JP2007021806A - 湿し水組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】商業オフセット印刷および、特に新聞オフセット輪転印刷に使用される湿し水組成物において、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食が少なく、さらに耐印刷汚れ性が従来のアルカリ性の湿し水と同等以上の性能を有し、かつ、湿し水の廃液処理に際して環境負荷の少ない湿し水組成物を提供すること。
【解決手段】リン酸塩(a)と、下記の(b)、(c)、(d)および(e)とを水性媒体中に含有する、pH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0であることを特徴とする湿し水組成物。(b):塩素(Cl)を含有しない(a)以外の有機酸塩および/または無機酸塩、(c):防腐剤、(d):非イオンおよび/または陰イオン界面活性剤、(e):消泡剤
【選択図】なし

Description

本発明は、一般の商業オフセット印刷および、特に新聞オフセット輪転印刷に使用される湿し水組成物に関し、詳しくは、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食を抑制し、さらに耐印刷汚れ性が優れており、かつ廃液処理に際しても環境負荷が少ない湿し水組成物に関する。
一般に、平版印刷は、インキが付着する画線部と湿し水が付着する非画線部とからなる刷版を用いて行われている。これらの印刷に使用される湿し水は、通常、酸性あるいはアルカリ性などの湿し水があり、商業オフセット印刷では酸性湿し水が、また、新聞オフセット輪転印刷ではアルカリ性の湿し水が一般的に使用されている。しかしながら、上記の酸性およびアルカリ性の湿し水は、排水の際、そのままでは環境上において十分に満足した排水基準が得られない。
上記の湿し水の刷版への供給は、印刷機上の湿し水装置から各種ローラーを介して供給したり、あるいはスプレーを使用して湿し水の細かい霧をノズルより吹きかけて供給するなどの方法が取られている。いずれの方法においても、印刷機上のローラー、ノズル、ベアリング、配管、版、電磁弁などの印刷機械上あるいは付属の金属部品が、長時間湿し水と直接或いは間接的に接触することになる。これらの金属部品である、例えば、ニッケルメッキやクロムメッキされた鋼、銅、アルミニウム、ステンレスなどの印刷機械の金属部品が、湿し水により腐食され易い。このため、湿し水による腐食により損傷された部品は、定期的に点検交換しなければならない。
また、上記の湿し水に使用されているリン(P)成分は、廃液として処理すると、河川などを富栄養化させて藻などの成長を促し水質を汚濁させるので、環境対策を講じなければならない。このことから、リン(P)成分を極力少なくしなければならないが、湿し水中のリン(P)成分を皆無にしたりあるいは極力少なくすると、印刷物の汚れが発生しやすくなる問題がある。
上記の環境対策から、リン(P)を含有しない湿し水組成物(特許文献1)が開示されている。上記の特許文献1に開示の組成物は、リン(P)を含有しないことによる環境対応がはかられている。また、強電解質の鉱酸塩を添加することにより、湿し水の電導度を上げ、該電導度で湿し水を管理することにより、従来の湿し水に添加されているイソプロピルアルコールの濃度などによる湿し水の管理に比べて、より安定した精度のある湿し水の管理ができる。しかしながら、特許文献1に開示の組成物は、電導度を上げるために使用されている強電解質のナトリウムまたはカリウムなどの鉱酸塩は、その添加量や使用管理によっては上記組成物と接触する金属の種類にもよるが、それらの金属を腐食する場合があり、また、リン酸塩などのリン(P)が皆無のために印刷物の耐汚れ性が必ずしも十分ではない。
特開2004−106531号公報
従って、本発明の目的は、商業オフセット印刷および、特に新聞オフセット輪転印刷に使用される湿し水組成物において、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食が少なく、さらに耐印刷汚れ性が従来のアルカリ性の湿し水と同等以上の性能を有し、かつ、湿し水の廃液処理に際して環境負荷の少ない湿し水組成物を提供することである。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、リン酸塩(a)と、下記の(b)、(c)、(d)および(e)とを水性媒体中に含有する、pH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0であることを特徴とする湿し水組成物を提供する。
(b):塩素(Cl)を含有しない(a)以外の有機酸塩および/または無機酸塩
(c):防腐剤
(d):非イオンおよび/または陰イオン界面活性剤
(e):消泡剤
