JP2004255728A - 平版印刷版用湿し水及び平版印刷版用原版を用いた印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】感熱性平版印刷版用原版の機上現像において、機上現像が完了するまでに要する印刷用紙が少なくかつ耐刷性に優れた印刷方法を提供する。
【解決手段】B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水;支持体上に感熱層を有する平版印刷版用原版に画像記録する工程と、上記湿し水を版面に供給し、非画像部の感熱層を除去する工程と、上記湿し水及びインキを用いて印刷する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版用原版を用いた印刷方法。
【解決手段】B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水;支持体上に感熱層を有する平版印刷版用原版に画像記録する工程と、上記湿し水を版面に供給し、非画像部の感熱層を除去する工程と、上記湿し水及びインキを用いて印刷する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版用原版を用いた印刷方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用湿し水に関し、より詳しくは、いわゆる機上現像による製版が可能な感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷方法に好適に使用される平版印刷版用湿し水に関する。本発明はさらに、該湿し水を使用する、感熱性平版印刷版用原版を用いた製版及びそれに続く印刷の方法に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録した原版をそのまま印刷機上で機上現像により製版し続いて印刷する感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷の方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版の作製は、中間材料であるリスフィルムを介して平版印刷版用原版に露光するシステムで行われてきた。しかし、近年の印刷分野におけるデジタル化の急速な進展とともに、印刷版作製工程は、コンピュータに入力し編集されたデジタルデータを印刷版用原版に直接出力するCTPシステムに変わりつつある。さらに、一層の工程合理化を目指して、露光後、現像処理することなしに、そのまま印刷が行える現像不要の平版印刷版用原版が開発されている。
【0003】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機の版胴に装着し、版胴を回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層(感熱層)を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
【0004】
機上現像に関連した技術が種々提案されている。例えば、支持体上に、少なくともエチレン性飽和化合物と光重合開始剤を内包するマイクロカプセルを含む感光層を設けた感光性エレメントを画像露光後何ら処理せずにオフセット印刷機に取り付け直接印刷機上で未露光部の感光層を除去し直ちに印刷を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、親水性バインダーポリマー中に疎水性熱可塑性重合体の微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版用原版が記載されている(例えば、特許文献2参照。)。この公報には、該平版印刷版用原版を赤外線レーザー露光し、感熱層中の疎水性熱可塑性重合体微粒子を熱により合体させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取付け、湿し水及び/又はインキにより未露光部を除去する(機上現像)ことが記載されている。この平版印刷版用原版は感光域が赤外線域であることにより、明室取り扱い適性を有している。
【0005】
そのほか、熱可塑性樹脂微粒子を含む層が形成されている平版印刷版用原版に熱を付与することで、熱融着画像を形成させた後、機上現像により印刷版を作製することが提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照。)。
また、熱可塑性微粒子ポリマーと熱反応性基を有する微粒子ポリマー及び熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのうちの少なくともいずれかとを含有する感熱層を有する平版印刷版用原版が、機上現像性が良好であり、高感度、かつ高耐刷性を有することが示されている(例えば、特許文献7参照。)
【0006】
そのほか、ビニルオキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが示されていて(例えば、特許文献8参照。)、また、エポキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが示されている(例えば、特許文献9参照。)。
さらに、ラジカル重合性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び感熱性ラジカル発生剤を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが提案されている(例えば、特許文献10参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−166943号公報
【特許文献2】
特開平9−123387号公報
【特許文献3】
特開平9−127683号公報
【特許文献4】
特開平9−123388号公報
【特許文献5】
特開平9−131850号公報
【特許文献6】
国際公開第99/10186号パンフレット
【特許文献7】
特開2001−293971号公報
【特許文献8】
特開2002−29162号公報
【特許文献9】
特開2002−46361号公報
【特許文献10】
特開2002−137562号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の技術による平版印刷版用原版の耐刷性は、従来より使用されているPS版に比較すると大幅に低いレベルであった。このことは露光時の重合による硬化が感熱層表面で支配的に生じ、支持体と感熱層の界面付近での重合反応は充分に進行しないことが一因となっている。さらに耐刷性を向上させる感材設計にすると、機上現像性が悪化する傾向になる。すなわち、印刷機上で、露光済みの原版に湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った場合、機上現像が完了するまでに要する印刷用紙枚数が多くなってしまう。本発明の目的は、機上現像性を悪化させることなく耐刷性を向上させることにある。本発明の目的はすなわち、感熱性平版印刷版用原版の機上現像において、機上現像が完了するまでに要する印刷用紙が少なくかつ耐刷性に優れた印刷方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
機上現像に向けた平版印刷版用原版として、支持体上に感熱層を設けた感熱性平版印刷版用原版があり、その感熱層は好ましくは疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含むものである。さらに、該親水性樹脂の例としてヒドロキシル基やカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましく使用されている。
本発明者は、このような感熱性平版印刷版用原版に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の元素を含む化合物を湿し水組成物に含有させておくことで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水である。
【0010】
本発明はさらに、支持体上に感熱層を有する平版印刷版用原版に画像記録する工程と、上記湿し水を版面に供給し、非画像部の感熱層を除去する工程と、上記湿し水及びインキを用いて印刷する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版用原版を用いた印刷方法に向けられている。
本発明の印刷方法の実施態様では、該感熱層が疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含有するものである。該疎水性化前駆体の具体例として熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルなどの微粒子が挙げられる。また、該親水性樹脂の好ましい例として、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が挙げられる。
【0011】
本発明の湿し水を版面に供給することにより、未露光部の感熱層が容易に除去(機上現像)され、引き続き、該湿し水とインキを用いて印刷することにより、損紙が少なく、非画像部の汚れのない印刷物が得られる。さらに引き続き印刷されると、画像部中の親水性樹脂と該湿し水中の上記元素を含む化合物とが架橋反応することによって、硬化が促進していき、非画像部の支持体表面に充分に親水性を保持しながら耐刷性が向上すると考えられる。
【0012】
本発明の印刷方法は、少なくとも印刷機上において、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有する湿し水を用いて現像処理を行うものである。従って、感熱性平版印刷版用原版に画像記録する工程は、現像処理を行うのと同一の印刷機上で行ってもよく、あるいは、別途、画像記録した感熱性平版印刷版用原版を印刷機上に取りつけて現像工程を行ってよい。また、本発明は、湿し水を供給して所定の時間経過した後、インキを供給して印刷工程を行えばよいが、湿し水とインキとを実質的に同時に供給して現像工程を行ってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、湿し水、製版並びに印刷方法、及び感熱性平版印刷版用原版の順に、詳細に説明する。
[湿し水]
本発明の湿し水は、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の湿し水に使用できるB、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩には、これらの元素を含む酸、その塩類、これらの元素のハロゲン化物、これらの元素の酸化物、これらの元素を陽イオンとして持つ塩類などがある。具体的に以下のものが挙げられる。
ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸塩(例えばホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウムなど)、ホウフッ化水素酸、チタン(IV)硫酸塩(チタニルスルフェート)、α−チタン酸、チタン酸塩(例えばチタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムなど)、チタンフッ化水素酸、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、ハロゲン化アルミニウム(例えばフッ化アルミニウムなど)、ハロゲン化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコン酸(IV)塩(例えばジルコン酸硝酸塩、ジルコン酸塩硫酸塩)、ジルコンフッ化水素酸、スズ酸塩(例えばスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなど)、ハロゲン化スズ(例えば塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ、フッ化第一スズなど)、硫酸第一スズ、オキシニ塩化バナジウム、五酸化バナジウム、硫酸バナジウム、クロム酸塩(クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、クロム酸リチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸銅など)、硝酸クロム(III)、フッ化クロム(III)など。
【0015】
本発明の湿し水には、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ホウ酸、ホウ酸塩、チタニルスルフェートなどが好ましく使用できる。
湿し水における上記化合物の含有量は、湿し水の総質量に基づいて0.01〜5質量%が適当であり、好ましくは0.02〜1.5質量%である。上記範囲の含有量であれば、機上現像性が良好で且つ耐刷性を向上する効果が充分にある。
【0016】
本発明の湿し水には、上記成分の他に、以下のものを含ませることができる。
(a)濡れ性向上のための助剤
(b)水溶性高分子化合物
(c)pH調整剤
(d)臭気マスキング剤
(e)その他((i)防腐剤、(ii)キレート化剤、(iii)着色剤、(iv)防錆剤、(v)消泡剤など)
【0017】
(a)濡れ性向上の助剤として、界面活性剤や他の溶剤を使用することができる。界面活性剤のうち、例えばアニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホ琥珀酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0018】
非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、トリアルキルアミンオキシド類などが挙げられる。その他、弗素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤も使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その含有量は発泡の点を考慮すると、1質量%以下、好ましくは0.001〜0.5質量%が適当である。また、2種以上併用することもできる。
【0019】
助剤としてはその他に、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、
【0020】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、分子量200〜1000のポリプロピレングリコール及びそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル及びモノブチルエーテル、
