以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、図1〜図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。図2(a)は、図1に示す非接触ICカードのIIa−IIa線に沿った断面図であり、図2(b)は、図1に示す非接触ICカードのIIb−IIb線に沿った断面図である。図3は、図1に示す非接触ICカードの等価回路を示す回路図である。なお、図1の(b)は、図1の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。非接触ICカードは、主にHF帯(例えば13.56MHz)の信号を用いてリーダーライター等の図示しない外部読み書き装置との間でRFID技術を用いて非接触通信を行うことができる非接触型情報媒体である。
非接触ICカード10は、図1及び図2に示すように、矩形形状のフィルム基材11を備える。フィルム基材11の表面(一方の面)11a上には、ICチップ12、ICチップ搭載部13、アンテナコイル14、表面側平板電極(第1の一面側平板電極)15、及び表面側平板電極(第2の一面側平板電極)16が配置される。フィルム基材11の裏面(他方の面)11b上には、裏面側平板電極(第1の他面側平板電極)17、裏面側平板電極(第2の他面側平板電極)18、及びジャンパ線(ジャンパ部)19が配置される。
フィルム基材11は、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート共重合体(PET−G)等の絶縁性や耐久性を備えた材料から構成される。フィルム基材11の表裏両面11a,11bには、エッチング等による加工前には金属箔が貼り合わされている。これらの金属箔をエッチング等によって加工することにより、ICチップ搭載部13、アンテナコイル14、表面側平板電極15,16、裏面側平板電極17,18、及びジャンパ線19が形成される。
ICチップ12は、例えばID情報が格納されたICタグ用のものが適用される。またICチップ12は、端子12a,12bを有する基板等にICが実装されたモジュールであってもよい。ICチップ12は、フィルム基材11の表面11a上においてアンテナコイル14の経路上の任意の場所に配置されるICチップ搭載部13に搭載される。本実施形態では一例として、ICチップ搭載部13は、互いに離間した一対の支持部13a,13bを有する。支持部13aは、アンテナコイル14の内側終端14aに接続される。支持部13bは、表面側平板電極15に接続される。そして、ICチップ12の縁部に設けられた端子12a,12bが超音波接合等によって一対の支持部13a,13bに接合されることにより、ICチップ12は、ICチップ搭載部13を介してアンテナコイル14に接続される。ただし、ICチップ12をICチップ搭載部13に搭載する方法は、上記以外の方法(例えば熱圧着、導電性接着剤による接着、レーザー溶接等)であってもよい。ICチップ12は、導通されたアンテナコイル14を介して無線通信処理を行い、外部読み書き装置との間で所定の信号の授受を行う。
アンテナコイル14は、リーダ―ライター等の外部読み書き装置のアンテナと電磁結合して非接触の無線通信を行うための平面渦巻き状のアンテナである。アンテナコイル14は、この無線通信により、信号の授受及び電力の受給を非接触状態で行う。アンテナコイル14は、フィルム基材11の表面11a上に配置された導体から形成される。具体的には、例えば厚さ15μm〜50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の絶縁性のフィルム基材11の表面11a側に貼り合わされた厚さ5μm〜50μmの銅箔又はアルミ箔をエッチングすることにより、矩形形状にパターン形成される。このようなアンテナコイル14は、その外側終端14bにおいて表面側平板電極16に接続される。また、アンテナコイル14は、その内側終端14aにおいてICチップ搭載部13及びICチップ12を介して表面側平板電極15に接続される。
表面側平板電極15は、フィルム基材11の表面11a上において、アンテナコイル14の内側に形成される平面電極である。表面側平板電極15は、アンテナコイル14の長辺方向(第1の辺方向)に沿って延在する第1の電極部分15aと、アンテナコイル14の長辺方向に直交する短辺方向(第2の辺方向)に沿って延在する第2の電極部分15bとを有し、全体としてL字状に形成されている。第1の電極部分15a及び第2の電極部分15bはいずれも、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の内周縁に近接するように配置される。
表面側平板電極16は、フィルム基材11の表面11a上において、アンテナコイル14の外側に形成される平面電極である。表面側平板電極16は、アンテナコイル14の長辺方向に沿って延在する第1の電極部分16aと、アンテナコイル14の短辺方向に沿って延在する第2の電極部分16bとを有し、全体としてL字状に形成されている。第1の電極部分16a及び第2の電極部分16bはいずれも、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の外周縁に近接するように配置される。
図1の(a)に示すように、表面側平板電極15が沿うアンテナコイル14の部分(図1の(a)の例では、図示上におけるアンテナコイル14の上辺及び右辺)は、表面側平板電極16が沿うアンテナコイル14の部分(図1の(a)の例では、図示上におけるアンテナコイル14の左辺及び下辺)とは異なっている。すなわち、表面側平板電極15と表面側平板電極16とは、各々が沿うアンテナコイル14の部分(辺)を共有しないように配置されている。
表面側平板電極15とアンテナコイル14の内周縁との間隔、及び表面側平板電極16とアンテナコイル14の外周縁との間隔は、例えば、アンテナコイル14同士の同じ周回位置における離間幅と略同一である。ただし、上記間隔は、アンテナコイル14同士の離間幅より大きくてもよいし、当該離間幅より小さくてもよい。なお、表面側平板電極15,16は、アンテナコイル14と同様に、フィルム基材11の表面11a側に貼り合わされた金属箔をエッチングすることによりパターン形成される。後述する裏面側平板電極17,18及びジャンパ線19も同様に、フィルム基材11の裏面11b側に貼り合された金属箔をエッチングすることによりパターン形成される。
