JP6439575B2 - 波長変換素子及びレーザ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、周期的分極反転構造を有する波長変換素子及びレーザ装置に関する。
非線形光学特性を有する結晶に基本波光を入射させると、非線形効果により波長変換された波長変換光が発生する。通常、結晶内部では基本波光と波長変換光の位相速度に差が生じるため、基本波光と波長変換光の位相を揃える(位相整合する)必要がある。
このため、基本波光の波長を変換して波長変換光を得るための波長変換素子に、擬似位相整合(QPM)素子が使用されている。QPM素子は、分極方向が周期的に反転する周期的分極反転構造を強誘電体結晶に形成したものである。QPM素子では、レーザ光などの基本波光と擬似位相整合することによって高調波の波長変換光を出力する。
QPM素子によって基本波から第3高調波を発生させる方法として、例えば非特許文献1に記載の方法などが知られている。この方法では、分極反転する周期(以下において「分極反転周期」という。)が異なる2つの非線形結晶である2倍波変換部と3倍波変換部を連結した周期的分極反転構造体を用いる。2倍波変換部によって、基本波の第2高調波を発生させる。そして、2倍波変換部で発生した第2高調波と2倍波変換部で第2高調波にならなかった残りの基本波から3倍波変換部を用いて和周波を発生させ、第3高調波を得る。
2倍波変換部と3倍波変換部を連結した1つの波長変換素子の全体を均一に温度調整して基本波波長のばらつきに対応する場合には、2倍波変換部と3倍波変換部とにおいて同時に位相整合させるための手段が必要である。これは、基本波波長の変化に対応して位相整合するために必要な温度変化が、2倍波変換部と3倍波変換部とで異なるためである。このため、非特許文献1に記載の方法では、3倍波変換部の分極反転構造を、分極領域が放射状に配置されるファンアウト形状にしている。そして、波長変換素子をレーザ光の光軸に対して垂直方向にずらすことにより、いずれかの位置で2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合するようにしている。
Junji Hirohashi et al.、「Monolithic Fan-out PPMgSLT device for cascaded 355nm generation」、Optics InfoBase、Conference Paper、CLEO SI、2014、SM4I、Page SIM4I.6
高出力を得るために、レーザ光のビーム径を広げると共に作用長を長く取る必要が生じる場合がある。一方、ファンアウト形状の分極反転構造を用いる非特許文献1に記載の方法では、3倍波変換部の分極反転周期が光軸の垂直方向に沿って連続的に変化する。このため、ビーム径が大きくなると位相整合に寄与しない基本波成分の割合が増大して変換効率の低下を招く。また、作用長が長いと位相整合温度特性の許容幅は狭くなるが、非特許文献1に記載の方法では厳密に位相整合するのは光軸に垂直な方向の1箇所であるため、この点からも変換効率は低下する。
上記問題点に鑑み、本発明は、変換効率の低下が抑制された、分極反転周期が異なる複数の周期的分極反転構造を備える波長変換素子及びレーザ装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、基本波光が入射される入射面と基本波光が波長変換された波長変換光が出射される出射面との間で直列に一体化して配置された、分極反転する周期が互いに異なる複数の周期的分極反転構造体を備え、複数の周期的分極反転構造体のそれぞれにおいて分極方向が交互に反転する複数の分極領域が平行に配列され、基本波光が入射されて複数の周期的分極反転構造体の内部を進行する光の光軸方向と、複数の分極領域が配列される周期方向とのなす傾斜角が、複数の周期的分極反転構造体で互いに異なり、複数の周期的分極反転構造体の温度及び傾斜角を複数の周期的分極反転構造体で同じだけ変化させることによって、基本波光の基本波波長が変化した場合に複数の周期的分極反転構造体それぞれにおいて同時に位相整合するように、複数の周期的分極反転構造体それぞれの周期方向と傾斜角が設定されている波長変換素子が提供される。
本発明の他の態様によれば、(ア)基本波光を出射するレーザ光源と、(イ)基本波光が入射される入射面と基本波光が波長変換された波長変換光が出射される出射面との間で直列に一体化して配置された、分極反転する周期が互いに異なる複数の周期的分極反転構造体を有する波長変換素子とを備え、複数の周期的分極反転構造体のそれぞれにおいて分極方向が交互に反転する複数の分極領域が平行に配列され、基本波光が入射されて複数の周期的分極反転構造体の内部を進行する光の光軸方向と、複数の分極領域が配列される周期方向とのなす傾斜角が、複数の周期的分極反転構造体で互いに異なり、複数の周期的分極反転構造体の温度及び傾斜角を複数の周期的分極反転構造体で同じだけ変化させることによって、基本波光の基本波波長が変化した場合に複数の周期的分極反転構造体それぞれにおいて同時に位相整合するように、複数の周期的分極反転構造体それぞれの周期方向と傾斜角が設定されているレーザ装置が提供される。
本発明によれば、変換効率の低下が抑制された、分極反転周期が異なる複数の周期的分極反転構造を備える波長変換素子及びレーザ装置を提供できる。
本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子の構成を示す模式図である。 θS0=θT0の場合におけるΔθ−Δλ平面に描かれるグラフ1の例を示すグラフである。 θS0=θT0でない場合におけるΔθ−Δλ平面に描かれるグラフ1の例を示すグラフである。 θS0=θT0でない場合におけるΔθ−Δλ平面に描かれるグラフ1とグラフ2の例を示すグラフである。 θS0=θT0でない場合におけるΔθ−Δλ平面に描かれるグラフ1とグラフ2の例を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子における素子温度の変化に対する基本波波長の変化及び分極傾斜角の変化の関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子における素子温度の変化に対する基本波波長の変化及び分極傾斜角の変化の関係を示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子を使用したレーザ装置の構成を示す模式図である。 図8に示したレーザ装置の角度調整手段の例を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子を使用したレーザ装置の角度調整手段の他の例を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る波長変換素子の構成を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る波長変換素子における素子温度の変化に対する基本波波長の変化及び分極傾斜角の変化の関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る波長変換素子における素子温度の変化に対する基本波波長の変化及び分極傾斜角の変化の関係を示すグラフである。
