以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る三次元造形装置100の構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態に係る三次元造形装置100の制御系の主要部を示す図である。図1、2に示す三次元造形装置100は、造形ステージ140上に、三次元造形物200を構成するための第1造形材であるモデル材と、三次元造形物200の造形動作中にモデル材に接してモデル材を支持及び/又は覆うための第2造形材であるサポート材とからなる複数の造形材層を順に形成して積層することによって、三次元造形物200を造形する。サポート材は、例えば造形対象物がオーバーハングする部分を有している場合等に、モデル材の外周や内周に設けられ、三次元造形物200の造形が完了するまでオーバーハング部分を支持する。サポート材は、三次元造形物200の造形が完了した後に、ユーザーによって除去される。モデル材は、光を照射することで硬化する光硬化性材料と、マイクロ波を照射することで硬化する熱硬化性材料とを含む。サポート材は、光、放射線等のエネルギーを付与することで硬化するエネルギー硬化性材料、または、60〜80[℃]程度に加熱すると溶融して低粘度となるワックスを含む。ワックスは、加熱して吐出された後、冷却されることによって硬化する。本実施の形態では、サポート材として、光を照射することによって硬化する光硬化性材料が用いられる。なお、図1においては、理解を容易にするため、三次元造形物200のうちモデル材を用いて形成するモデル領域に相当する部分は実線で示し、サポート材を用いて形成しモデル領域を支持するサポート領域に相当する部分は破線で示している。
三次元造形装置100は、各部の制御や3Dデータの取り扱いを行うための制御部110、制御部110の実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部115、モデル材を用いて造形を行うためのヘッドユニット120、ヘッドユニット120を移動可能に支持するための支持機構130、三次元造形物200が形成される造形ステージ140、各種情報を表示するための表示部145、外部機器との間で3Dデータ等の各種情報を送受信するためのデータ入力部150、および、ユーザーからの指示を受け付けるための操作部160を備える。三次元造形装置100には、造形対象物を設計するための、あるいは、三次元測定機を用いて実物を測定して得られた三次元情報に基づいて造形用のデータを生成するためのコンピューター装置155が接続される。
データ入力部150は、造形対象物の三次元形状を示す3Dデータ(CADデータやデザインデータなど)をコンピューター装置155から受け取り、制御部110に出力する。CADデータやデザインデータには、造形対象物の三次元形状だけに限らず、造形対象物の表面の一部または全面および内部におけるカラー画像情報が含まれている場合もある。なお、3Dデータを取得する方法は特に限定されず、有線通信や無線通信、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信を利用して取得しても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの記録媒体を利用して取得しても良い。また、この3Dデータは、当該3Dデータを管理および保存するサーバーなどから取得しても良い。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)などの演算手段を有しており、データ入力部150から3Dデータを取得し、取得した3Dデータの解析処理や演算処理を行う。制御部110は、3Dデータを解析することによって、最終的に三次元造形物200を構成する領域をモデル領域に設定する。また、制御部110は、モデル領域を支持し、最終的に三次元造形物200から除去される領域をサポート領域(除去対象領域)に設定する。なお、モデル領域を支持しない領域であっても、最終的に三次元造形物200から除去される領域であれば除去対象領域に設定される場合もある。例えば、積層方向に複数の造形物を造形する際に、隣り合う造形物間の仕切りとなる層を除去対象領域に設定したり、三次元造形物200を保護するために三次元造形物200の表面を覆うように除去対象領域が設けられるように設定したりすることができる。
制御部110は、データ入力部150から取得した3Dデータを、造形材層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。スライスデータは、三次元造形物200を造形するための造形材層毎の造形データである。各スライスデータに対しては、モデル領域およびサポート領域の少なくとも一方が設定されている。つまり、スライスデータに対して、モデル領域のみが設定されている場合もあるし、サポート領域のみが設定されている場合もある。サポート領域や上述した表面保護層が必要ない場合もあるし、上述したように、積層方向に多数個の造形物を作製する際の仕切りの役目で、サポート領域が造形材層の100[%]を使用する場合もあるからである。三次元造形物200のオーバーハング部分に相当するオーバーハング領域は、モデル領域およびサポート領域として設定されている。スライスデータの厚み、すなわち造形材層の厚みは、造形材層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。例えば、造形材層の厚みが0.05[mm]である場合、制御部110は、1[mm]の高さの積層に必要な連続した20[枚]のスライスデータを3Dデータから切り出す。
また、制御部110は、三次元造形物200の造形動作中、三次元造形装置100全体の動作を制御する。例えば、モデル材およびサポート材を所望の場所に吐出するための機構制御情報を支持機構130に対して出力するとともに、ヘッドユニット120に対してスライスデータを出力する。すなわち、制御部110は、ヘッドユニット120と支持機構130とを同期させて制御する。制御部110は、後述する光照射装置124およびマイクロ波照射装置125の制御も行う。
表示部145は、制御部110の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部160は、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部110に出力する。
造形ステージ140は、ヘッドユニット120の下方に配置される。造形ステージ140には、ヘッドユニット120によって造形材層が形成され、この造形材層が積層されることにより、サポート領域を含む三次元造形物200が造形される。