【0021】
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
その他、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、1−位が炭素原子数1〜8のアルキル基で置換された2−ピロリドン誘導体などが挙げられる。
本発明で使用する湿し水にはこれらの溶剤を1種単独で、又は二種以上を併用して使うことができる。一般にこれらの溶剤は、湿し水の全重量に基づいて0.02〜1質量%の範囲で使用するのが適当で、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0022】
本発明の湿し水に使用する(b)水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)等の天然物及びその変性体、ポリエチレングリコール及びその共重合体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸及びその共重合体の合成物、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースは特に好ましい。水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水に対して0.001〜0.5質量%が適しており、より好ましくは、0.005〜0.2質量%である。
【0023】
本発明の湿し水に用いられる(c)pH調整剤としては、水溶性の有機酸、無機酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも1種が使用でき、これらの化合物は湿し水のpH調整あるいはpH緩衝、平版印刷版支持体の適度なエッチング又は防腐食に効果がある。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。無機酸としては例えばリン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げられる。更にこれら有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩も好適に用いられ、これらの有機酸、無機酸及びこれらの塩類から選ばれる1種を単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
【0024】
これらpH調整剤の本発明の湿し水への添加量は有機酸、無機酸またはこれらの塩を合わせて0.001〜0.1質量%の範囲が好ましい。0.001質量%以上であると、平版印刷版の支持体であるアルミニウムのエッチング力により印刷時の汚れが良好である。一方、0.1質量%以下であれば、印刷機の錆びの点において好ましい。 湿し水のpH値は3〜7の範囲の酸性領域で用いることが好ましいが、アルカリ金属水酸化物、リン酸、アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、ケイ酸塩などを含有したpH7〜11のアルカリ性領域で用いることもできる。
【0025】
(d)臭気マスキング剤としては、従来香料としての用途が知られているエステルを含む。例えば下記一般式(I)で示されるものがある。
R1−COOR2 (I)
一般式(I)の化合物において、式中R1は炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基である。アルキル基又はアルケニル基の場合、その炭素原子数は好ましくは4〜8である。R1がアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す場合、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルケニル基は特に二重結合を1個有するものが適当である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。なお、R1で示されるアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基の1以上の水素原子が、水酸基又はアセチル基で置換されていてもよい。R2は炭素原子数3〜10のアルキル基、アラルキル基又はフェニル基であって、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルキル基の場合、その炭素原子数は好ましくは3個から9個である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。
【0026】
使用できる(d)臭気マスキング剤として具体的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、4−メチルペンタン酸(イソヘキサン酸)、2−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、2−デセン酸、ラウリン酸又はミリスチン酸のエステルが挙げられる。その他、フェニル酢酸ベンジル、アセト酢酸エチルやアセト酢酸2−ヘキシルといったアセト酢酸エステル等もある。中でも好ましいものとして、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが挙げられ、特に酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが好適である。これらの臭気マスキング剤(d)の湿し水における含有量は、湿し水の全重量に基づいて0.001〜0.5質量%が適当で、より好ましくは0.002〜0.2質量%である。これらを使用することにより、作業環境をより改善することができる。また。バニリン、エチルバニリン等を併用してもよい。
【0027】
本発明の湿し水に使用する(e)(i)防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水に対し、0.001〜0.5質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌、酵母に対して効力のあるような2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0028】
本発明の湿し水には、さらに、(e)(ii)キレート化剤を添加することができる。湿し水は、使用時に通常湿し水組成物に、水道水、井戸水などを加えて希釈して調製されるが、この際、希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもある。このような場合、キレート化剤を添加しておくことにより、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化剤としては例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに、有機アミンの塩も有効である。これらのキレート化剤は使用時の湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。使用時の湿し水中のキレート化合物の含有量としては、0.0001〜0.5質量%が適当で、好ましくは0.0005〜0.2質量%である。
【0029】
本発明の湿し水に使用する(e)(iii)着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo. 19140、15985、赤色色素としてはCINo. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo. 42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo. 42095、等が挙げられる。本発明の湿し水に使用する(e)(iv)防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。本発明の湿し水に使用する(e)(v)消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型等いずれも使用することができる。
【0030】
本発明の湿し水を適用する平版印刷版は特に限定されるものではない。本発明の湿し水を好適に用いることができるのは、画像記録した原版を印刷機上で機上現像により製版し続いて印刷する感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷方法である。
【0031】
[製版及び印刷方法]
本発明において、感熱性平版印刷版用原版は、印刷に先立って、熱により画像(潜像)が形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられる。なかでも、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の固体高出力赤外線レーザーによる露光が好ましい。
このように画像記録された平版印刷版用原版を、それ以上の処理なしに印刷機の版胴上に装着し、その版面へ湿し水とインキを供給する。版面へ湿し水とインキを供給する態様は、湿し水とインキを実質的に同時に供給してもよいし、又は、好ましくは、湿し水を版面に供給し機上現像をある程度進行させた後、インキを供給する。こうして湿し水とインキを版面へ供給しながら、さらに紙を供給して通常の印刷操作を開始する。このように、印刷機上で版面へ湿し水及びインキを供給し、さらに紙を供給する通常の印刷開始操作により、未露光部の感熱層が除去(機上現像)され、印刷が進むと、従来の平版印刷版と同様な印刷安定性が得られる。
本発明の製版及び印刷方法はまた、例えば特開平9−123388号公報に開示されているように、感熱性平版印刷版用原版を印刷機の版胴上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、続いて機上現像し、印刷するシステムを採用して実施することができる。
【0032】
[感熱性平版印刷版用原版]
本発明で使用する感熱性平版印刷版用原版は、支持体上に感熱層を設けたものであって、より具体的には親水性支持体上に感熱層を有し、該感熱層は好ましくは疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含有する。
感熱層に用いられる疎水性化前駆体とは、好ましくは、熱が加えられたときに親水性の感熱層を疎水性に変換できる微粒子であって、例えば、熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルが挙げられる。感熱層は、熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルから選ばれる少なくとも1種の微粒子を含むことができる。
【0033】
感熱層に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許出願第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法の他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
【0034】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱硬化性ポリマー微粒子及び熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられる。
上記記熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素又はメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミン又はその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びエポキシ樹脂である。好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、及びN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミド又はメタクリレートもしくはアクリレートの重合体又は共重合体を挙げることができる。
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱硬化性ポリマー微粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に微粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
【0035】
本発明に用いられる熱反応性基を有するポリマー微粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及び反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合又は懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0037】
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマー又は親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
【0038】
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度及び経時安定性が得られる。
【0039】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、疎水性化化合物を内包する。疎水性化合物としては、熱反応性官能基を有する化合物が好ましい。この熱反応性基としては、前記の熱反応性基を有するポリマー微粒子に用いられるものと同じ熱反応性基を好適なものとして挙げることができる。以下、熱反応性基を有する化合物についてより詳しく説明する。
【0040】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などを少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を好適なものとして挙げられる。このような化合物群は当該産業分野において、重合性組成物用のモノマー又は架橋剤として広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定することなく用いることができる。化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体、オリゴマー、重合体もしくは共重合体、又はそれらの混合物である。
