JP6801303B2 - 三次元造形物の製造方法、三次元造形装置、及び、造形台用部材 - Google Patents

三次元造形物の製造方法、三次元造形装置、及び、造形台用部材 Download PDF

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本発明は、三次元造形物の製造方法、三次元造形装置、及び、造形台用部材に関する。
三次元造形装置は、3Dプリンターとも呼ばれ、例えば、3次元形状の断面形状データに従って、インクジェット法を用いて造形材(モデル材)を配置し、紫外線(UV)又は電子線(EB)等により硬化することを繰り返して三次元造形物(例えば、工業製品等の部品、人形等の玩具など)を作製する装置が知られている。
三次元造形装置において、自由な形状の造形物に造形するためには、オーバーハング又は天井を形成する場合に、造形材の下部を支える支持部(サポート部)を形成するための支持材(サポート材)が必要となる。
装置の吐出ヘッドがシングルノズル(一つの組成物のみを吐出する吐出部)を有する場合、支持材(サポート材)としては、造形材と同じ材料が使用される。この場合、造形物を形成する造形材とは異なり、造形材の密度を低くして、支持部(サポート部)を造形し、後から支持部を外す手法が取られる。
装置の吐出ヘッドがマルチノズル(二つの組成物を吐出する吐出部)を有する場合、支持材(サポート材)としては、支持部(サポート部)が外れ易くなる専用の材料が使用される。
通常、造形台上に直接三次元造形物を形成する場合、造形物の接着性と剥離性のバランスを取るために、接着面に造形剤とサポート剤を一定の割合で塗り分けることが行われ、このため接着面の表面は荒れた状態になってしまう。
従来の三次元造形物の製造方法としては、特許文献1乃至3が挙げられる。
特許文献1には、光硬化可能な組成物の層を化学線に対して透明なバリヤの表面を介して化学線に露光することによって光硬化可能な組成物のフィルムを作製する方法であって、該透明バリヤの表面を該組成物に接触して位置させて該組成物との間に界面を形成する工程を含む方法において、前記光硬化可能な組成物内に前記界面と接触する阻害層を設け、露光工程中に該阻害層中の前記組成物の光硬化を阻害して任意の光硬化された組成物が前記バリヤに接着しないようにしたことを特徴とする方法、さらに下記の工程を有する方法:前記フィルムを前記界面に実質的に平行に移動して前記界面に隣接して光硬化可能な組成物の新しい層を形成し、前記創成工程及び露光工程を繰り返して以前に露光されたフィルムに並列の新しいフィルムを作製して光硬化された組成物の連続フィルムを作製する;、並びに、前記露光工程を選択的に行ってパターン化されたフィルムを作製すること、及び、さらに下記の工程を有する方法:前記フィルムを前記界面に対して実質的に直交する方向に前記界面から離れるように移動して前記界面に隣接して光硬化可能な組成物の新しい層を形成し、光硬化された材料の一連のパターン化されたフィルムに対応する複数の断面部分を有する一体化された3次元体を作製するために、前記創成工程、前記露光工程及び前記移動工程を繰り返す;が記載されている。
特許文献2には、多反応性結合剤、重合開始剤、及び充填剤を基にしたスリップであって、それぞれの場合において、該スリップの全質量と比較して:(A)5重量%〜65重量%の多反応性結合剤、(B)0.001重量%〜1.0重量%の光開始剤、及び
(C)35重量%〜90重量%の表面改質セラミック粒子、及び/または、表面改質ガラスセラミック粒子、を含有することにより特徴付けられる、スリップ、ならびに、該スリップを用いるラピッドプロトタイピングプロセスによるセラミック成形物の調製のためのプロセスが記載されている。
特許文献3には、インクジェット方式の光造形法に使用される支持体の製造方法であって、組成物全量100質量%に対して、下記成分(A)、(B)及び(C)を含有する光硬化性液状樹脂組成物をインクジェット方式により所望のパターンで射出して光硬化性液状樹脂組成物層を形成する工程1、光硬化性液状樹脂組成物層に光を照射して該光硬化性液状樹脂組成物層を硬化させる工程2、及び工程1及び工程2を含む工程を繰り返して支持体を形成する、支持体の製造方法が記載されている。
(A)ビニル基を1つ有するアクリルアミド系化合物 15〜99質量%、
(B)連鎖移動剤 0.1〜5質量%、
(C)光重合開始剤 0.5〜10質量%
特開平4−232728号公報 特開2010−031279号公報 特開2010−155889号公報
本発明が解決しようとする課題は、造形台上に直接三次元造形物を形成する場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性に優れ、三次元造形物と造形台との接合面の表面性に優れる三次元造形物の製造方法を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台を準備する工程、前記層上に、ラジカル重合性の三次元造形材をインクジェット方式により吐出する工程、並びに、吐出した前記三次元造形材を硬化する工程、を含み、前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い三次元造形物の製造方法である。
請求項2に係る発明は、
前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の三次元造形物の製造方法である。
請求項3に係る発明は、
前記重合禁止剤が、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1又は請求項2に記載の三次元造形物の製造方法である。
請求項4に係る発明は、
重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台と、ラジカル重合性の三次元造形材を収容し、前記三次元造形材をインクジェット方式により吐出する吐出部と、吐出した前記三次元造形材を硬化する光を照射する光照射部と、を備え、前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い三次元造形装置である。
請求項5に係る発明は、
前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下である請求項4に記載の三次元造形装置である。
請求項6に係る発明は、
前記重合禁止剤が、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項4又は請求項5に記載の三次元造形装置である。
請求項7に係る発明は、
基材の表面の少なくとも一部に、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を有する造形台用部材である。
請求項8に係る発明は、
前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下である請求項7に記載の造形台用部材である。
請求項9に係る発明は、
前記重合禁止剤が、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項7又は請求項8に記載の造形台用部材である。
請求項1に係る発明によれば、造形台上に直接三次元造形物を形成する場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性に優れ、三次元造形物と造形台との接合面の表面性に優れる三次元造形物の製造方法が提供される。
請求項2に係る発明によれば、前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%未満である場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れる三次元造形物の製造方法が提供される。
請求項3に係る発明によれば、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物以外の重合禁止剤を含む場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れ、メルカプト臭が抑制される三次元造形物の製造方法が提供される。
請求項4に係る発明によれば、造形台上に直接三次元造形物を形成する場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性に優れ、三次元造形物と造形台との接合面の表面性に優れる三次元造形装置が提供される。