支持機構130は、ヘッドユニット120および造形ステージ140のうち少なくとも一方を、両者の相対距離を可変に支持し、ヘッドユニット120と造形ステージ140との相対位置を3次元で変化させる。具体的には、支持機構130は、図1に示すように、ヘッドユニット120に係合する主走査方向ガイド132と、主走査方向ガイド132を副走査方向に案内する副走査方向ガイド134と、造形ステージ140を鉛直方向に案内する鉛直方向ガイド136とを備え、さらに図示しないモーターや駆動リール等からなる駆動機構を備えている。
支持機構130は、制御部110から出力された機構制御情報に従って、図示しないモーターおよび駆動機構を駆動し、キャリッジを兼ねるヘッドユニット120を主走査方向および副走査方向に自在に移動させる(図1を参照)。なお、支持機構130は、ヘッドユニット120の位置を固定し、造形ステージ140を主走査方向および副走査方向に移動させるように構成しても良いし、ヘッドユニット120と造形ステージ140との双方を移動させるように構成しても良い。
また、支持機構130は、制御部110から出力された機構制御情報に従って、図示しないモーターおよび駆動機構を駆動し、造形ステージ140を鉛直方向下方に移動させてヘッドユニット120と三次元造形物200との間隔を調整する(図1を参照)。すなわち、造形ステージ140は、支持機構130によって鉛直方向に移動可能に構成されており、造形ステージ140上に、Nを自然数としたときに、N層目の造形材層が形成された後、積層ピッチだけ鉛直方向下方に移動する。そして、造形ステージ140は、造形ステージ140上にN+1層目の造形材層が形成された後、積層ピッチだけ鉛直方向下方に再び移動する。なお、支持機構130は、造形ステージ140の鉛直方向位置を固定し、ヘッドユニット120を鉛直方向上方に移動させても良いし、ヘッドユニット120と造形ステージ140との双方を移動させても良い。
ヘッドユニット120は、図2,3に示すように、インクジェット方式のモデル材吐出ヘッド121、サポート材吐出ヘッド122、平滑化装置123、光照射装置124およびマイクロ波照射装置125を筐体120Aの内部に備える。モデル材吐出ヘッド121は、造形ステージ140に向けて、造形材であるモデル材を吐出する造形材吐出ヘッドとして構成される。
モデル材吐出ヘッド121は、長手方向(副走査方向)に列状に配列された複数の吐出ノズルを有する。モデル材吐出ヘッド121は、長手方向に直交する主走査方向に走査しながら、造形ステージ140に向けて複数の吐出ノズルからモデル材の液滴を選択的に吐出する。造形材吐出ヘッド121は、1層分の造形材層が形成される際、その造形材層に対応するスライスデータに対してモデル領域が設定された領域に、モデル材の液滴を吐出する。この吐出動作を、副走査方向にずらしながら複数回繰り返すことにより、造形ステージ140上の所望の領域に造形材層のモデル領域を形成する。造形材層のモデル領域は、光エネルギーおよびマイクロ波の照射による硬化処理が施されることにより硬化する。
サポート材吐出ヘッド122は、長手方向(副走査方向)に列状に配列された複数の吐出ノズルを有する。サポート材吐出ヘッド122は、長手方向に直交する主走査方向に走査しながら、造形ステージ140に向けて複数の吐出ノズルからサポート材の液滴を選択的に吐出する。サポート材吐出ヘッド122は、1層分の造形材層が形成される際、その造形材層に対応するスライスデータに対してサポート領域が設定された領域に、サポート材の液滴を吐出する。この吐出動作を、副走査方向にずらして複数回繰り返すことにより造形ステージ140上の所望の領域に造形材層のサポート領域を形成する。造形材層のサポート領域は、使用するサポート材により硬化処理が異なり、光硬化性樹脂を用いる場合は、光照射による硬化処理が施される。なお、ワックスを用いる場合は、加熱により溶融させ低粘度状態で吐出した後に冷却することによる硬化処理が施される。
このように、制御部110からの制御信号によって支持機構130が作動するとともに、制御部110から送られるスライスデータに基づいて、モデル材吐出ヘッド121からはモデル材が選択的に造形ステージ140に供給され、サポート材吐出ヘッド122からはサポート材が選択的に造形ステージ140に供給されることで三次元造形物200の造形が行われる。すなわち、制御部110、支持機構130、ヘッドユニット120、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122等によって、モデル領域およびサポート領域の少なくとも一方を含む造形材層が形成される。
モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122としては、従来公知の画像形成用のインクジェットヘッドが用いられる。なお、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122が有する複数の吐出ノズルは、列状に配列されていれば良く、直線状に並んでいても良いし、ジグザグ配列で全体として直線状になるように並んでいても良い。
モデル材吐出ヘッド121は、モデル材を吐出可能な状態で貯留する。本実施の形態では、モデル材吐出ヘッド121として、例えば、粘度が1〜100[mPa・s]の範囲でモデル材を吐出できるものを採用することが望ましい。モデル材は、特定波長の光(光エネルギー)が照射されることにより硬化する光硬化性材料としての光硬化性モノマー、マイクロ波が照射されることにより硬化する熱硬化性材料としての熱硬化性モノマーおよび光ラジカル重合開始剤を含む。
光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば任意に使用することができる。光ラジカル重合開始剤としては例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で、または、2種類以上を混合して使用することができる。
光ラジカル重合開始剤に、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えても良い。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために添加して良い。なお、光重合開始剤は、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、特に限定されるものではない。光開始剤の好ましい配合量としては、造形材全体に対して質量比で、10[%]〜0.001[%]であり、さらに好ましくは3[%]〜0.05[%]である。