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記の各々の成分を水性媒体中に含有することによって、pH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0に調整された湿し水組成物が、従来の湿し水組成物に比べて、特に、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食が少なく、また特定の印刷物汚れ防止剤を添加しなくても耐印刷汚れ性が従来のアルカリ性の湿し水と同等若しくはそれ以上に優れており、湿し水の廃液処理に際して環境負荷の軽減に対応する湿し水組成物であることを見出した。なお、上記の湿し水組成物とは、水にてさらに適当な割合に希釈して任意の濃度の湿し水とする湿し水の原液のことを意味する。
本発明によれば、上記の各々の成分a〜eを配合したpH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0に調整された湿し水組成物が、一般の商業オフセット印刷および、特に新聞オフセット輪転印刷に使用される場合、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食が少なく、さらに耐印刷汚れ性が従来のアルカリ性の湿し水と同等以上の性能を有し、かつ、湿し水の廃液処理に際して環境負荷の少ない湿し水組成物が提供される。
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明の湿し水組成物は、前記の各々の成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)とを水性媒体中に含有し、pH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0になるように調製される。
上記のa成分であるリン酸塩としては、オルトリン酸塩や、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩およびテトラリン酸塩などのポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩などのリン酸塩が挙げられる。具体的には、例えば、第一リン酸〜第三リン酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウムや酸性ピロリン酸ナトリウムなどのポリリン酸のナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのリン酸塩、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのメタリン酸塩などが挙げられる。上記のリン酸塩としては、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩およびウルトラリン酸塩から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
上記のリン酸塩において、特に好ましくはトリポリリン酸ナトリウムと、酸性ピロリン酸ナトリウムおよび/またはヘキサメタリン酸塩との混合物が挙げられる。上記の混合物を構成する上記の成分の配合は、本発明の目的を妨げない範囲であれば特に限定されるものではない。
また、本発明で使用されるb成分は、塩素(Cl)を含有しないa以外の有機酸塩および/または無機酸塩である。上記の有機酸塩と無機酸塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムなど塩素(Cl)を含有すると、印刷機上の金属類を腐食する傾向が大きくなる。
上記の無機酸塩としては、例えば、塩素(Cl)を含有しない無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など、好ましくは無機酸のアンモニウム塩である。具体的には、例えば、硝酸のナトリウム、カリウムなどの硝酸金属塩、硫酸のナトリウム、カリウムなどの硫酸金属塩、重炭酸金属塩、硼酸金属塩、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が挙げられる。好ましくは、硝酸アンモニウムなどの無機酸のアンモニウム塩が挙げられる。
また、上記の有機酸塩としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸などの有機酸塩、好ましくはカルボン酸の金属塩、アミン塩などである。上記のカルボン酸からなる有機酸塩としては、例えば、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、シトコラン酸、イタコン酸、フマル酸、グリコール酸、プロピオン酸、フタル酸、マロン酸、アジピン酸、サリチル酸、シュウ酸などの金属塩、アミン塩などが挙げられる。
上記の有機酸塩の内で、有機酸塩の有機酸がオキシ酸および/または多塩基酸であるリンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などのオキシ酸やコハク酸などの多塩基酸の金属塩が好ましく使用される。上記の有機酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウムなどが挙げられる。