裏面側平板電極17は、表面側平板電極15と対をなす平面電極であり、表面側平板電極15とフィルム基材11の厚み方向において対向するようにフィルム基材11の裏面11b上に配置される。裏面側平板電極17は、表面側平板電極15と同様に、アンテナコイル14の長辺方向に沿って延在する第1の電極部分17aと、アンテナコイル14の短辺方向に沿って延在する第2の電極部分17bとを有し、全体としてL字状に形成されている。図2の(a)及び(b)に示すように、第1及び第2の電極部分17a,17bは、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極15の第1及び第2の電極部分15a,15bに対向するように配置される。第1及び第2の電極部分17a,17bはいずれも、表面側平板電極15の第1及び第2の電極部分15a,15bと同様に、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の内周縁に近接するように配置される。
裏面側平板電極18は、表面側平板電極16と対をなす平面電極であり、表面側平板電極16とフィルム基材11の厚み方向において対向するようにフィルム基材11の裏面11b上に配置される。裏面側平板電極18は、表面側平板電極16と同様に、アンテナコイル14の長辺方向に沿って延在する第1の電極部分18aと、アンテナコイル14の短辺方向に沿って延在する第2の電極部分18bとを有し、全体としてL字状に形成されている。図2の(a)及び(b)に示すように、第1及び第2の電極部分18a,18bは、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極16の第1及び第2の電極部分16a,16bに対向するように配置される。従って、第1及び第2の電極部分18a,18bはいずれも、表面側平板電極16の第1及び第2の電極部分16a,16bと同様に、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の外周縁に近接するように配置される。
上述のように表面側平板電極15,16と裏面側平板電極17,18とが互いに対向して配置されることにより、表面側平板電極15,16と裏面側平板電極17,18とが2つの容量部(図3参照)をそれぞれ形成する。なお、図2に示すように、本実施形態では一例として、表面側平板電極15,16と裏面側平板電極17,18とは、フィルム基材11の厚み方向から見て、表面側平板電極15,16が裏面側平板電極17,18を完全に覆うように、フィルム基材11に配置される。このような平板電極の配置により、表面側平板電極15,16の形成位置に対し、裏面側平板電極17,18の形成位置が製造公差等の原因で若干のズレが生じたとしても、両電極で形成される平行平板の静電容量が変化することはなく、製品の電気的特性のバラつきを減らす効果が期待できる。
ジャンパ線19は、裏面側平板電極17及び裏面側平板電極18をフィルム基材11の裏面11b上において連結する配線である。ジャンパ線19は、裏面側平板電極17の第2の電極部分17bの先端部と裏面側平板電極18の第1の電極部分18aの先端側の側部とを連結する。ジャンパ線19は、対向するアンテナコイル14との間の静電容量を小さくすることが好ましいため、その幅は出来るだけ細いことが好ましく例えば1〜3mm程度である。また、ジャンパ線19は、フィルム基材11の厚み方向において、アンテナコイル14の一部と対向するように配置されるが、好ましくは、アンテナコイル14と直交するように配置形成されている。これにより、発生する静電容量を更に小さくすることができる。なお、ここでいう「直交」は、フィルム基材11の厚み方向から見た際(フィルム基材11のアンテナ形成面から透かして見た際)に、アンテナコイル14とジャンパ線19とが90度で交差している場合のみを含む趣旨ではなく、設計上許容されるその前後10度(80度〜100度)の範囲で交差している場合を含む趣旨である。また、前記「直交する配置」については、アンテナコイル14とジャンパ線19とが少なくとも交わる部分において「直交」しており、必ずしもジャンパ線19全体がアンテナコイル14と「直交」する配置である必要はない。また、ジャンパ線19は、上記したような直行配置等により、裏面側平板電極17,18間を最短距離で結ぶことができる。これにより、ジャンパ線19自体の抵抗損失を減らすこともできる。このようなジャンパ線19により、裏面側平板電極17と裏面側平板電極18との導通が図られる。
このような構成を有する非接触ICカード10は、図3に示すような等価回路として表すことができる。つまり、図3に示すように、非接触ICカード10は、ICチップ12、アンテナコイル14、第1の容量部16,18、ジャンパ線19、及び、第2の容量部15,17がこの順に直列に並ぶ回路を構成する。
ここで、表面側平板電極15及び裏面側平板電極17からなる一対の内側平板電極15,17(すなわち第2の容量部15,17を形成する一対の平板電極)と表面側平板電極16及び裏面側平板電極18からなる一対の外側平板電極16,18(すなわち第1の容量部16,18を形成する一対の平板電極)は、アンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。このような配置は、一対の内側平板電極16,18、ジャンパ線19、及び一対の内側平板電極15,17に流れる電流が、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル14上を流れる電流の方向(例えばフィルム基材11の表面11a側から見た際の時計回り又は反時計回り)と同じ方向となるように、ジャンパ線19が設けられることにより実現されている。
以下、ある瞬間において、アンテナコイル14に流れる電流がその外側終端14bからその内側終端14aに向かって流れる場合を例に挙げて、アンテナコイル14に流れる電流の流れについて説明する。図1の(a)に示すように、アンテナコイル14に流れる電流は、その外側終端14bから、図示上時計回りの方向に流れ、アンテナコイル14に沿って矩形状に数回(本実施形態では一例として4回)周回して、内側終端14a、ICチップ搭載部13、及びICチップ12を介して表面側平板電極15の電極部分15aに流れ込む。そして、電極部分15aに流れ込んだ電流は、一対の内側平板電極15,17、ジャンパ線19、及び一対の外側平板電極16,18を介して、アンテナコイル14の外側終端14bに戻ってくることになる。このような順に流れる電流の方向は、図1の(a)の図示上時計回りの方向となるため、アンテナコイル14に流れる電流の方向と一致する。
