JP6432618B2 - 平版印刷用湿し水組成物およびそれを用いた平版印刷物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は平版印刷用湿し水組成物に関し、印刷時の地汚れが発生せず、排水時に適用される下水道法等で規制される「ホウ素及びその化合物:10mg/L以下」を遵守しながら、かつ環境汚染を誘発するリン含有化合物の含有量を軽減、または皆無にし、使用後に処理なしでそのまま排水できるといった環境配慮型の平版印刷用湿し水組成物に関する。
凹凸のない平面状の印刷版を用い、水と油が反発する性質を利用して油性インキを印刷するオフセット印刷方式は、商業、雑誌、書籍、新聞などの印刷で主流となっている。この印刷方式で用いられる版には、親油化処理された樹脂層からなる画線部と親水化処理された非画線部とが同一平面上に形成されている。このため、湿し水またはH液と呼ばれる水性成分を版面に供給して、親水性を有する非画線部を均一な薄い水膜で保護した後、親油性であるインキを供給し、湿し水とインキの反発を利用して画線部のみにインキを転移させることができ、画像を形成、平面状の版でありながら高精細な印刷物が得られる。
このときに使用される湿し水は水100%であってもよいが、水のみでは、湿し水に要求される性能を充分に満たすことができない。よって、一般的に湿し水には水の他に酸や塩基及びその塩類、界面活性剤、湿潤性水溶性樹脂といった各種添加剤を配合し、湿し水自体の粘度、表面張力、pHを調整した濃縮液を、0.1〜数質量%程度まで水で希釈した状態で使用される。実印刷では湿し水とインキが接触する版面箇所においては、湿し水とインキとの乳化現象は避けられず、長時間、トラブルレスな印刷を実現するためには湿し水の観点からも広い水幅で平版インキ組成物に対して適切な乳化特性を付与する必要がある。
湿し水はpHから酸性,中性,アルカリ性に分けられるが、使用されるインキ、用紙などの資材、要求される印刷品質、排水処理などの諸条件から適宜決定される。
酸性湿し水は出版・商業印刷分野では現在でも主流で、pH5.0前後で使用され、整面作用も高い一般的な湿し水である。水溶性の高分子であるアラビアゴムの整面作用を効果的に発揮させるためにリン酸、リン酸塩、硝酸塩などが配合され、pHを酸性側に調整している。アラビアゴムの組成はアラビノース、ガラクトース、ラムノース、グルクロン酸などを主成分とする高分子であり、このアラビノースがリン酸の作用でアラビン酸となり、非画線部に強固な親水化層を形成すると考えられている。したがって、アラビン酸の形態をとれない中性〜アルカリ性及び強酸性のpH領域では親水化層が十分に形成されず、整面効果が得られない。また、アラビアゴムは腐敗しやすくスプレー方式の給水機構ではノズル詰まりなどが発生することから、使用がロール方式による給水機構に限定される。
アルカリ性湿し水は1973年のオイルショックの際にアラビアゴムが枯渇した米国で開発されたものであり、日本でも新聞印刷を中心に普及した。湿し水がアルカリ性の条件では、上記のアラビアゴムが使用できないため、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩などを主成分として、更に界面活性剤、グリコール、水溶性高分子化合物が配合されるのが一般的である。整面作用はアルカリ性ソーダ塩のもつ金属洗浄作用に依存している。酸性湿し水に比べてアルカリ性湿し水は立ち上がりが遅く、版面により多量の湿し水を供給する必要があるが、新聞、ザラ紙印刷などに使用されるノンヒートインキは脂肪酸量が商業印刷用インキに対して当時は少なく、ケン化の懸念も少なく、安定した印刷が実現できたことが結果的にアルカリ性湿し水の普及を進めたといわれている。アルカリ性湿し水の特徴としては湿し水の腐敗が少なく、また印刷機の防錆性に優れる。