【0041】
具体例としては、特開2001−277740号公報に重合性不飽和基を有する化合物として記載されている化合物が挙げられる。代表的な化合物例として、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートとキシリレンジイソシアナートとの付加体などが挙げられる。しかし、これらに限定されない。
【0042】
エチレン性重合性不飽和基を有する重合体又は共重合体形態のものとして、アリルメタクリレートの共重合体を挙げることができる。例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
【0043】
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物としては、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン{ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル}、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジル又はメタクリ酸グリシジルの重合体もしくは共重合体等を挙げることができる。
【0045】
具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
【0046】
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0047】
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
【0048】
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0049】
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
【0050】
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0051】
本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0052】
上記の熱反応性基を有する化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号明細書、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。マイクロカプセル壁に熱反応性基を有する化合物を導入しても良い。
【0054】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましいが、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0055】
このようなマイクロカプセルは、カプセル同志が熱により合体してもよいし、合体しなくとも良い。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面もしくはマイクロカプセル外に滲み出したもの、又は、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせば良い。添加された親水性樹脂又は添加された低分子化合物と反応してもよい。また2種類以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。従って、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0056】
上記ポリマー微粒子及びマイクロカプセルの感熱層への添加量は、いずれの微粒子の場合も、固形分換算で、感熱層固形分の50質量%以上が好ましく、70〜98質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像形成ができ、良好な耐刷性が得られる。
【0057】
感熱層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0058】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0059】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0060】
感熱層には、機上現像性や感熱層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、マイクロカプセルに内包される親油性化合物が有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、親油性化合物がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。親水性樹脂の中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
【0061】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0062】
上記親水性樹脂の感熱層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0063】
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカプリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
【0064】
感熱層には、感度を高めるため、光を熱にする機能の光熱変換剤が含有される。光熱変換剤としては、赤外線、中でも近赤外線(波長700〜2000nm)を吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子を用いることができる。
【0065】
例えば、特開2001−301350号公報、特開2002−137562号公報、日本印刷学会誌、38卷35〜40頁(2001)「新イメージング材料、2.近赤外線吸収色素」等に記載の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が好適に用いられる。顔料及び金属微粒子は、必要に応じて、公知の表面処理を施したものを用いることができる。
【0066】
染料又は色素として、より具体的には、米国特許第4756993号、同第4973572号明細書、特開平10−268512号、同11−235883号、特公平5−13514号、同5−19702号公報、特開2001−347765号公報等に記載のシアニン色素、ポリメチン色素、アゾメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム及びチオピリリウム塩系染料、ジチオール金属錯体、フタロシアニン色素等が挙げられる。特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、フタロシアニン色素が挙げられる。
【0067】
顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。中でもカーボンブラックが好適である。
【0068】
金属微粒子としてはAg、Au、Cu、Sb、Ge及びPbの微粒子が好ましく、Ag、Au及びCuの微粒子がより好ましい。
【0069】
光熱変換剤を感熱層に添加する場合、ポリマー微粒子又はマイクロカプセルに含有した形で添加してもよいし、これら微粒子外の親水性媒質中に添加してもよい。以下に、特に好適な光熱変換剤の具体例を示すが、これらに限定されない。(IR−1)〜(IR−11)は、親水性媒質中に添加するのに好適な親水性の光熱変換剤であり、(IR−21)〜(IR−29)は、ポリマー微粒子又はマイクロカプセル中に含有させるのに好適な親油性の光熱変換剤である。
【0070】
【化1】
【0071】
【化2】
【0072】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
光熱変換剤の添加割合は、感熱層固形分の1〜50質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。これらの範囲で、感熱層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0075】
感熱層はまた、前記熱反応基の反応を開始又は促進する反応促進剤を含有することができる。また、反応促進剤は、酸又はラジカルを発生するため、発生した酸又はラジカルで変色する染料と組み合わせて焼き出し系を形成できる。かかる反応促進剤としては、公知の酸前駆体、酸発生剤、熱ラジカル発生剤と呼ばれる化合物が好適なものとして挙げられる。例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、焼き出し画像形成用の酸発生剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等が挙げられる。
【0076】
より具体的には、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報などに記載のトリハロメチル置換へテロ環化合物に代表される有機ハロゲン化合物、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、オニウム塩(例えばヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩など)を挙げることができる。またこれらの酸又はラジカルを発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物を用いることもできる。以下に化合物例を挙げるが、これらに限定されない。
【0077】
【化5】
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
【化9】
【0082】
上記反応促進剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、反応促進剤の感熱層への添加は、感熱層塗布液への直接添加でも、ポリマー微粒子やマイクロカプセル中に含有させた形での添加でもよい。感熱層中の反応促進剤の含有量は、感熱層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0083】
感熱層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0084】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0085】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0086】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、感熱層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0087】
感熱層には、さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に入れられるモノマーとして例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
【0088】
また、本発明においては、感熱層塗布液の調製中又は保存中においてエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して0.01〜5質量%が好ましい。
【0089】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、感熱層固形分の0.1〜約10質量%が好ましい。
【0090】
また、感熱層には無機微粒子を添加してもよく、無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられ、これらは光熱変換性でなくても皮膜の強化や表面粗面化による界面接着性の強化などに用いることができる。
【0091】
また、無機微粒子の平均粒径は5nm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。粒径がこの範囲内で、樹脂微粒子や光熱変換剤の金属微粒子とも親水性樹脂内に安定に分散し、感熱層の膜強度を充分に保持し、印刷汚れを生じにくい親水性に優れた非画像部を形成できる。
【0092】
このような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。無機微粒子の感熱層への含有量は、感熱層の全固形分の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0093】
また、感熱層には、感熱層の分散安定性、製版及び印刷性能向上や塗布性の向上のため、特開平2−195356号、特開昭59−121044号、特開平4−13149号公報及び特願2001−169731号に記載されているノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性又はフッ素系の界面活性剤を添加することができる。これらの界面活性剤の好適な添加量は、感熱層全固形物の0.005〜1質量%である。
【0094】
さらに、感熱層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0095】
感熱層は、必要な上記各成分を溶剤に溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0096】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感熱層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0097】
本発明で使用する平版印刷版用原版は、保存時の親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の感熱層表面を保護するため、感熱層上に、特開2001−162961号公報、特開2002−19318号公報に記載の水溶性樹脂を含有するオーバーコート層を設けることができる。
【0098】
オーバーコート層に用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、等を挙げることができる。目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0099】
上記のオーバーコート層には、感度を向上させるため光熱変換剤を含有させることができる。好ましい光熱変換剤としては、水溶性の赤外線吸収色素が挙げられる。例えば、前記の感熱層の説明中に示した(IR−1)〜(IR−11)が好適に用いられる。
