放射素子12は、ルーフ2の後端であって、車体1の左右方向の中心から左側にオフセットして配置されている。
本実施例において、縦柱53aから放射素子12までの最短距離Dx、重畳部12d1の車体1の前後方向に沿う長さLy、及び放射素子12の下面とスポイラー固定部54の上面との間隔Dzは、図4の(a)及び(b)に示すように定められている。
本実施例においては、Ly=60mm及びDz=10mmを採用したうえで、0mm≦Dx≦400mmの範囲内で最短距離Dxを変化させることによって得られた車載用アンテナ装置10に関して、図3及び図4に示したモデルを用いてxy平面における垂直偏波の放射利得を計算した。放射素子12に入力する高周波信号の周波数は、832MHzである。したがって、放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoは、有効数字3桁で表せば360mmである。
図5は、図3に示す車体1に搭載した車載用アンテナ装置10の前方放射利得の最短距離Dx依存性を示すグラフである。ここで、「前方放射利得」とは、xy平面における垂直偏波の放射利得をy軸正方向に対して±30°の範囲内で平均化した平均放射利得のことを指す。
また、図5には、比較例として、図6に示す車体101に搭載した車載用アンテナ装置10の前方放射利得を併記している。図6に示す車体101は、図3に示す車体1からピラー3a〜3d及び縦柱53aを取り去ったものである。なお、図6に示す車体101に搭載した車載用アンテナ装置10についても、Ly=60mm及びDz=10mmを採用している。
図3に示す車体1に搭載した車載用アンテナ装置10の前方放射利得は、Dx=175mmにおいて極大値を示した。一方、図6に示す車体101に搭載した車載用アンテナ装置10の前方放射利得は、Dxが0mmから大きくなるにしたがっておおよそ単調に減少した。
図5に示すグラフによれば、縦柱53aから放射素子12までの最短距離Dxを放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoの概ね1/3倍以上2/3倍以下(より正確には36.1%以上69.4%)としたときに得られる前方放射利得は、縦柱53aを省略したときに得られる前方放射利得よりも大きくなることが分かる。これは、縦柱53aから放射素子12までの最短距離Dxを放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍以上2/3倍以下とすることによって、放射素子12から前方に放射される垂直偏波と縦柱53から前方に放射される垂直偏波とが互いに強め合うように干渉するためであると考えられる。
また、図5に示すグラフによれば、縦柱53aから放射素子12までの最短距離Dxを放射素子12の動作帯域の中心周波数の波長λoの概ね1/2倍(より正確には48.6%)としたときに、前方放射利得が最大になることが分かる。
〔第1の変形例〕
実施例に係る車載用アンテナ装置10の第1の変形例に関して、図7を参照して説明する。図7は、本変形例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得の最短距離Dx依存性と、実施例に係る車載用アンテナ装置10の前方放射利得の最短距離Dx依存性とを示すグラフである。
本変形例の車載用アンテナ装置10は、実施例の車載用アンテナ装置10において、間隔Dzを10mmから5mmに変更することによって得られた。すなわち、本変形例においては、Ly=60mm及びDz=5mmを採用したうえで、100mm≦Dx≦300mmの範囲内で最短距離Dxを変化させることによって得られた車載用アンテナ装置10に関して、図3及び図4に示したモデルを用いて前方放射利得を計算した。
図7に示すグラフによれば、本変形例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得は、100mm≦Dx≦300mmの全域において、実施例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得よりも大きくなることが分かる。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置10において、間隔Dzは、10mmに限定されるものではなく適宜設定できることが分かる。
間隔Dzを10mmから5mmに変更することによって車載用アンテナ装置10の前方放射利得が高められた理由は、放射素子12がスポイラー固定部54に近づくためにスポイラー固定部54及び縦柱53aに流れる誘導電流が大きくなり、縦柱53aから放射される垂直偏波成分が大きくなったためと考えられる。
〔第2〜第3の変形例〕
実施例に係る車載用アンテナ装置10の第2の変形例及び第3の変形例に関して、図8を参照して説明する。図8は、第2の変形例の車載用アンテナ装置10、及び、第3の変形例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得の最短距離Dx依存性を示すグラフである。
第2の変形例の車載用アンテナ装置10は、実施例の車載用アンテナ装置10において、長さLyを60mmから70mmに変更することによって得られた。すなわち、第2の変形例においては、Ly=70mm及びDz=10mmを採用したうえで、0mm≦Dx≦400mmの範囲内で最短距離Dxを変化させることによって得られた車載用アンテナ装置10に関して、図3及び図4に示したモデルを用いて前方放射利得を計算した。