中性湿し水は排水処理をする上ではpH処理工程が不要であるため、環境に配慮した湿し水である。しかし、金属洗浄、整面作用が不十分なため、リン酸塩、硝酸塩などの中性塩などの配合を欠くことができず、酸性あるいはアルカリ性湿し水と比べてBOD、COD、n−ヘキサン可溶分の点で、環境負荷を完全に軽減するものではない。不感脂化効果も両者に比べて十分ではなく、国内では未だ新聞印刷業界での普及にとどまっているが、廃棄の際に中和・希釈処理が必要ないことから、コストメリットの点では有利である。そのために下水道法の「海域に排出されるもの:pH5.0〜9.0、海域以外の公共用水域に排出されるもの:pH5.8〜8.6」の条件を満たしながら、安定した印刷を実現できる中性湿し水組成物の開発が強く求められている。
安定した印刷を実現するためには、印刷時の汚れの発生を防止する機能が湿し水に求められる。従来、湿し水組成物において、印刷時の汚れを軽減させる成分としてリン含有化合物が一般的に利用されてきた。しかし、今日、リン含有化合物は海・湖沼・河川の富栄養化の原因となるため、排水基準のリン濃度は、下水道法では「32mg/L未満」、水質汚濁防止法では「16mg/L以下、日間平均8mg/L」以下、さらに東京都下水道条例では「16mg/L以下」と厳しく規制されている状況にある。
このような背景により、今日ではリン成分を減量した低リン、無リンといった湿し水が求められるようになった。こうした中で、特許文献1ではリンゴ酸金属塩、硝酸金属塩を併用する技術が開発されているが、リン濃度を排出基準以下にするにとどまっている。
特許文献2〜4にはホウ酸類を湿し水に添加する例が示されているが、湿し水中のホウ素純分は少なくとも35mg/L以上含有されており、ホウ素の排水基準を満たしておらず、さらにはpHが酸性側に傾いており、廃棄の際に排水処理工程が必須となる。
特許文献1、5〜10には、ホウ酸金属塩を構成成分の塩として添加できるとの記述はあるが、実施例等での詳細な記述はなく、添加量やその効果が不明である。
特許第5378764号公報 特開2014−223807号公報 特許第5805149号公報 特許第6031209号公報 特許第5379431号公報 特許第4791758号公報 特許第4727967号公報 特許第4402360号公報 特許第4276060号公報 特許第3796713号公報
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、平版印刷時の湿し水組成物に含まれるリンの含有濃度を軽減、もしくは0とし、印刷適性、防腐効果が優れ、且つ、環境に配慮がなされた平版印刷用湿し水を提供することを課題とする。
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、湿し水組成物中に、一定範囲量内のホウ素化合物を含有させることで、リン含有化合物の含有量の低減、または0まで調整することが可能となり、印刷適性が優れ、印刷終了後にそのまま排出しても法令を厳守可能で、環境配慮型の平版印刷用湿し水組成物が得られることを見出した。
即ち、本発明は、pHが5以上9以下の、ホウ素化合物を含有する平版印刷用湿し水組
成物であって、
前記ホウ素化合物が、ホウ酸、前記ホウ酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、
および、ホウ素酸化物からなる群より選択される少なくとも一つであり、
前記ホウ素化合物の含有濃度がホウ素純分として1〜10mg/Lであり
1,2−ジオール、または1,3−ジオールを組成物全体の0.03質量%未満含有

分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤を組成物全体の0.