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子10は、図1に示すように、入射面101と出射面102とが両端部に定義され、入射面101と出射面102との間で直列に一体化して配置された複数の周期的分極反転構造体100を備える。ここで、「周期的分極反転構造体100」とは、直列に配置された複数の周期的分極反転構造体のそれぞれをいう。なお、周期的分極反転構造体100の分極反転周期は互いに異なる。図1に示した波長変換素子10は、分極反転周期Λ1の第1の周期的分極反転構造体110と分極反転周期Λ2の第2の周期的分極反転構造体120とを有する。
第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120は、レーザ光などの基本波光L1が入射面101に入射されて周期的分極反転構造体100内部を進行する光の光軸方向Dに沿って、直列に配置されている。第1の周期的分極反転構造体110及び第2の周期的分極反転構造体120によって基本波光L1から波長変換された波長変換光L2が、出射面102から出射される。
周期的分極反転構造体100は、例えばマグネシウムを添加した定比組成タンタル酸リチウム(Mg:SLT)結晶などの強誘電体結晶の内部に形成される。以下では、周期的分極反転構造体100の分極方向をZ方向とし、分極方向と垂直な周期的分極反転構造体100の主面をZ面とする。図1は、波長変換素子10を+Z方向から見た状態である。また、図1に示すように、分極方向と垂直に周期的分極反転構造体100内部を進行する光の光軸方向DをX方向とし、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする。
上記のように、波長変換素子10では、X方向軸とY方向軸により定義される面(以下において、「XY平面」という。)と光軸方向Dとが平行である。光軸方向Dは周期的分極反転構造体100で共通である。また、基本波光L1の偏光方向はZ方向と一致する。
周期的分極反転構造体100を形成する強誘電体結晶には、Mg:SLT結晶以外にも、例えばタンタル酸リチウム(LT)結晶やニオブ酸リチウム(LN)結晶なども使用可能である。複数の周期的分極反転構造体100は、単一の強誘電体結晶に一体的に形成することができる。或いは、別個に形成した複数の強誘電体結晶を直接接合したり、接着剤を介して接合したりしてもよい。また、隣接する周期的分極反転構造体100同士は直接に接続してもよいし、酸化シリコン膜などの光透過性の膜を介して接続してもよい。ただし、周期的分極反転構造体100間に配置する膜には、基本波光L1や波長変換光L2によって劣化しない特性などが必要である。
以下において、複数の分極領域が分極方向を交互に反転させながら周期的に配列された方向を「周期方向」という。なお、周期的分極反転構造体100のそれぞれにおいて、分極方向が交互に反転する複数の分極領域は、周期方向に沿って平行に配列されている。つまり、分極方向の異なる分極領域間の各界面と周期方向とは垂直であり、周期方向は直線的に延伸する。第1の周期的分極反転構造体110では、分極領域111と分極領域112が交互に周期方向P1に沿って平行に配列されている。第2の周期的分極反転構造体120では、分極領域121と分極領域122が交互に周期方向P2に沿って平行に配列されている。
波長変換素子10では、周期的分極反転構造体100ごとに、周期方向が互いに異なる。即ち、周期的分極反転構造体100の周期方向と光軸方向Dとのなす傾斜角(以下において「分極傾斜角」という。)は、周期的分極反転構造体100ごとに異なる。分極傾斜角は、XY平面に沿って設けられている。以下、平面視で図1の反時計周りの方向を分極傾斜角の正方向とする。図1に示した例では、第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120とでは、それぞれの周期方向が互いに異なる分極傾斜角で光軸方向Dと斜めに交差している。つまり、第1の周期的分極反転構造体110の周期方向P1が光軸方向Dとなす分極傾斜角θ1と、第2の周期的分極反転構造体120の周期方向P2が光軸方向Dとなす分極傾斜角θ2とが異なる。
基本波波長や素子温度などに関する、周期的分極反転構造体100において位相整合する条件を、以下において「設計条件」という。設計条件では、基本波光L1が所定の基本波波長であり、波長変換素子10が所定の素子温度である場合に、周期的分極反転構造体100のそれぞれにおいて同時に位相整合するように、周期的分極反転構造体100それぞれの周期方向が設定されている。そして、基本波波長にばらつきが発生するなどして位相整合しなくなった場合に、波長変換素子10全体の素子温度を均一に調整する温度調整と、光軸方向Dに対して波長変換素子10全体を周期方向と平行な平面上で傾ける角度調整とを行い、周期的分極反転構造体100で同時に位相整合させる。
この角度調整によって、周期的分極反転構造体100のそれぞれにおいて同じ大きさだけ分極傾斜角が変化する。角度調整による分極傾斜角の設計条件からの変化をΔθとすると、周期方向P1が光軸方向Dとなす分極傾斜角はθ1+Δθとなり、周期方向P2が光軸方向Dとなす分極傾斜角はθ2+Δθとなる。この角度調整は、分極方向に垂直なXY平面と平行に行われる。以下、角度調整によって分極傾斜角が設計条件よりも増大する方向をΔθの正方向とする。
以下に、波長変換素子10による波長変換の例を説明する。例えば第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部であるように構成することによって、波長変換素子10は基本波光L1の第3高調波を出射する。この場合、第1の周期的分極反転構造体110は、基本波光L1の第2高調波を発生する。また、第2の周期的分極反転構造体120は、第1の周期的分極反転構造体110で発生した第2高調波と、第1の周期的分極反転構造体110で第2高調波に変換されなかった基本波光L1との和周波として、基本波光L1の第3高調波を発生する。波長変換素子10は、この第3高調波を波長変換光L2として出射する。
波長変換素子10は、上記のように、光軸方向Dとのなす分極傾斜角が互いに異なる周期方向を有する複数の周期的分極反転構造体100を備える。これにより、以下に説明するように、基本波光L1の基本波波長のばらつきに応じて、それぞれの周期的分極反転構造体100について同時に位相整合することが可能である。以下の説明では、結晶中を進行する光の波長がλであり結晶の温度がTである場合の温度を考慮した分散曲線を関数n(λ、T)とする。
なお、以下では、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合を例示的に説明する。2倍波変換部の分極反転周期をΛS0、3倍波変換部の分極反転周期をΛT0とする。
ここで、設計条件として基本波光L1の基本波波長がλ0、波長変換素子10の素子温度がT0の場合において、光軸方向Dに対して2倍波変換部ではθS0、3倍波変換部ではθT0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合しているとする。このとき、光が感じる分極反転周期は、2倍波変換部においてΛS0/cos(θS0)であり、3倍波変換部においてΛT0/cos(θT0)である。
この状態から波長変換素子10をXY平面と平行に光軸方向Dに対して傾けて、分極傾斜角をΔθだけ変化させたとする。この場合に2倍波変換部で光が感じる分極反転周期ΛS(Δθ)及び3倍波変換部で光が感じる分極反転周期ΛT(Δθ)は、以下の式(1)、式(2)で表される:

ΛS(Δθ)=ΛS0/{cos(θS0+Δθ) ・・・(1)
ΛT(Δθ)=ΛT0/{cos(θT0+Δθ) ・・・(2)

基本波波長の設計条件からの変化がΔλ、素子温度の設計条件からの変化がΔTの場合における基本波光L1の第p高調波の分散曲線は、関数np(Δλ、ΔT)として以下の式(3)のように表される(p=1、2、3、・・・):

p(Δλ、ΔT)=n((λ0+Δλ)/p、T0+ΔT) ・・・(3)

ここで、Δθ=0、ΔT=0とすると、2倍波変換部の分極反転周期ΛS(0)と3倍波変換部の分極反転周期ΛT(0)は式(4)、式(5)でそれぞれ表される:

ΛS(0)=λ0/{2×n2(0、0)−2×n1(0、0)} ・・・(4)
Λ(0)=λ0/{3×n3(0、0)−n1(0、0)−2×n2(0、0)} ・・・(5)

式(4)及び式(5)で表される状態から、光軸方向Dに対する波長変換素子10の傾きをΔθだけ変化させ、素子温度をΔTだけ変化させるとする(θ0→θ0+Δθ、T0→T0+ΔT)。この場合に、2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合時の波長がλ0からλ0+Δλに変化するということは、以下の式(6)と式(7)が同時に成り立つということである:

ΛS(Δθ)=(λ0+Δλ)/{2×n2(Δλ、ΔT)−2×n1(Δλ、ΔT)} ・・・(6)
ΛT(Δθ)=(λ0+Δλ)/{3×n3(Δλ、ΔT)−n1(Δλ、ΔT)−2×n2(Δλ、ΔT)} ・・・(7)

式(6)の両辺を式(7)の両辺で除算して式(8)が得られる:

ΛS(Δθ)/ΛT(Δθ)={3×n3(Δλ、ΔT)−n1(Δλ、ΔT)−2×n2(Δλ、ΔT)}/{2×n2(Δλ、ΔT)−2×n1(Δλ、ΔT)} ・・・(8)

式(8)の左辺に式(1)、式(2)を代入して、式(9)が得られる:

{ΛS0/ΛT0}×{cos(θT0+Δθ)/cos(θS0+Δθ)}=
{3×n3(Δλ、ΔT)−n1(Δλ、ΔT)−2×n2(Δλ、ΔT)}/{2×n2(Δλ、ΔT)−2×n1(Δλ、ΔT)} ・・・(9)

