以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態における搬送車1の側面図であり、図1(b)は、搬送車1の上面図である。
搬送車1は、図1に示す通り、車体2と、荷台3と、走行装置4と、運転室5とを有する大型搬送車である。図1における矢印U−Dは搬送車1の上下方向を、矢印L−Rは搬送車1の左右方向を、矢印F−Bは、搬送車1の前後方向をそれぞれ示しており、図2〜4も同様とする。
荷台3は、車体2上に配設され搬送物を積載するための台である。走行装置4は、荷台3の下方に複数配設され、運転室5からの運転指示に応じて、搬送車1を走行させるための装置である。本実施形態において走行装置4は、搬送車1の前後方向に4列配設され、各列に2つずつ設けられる。以下、搬送車1の前後方向における、前端側の走行装置4の位置のことを「1列目」、前後方向中央より前方側(即ち1列目より後方側)の走行装置4の位置のことを「2列目」、前後方向中央より後方側の走行装置4の位置のことを「3列目」、後端側(即ち3列目より後方側)の走行装置4の位置のことを「4列目」とそれぞれ称す。
走行装置4は、車輪4aと、マキシチャンバ4bとを有している。なお、走行装置4のその他の構成は周知であるので、説明は省略する。本実施形態において、車輪4aは1の走行装置4に対して左右方向に2つ配設される。1列目の一対の走行装置4と、4列目の一対の走行装置4とにはマキシチャンバ4bが配設される。また、2列目左側の走行装置4と、3列目右側の走行装置4とにもマキシチャンバ4bが配設される。マキシチャンバ4bは、車輪4aを制動させるブレーキシュー(図示せず)を制動側または非制動側に動作させるための装置である。
マキシチャンバ4bは周知技術のため、詳細な説明は省略するが、その内部にはヘッド側室とロッド側室とが設けられる。本実施形態においては、ヘッド側室またはロッド側室への圧縮空気の供給または排出を制御するため、マキシチャンバ4bのヘッド側室には後述のリレーバルブ6が接続され、ロッド側室には後述のクイックリリースバルブ7が接続される。
運転室5は、搬送車1の前端と後端とにそれぞれ配設され、作業員による荷台3に対する昇降指示や走行装置4に対する運転や制動の指示等を行うための制御室である。
荷台3の下方であって、マキシチャンバ4bが配設された走行装置4と隣接する位置には、マキシチャンバ4bのヘッド側室への圧縮空気の供給または排出を制御するためのリレーバルブ6と、マキシチャンバ4bのロッド側室への圧縮空気の供給または排出を制御するためのクイックリリースバルブ7とが配置される。
具体的には、1列目の一対の走行装置4の間に、リレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7が1つずつ配設される。かかるリレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7は、1列目の一対のマキシチャンバ4bのヘッド側室およびロッド側室とそれぞれ接続される。また、4列目の一対の走行装置4の間にも、リレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7が1つずつ配設される。かかるリレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7は、4列目の一対のマキシチャンバ4bのヘッド側室およびロッド側室とそれぞれ接続される。即ち、1列目または4列目における一対のマキシチャンバ4bにおいては、それぞれ1つのリレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7が共有して用いられる。