005〜0.4質量%含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物に関する。(た
だし、Lは、0.001m3を表す)
また、本発明は、前記湿し水組成物を用いて印刷する工程を含む平版印刷物の製造方法に関する。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は、排水基準値以下のリン含有量、もしくは無リンとし、使用後に希釈などの処理なしでそのまま排水できる。また、pHの排水基準も満たすことで、排水の際に中和処理の必要がないとともに、印刷汚れの軽減が可能で印刷安定性の向上が可能となる。
以下、本発明の平版印刷用湿し水組成物について詳細に説明する。平版印刷用湿し水は、平版印刷用湿し水濃縮組成物を実印刷時に水により任意の倍率で希釈した希釈液のことを示す。また、後述する各構成成分の含有量は、前記、湿し水組成物中の濃度を示し、その濃縮組成物中の濃度は特に規定されるものではない。
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、ホウ素化合物を必須成分として使用し、さらに、そのホウ素化合物はホウ素純分に換算してその含有濃度が排水基準以下となるようにする。
まず、本発明の平版印刷用湿し水組成物を構成するホウ素化合物に関して述べる。ホウ素化合物としては、まず、ホウ酸であるオルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、八ホウ酸が挙げられる。また、前記ホウ酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。さらには、それらは無水物であっても、水和物であってもよい。ホウ酸エステルであってもよい。
また、ホウ素化合物としてホウ素酸化物があげられる。
具体的にはオルトホウ酸B(OH)3、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム(この十水和物はホウ砂と呼ばれる)、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸リチウム、五ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸カリウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸ナトリウムの無水物、および水和物があげられる。ホウ素酸化物としては三酸化二ホウ素があげられる。
ただし、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウムといったアルカリ土類金属塩は水溶性に乏しいため、本発明では好ましくないことがある。
上記のホウ素化合物はいずれも水に溶解した場合、いずれも加水分解し、オルトホウ酸と同様にpHによって一定の割合で主にホウ酸B(OH)3、およびホウ酸イオンB(OH)4 -の形態で存在するとされており、地汚れ防止剤、乳化安定剤として機能する。ホウ酸はアルコールやジオールといったヒドロキシル基を有する化合物とホウ酸エステルを平衡的に形成することが知られている。平版印刷における版の非画線であるアルミナ皮膜にはヒドロキシル基が存在するため、同様の反応によりホウ酸と非画線部間でホウ酸エステルの形成、及びそのヒドロキシル基との水素結合により非画線上へのホウ酸、ホウ酸イオンの層を形成すると予想される。形成されたホウ酸、ホウ酸イオンの層はホウ素1原子あたり複数のヒドロキシル基を有しているため、さらに多くの水分子と水素結合ネットワークの形成が可能となり、疎油性の向上により地汚れ耐性を発現することができる。
また、上記のホウ素化合物は平版インキ組成物の成分であるアルコールや溶剤、樹脂、変性植物油といったヒドロキシル基をもつ成分とホウ酸エステルを形成するとともに水分子との水素結合ネットワーク形成するため、乳化安定剤として作用する。平版印刷インキ組成物は印刷中、安定した乳化状態を形成することで、水へのインキ中顔料の溶出の発生や転移性を損なうことなく、安定した印刷を実現することができる。
上記ホウ素化合物の含有量は、実印刷中において平版印刷湿し水組成物中にホウ素純分として1〜10mg/Lとなる範囲である。ホウ素純分1mg/L以上において十分な地汚れ抑制効果、および乳化安定効果を付与し、10mg/L以下において下水道法・水質汚濁防止法で定められている海域外におけるホウ素含有量の上限量(10mg/L)を遵守し、排出時、希釈せずに直接排水することが可能である。実際の新聞印刷時は一般的に湿し水濃縮組成物を1%以下で希釈し、使用されるため、湿し水濃縮組成物においてはホウ素純分として1g/Lを含有することが可能である。例えばホウ砂(四ホウ酸ナトリウム・10水和物、ホウ素純分約11.3質量%)を含有する湿し水濃縮物組成物を1質量%希釈で使用する場合は、湿し水濃縮物組成物中にホウ砂を最大0.88質量%含有することができ、この条件において排水基準10mg/Lを満たすことができる。
