JP6439116B2 - 煮干魚の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オリーブ葉を用いる煮干魚の製造方法に関する。
小魚を用いた煮干しは、出汁(だし)をとるための食材等として従来より用いられており、地方によってイリコ、だしじゃこ等の様々な呼び名がある。煮干しは、例えばカタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、イカナゴ、アジ、サバ、トビウオ(あご)等の小魚を加工することによって製造されている。
このような加工方法としては、鮮度の高い生魚を煮熟処理した後、乾燥処理する方法が基本であるが、さらに旨みの改善、生臭さの低減等を目的として様々な処理方法が提案されている。例えば、コンブの抽出物、アミノ酸液または魚貝類の抽出物である調味液内で原料魚を煮熟処理後乾燥することを特徴とする煮干魚類の製造方法が提案されている(特許文献1)。
また例えば、過熱蒸気を用いて、多獲性小型魚類を連続的に蛋白変性と予備乾燥を行いながら、次いで、本乾燥を行うことにより、魚体がまっすぐで身割れや皮禿げがないなどの外観に優れ、また、可溶性固形分の含有量が高い多獲性小型魚類加工品を得ることを特徴とする多獲性小型魚類加工品の製造方法が提案されている(特許文献2)。
その他にも、99℃から120℃までの範囲の水蒸気を魚類に付与して蒸す加熱工程と、前記蒸された魚類を乾燥させる乾燥工程とを含むことを特徴とする水産加工食品の製造方法が知られている(特許文献3)。
これに対し、先に、本発明者らは、オリーブ葉を用いて生魚を煮熟することによって魚臭を低減する方法を提案している(非特許文献1)。この報告では、処理水に対して1重量%以上のオリーブ葉を処理水に混合することにより、1−ペンテン−3−オール等の臭い成分を低減できるとされている。
特開平11−313640号公報 特開2006−262827号公報 特開2011−25号公報
「乾燥オリーブ葉を活用した煮干しの高品質化(第1報)」平成25年度研究報告書 香川県産業技術センター(2014年6月)
しかしながら、オリーブ葉を用いる前記方法では、1重量%以上という比較的多量のオリーブ葉を用いて1−ペンテン−3−オール等を低減できることが示されているが、魚臭の主要な臭気成分であるトリメチルアミンの抑制効果が未確認であるうえ、生臭さを解消するためには他の成分も効果的に低減させることが必要であり、この点においてなお改善の余地が残されている。
従って、本発明の主な目的は、効果的に魚臭が低減され、かつ、苦味も少ない煮干魚の製造方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の処理工程を採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の煮干魚の製造方法に係る。
1. 生魚から煮干魚を製造する方法であって、
(1)水100重量部及びオリーブ葉0.1〜0.5重量部を含む混合液又はその抽出液に生魚を浸漬しながら加熱下で煮熟処理することにより煮熟魚を調製する工程、
(2)前記煮熟魚を回収した後、乾燥させることにより煮干魚を得る工程
を含むことを特徴とする、煮干魚の製造方法。
2. 前記オリーブ葉が、最長径5mm以下の粉砕物の形態である、前記項1に記載の製造方法。
3. 前記混合液又はその抽出液にさらに塩化ナトリウムが含まれる、前記項1又は2に記載の製造方法。
4. 加熱処理が煮沸下にて実施される、前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
5. 水100重量部に対し、生魚1〜5重量部を浸漬する、前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
6. 煮干魚の水分含有量が15重量%以下となるように前記乾燥を実施する、前記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