光硬化性モノマーは、活性光線の照射により架橋または重合する重合性化合物である。活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などであり、好ましくは紫外線または電子線である。重合性化合物は、カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物、またはそれらの混合物である。ラジカル重合性化合物の例には、(メタ)アクリレート化合物が含まれる。(メタ)アクリレート化合物は、単官能モノマー、二官能モノマーまたは三官能以上の多官能モノマーである。単官能モノマーの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が含まれる。
二官能モノマーの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
三官能以上の多官能モノマーの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等が含まれる。光硬化モノマーの好ましい配合量としては、造形材全体に対して質量比で、40[%]〜98[%]であり、さらに好ましくは60[%]〜90[%]である。
熱硬化性モノマーは、熱により架橋または重合する重合性化合物である。熱硬化性モノマーとしては、オレフィン類(エチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、4−メチルペンテン−1、オクテンなど);芳香族ビニル炭化水素またはその置換体(スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、アセトキシスチレン、ビニルトルエンなど);(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなど);ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテルなど);ビニルアルコール誘導体(酢酸ビニル、酪酸ビニルなど);(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミドおよびそのN置換誘導体;エチレンのハロゲン置換化合物(塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなど);1,2−ジ置換不飽和ポリカルボン酸またはその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸およびそのエステル化合物など);ジエン類(ブタジエン、イソプレンなど);マレイミド化合物(ポリフェニルメタンマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン);アリル化合物(ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル);多官能アクリレートとして、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の2官能アクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等の3官能アクリレートが例示される。また、4〜6官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;低分子量ジオール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど];ポリエーテルジオール[上記に例示した低分子量ジオールのアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)付加物、アルキレンオキシドの開環重合物(ポリテトラメチレングリコールなど)];ポリエステルジオール[脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、マレイン酸、二量化リノレイン酸など)または芳香族ジカルボン酸(フタル酸、テレフタル酸など)と上記に例示した低分子量ジオールとの縮合ポリエステルジオール、ε-カプロラクトンの開環重合によるポリラクトン ジオールなど];低分子量ジアミン(イソホロンジアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタンなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサンなど)、脂肪族ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなど);3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など];フェノールエーテル系グリシジル化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのジグリシジルエーテル類など);エーテル系グリシジル化合物(ジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、ポリアリルグリシジルエーテルなど);エステル系グリシジル化合物[グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリルなど)との共重合体など];グリシジルアミン類(パラアミノフェノールのグリシジルエーテルなど)、非グリシジル型エポキシ化合物(エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化大豆油など);ポリアミン類および(無水)ポリカルボン酸などを挙げることができる。ポリアミン類としては、例えば脂肪族ポリアミン類(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン類、アルキルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミンなどのアルキルまたはヒドロキシアルキルアミン類、キシリレンジアミンなどの芳香環含有脂肪族アミン類、ポリオキシプロピレンポリアミンなどのポリエーテルポリアミン類など);脂環または複素環含有脂肪族ポリアミン類(N−アミノエチルピペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);芳香族ポリアミン類(フェニレンジアミン、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなど);ポリアミドポリアミン類(上記ポリアミン類とダイマー酸との縮合物);ベンゾグアナミンおよび/またはアルキルグアナミンおよびその変性物;およびジシアンジアミド;脂肪族ジカルボン 酸エステル類の重合体(ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなど);ポリカーボネート;並びにこれらの2種以上の共エステル化物やこれら重合体を構成する化合物とアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメリット酸など)との共重縮合物が挙げられる。