一方で、2列目左側の走行装置4に隣接する搬送車1の左端には、リレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7が配設される。かかるリレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7は、2列目左側のマキシチャンバ4bのヘッド側室およびロッド側室とそれぞれ接続される。また、3列目右側の走行装置4に隣接する搬送車1の右端には、リレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7が配設される。かかるリレーバルブ6及びクイックリリースバルブ7は、3列目右側のマキシチャンバ4bのヘッド側室およびロッド側室とそれぞれ接続される。
リレーバルブ6は、マキシチャンバ4bのヘッド側室および空気タンク(図示せず)に接続されるバルブである。走行中の搬送車1において、運転室5に設けられたブレーキペダル(図示せず)の踏力に応じて、リレーバルブ6は空気タンクの圧縮空気をマキシチャンバ4bのヘッド側室へ供給、もしくはマキシチャンバ4bのヘッド側室の圧縮空気を排出させる。これにより、マキシチャンバ4bに接続されたブレーキシューが制動側または非制動側に動作されるので、車輪4aへの制動力が制御される。
クイックリリースバルブ7は、マキシチャンバ4bのロッド側室および空気タンクに接続されるバルブである。パーキングブレーキを使用する場合は、クイックリリースバルブ7によってマキシチャンバ4bのロッド側室の圧縮空気を急速に排出させる。これにより、マキシチャンバ4bに接続されたブレーキシューが急速に制動側に動作されるので、搬送車1に対してパーキングブレーキがかけられる。一方、パーキングブレーキを解除する場合は、クイックリリースバルブ7によって空気タンクの圧縮空気をマキシチャンバ4bのロッド側室に供給させる。これにより、ブレーキシューが非制動側に動作されるので、搬送車1のパーキングブレーキが解除される。ここで、図2を参照して、クイックリリースバルブ7について説明する。
図2(a1)は、図1(b)のIIa1−IIa1線における搬送車1の部分拡大断面図であり、図2(a2)は、図2(a1)の矢印IIa2方向視におけるクイックリリースバルブ7及び風向変更部材9の側面図であり、図2(b1)は、図1(b)のIIb1−IIb1線における搬送車1の部分拡大断面図であり、図2(b2)は、図2(b1)の矢印IIb2方向視におけるクイックリリースバルブ及び風向変更部材9の側面図である。なお、1列目の一対のマキシチャンバ4bと接続される搬送車1の前端側のクイックリリースバルブ7(以下「前端側のクイックリリースバルブ7」等と略す)と、4列目の一対のマキシチャンバ4bと接続される搬送車1の後端側のクイックリリースバルブ7とは、それぞれ同一の構成(搬送車1の前後方向および左右方向の中心に点対称)であるので、以下では、前端側のクイックリリースバルブ7についてのみの説明とする。
同様に、2列目左側のマキシチャンバ4bと接続される搬送車1の前後方向中央より左前方側のクイックリリースバルブ7と、3列目右側のマキシチャンバ4bと接続される搬送車1の前後方向中央より右後方側のクイックリリースバルブ7(以下「右後方側のクイックリリースバルブ7」等と略す)とは、それぞれ同一の構成(前後方向および左右方向の中心に点対称)であるので、以下では、右後方側のクイックリリースバルブ7についてのみの説明とする。
クイックリリースバルブ7は、図2に示す通り、本体部7aと、本体部7aの上部に配設される第1ポート7bと、本体部7aの左右それぞれに配設される第2ポート7cと、本体部7aの下部に配設される排気口7dとで構成される。クイックリリースバルブ7は、車体2に垂設される当て板8に固定される。
第1ポート7bは、空気管を介して空気タンクと接続され、空気タンクの圧縮空気を本体部7aに供給するための部材である。第2ポート7cは、空気管を介して本体部7aとマキシチャンバ4b(図1(b)参照)とを接続するための部材である。本体部7aに供給された圧縮空気が、第2ポート7cを介してマキシチャンバ4bのロッド側室に供給される。一方、マキシチャンバ4bのロッド側室の圧縮空気が第2ポート7cから本体部7aへ排出される。
排気口7dは、第2ポート7cを介して本体部7aに排出された圧縮空気を、大気中に排出するための部材であり、搬送車1の下方側(即ち鉛直方向側)に向けられる。