7. 1)酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸及びデカン酸の少なくとも1種のカルボン酸、2)トリメチルアミンならびに3)ヘキサナールを低減させる、前記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、より効果的に魚臭を低減できる煮干魚を提供することができる。より具体的には、比較的少量のオリーブ葉の使用により、トリメチルアミン及びヘキサナールによる臭いだけでなく、酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸等のカルボン酸による臭いも低減させることにより、結果として未処理の場合よりも煮干魚特有の不快臭を減らすことができる。
その一方で、オリーブ葉の使用量が少なくて済むので、コスト的にも有利となる。しかも、オリーブ葉の香り成分及び苦み成分を魚にほとんど移すことがないので、オリーブ葉特有の臭い及び苦みを回避でき、煮干魚本来の香ばしさ等を保持することができる。また、本発明の製造方法によって得られた煮干魚は、丸ごと食べた場合でも内臓部分の苦味が抑制されている。このため、たとえ頭部及び内臓部分の除去処理を行わなくても、苦味が抑制された「だし」をつくることができる。
このような製造方法で得られた煮干魚は、そのまま食材として使用できるほか、「だし」をはじめとして、その他の各種の調味料の原料として好適に用いることができる。また、頭部及び内臓部分の除去処理及び/又は苦み成分の除去処理を行わなくても、苦味が抑制された「だし」を提供できることから、だし、調味料等の工業的規模での生産にも最適である。
実施例1及び比較例1の煮干魚について、におい嗅ぎ装置付きGC−MS分析を行った結果を示すグラフである。図1中、上図は比較例1を示し、下図は実施例1を示す。 実施例2及び比較例1の煮干魚について、味覚センサーによる評価を行った結果を示すグラフである。 実施例2及び比較例1の煮干魚について、オリーブ葉処理による腹部の着色抑制効果の評価を行った結果を示す写真である。図3中、左側は比較例1を示し、右側は実施例2を示す。
本発明の製造方法は、生魚から煮干魚を製造する方法であって、
(1)水100重量部及びオリーブ葉0.1〜0.9重量部を含む混合液又はその抽出液に生魚を浸漬しながら加熱下で煮熟処理することにより煮熟魚を調製する工程(煮熟工程)、
(2)前記煮熟魚を回収した後、乾燥させることにより煮干魚を得る工程(乾燥工程)
を含むことを特徴とする。
煮熟工程
煮熟工程では、水100重量部及びオリーブ葉0.1〜0.9重量部を含む混合液又はその抽出液に生魚を浸漬しながら加熱下で煮熟処理することにより煮熟魚を調製する。
出発原料として用いる生魚は、特に限定されず、従来より煮干しとして加工されている魚類であればいずれも適用することができる。例えば、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、イカナゴ、アジ、サバ、トビウオ等を挙げることができる。特に、本発明では、特有の魚臭を有するカタクチイワシをはじめとするイワシ類を好適に用いることができる。また、いずれの大きさの生魚であっても良い。例えば、カタクチイワシは、その大きさにより大羽(大きさ約8cm以上)、中羽(大きさ約6〜8cm)、小羽(大きさ約4〜6cm)、かえり(大きさ約3〜4cm)、ちりめん(大きさ約1〜3cm)に分類されるが、いずれの大きさのものにも適用することができる。
生魚は、水100重量部及びオリーブ葉0.1〜0.9重量部を含む混合液又はその抽出液(以下、両液はまとめて「処理液」ともいう。)に浸漬する。
なお、浸漬に先立って、生魚を水洗しても良い。また、捕獲後は、水洗及び鮮度保持を目的として、煮熟工程まで生魚を氷水等の冷水に浸漬しておいても良い。
処理液で用いるオリーブ葉は、その品種は特に限定されず、いずれも使用することができる。また、オリーブ葉は、採取直後のものでも良いし、乾燥処理されたものであっても良い。乾燥処理されたもの(乾燥オリーブ葉)は、市販品を用いることもできる。