以上、本実施形態に係る非接触ICカード10では、フィルム基材11の両面11a,11bに互いに対向するように配置された表面側平板電極15,16及び裏面側平板電極17,18により、高周波信号を伝搬可能な容量部が形成されている。さらに、表面側平板電極15,16及び裏面側平板電極17,18は、フィルム基材11の厚み方向から見て、矩形形状の渦巻き状に形成されたアンテナコイル14の内周縁又は外周縁に近接するように、アンテナコイル14の長辺方向に沿って延在する第1の電極部分15a,16a,17a,18aと、アンテナコイル14の短辺方向に沿って延在する第2の電極部分15b,16b,17b,18bとを有する。このような平板電極の配置により、非接触ICカードの限られた外形サイズの制約の中で、平行平板電極を備えつつ、アンテナコイル14の開口部(配線パターンが設けられない領域)を確保することが可能となる。
また、本実施形態に係る非接触ICカード10では、一対の内側平板電極15,17と一対の外側平板電極16,18とは、フィルム基材11の厚み方向から見て、一対の内側平板電極15,17が沿うアンテナコイル14の部分(辺)が一対の外側平板電極16,18が沿うアンテナコイル14の部分(辺)とは異なるように配置されている。この場合、アンテナコイル14の内側の一対の内側平板電極15,17とアンテナコイル14の外側の一対の外側平板電極16,18とは、各々が沿うアンテナコイル14の部分を共有しないように配置される。つまり、一対の内側平板電極15,17と一対の外側平板電極16,18とは、アンテナコイル14の同一の部分を挟んで隣接しないように配置される。これにより、アンテナコイル14、一対の内側平板電極15,17、及び一対の外側平板電極16,18をフィルム基材11上にバランス良く配置することができる。具体的には、規格(例えばISO/IEC1443-1のClass1)等で定められている等幅環状のアンテナパターン配置エリアに、アンテナコイル14及び平板電極15,16,17,18を収まりよく配置することが可能となる。
また、本実施形態に係る非接触ICカード10では、一対の内側平板電極15,17と一対の外側平板電極16,18とは、上述したようにアンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。一対の内側平板電極15,17及び一対の外側平板電極16,18を、アンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流す放射素子として機能させることにより、実質的なコイル巻き数を増加させることができる。図1の例では、アンテナコイル14自体の巻き数は4であるが、平板電極15,16,17,18及びジャンパ線19により、実質的なコイル巻き数が1つ増加されており、アンテナコイル14の巻き数を5とした場合と同等のアンテナ機能が備わっている。その結果、実質的に増加されたコイル巻き数分だけアンテナコイル14に必要とされる巻き数(すなわちアンテナパターンの領域)を減らすことが可能となり、アンテナコイル14の開口部の面積を増大させることができる。
なお、本実施形態では、一対の内側平板電極15,17及び一対の外側平板電極16,18の両方が、矩形形状に形成されたアンテナコイル14の2辺に沿って配置されるものとしたが、例えば一対の内側平板電極をアンテナコイル14の1辺に沿って配置し、一対の外側平板電極をアンテナコイル14の残りの3辺に沿ってコ字状に配置してもよい。また、上記とは逆に、一対の外側平板電極をアンテナコイル14の1辺に沿って配置する一方で、一対の内側平板電極をアンテナコイル14の残りの3辺に沿ってコ字状に配置してもよい。このような配置によっても、上述した効果を奏することができる。
[第2実施形態]
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図4の(b)は、図4の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード20は、裏面側平板電極17と裏面側平板電極18とを連結するジャンパ線21が、裏面側平板電極17の第1の電極部分17aの先端部と裏面側平板電極18の第2の電極部分18bの先端側の側部とを連結する点で、第1実施形態に係る非接触ICカード10と相違する。これにより、非接触ICカード20では、一対の内側平板電極15,17と一対の外側平板電極16,18とが、アンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流さないようになっている。
以下、ある瞬間において、アンテナコイル14に流れる電流がその外側終端14bからその内側終端14aに向かって流れる場合を例に挙げて、非接触ICカード20のアンテナコイル14に流れる電流の流れについて説明する。図4の(a)に示すように、アンテナコイル14に流れる電流は、その外側終端14bから、図示上時計回りの方向に流れ、アンテナコイル14に沿って矩形状に数回(本実施形態では一例として4回)周回して、内側終端14a、ICチップ搭載部13、及びICチップ12を介して表面側平板電極15の電極部分15aに流れ込む。そして、電極部分15aに流れ込んだ電流は、一対の内側平板電極15,17、ジャンパ線21、及び一対の外側平板電極16,18を介して、アンテナコイル14の外側終端14bに戻ってくることになる。このような順に流れる電流の方向は、図4の(a)の図示上反時計回りの方向となるため、アンテナコイル14に流れる電流の方向と一致しない。
このように、第2実施形態に係る非接触ICカード20では、一対の内側平板電極15,17及び一対の外側平板電極16,18は、放射素子として機能せず、純粋に容量部として機能するように構成されている。なお、非接触ICカード20は、上記以外の点については第1実施形態に係る非接触ICカード10と同様の構成を備えるため、非接触ICカード10と同様の効果を奏する。
[第3実施形態]
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図5の(b)は、図5の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード30は、一対の外側平板電極16,18及びジャンパ線19を備えない代わりに、アンテナコイル14の外側終端14bと裏面側平板電極17とを導通させるための導通部31を備える点で、第1実施形態に係る非接触ICカード10と相違する。