本体部7aには更に、第1ポート7bと第2ポート7cとの接続と、第2ポート7cと排気口7dとの接続とを切り替える弁体であるスプール弁(図示せず)が内蔵される。このスプール弁によって、第1ポート7bと第2ポート7cとが接続された場合は、第1ポート7bと第2ポート7cとを介してマキシチャンバ4bのロッド側室に圧縮空気が供給される。これにより、ブレーキシューが非制動側に動作される。
一方、スプール弁によって、第2ポート7cと排気口7dとが接続された場合は、マキシチャンバ4bのロッド側室の圧縮空気が、第2ポート7cと排気口7dを介して急速に大気中へ排出される。これにより、マキシチャンバ4bに接続されたブレーキシューが急速に制動側に動作されるので、搬送車1に対してパーキングブレーキがかけられる。
ところで、排気口7dは搬送車1の下方側、即ち搬送車1が走行する路面側に向けられる。これは、スプール弁に対する重力の影響を避けるためである。例えば、排気口7dを左または右向き(即ち水平方向)にした場合は、重力によってスプール弁の位置が第1ポート7bの方向へズレてしまう。こうなると、第1ポート7bと第2ポート7cとの接続状態、または排気口7dと第2ポート7cと排気口7dとの接続状態にもズレが生じてしまい、これら接続状態を適切に切り替えることができなくなるからである。また、排気口7dを路面側に向けることで、排気口7dからのゴミの侵入も防止される。
このように、排気口7dは路面側を向けられているので、排気口7dから排出される圧縮空気によって路面上に堆積した粉塵が舞い上がり、搬送車1周辺の作業環境が悪化してしまう。そこで、それぞれのクイックリリースバルブ7の下部には、排気口7dからの圧縮空気を遮る風向変更部材9が配設される。風向変更部材9は、下板9aと、背面板9bとで主に構成される。また詳細は後述するが、風向変更部材9と最も近い運転室5との位置関係に応じて、風向変更部材9に右側板9cも追加して構成される。まず、図2(a1),図2(a2)を参照して、前端側の風向変更部材9を説明する。
前端側の風向変更部材9の下板9aは、排気口7dの圧縮空気の排出方向(即ち矢印Dの方向)において排気口7dに対向配置され、クイックリリースバルブ7からの路面側の排気を遮るための板状の部材である。下板9aの大きさは、下板9aによって、圧縮空気が路面に吹き付けられるのを抑制できる程度の大きさとされる。特に、下板9aは、排気口7dの大きさ(即ち排気口7dの口径の大きさ)よりも、大きな寸法で形成されるのが好ましい。これにより、下板9aによって排気口7dからの圧縮空気がより効果的に遮断されるので、路面上の粉塵が舞い上がるのを抑制できる。
背面板9bは、下板9aの前方側の外縁から、排気口7dからの排出方向に対して立設される板状の部材である。背面板9bの上端の位置は排気口7dよりも高く設定される。また、背面板9bの上部は、車体2に垂設される当て板8とねじ止めされ、これによって、風向変更部材9は当て板8及び車体2に固定される。
排気口7dから吹き出され、下板9aで遮断された圧縮空気は下板9a上で拡散される。この拡散された圧縮空気の流れのうち、下板9aの前方側の圧縮空気の流れが背面板9bによって遮断される。これにより、背面板9bによって、風向変更部材9の車体2への固定と、下板9aの前方側の圧縮空気の流れの遮断とを両立できる。
ここで、排気口7dからの圧縮空気が運転室5の外壁に吹き付けられると、圧縮空気が運転室5の外壁に沿って路面側に流れる。更に、パーキングブレーキが搬送車1の車高を下げた状態でかけられると、排気口7dが路面側に近づくので、その分運転室5の外壁に沿って路面側に流れる圧縮空気の強さも強くなる。これによって、運転室5側に路面上の粉塵が舞い上がってしまう。これに対して、本実施形態における風向変更部材9は、運転室5が位置する方向に背面板9bが立設されるので、排気口7dからの圧縮空気が運転室5側に流れるのを抑制できる。これにより、圧縮空気が運転室5の外壁に吹き付けられ、路面側に流れることも抑制できるので、運転室5側に粉塵が舞い上がるのを抑制でき、運転室5周辺の作業環境の悪化を抑制できる。