オリーブ葉は、未粉砕品又は粉砕品のいずれも使用することができる。例えば、最長径5mm以下の粉砕物の形態でも好適に用いることができる。粉砕物の形態とすることにより、オリーブ葉に含まれる成分(ポリフェノール等)をより効率的に抽出することが可能となる。粉砕方法は、特に限定されず、例えばシュレッダー(裁断機)、乳鉢等の公知又は市販の装置を用いて実施することができる。
処理液は、水をそのまま使用することができるが、塩水を使用しても良い。塩水を使用することにより、頭部の切断(首折れ)、表面の鱗の剥離等を防ぎ、外観の良い煮干魚の製造が可能になる。塩水を用いる場合の濃度(塩化ナトリウム濃度)は限定的ではないが、通常は1〜10重量%程度とし、特に5〜8重量%とすることが好ましい。
本発明の製造方法では、処理液としては、オリーブ葉及び水を含む混合液の形態で用いることができる。この場合、オリーブ葉又はその粉砕物を水に分散させる方法を採用することができるが、オリーブ葉又はその粉砕物をメッシュ袋等の通水性容器に収容し、その通水性容器ごと水に浸漬する方法を採用することが好ましい。このような方法を採用することによって、例えば煮干魚に付着したオリーブ葉を除去する工程等の後工程を省くことができる。
また、処理液として、オリーブ葉の抽出液を用いることもできる。抽出液は、オリーブ葉又はその粉砕物を水に浸漬し、1〜30分程度加熱することによって調製することができる。この場合の加熱温度は、通常は80〜100℃(特に100℃)とすれば良い。
煮熟処理の条件は、特に限定されないが、一般的には80〜100℃(特に90〜100℃)の温度で処理液を加熱すれば良い。加熱時間は、通常1〜30分の範囲内において、生魚の種類、大きさ等に応じて適宜設定することができる。
処理する生魚の使用量は限定的ではないが、通常は水100重量部に対し、生魚1〜5重量部程度とすれば良い。上記範囲に設定することにより、よりいっそう効率的に処理することができる。
乾燥工程
乾燥工程では、前記煮熟魚を回収した後、乾燥させることにより煮干魚を得る。処理液から煮熟魚を取り出した後、乾燥させる。
本発明では、乾燥方法は、自然乾燥(天日干し等も含む。)又は強制乾燥(機械乾燥)のいずれであっても良いが、機械乾燥を好適に採用できる。例えば、煮熟魚を乾燥機に導入することによって一定の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥機自体は公知又は市販のものを使用することができる。強制乾燥する場合は、乾燥温度40〜50℃の範囲内とすることが好ましい。このような温度範囲で乾燥することによって、例えば頭部の切断(首折れ)、表面の鱗の剥離等を防ぎ、外観の良い煮干魚の製造が可能になるというメリットが得られる。
乾燥の程度は限定的ではないが、通常は得られる煮干魚の水分含有量が15重量%以下(好ましくは13重量%以下)となるように実施すれば良い。これにより、より良好な状態で保存することができる。
このように乾燥工程を経た後、本発明の煮干魚を得ることができる。得られた煮干魚は、公知の方法に従って小分け包装したり、あるいは冷蔵又は冷凍保存することができる。また、公知の加工方法に従って加工等を施すこともできる。
本発明の製造方法によって得られた煮干魚は、頭部及び内臓部分も含めて全体的に魚特有の不快臭が低減されている。特に、1)酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸及びデカン酸の少なくとも1種のカルボン酸、2)トリメチルアミンならびに3)ヘキサナールによる臭いが軽減されている。すなわち、一般的に生臭さの原因であるトリメチルアミン等だけでなく、酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸及びデカン酸の少なくとも1種のカルボン酸による不快臭も軽減されている。しかも、本発明による煮干魚は苦味も効果的に抑制されている。このため、一般に必要とされている頭部及び内臓部分の除去処理及び/又は苦み成分の除去処理を行わなくても、従来よりも不快臭及び苦味が抑えられた煮干魚、ひいては不快臭及び苦味が抑えられただし及び調味料の加工食品を効率良く提供することができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