本発明の平版印刷用湿し水組成物のpHは5.0〜9.0(海域排出可能な排水基準)であることが好ましい。さらに好ましくはpH5.8〜8.6(海域以外の公共用水域に排出される排水基準)である。pH5.8〜8.6領域にて使用した湿し水組成物を希釈、pH調整することなく、海域外に排水することが可能である。また、上記の地汚れ耐性、乳化安定効果を発現するために必要なホウ素化合物と非画線部や平版インキ組成物成分間のホウ酸エステル形成はpHの低下とともに困難となる。pH5.0以上の領域では、ホウ酸エステルが形成することができるため、地汚れ防止剤、乳化安定剤としての効果が十分に得られること、さらには排水基準も満たすことからpH5.0以上は必須である。
上記のpH調整においては、オルトホウ酸、三酸化二ホウ素は弱酸性、ホウ酸アルカリ金属塩は弱アルカリ性を示すが、後述する無機酸・無機酸塩、および有機酸・有機酸塩の組成比を調整することで、容易にpH調整が可能である。
次に本発明の平版印刷用湿し水組成物を構成する1,2−ジオール、1,3−ジオールに関して述べる。本発明でいう1,2−ジオール、1,3−ジオールは、アルコール性ヒドロキシル基を複数有し、かつ、前記複数のアルコール性ヒドロキシル基を連続する3つの炭素(n位とn+1位)もしくは(n位とn+2位)に有している、水に易溶な化合物である。本発明でいう1,2−ジオール、1,3−ジオールは、具体的にはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンタエリトリトールなどがある。前述したホウ素化合物は1,2−ジオール、1,3−ジオールと安定な錯体を形成するため、湿し水組成物中に一定量の1,2−ジオール、1,3−ジオールが多量に存在することで、ホウ素化合物と錯形成し、ホウ素化合物の非画線への吸着などを阻害する。
上記の1,2−ジオール、1,3−ジオールは、平版印刷湿し水組成物中に0.03質量%未満である。0.03質量%未満であることで、本発明のホウ素化合物の効果が発現できる。
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、1,2−ジオール、1,3−ジオール以外の水溶性溶剤を単独、もしくは併せて用いることができる。具体的にはアルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グライム系溶剤等が挙げられる。アルコール系溶剤としては1−プロパノール、2−プロパノール、1,4−ブタンジオール、エーテル系溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレンジオキサイド、グリコール系溶剤としてはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリコールエーテル系溶剤としてはジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、グライム系溶剤としてはエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシテトラエチレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
上記水溶性溶剤の含有量は、平版印刷用湿し水組成物に対して0.001〜0.5質量%の範囲であることが好ましい。
上記の水溶性溶剤は湿潤剤とも呼ばれ、表面張力を低下させ、版に対する整面性、水上がり性を高めることで、地汚れ耐性の向上、平版インキ組成物との乳化安定剤として作用する。
上記水溶性溶剤の中でも分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤を平版湿し水組成物中に0.005〜0.4質量%含有することが好ましい。0.005%質量以上あることで水上がり性が十分に付与でき、0.4質量%以下でインキとの相溶性を適度な状態に保ち、地汚れすることなく印刷することが可能であるとともに、100倍の湿し水濃縮組成物においても無機酸・塩、有機酸・塩の溶解性を損なうことなく、保存安定性も付与することができる。
本発明で使用される水は水道水、軟水、蒸留水、イオン交換水、RO水などを用いることができる。不溶性の塩を形成しにくいという観点からは、硬度が低い軟水、蒸留水、イオン交換水、RO水が好ましい。
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、無機酸、及びその塩を併せて用いることができる。無機酸としては亜硝酸、硝酸、リン酸、ピコリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等のポリリン酸、ケイ酸、メタケイ酸、亜硫酸、硫酸、炭酸、重炭酸などが挙げられる。塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、マグネシウムやカルシウム等の2価の陽イオンは不溶性の塩を形成しやすく、印刷機上のローラーにグレーズが堆積し、ローラーの不感脂化による転移不良やローラー剥げといったトラブルを発生する懸念があることから、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましい。
上記の無機酸、及びその塩は単独、もしくは複数配合することが可能であり、目標のpHに対しては酸と塩の配合量を調整することで、容易に操作可能である。適切な含有量としては、平版印刷湿し水組成物中に0.001質量%〜0.1質量%である。より好ましくは0.005質量%〜0.05質量%の範囲である。0.005質量%以上であると、印刷時の汚れが良好であり、一方、0.1質量%以下であれば、印刷機の錆びの点において好ましい。