導通部31は、フィルム基材11の裏面11b上において、裏面側平板電極17の第1の電極部分17aの先端部から、フィルム基材11の厚み方向においてアンテナコイル14の外側終端14bと重なる位置まで延在する配線である。導通部31の先端とアンテナコイル14の外側終端14bとは、フィルム基材11に設けられたスルーホールを介して、カシメ加工及び溶接加工等がされることにより接続される。このように、導通部31を介してアンテナコイル14の外側終端14bと裏面側平板電極17とを接続させることで、非接触ICカード30は、図3に示した等価回路において、第1の容量部16,18及びジャンパ線19を導通部31に置き換えた構成の等価回路を構成する。
第3実施形態に係る非接触ICカード30では、フィルム基材11の両面11a,11bに互いに対向するように配置された表面側平板電極15及び裏面側平板電極17により、高周波信号を伝搬可能な容量部が形成されている。さらに、表面側平板電極15及び裏面側平板電極17は、フィルム基材11の厚み方向から見て、矩形形状の渦巻き状に形成されたアンテナコイル14の内周縁に近接するように、アンテナコイル14の長辺方向に沿って延在する第1の電極部分15a,17aと、アンテナコイル14の短辺方向に沿って延在する第2の電極部分16b,18bと、を有する。このような平板電極の配置により、非接触ICカードの限られた外形サイズの制約の中で、平行平板電極を備えつつ、アンテナコイル14の開口部を確保することが可能となる。
なお、本実施形態では、第1実施形態に係る非接触ICカード10を構成する平板電極のうち、アンテナコイル14の外側に形成される一対の外側平板電極16,18を省略する構成について例示したが、一対の外側平板電極16,18を残す代わりに一対の内側平板電極15,17を省略してもよい。この場合には、例えば、アンテナコイル14の内側終端14aと外側終端14bとの間の任意の場所にICチップ搭載部13を配置し、アンテナコイル14の内側終端14aと裏面側平板電極18とを導通させるための導通部を設ければよい。このように構成した場合にも、上記の非接触ICカード30と同様に、非接触ICカードの限られた外形サイズの制約の中で、平行平板電極を備えつつ、アンテナコイル14の開口部の面積を確保することができる。
[第4実施形態]
次に、図6を参照して、本発明の第4実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図6は、本発明の第4実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図6の(b)は、図6の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。以下、本実施形態に係る非接触ICカード40について、第1実施形態に係る非接触ICカード10と主に相違する構成について説明する。
非接触ICカード40は、フィルム基材11の表面11a上において、矩形形状に形成されたアンテナコイル14の内側及び外側に形成される表面側平板電極41及び表面側平板電極42を備える。表面側平板電極41は、アンテナコイル14の内周縁に近接するように、アンテナコイル14の4辺に沿って配置される。すなわち、表面側平板電極41は、アンテナコイル14の4辺のそれぞれに沿う部分が互いに連結され、アンテナコイル14の内周縁をほぼ一周するように形成される。すなわち、表面側平板電極41は、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の長辺方向及び短辺方向のそれぞれに沿って延在する電極部分を有する。一方、表面側平板電極42は、アンテナコイル14の外側においてアンテナコイル14の短辺部分に沿って配置される。表面側平板電極42は、全体の半分以上の面積を占める矩形形状の第1の部分42aと、第1の部分42aの短辺部分の中央部から枝状に延びた配線パターンに接続される14個の矩形形状の第2の部分42bとからなる。第2の部分42bは、第1の部分42aよりも小さく、7個ずつ2列に配置される。
また、非接触ICカード40は、フィルム基材11の裏面11b上において、アンテナコイル14に対応する矩形状領域(図6の(b)のアンテナコイル14を破線で示す領域)の内側及び外側に形成される裏面側平板電極43及び裏面側平板電極44を備える。裏面側平板電極43は、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極41と対向するように形成される。裏面側平板電極43は、表面側平板電極41と同様に、アンテナコイル14に対応する矩形状領域の内周縁に近接するように、当該矩形状領域の4辺に沿って配置される。すなわち、裏面側平板電極43は、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の長辺方向及び短辺方向のそれぞれに沿って延在する電極部分を有する。一方、裏面側平板電極44は、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極42と対向するように形成される。裏面側平板電極44は、全体の半分以上の面積を占める矩形形状の第1の部分44aと、第1の部分44aの短辺部分の両端部から延びた配線パターンに接続される2つの矩形形状の第2の部分44bとからなる。第1の部分44aは、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極42の第1の部分42aに対向するように配置される。第2の部分44bは、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極42の1列分(7個)の第2の部分42bに対向するように配置される。フィルム基材11の裏面11b上において、裏面側平板電極43の一端と裏面側平板電極44の第1の部分44aとは、ジャンパ線45によって連結されている。
以下、ある瞬間において、アンテナコイル14に流れる電流がその外側終端14bからその内側終端14aに向かって流れる場合を例に挙げて、非接触ICカード40のアンテナコイル14に流れる電流の流れについて説明する。図6の(a)に示すように、アンテナコイル14に流れる電流は、その外側終端14bから、図示上時計回りの方向に流れ、アンテナコイル14に沿って矩形状に数回(本実施形態では一例として5回)周回して、内側終端14a、ICチップ搭載部13、及びICチップ12を介して表面側平板電極41に流れ込む。そして、表面側平板電極41に流れ込んだ電流は、表面側平板電極41及び裏面側平板電極43からなる一対の内側平板電極41,43、ジャンパ線45、並びに表面側平板電極42及び裏面側平板電極44からなる一対の外側平板電極42,44を介して、アンテナコイル14の外側終端14bに戻ってくることになる。上述の通り、一対の内側平板電極41,44は、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル14の4辺に沿って、アンテナコイル14の内周側を図6の(a)の図示上時計回りにほぼ一周する形状に形成されている。従って、一対の内側平板電極41,43を流れる電流の方向は、アンテナコイル14に流れる電流の方向と一致する。