実施例1
原料として用いる生魚は、香川県伊吹島周辺で捕獲されたカタクチイワシ(体長4cm以上)を用いた。捕獲されたカタクチイワシの鮮度が落ちないうちにセイロ(上下に12段の金網が積層配置された棚)の金網上に静置した。
一方、煮熟処理するための処理液は、直方体のステンレス鋼製水槽(煮釜)に800kgの7%塩水を充填し、煮沸する前にオリーブ葉を塩水に投入した。オリーブ葉としては、株式会社ヤマヒサから販売されている乾燥オリーブ葉を市販のシュレッダーに2回通して得られた粉砕物(最長径が約5mm以下)を用いた。投入に際しては、前記粉砕物が塩水中に多量に分散しないように、予めメッシュ袋に入れ、メッシュ袋入り粉砕物として塩水に投入した。この際のオリーブ葉の添加量は、上記塩水に対して0.1重量%(約0.8kg)とした。
前記処理液にセイロごと浸漬し、上記のようにメッシュ袋入り粉砕物を投入した後、塩水を沸騰させて3〜4分間かけて煮熟処理を行った。その後、直ちに煮熟処理されたカタクチイワシを乾燥機に導入し、約43〜45℃の温度管理下で17〜24時間乾燥処理を行った。このようにして、煮干しされたカタクチイワシを得た。
実施例2
オリーブ葉の添加量を上記塩水100重量部に対して0.5重量%(約4.0kg)としたほかは、実施例1と同様にして煮干しされたカタクチイワシを得た。
比較例1
オリーブ葉を添加しなかったほかは、実施例1と同様にして煮干しされたカタクチイワシを得た。
試験例1(煮干魚の臭気に関する官能検査)
実施例1及び比較例1の煮干魚の臭気の官能検査を実施した。官能検査は、検査員が別々のポリ袋に入っている各々の煮干から発生する臭いを嗅ぎ、煮干魚特有の魚臭が少ない方を選択する2点識別法により行った。5人の検査員で1人が2回繰り返し行うことで10人の検査員が評価したものとして扱った。有意差判定は、10人中9人以上が選んだ場合、危険率5%で有意差ありとした。
その結果、10名中9名が、煮干魚特有の魚臭を弱く感じる検体として実施例1の煮干魚を選択した。これらの結果より実施例1の煮干魚は、比較例1の煮干しに比べて危険率5%で臭気抑制効果に有意差があることが示された。前記の非特許文献1の報告よりもはるかに少ない1/10量でも煮干魚の臭気を抑制する効果が認められた。また、少ないオリーブ葉使用量で煮干しの臭気抑制効果が認められ、製造コストの低減化が期待される。
試験例2(におい嗅ぎ装置付きGC−MS分析)
実施例1及び比較例1の煮干魚についてGC−MS分析を行った。魚体の部位に損傷のない完全な状態の煮干魚8〜10個体をミキサーで粉末化し、各々0.2gをヘッドスペース用クリンプバイアル容器(容量22mL)に入れて密封し、表1に示すようなヘッドスペース条件によりGC/MSに導入した。GC/MSの条件は表2に示す。その測定結果を図1に示す。
図1に示すように、実施例1の煮干魚(オリーブイリコ)は、比較例1の煮干魚(通常のイリコ)と比較すると、トリメチルアミン(腐った魚臭)及びヘキサナール(油臭)のほか、酢酸(酢の臭い)、ブタン酸(汗の臭い)、ヘキサン酸(汗の臭い)、オクタン酸(動物臭)及びデカン酸(動物臭)の各ピークの大きさが低くなっており、試験例1の結果と併せて考えると、これらのカルボン酸も魚臭の低減に寄与していることがわかる。すなわち、前記の官能検査の結果(実施例1の結果)は、酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸及びデカン酸の低減も貢献していると考えられる。
試験例3(煮干魚の苦味評価)
実施例1及び比較例1で得られた煮干魚を用い、頭部及び内臓部分の除去処理を行うことなく、まるごと食べた場合の苦味の違いを官能評価した。
<官能検査>
実施例1及び比較例1の煮干魚の苦味に関して実施した。官能検査は、検査員が2種類の煮干を各々口に入れて咀嚼をした際に舌で感じる苦味が少ない方を選択する2点識別法により行った。5人の検査員で1人が2回繰り返し行うことで10人の検査員が評価したものとして扱った。有意差判定は、10人中9人以上が選んだ場合、危険率5%で有意差ありとした。