本発明の平版印刷用湿し水組成物には、有機酸、及びその塩を併せて用いることができる。具体的にはギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、アコニット酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、マロン酸、レブリン酸、フィチン酸、有機スルホン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミノ五酢酸(DTPA)、カルボキシメチルタルトロン酸(CMT)、カルボキシメチルオキシコハク酸(CMOS)、ジヒドロキシエチルグリシン(DEG)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(HEIDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)等が挙げられる。これらの有機酸、塩は、後述する界面活性剤の効果を補助するビルダー効果を有する。界面活性剤の洗浄効果はpHに依存するため、pHを一定に保つpH緩衝能、非水溶性の塩を形成するようなカルシウム、マグネシウム、鉄などのイオンを封鎖するキレート効果を有する。
上記の有機酸、及びその塩は単独、もしくは複数配合することが可能であり、目標のpHに対しては酸と塩の配合量を調整することで、容易に操作可能である。適切な含有量としては、平版印刷湿し水組成物中に0.001質量%〜0.1質量%である。より好ましくは0.005質量%〜0.05質量%の範囲である。0.001質量%以上で十分なビルダー効果が得られ、0.1質量%以下の範囲で湿し水原液として析出物が発生することなく、溶解した状態で保存することが可能である。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は必要に応じて、界面活性剤を含有することができる。具体的には、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、陽イオン性界面活性剤としてアルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、陰イオン性界面活性剤としてアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、両性界面活性剤としてアルキルベタイン等が挙げられる。
上記の界面活性剤は湿し水組成物の表面張力の調整、平版インキ組成物との乳化安定性向上、版面の洗浄剤として作用する。
上記界面活性剤の含有量は、平版印刷用湿し水組成物に対して0.001〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。
本発明の平版印刷用湿し水組成物においては、防腐剤を併せて用いることができる。防腐剤は、平版印刷用湿し水組成物の保存中や使用中に発生する細菌、カビ、酵母などによる腐敗、増殖を抑制するためのものである。防腐剤としては、一般的に周知な以下の物質を単独、もしくは複数種、組み合わせて使用できる。例えば、イソチアゾリン系化合物として2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(HMIT)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMIT)、2−n−オクチルイソチアゾリン−3−オン(OIT)、4,5−ジクロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オン(DCOIT)、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)、N−メチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(MBIT)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチル−1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等、カチオン系化合物として、N−アルキル−N,N’−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジ−n−デシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ジデシルジアンモニウムプロピオネート、ジデシルジメチルアンモニウムカーボネート、クロロヘキシジン(塩酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩)、ポリヘキサメチレンビグアナイド(塩酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩)、ポリヘキサメチレングアニジン(塩酸塩、リン酸塩)等、臭素系化合物として2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロメタノール、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)エタン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等、ヨウ素系化合物として、3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカーバメート、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール、3−エトキシカルボニルオキシ−1−ブロモ−1,2−ジヨード−1−プロペン、2,3,3−トリヨードアリルアルコール等、ピリジン化合物として、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、ナトリウムピリチオン、メチルスルホニルテトラクロルピリジン等が挙げられる。