請求項5に係る発明によれば、前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%未満である場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れる三次元造形装置が提供される。
請求項6に係る発明によれば、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物以外の重合禁止剤を含む場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れ、メルカプト臭が抑制される三次元造形装置が提供される。
請求項7に係る発明によれば、造形台上に直接三次元造形物を形成する場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性に優れ、三次元造形物と造形台との接合面の表面性に優れる造形台用部材が提供される。
請求項8に係る発明によれば、前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%未満である場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れる造形台用部材が提供される。
請求項9に係る発明によれば、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物以外の重合禁止剤を含む場合に比べ、得られる三次元造形物と造形台との剥離性により優れ、メルカプト臭が抑制される造形台用部材が提供される。
本実施形態に係る三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。 本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。 本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。 本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
<三次元造形物の製造方法>
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層(以下、「剥離層」とも称す)を表面の少なくとも一部に有する造形台を準備する工程、前記層上に、ラジカル重合性の三次元造形材をインクジェット方式により吐出する工程、並びに、吐出した前記三次元造形材を硬化する工程、を含み、前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い。
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法では、上記構成により、得られる三次元造形物と造形台との剥離性に優れ、三次元造形物と造形台との接合面の表面性に優れる。その理由は、次の通り推測される。
従来、三次元造形物を製造する場合、一般に造形台上に三次元造形物が形成されるが、造形台と形成した三次元造形物との剥離性が悪く、形成した三次元造形物において、造形台と接触した部分が造形台の表面状態を転写され表面性が低下する場合(表面が粗くなる場合)があった。
また、造形台上に、サポート材とモデル材とを混合した剥離層を形成する場合もあるが、上記場合であっても造形台と形成した三次元造形物との剥離性が十分ではなく、表面性は著しく低下した。
造形台表面に前記三次元造形材の濃度よりも高い濃度の重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層(剥離層)を有することにより、前記剥離層上に吐出されたラジカル重合性の三次元造形材を硬化する、すなわち、ラジカル重合する際に、前記剥離層と前記三次元造形材との界面近傍において、発生したラジカルが、重合禁止剤と作用することにより失活する。前記剥離層の成分と前記三次元造形材中の成分とが化学結合を形成しないため、前記剥離層を有する造形台と形成した三次元造形物との剥離力が高くならず、剥離性に優れる。
また、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法では、前記剥離層の成分と前記三次元造形材中の成分とが化学結合を形成せず、また、前記剥離層上における前記三次元造形材の濡れ性も適度であり、得られる三次元造形物における前記剥離層を有する造形台との接触部分の表面性にも優れるため、得られる三次元造形物における前記剥離層との接触部分と非接触部分との表面性の差が小さく、得られる三次元造形物の外観性や着色性に優れる。
また、得られる三次元造形物における前記剥離層との接触部分と非接触部分との表面性の差が小さいため、三次元造形物を作製する方向が自由に選択され、例えば、サポート材の使用を抑制した三次元造形物の作製方向を選択し、三次元造形物が作製される。
更に、具体的には例えば、半球状の三次元造形物を作製する場合、球の断面側を造形台側として、半球状の三次元造形物を作製することにより、サポート材を用いなくとも半球状の三次元造形物が得られるため、インクの消費が抑制される。
以下、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法では、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台を準備する工程(準備工程)、前記層上に、ラジカル重合性の三次元造形材をインクジェット方式により吐出する工程(吐出工程)、並びに、吐出した前記三次元造形材を硬化する工程(硬化工程)、を経て、三次元造形物を製造する。
(準備工程)
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法では、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台を準備する工程(準備工程)を含む。
前記剥離層は、造形台の三次元造形物を形成する面の少なくとも一部に設けられていることが好ましく、形成する三次元造形物と造形台との間に少なくとも存在するように設けられていることがより好ましい。
前記剥離層の厚さは、特に制限はないが、得られる三次元造形物と造形台との剥離性、及び、前記剥離層を繰り返し使用する観点から、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上20μm以下であることが特に好ましい。
前記剥離層の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法により形成すればよい。
中でも、得られる三次元造形物における前記剥離層を有する造形台との接触部分の表面性の観点から、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、バインダーポリマー、及び、溶媒を含む組成物を塗布し乾燥する方法が好ましく挙げられる。前記溶媒としては、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物、及び、バインダーポリマーを溶解する溶媒であれば特に制限はなく、公知の溶媒が用いられる。
前記造形台の材質は、特に制限はないが、ガラス、金属及び樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の材質であることが好ましい。
前記造形台の形状は、特に制限はなく、公知の形状の造形台が用いられる。
また、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法における前記剥離層は、造形台の表面に直接形成されていてもよいし、後述する造形台用部材を造形台上に設置することで設けてもよい。
<重合禁止剤>
前記剥離層は、重合禁止剤を含み、また、前記剥離層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い。
重合禁止剤としては、特に制限はなく、公知の重合禁止剤が用いられる。