その結果、10名中10名が、実施例1の煮干魚が比較例1の煮干魚に対して苦味を弱く感じると判定した。これらの結果より実施例1の煮干魚は、比較例1の煮干魚に比べて危険率5%で苦味が低減されていることが確認された。すなわち、本試験例3の結果から、オリーブ葉0.1重量%の処理を行うことにより煮干魚の苦みが抑制されることがわかる。このことから、商品として「食べるイリコ」と呼ばれる製品が販売されているが、本発明ではより苦みの少ない「食べるイリコ」として差別化した製品として提供することが可能といえる。
試験例4(煮干魚の苦味評価)
実施例2及び比較例1で得られた煮干魚を用い、頭部及び内臓部分の除去処理を行うことなく、まるごと食べた場合の苦味の違いを官能評価した。
<官能検査>
実施例2及び比較例1の煮干魚の苦味に関して官能検査を実施した。官能検査は、検査員が2種類の煮干魚を各々口に入れて咀嚼をした際に舌で感じる苦味が少ない方を選択する2点識別法により行った。5人の検査員で1人が2回繰り返し行うことで10人の検査員が評価したものとして扱った。有意差判定は、10人中9人以上が選んだ場合、危険率5%で有意差ありとした。
その結果、10名中10名が、実施例2の煮干魚が比較例1の煮干魚に対して苦味を弱く感じると判定した。これらの結果より実施例2の煮干魚は、比較例1の煮干魚に比べて危険率5%で苦味が低減されていることが確認された。すなわち、本試験例4の結果から、オリーブ葉0.5重量%の処理を行うことにより煮干魚の苦みが抑制されることがわかる。
試験例5(煮干魚の「だし」の苦味評価)
実施例2及び比較例1で得られた煮干魚を用い、だし製造工場における実プラント装置で「だし」を調製し、得られたイリコ「だし」の苦味の違いを評価した。
(1)だしの調製
2種類の煮干魚は、頭部と内臓部分を除去することなく、各々80kgの煮干をステンレス鋼製の加圧容器に投入し、全体の容量が600リットルになるまで加水し、一晩「だし」成分を水で抽出した。その後、前記容器を密閉し、1kg/cmの蒸気で60分間加圧、続いて0.6kg/cmの蒸気で30分間加圧することにより煮干のエキスを抽出した。この操作で得られる抽出液を別のステンレス鋼製容器に回収し、約500リットルの「だし」を得た。
(2)だしの評価
上記(1)で得られた「だし」について、以下のような官能検査と味覚センサーによる評価とを実施した。
(2−1)官能検査
実施例2及び比較例1の煮干魚から調製した「だし」の苦味に関して官能検査を実施した。官能検査は、検査員が2種類の「だし」を各々口に含んだ際に舌で感じる苦味が少ない方を選択する2点識別法により行った。5人の検査員で1人が2回繰り返し行うことで10人の検査員が評価したものとして扱った。有意差判定は、10人中9人以上が選んだ場合、危険率5%で有意差ありとした。
その結果、10名中9名が、「だし」の苦味を弱く感じる検体として実施例2の煮干魚から調製した「だし」を選択した。これらの結果より、実施例2の煮干魚の「だし」は、比較例1の煮干魚の「だし」に比べて危険率5%で苦味が低減されていることが確認された。
一般に、家庭では、煮干魚から「だし」を調製する場合、苦味及び雑味を少なくするために煮干魚を二枚に割いて内臓部分と頭部を除去したものを用いることにより、苦み・雑味の少ない「だし」を調製することができるが、この作業は非常に手間がかかる。また、工業的に「だし」を加工する工場においては、大量の煮干魚を使用するため、内臓部分及び頭部の除去処理を行わずに加圧処理することにより煮干魚の「だし」を調製する方法が一般的であることから、苦みの強い「だし」となるおそれがあるため、精密膜ろ過による苦み成分の除去操作を組み込んでいる場合もある。これに対し、本発明の製造方法による煮干魚を用いれば、内臓部分及び頭部の除去処理を行わなくても、工業的に苦みの少ない「だし」を調製することが可能となる。また、精密膜ろ過等による苦み成分の除去操作が不要となるため、製造コストの軽減化に寄与することができる。
(2−2)味覚センサーによる評価
5種類の味覚センサー(「味認識装置SA402B」株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を用い、上記(1)だしの調製で記載した実施例2及び比較例1の煮干魚から調製した「だし」の味覚特性を測定した。その結果を図2に示す。なお、具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