上記防腐剤の含有量は、防腐効果が良好であるという点より本発明の平版印刷用湿し水組成物に対して0.0001〜0.05質量%の範囲であることが好ましい。なお、防腐剤を2種以上併用する場合、上記配合量は全ての防腐剤の合計配合量である。
本発明の平版印刷用湿し水組成物に必要に応じて適宜添加する消泡剤としては、従来から湿し水組成物に使用されているものが使用できる。具体的には、シリコン系消泡剤等を単独又は混合して使用することができる。また、前記の界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等も消泡効果がある。
上記消泡剤の含有量は、消泡効果が良好であるという点より本発明の平版印刷用湿し水組成物に対して0.00001〜0.05質量%の範囲であることが好ましい。なお、消泡剤を2種以上併用する場合、上記配合量は全ての消泡剤の合計配合量である。
また、本発明の平版印刷用湿し水組成物には、必要に応じて適宜防錆剤を使用することができる。上記防錆剤は一般的に周知なものが使用でき、例えば、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾール(BTA)、トリルトリアゾール(TTA)、ジシクロヘキシルアミン亜硝酸塩(DICHAN)、サリチル酸ジシクロヘキシルアンモニウム(DICHA・SA)、安息香酸モノエタノールアンモニウム(MEA・BA)、安息香酸ジシクロヘキシルアンモニウム(DICHA・BA)、安息香酸ジイソプロピルアンモニウム(DIPA・BA)、ジイソプロピルアミン亜硝酸塩(DIPAN)等が挙げられる。
上記防錆剤の含有量は、防錆効果が良好であるという点より本発明の平版印刷用湿し水組成物に対して0.0001〜0.05質量%の範囲であることが好ましい。なお、防錆剤を2種以上併用する場合、上記配合量は全ての防錆剤の合計配合量である。
本発明の平版印刷用湿し水組成物は必要に応じて、水溶性高分子を用いることができる。例えば、グアガム、タラガム、タマリーンドシードガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、セルロース、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、寒天、カラギナン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化グアガム、ペクチン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル、無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
水溶性高分子は保湿湿潤剤として作用する他、地汚れ防止剤、増粘作用による水上がり性の向上、キレート剤などの効果を有する。
上記水溶性高分子の含有量は、平版印刷用湿し水組成物に対して0〜0.1質量%の範囲であることが好ましい。
上記、無機酸・無機塩、有機酸・有機酸塩、水溶性溶剤、界面活性剤、防腐剤、防錆剤、水溶性高分子は、生態分解性があり、被酸化性物質であることが多いため、本発明の平版印刷用湿し水組成物を希釈せずに廃棄される場合は、排水基準「(1)生物化学的酸素要求量(BOD):160mg/L(日間平均 120mg/L) (2)化学的酸素要求量(COD):160mg/L(日間平均 120mg/L)」となるように上記、範囲内で適宜、量を調整する必要がある。また、前記、成分に関して、窒素を含有する物があるため、同様の場合は、窒素に関する排水基準「(1)アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物(アンモニア性窒素に0.4を乗じたもの、亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計量):100mg/L (2)窒素含有量:120mg/L(日間平均 60mg/L)」となるように上記、範囲内で適宜、量を調整する必要がある。
本発明の平版印刷用湿し水組成物を調製は純水、軟水等の水に上記、ホウ素化合物を必須とし、適宜、必要に応じて、無機酸・無機酸塩、有機酸・有機酸塩、水溶性溶剤、界面活性剤、水溶性高分子、防腐剤、消泡剤を実際の印刷使用時の20〜1000倍の濃度の濃縮液として通常の攪拌機で必要であれば加熱しながら攪拌混合し、平版印刷用湿し水濃縮物を作成する。得られた湿し水濃縮物をホウ素化合物由来のホウ素純分が1〜10mg/Lとなる範囲で希釈し、使用する。
本発明の平版印刷用湿し水組成物を使用できるインキ、水の供給方式は特に制限されない。一般的な平版印刷用インキである枚葉インキ、オフ輪インキ、新聞インキ、一般的な給水方式での間欠給水式、ブラシ給水方式、スプレー給水方式、連続給水方式での各組合せでの使用が可能である。