ここまでの同値関係を整理すると、以下のようになる。即ち、「θ0がθ0+Δθに変化し、T0がT0+ΔTに変化したときに、2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合時の波長がλ0からλ0+Δλに変化する」とは、式(6)と式(7)が同時に成り立つことである。これは、式(6)と式(8)が同時に成り立つことであり、更に、式(6)と式(9)が同時に成り立つことである。したがって、以下では、2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合させるために式(6)と式(9)の連立方程式を解くことを考える。ここで、ΔTの値が既知であるとする。
式(9)に従ってΔθ−Δλ平面に描かれる曲線を「グラフ1」とし、式(6)に従ってΔθ−Δλ平面に描かれる曲線を「グラフ2」とする。グラフ1とグラフ2の交点の座標(Δθ、Δλ)では、式(6)と式(9)が共に成り立つので、波長変換素子10の全体で位相整合する。逆にいえば、波長変換素子10の全体で位相整合するならば、座標(Δθ、Δλ)がグラフ1とグラフ2の交点である。
ここで、グラフ1に着目すると、θS0=θT0の場合、即ち分極傾斜角が2倍波変換部と3倍波変換部とで同じ場合、式(9)の左辺はθ0に依存しない定数のΛS0/ΛT0になる。このため、式(9)の解の集合であるグラフ1は、Δθ軸に平行な直線である。したがって、グラフ1とグラフ2の交点の座標(Δθ、Δλ)のΔλは、Δθに無関係でΔTのみで決まる。強誘電体結晶にMg:SLT結晶を使用した場合を例にすると、図2に示すように、ΔTの変化幅が−20〜+20KでのΔλの変化幅は0.02nm程度である。図2以降において、「グラフG1」はグラフ1を示し、グラフG1のカッコ内はΔT(K)の値を示す。なお、λ0は1064nm、T0は35℃であるとしている(以下において同様。)。グラフ2との交点におけるΔTの変化に対するΔλの変化も上記の範囲にあるため、基本波波長のばらつきによってΔλがサブnm程度変化した場合には、ΔTを100K程度上下に変化させなくてはならない。したがって、波長変換素子10の全体の温度を調整して2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合させる対応は困難である。
一方、θS0=θT0でない場合、即ち分極傾斜角が2倍波変換部と3倍波変換部とで異なる場合は、式(9)の右辺がΔθに依存して変化する。このため、式(9)の解の集合であるグラフ1のΔλもΔθに応じて変化する。例えば、強誘電体結晶にMg:SLT結晶を使用し、θS0が1度、θT0が2度の場合には、図3に示すように、グラフ1はΔθ=−1〜+1のときΔλは±0.3nmを超えて変化する。
図4に、図3にグラフ2も重ねてプロットした結果を示す。図4においてグラフ2を「グラフG2」で示し、グラフG2のカッコ内はΔT(K)の値を示す(以下において同様。)。Δθ=−1〜+1においてグラフ1とグラフ2とが交点を有するには、ΔTの絶対値が5Kよりも小さい範囲でよい。
ΔT=−4〜+4の場合にグラフ1とグラフ2を重ねてプロットした結果を、図5に示す。Δθの絶対値が1度以下であり、且つ、ΔTの絶対値が4K以下の場合に、グラフ1とグラフ2の交点は、Δλ=−0.3〜+0.3の範囲をカバーする。基本波光L1にファイバーレーザを使用した場合、基本波波長のばらつきは0.1nm程度であるため、Δθ=−1〜+1且つΔT=−4〜+4の範囲で基本波波長のばらつきをカバーすることができる。
上記のように、θS0=θT0でない場合、即ち分極傾斜角が周期的分極反転構造体100ごとに異なる場合には、波長変換素子10の素子温度及び波長変換素子10の光軸方向Dに対する傾きを調整して、2倍波変換部と3倍波変換部において同時に位相整合させることは容易である。
上記では、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合を説明した。一方、以下のように第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が4倍波変換部であるように構成することによって、波長変換素子10は基本波光L1の第4高調波を出射する。この場合、第1の周期的分極反転構造体110は、基本波光L1の第2高調波を発生する。また、第2の周期的分極反転構造体120は、第1の周期的分極反転構造体110で発生した第2高調波の第2高調波を発生して、基本波光L1の第4高調波を発生させる。このように、波長変換素子10は、基本波光L1から発生させた第4高調波を波長変換光L2として出射する。
第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が4倍波変換部である場合は、基本波光L1の基本波波長のばらつきに応じて周期的分極反転構造体100で同時に位相整合させる検討は以下のようになる。
2倍波変換部の分極反転周期をΛS0、4倍波変換部の分極反転周期をΛF0とする。ここで、設計条件として基本波光L1の基本波波長がλ0、波長変換素子10の素子温度がT0の場合において、光軸方向Dに対して2倍波変換部ではθS0、4倍波変換部ではθF0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び4倍波変換部が同時に位相整合しているとする。
このとき、光が感じる分極反転周期は、2倍波変換部においてΛS0/cos(θS0)、4倍波変換部においてΛF0/cos(θF0)である。この状態から波長変換素子10をXY平面と平行に光軸方向Dに対して傾けて、分極傾斜角をΔθだけ変化させる。このとき、2倍波変換部で光が感じる分極反転周期ΛS(Δθ)は式(1)で表される。一方、4倍波変換部で光が感じる分極反転周期ΛF(Δθ)は、以下の式(10)で表される:

ΛS(Δθ)=ΛS0/{cos(θS0+Δθ) ・・・(1)
ΛF(Δθ)=ΛF0/{cos(θF0+Δθ) ・・・(10)

Δθ=0、ΔT=0のとき、2倍波変換部の分極反転周期ΛS(0)は式(4)で表され、4倍波変換部の分極反転周期ΛF(0)は以下の式(11)で表される:

ΛS(0)=λ0/{2×n2(0、0)−2×n1(0、0)} ・・・(4)
ΛF(0)=λ0/{4×n4(0、0)−4×n2(0、0)} ・・・(11)

式(4)及び式(11)で表される状態から、光軸方向Dに対する波長変換素子10の傾きをΔθだけ変化させ、素子温度をΔTだけ変化させるとする(θ0→θ0+Δθ、T0→T0+ΔT)。この場合に、2倍波変換部と4倍波変換部において同時に位相整合時の波長がλ0からλ0+Δλに変化するということは、式(6)と以下の式(12)が同時に成り立つということである:

ΛS(Δθ)=(λ0+Δλ)/{2×n2(Δλ、ΔT)−2×n1(Δλ、ΔT)} ・・・(6)
ΛF(Δθ)=(λ0+Δλ)/{4×n4(Δλ、ΔT)−4×n2(Δλ、ΔT)} ・・・(12)

式(6)の両辺を式(12)の両辺で除算して式(13)が得られる:

ΛS(Δθ)/ΛF(Δθ)={4×n4(Δλ、ΔT)−4×n2(Δλ、ΔT)}/{2×n2(Δλ、ΔT)−2×n1(Δλ、ΔT)} ・・・(13)

以下、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合と同様に検討を進めればよい。即ち、式(13)に式(1)と式(10)を代入して得られる式に基づくグラフ1と式(6)に基づくグラフ2の交点について検討する。その結果、θS0=θF0の場合には2倍波変換部と4倍波変換部において同時に位相整合させることが困難である一方で、θS0=θF0ではない所定の大きさのθS0及びθF0を設定した場合には2倍波変換部と4倍波変換部において同時に位相整合させることは容易であるとの結論が得られる。
以下に、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合の具体例について検討する。周期的分極反転構造体100を形成する強誘電体結晶に、Mg:SLT結晶を用いるとする。このとき、光軸方向Dに対して2倍波変換部では角度θS0、3倍波変換部では角度θT0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合するように設計条件が設定されているとする。
例えば、設計条件を、λ0=1064nm、T0=35℃、ΛS0=8.01μm、ΛT0=2.20μm、θS0=1度、θT0=2度とする。このとき、分散曲線を用いた上記の検討によって、ΔTに対して第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120で同時に位相整合するΔλ及びΔθの関係が、図6に示すように得られる。
ここで、図6について説明する。設計条件と素子温度の差異がない場合(ΔT=0)は、分極傾斜角と基本波波長に設計条件との差異がない場合、即ちΔθ=0且つΔλ=0で位相整合する。ここから素子温度が1K上昇すると(ΔT=1)、光軸方向Dに対する波長変換素子10の傾きを0.3度だけ角度調整する(Δθ=0.3)ことによって、設計条件からの基本波波長のずれが0.12nmになったところ(Δλ=0.12)で、波長変換素子10全体で位相整合する。即ち、基本波波長が0.12nmだけ設計条件から変化した場合には、素子温度を設計条件の素子温度から1Kだけ上昇させ(ΔT=1)、光軸方向Dに対する波長変換素子10の傾きを0.3度だけ角度調整(Δθ=0.3)することによって、波長変換素子10全体で同時に位相整合する。
図6に示すように、ΔT=−4〜+4Kの範囲の温度調整及びΔθ=−1.0〜+1.8度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.37〜+0.69nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合できる。
なお、波長変換素子10では、基本波光L1の基本波波長や波長変換光L2の波長に応じて入射面101及び出射面102の反射率を設定する端面処理(ARコート)を行うことが好ましい。このARコートは、例えば入射面101及び出射面102に誘電体多層膜を形成することによって行われる。図1に示すように、入射面101にはコーティング膜210を配置し、出射面102にはコーティング膜220を配置する。ここで、コーティング膜210は、基本波波長に対して低反射率の反射防止膜である。コーティング膜220には、基本波波長や波長変換光L2の波長に対して低反射率の反射防止膜である。この誘電体多層膜の材質や膜厚、層数などは、基本波光L1及び波長変換光L2の波長に応じて適宜選択される。
例えば、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合、基本波光L1の基本波波長が1064nmであると、入射面101は1064nm付近の波長に対して低反射率を有するように端面処理される。また、出射面102は、1064nm付近、第2高調波の波長532nm付近、第3高調波の355nm付近の波長に対して低反射率を有するように端面処理される。
次に、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が4倍波変換部である場合の具体例について検討する。周期的分極反転構造体100を形成する強誘電体結晶にMg:SLT結晶を用いるとする。このとき、光軸方向Dに対して2倍波変換部では角度θS0、4倍波変換部では角度θF0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合するように設計条件が設定されているとする。
例えば、設計条件を、λ0=1550nm、T0=35℃、ΛS0=21.14μm、ΛF0=2.70μm、θS0=0度、θF0=3度とする。即ち、設計条件では第1の周期的分極反転構造体110の分極傾斜角は0度であり、第1の周期的分極反転構造体110周期方向は光軸方向Dと平行である。このとき、図7に示すようなΔTに対して第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120で同時に位相整合するΔλ及びΔθの関係が得られる。図7に示すように、ΔT=−5〜+5Kの範囲の温度調整及びΔθ=−0.5〜+0.6度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.67〜+0.75nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合できる。
このとき、入射面101は1550nm付近の波長に対して低反射率を有するように端面処理する。また、出射面102は、1550nm付近、第2高調波の波長775nm付近、第3高調波の389nm付近の波長に対して低反射率を有するように端面処理する。
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る波長変換素子10は、周期方向と光軸方向Dとのなす分極傾斜角がそれぞれ異なる複数の周期的分極反転構造体100を備える。そして、複数の周期的分極反転構造体100について温度及び分極傾斜角を同じだけ変化させることによって、基本波波長が変化した場合に複数の周期的分極反転構造体100それぞれにおいて同時に位相整合するように、周期的分極反転構造体100それぞれの分極傾斜角が設定されている。このように波長変換素子10の素子温度を均一に変化させ、波長変換素子10全体を光軸方向Dに対して傾けることによって、基本波波長が変化した場合において容易に波長変換素子10を構成する複数の周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させることができる。