試料液にセンサーを浸漬し、食品を口に含んだ瞬間の「先味」(苦味雑味、渋味刺激)と食品を飲み込んだ後の「後味」(苦味、渋味)の2種類を評価した。試料液と基準液(30mM KCL,0.3mM酒石酸)との電位差を先味、その後センサーを基準液で軽く洗浄し、基準液中に浸漬して再度測定した時の電位と基準液の電位との差を後味として測定した。各センサーの電位データを装置に付属したソフトウェアにより補正、数値変換して各味の強度として表し、最終的に味の強度とバランスによって味の特性を評価した。なお、3回の測定値を用いて解析を行った。酸味については、測定値が全て下限を下回ったため解析時にグラフから削除した。
図2の結果からも明らかなように、実施例2の「だし」は、比較例1の「だし」を基準にして補間差分法により解析した結果、先味として感じる苦味雑味と渋味刺激は基準の値に対してマイナス側にシフトした。また、後味として感じる苦味と渋味も基準の値に対してマイナス側にシフトした。すなわち、味覚センサーによる評価においても実施例2の「だし」は、先味の苦味雑味と渋味刺激、後味の苦味と渋味が軽減されていることが明らかとなり、前記の試験例3及び試験例4の結果を支持するものであった。
試験例6(煮干魚の変色抑制評価)
オリーブ葉の変色抑制効果を評価するため、実施例2と比較例1の煮干魚の腹部の色調を観察した。その結果を図3に示す。図3中、左は0%オリーブ葉処理(通常のイリコ)、右は0.5%オリーブ葉処理(オリーブイリコ)を示す。
図3に示すように、比較例1の煮干魚は腹部が強く赤褐色を帯びていることがわかる。これは、カタクチイワシが海老等の甲殻類を捕食し、その色素が作用したためである。このように赤褐色を帯びた場合、外観的な面で商品価値が下がる。これに対し、実施例2の煮干魚は、そのような変色がわずかであることから、本発明の製造方法により煮干魚の変色が抑制されていることがわかる。このような変色抑制効果の作用機序は定かではないが、オリーブ葉に含まれるポリフェノール成分の作用によるものと考えられる。この結果から、本発明の製造方法により、外観的にも商品価値の高い煮干魚を提供できることがわかる。

Claims (7)

  1. 生魚から煮干魚を製造する方法であって、
    (1)水100重量部及びオリーブ葉0.1〜0.5重量部を含む混合液又はその抽出液に生魚を浸漬しながら加熱下で煮熟処理することにより煮熟魚を調製する工程、
    (2)前記煮熟魚を回収した後、乾燥させることにより煮干魚を得る工程
    を含むことを特徴とする、煮干魚の製造方法。
  2. 前記オリーブ葉が、最長径5mm以下の粉砕物の形態である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記混合液又はその抽出液にさらに塩化ナトリウムが含まれる、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 加熱処理が煮沸下にて実施される、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 水100重量部に対し、生魚1〜5重量部を浸漬する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 煮干魚の水分含有量が15重量%以下となるように前記乾燥を実施する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 1)酢酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸及びデカン酸の少なくとも1種のカルボン酸、2)トリメチルアミンならびに3)ヘキサナールを低減させる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
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