本願発明の平版印刷用湿し水組成物の組成の一例としては、
・水 :97.2〜99.99189質量%
・ホウ素化合物 :ホウ素純分として1〜10mg/L
・1,2−ジオール,1,3ジオール :0〜0.03質量%未満
・分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤
:0.005〜0.2質量%
・無機酸/無機塩 :0.001〜0.1質量%
・有機酸/有機酸塩 :0.001〜0.1質量%
・界面活性剤 :0.001〜0.1質量%
・防腐剤 :0.0001〜0.05質量%
・消泡剤 :0.00001〜0.05質量%
・水溶性高分子 :0〜0.1質量%
などが好ましい組成として挙げられる。
以下に実施例をあげて本発明の詳細を述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものとする。
(実施例1〜32及び比較例1〜15)
表1に示す各材料をディスパーで攪拌混合し、実施例1〜32、比較例1〜13の各平版印刷用湿し水濃縮組成物を調製した後、得られた各湿し水濃縮組成物100部に対して水道水9900部の割合で希釈(濃縮組成物を1質量%希釈)して湿し水組成物とした。得られた湿し水組成物のpHはpHメータD−51(株式会社堀場製作所製)で測定した。また、表中の各原料は以下のものを用いた。ホウ酸カルシウムn水和物の水和数は下記、方法で測定した。
[1,2−ジオール、1,3−ジオール]
・プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社)
・1,2−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社)
・1,3−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社)
・グリセリン(花王株式会社)
[1,4−ジオール]
・1,4−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社)
[分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤]
・3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(商品名:ソルフィット、株式会社クラレ)
・エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル(商品名:スワソルブETB、丸善石油株式会社)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名:ハイソルブEDE、東邦化学工業株式会社)
[界面活性剤]
・エマルゲンLS−106(花王株式会社)
[酸・塩類]
・クエン酸(和光純薬工業株式会社)
・クエン酸三ナトリウム(和光純薬工業株式会社)
・四ホウ酸ナトリウム十水和物(ホウ砂、商品名:Borax、U.S.Borax社)
・四ホウ酸ナトリウム五水和物(商品名:Neobor、U.S.Borax社)
・四ホウ酸ナトリウム無水物(商品名:Dehybor、U.S.Borax社)
・ホウ酸(商品名:Optibor、U.S.Borax社)
・三酸化二ホウ素(商品名:Boric Oxide、U.S.Borax社)
・八ホウ酸ナトリウム四水和物(商品名:Timbor、U.S.Borax社)
・メタホウ酸ナトリウム四水和物(和光純薬工業株式会社)
・五ホウ酸アンモニウム八水和物(和光純薬工業株式会社)
・四ホウ酸ナトリウム無水物(商品名:Dehybor、U.S.Borax社)
・四ホウ酸リチウム五水和物(和光純薬工業株式会社)
・四ホウ酸カリウム四水和物(和光純薬工業株式会社)
・ホウ酸カルシウムn水和物(和光純薬工業株式会社)
・リン酸三ナトリウム(和光純薬工業株式会社)
[ホウ酸カルシウムn水和物の水和数測定]
微量水分測定装置 CA−100(株式会社三菱化学アナリテック社製)を用いて、カールフィッシャー法で測定した。表1に示す四ホウ酸ナトリウム十水和物、四ホウ酸ナトリウム五水和物、四ホウ酸ナトリウム無水物、八ホウ酸ナトリウム四水和物、メタホウ酸ナトリウム四水和物に関して、表2に示すよすように理論水和数からの含水率と測定値からの含水率の検量線よりホウ酸カルシウムn水和物の理論水和値をn=2.1とし、分子量を163.65と算出した。
〔評価〕
上記で得られた実施例、比較例の平版印刷用湿し水濃縮組成物、湿し水組成物について、以下の評価を実施し、結果を表1に示した。
[ホウ素化合物の溶解性]
25℃において平版印刷用湿し水濃縮組成物を静置し、沈殿物の有無を目視で下記の評価基準で評価した。
「○」:白濁していない
「×」:白濁しているあり
とし、「〇」を実用範囲内とする。
[保存安定性]
10℃において一週間、平版印刷用湿し水濃縮組成物を静置し、分離、沈殿物の有無を目視で下記の評価基準で評価した。
「○」:分離、または沈殿物が発生していない。
「×」:分離、または沈殿物が発生している。
とし、「〇」を実用範囲内とする。
[印刷試験]
上記で得られた実施例1〜32、比較例1〜15の各平版印刷用湿し水組成物を使用して、東浜精機社製東浜2N−750型にて湿し水供給スプレー値を一定にした状態で、以下の条件の下で印刷を行い、本来、インキの付着しない非画線部全体に占める汚れの部分の面積の度合いから印刷適性を評価した。