ポリアミド系としては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、4,6−ナイロン等およびこれらの2種以上の共アミド化物やこれら重合体を構成する化合物とポリエステルを構成する化合物もしくはアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、3官能以上の低分子架橋剤(トリメリット酸など)との共重縮合物;ピロメリット酸と1,4−ジアミノベンゼンとの重縮合物;これらポリイミドを構成する化合物と上記ポリアミドを構成する化合物との共重縮合物、すなわちポリアミドイミド;3官能以上の活性水素含有化合物(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの多価アミン;トリエタノールアミンなどのアミノアルコールなど)、トリメリット酸、および/または3官能以上のポリイソシアネート[トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートの1対3付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの環状3量体など]との組み合わせ;イソシアネート基をブロック剤(アルコール類、フェノール類、ラクタム類、オキシム類、アセト酢酸アルキルエステル類、マロン酸アルキルエステル類、フタルイミド類、イミダゾール類、塩化水素、シアン化水素、亜硫酸水素ナトリウム)で保護したブロックイソシアネート基を含有したブロックイソシアネートなどが挙げられる。
熱硬化性モノマーは、モデル材吐出ヘッド121の吐出安定性を向上させる観点から、分子内にマレイミド基、アリル基、環状エーテル基およびブロックイソシアネート基の何れかを少なくとも1つ含むことが好ましい。また、熱硬化性モノマーは、三次元造形物200の積層方向における強度を向上させる観点から、分子内にマレイミド基、アリル基、環状エーテル基およびブロックイソシアネート基の何れかを少なくとも2つ含むことが好ましい。熱硬化性モノマーの好ましい配合量としては、造形材全体に対して質量比で、1[%]〜50[%]であり、さらに好ましくは5[%]〜30[%]である。
なお、モデル材は、光硬化性モノマー、熱硬化性モノマーおよび光ラジカル重合開始剤の他に、熱開始剤をさらに含んでも良い。熱開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物、アミン類、イミダゾール類、酸無水物が挙げられ、使用する熱硬化性モノマーにより適宜選択される。過酸化物としては、無機過酸化物(例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど)、および有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ラウリルパーオキシドなど)などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、およびアゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライドなどが挙げられる。アミン類としては、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピベラジン、イソフロオロンジアミン、キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテートなどが挙げられる。酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水マレイン酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、クロレンド酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物などが挙げられる。熱開始剤の好ましい配合量としては、造形材全体に対して質量比で、0.0001[%]〜20[%]であり、さらに好ましくは0.005[%]〜10[%]である。その他、モデル材は、重合安定化剤や色材をさらに含んでも良い。
サポート材吐出ヘッド122は、サポート材を吐出可能な状態で貯留する。本実施の形態では、サポート材吐出ヘッド122として、例えば、粘度が1〜100[mPa・s]の範囲でサポート材を吐出できるものを採用することが望ましい。サポート材としては、特定波長の光が照射されることにより硬化する光硬化性材料としての光硬化性モノマーおよび光ラジカル重合開始剤を含む。サポート材には、ポリエチレングリコール、部分的にアクリル化された多価アルコール・オリゴマー、親水性置換基を有するアクリル化オリゴマーやそれらを組み合わせた材料を添加することで水との接触に対して膨潤する機能を持たせても良い。これにより、サポート材の除去を行いやすくすることができる。なお、サポート材として、熱を与えることにより硬化する熱硬化性材料を用いても良いし、放射線が照射されることにより硬化する放射線硬化材料を用いても良いし、これらに水膨潤性を持たせた材料を用いても良い。
モデル材およびサポート材は、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122により造形ステージ140上にそれぞれ吐出されてモデル材領域およびサポート材領域の少なくとも一方を含む造形材層を形成する。造形材層は、光およびマイクロ波の照射による硬化処理が施されることにより、十分な強度が得られる程度の硬度になるまで硬化が進められる。