前端側の風向変更部材9は、下板9aに対して背面板9bのみが立設されるので、下板9aにおける後方側および左右方向が開放されている。また、前端側のクイックリリースバルブ7は、左右方向一対のマキシチャンバ4bと接続されているので、単一のマキシチャンバ4bのみ接続される右後方側のクイックリリースバルブ7と比較しても、排気口7dから排出される圧縮空気の勢いが強い。そのような場合であっても、排気口7dからの圧縮空気が後方向および左右方向から幅広く拡散されるので、かかる圧縮空気の勢いを分散させることができる。
一方で、圧縮空気が下板9aの周囲に拡散されやすくなる。しかし、前端側のクイックリリースバルブ7は搬送車1の左右方向中央に配設され、左右方向両端まで距離があるので、圧縮空気が下板9aの周囲に拡散しても搬送車1の外側に向けて圧縮空気が吹き付けられることを抑制できる。これにより、圧縮空気が、搬送車1の右方側に位置する作業員に吹き付けられることを抑制できるので、搬送車1の左右方向外側の作業環境の悪化を抑制できる。
次に、図2(b1),図2(b2)を参照して、右後方側の風向変更部材9を説明する。右後方側のクイックリリースバルブ7は、右方端側かつ後方側に配設されるので(図1参照)、最も近い運転室5は、かかるクイックリリースバルブ7の後方側に位置する。そこで、右後方側の風向変更部材9には、クイックリリースバルブ7の排気口7dからの圧縮空気が、運転室5側に流れるのを抑制するための板状の部材である右側板9cが、下板9aにおける後方側の外縁に立設される。また、右側板9cの上端の位置も排気口7dよりも高く設定される。これにより、排気口7dからの圧縮空気が運転室5に吹き付けられて、路面側に流れることを抑制できるので、かかる圧縮空気によって運転室5側に粉塵が舞い上がるのを抑制できる。
ここで、右後方側の風向変更部材9の背面板9bは、搬送車1の右端側に沿って立設される。従って、背面板9bにより、排気口7dからの圧縮空気が搬送車1の右端側に流れるのが抑制される。これにより、圧縮空気が搬送車1の右側に位置する作業員に吹き付けられることを抑制できるので、搬送車1周辺の作業環境の悪化を抑制することができる。
以上説明した通り、本実施形態における搬送車1の風向変更部材9は、クイックリリースバルブ7の排気口7dの下方において排気口7dに対向配置され、クイックリリースバルブ7からの路面側の排気を遮るための下板9aが配設される。よって、排気口7dから吹き出された圧縮空気は、下板9aによって遮断され、圧縮空気が路面に直接吹き付けられることが抑制される。これにより、路面上の粉塵が舞い上がるのを抑制できるので、搬送車1周辺の作業環境の悪化を抑制できる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施形態において、風向変更部材9は、下板9a及び背面板9b、又は下板9a、背面板9b及び右側板9cで構成されるものとした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、右側板9cと対向する外縁に立設される左側板9dを加える構成としても良い。その際、右側板9cと左側板9dとをともに立設させる構成としても良いし、右側板9cを省き、左側板9dを立設させる構成としても良い。即ち、右側板9cと左側板9dとを、圧縮空気を吹き付けたくない方向に対して立設させることで、搬送車1や搬送車1周辺の環境に応じた風向変更部材9とすることができる。
かかる風向変更部材9を、前端側のクイックリリースバルブ7に配設した場合は、圧縮空気が後方側のみに吹き出される一方で、左右方向には吹き出されない。これにより、圧縮空気が左右方向に吹き出されるのを確実に抑制できる。一方、図3の風向変更部材9を右後方側のクイックリリースバルブ7に配設した場合は、圧縮空気が右方側へ吹き出されるのを確実に抑制することができる。よって、圧縮空気が搬送車1の右側に位置する作業員に吹き付けられるのを抑制できる。