印刷機:東浜精機社製東浜2N−750型(東浜精機社製)
印刷版:新聞用サーマルネガCTP版「HN−NV」(富士フイルム社製)
湿し水装置:スプレー方式(SD−C、BALDWIN社製)
印刷インキ:新聞用墨インキ(東洋インキ社製)
印刷速度:500rpm
温度/湿度:25℃/60%
印刷用紙:SL+紙(超軽量紙、王子製紙社製、連量19k)
印刷部数:13000枚
水量値:+30ポイント〜−30ポイントまで1000部ごとに5ポイントずつ水量値を下げていく。
(評価基準)
「◎」:水量値−30ポイントにおいても印刷面に印刷汚れが全く認められないもの。
「○」:水量値−30ポイント〜−10ポイントにおいても印刷面に部分的に軽微な印刷汚れが認められるの。
「△」:水量値−5ポイント〜+15ポイント印刷面に軽微な印刷汚れの発生が認められるもの。
「×」:水量値+20〜+30ポイント印刷面に明らかな印刷汚れの発生が認められるもの。
とし、「△」以上を実用範囲内とする。
[ホウ素純分]
得られた上記、平版印刷用湿し水組成物の比重を1.00g/mLとし、含まれるホウ素純分に関して排水基準を元に下記の基準で評価した。
(評価基準)
<評価方法>
「○」:平版印刷用湿し水組成物中のホウ素純分が10mg/L以内である。
「×」:平版印刷用湿し水組成物中のホウ素純分が10mg/Lを超過している。
とし、「〇」を実用範囲内とする。
[リン純分]
得られた上記、平版印刷用湿し水組成物の比重を1.00g/mLとし、含まれるリン純分に関して排水基準を元に下記の基準で評価した。
(評価基準)
<評価方法>
「○」:平版印刷用湿し水組成物中のリン純分が16mg/L以内である。
「×」:平版印刷用湿し水組成物中のリン純分が16mg/Lを超過している。
とし、「〇」を実用範囲内とする。



[排水基準(pH)]
得られた上記、平版印刷用湿し水組成物のpHを排水基準を元に下記の基準で評価した。
(評価基準)
<評価方法>
「○」:pH5.8以上、8.6以下である
「△」:pH5.0以上、9.0以下である
「×」:pH5.0未満、9.0を超過している。
とし、「△」以上を実用範囲内とする。
実施例1〜32はいずれの評価も△以上となり、実用範囲内に達しており、印刷面の汚れは比較例14、15のリンを含んだ系以上の良好な結果が得られた。
実施例1〜3、比較例1〜3はホウ素化合物量の比較である。実施例1〜3のようにホウ素純分として1〜10mg/Lの範囲内では印刷面の汚れ、その他評価項目ともに実用範囲内である。比較例1、2ではホウ素化合物量が少なく、印刷面の汚れが発生し、比較例3はホウ素の排水基準を満たしてない。
実施例4〜7、比較例6〜9は1,2−ジオール、1,3−ジオールを含む系である。実施例4〜7のように1,2−ジオール、1,3−ジオールの量が0.03質量%未満の範囲では、印刷面の汚れは実用範囲内となっているが、0.03質量%を超過した比較例6〜9は印刷面が汚れやすい傾向にあった。実施例8、9の1,4−ジオールの系では、1,2−ジオール、1,3−ジオールの系よりも良好な傾向が見られた。
実施例2、10〜13、20、27〜32、比較例10〜12では分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤を含む系の比較である。実施例28、29、31、32ではホウ素化合物の溶解性を維持するために溶解性の高い五ホウ酸アンモニウム八水和物を用いている。比較例10、11のように水溶性溶剤が湿し水濃縮組成物50質量%以上となると保存安定性が劣化した。比較例12では無溶剤であるが、印刷面に汚れが発生した。
実施例2、14〜24、比較例13はホウ素化合物種の比較である。いずれの実施例もクエン酸、クエン酸三ナトリウム量を調整し、同程度のpHにおいていずれも印刷面の汚れの評価は良好であった。比較例13のホウ酸カルシウムの系ではホウ酸塩が完全に溶解せず、白濁を生じた。
上記の通り、本発明の一定範囲量未満の1,2−ジオール、1,3−ジオールを有したホウ素化合物した平版湿し水組成物は、適正なpH範囲、ホウ素化合物を適切な量に調整することで、印刷時の汚れが発生することなく、安定した印刷を実現できるものである。さらに、分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤を一定量含むことで、より良好となる。

Claims (2)

  1. pHが5以上9以下の、ホウ素化合物を含有する平版印刷用湿し水組成物であって、
    前記ホウ素化合物が、ホウ酸、前記ホウ酸のアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、
    および、ホウ素酸化物からなる群より選択される少なくとも一つであり、
    前記ホウ素化合物の含有濃度がホウ素純分として1〜10mg/Lであり
    1,2−ジオール、または1,3−ジオールを組成物全体の0.03質量%未満含有

    分子内にアルコール性ヒドロキシル基を0〜1個有する水溶性溶剤を組成物全体の0.
    005〜0.4質量%含有することを特徴とする平版印刷用湿し水組成物(ただし、Lは
    、0.001m3を表す)。
  2. 請求項記載の湿し水組成物を用いて印刷する工程を含む平版印刷物の製造方法。
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