【0100】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0101】
さらに、上記オーバーコート層には、積み重ね保存時のプレート間のくっつきを防止するため、特開2001−341448号公報記載のフッ素原子及びケイ素原子のうちいずれかを有する化合物を含有することができる。
【0102】
該オーバーコート層の厚みは、0.1〜4.0μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による感熱層の汚染を防止できる。
【0103】
本発明で使用する平版印刷版用原版において前記感熱層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0104】
該アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにはアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であっても良い。しかし、本発明に適用されるアルミニウム板は、従来から公知公用の素材のアルミニウム板をも適宜に利用することができる。
【0105】
本発明で用いられる上記の基板の厚みは0.05mm〜0.6mm、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0106】
アルミニウム板を使用するに先立ち、表面の粗面化、陽極酸化などの表面処理をすることが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び感熱層との接着性の確保が容易になる。
【0107】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
【0108】
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0109】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
【0110】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。
【0111】
上記親水化処理のための好適な親水性化合物として、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、リン酸塩/無機フッ素化合物などが挙げられる。
【0112】
本発明で用いる支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0113】
本発明においては、感熱層を塗布する前に、必要に応じて、特開2001−322365号公報に記載の、例えばホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層、又は例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアクリル酸などの含有する有機下塗層が設けることができる。また、この下塗層には、前記赤外線吸収色素を含有させることができる。
【0114】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
[支持体の製造例]
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0116】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。次いで支持体と感熱層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30重量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20重量%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0117】
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
【0118】
[熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの合成例]
油相成分として、ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)5g、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン(株)製芳香族イソシアネートオリゴマー、マイクロカプセル壁材)3.75g、赤外線吸収色素(本明細書記載のIR−27)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分及び水相成分を、ホモジナイザーを用い12000rpmで10分間乳化した。その後テトラエチレンペンタミン(5官能アミン、マイクロカプセル壁架橋剤)0.38gを水26gに溶解したものを添加し、水冷しながら30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は24質量%であり、平均粒径は0.3μmであった。
【0119】
[感熱性平版印刷版用原版の作製]
上記製造例で得たアルミニウム基板上に、上記合成例で得たマイクロカプセルを含む下記の感熱層塗布液をバー塗布した後、オーブンで100℃60秒の条件で乾燥し、感熱層の乾燥塗布量1.0g/m2の感熱性平版印刷版用原版を作製した。
【0120】
<感熱層塗布液>
水 35.4g
合成例で得たマイクロカプセル液 9.0g
酸前駆体(本明細書に記載のAI−7) 0.24g
【0121】
[湿し水の調製]
下記表1〜表3の組成に従って、実施例1〜18及び比較例1で各々使用する湿し水を調製した。組成の残余は水であり、湿し水における各成分の含有量の単位は質量%である。
こうして調製した湿し水を以下のように製版、印刷に用いた。
【0122】
[印刷評価]
上記のようにして得た感熱性平版印刷版用原版を用いて、次のように製版、印刷を行った。すなわち、印刷版用原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力17W、外面ドラム回転数100rpm、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。表1〜表3に示す組成の各種湿し水とGEOS−G(H)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製、25℃におけるタック値12.2)を用い、湿し水を供給した後、毎時1万枚の印刷速度で、インキローラ表面の温度が25℃になるように冷却水の温度を調節しながらインキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。機上現像が完了するまでに要した印刷用紙の枚数、すなわち全面黒く汚れた状態から正常な印刷物に変化するまで要した枚数、及び耐刷性(版飛びを起こすまでの印刷枚数)を調べた。
それらの結果を表1〜3に併せて示す。
【0123】
【表1】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0124】
【表2】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0125】
【表3】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0126】
【発明の効果】
本発明の湿し水によれば、機上現像性を悪化させることなく、すなわち機上現像が完了するまでに要する印刷用紙枚数を増やすことなく、耐刷性に優れた印刷方法が達成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版用湿し水に関し、より詳しくは、いわゆる機上現像による製版が可能な感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷方法に好適に使用される平版印刷版用湿し水に関する。本発明はさらに、該湿し水を使用する、感熱性平版印刷版用原版を用いた製版及びそれに続く印刷の方法に関する。より詳しくは、デジタル信号に基づいた赤外線走査露光による画像記録が可能であり、画像記録した原版をそのまま印刷機上で機上現像により製版し続いて印刷する感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷の方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版の作製は、中間材料であるリスフィルムを介して平版印刷版用原版に露光するシステムで行われてきた。しかし、近年の印刷分野におけるデジタル化の急速な進展とともに、印刷版作製工程は、コンピュータに入力し編集されたデジタルデータを印刷版用原版に直接出力するCTPシステムに変わりつつある。さらに、一層の工程合理化を目指して、露光後、現像処理することなしに、そのまま印刷が行える現像不要の平版印刷版用原版が開発されている。
【0003】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機の版胴に装着し、版胴を回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な画像形成層(感熱層)を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
【0004】
機上現像に関連した技術が種々提案されている。例えば、支持体上に、少なくともエチレン性飽和化合物と光重合開始剤を内包するマイクロカプセルを含む感光層を設けた感光性エレメントを画像露光後何ら処理せずにオフセット印刷機に取り付け直接印刷機上で未露光部の感光層を除去し直ちに印刷を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、親水性バインダーポリマー中に疎水性熱可塑性重合体の微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版用原版が記載されている(例えば、特許文献2参照。)。この公報には、該平版印刷版用原版を赤外線レーザー露光し、感熱層中の疎水性熱可塑性重合体微粒子を熱により合体させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取付け、湿し水及び/又はインキにより未露光部を除去する(機上現像)ことが記載されている。この平版印刷版用原版は感光域が赤外線域であることにより、明室取り扱い適性を有している。
【0005】
そのほか、熱可塑性樹脂微粒子を含む層が形成されている平版印刷版用原版に熱を付与することで、熱融着画像を形成させた後、機上現像により印刷版を作製することが提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6参照。)。
また、熱可塑性微粒子ポリマーと熱反応性基を有する微粒子ポリマー及び熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのうちの少なくともいずれかとを含有する感熱層を有する平版印刷版用原版が、機上現像性が良好であり、高感度、かつ高耐刷性を有することが示されている(例えば、特許文献7参照。)
【0006】
そのほか、ビニルオキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが示されていて(例えば、特許文献8参照。)、また、エポキシ基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び酸前駆体を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが示されている(例えば、特許文献9参照。)。
さらに、ラジカル重合性基を有する化合物を内包するマイクロカプセル、親水性樹脂及び感熱性ラジカル発生剤を含有する画像形成層を有する機上現像型の感熱性平版印刷版用原版によって、良好な耐刷性が得られることが提案されている(例えば、特許文献10参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−166943号公報
【特許文献2】
特開平9−123387号公報
【特許文献3】
特開平9−127683号公報
【特許文献4】
特開平9−123388号公報
【特許文献5】
特開平9−131850号公報
【特許文献6】
国際公開第99/10186号パンフレット
【特許文献7】
特開2001−293971号公報
【特許文献8】
特開2002−29162号公報
【特許文献9】
特開2002−46361号公報
【特許文献10】
特開2002−137562号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の技術による平版印刷版用原版の耐刷性は、従来より使用されているPS版に比較すると大幅に低いレベルであった。このことは露光時の重合による硬化が感熱層表面で支配的に生じ、支持体と感熱層の界面付近での重合反応は充分に進行しないことが一因となっている。さらに耐刷性を向上させる感材設計にすると、機上現像性が悪化する傾向になる。すなわち、印刷機上で、露光済みの原版に湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った場合、機上現像が完了するまでに要する印刷用紙枚数が多くなってしまう。本発明の目的は、機上現像性を悪化させることなく耐刷性を向上させることにある。本発明の目的はすなわち、感熱性平版印刷版用原版の機上現像において、機上現像が完了するまでに要する印刷用紙が少なくかつ耐刷性に優れた印刷方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
機上現像に向けた平版印刷版用原版として、支持体上に感熱層を設けた感熱性平版印刷版用原版があり、その感熱層は好ましくは疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含むものである。さらに、該親水性樹脂の例としてヒドロキシル基やカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましく使用されている。
本発明者は、このような感熱性平版印刷版用原版に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の元素を含む化合物を湿し水組成物に含有させておくことで、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水である。
【0010】