また、波長変換素子10では、周期的分極反転構造体100のそれぞれにおいて分極領域が周期方向に沿って平行に配列されている。このため、非特許文献1に記載された方法のようなファンアウト形状の分極反転構造を使用する場合と異なり、基本波光L1のビーム径を広げたり相互作用長を長くしたりすることによる変換効率の低下を抑制できる。
ところで、図8に示すように、基本波光L1を出射するレーザ光源20と、基本波光L1を波長変換した波長変換光L2を出射する波長変換素子10とを用いて、レーザ装置1を構成することができる。図8に示したレーザ装置1では、レーザ光源20から出射された基本波光L1は、基本波光L1をコリメートするコリメートレンズ31と、コリメートされた基本波光L1を集光する集光レンズ32を透過して、波長変換素子10に入射する。図8に示したレーザ装置1によれば、レーザ光源20から出射された基本波光L1を波長変換した波長変換光L2を出力することができる。
光軸方向Dに対して波長変換素子10全体を傾ける角度調整手段として、例えば図8に示すような、周期的分極反転構造体100のZ面を対向させて波長変換素子10が搭載される角度調整プレート15を使用する。図9に示すように角度調整プレート15をXY平面と平行に矢印Cのように回転させることにより、周期的分極反転構造体100のそれぞれにおいて分極傾斜角を同時に同じだけ変化させることができる。これにより、波長変換素子10の角度調整が行われる。
例えば図8に示したように、波長変換素子10、角度調整プレート15、コリメートレンズ31及び集光レンズ32は、支持台40に搭載される。角度調整プレート15は、固定された支持台40の上で光軸方向Dに対する角度が調整される。
また、波長変換素子10の素子温度を調整する温度調整手段として、例えば図8に示すような角度調整プレート15上に配置された温度調整装置50を使用する。波長変換素子10の下方に配置された温度調整装置50によって波長変換素子10全体の温度が均一に調整される。これにより、波長変換素子10に含まれる複数の周期的分極反転構造体100の温度を同時に同じだけ変化させることができる。
角度調整手段及び温度調整手段を備えるレーザ装置1によれば、波長変換素子10全体の素子温度を均一に調整すると共に、波長変換素子10全体をXY平面上で光軸方向Dに対して傾けることができる。したがって、レーザ光源20から出射された基本波光L1の基本波波長が変化したときに、波長変換素子10を構成する複数の周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させることができる。
また、角度調整手段として、例えば図10に示すように、レーザ光源20と波長変換素子10との間に、レーザ光源20から出射された基本波光L1の光軸方向DをXY平面と平行に変更する光学素子60を配置してもよい。光軸方向Dを一定の角度変更する光学素子60をXY平面と平行に矢印Cのように回転させることにより、波長変換素子10に含まれる周期的分極反転構造体100それぞれの分極傾斜角を同時に同じ大きさだけ変化させることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る波長変換素子10は、図11に示すようにスラブ導波路型である。即ち、複数の周期的分極反転構造体100を直列に一体化して配置されたコア部150が形成されている点が、バルク形状の強誘電体結晶を用いた第1の実施形態と異なる点である。図11に示した波長変換素子10では、上部クラッド層310と下部クラッド層320によって上下から挟み込まれたコア部150が基板400上に形成されている。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
コア部150を構成する複数の周期的分極反転構造体100は、分極反転する周期が互いに異なり、且つ、それぞれの周期方向と光軸方向Dとのなす分極傾斜角が互いに異なる。また、入射面101及び出射面102には第1の実施形態と同様の端面処理がなされ、入射面101にはコーティング膜210、出射面102にはコーティング膜220が配置されている。図11は、Z方向に垂直な方向から見た光軸方向Dに沿った断面図である。
図11に示した波長変換素子10では、例えば強誘電体結晶を研磨などによって薄片化してコア部150に用いる。強誘電体結晶にはMg:SLT結晶などを使用する。基板400には、例えばタンタル酸リチウム基板(CLT基板)などの強誘電体結晶基板を使用可能である。上部クラッド層310と下部クラッド層320には、例えば酸化シリコン(SiO2)膜などを使用する。図11に示した波長変換素子10は、例えば以下のようにして製造可能である。
先ず、Mg:SLT結晶などの強誘電体結晶を用いて、図1に示した波長変換素子10と同様な、複数の周期的分極反転構造体100を直列に一体化して配置したバルク形状の周期的分極反転構造体を形成する。以下では、Mg:SLT結晶などの分極方向がZ結晶軸方向である強誘電体結晶を周期的分極反転構造体100に使用する場合を例示的に説明する。
周期的分極反転構造体の+Z面を平坦に研磨して、+Z面上にSiO2膜をスパッタ法などにより形成する。また、基板400の−Z面を平坦に研磨して、−Z面上にSiO2膜をスパッタ法などにより形成する。
そして、周期的分極反転構造体の+Z面上のSiO2膜と、基板400の−Z面上のSiO2膜を直接に接合して周期的分極反転構造体と基板400を積層する。このとき、周期的分極反転構造体と基板400のX結晶軸及びY結晶軸を揃える。直接に接合されたSiO2膜が、下部クラッド層320として機能する。
その後、周期的分極反転構造体の−Z面を研磨し、周期的分極反転構造体を一様な厚みWに薄片化してコア部150を形成する。次いで、周期的分極反転構造体の−Z面上にSiO2膜をスパッタ法などにより形成する。このSiO2膜は、表面保護膜及び上部クラッド層310として機能する。
ダイシング後、入射面101及び出射面102にARコートなどの端面処理を施す。以上により、図11に示した波長変換素子10が完成する。
スラブ導波路型の波長変換素子10においても、バルク形状の周期的分極反転構造体100を用いた第1の実施形態と同様の検討が適用可能であり、コア部150を構成する複数の周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させることが容易である。即ち、波長変換素子10の素子温度を均一に変化させ、波長変換素子10全体を光軸方向Dに対して傾けて周期的分極反転構造体100それぞれの分極傾斜角を同じだけ変化させることによって、基本波波長が変化した場合にコア部150の複数の周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させることができる。
なお、スラブ導波路型の波長変換素子10では、基本波波長のばらつきだけでなく、コア部150を形成するために強誘電体結晶を薄片化する際の加工誤差などにより生じるコア部150の厚みWの公差によっても、周期的分極反転構造体100間の位相整合条件に差が生じる。しかし、図11に示した波長変換素子10によれば、コア部150の厚みWの公差に対しても、素子温度や光軸方向Dに対する傾きを調整することにより、コア部150の周期的分極反転構造体100のそれぞれを同時に位相整合させることができる。