重合禁止剤として具体的には、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、及び、p−メトキシフェノールなどのヒドロキノン化合物;p−ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、N−ニトロソジフェニルアミン、亜硝酸イソノニル、N−ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、N,N’−ジニトロソフェニレンジアミン、及び、これらの塩などのニトロソ化合物;α−フェニル−N−t−ブチルニトロン、及び、α−ナフチル−N−t−ブチルニトロンなどのニトロン化合物;2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノキシド(TEMPO)、及び、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノキシドなどのニトロキシド化合物;トリフェニルフェルダジルなどのフェルダジル化合物;3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール化合物が好ましく挙げられる。
これらの中でも、得られる三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、ニトロキシド化合物であることが更に好ましい。
重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記剥離層中における重合禁止剤の含有量は、得られる三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、前記剥離層の全質量に対し、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましく、8質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
また、前記剥離層における重合禁止剤の濃度をM、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度をMとした場合、M/Mの値は、得られる三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、2以上200以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましく、10以上50以下であることが更に好ましい。
<バインダーポリマー>
前記剥離層は、バインダーポリマーを含む。
バインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和基を有しないポリマーであることが好ましい。
バインダーポリマーとして具体的には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及び、スチレン樹脂などが挙げられる。
バインダーポリマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記剥離層中におけるバインダーポリマーの含有量は、得られる三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、前記剥離層の全質量に対し、70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、80質量%以上98質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
<他の添加剤>
前記剥離層は、前記重合禁止剤及び前記バインダーポリマー以外の他の添加剤を含有していてもよいが、他の添加剤の総含有量は、前記剥離層の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
他の添加剤としては、公知の添加剤が用いられる。
具体的には、例えば、溶剤、界面活性剤、着色剤、及び、香料等が挙げられる。
他の添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(吐出工程)
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、前記剥離層上に、ラジカル重合性の三次元造形材をインクジェット方式により吐出する工程(吐出工程)を含む。
本実施形態に用いられるラジカル重合性の三次元造形材については、後述する。
前記吐出工程に用いられるインクジェットヘッドは、特に制限はなく、公知のインクジェットヘッドが用いられる。例えば、ピエゾ型のインクジェットヘッドが挙げられる。
前記三次元造形剤の吐出温度は、特に制限はなく、使用する三次元造形剤に応じて調製される。
前記吐出工程における吐出量についても、特に制限はなく、目的とする厚さとなる量を吐出すればよい。また、必要に応じて、前記吐出は、複数回行ってもよい。
前記吐出工程においては、得られる三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、前記三次元造形材と前記造形台とが直接接しないように、前記剥離層上に、前記三次元造形材を吐出することが好ましい。
前記吐出工程における前記三次元造形材の吐出形状は、形成する三次元造形物の形状に応じて、適宜設定すればよい。
また、前記吐出工程において、前記三次元造形材だけでなく、必要に応じて、サポート材をインクジェット方式により吐出してもよい。
前記サポート材は、前記剥離層上に吐出しても、前記造形台に直接吐出してもよいが、剥離性及び前記三次元造形材との厚さ調整の容易性の観点から、前記剥離層上に吐出することが好ましい。
また、サポート材を用いる場合、サポート剤の硬化物を含む三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、前記剥離層における重合禁止剤の濃度が、前記サポート剤における重合禁止剤の濃度よりも高いことが好ましい。
また、前記剥離層における重合禁止剤の濃度をM、前記サポートにおける重合禁止剤の濃度をMとした場合、M/Mの値は、サポート剤の硬化物を含む三次元造形物と造形台との剥離性の観点から、2以上200以下であることが好ましく、5以上100以下であることがより好ましく、10以上50以下であることが更に好ましい。
本実施形態に用いられるサポート材については、後述する。
(硬化工程)
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、吐出した前記三次元造形材を硬化する工程(硬化工程)を含む。
前記硬化工程における硬化、すなわち、ラジカル重合は、前記三次元造形材の組成に応じ、光(例えば紫外線、電子線)により行っても、熱により行ってもよいが、光により行うことが好ましい。
なお、本実施形態における「光」は、特に断りのない限り、可視光線だけでなく、紫外線、電子線、及び、赤外線等も含むものとする。
前記硬化工程における硬化は、紫外線又は電子線の照射により行うことが好ましく、紫外線の照射により行うことがより好ましい。
また、前記硬化工程においては、必要に応じ、吐出した前記サポート材を硬化してもよい。前記硬化工程において、前記三次元造形材と前記サポート材は、一度に硬化してもよいし、別々に硬化してもよい。
前記硬化に使用する光照射装置としては、特に制限はなく、公知のものが用いられる。中でも、紫外線照射装置及び電子線照射装置が好ましく挙げられ、紫外線照射装置がより好ましく挙げられる。
紫外線(UV)照射装置としては、特に制限はないが、発光ダイオード(UV−LED)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、及び、メタルハライドランプ等が挙げられる。
また、電子線(EB)照射装置としては、特に制限はないが、走査型、カーテン型又はプラズマ放電型等の電子照射装置が挙げられる。
(その他の工程)
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、前記硬化工程の後、硬化した前記三次元造形材及び硬化した前記サポート材よりなる群から選ばれた硬化物上に、ラジカル重合性の三次元造形材、及び、必要に応じて、サポート材をインクジェット方式により吐出する工程、並びに、吐出した前記三次元造形材、及び、必要に応じて、吐出した前記サポート材を硬化する工程を、三次元造形物を形成するために必要な回数繰り返して行うことが好ましい。
平板状の三次元造形物を作製する場合は、前記吐出工程及び前記硬化工程のみで三次元造形物が作製されることもあるが、ある程度の高さを有する三次元造形物を作製する場合は、前記吐出工程及び前記硬化工程の後、前記2つの工程を繰り返して三次元造形物を作製することが好ましい。
前記繰り返しの回数は、特に制限はなく、作製する三次元造形物の形状に応じて、適宜設定すればよい。
サポート材を使用した場合、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、硬化した前記サポート材を除去する工程を含むことが好ましい。