また、前記の有機酸塩と無機酸塩は中性塩であるものが好ましく使用される。上記の中性塩は、得られる湿し水組成物の整面効果を向上する。上記の中性塩としては、例えば、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、酢酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウムなどの有機酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
また、本発明で使用されるc成分である防腐剤は、得られる湿し水組成物の保存中や使用中に発生しやすい細菌、カビおよび酵母などの微生物の発生を抑えることにより、印刷適性劣化および腐敗に伴う湿し水の変化を防止する。上記の防腐剤としては、有機窒素硫黄系化合物、有機窒素系化合物、有機臭素系化合物、有機銅化合物、ベンズイミダゾール系化合物、チアゾリン系化合物、N−ハロメチルチオフタルイミド系化合物、トリアジン系化合物など、好ましくは有機窒素硫黄系化合物および有機臭素系化合物が挙げられる。上記の防腐剤の配合量は、湿し水組成物に対して1〜5質量%が好ましく使用される。
上記の有機窒素硫黄系化合物としては、例えば、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、ジチオ−2,2´−ビス(ベンゾメチルアミド)テトラヒドロ−3,5−ジメチル−2H−1,3,5−チアジン−2−チオン、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,5−ジメチルテトラヒドロ−1,3,5−2H−チアジアジン−2−チオンなどが挙げられる。また有機臭素系化合物としては、1,4−ビスブロモアセトキシ−2−ブテンなどが挙げられる。
また、本発明で使用するd成分である界面活性剤は、非イオン界面活性剤あるいは陰イオン界面活性剤の各々を単独でも、また、双方の界面活性剤を混合しても使用することができる。上記の非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル化合物、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル化合物、グリセリン脂肪酸部分エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル化合物、脂肪酸ジエタノールアミド類、トリエタノールアミン脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
また、上記の陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アビチエン酸塩、高級脂肪酸アルカリ塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩など、およびこれらの混合物が挙げられる。
また、本発明で使用するe成分である消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。上記の消泡剤の配合量は、湿し水組成物に対し0.005〜0.1質量%が好ましく使用される。
リン酸塩(a)の、塩素(Cl)を含有しないa以外の有機酸塩および/または無機酸塩(b)と、防腐剤(c)と、非イオンおよび/または陰イオン界面活性剤(d)と、および消泡剤(e)との合計に対する好ましい配合割合は、a/(b+c+d+e)=20/100〜40/100(質量比)である。上記のaの配合割合が、多過ぎても得られる湿し水組成物の耐印刷汚れ防止のさらなる効果がなく、廃液を処理する際に河川汚染防止などの環境対策を講じなければならない。一方、上記aの配合割合が、少な過ぎると、得られる湿し水組成物の耐印刷汚れ性が低下する。
本発明の湿し水組成物は、前記のa、b、c、dおよびe成分を必須成分として水性媒体に均一に分散溶解し、前記のpHの範囲内となるように調整する。本発明の電導度は、好ましくは10,000μS/cm〜30,000μS/cm、より好ましくは14,000μS/cm〜18,000μS/cmの範囲である。上記の電導度が高すぎても、湿し水の電導度による管理における特別の効果が得られない。一方、上記の電導度が低過ぎると、電導度の測定が容易ではなく、安定した湿し水の電導度管理がしにくい。
上記の水性媒体は、水、または水と親水性有機溶媒の混合物が好ましく使用される。上記の水としては、例えば、軟水、イオン交換水、純水、水道水、井戸水など、好ましくは、軟水および水道水が挙げられる。上記の軟水は、軟水装置において水中のカルシウムイオンをナトリウムイオンに替えたものが、新聞オフセット輪転印刷用湿し水組成物の水性媒体として有効である。上記の水中のカルシウムイオンは、リン酸あるいは硫酸イオンなどと反応してリン酸カルシウムや硫酸カルシウムを析出しやすくする原因となるので、スプレー方式の湿し水機構には好ましくない。