このように、非接触ICカード40では、一対の内側平板電極41,43は、アンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。一対の内側平板電極41,43を、アンテナコイル14に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流す放射素子として機能させることにより、実質的なコイル巻き数を増加させることができる。その結果、実質的に増加されたコイル巻き数分だけアンテナコイル14に必要とされる巻き数を減らすことが可能となり、アンテナコイル14の開口部の面積を増大させることができる。なお、この例では、一対の外側平板電極42,44は、放射素子としては機能せず、純粋に容量部として機能する。
また、図6の(a)及び(b)に示すように、非接触ICカード40では、表面側平板電極41と裏面側平板電極43とは、フィルム基材11の厚み方向から見て、表面側平板電極41が裏面側平板電極43を完全に覆うように、フィルム基材11に配置されている。また、表面側平板電極42の第1の電極部分42aと裏面側平板電極44の第1の電極部分44aとは、フィルム基材11の厚み方向から見て、第1の電極部分42aが第1の電極部分44aを完全に覆うように、フィルム基材11に配置されている。また、表面側平板電極42の第2の電極部分42bと、対応する裏面側平板電極44の第2の電極部分44bとは、フィルム基材11の厚み方向から見て、フィルム基材11の長手方向(フィルム基材の面に平行な第1の方向)においては、第2の電極部分42bが第2の電極部分44bを完全に覆い、フィルム基材11の短手方向(フィルム基材の面に平行且つ第1の方向に直交する第2の方向)においては、第2の電極部分44bが第2の電極部分42bを完全に覆うように、フィルム基材11に配置されている。このような平板電極の配置により、表面側平板電極41,42の形成位置に対し、裏面側平板電極43,44の形成位置が製造公差等の原因で若干のズレが生じたとしても、両電極で形成される平行平板の静電容量が変化することはなく、製品の電気的特性のバラつきを減らす効果が期待できる。
また、非接触ICカード40では、表面側平板電極41及び裏面側平板電極43は、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル14の4辺に沿って、アンテナコイル14に近接するように配置される。このような平板電極の配置により、非接触ICカードの限られた外形サイズの制約の中で、平行平板電極を備えつつ、アンテナコイル14の開口部を確保することが可能となる。
[第5実施形態]
次に、図7を参照して、本発明の第5実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図7は、本発明の第5実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図7の(b)は、図7の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード50は、ICチップ搭載部13を、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の外側に配置した点で、第1実施形態に係る非接触ICカード10と主に相違し、その他の構成については第1実施形態に係る非接触ICカード10の構成と類似する。すなわち、非接触ICカード50は、寸法及び配置において若干異なる部分があるものの、非接触ICカード10における表面側平板電極15,16及び裏面側平板電極17,18と同様の構成の表面側平板電極51,52及び裏面側平板電極53,54を備える。また、非接触ICカード50は、非接触ICカード10におけるジャンパ線19と同様に、裏面側平板電極53と裏面側平板電極54とを接続するジャンパ線55を備える。
非接触ICカード50では、ICチップ搭載部13は、フィルム基材11の表面11aの角部に沿って配置される。一方、アンテナコイル14及び表面側平板電極51,52は、フィルム基材11の表面11aにおいてICチップ搭載部13が配置される角部と対角線方向に対向する角部に沿って配置される。図7の例では、ICチップ搭載部13の一方の支持部13aは、所定の配線パターンを介して、表面側平板電極52の第2の電極部分52bに接続されている。また、ICチップ搭載部13の他方の支持部13bは、アンテナコイル14の外側終端14bに接続されている。
第5実施形態に係る非接触ICカード50によれば、上述した第1実施形態に係る非接触ICカード10と同様の効果が得られるとともに、ICチップ搭載部13及び当該ICチップ搭載部13に搭載されるICチップ12といった比較的大型の部品をアンテナコイル14の内側ではなく外側に配置することにより、アンテナコイル14の開口部の面積を増大させることができる。
[第6実施形態]
次に、図8を参照して、本発明の第6実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図8は、本発明の第6実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図8の(b)は、図8の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード60は、ICチップ搭載部13を、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル14の外側に配置した点で、第4実施形態に係る非接触ICカード40と主に相違し、その他の構成については第4実施形態に係る非接触ICカード40の構成と類似する。すなわち、非接触ICカード60は、寸法及び配置において若干異なる部分があるものの、非接触ICカード40における表面側平板電極41,42及び裏面側平板電極43,44と同様の構成の表面側平板電極61,62及び裏面側平板電極63,64を備える。また、非接触ICカード60は、非接触ICカード40におけるジャンパ線45と同様に、裏面側平板電極63と裏面側平板電極64とを接続するジャンパ線65を備える。