平滑化装置123は、均しローラー123A、ブレード等の掻き取り部材123Bおよび回収部材123Cを筐体120Aの内部に備える。均しローラー123Aは、制御部110の制御下において図3中の反時計回り方向に回転駆動可能であり、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122により吐出されたモデル材表面およびサポート材表面に接触してモデル材表面およびサポート材表面の凹凸を平滑化する。その結果、均一な層厚を有する造形材層が形成される。造形材層の表面が平滑化されることにより、次の造形材層を精度良く形成して積層することができるので、高精度の三次元造形物200を造形することができる。均しローラー123Aの表面に付着した造形材は、均しローラー123Aの近傍に設けられた掻き取り部材123Bによって掻き取られる。掻き取り部材123Bによって掻き取られたモデル材およびサポート材は、回収部材123Cによって回収される。なお、掻き取り部材123Bによって掻き取られたモデル材やサポート材は、モデル材吐出ヘッド121やサポート材吐出ヘッド122に供給されて再利用されるものとしても良いし、廃タンク(図示せず)に輸送されるものとしても良い。なお、均しローラー123Aに代えて、他の回転体、例えば、無端ベルトを用いるようにしても良い。
光照射装置124は、造形ステージ140に向けて吐出された、光硬化性材料を含むモデル材およびサポート材に硬化処理としての光エネルギー照射処理を施して、半硬化させる露光ヘッドである。硬化の度合いは照射される光エネルギー量によって異なり、半硬化の状態にすることもできるし、実質的に完全に硬化した状態にすることもできる。ここで、半硬化とは、モデル材が、造形材層として形状を維持することができる程度の粘度を有するように完全硬化よりも低い度合いで硬化された状態を言うものとする。モデル材およびサポート材に紫外線硬化性材料が含まれる場合、光照射装置124として、紫外線を放射するUVランプ(例えば、高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。なお、光照射装置124としては、高圧水銀ランプの他に、低圧水銀灯、中圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプまたは紫外線LEDランプ等を任意に用いることができる。光照射装置124は、制御部110からの制御信号によって、照射タイミングや露光量が制御される。露光量の制御は、光照射装置124に加える電圧や電流等を調整して光照射装置124の発光強度を変化させることで行うようにしても良いし、光照射装置124と造形材であるモデル材やサポート材との間に、光学的なフィルターを挿抜できるように配置したり、複数種類のフィルターを切り替えられるように構成して、これらを挿抜したり切り替えたりすることで行うようにしても良い。
マイクロ波照射装置125は、造形ステージ140に向けてマイクロ波を選択的に照射する。マイクロ波照射装置125は、円形の所定範囲にマイクロ波を照射するものであっても良いし、これを列状に複数並べたものであっても良い。マイクロ波照射装置125は、制御部110の制御を受けて、マイクロ波の照射と停止との間における切り替えを行うとともに、照射するマイクロの強さ、当該マイクロ波の周波数および出力等を変化させる。本実施の形態では、マイクロ波照射装置125は、複数の造形材層が形成され積層されることによって三次元造形物200の少なくとも一部を構成する積層物が形成された段階で、当該積層物にマイクロ波を照射する。
ヘッドユニット120は、1層分の造形材層を形成する際、主走査方向に造形ステージ140上の一方の端部から他方の端部まで走査しながら、モデル領域が設定された領域にモデル材を吐出するとともに、サポート領域が設定された領域にサポート材を吐出する。次に、ヘッドユニット120は、モデル材およびサポート材の吐出を一旦停止し、主走査方向に造形ステージ140上の他方の端部から一方の端部まで走査する。次に、ヘッドユニット120は、モデル材吐出ヘッド121によるモデル材の吐出位置、および、サポート材吐出ヘッド122によるサポート材の吐出位置が重ならないように副走査方向に走査する。これらの動作を繰り返すことにより、造形ステージ140上の所定の領域を走査し、1層分の造形材層を形成することができる。
次に、図4を参照し、三次元造形装置100が造形材層を順に形成して積層することによって三次元造形物200を造形する動作例について説明する。より具体的には、三次元造形装置100が、造形ステージ140上にモデル領域およびサポート領域の少なくとも一方を有する造形材層を順に形成して積層することによって、2層分の造形材層からなる三次元造形物200を造形する場合について説明する。
まず、図4Aに示すように、ヘッドユニット120は、主走査方向に造形ステージ140上の一方の端部から他方の端部まで走査しながら、モデル領域が設定された領域に対して光硬化性モノマー220Aおよび熱硬化性モノマー220Bを含むモデル材220の液滴を吐出するとともに、サポート領域が設定された領域に対して光硬化性モノマーを含むサポート材230の液滴を吐出する(第1動作)。第1動作中において、ヘッドユニット120は、図4Bに示すように、造形ステージ140に向けて吐出されたモデル材220に光照射処理を施し、光硬化性モノマー220Aを光重合させることによって半硬化させるとともに、吐出されたサポート材230に光エネルギー照射処理を施して半硬化させる。つまり、1層目の造形材層は、光硬化性モノマーの硬化に伴い、その形状を維持することができる程度に硬化される。
次に、ヘッドユニット120は、モデル材220およびサポート材230の吐出を一旦停止し、主走査方向に造形ステージ140上の他方の端部から一方の端部まで走査する(第2動作)。次に、ヘッドユニット120は、ヘッドユニット120によるモデル材220およびサポート材230の吐出位置が重ならないように副走査方向に走査する(第3動作)。これらの第1動作〜第3動作を繰り返すことにより、造形ステージ140上の所定の領域を走査し、1層目の造形材層(モデル領域222およびサポート領域232)を形成する。この段階で、1層目のモデル領域222には、熱硬化性モノマー220Bが未硬化の状態で分散している。
次に、図4Cに示すように、ヘッドユニット120は、主走査方向に造形ステージ140上の一方の端部から他方の端部まで走査しながら、モデル領域が設定された領域に対して光硬化性モノマー220Aおよび熱硬化性モノマー220Bを含むモデル材220の液滴を吐出するとともに、サポート領域が設定された領域に対して光硬化性モノマーを含むサポート材230の液滴を吐出する(第4動作)。第4動作中において、ヘッドユニット120は、図4Dに示すように、造形ステージ140に向けて吐出されたモデル材220に光照射処理を施し、光硬化性モノマー220Aを光重合させることによって半硬化させるとともに、吐出されたサポート材230に光照射処理を施して半硬化させる。つまり、2層目の造形材層は、光硬化性モノマーの硬化に伴い、その形状を維持することができる程度に硬化される。