本発明はさらに、支持体上に感熱層を有する平版印刷版用原版に画像記録する工程と、上記湿し水を版面に供給し、非画像部の感熱層を除去する工程と、上記湿し水及びインキを用いて印刷する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版用原版を用いた印刷方法に向けられている。
本発明の印刷方法の実施態様では、該感熱層が疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含有するものである。該疎水性化前駆体の具体例として熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルなどの微粒子が挙げられる。また、該親水性樹脂の好ましい例として、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が挙げられる。
【0011】
本発明の湿し水を版面に供給することにより、未露光部の感熱層が容易に除去(機上現像)され、引き続き、該湿し水とインキを用いて印刷することにより、損紙が少なく、非画像部の汚れのない印刷物が得られる。さらに引き続き印刷されると、画像部中の親水性樹脂と該湿し水中の上記元素を含む化合物とが架橋反応することによって、硬化が促進していき、非画像部の支持体表面に充分に親水性を保持しながら耐刷性が向上すると考えられる。
【0012】
本発明の印刷方法は、少なくとも印刷機上において、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有する湿し水を用いて現像処理を行うものである。従って、感熱性平版印刷版用原版に画像記録する工程は、現像処理を行うのと同一の印刷機上で行ってもよく、あるいは、別途、画像記録した感熱性平版印刷版用原版を印刷機上に取りつけて現像工程を行ってよい。また、本発明は、湿し水を供給して所定の時間経過した後、インキを供給して印刷工程を行えばよいが、湿し水とインキとを実質的に同時に供給して現像工程を行ってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、湿し水、製版並びに印刷方法、及び感熱性平版印刷版用原版の順に、詳細に説明する。
[湿し水]
本発明の湿し水は、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の湿し水に使用できるB、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩には、これらの元素を含む酸、その塩類、これらの元素のハロゲン化物、これらの元素の酸化物、これらの元素を陽イオンとして持つ塩類などがある。具体的に以下のものが挙げられる。
ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸塩(例えばホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アンモニウムなど)、ホウフッ化水素酸、チタン(IV)硫酸塩(チタニルスルフェート)、α−チタン酸、チタン酸塩(例えばチタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムなど)、チタンフッ化水素酸、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、ハロゲン化アルミニウム(例えばフッ化アルミニウムなど)、ハロゲン化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコン酸(IV)塩(例えばジルコン酸硝酸塩、ジルコン酸塩硫酸塩)、ジルコンフッ化水素酸、スズ酸塩(例えばスズ酸ナトリウム、スズ酸カリウムなど)、ハロゲン化スズ(例えば塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ、フッ化第一スズなど)、硫酸第一スズ、オキシニ塩化バナジウム、五酸化バナジウム、硫酸バナジウム、クロム酸塩(クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、クロム酸リチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸銅など)、硝酸クロム(III)、フッ化クロム(III)など。
【0015】
本発明の湿し水には、B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる1種を単独で使用してもよいし、又は2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ホウ酸、ホウ酸塩、チタニルスルフェートなどが好ましく使用できる。
湿し水における上記化合物の含有量は、湿し水の総質量に基づいて0.01〜5質量%が適当であり、好ましくは0.02〜1.5質量%である。上記範囲の含有量であれば、機上現像性が良好で且つ耐刷性を向上する効果が充分にある。
【0016】
本発明の湿し水には、上記成分の他に、以下のものを含ませることができる。
(a)濡れ性向上のための助剤
(b)水溶性高分子化合物
(c)pH調整剤
(d)臭気マスキング剤
(e)その他((i)防腐剤、(ii)キレート化剤、(iii)着色剤、(iv)防錆剤、(v)消泡剤など)
【0017】
(a)濡れ性向上の助剤として、界面活性剤や他の溶剤を使用することができる。界面活性剤のうち、例えばアニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩類、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホ琥珀酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0018】
非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、トリアルキルアミンオキシド類などが挙げられる。その他、弗素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤も使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その含有量は発泡の点を考慮すると、1質量%以下、好ましくは0.001〜0.5質量%が適当である。また、2種以上併用することもできる。
【0019】
助剤としてはその他に、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、
【0020】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、分子量200〜1000のポリプロピレングリコール及びそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノイソプロピルエーテル及びモノブチルエーテル、
【0021】
プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
その他、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、1−位が炭素原子数1〜8のアルキル基で置換された2−ピロリドン誘導体などが挙げられる。
本発明で使用する湿し水にはこれらの溶剤を1種単独で、又は二種以上を併用して使うことができる。一般にこれらの溶剤は、湿し水の全重量に基づいて0.02〜1質量%の範囲で使用するのが適当で、好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0022】
本発明の湿し水に使用する(b)水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアガム、澱粉誘導体(例えば、デキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)等の天然物及びその変性体、ポリエチレングリコール及びその共重合体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ポリアクリル酸及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸及びその共重合体の合成物、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースは特に好ましい。水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水に対して0.001〜0.5質量%が適しており、より好ましくは、0.005〜0.2質量%である。
【0023】
本発明の湿し水に用いられる(c)pH調整剤としては、水溶性の有機酸、無機酸及びそれらの塩類から選ばれる少なくとも1種が使用でき、これらの化合物は湿し水のpH調整あるいはpH緩衝、平版印刷版支持体の適度なエッチング又は防腐食に効果がある。好ましい有機酸としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、蓚酸、マロン酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。無機酸としては例えばリン酸、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げられる。更にこれら有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩も好適に用いられ、これらの有機酸、無機酸及びこれらの塩類から選ばれる1種を単独で使用しても、あるいは2種以上の混合物として使用してもよい。
【0024】
これらpH調整剤の本発明の湿し水への添加量は有機酸、無機酸またはこれらの塩を合わせて0.001〜0.1質量%の範囲が好ましい。0.001質量%以上であると、平版印刷版の支持体であるアルミニウムのエッチング力により印刷時の汚れが良好である。一方、0.1質量%以下であれば、印刷機の錆びの点において好ましい。 湿し水のpH値は3〜7の範囲の酸性領域で用いることが好ましいが、アルカリ金属水酸化物、リン酸、アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、ケイ酸塩などを含有したpH7〜11のアルカリ性領域で用いることもできる。
【0025】
(d)臭気マスキング剤としては、従来香料としての用途が知られているエステルを含む。例えば下記一般式(I)で示されるものがある。
R1−COOR2 (I)
一般式(I)の化合物において、式中R1は炭素原子数1〜15のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基である。アルキル基又はアルケニル基の場合、その炭素原子数は好ましくは4〜8である。R1がアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表す場合、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルケニル基は特に二重結合を1個有するものが適当である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。なお、R1で示されるアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、あるいはフェニル基の1以上の水素原子が、水酸基又はアセチル基で置換されていてもよい。R2は炭素原子数3〜10のアルキル基、アラルキル基又はフェニル基であって、それらは直鎖でも分岐鎖でもよい。アルキル基の場合、その炭素原子数は好ましくは3個から9個である。アラルキル基としては、ベンジル基やフェニルエチル基が挙げられる。
【0026】
使用できる(d)臭気マスキング剤として具体的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチル酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、2−メチル吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、4−メチルペンタン酸(イソヘキサン酸)、2−ヘキセン酸、4−ペンテン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、2−デセン酸、ラウリン酸又はミリスチン酸のエステルが挙げられる。その他、フェニル酢酸ベンジル、アセト酢酸エチルやアセト酢酸2−ヘキシルといったアセト酢酸エステル等もある。中でも好ましいものとして、酢酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが挙げられ、特に酪酸n−ブチル、酪酸n−ペンチル及び酪酸イソペンチルが好適である。これらの臭気マスキング剤(d)の湿し水における含有量は、湿し水の全重量に基づいて0.001〜0.5質量%が適当で、より好ましくは0.002〜0.2質量%である。これらを使用することにより、作業環境をより改善することができる。また。バニリン、エチルバニリン等を併用してもよい。
【0027】
本発明の湿し水に使用する(e)(i)防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。好ましい添加量は細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水に対し、0.001〜0.5質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌、酵母に対して効力のあるような2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0028】
本発明の湿し水には、さらに、(e)(ii)キレート化剤を添加することができる。湿し水は、使用時に通常湿し水組成物に、水道水、井戸水などを加えて希釈して調製されるが、この際、希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもある。このような場合、キレート化剤を添加しておくことにより、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化剤としては例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記のキレート剤のナトリウム塩あるいはカリウム塩の代わりに、有機アミンの塩も有効である。これらのキレート化剤は使用時の湿し水中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。使用時の湿し水中のキレート化合物の含有量としては、0.0001〜0.5質量%が適当で、好ましくは0.0005〜0.2質量%である。