非接触ICカード60では、第5実施形態に係る非接触ICカード50と同様に、ICチップ搭載部13は、フィルム基材11の表面11aの角部に沿って配置される。一方、アンテナコイル14及び表面側平板電極61は、フィルム基材11の表面11aにおいてICチップ搭載部13が配置される角部と対角線方向に対向する角部に沿って配置される。図8の例では、ICチップ搭載部13の一方の支持部13aは、所定の配線パターンを介して、表面側平板電極62の第1の電極部分62aに接続されている。また、ICチップ搭載部13の他方の支持部13bは、アンテナコイル14の外側終端14bに接続されている。
第6実施形態に係る非接触ICカード60によれば、上述した第4実施形態に係る非接触ICカード40と同様の効果が得られるとともに、ICチップ搭載部13及び当該ICチップ搭載部13に搭載されるICチップ12といった比較的大型の部品をアンテナコイル14の内側ではなく外側に配置することにより、アンテナコイル14の開口部の面積を増大させることができる。
また、非接触ICカード60では、表面側平板電極62及び裏面側平板電極64からなる一対の外側平板電極62,64は、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル14の短辺部分の外周縁及びICチップ搭載部13に沿って配置されている。表面側平板電極62及び裏面側平板電極64が配置されるフィルム基材11上のスペースは、ICチップ搭載部13をアンテナコイル14の外側に配置する場合に必然的に生じるスペースである。このように必然的に生じるスペースに表面側平板電極62及び裏面側平板電極64を配置することにより、フィルム基材11上におけるアンテナコイル14の外側の空きスペースを有効活用して平板電極を配置することができる。これにより、容量部として機能する平板電極の面積を増大させることができ、容量部としての動作を安定させることができる。
[第7実施形態]
次に、図9を参照して、本発明の第7実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図9は、本発明の第7実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図9の(b)は、図9の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード70は、表面側平板電極71、裏面側平板電極72、及びジャンパ線73を更に備える点で第6実施形態に係る非接触ICカード60と相違し、その他の構成については非接触ICカード60と同様である。表面側平板電極71及び裏面側平板電極72は、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル14の長辺部分の外周縁及びICチップ搭載部13に沿って配置される。また、ジャンパ線73は、ジャンパ線65から分岐して、裏面側平板電極72と裏面側平板電極63,64とを接続する。
第7実施形態に係る非接触ICカード70では、第6実施形態に係る非接触ICカード60に加えて、アンテナコイル14の長辺部分の外側に必然的に生じるスペースも有効活用して平板電極(表面側平板電極71及び裏面側平板電極72)を配置することにより、容量部として機能する平板電極の面積を更に増大させることができ、容量部としての動作を更に安定させることができる。なお、非接触ICカード70において、表面側平板電極62及び裏面側平板電極64を省略した構成、すなわちアンテナコイル14の長辺部分の外側に必然的に生じするスペースのみを有効活用して平板電極を配置する構成としてもよい。
[第8実施形態]
次に、図10を参照して、本発明の第8実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図10は、本発明の第8実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図10の(b)は、図10の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード80は、アンテナコイル81が矩形形状ではなく円形であり、表面側平板電極82,83及び裏面側平板電極84,85がL字形状ではなく三日月状に形成されている点で、第1実施形態に係る非接触ICカード10と形状的に相違するが、回路としての機能については非接触ICカード10と同等である(詳しくは後述する)。
表面側平板電極82は、フィルム基材11の表面11a上において、円形にパターン形成されたアンテナコイル81の内側に形成される三日月状の平面電極である。表面側平板電極82は、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁に近接するように、アンテナコイル81の内周縁の略半分程度に沿って配置される。表面側平板電極83は、フィルム基材11の表面11a上において、円形にパターン形成されたアンテナコイル81の外側に形成される三日月状の平面電極である。表面側平板電極83は、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁に近接するように、アンテナコイル81の外周縁の略半分程度に沿って配置される。
図10の(a)に示すように、表面側平板電極82が沿うアンテナコイル81の部分(図10の(a)の例では、図示上におけるアンテナコイル81の左半分の円弧部分)は、表面側平板電極82が沿うアンテナコイル81の部分(図10の(a)の例では、図示上におけるアンテナコイル81の右半分の円弧部分)とは異なっている。すなわち、表面側平板電極82と表面側平板電極83とは、各々が沿うアンテナコイル81の部分(円弧部分)を共有しないように配置されている。
裏面側平板電極84は、表面側平板電極82と対をなす三日月状の平面電極であり、表面側平板電極82とフィルム基材11の厚み方向において対向するようにフィルム基材11の裏面11b上に配置される。裏面側平板電極84は、表面側平板電極82と同様に、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁の略半分程度に沿って延在する。裏面側平板電極85は、表面側平板電極83と対をなす三日月状の平面電極であり、表面側平板電極83とフィルム基材11の厚み方向において対向するようにフィルム基材11の裏面11b上に配置される。裏面側平板電極85は、表面側平板電極83と同様に、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁の略半分程度に沿って延在する。裏面側平板電極84と裏面側平板電極85とは、ジャンパ線86によって連結されている。