次に、ヘッドユニット120は、モデル材220およびサポート材230の吐出を一旦停止し、主走査方向に造形ステージ140上の他方の端部から一方の端部まで走査する(第5動作)。次に、ヘッドユニット120は、ヘッドユニット120によるモデル材220およびサポート材230の吐出位置が重ならないように副走査方向に走査する(第6動作)。これらの第4動作〜第6動作を繰り返すことにより、造形ステージ140上の所定の領域を走査し、2層目の造形材層(モデル領域222およびサポート領域232)を形成する。この段階で、1,2層目のモデル領域222には、両者の界面及び界面近傍も含め、熱硬化性モノマー220Bが未硬化の状態で分散している。こうして、2層分の造形材層が形成され積層されることによって、三次元造形物200の全部を構成する積層物が形成される。
次に、図4Eに示すように、ヘッドユニット120は、主走査方向に造形ステージ140上の一方の端部から他方の端部まで走査しながら、1,2層目の造形材層(積層物)にマイクロ波を照射する(第7動作)。次に、ヘッドユニット120は、マイクロ波の照射を一旦停止し、主走査方向に造形ステージ140上の他方の端部から一方の端部まで走査する(第8動作)。次に、ヘッドユニット120は、ヘッドユニット120によるマイクロ波の照射位置が重ならないように副走査方向に走査する(第9動作)。これらの第7動作〜第9動作を繰り返すことにより、造形ステージ140上の所定の領域を走査し、1,2層目の造形材層に含まれるモデル領域222の全体にマイクロ波を照射する。こうして三次元造形物200の造形が完了する。1,2層目の造形材層に含まれるモデル領域222では、両者の界面及び界面近傍も含め、未硬化の状態で熱硬化性モノマー220Bが分散している。そして、1,2層目の造形材層にマイクロ波を照射すると、極性分子である熱硬化性モノマー220Bは、照射されたマイクロ波を吸収して加熱される。その結果、熱硬化性モノマー220Bは、熱重合反応を起こして1,2層目の造形材層間で化学的な結合を形成する。こうして、三次元造形物200の積層方向における強度を向上させることができる。
得られたサポート材を含む三次元造形物200から、図4Fに示すように、サポート領域232がユーザーによって除去される。これにより、サポート材を含まない三次元造形物200が得られる。なお、サポート領域232が除去される前でなく、サポート領域232が除去された後に、ヘッドユニット120は、1,2層目の造形材層にマイクロ波を照射しても良い。
なお、マイクロ波を照射する方向は特に限定されないが、熱硬化性モノマー220Bの熱重合反応を均一に促進させる観点から、造形材層を積層する方向に沿って照射が行われるように設定することが好ましい。また、使用するマイクロ波の周波数としては、熱硬化性モノマー220Bを効率的に熱重合させる観点から、0.3GHz〜100GHzの範囲内とすることが好ましく、さらに0.8GHz〜30GHzがより好ましい。また、熱硬化性モノマー220Bが加熱されることにより三次元造形物200(モデル領域222)の寸法精度ムラが発生することを防止する観点から、使用するマイクロ波の出力としては、50W〜5000Wの範囲内とすることが好ましく、さらに200W〜1500Wの範囲内とすることがより好ましい。
なお、図4に示す造形動作例では、理解を容易にするため、2層を積層した段階でマイクロ波照射装置125が積層物に対してマイクロ波を照射するものとして説明しているが、実際には、三次元造形物200の全部を構成するのに必要な数の造形材層を全て積層して積層物が形成された段階で、当該積層物にマイクロ波を照射する。但し、三次元造形物200の一部を構成する積層物が形成された段階で、当該積層物にマイクロ波を照射しても良い。この場合でも、熱硬化性モノマーの熱重合反応によって、積層物を構成する複数の造形材層間で化学的な結合が形成されるため、三次元造形物200の積層方向における強度を向上させることができる。
以上詳しく説明したように、本実施の形態では、三次元造形装置100は、造形ステージ140上にモデル材220を吐出し、吐出されたモデル材220に含まれる光硬化性モノマー220Aに光照射して硬化させることによって造形材層を形成し、複数の造形材層を積層することにより三次元造形物200を構成する積層物を形成する。そして、三次元造形装置100は、形成された積層物にマイクロ波を照射して当該積層物に含まれる熱硬化性モノマー220Bを硬化させる。
このように構成した本実施の形態によれば、吐出されたモデル材220に含まれる光硬化性モノマー220Aに光照射して硬化させると、造形材層には、熱硬化性モノマー220Bが未硬化の状態で分散することとなる。そして、複数の造形材層を積層することにより形成された積層物にマイクロ波を照射して加熱すると、積層物に含まれる熱硬化性モノマー220Bは、熱重合反応により造形材層間で化学的な結合を形成する。その結果、三次元造形物200の積層方向における強度を向上させることができる。また、マイクロ波が照射される前の積層物を構成する造形材層は、光硬化性モノマー220Aの硬化に伴い、その形状を維持することができる程度に硬化されているため、造形される三次元造形物200の造形精度が低下することを防止することができる。
なお、上記実施の形態では、ヘッドユニット120がマイクロ波照射装置125を備える例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、ヘッドユニット120とマイクロ波照射装置125とを別体化し、ヘッドユニット120およびマイクロ波照射装置125のそれぞれが独立的に移動できるように構成しても良い。ただし、三次元造形装置100をコンパクトにするとともに、ヘッドユニット120およびマイクロ波照射装置125の移動に要する消費電力を抑制する観点からは、ヘッドユニット120がマイクロ波照射装置125を備えていることが好ましい。
また、上記実施の形態では、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122と光照射装置124とが一体化される例について説明したが、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122と光照射装置124とを別体化し、それぞれが独立的に移動できるように構成しても良い。ただし、三次元造形装置100をコンパクトにするとともに、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122、光照射装置124の移動に要する消費電力を抑制する観点からは、モデル材吐出ヘッド121およびサポート材吐出ヘッド122と光照射装置124とが一体化されていることが好ましい。
また、インクジェットヘッドを主走査方向に走査しながらモデル材を吐出した後に、モデル材の吐出中心位置が重ならないようにノズルピッチ以下で副走査方向に走査することによって副走査方向の解像度を高くする制御を取り入れて、造形物の精度を高めるとともに、積層方向の結合強度をさらに高めるようにしてもよい。