【0029】
本発明の湿し水に使用する(e)(iii)着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo. 19140、15985、赤色色素としてはCINo. 16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo. 42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo. 42095、等が挙げられる。本発明の湿し水に使用する(e)(iv)防錆剤としては、例えばベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。本発明の湿し水に使用する(e)(v)消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましく、その中で乳化分散型及び可溶化型等いずれも使用することができる。
【0030】
本発明の湿し水を適用する平版印刷版は特に限定されるものではない。本発明の湿し水を好適に用いることができるのは、画像記録した原版を印刷機上で機上現像により製版し続いて印刷する感熱性平版印刷版用原版を用いた印刷方法である。
【0031】
[製版及び印刷方法]
本発明において、感熱性平版印刷版用原版は、印刷に先立って、熱により画像(潜像)が形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられる。なかでも、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー、YAGレーザー等の固体高出力赤外線レーザーによる露光が好ましい。
このように画像記録された平版印刷版用原版を、それ以上の処理なしに印刷機の版胴上に装着し、その版面へ湿し水とインキを供給する。版面へ湿し水とインキを供給する態様は、湿し水とインキを実質的に同時に供給してもよいし、又は、好ましくは、湿し水を版面に供給し機上現像をある程度進行させた後、インキを供給する。こうして湿し水とインキを版面へ供給しながら、さらに紙を供給して通常の印刷操作を開始する。このように、印刷機上で版面へ湿し水及びインキを供給し、さらに紙を供給する通常の印刷開始操作により、未露光部の感熱層が除去(機上現像)され、印刷が進むと、従来の平版印刷版と同様な印刷安定性が得られる。
本発明の製版及び印刷方法はまた、例えば特開平9−123388号公報に開示されているように、感熱性平版印刷版用原版を印刷機の版胴上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、続いて機上現像し、印刷するシステムを採用して実施することができる。
【0032】
[感熱性平版印刷版用原版]
本発明で使用する感熱性平版印刷版用原版は、支持体上に感熱層を設けたものであって、より具体的には親水性支持体上に感熱層を有し、該感熱層は好ましくは疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含有する。
感熱層に用いられる疎水性化前駆体とは、好ましくは、熱が加えられたときに親水性の感熱層を疎水性に変換できる微粒子であって、例えば、熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルが挙げられる。感熱層は、熱可塑性ポリマー微粒子、熱反応性ポリマー微粒子及び疎水性化合物を内包するマイクロカプセルから選ばれる少なくとも1種の微粒子を含むことができる。
【0033】
感熱層に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許出願第931647号明細書などに記載の熱可塑性ポリマー微粒子を好適なものとして挙げることができる。かかるポリマー微粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾールなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる熱可塑性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱可塑性ポリマー微粒子の合成方法としては、乳化重合法、懸濁重合法の他に、これら化合物を非水溶性の有機溶剤に溶解し、これを分散剤が入った水溶液と混合乳化し、さらに熱をかけて、有機溶剤を飛ばしながら微粒子状に固化させる方法(溶解分散法)がある。
【0034】
本発明に用いられる熱反応性ポリマー微粒子としては、熱硬化性ポリマー微粒子及び熱反応性基を有するポリマー微粒子が挙げられる。
上記記熱硬化性ポリマーとしては、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素又はメトキシメチル化尿素など尿素誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミン又はその誘導体をホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、特に好ましいのは、フェノール骨格を有する樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びエポキシ樹脂である。好適なフェノール骨格を有する樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾールなどをホルムアルデヒドなどのアルデヒド類により樹脂化したフェノール樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、及びN−(p−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、p−ヒドロキシフェニルメタクリレートなどのフェノール骨格を有するメタクリルアミドもしくはアクリルアミド又はメタクリレートもしくはアクリレートの重合体又は共重合体を挙げることができる。
本発明に用いられる熱硬化性ポリマー微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmが好ましい。このような熱硬化性ポリマー微粒子は、溶解分散法で容易に得られるが、熱硬化性ポリマーを合成する際に微粒子化してもよい。しかし、これらの方法に限らない。
【0035】
本発明に用いられる熱反応性基を有するポリマー微粒子の熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基など)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基など)、縮合反応を行うカルボキシル基及び反応相手であるヒドロキシル基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシル基などを好適なものとして挙げることができる。これらの官能基のポリマー微粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。重合時に導入する場合は、上記の官能基を有するモノマーを乳化重合又は懸濁重合することが好ましい。上記の官能基を有するモノマーの具体例として、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、2−(ビニルオキシ)エチルメタクリレート、p−ビニルオキシスチレン、p−{2−(ビニルオキシ)エチル}スチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアナートエチルメタクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−イソシアナートエチルアクリレート又はそのアルコールなどによるブロックイソシアナート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2官能アクリレート、2官能メタクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明では、これらのモノマーと、これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性基をもたないモノマーとの共重合体も用いることができる。熱反応性基をもたない共重合モノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができるが、熱反応性基をもたないモノマーであれば、これらに限定されない。熱反応性基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0037】
上記熱反応性基を有するポリマー微粒子の中で、ポリマー微粒子同志が熱により合体するものが好ましく、その表面は親水性で水に分散するものが特に好ましい。ポリマー微粒子のみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度より高い温度で乾燥して作製した皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。このようにポリマー微粒子表面を親水性にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーもしくはオリゴマー又は親水性低分子化合物をポリマー微粒子表面に吸着させてやればよい。しかし、表面親水化の方法は、これに限定されない。
【0038】
これらの熱反応性基を有するポリマー微粒子の凝固温度は、70℃以上が好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上がさらに好ましい。ポリマー微粒子の平均粒径は、0.01〜2.0μmが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmがさらに好ましく、特に0.1〜1.0μmが最適である。この範囲内で良好な解像度及び経時安定性が得られる。
【0039】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、疎水性化化合物を内包する。疎水性化合物としては、熱反応性官能基を有する化合物が好ましい。この熱反応性基としては、前記の熱反応性基を有するポリマー微粒子に用いられるものと同じ熱反応性基を好適なものとして挙げることができる。以下、熱反応性基を有する化合物についてより詳しく説明する。
【0040】
ラジカル重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などを少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物を好適なものとして挙げられる。このような化合物群は当該産業分野において、重合性組成物用のモノマー又は架橋剤として広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定することなく用いることができる。化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体、オリゴマー、重合体もしくは共重合体、又はそれらの混合物である。
【0041】
具体例としては、特開2001−277740号公報に重合性不飽和基を有する化合物として記載されている化合物が挙げられる。代表的な化合物例として、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレートとキシリレンジイソシアナートとの付加体などが挙げられる。しかし、これらに限定されない。
【0042】
エチレン性重合性不飽和基を有する重合体又は共重合体形態のものとして、アリルメタクリレートの共重合体を挙げることができる。例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
【0043】
本発明に好適なビニルオキシ基を有する化合物としては、特開2002−29162号公報に記載の化合物が挙げられる。具体例として、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,2−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、1,3,5−トリス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ベンゼン、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ビフェニル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルエーテル、4,4′−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ジフェニルメタン、1,4−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}ナフタレン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フラン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}チオフェン、2,5−ビス{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}イミダゾール、2,2−ビス[4−{2−(ビニルオキシ)エチルオキシ}フェニル]プロパン{ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル}、2,2−ビス{4−(ビニルオキシメチルオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(ビニルオキシ)フェニル}プロパンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明に好適なエポキシ基を有する化合物としては、2個以上エポキシ基を有する化合物が好ましく、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物又はそのプレポリマー、更に、アクリル酸グリシジル又はメタクリ酸グリシジルの重合体もしくは共重合体等を挙げることができる。
【0045】
具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル又はエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
【0046】