上述のように表面側平板電極82,83と裏面側平板電極84,85とが互いに対向して配置されることにより、表面側平板電極82,83と裏面側平板電極84,85とが2つの容量部をそれぞれ形成する。本実施形態では一例として、表面側平板電極82,83と裏面側平板電極84,85とは、フィルム基材11の厚み方向から見て、表面側平板電極82,83が裏面側平板電極84,85を完全に覆うように、フィルム基材11に配置される。このような平板電極の配置により、表面側平板電極82,83の形成位置に対し、裏面側平板電極84,85の形成位置が製造公差等の原因で若干のズレが生じたとしても、両電極で形成される平行平板の静電容量が変化することはなく、製品の電気的特性のバラつきを減らす効果が期待できる。
このような構成を有する非接触ICカード80は、図3に示した非接触ICカード10の等価回路において、アンテナコイル14をアンテナコイル81に置き換え、第1の容量部15,17を表面側平板電極82及び裏面側平板電極84により形成される容量部81,84に置き換え、ジャンパ線19をジャンパ線86に置き換え、第2の容量部16,18を表面側平板電極83及び裏面側平板電極85により形成される容量部83,85に置き換えた等価回路を構成する。このように、非接触ICカード80は、各部の形状が異なるものの、回路としての機能は、第1実施形態に係る非接触ICカード10と同等である。
表面側平板電極82及び裏面側平板電極84からなる一対の内側平板電極82,84(すなわち容量部82,84を形成する一対の平板電極)と表面側平板電極83及び裏面側平板部85からなる一対の外側平板電極83,85(すなわち容量部83,85を形成する一対の平板電極)は、アンテナコイル81に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。このような配置は、一対の内側平板電極82,84、ジャンパ線86、及び一対の外側平板電極83,85に流れる電流が、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル81上を流れる電流の方向(例えばフィルム基材11の表面11a側から見た際の時計回り又は反時計回り)と同じ方向となるように、ジャンパ線86が設けられることにより実現されている。
以下、ある瞬間において、アンテナコイル81に流れる電流がその外側終端81bからその内側終端81aに向かって流れる場合を例に挙げて、アンテナコイル81に流れる電流の流れについて説明する。図10の(a)に示すように、アンテナコイル81に流れる電流は、その外側終端81bから、図示上反時計回りの方向に流れ、アンテナコイル81に沿って円形に数回(本実施形態では一例として4回)周回して、内側終端81a、ICチップ搭載部13、及びICチップ12を介して表面側平板電極82に流れ込む。そして、表面側平板電極82に流れ込んだ電流は、一対の内側平板電極82,84、ジャンパ線86、及び一対の外側平板電極83,85を介して、アンテナコイル81の外側終端81bに戻ってくることになる。このような電流の方向は、図10の(a)の図示上反時計回りの方向となるため、アンテナコイル81に流れる電流の方向と一致する。
以上、第8実施形態に係る非接触ICカード80では、フィルム基材11の両面11a,11bに互いに対向するように配置された表面側平板電極82,83及び裏面側平板電極84,85により、高周波信号を伝搬可能な容量部が形成されている。さらに、表面側平板電極82,83及び裏面側平板電極84,85は、フィルム基材11の厚み方向から見て、円形の渦巻き状に形成されたアンテナコイル81の内周縁又は外周縁に近接するように、アンテナコイル81の内周縁又は外周縁の略半分以上に沿って配置される。このような平板電極の配置により、非接触ICカードの限られた外形サイズの制約の中で、平行平板電極を備えつつ、アンテナコイル81の開口部を確保することが可能となる。
また、第8実施形態に係る非接触ICカード80では、一対の内側平板電極82,84と一対の外側平板電極83,85とは、フィルム基材11の厚み方向から見て、一対の内側平板電極82,84が沿うアンテナコイル81の部分(円弧部分)が一対の外側平板電極83,85が沿うアンテナコイル81の部分(円弧部分)とは異なるように配置されている。この場合、アンテナコイル81の内側の一対の内側平板電極82,84とアンテナコイル81の外側の一対の外側平板電極83,85とは、各々が沿うアンテナコイル81の部分を共有しないように配置される。つまり、一対の内側平板電極82,84と一対の外側平板電極83,85とは、アンテナコイル81の同一の部分を挟んで隣接しないように配置される。これにより、アンテナコイル81、一対の内側平板電極82,84、及び一対の外側平板電極83,85をフィルム基材11上にバランス良く配置することができる。具体的には、規格(例えばISO/IEC1443-1のClass1)等で定められている等幅環状のアンテナパターン配置エリアに、アンテナコイル81及び平板電極82,83,84,85を収まりよく配置することが可能となる。
また、第8実施形態に係る非接触ICカード80では、一対の内側平板電極82,84と一対の外側平板電極83,85とは、上述したようにアンテナコイル81に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。一対の内側平板電極82,84及び一対の外側平板電極83,85を、アンテナコイル81に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流す放射素子として機能させることにより、実質的なコイル巻き数を増加させることができる。図10の例では、アンテナコイル81自体の巻き数は4であるが、平板電極82,83,84,85及びジャンパ線86により、実質的なコイル巻き数が1つ増加されており、アンテナコイル81の巻き数を5とした場合と同等のアンテナ機能が備わっている。その結果、実質的に増加されたコイル巻き数分だけアンテナコイル81に必要とされる巻き数(すなわちアンテナパターンの領域)を減らすことが可能となり、アンテナコイル81の開口部の面積を増大させることができる。