また、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
[実験例]
上記実施の形態の構成における効果を確認するための評価実験について説明する。実施例1〜10および比較例1〜5において、造形材(モデル材)として使用した材料は、以下の通りである。
(光開始剤)
・IRGACURE127(BASF社製):2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル)フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン
・IRGACURE819(BASF社製):ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
(単官能モノマー(光硬化性))
・AMP−20GY(新中村化学工業社製):フェノキシポリエチレングリコールアクリレート
(多官能モノマー(光硬化性))
・Photomer 4072(コグニス社製):3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート
・Miramer M360(東洋ケミカルズ社製):トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート
・ニューフロンティア R−1301(第一工業社製):ウレタンアクリレート
・N-ビニルホルムアミド(TCI社製)
(多官能モノマー(熱硬化性))
・DAP(TCI社製):ジアリルテレフタレート
・BMI−TMH(大和化成工業社製):1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン
・セロキサイド2021P(ダイセル社製):3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
・エラストロンH−38(第一工業社製):ポリエーテル系ブロックイソシアネート
・イミレックス(登録商標)−P(日本触媒社製):N−フェニルマレイミド
(熱開始剤)
・HN−5500(日立化成社製):3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸
(実施例1〜3,比較例1〜3における造形材の調製)
実施例1〜3,比較例1〜3では、以下の組成(下記表1の組成例1)で材料を混合し、80[℃]に加熱して攪拌した。そして、得られた溶液の温度を保持したまま、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3[μm]メンブランフィルターで濾過し、造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 42.5質量部
・Photomer4072 40.0質量部
・BMI−TMH 15.0質量部
(実施例4における造形材の調製)
実施例4では、以下の組成(下記表1の組成例2)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 42.0質量部
・Photomer4072 35.5質量部
・DAP 20.0質量部
(実施例5における造形材の調製)
実施例5では、以下の組成(下記表1の組成例3)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 32.0質量部
・Photomer4072 25.5質量部
・セロキサイド2021P 20.0質量部
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 20.0質量部
(実施例6における造形材の調製)
実施例6では、以下の組成(下記表1の組成例4)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 32.0質量部
・MiramaerM360 50.5質量部
・セロキサイド2021P 15.0質量部
(実施例7における造形材の調製)
実施例7では、以下の組成(下記表1の組成例5)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 52.5質量部
・Photomer4072 35.0質量部
・イミレックス−P 10.0質量部
(実施例8における造形材の調製)
実施例8では、以下の組成(下記表1の組成例6)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 32.0質量部
・N−ビニルホルムアミド 35.5質量部
・DAP 15.0質量部
・BMI−TMH 15.0質量部
(実施例9における造形材の調製)
実施例9では、以下の組成(下記表1の組成例7)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 22.0質量部
・Photomer4072 20.0質量部
・MiramaerM360 15.5質量部
・DAP 10.0質量部
・BMI−TMH 10.0質量部
・セロキサイド2021P 10.0質量部
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 10.0質量部
(実施例10における造形材の調製)
実施例10では、以下の組成(下記表1の組成例8)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 27.0質量部
・ニューフロンティアR−1301 50.5質量部
・エラストロンH−38 20.0質量部
(比較例4における造形材の調製)
比較例4では、以下の組成(下記表1の組成例9)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・AMP−20GY 62.0質量部
・Photomer4072 35.5質量部
(比較例5における造形材の調製)
比較例5では、以下の組成(下記表1の組成例10)で材料を混合する以外は実施例1と同様の手順で造形材を調製した。
・IRGACURE127 1.0質量部
・IRGACURE819 1.5質量部
・DAP 57.5質量部
・BMI−TMH 30.0質量部
・メチルヘキサヒドロ無水フタル酸 10.0質量部
[実施例1]