また、第3の変形例の車載用アンテナ装置10は、実施例の車載用アンテナ装置10において、長さLyを60mmから50mmに変更することによって得られた。すなわち、第3の変形例においては、Ly=50mm及びDz=10mmを採用したうえで、0mm≦Dx≦400mmの範囲内で最短距離Dxを変化させることによって得られた車載用アンテナ装置10に関して、図3及び図4に示したモデルを用いて前方放射利得を計算した。
図8に示した前方放射利得によれば、第2の変形例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得、及び、第3の変形例の車載用アンテナ装置の前方放射利得の各々は、実施例の車載用アンテナ装置の前方放射利得と比較して、若干下がるものの同様の傾向を示すことが分かる。したがって、本実施形態の車載用アンテナ装置10において、長さLyは、60mmに限定されるものではなく適宜設定できることが分かる。
なお、実施例、第2の変形例、及び第3の変形例の車載用アンテナ装置10の前方放射利得に鑑みると、重畳部12d1の車体1の前後方向に沿う長さLyは、60mmであることが好ましい。換言すると、長さLyは、動作帯域の中心周波数の波長λoの1/3倍であることが好ましい。この構成によれば、縦柱53aを利用して、車体1の前方向に対する垂直偏波の前方放射利得を更に高めることができることが分かった。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、車体のルーフの端部に配置される車載用アンテナ装置に利用することができる。また、本発明は、車体のルーフの端部に、車載用アンテナ装置が備えている放射素子を設置する放射素子の設置方法に利用することができる。
10 車載用アンテナ装置
11 スポイラー(筐体)
12 放射素子
12b 給電部
12b1 第1の給電点(一方の給電点)
12b2 第2の給電点(他方の給電点)
12c 第1の導体片
12c1 給電点近傍部
12d 第2の導体片
12d1 重畳部
13 絶縁基板
14 フィルムアンテナ
1 車体
2 ルーフ
3 ピラー
3a〜3d Aピラー〜Dピラー
4a〜4c 窓ガラス
5 ハッチゲート
51 ハッチゲートパネル
52 リヤガラス
53 枠体
53a 縦柱
54 スポイラー固定部(アンテナ固定部)

Claims (6)

  1. 車体のルーフの端部に搭載される車載用アンテナ装置において、
    当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、一方の給電点から上記ルーフに交わる第1の方向に引き出される部分を有する放射素子を備え、
    当該車載用アンテナ装置における上記放射素子の位置は、当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、
    (1)上記放射素子の少なくとも一部が上記ルーフ、又は、当該車載用アンテナ装置を上記ルーフの上記端部に固定するためのアンテナ固定部に重畳するように、かつ、
    (2)上記ルーフ又は上記アンテナ固定部と導通する金属製の構造体であって、上記ルーフに交わる方向に伸びる構造体から上記放射素子までの最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下となるように定められており
    さらに、上記放射素子は、上記一方の給電点から上記第1の方向に引き出される第1の導体片と、他方の給電点から上記ルーフに沿う第2の方向に引き出され、少なくとも一部が上記ルーフ又は上記アンテナ固定部に重畳する第2の導体片からなることを特徴とする車載用アンテナ装置。
  2. 当該車載用アンテナ装置における上記放射素子の位置は、当該車載用アンテナ装置を上記車体に搭載したときに、上記最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/2倍となるように定められている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の車載用アンテナ装置。
  3. 上記構造体は、ピラーである、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
  4. 上記構造体は、リヤガラス又はフロントガラスを支持する枠体の縦柱である、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載用アンテナ装置。
  5. 当該車載用アンテナ装置は、スポイラーを筐体とするものである、
    ことを特徴とする請求項1〜何れか1項に記載の車載用アンテナ装置。
  6. 車体のルーフの端部に放射素子を備えた車載用アンテナ装置を設置する設置方法において、
    (1)上記放射素子が一方の給電点から上記ルーフに交わる第1の方向に引き出され、
    (2)上記放射素子の少なくとも一部が上記ルーフ、又は、当該車載用アンテナ装置を上記ルーフの上記端部に固定するためのアンテナ固定部に重畳し、かつ、
    (3)上記ルーフ又は上記アンテナ固定部と導通する金属製の構造体であって、上記ルーフに交わる方向に伸びる構造体から上記放射素子までの最短距離が上記放射素子の動作帯域の中心周波数の波長の1/3倍以上2/3倍以下となるように、上記車載用アンテナ装置を上記ルーフの端部に設置するものであって、
    上記放射素子は、上記一方の給電点から上記第1の方向に引き出される第1の導体片と、他方の給電点から上記ルーフに沿う第2の方向に引き出され、少なくとも一部が上記ルーフ又は上記アンテナ固定部に重畳する第2の導体片からなることを特徴とする設置方法。
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