更に、背面板9bと対向する外縁に前側板9eを立設させ、背面板9b,右側板9c,左側板9d,前側板9eによって、排気口7dの全周を取り囲み、前側板9eに排気口7dからの圧縮空気を排出するための開口部を設ける構成としても良い。ここで、図3(a1),図3(a2)を参照して左側板9d及び前側板9eを有する風向変更部材9を説明する。なお、図3では、左側板9d及び前側板9eを有する風向変更部材9を前端側のクイックリリースバルブ7に配設する場合を説明するが、かかる風向変更部材9を右後方側のクイックリリースバルブ7に配設しても良い。
図3(a1)は、変形例における左側板9d及び前側板9eを有する風向変更部材9の正面図であり、図3(a2)は、図3(a1)のIIIa2−IIIa2線における風向変更部材9の断面図である。図3(a1),図3(a2)に示す通り、背面板9bに対向する下板9aの後方側の外縁に、前側板9eを立設させ、更に背面板9b,右側板9c,左側板9d,前側板9eを上方に延設し、上端を屈曲させ排気口7dの全周を密閉して取り囲む。なお、背面板9b,右側板9c,左側板9d,前側板9eは、それぞれ上方に延設され、上端が排気口7dに向けて屈曲されるが、同一の符号とする。そして、前側板9eの略中央には開口部が穿設される。これにより、排気口7dからの圧縮空気が前側板9eの開口部から大気中へ排出されるので、かかる圧縮空気が路面に直接吹き付けることが抑制される。よって、圧縮空気によって路面上の粉塵が舞い上がることを抑制できるので、搬送車1周辺の作業環境の悪化を抑制できる。
ここで、前側板9eの開口部から排出される圧縮空気の勢いについて説明する。排気口7dからの圧縮空気は、下板9a上で拡散されることでその勢いが弱まる。これにより、排気口7dから直接排出される圧縮空気よりも、勢いを弱めた圧縮空気が開口部から大気中に排出されるので、搬送車1の周辺の作業環境の悪化を抑制できる。
ここで開口部は、前側板9eの略中央、即ち排気口7dからの圧縮空気の排出方向と直交する方向に穿設されたが、これに限られるものではなく、排出方向と直交する方向よりも上方側に向けて開口部が穿設されても良い。
更に、図3(a1),図3(a2)に表す風向変更部材9において、開口部に対して騒音を抑制する消音器9fを配設する構成としても良い。図3(b)は、左側板9d及び前側板9eを有する風向変更部材9に消音器9fが配設されたものの断面図である。図3(b)に示す通り、消音器9fが前側板9eの開口部に配設される。これにより、排気口7dからの圧縮空気が前側板9eの開口部から排出される際に発生する騒音が消音器9fによって抑制されるので、搬送車1の周辺に対する騒音に対する作業環境の悪化を抑制できる。なお、消音器9fを配設する代わりに、下板9a,背面板9b,右側板9c,左側板9d及び前側板9eにおける排気口7d側に、グラスウール等の防音材や吸音材を貼設する構成としても良い。これによっても、排気口7dからの圧縮空気を排出する際の騒音を抑制することができる。
図3に表す風向変更部材9を、右後方側のクイックリリースバルブ7に対して配設する構成としても良い。右後方側の風向変更部材9は、背面板9bが下板9aの右端側(即ち一端側)に沿って立設されるので、背面板9bと対向する前側板9eは下板9aの左端側(即ち他端側)に立設される。従って、前側板9eの開口部の水平方向の向きは下板9aの左端側に向けられる。これにより、搬送車1の右端よりも外側に向けて、圧縮空気が吹き付けられることを確実に抑制できる。
一方で、圧縮空気が吹き付けられる方向が前側板9eの開口部側のみとなり、圧縮空気の勢いが比較的維持されやすくなる。これに対し、開口部が搬送車1の左端側に向けられるので、開口部から搬送車1の左端までの距離を長く設定することができる。これにより、開口部から排出された圧縮空気が、搬送車1の左端より外側に吹き付けられることを抑制できるので、搬送車1周辺の作業環境の悪化を抑制できる。
図3に表す風向変更部材9を、右後方側のクイックリリースバルブ7に対して配設した場合、圧縮空気が開口部から搬送車1の左側に向けて吹き出される。一方で、右後方側のクイックリリースバルブ7は、1つのマキシチャンバ4bと接続されているので、2つのマキシチャンバ4bと接続される前端側のクイックリリースバルブ7と比較しても圧縮空気の勢いが弱い。従って、風向変更部材9から圧縮空気が吹き出されるのは開口部に限定されても、圧縮空気の勢いが弱いので、搬送車1の左端に圧縮空気が吹き出されるのを抑制できる。