以下に、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が3倍波変換部である場合の具体例について検討する。周期的分極反転構造体100を形成する強誘電体結晶にはMg:SLT結晶を用いるとする。また、上部クラッド層310と下部クラッド層320に使用するSiO2膜の屈折率を1.5とする。
ここで、光軸方向Dに対して2倍波変換部では角度θS0、3倍波変換部では角度θT0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合するように設計条件が設定されているとする。このとき、ΔT=−5〜+5Kの範囲の温度調整によって、コア部150の厚みWの公差がΔWの場合に、周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させる条件について検討する。
例えば、設計条件を、λ0=1064nm、T0=35℃、W=5μm、ΛS0=7.79μm、ΛT0=2.19μm、θS0=−2度、θT0=2度とする。即ち、設計条件では第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120の分極傾斜角の正負が逆であり、周期方向は光軸方向Dについて対称である。このとき、図12に示すようなΔTに対して第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120で同時に位相整合するΔλ及びΔθの関係が得られる。図12の各グラフにおいて、Δλ及びΔθのカッコ内はΔW(μm)の値を示す(以下において同様。)。
図12に示すように、ΔW=−0.1μmである場合には、Δθ=+0.7〜+1.2度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.11〜+0.64nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合できる。ΔW=0μmである場合には、Δθ=−0.2〜+0.2度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.35〜+0.36nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合できる。ΔW=+0.1μmである場合には、Δθ=−1.0〜−0.6度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.50〜+0.17nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び3倍波変換部において同時に位相整合できる。
また、第1の実施形態で説明したバルク形状の場合と同様に、スラブ導波路型の波長変換素子10の場合にもコア部150を構成する2倍波変換部と4倍波変換部を同時に位相整合させることができる。
以下に、第1の周期的分極反転構造体110が2倍波変換部であり、第2の周期的分極反転構造体120が4倍波変換部である場合の具体例について検討する。周期的分極反転構造体100を形成する強誘電体結晶にはMg:SLT結晶を用い、上部クラッド層310と下部クラッド層320に使用するSiO2膜の屈折率を1.5とする。ここで、光軸方向Dに対して2倍波変換部では角度θS0、4倍波変換部では角度θF0だけ周期方向が傾いているとき、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合するように設計条件が設定されているとする。このとき、ΔT=−5〜+5Kの範囲の温度調整によって、コア部150の厚みWの公差がΔWの場合に、周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させる条件について検討する。
例えば、設計条件を、λ0=1550nm、T0=35℃、W=5μm、ΛS0=18.78μm、ΛF0=2.77μm、θS0=10度、θF0=0度とする。即ち、設計条件では第2の周期的分極反転構造体120の分極傾斜角は0度であり、周期方向は光軸方向Dと平行である。このとき、図13に示すようなΔTに対して第1の周期的分極反転構造体110と第2の周期的分極反転構造体120で同時に位相整合するΔλ及びΔθの関係が得られる。図13に示すように、ΔW=−0.1μmである場合には、Δθ=−1.2〜−1.3度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.28〜+0.75nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合できる。
また、ΔW=0μmである場合には、Δθ=+0.1〜−0.1度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.49〜+0.50nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合できる。ΔW=+0.1μmである場合には、Δθ=+1.2〜+1.0度の範囲の角度調整によって、設計条件からの基本波波長のΔλ=−0.52〜+0.45nmの範囲の変化に対応して、2倍波変換部及び4倍波変換部において同時に位相整合できる。
以上に説明したように、本発明の第2の実施形態に係る波長変換素子10によれば、スラブ導波路型を採用した場合においても、基本波波長が変化した場合に容易にコア部150を構成する複数の周期的分極反転構造体100を同時に位相整合させることができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。例えば、図8に示したように、レーザ装置1の一部としてスラブ導波路型の波長変換素子10を使用してもよい。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
上記では、分極方向がZ結晶軸方向であるMg:SLT結晶を例として強誘電体結晶の内部に周期的分極反転構造体100を形成する場合について説明した。しかし、分極方向がZ結晶軸方向ではない強誘電体結晶に周期的分極反転構造体100を形成してもよい。つまり、波長変換素子10の素子温度を調整すると共に、波長変換素子10の光軸方向Dに対する傾きを分極方向に垂直な面と平行に調整することにより、分極方向がどの方向であっても、複数の周期的分極反転構造体100それぞれにおいて同時に位相整合することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
1…レーザ装置
10…波長変換素子
15…角度調整プレート
20…レーザ光源
50…温度調整装置
60…光学素子
100…周期的分極反転構造体
101…入射面
102…出射面
110…第1の周期的分極反転構造体
111、112…分極領域
120…第2の周期的分極反転構造体
121、122…分極領域
150…コア部
210、220…コーティング膜
310…上部クラッド層
320…下部クラッド層
400…基板