上記化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、エピコート1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、エピコート1004(約1060、エポキシ当量875〜975)、エピコート1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、エピコート1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、エピコート1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、エピコート1100L(エポキシ当量4000)、エピコートYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195XL、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0047】
本発明に好適なイソシアナート化合物としては、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、シクロヘキシルジイソシアナート、又は、これらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物を挙げることができる。
【0048】
本発明に好適なアミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0049】
本発明に好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類などを挙げることができる。
【0050】
本発明に好適なカルボキシル基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸などの芳香族多価カルボン酸、アジピン酸などの脂肪族多価カルボン酸などが挙げられる。
【0051】
本発明に好適な酸無水物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0052】
上記の熱反応性基を有する化合物をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書にみられるコアセルベーションを利用した方法、英国特許第990443号明細書、米国特許第3287154号明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号公報にみられる界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号明細書にみられるポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号明細書に見られるイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号明細書に見られるイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号明細書にみられる尿素−ホルムアルデヒド系又は尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号明細書にみられるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号公報にみられるモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号明細書、米国特許第3111407号明細書にみられるスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号明細書にみられる電解分散冷却法などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。マイクロカプセル壁に熱反応性基を有する化合物を導入しても良い。
【0054】
上記のマイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜3.0μmが好ましいが、0.05〜2.0μmがさらに好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
【0055】
このようなマイクロカプセルは、カプセル同志が熱により合体してもよいし、合体しなくとも良い。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面もしくはマイクロカプセル外に滲み出したもの、又は、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせば良い。添加された親水性樹脂又は添加された低分子化合物と反応してもよい。また2種類以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。従って、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0056】
上記ポリマー微粒子及びマイクロカプセルの感熱層への添加量は、いずれの微粒子の場合も、固形分換算で、感熱層固形分の50質量%以上が好ましく、70〜98質量%がより好ましい。この範囲内で、良好な画像形成ができ、良好な耐刷性が得られる。
【0057】
感熱層にマイクロカプセルを含有させる場合には、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤としては、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚及び内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類などが好ましい。
【0058】
具体的化合物としては、メタノール、エタノール、第3ブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどがあるが、これらに限られない。またこれらの溶剤を2種以上用いても良い。マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。
【0059】
このような溶剤の添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、通常、塗布液の5〜95質量%が有効であり好ましい範囲は、10〜90質量%、より好ましい範囲は15〜85質量%である。
【0060】
感熱層には、機上現像性や感熱層自体の皮膜強度向上のため親水性樹脂を含有させることができる。親水性樹脂としては、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基などの親水基を有するものが好ましい。また、親水性樹脂は、マイクロカプセルに内包される親油性化合物が有する熱反応性基と反応し架橋することによって画像強度が高まり、高耐刷化されるので、熱反応性基と反応する基を有することが好ましい。例えば、親油性化合物がビニルオキシ基又はエポキシ基を有する場合は、親水性樹脂としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などを有するものが好ましい。親水性樹脂の中でも、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する親水性樹脂が好ましい。
【0061】
親水性樹脂の具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、ソヤガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸のホモポリマー及びコポリマー等を挙げることができる。
【0062】
上記親水性樹脂の感熱層への添加量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0063】
また、上記親水性樹脂は印刷機上で未露光部が機上現像できる程度に架橋して用いてもよい。架橋剤としては、グリオキザール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂などのアルデヒド類、N−メチロール尿素やN−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂などのメチロール化合物、ジビニルスルホンやビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸)などの活性ビニル化合物、エピクロルヒドリンやポリエチレングリコ−ルジグリシジルエーテル、ポリアミド、ポリアミン、エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂などのエポキシ化合物、モノクロル酢酸エステルやチオグリコール酸エステルなどのエステル化合物、ポリアクリル酸やメチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物などのポリカルボン酸類、ホウ酸、チタニルスルフェート、Cu、Al、Sn、V、Cr塩などの無機系架橋剤、変性ポリアミドポリイミド樹脂などが挙げられる。その他、塩化アンモニウム、シランカプリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用できる。
【0064】
感熱層には、感度を高めるため、光を熱にする機能の光熱変換剤が含有される。光熱変換剤としては、赤外線、中でも近赤外線(波長700〜2000nm)を吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子を用いることができる。
【0065】
例えば、特開2001−301350号公報、特開2002−137562号公報、日本印刷学会誌、38卷35〜40頁(2001)「新イメージング材料、2.近赤外線吸収色素」等に記載の顔料、染料又は色素、及び金属微粒子が好適に用いられる。顔料及び金属微粒子は、必要に応じて、公知の表面処理を施したものを用いることができる。
【0066】
染料又は色素として、より具体的には、米国特許第4756993号、同第4973572号明細書、特開平10−268512号、同11−235883号、特公平5−13514号、同5−19702号公報、特開2001−347765号公報等に記載のシアニン色素、ポリメチン色素、アゾメチン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム及びチオピリリウム塩系染料、ジチオール金属錯体、フタロシアニン色素等が挙げられる。特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、フタロシアニン色素が挙げられる。
【0067】
顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。中でもカーボンブラックが好適である。
【0068】
金属微粒子としてはAg、Au、Cu、Sb、Ge及びPbの微粒子が好ましく、Ag、Au及びCuの微粒子がより好ましい。
【0069】
光熱変換剤を感熱層に添加する場合、ポリマー微粒子又はマイクロカプセルに含有した形で添加してもよいし、これら微粒子外の親水性媒質中に添加してもよい。以下に、特に好適な光熱変換剤の具体例を示すが、これらに限定されない。(IR−1)〜(IR−11)は、親水性媒質中に添加するのに好適な親水性の光熱変換剤であり、(IR−21)〜(IR−29)は、ポリマー微粒子又はマイクロカプセル中に含有させるのに好適な親油性の光熱変換剤である。
【0070】
【化1】
【0071】
【化2】
【0072】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
光熱変換剤の添加割合は、感熱層固形分の1〜50質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。これらの範囲で、感熱層の膜強度を損なうことなく、良好な感度が得られる。
【0075】
感熱層はまた、前記熱反応基の反応を開始又は促進する反応促進剤を含有することができる。また、反応促進剤は、酸又はラジカルを発生するため、発生した酸又はラジカルで変色する染料と組み合わせて焼き出し系を形成できる。かかる反応促進剤としては、公知の酸前駆体、酸発生剤、熱ラジカル発生剤と呼ばれる化合物が好適なものとして挙げられる。例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、焼き出し画像形成用の酸発生剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等が挙げられる。
【0076】
より具体的には、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報などに記載のトリハロメチル置換へテロ環化合物に代表される有機ハロゲン化合物、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、オニウム塩(例えばヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩など)を挙げることができる。またこれらの酸又はラジカルを発生する基又は化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物を用いることもできる。以下に化合物例を挙げるが、これらに限定されない。
【0077】
【化5】
【0078】
【化6】
【0079】
【化7】
【0080】
【化8】
【0081】
【化9】
【0082】
上記反応促進剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、反応促進剤の感熱層への添加は、感熱層塗布液への直接添加でも、ポリマー微粒子やマイクロカプセル中に含有させた形での添加でもよい。感熱層中の反応促進剤の含有量は、感熱層全固形分の0.01〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。この範囲内で、機上現像性を損なわず、良好な反応開始又は促進効果が得られる。
【0083】
感熱層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0084】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0085】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0086】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、感熱層固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
【0087】