サポート材の除去方法は、特に制限はなく、使用したサポート材に応じて、粉砕やウォータージェット等の機械的除去を行ってもよいし、水溶等の化学的除去を行ってもよいし、これらを組み合わせてもよい。
また、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、必要に応じて、得られた三次元造形物を洗浄する工程や、得られた三次元造形物を着色する工程を含んでいてもよい。
更に、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、その他、公知の工程を含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、前述したように、得られる三次元造形物における前記剥離層を有する造形台との接触部分の表面性にも優れるため、例えば、半球状の三次元造形物を作製する場合、球の断面側を造形台側として、半球状の三次元造形物を作製しても剥離性及び表面性に優れたものが得られ、また、サポート材を用いなくとも半球状の三次元造形物が得られる。
なお、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法は、球の断面側とは反対側を造形台側とし、サポート材を使用して、半球状の三次元造形物を作製してもよいことは言うまでもない。
<三次元造形装置>
本実施形態に係る三次元造形装置は、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台と、ラジカル重合性の三次元造形材を収容し、前記三次元造形材をインクジェット方式により吐出する吐出部と、吐出した前記三次元造形材を硬化する光を照射する光照射部と、を備え、前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い。
本実施形態に係る三次元造形装置は、本実施形態に係る三次元造形物の製造方法に好適に用いられる。
本実施形態に係る三次元造形装置における重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層、及び、造形台は、前述した本実施形態に係る三次元造形物の製造方法における重合禁止剤、バインダーポリマーを含む層、及び、造形台と同義であり、好ましい態様も同様である。
本実施形態に係る三次元造形装置における吐出部としては、インクジェット方式により吐出する吐出する吐出装置であれば、特に制限はないが、前述したインクジェットヘッドが好ましく挙げられる。
また、インクジェットヘッドの数や、インクジェットヘッドにおけるノズル数は、特に制限はなく、適宜設定すればよい。
また、本実施形態に係る三次元造形装置は、サポート材を収容し、サポート材をインクジェット方式により吐出するサポート材吐出部を備えることが好ましい。
ラジカル重合性の三次元造形材、及び、サポート材については、後述する。
本実施形態に係る三次元造形装置における光照射部としては、前記三次元造形材を硬化させる光を照射する装置であればよいが、紫外線照射装置及び電子線照射装置が好ましく挙げられる。
紫外線照射装置及び電子線照射装置としては、前述したものが好ましく挙げられる。
前記光照射部は、1つのみ有していても、2つ以上有していてもよい。
また、本実施形態に係る三次元造形装置は、吐出した前記サポート材を硬化する光を照射する光照射部を有していることが好ましい。
なお、前記三次元造形材を硬化する光照射部と、前記サポート材を硬化する光照射部とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、本実施形態に係る三次元造形装置は、サポート材を除去するサポート材除去部を備えていてもよいし、本実施形態に係る三次元造形装置とは別の装置に前記サポート材除去部を備えていてもよい。
更に、本実施形態に係る三次元造形装置は、その他、公知の装置や部材を備えていてもよい。
以下、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る三次元造形装置101は、インクジェット方式の三次元造形装置である。図1に示すように、三次元造形装置101は、例えば、造形ユニット10と、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層22を表面に有する造形台20と、を備えている。また、三次元造形装置101は、装置に脱着可能に、ラジカル重合性の三次元造形材(モデル材)を収容するモデル材カートリッジ30と、サポート材を収容するサポート材カートリッジ32と、を備えている。なお、図1中、MDは三次元造形物を示し、SPはサポート部を示す。
造形ユニット10は、例えば、モデル材の液滴を吐出するモデル材吐出ヘッド12(第1吐出部の一例)と、サポート材の液滴を吐出するサポート材吐出ヘッド14(第2吐出部の一例)と、光を照射する光照射装置16(光照射装置)とを備えている。その他、造形ユニット10は、図示しないが、例えば、造形台20上に吐出したモデル材及びサポート材のうち、余分なモデル材及びサポート材を除去し、平坦化する回転ローラを備えていてもよい。
造形ユニット10は、例えば、不図示の駆動装置により、層22を表面に有する造形台20の造形領域上を、主走査方向と、これと交差(例えば直交)する副走査方向に移動可能な方式(所謂、キャリッジ方式)となっている。
モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、各材の液滴を圧力により吐出するピエゾ方式(圧電方式)の吐出ヘッドが適用されている。各吐出ヘッドは、これに限られず、ポンプによる圧力により、各材を吐出する方式の吐出ヘッドであってもよい。
モデル材吐出ヘッド12は、例えば、モデル材カートリッジ30と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、モデル材カートリッジ30により、モデル材吐出ヘッド12へモデル材が供給される。
サポート材吐出ヘッド14は、例えば、サポート材カートリッジ32と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、サポート材カートリッジ32により、サポート材吐出ヘッド14へサポート材が供給される。
モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、有効な吐出領域(モデル材及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、層22を表面に有する造形台20の造形領域よりも小さい短尺状の吐出ヘッドとなっている。
なお、モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、例えば、有効な吐出領域(モデル材及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、層22を表面に有する造形台20上の造形領域幅(造形ユニット10の移動方向(主走査方向)と交差(例えば直交)する方向の長さ)以上とした長尺状のヘッドとしてもよい。この場合、造形ユニット10は、主走査方向のみに移動する方式とする。
光照射装置16は、モデル材及びサポート材の種類に応じて選択される。光照射装置16としては、例えば、紫外線照射装置、及び、電子線照射装置等が挙げられる。
紫外線照射装置及び電子線照射装置としては、前述したものが挙げられる。
造形台20は、モデル材及びサポート材が吐出されて造形物が形成される造形領域を有する、層22が形成された面を有している。そして、層22を表面に有する造形台20は、不図示の駆動装置により、昇降可能となっている。
次に、本実施形態に係る三次元造形装置101の動作(三次元造形物の製造方法)について説明する。
まず、不図示のコンピュータ等により、例えば、モデル材により造形する三次元造形物の三次元CAD(Computer Aided Design)データから、三次元造形用のデータとして、例えば、造形物を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)を生成する。このとき、サポート材によりサポート部を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)も生成する。サポート部を形成するための二次元形状データは、下方位置の造形物の幅より、上方位置の造形物の幅が大きく、いわゆるオーバーハングしている部分がある場合、このオーバーハング部分を下方より支持するようにサポート部が形成されるようになっている。