Claims (10)

  1. 基本波光が入射される入射面と前記基本波光が波長変換された波長変換光が出射される出射面との間で直列に一体化して配置された、分極反転する周期が互いに異なる複数の周期的分極反転構造体を備え、
    前記複数の周期的分極反転構造体のそれぞれにおいて、分極方向が交互に反転する複数の分極領域が平行に配列され、
    前記基本波光が入射されて前記複数の周期的分極反転構造体の内部を進行する光の光軸方向と、前記複数の分極領域が配列される周期方向とのなす傾斜角が、前記複数の周期的分極反転構造体で互いに異なり、
    前記複数の周期的分極反転構造体の温度及び前記傾斜角を前記複数の周期的分極反転構造体で同じだけ変化させることによって、前記基本波光の基本波波長が変化した場合に前記複数の周期的分極反転構造体それぞれにおいて同時に位相整合するように、前記複数の周期的分極反転構造体それぞれの前記周期方向と前記傾斜角が設定されている
    ことを特徴とする波長変換素子。
  2. 前記複数の周期的分極反転構造体が、
    前記基本波光の第2高調波を発生させる第1の周期的分極反転構造体と、
    前記第1の周期的分極反転構造体で発生した前記第2高調波と、前記第1の周期的分極反転構造体で前記第2高調波に変換されなかった前記基本波光との和周波として、前記基本波光の第3高調波を発生する第2の周期的分極反転構造体と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
  3. 前記複数の周期的分極反転構造体が、
    前記基本波光の第2高調波を発生させる第1の周期的分極反転構造体と、
    前記第1の周期的分極反転構造体で発生した前記第2高調波の第2高調波を発生して、前記基本波光の第4高調波を発生させる第2の周期的分極反転構造体と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
  4. 前記複数の周期的分極反転構造体が、1つの強誘電体結晶に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の波長変換素子。
  5. 前記複数の周期的分極反転構造体がコア部として形成されたスラブ導波路型であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の波長変換素子。
  6. 前記複数の周期的分極反転構造体のそれぞれの前記周期方向が、互いに異なる前記傾斜角で前記光軸方向と斜めに交差していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の波長変換素子。
  7. 前記複数の周期的分極反転構造体が、マグネシウムを添加した定比組成タンタル酸リチウム結晶に形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の波長変換素子。
  8. 基本波光を出射するレーザ光源と、
    前記基本波光が入射される入射面と前記基本波光が波長変換された波長変換光が出射される出射面との間で直列に一体化して配置された、分極反転する周期が互いに異なる複数の周期的分極反転構造体を有する波長変換素子と
    を備え、
    前記複数の周期的分極反転構造体のそれぞれにおいて分極方向が交互に反転する複数の分極領域が平行に配列され、
    前記基本波光が入射されて前記複数の周期的分極反転構造体の内部を進行する光の光軸方向と、前記複数の分極領域が配列される周期方向とのなす傾斜角が、前記複数の周期的分極反転構造体で互いに異なり、
    前記複数の周期的分極反転構造体の温度及び前記傾斜角を前記複数の周期的分極反転構造体で同じだけ変化させることによって、前記基本波光の基本波波長が変化した場合に前記複数の周期的分極反転構造体それぞれにおいて同時に位相整合するように、前記複数の周期的分極反転構造体それぞれの前記周期方向と前記傾斜角が設定されている
    ことを特徴とするレーザ装置。
  9. 前記光軸方向と前記複数の周期的分極反転構造体それぞれの前記周期方向とのなす前記傾斜角を同時に同じだけ調整する角度調整手段を更に備えることを特徴とする請求項8に記載のレーザ装置。
  10. 前記複数の周期的分極反転構造体の温度を同時に同じだけ変化させる温度調整手段を更に備えることを特徴とする請求項8又は9に記載のレーザ装置。
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