また、上記の水性媒体に使用される親水性有機溶媒としては、公知の親水性有機溶剤、例えば、モノアルコール類、多価アルコール類、エーテル類、エステル類などが挙げられる。上記のモノアルコール類としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ネオペンチルアルコールなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
また、上記の多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
また、分子内に3個以上の水酸基を有する多価アルコール類として、例えば、グリセリン、ブタン−1,2,3−トリオール、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、2−メチルブタン−1,2,3−トリオール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリトリット、ソルビットなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
また、エーテル類としては、エチレングリコールモノメチル、モノエチル、モノイソプロピル、またはモノブチルなどのエチレングリコールのモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールモノメチル、モノエチル、モノイソプロピル、またはモノブチルなどのジエチレングリコールのモノアルキルエーテル;トリエチレングリコールモノメチル、モノエチル、モノブチル、モノイソブチル、またはモノヘキシルなどのトリエチレングリコールのモノアルキルエーテル;1,4−ブタンジオールモノヘキシルエーテル、1,6−ペンタンジオールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールのモノアルキルエーテル;ポリエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテルなどのグリコールアルキルエーテルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
エステル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
また、本発明の湿し水組成物は、印刷の際に、前記の湿し水組成物の原液を上記の水性媒体、好ましくは水道水または軟水にて200〜300質量倍に希釈し、好ましくは200質量倍に希釈して、希釈液として使用される。200質量倍に希釈された湿し水の希釈液中のリン(P)の含有量K(ppm)は1ppm≦K≦16ppmであることが好ましい。上記のリン(P)の含有量Kが上記上限を超えると、排水の際に、環境上において十分に満足した排水基準が得られない。一方、上記の含有量Kが上記下限未満であると、耐印刷物汚れ性が低下する。
前記の本発明の湿し水組成物は、通常は、上記のように水性媒体によって、200質量倍に希釈されて使用され、一般の商業オフセット印刷用にも使用することができるが、とくに、新聞オフセット輪転印刷用に有効である。
次に、本発明の実施例の湿し水組成物U1〜U6と、比較例の湿し水組成物V1〜V2を挙げ、各々の湿し水組成物を水(水道水)にて200質量倍に希釈して調製した実施例の湿し水W1〜W6と比較例の湿し水X1〜X2を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜6)(湿し水組成物U1〜U6の調製)
下記の各々の成分a、b、c、dおよびeを表1に示すように、水性媒体に均一に分散溶解して、pH6.8(25℃)で、電導度14,000μS/cmの湿し水組成物U1を調製した。以下同様にして、表1に示すように湿し水組成物U2、U3、U4、U5およびU6を調製した。
上記の各々の成分a、b、c、dおよびeは、下記の通りである。
・a成分(リン酸塩)
a1:酸性ピロリン酸ナトリウム、
a2:トリポリリン酸ナトリウム、
a3:第一リン酸ナトリウム、
a4:第二リン酸ナトリウム、
a5:ヘキサメタリン酸ナトリウム
・b成分(有機酸塩または無機酸塩)
b1(有機酸塩):b1−1(オキシ酸の塩;りんご酸ナトリウム)、
b1−2(多塩基酸の塩;コハク酸ナトリウム)
b2(無機酸塩):(硝酸アンモニウム)
・c成分(防腐剤)
c1:有機窒素硫黄化合物(2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール)
・d成分(界面活性剤)
d1:ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル
・e成分(消泡剤)
e1:シリコーン系消泡剤
・水性媒体
f1:水道水(電導度140μS/cm)、
f2:水道水とジプロピレングリコールとの混合物(5%水溶液)
(比較例1)(湿し水組成物V1の調製)
下記の成分を均一に水(水道水)に分散溶解してpH7.7で、電導度21,000μS/cmである湿し水組成物V1を調製した。
・塩化ナトリム 0.8部
・酢酸ナトリウム 2.0部
・ポリオキシアルキレンイソデシルエーテル
0.6部
・2−メルカプトベンゾチアゾール 1.0部
・水 95.6部