次に、造形物を形成するための二次元形状データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、モデル材吐出ヘッド12から、モデル材を吐出し、層22上に、モデル材の層を形成する。そして、光照射装置16により、モデル材の層へ光を照射し、モデル材を硬化し、造形物の一部となる層を形成する。
必要に応じて、サポート部を形成するための二次元データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、サポート材吐出ヘッド14から、サポート材を吐出し、層22上に、モデル材の層と隣接して、サポート材の層を形成する。そして、光照射装置16により、サポート材の層へ光を照射し、サポート材を硬化し、サポート部の一部となる層を形成する。
このようにして、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第1層LAY1を形成する(図2A参照)。ここで、図2A中、MD1は、第1層LAY1における造形物の一部となる層を示し、SP1は、第1層LAY1におけるサポート部の一部となる層を示す。
次に、層22を表面に有する造形台20を下降する。この造形台20の下降は、次に形成する第2層(造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層)の厚み分とする。
次に、第1層LAY1と同様に、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層LAY2を形成する(図2B参照)。ここで、図2B中、MD2は、第2層LAY2における造形物の一部となる層を示し、SP2は、第2層LAY2におけるサポート部の一部となる層を示す。
そして、この第1層LAY1及び第2層LAY2を形成する動作を繰り返し実施し、第n層LAYnまで形成する。これにより、少なくとも一部がサポート部でサポートされた造形物が形成される(図2C参照)。ここで、図2C中、MDnは、第n層LAYnにおける造形物の一部となる層を示す。MDは造形物を示す。SPはサポート部を示す。
その後、造形物からサポート部を除去すると、目的とする造形物が得られる。ここで、サポート部の除去は、例えば、手で取り外す方式(ブレークアウェイ方式)、気体又は液体を噴射して取り外す方式等が採用される。
なお、得られた造形物は、研磨処理等の後処理を施してもよい。
<造形台用部材>
本実施形態に係る造形台用部材は、基材の表面の少なくとも一部に、重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を有する。
また、本実施形態に係る造形台用部材は、三次元造形装置における造形台用部材として好適に用いられる。
更に、本実施形態に係る造形台用部材は、三次元造形装置における造形台上に設置して使用してもよいし、造形台自体として使用してもよい。
本実施形態に係る造形台用部材における重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層は、基材表面に有すること以外は、前述した本実施形態に係る三次元造形物の製造方法における重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層と同義であり、好ましい態様も同様である。
本実施形態に係る造形台用部材に用いられる基材としては、特に制限はないが、ガラス、金属及び樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の材質であることが好ましく、金属及び樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の材質であることがより好ましく、樹脂であることが更に好ましい。
樹脂としては、特に制限はなく、公知の樹脂が用いられる。
また、前記基材の形状としては、使用する造形台及び三次元造形装置に応じ、適宜選択すればよいが、板状、又は、シート状が好ましく挙げられ、板状がより好ましく挙げられる。なお、本実施形態において、板状とシート状との差は、板状基材は、基材端部を固定した場合、基材の自重により変形しない基材であり、シート状基材は、基材端部を固定した場合、基材の自重により変形する基材である。
前記基材の厚さとしては、10μm以上10cm以下であることが好ましく、本実施形態に係る造形台用部材を造形台上に設置する場合は、10μm以上1cm以下であることがより好ましく、10μm以上1,000μm以下であることが更に好ましい。また、本実施形態に係る造形台用部材を造形台自体とする場合は、0.5cm以上10cm以下であることがより好ましく、1cm以上10cm以下であることが更に好ましい。
本実施形態に係る造形台用部材は、前記剥離層における汚れや傷等を防止するため、前記剥離層上に更に保護フィルムを有していてもよい。
保護フィルムとしては、特に制限はなく、公知の保護フィルムが用いられるが、樹脂フィルムであることが好ましい。
保護フィルムの厚さとしては、特に制限はないが、5μm以上500μm以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る造形台用部材を三次元造形装置に設置する場合、三次元造形装置は、本実施形態に係る造形台用部材を固定する留め具及び治具等の固定具を有することが好ましい。
留め具及び治具としては、特に制限はなく、公知のものが用いられる。
本実施形態に係る造形台用部材を用いて三次元造形物を1回又は2回以上作製した後、使用した本実施形態に係る造形台用部材を新しい本実施形態に係る造形台用部材に交換し、更に三次元造形物を作製する態様が好ましく挙げられる。
三次元造形装置において、本実施形態に係る造形台用部材を交換することにより、造形台との剥離性に優れる三次元造形物が繰り返し作製される。
<<ラジカル重合性の三次元造形材(モデル材)>>
本実施形態に用いられる三次元造形材は、ラジカル重合性のものであれば、特に制限はないが、エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、エチレン性不飽和化合物、及び、光重合開始剤を含むことがより好ましい。
また、本実施形態に用いられる三次元造形材は、重合禁止剤を含んでいても、含んでいなくともよいが、含んでいることが好ましい。
更に、本実施形態に用いられる三次元造形材は、界面活性剤等のその他添加剤を含んでもよい。
(エチレン性不飽和化合物)
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物であれば、特に制限はなく、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
中でも、本実施形態に用いられる三次元造形材は、エチレン性不飽和化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
−ウレタン(メタ)アクリレート−
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を一分子内に有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーであってもよし、オリゴマーであってもよいが、オリゴマーであることがよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。また、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の双方を意味する。
ウレタン(メタ)アクリレートの官能数((メタ)アクリロイル基の数)は、2以上20以下(好ましくは2以上15以下)がよい。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレートとを用いた反応生成物が挙げられる。具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物を反応させたプレポリマーであって、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーと、水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネート化合物と、水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。
・ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、鎖状飽和炭化水素イソシアネート、環状飽和炭化水素イソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これら中でも、ポリイソシアネート化合物は、近紫外領域に光吸収帯を持たない鎖状飽和炭化水素イソシアネート、近紫外領域に光吸収帯を持たない環状飽和炭化水素イソシアネートが好ましい。
鎖状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
環状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
・ポリオール化合物
ポリオール化合物としては、例えば、ジオール、多価アルコール等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等)等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ヒドロキシル基を3個以上含有するアルキレン多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール等)が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等も挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールの多量体、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物、アルキレンオキサイドの開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと二塩基酸との反応生成物、環状エステル化合物の開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコールが挙げられる。
二塩基酸としては、例えば、カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、カルボン酸の無水物等が挙げられる。
環状エステル化合物としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアリールカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアルキルカーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
ここで、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチルジフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、4,4’−ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
・水素基含有(メタ)アクリレート
水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル基含有化合物(例えばアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等)と(メタ)アクリル酸との付加物も挙げられる。
−ウレタン(メタ)アクリレート重量平均分子量−
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量としては、500以上5,000以下が好ましく、1,000以上3,000以下がより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
−他のエチレン性不飽和化合物−
他のエチレン性不飽和化合物としては、N−ビニル基、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリロイル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
具体的には、他のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート(単官能の(メタ)アクリレート、多官能の(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、複素環を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及び
N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
多官能の(メタ)アクリレートのうち、2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールFジアクリレート等が挙げられる。
多官能の(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート変性アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
−エチレン性不飽和化合物の含有量−
エチレン性不飽和化合物の含有量は、三次元造形材全体に対して、90質量%以上99質量%以下が好ましく、93質量%以上97質量%以下が好ましい。
特に、エチレン性不飽和化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートと前記他のエチレン性不飽和化合物とを併用することが好ましい。この場合、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、三次元造形材全体に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。一方、前記他のエチレン性不飽和化合物の含有量は、三次元造形材全体に対して、40質量%以上75質量%以下が好ましく、50質量%以上65質量%以下がより好ましい。
なお、エチレン性不飽和化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤として具体例には、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等の周知の光重合開始剤が挙げられる。
−光重合開始剤の含有量−
光重合開始剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。
なお、光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、前述した重合禁止剤が好適に用いられる。
−重合禁止剤の含有量−
重合禁止剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
なお、重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の周知の界面活性剤が挙げられる。
−界面活性剤の含有量−
界面活性剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。
なお、界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(その他の添加剤)
前記以外で、その他の添加剤としては、例えば、着色剤、溶剤、増感剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)等の周知の添加剤が挙げられる。
(三次元造形材の特性)
三次元造形材の表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下の範囲が好ましく挙げられる。
なお、三次元造形材及び後述するサポート材の表面張力は、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学(株)製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値である。
三次元造形材の粘度は、30mPa・s以上50mPa・s以下の範囲が好ましく挙げられる。
ここで、三次元造形材及び後述するサポート材の粘度は、レオマット115(Contraves社製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値である。
<<サポート材>>
本実施形態に用いられるサポート材は、特に制限はなく、公知のサポート材が用いられる。