感熱層には、さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に入れられるモノマーとして例示したものを用いることができる。なかでも好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。
【0088】
また、本発明においては、感熱層塗布液の調製中又は保存中においてエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して0.01〜5質量%が好ましい。
【0089】
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、感熱層固形分の0.1〜約10質量%が好ましい。
【0090】
また、感熱層には無機微粒子を添加してもよく、無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物などが好適な例として挙げられ、これらは光熱変換性でなくても皮膜の強化や表面粗面化による界面接着性の強化などに用いることができる。
【0091】
また、無機微粒子の平均粒径は5nm〜10μmのものが好ましく、より好ましくは10nm〜1μmである。粒径がこの範囲内で、樹脂微粒子や光熱変換剤の金属微粒子とも親水性樹脂内に安定に分散し、感熱層の膜強度を充分に保持し、印刷汚れを生じにくい親水性に優れた非画像部を形成できる。
【0092】
このような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物などの市販品として容易に入手できる。無機微粒子の感熱層への含有量は、感熱層の全固形分の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0093】
また、感熱層には、感熱層の分散安定性、製版及び印刷性能向上や塗布性の向上のため、特開平2−195356号、特開昭59−121044号、特開平4−13149号公報及び特願2001−169731号に記載されているノニオン系、アニオン系、カチオン系、両性又はフッ素系の界面活性剤を添加することができる。これらの界面活性剤の好適な添加量は、感熱層全固形物の0.005〜1質量%である。
【0094】
さらに、感熱層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0095】
感熱層は、必要な上記各成分を溶剤に溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0096】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感熱層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0097】
本発明で使用する平版印刷版用原版は、保存時の親油性物質による汚染や取り扱い時の手指の接触による指紋跡汚染等から親水性の感熱層表面を保護するため、感熱層上に、特開2001−162961号公報、特開2002−19318号公報に記載の水溶性樹脂を含有するオーバーコート層を設けることができる。
【0098】
オーバーコート層に用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルロース等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩又はアミン塩、等を挙げることができる。目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0099】
上記のオーバーコート層には、感度を向上させるため光熱変換剤を含有させることができる。好ましい光熱変換剤としては、水溶性の赤外線吸収色素が挙げられる。例えば、前記の感熱層の説明中に示した(IR−1)〜(IR−11)が好適に用いられる。
【0100】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0101】
さらに、上記オーバーコート層には、積み重ね保存時のプレート間のくっつきを防止するため、特開2001−341448号公報記載のフッ素原子及びケイ素原子のうちいずれかを有する化合物を含有することができる。
【0102】
該オーバーコート層の厚みは、0.1〜4.0μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、親油性物質による感熱層の汚染を防止できる。
【0103】
本発明で使用する平版印刷版用原版において前記感熱層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0104】
該アルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、さらにはアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。また、DC鋳造法を用いたアルミニウム鋳塊からのアルミニウム板でも、連続鋳造法による鋳塊からのアルミニウム板であっても良い。しかし、本発明に適用されるアルミニウム板は、従来から公知公用の素材のアルミニウム板をも適宜に利用することができる。
【0105】
本発明で用いられる上記の基板の厚みは0.05mm〜0.6mm、好ましくは0.1mm〜0.4mm、特に好ましくは0.15mm〜0.3mmである。
【0106】
アルミニウム板を使用するに先立ち、表面の粗面化、陽極酸化などの表面処理をすることが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び感熱層との接着性の確保が容易になる。
【0107】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。化学的方法としては、特開昭54−31187号公報に記載されているような鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法が適している。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように混合酸を用いた電解粗面化方法も利用することができる。上記の如き方法による粗面化は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2〜1.0μmとなるような範囲で施されることが好ましい。
【0108】
粗面化されたアルミニウム板は必要に応じて水酸化カリウムや水酸化ナトリウムなどの水溶液を用いてアルカリエッチング処理がされ、さらに中和処理された後、所望により耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0109】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は、用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。形成される酸化皮膜量は、1.0〜5.0g/m2、特に1.5〜4.0g/m2であることが好ましい。
【0110】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでも良いが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層改良のため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。
【0111】
上記親水化処理のための好適な親水性化合物として、ポリビニルホスホン酸、スルホン酸基をもつ化合物、糖類化合物、クエン酸、アルカリ金属珪酸塩、フッ化ジルコニウムカリウム、リン酸塩/無機フッ素化合物などが挙げられる。
【0112】
本発明で用いる支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0113】
本発明においては、感熱層を塗布する前に、必要に応じて、特開2001−322365号公報に記載の、例えばホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層、又は例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリアクリル酸などの含有する有機下塗層が設けることができる。また、この下塗層には、前記赤外線吸収色素を含有させることができる。
【0114】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
[支持体の製造例]
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0116】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。次いで支持体と感熱層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30重量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20重量%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作成した。
【0117】
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
【0118】
[熱反応性基を有する化合物を内包するマイクロカプセルの合成例]
油相成分として、ビスフェノールAのビス(ビニルオキシエチル)エーテル4.5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加体(三井武田ケミカル(株)製タケネートD−110N、マイクロカプセル壁材)5g、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン(株)製芳香族イソシアネートオリゴマー、マイクロカプセル壁材)3.75g、赤外線吸収色素(本明細書記載のIR−27)1.5g、パイオニンA41C(竹本油脂(株)界面活性剤)0.1gを酢酸エチル18.4gに溶解した。水相成分としてPVA205(クラレ製ポリビニルアルコール)の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分及び水相成分を、ホモジナイザーを用い12000rpmで10分間乳化した。その後テトラエチレンペンタミン(5官能アミン、マイクロカプセル壁架橋剤)0.38gを水26gに溶解したものを添加し、水冷しながら30分さらに65℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は24質量%であり、平均粒径は0.3μmであった。
【0119】
[感熱性平版印刷版用原版の作製]
上記製造例で得たアルミニウム基板上に、上記合成例で得たマイクロカプセルを含む下記の感熱層塗布液をバー塗布した後、オーブンで100℃60秒の条件で乾燥し、感熱層の乾燥塗布量1.0g/m2の感熱性平版印刷版用原版を作製した。
【0120】
<感熱層塗布液>
水 35.4g
合成例で得たマイクロカプセル液 9.0g
酸前駆体(本明細書に記載のAI−7) 0.24g
【0121】
[湿し水の調製]
下記表1〜表3の組成に従って、実施例1〜18及び比較例1で各々使用する湿し水を調製した。組成の残余は水であり、湿し水における各成分の含有量の単位は質量%である。
こうして調製した湿し水を以下のように製版、印刷に用いた。
【0122】
[印刷評価]
上記のようにして得た感熱性平版印刷版用原版を用いて、次のように製版、印刷を行った。すなわち、印刷版用原版を水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力17W、外面ドラム回転数100rpm、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。表1〜表3に示す組成の各種湿し水とGEOS−G(H)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製、25℃におけるタック値12.2)を用い、湿し水を供給した後、毎時1万枚の印刷速度で、インキローラ表面の温度が25℃になるように冷却水の温度を調節しながらインキを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。機上現像が完了するまでに要した印刷用紙の枚数、すなわち全面黒く汚れた状態から正常な印刷物に変化するまで要した枚数、及び耐刷性(版飛びを起こすまでの印刷枚数)を調べた。
それらの結果を表1〜3に併せて示す。
【0123】
【表1】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0124】
【表2】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0125】
【表3】(組成の単位:質量%、全体で100質量%)
【0126】
【発明の効果】
本発明の湿し水によれば、機上現像性を悪化させることなく、すなわち機上現像が完了するまでに要する印刷用紙枚数を増やすことなく、耐刷性に優れた印刷方法が達成できる。
Claims (3)
- B、Ti、Cu、Al、Zr、Sn、V及びCrから選ばれる元素を含む化合物及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする平版印刷版用湿し水。
- 支持体上に感熱層を有する平版印刷版用原版に画像記録する工程と、請求項1記載の湿し水を版面に供給し、非画像部の感熱層を除去する工程と、前記湿し水及びインキを用いて印刷する工程とを含むことを特徴とする平版印刷版用原版を用いた印刷方法。
- 感熱層が疎水性化前駆体及び親水性樹脂を含有する請求項2記載の印刷方法。
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JP2003049474A JP2004255728A (ja) | 2003-02-26 | 2003-02-26 | 平版印刷版用湿し水及び平版印刷版用原版を用いた印刷方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018134784A (ja) * | 2017-02-21 | 2018-08-30 | 東洋インキScホールディングス株式会社 | 平版印刷用湿し水組成物およびそれを用いた平版印刷物の製造方法 |
-
2003
- 2003-02-26 JP JP2003049474A patent/JP2004255728A/ja active Pending
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