以上のように、第8実施形態に係る非接触ICカード80のように、アンテナコイル81を円形にパターン形成し、平板電極82,83,84,85をこのような円形のアンテナコイル81に応じた形状とした場合であっても、第1実施形態に係る非接触ICカード10と同様の効果を奏することができる。また、非接触ICカード80では、アンテナコイル81を円形にパターン形成されることにより、非接触ICカード80におけるフィルム基材11は、アンテナコイル14を矩形形状に形成する非接触ICカード10におけるフィルム基材11よりも、正方形に近くなっている。これにより、非接触ICカード80は、例えばカジノのトークン(コイン)等の平面視において円形の対象物の中に組み込む非接触型情報媒体として適したものとなっている。
なお、本実施形態では、一対の内側平板電極82,84がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁の略半分程度に沿っており、一対の外側平板電極83,85がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁の略半分程度に沿っている例を示した。ただし、一対の内側平板電極がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁の略半分以上に沿っているのに対し、一対の外側平板電極83,85がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁の略半分程度に沿っていなくてもよい。また、一対の外側平板電極83,85がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁の略半分以上に沿っているのに対し、一対の内側平板電極がフィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁の略半分以上に沿っていなくてもよい。つまり、一対の内側平板電極及び一対の外側平板電極の少なくとも一方が、アンテナコイル81の内周縁又は外周縁の略半分以上に沿っていればよい。また、アンテナコイル81の形状は、円形ではなく、楕円形であってもよく、任意の多角形状であってもよい。このような円形以外の形状のアンテナコイルを用いる場合にも、本実施形態において説明した内容と同様の考え方に基づく非接触ICカードの構成を採用することができる。
[第9実施形態]
次に、図11を参照して、本発明の第9実施形態に係る非接触ICカードについて説明する。図11は、本発明の第9実施形態に係る非接触ICカードの内部構成を示す(a)上面図及び(b)裏面図である。なお、図11の(b)は、図11の(a)に示す上面図の長手方向における中心線を軸として反転した裏側の図を示している。本実施形態に係る非接触ICカード90は、ICチップ搭載部13を、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外側に配置した点で、第8実施形態に係る非接触ICカード80と主に相違する。また、非接触ICカード90は、三日月状の一対の内側平板電極82,84を、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周のほぼ全体に沿って形成される一対の内側平板電極92,94に置き換えた点で、第8実施形態に係る非接触ICカード80と主に相違する。
表面側平板電極92は、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の内周縁に近接するように、アンテナコイル81の内周縁のほぼ全体に沿って配置される。一方、表面側平板電極93は、第8実施形態に係る非接触ICカード80における表面側平板電極83と同様に、フィルム基材11の厚み方向から見てアンテナコイル81の外周縁に近接するように、アンテナコイル81の外周縁の略半分程度に沿って配置される。裏面側平板電極94,95は、フィルム基材11の厚み方向において、表面側平板電極92,93と対向するように、フィルム基材11の裏面11b上に形成される。フィルム基材11の裏面11b上において、裏面側平板電極94と裏面側平板電極95とは、ジャンパ線96によって連結されている。
以下、ある瞬間において、アンテナコイル81に流れる電流がその外側終端81bからその内側終端81aに向かって流れる場合を例に挙げて、非接触ICカード90のアンテナコイル81に流れる電流の流れについて説明する。図11の(a)に示すように、アンテナコイル81に流れる電流は、その外側終端81bから、図示上反時計回りの方向に流れ、アンテナコイル81に沿って円形に数回(本実施形態では一例として4回)周回して、内側終端81aから表面側平板電極92に流れ込む。そして、表面側平板電極92に流れ込んだ電流は、一対の内側平板電極92,94、ジャンパ線96、及び一対の外側平板電極93,95を介して、アンテナコイル14の外側終端14bに戻ってくることになる。上述の通り、一対の内側平板電極92,94は、フィルム基材11の厚み方向から見て、アンテナコイル81の内周縁に沿って、図11の(a)の図示上反時計回りにほぼ一周する形状に形成されている。従って、一対の内側平板電極92,94を流れる電流の方向は、アンテナコイル81に流れる電流の方向と一致する。
このように、非接触ICカード90では、一対の内側平板電極92,94は、アンテナコイル81に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流すように配置されている。一対の内側平板電極92,94を、アンテナコイル81に流れる電流と同じ方向に沿って電流を流す放射素子として機能させることにより、実質的なコイル巻き数を増加させることができる。その結果、実質的に増加されたコイル巻き数分だけアンテナコイル81に必要とされる巻き数を減らすことが可能となり、アンテナコイル81の開口部の面積を増大させることができる。一方、この例では、一対の外側平板電極93,95は、放射素子としては機能せず、純粋に容量部として機能する。
また、第9実施形態に係る非接触ICカード90によれば、ICチップ搭載部13及び当該ICチップ搭載部13に搭載されるICチップ12といった比較的大型の部品をアンテナコイル81の内側ではなく外側に配置することにより、アンテナコイル81の開口部の面積を増大させることができる。
以上、本実施形態に係る非接触ICカードについて説明したが、本発明に係る非接触型情報媒体は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、上記の第1〜第9の実施形態において説明した各部の構成は、上述した実施形態において採用した組み合わせ以外の態様で適宜組み合わせられてもよい。