実施例1において、評価用の試験片(テストピース)は、コニカミノルタ社製インクジェットヘッドKM512(標準液滴量42[pl]、ノズル解像度360[dpi]≒ノズルピッチ70.5[μm])を搭載し、固定された当該インクジェットヘッドに対して造形ステージを189[mm/s]で移動させる三次元造形装置を用いて造形することによって作製した。上記三次元造形装置のインクジェットヘッド(より具体的には80[℃]に保持された吐出ノズル)から組成例1で調製した造形材を吐出し均しローラーで平滑化した後、光源としてLED(波長:365nm)を用いて照射強度100mW/cm2で光照射処理を施して造形材を硬化させた。これらの動作を繰り返すことで造形材からなる造形材層を順に形成して積層した後、インクジェットヘッドに搭載されたマイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:1000W)を、造形物に照射し、さらにサポート材の除去作業を行い、図6に示すような所定形状の試験片(厚み:2mm)を造形した。なお、マイクロ波を照射する方向は、複数の造形材層を積層する方向と同じ方向(平行)である。
[実施例2]
実施例2では、実施例1と同様に造形材層を積層した後、マイクロ波照射装置に対して造形物を90°傾けた状態すなわちマイクロ波を照射する方向と、複数の造形材層を積層する方向とが垂直となる状態で、マイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:1000W)を造形物に照射した。
[実施例3]
実施例3では、実施例1と同様に造形材層を積層した後、マイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:2000W)を造形物に照射した。
[比較例1]
比較例1では、実施例1と同様に造形材層を積層した後、マイクロ波を照射する代わりに、インクジェットヘッドに搭載された光源の照射強度を5000mW/cm2に変更し、造形物に光を照射した。
[比較例2]
比較例2では、実施例1で使用したインクジェットヘッドを用い、造形材を吐出し均しローラーで平滑化した後、インクジェットヘッドに搭載されたマイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:1000W)を照射した。これらの動作を繰り返すことで造形材からなる造形材層を順に形成して積層した後、インクジェットヘッドに搭載の光源を用いて光を造形物に照射した。
[比較例3]
比較例3では、実施例1と同様に造形材層を積層した後、100℃に設定したオーブン(アズワン社製、MOV−300S)に60分間放置した後、オーブンから取り出すことによって試験片を造形した。
[実施例4〜10]
実施例4〜10では、組成例2〜8でそれぞれ調製した造形材を吐出し均しローラーで平滑化した後、光源としてLED(波長:365nm)を用いて照射強度100mW/cm2で光照射処理を施した。これらの動作を繰り返すことで造形材からなる造形材層を順に形成して積層した後、インクジェットヘッドに搭載されたマイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:1000W)を造形物に照射し、さらにサポート材の除去作業を行い、所定形状の試験片を造形した。
[比較例4、5]
比較例4、5では、組成例9、10でそれぞれ調製した造形材を吐出し均しローラーで平滑化した後、光源としてLED(波長:365nm)を用いて照射強度100mW/cm2で光照射処理を施した。これらの動作を繰り返すことで造形材からなる造形材層を順に形成して積層した後、インクジェットヘッドに搭載されたマイクロ波照射装置からマイクロ波(周波数:2.45GHz、出力:1000W)を造形物に照射し、さらにサポート材の除去作業を行い、所定形状の試験片を造形した。
本評価実験では、東洋精機社製「テンシロンUTM−III」を用いて、造形した試験片を20[mm/min]の速さで引っ張り、試験片が破断したときの破断強度[MPa]を測定した(ISO 527−1(JIS K 7161))。実施例1〜10および比較例1〜5でそれぞれ作製した試験片の破断強度について、下記評価基準に基づいて評価した。
(試験片の破断強度)
◎:60以上
○:40以上かつ60未満
△:20以上かつ40未満
×:20未満
また、本評価実験では、造形した試験片のくびれ部分(10mm)の寸法を、ノギスを用いて測定した。実施例1〜10および比較例1〜5でそれぞれ作製した試験片の寸法精度について、下記評価基準に基づいて評価した。なお、比較例5では、造形材に対して光照射処理を施したが硬化せず、ひいては試験片を造形することができなかったため、試験片の破断強度および寸法精度について評価することができなかった。
(試験片の寸法精度)
◎:10±0.1(mm)
○:10±0.2(mm)
△:10±0.3(mm)
×:10±0.4(mm)
表2は、実施例1〜10および比較例1〜5における評価実験の結果を表す表である。
表2に示すように、実施例1〜10で造形した試験片は、比較例1〜4で作製した試験片と比べて造形材層の積層方向における強度(破断強度)が向上した。また、実施例1〜10で造形した試験片は、比較例1〜4で作製した試験片と比べて、寸法精度が同等または向上した。特に、実施例1、4〜6、8〜10は、マイクロ波の強度が適度であり、マイクロ波が吸収されやすい照射方向に設定されていること、及び、造形材に含まれる熱硬化性モノマーが、マレイミド基、アリル基、環状エーテル基、又は、ブロックイソシアネート基を複数分子内に含む構造を有しているため、特に良好な結果が得られたものと考えられる。
一方、比較例1では、試験片の破断強度の評価が×となっている。これは、造形材に含まれる熱硬化性モノマーが加熱されず、造形材層間で化学的な結合を形成できなかった、言い換えると造形材層間に界面部が生じてしまい、造形材層の積層方向における強度が弱くなったため、試験片の破断強度が低下したと考えられる。
また、比較例2では、試験片の破断強度の評価が×となっている。これは、最後に造形物に光を照射すると、光が造形材層の内部まで透過しないため、造形材を十分に硬化させられず、造形材層の積層方向における強度が弱くなり、試験片の破断強度が低下したと考えられる。
また、比較例3では、オーブンによる加熱を行ったため、造形材層の内部まで十分に加熱されない、すなわち造形材層間で化学的な結合を十分に形成できなかったため、造形材層の積層方向における強度が弱くなり、試験片の破断強度が低下したと考えられる。さらに、造形材層の全体が加熱されたことにより、造形材層の変形が生じて試験片の寸法精度が落ちたものと考えられる。
また、比較例4では、試験片の破断強度の評価が×となっている。これは、マイクロ波の照射により造形材が熱硬化されなかったため、造形材層間で化学的な結合を形成できず、積層方向における強度が弱くなり、試験片の破断強度が低下したと考えられる。