また、本実施形態に用いられるサポート材は、エチレン性不飽和化合物、及び、エチレン性不飽和結合を有しないポリマーを含むことが好ましく、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、及び、エチレン性不飽和結合を有しないポリマーを含むことがより好ましい。
更に、本実施形態に用いられるサポート材は、水等の前記エチレン性不飽和結合を有しないポリマー以外の可塑剤を含んでいてもよい。
また、本実施形態に用いられるサポート材は、前記以外に、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤等のその他添加剤を含んでもよい。
前記サポート材におけるエチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、及び、その他の添加剤の好ましい態様に関して、後述する含有量等以外については、前述した三次元造形材におけるエチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、及び、その他の添加剤における好ましい態様と同様である。
(エチレン性不飽和結合を有しないポリマー)
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーとしては、特に制限はないが、水溶性のポリマーであることが好ましい。
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの水酸基価は、サポート部の剥離性向上の点から、60mgKOH/g以上300mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以上290mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以上280mgKOH/g以下が更に好ましい。
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの水酸基価は、JIS K−0070−1992に準じて測定した値である。
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーとしては、サポート部の剥離性向上の点から、ポリエーテルポリオール、ひまし油ポリオール、及びポリエステルポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
・ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールの多量体、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物、アルキレンオキサイドの開環重合体等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
・ひまし油ポリオール
ひまし油ポリオールとしては、ひまし油を多価アルコールで変性した変性ひまし油、ひまし油脂肪酸(ひまし油から得られる脂肪酸)を多価アルコールで変性した変性ひまし脂肪酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコール等が挙げられる。
・ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと二塩基酸との反応生成物、環状エステル化合物の開環重合体等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコール等が挙げられる。
二塩基酸としては、例えば、カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、カルボン酸の無水物等が挙げられる。
環状エステル化合物としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
ここで、エチレン性不飽和結合を有しないポリマーは、上記各種ポリオールと共に、多価アルコールを併用してもよい。特に、多価アルコールは、ポリエステルポリオールと併用することがよい。つまり、非光硬化性ポリマーとしては、ポリエステルポリオールと多価アルコールとの混合物も挙げられる。
上記各種ポリオールと併用する多価アルコールの含有量は、エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの作製に使用する全モノマーに対して、30質量%以上60質量%以下(好ましくは35質量%以上50質量%以下)がよい。特に、ポリエステルポリオールと多価アルコールとの混合物を使用する場合、その質量比(ポリエステルポリオール/多価アルコール)は30/70以上10/90以下(好ましくは25/75以上20/80以下)がよい。
なお、多価アルコールは、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコール等が挙げられる。
−エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの重量平均分子量−
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの重量平均分子量としては、サポート部の剥離性向上の点から、200以上1000以下が好ましく、250以上850以下がより好ましい。
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
−エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの含有量−
エチレン性不飽和結合を有しないポリマーの含有量は、例えば、サポート材全体に対して、25質量%以上60%質量%以下がよい。特に、非光硬化性ポリマーの含有量は、サポート部の剥離性向上の点から、例えば、サポート材全体に対して、30質量%以上50質量%以下が好ましく、35質量%以上50質量%以下がより好ましく、40質量%以上45質量%以下更に好ましい。
なお、エチレン性不飽和結合を有しないポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
サポート材におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、サポート材全体に対して、40質量%以上75質量%以下が好ましく、50質量%以上65質量%以下がより好ましい。
特に、サポート材においても、三次元造形材と同様に、エチレン性不飽和化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートと前記他のエチレン性不飽和化合物とを併用することが好ましい。この場合、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、サポート材全体に対して、5質量%以上45質量%以下が好ましく、10質量%以上35質量%以下がより好ましい。一方、前記他のエチレン性不飽和化合物の含有量は、サポート材全体に対して、10質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上65質量%以下がより好ましい。
サポート材における前記エチレン性不飽和結合を有しないポリマー以外の可塑剤の含有量は、特に制限はないが、サポート材全体に対して、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
(サポート材の特性)
本実施形態に用いられるサポート材の表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下の範囲が好ましく挙げられる。
本実施形態に用いられるサポート材の粘度は、30mPa・s以上50mPa・s以下の範囲が好ましく挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」、「%」はそれぞれ、「質量部」、「質量%」を意味する。
<モデル材MA1の調製>
・ウレタンアクリレートオリゴマー:12.70質量部
(「U−200PA」新中村化学工業(株)製)
・ウレタンアクリレートオリゴマー:16.40質量部
(「UA−4200」新中村化学工業(株)製)
・アクリレートモノマー:50.40質量部
(「VEEA」(株)日本触媒製、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート)
・アクリレートモノマー:14.60質量部