(比較例2)(湿し水組成物V2)
市販のアルカリ性の湿し水組成物(リン(P)含有、pH12.5、電導度18,000μS/cm)を湿し水組成物V2として使用した。
Figure 2007021806
上記表1におけるpHと電導度以外の数値は、部数を示す。
(実施例7〜12)(湿し水W1〜W6の調製)
実施例1〜6の湿し水組成物を使用し、水道水にて各々の湿し水組成物を200質量倍に希釈し、湿し水W1〜W6を調製した。
(比較例3〜4)(湿し水X1〜X2の調製)
比較例1〜2の湿し水組成物を使用し、水道水にて各々の湿し水組成物を200質量倍に希釈し、湿し水X1〜X2を調製した。
上記で得られた各々の湿し水について耐腐食性および耐印刷汚れ性を下記の測定方法により測定し評価した。評価結果を表2に示す。
(耐腐食性)
湿し水W1〜W6および湿し水X1〜X2の各々の湿し水に、銅板、亜鉛メッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、アルミニウム板の各々の試料片を別々に常温にて30日間浸漬し、上記の試料片の腐食の度合いを下記の基準にて評価した。
[評価基準]
○:試料片の表面に、膨れ、変色および曇りの発生がなく、腐食が、認められない。
△:試料片の表面に、膨れ、変色および曇りの発生がわずかに有り、腐食が、わずかに認められる。
×:試料片の表面に、膨れ、変色および曇りの発生が全面に有り、腐食が、認められる。
(耐印刷汚れ性)
湿し水W1〜W6および湿し水X1〜X2の各々の湿し水を使用して、新聞オフセット輪転印刷機(テスト用)にて、市販の新聞オフセツト輪転印刷用インキ(ザ・インクテック(株)製、墨インキ)を使用して、新聞用紙に印刷速度120,000部数/時の条件で、3,000部印刷を行い、印刷物の耐印刷汚れ性を下記の基準にて評価した。
[評価基準]
○:印刷面に印刷汚れが全く認められない。
△:印刷面に部分的に軽微な印刷汚れが認められる。
×:印刷面に印刷汚れの発生が認められる。
Figure 2007021806
上記表2の*は、湿し水組成物を水道水で200質量倍に希釈して調製した湿し水中のリン(P)の含有量を示す。
上記の表2の評価結果から、本発明の湿し水組成物は、金属類に対する耐腐食性および耐印刷汚れ性が優れていることが実証されている。また、印刷の際に、湿し水組成物を200質量倍に希釈した湿し水中のリン(P)の含有量が16ppm以下であり、十分に排水基準を満たしている。
本発明の湿し水組成物は、金属類に対する耐腐食性および耐印刷汚れ性が優れている。そのために、印刷機上および付属設備の金属類に対する腐食による損傷がなく、部品の点検交換が不要であり、安定した品質の印刷ができる。かつ、廃液処理に際しても特別の処理を行わなくても、環境負荷が少なく、排水基準に適合する。本発明の湿し水組成物は、一般の商業オフセット印刷および、特に新聞オフセット輪転印刷に使用される湿し水組成物として有効に使用することができる。

Claims (11)

  1. リン酸塩(a)と、下記の(b)、(c)、(d)および(e)とを水性媒体中に含有する、pH(J)がpH6.0≦J≦pH8.0であることを特徴とする湿し水組成物。
    (b):塩素(Cl)を含有しない(a)以外の有機酸塩および/または無機酸塩
    (c):防腐剤
    (d):非イオンおよび/または陰イオン界面活性剤
    (e):消泡剤
  2. 前記のリン酸塩(a)が、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩およびウルトラリン酸塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の湿し水組成物。
  3. 前記のリン酸塩(a)が、トリポリリン酸ナトリウムと、酸性ピロリン酸ナトリウムおよび/またはヘキサメタリン酸ナトリウムとの混合物である請求項1に記載の湿し水組成物。
  4. 前記の(b)の有機酸塩と無機酸塩が、中性塩である請求項1に記載の湿し水組成物。
  5. 前記の(b)の有機酸塩の有機酸が、オキシ酸および/または多塩基酸である請求項1に記載の湿し水組成物。
  6. 前記の(b)の無機酸塩が、アンモニウム塩である請求項1に記載の湿し水組成物。
  7. 前記の(a)成分の(b)、(c)、(d)および(e)の合計に対する割合が、(a)/((b)+(c)+(d)+(e))=20/100〜40/100(質量比)である請求項1〜6のいずれか1項に記載の湿し水組成物。
  8. 電導度が、10,000〜30,000μS/cmである請求項1に記載の湿し水組成物。
  9. 水性媒体が、水、または水および親水性有機溶剤の混合物である請求項1に記載の湿し水組成物。
  10. 水性媒体にて200質量倍に希釈した場合における希釈液中のリン(P)の含有量K(ppm)が1ppm≦K≦16ppmである請求項1〜9のいずれか1項に記載の湿し水組成物。
  11. 新聞オフセット輪転印刷用である請求項1〜10のいずれか1項に記載の湿し水組成物。
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