更に、開口部の水平方向の向きは左右方向に沿った方向に限らず、左右方向から傾斜した方向へ向けられても良い。この場合、開口部が少なくとも搬送車1の内側向きであれば、搬送車1の右側へ圧縮空気が吹き出されない。また、開口部が左右方向から傾斜した向きであれば、開口部から、開口部が向けられた搬送車1の端部までの距離をより長くできるので、圧縮空気が搬送車1から外側へ吹き出すことを抑制できる。加えて、開口部の水平方向の向きは、運転室5を除く向きとされるのがより好ましい。これにより、運転室5側に対して圧縮空気が吹き付けられるのを抑制できる。
図3においては、開口部が前側板9eの中央部に穿孔されるとしたが、必ずしもこれに限られるものではない。前側板9eの上部や下部等に穿孔される構成としても良いし、背面板9b,右側板9c,左側板9dに開口部が穿孔される構成としても良い。
上記実施形態において、風向変更部材9の下板9aを板状の部材とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、下板9aの代わりに、円弧状の下板9hを用いてもよい。図4(a),図4(b)を用いて円弧状の下板9hを有する風向変更部材9を説明する。なお、図4(a),図4(b)では、円弧状の下板9hを有する風向変更部材9を右後方側のクイックリリースバルブ7に配設する場合を説明するが、かかる風向変更部材9を前端側のクイックリリースバルブ7に配設しても良い。
図4(a)は、変形例における円弧状の下板9hを有する風向変更部材9の正面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における風向変更部材の断面図である。図4(a),図4(b)に示す通り、下板9aの代わりに下方に凸の円弧状の下板9hが、背面板9bに溶接されて配設される。この下板9hによって、排気口7dから排出された圧縮空気の排出方向は、下板9hの左および右端で上方に向けられる。これにより、排気口7dから排出された圧縮空気が路面に吹き付けられるのを、より効果的に抑制できる。なお、下板9hの形状は下方に凸の円弧状に限られるものではなく、V字型等、下板9hの左および右端が上方に向けられるものが適宜適用される。
上記実施形態において、背面板9b,右側板9cを下板9aの外縁に立設される構成とした。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、背面板9b,右側板9cを、下板9aの外縁より内側であって排気口7dの外周側に沿って配設される構成としても良い。
即ち、下板9aは少なくとも排気口7dからの圧縮空気を遮る大きさであれば良く、排気口7dと下板9aとの距離による圧縮空気の広がり具合に応じて、下板9aの大きさを適宜設定すれば良い。例えば、下板9aの大きさを排気口7dよりも大きくすれば良い。
上記実施形態において、背面板9bは、板状の部材で構成された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、背面板9bに開口部を設ける構成としても良い。これにより、排気口7dからの圧縮空気が背面板9bの開口部から更に分散されるので、圧縮空気の勢いを更に弱めることができる。
上記実施形態において、右後方側のクイックリリースバルブ7に対して、下板9aと背面板9bと右側板9cを有する風向変更部材9が配設された。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、右後方側のクイックリリースバルブ7に対して、下板9aと背面板9bとのみで構成される風向変更部材9を配設しても良い。これにより、排気口7dからの圧縮空気が風向変更部材9の前後方向および左方向から幅広く拡散されるので、かかる圧縮空気の勢いを分散させることができ、更に背面板9bによって、排気口7dからの圧縮空気が搬送車1の右側に吹き出されるのを確実に抑制できる。