(「IBXA」大阪有機化学工業(株)製、イソボルニルアクリレート)
・重合禁止剤:0.50質量部
(MEHQ(p−メトキシフェノール))
・重合開始剤:3.00質量部
(LUCIRIN TPO」BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)
・重合開始剤:1.00質量部
(Irgacure 379」BASF社製、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン)
・増感剤:1.00質量部
(ITX(2−イソプロピルチオキサントン))
・シアン顔料:1.00質量部
(「KY410−4B」大成化工(株)製)
・界面活性剤:0.20質量部
(「TEGO Wet 270」エボニック社製、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー)
上記成分を混合し、モデル材MA1を調製した。
<サポート材SA1の調製>
調製したモデル材MA1に対して、非光硬化性ポリマーとして、ポリエーテルポリオール(「アデカポリエーテルPシリーズP−400」(株)ADEKA製)を、サポート材全体に対して25質量%となる量混合して、サポート材SA1を調製した。
〔実施例1〕
<層形成用組成物の調製>
2,2,6,6−テトラメチルピぺリジニル−1−オキシル(TEMPO、東京化成工業(株)製)10部に、PCZ樹脂(ポリカーボネート樹脂、三菱瓦斯化学(株)製ユピゼータ)90部及びトルエンを添加し、固形分2%のトルエン溶液を調製した。
<三次元造形物の作製>
三次元造形装置は、インクジェットヘッドとして富士フィルムダイマティックス社製Polarisヘッド(型番:PQ512/85)を、紫外線照射光源としてINTEGRATION TECHNOLOGY LTD社製Subzero−055(100w/cmの強度)を選択し、これらを駆動部と制御部からなる造形装置に設置し、これを試験用の造形装置とした。なお、造形装置は、インクジェットヘッドと光源とが共に往復運動する方式であり、一度の走査(スキャン)毎に厚み20μmのモデル材層及び必要に応じサポート材層の積層、並びに、紫外線照射による硬化処理を行い、三次元造形物、及び、必要に応じてサポート材による支持部(サポート部)の形成を行う装置とした。また、造形装置では、モデル材及びサポート材は、遮光条件下、保存タンクから送液ポンプによりサンゴバン社製Tygon 2375耐薬チューブを経由し、日本ポール(株)製プロファイル・スター A050フィルター(ろ過精度5μm)を通過させ、異物を除去した後にインクジェットヘッドへ送液する仕組みとした。この試験用造形装置における造形台として使用するガラス基板上に、前記剥離層形成用組成物を2,000rpmでスピンコートした。
前記ガラス基板上には、約10μmの層が形成された。
前記剥離層を有するガラス基板上に、モデル材MA1を用いて、1cm角の立方体を形成した。
<剥離性評価>
引張試験機(日本電産シンポ(株)製FGS−TV)を使用して、前記剥離層を有するガラス基板上に形成した1cm角の立方体と、前記剥離層を有するガラス基板とが剥離する剥離力を測定した。
剥離力が小さいほうが、剥離性に優れる。
評価結果を表1に示す。
<平滑性評価>
AEP Technology社製段差計NanoMap−500LSを使用して、剥離性評価を行った1cm角の立方体のガラス基盤からの剥離面中央を、500ミクロンの長さに渡りスキャンし、表面粗さRa(μm)を測定した。
〔実施例2〕
TEMPOの代わりに、p−メトキシフェノール(MEHQ、東京化成工業(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔実施例3〕
TEMPOの代わりに、Genorad16(RahnAG社製)を用いた以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔実施例4〕
TEMPOの代わりに、Genorad21(RahnAG社製)を用いた以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔実施例5〕
TEMPOの量を5部、及び、PCZ樹脂の量を95部とした以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔実施例6〕
TEMPOの量を2部、及び、PCZ樹脂の量を98部とした以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔実施例7〕
TEMPOの量を10部、及び、PCZ樹脂の代わりにシクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオノア)90部、及び、テトラヒドロフランを添加し、固形分2%のテトラヒドロフラン溶液を調製した。実施例1と同様に造形台として使用するガラス基板上に、前記剥離層形成用組成物を2,000rpmでスピンコートした。前記ガラス基板上には、約10μmの層が形成された。
前記剥離層を有するガラス基板上に、モデル材MA1を用いて、1cm角の立方体を形成した。
〔比較例1〕
1cm角の立方体を、前記剥離層のないガラス基板上に直接形成した以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔比較例2〕
三次元造形装置を用いて、前記剥離層形成用組成物の代わりに、モデル材MA1及びサポート材SA1の占める面積割合が1:1になるようにランダムに吐出させ、紫外線照射により硬化を行った層(約10μm)を前記ガラス基板上に形成した以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔比較例3〕
TEMPOの量を0.5部、及び、PCZ樹脂の量を99.5部とした以外は、実施例1と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔比較例4〕
TEMPOの代わりに、MEHQを用いた以外は、比較例3と同様に1cm角の立方体を形成し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
以上から、本実施例の結果から、得られる三次元造形物と造形台との剥離性、及び、得られる三次元造形物の造形台側の部分の平滑性に優れることがわかる。
10 造形ユニット
12 モデル材吐出ヘッド
14 サポート材吐出ヘッド
16 光照射装置
20 造形台
22 重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層
30 モデル材カートリッジ
32 サポート材カートリッジ
101 三次元造形装置

Claims (6)

  1. 重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台を準備する工程、
    前記層上に、ラジカル重合性の三次元造形材をインクジェット方式により吐出する工程、並びに、
    吐出した前記三次元造形材を硬化する工程、を含み、
    前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い
    三次元造形物の製造方法。
  2. 前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の三次元造形物の製造方法。
  3. 前記重合禁止剤が、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1又は請求項2に記載の三次元造形物の製造方法。
  4. 重合禁止剤、及び、バインダーポリマーを含む層を表面の少なくとも一部に有する造形台と、
    ラジカル重合性の三次元造形材を収容し、前記三次元造形材をインクジェット方式により吐出する吐出部と、
    吐出した前記三次元造形材を硬化する光を照射する光照射部と、を備え、
    前記層における重合禁止剤の濃度が、前記三次元造形材における重合禁止剤の濃度よりも高い
    三次元造形装置。
  5. 前記層における重合禁止剤の含有量が、前記層の全質量に対し、5質量%以上20質量%以下である請求項4に記載の三次元造形装置。
  6. 前記重合禁止剤が、ヒドロキノン化合物及びニトロキシド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項4又は請求項5に記載の三次元造形装置。
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