本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーは、下記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーを含んでおり、好ましくは、下記式(1)で示される構造単位からなるポリマーを含んでいる。
(式中、R1は、炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2、R3およびR4は、互いに同一または相異なって、水素原子、シアノ基、または、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R5は、ハロゲノ基、または、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、aは、0〜5の整数を示し、aが2以上の場合には、R5は、互いに同一または相異なって、上記のR5と同意義を示し、mは、1〜99のモルパーセントを示し、X―は、陰イオンを示す。)
上記式(1)において、R1は、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。
炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素数1〜10の直鎖状炭化水素基、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、i−ヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基などの炭素数1〜10の分枝鎖状炭化水素基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などの炭素数3〜10の環状炭化水素基が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜8の炭化水素基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。さらに好ましくは、メチル基、n−プロピル基、n−ヘキシル基が挙げられ、特に好ましくは、n−ヘキシル基が挙げられる。
R1が、上記した炭化水素基であれば、燃料電池(後述)の発電性能を向上させることができる。
また、上記式(1)において、R2、R3およびR4は、互いに同一または相異なって、水素原子、シアノ基、または、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、好ましくは、互いに同一に水素原子を示す。
置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基としては、例えば、上記した炭素数1〜10の炭化水素基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭化水素基の炭化水素基として、好ましくは、炭素数1〜4の炭化水素基が挙げられる。
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲノ基などが挙げられる。なお、上記した置換基は1個または複数個有していてもよい。
また、上記式(1)において、R5は、ハロゲノ基、または、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、aが2以上の場合には、互いに同一または相異なって、ハロゲノ基、または、置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。
R5において、ハロゲノ基は、例えば、上記したハロゲノ基が挙げられる。
R5において、置換基を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、上記の置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
また、上記式(1)において、aは、0〜5の整数、好ましくは、0〜2の整数、より好ましくは、0を示す。
上記式(1)において、mは、1〜99のモルパーセントを示し、好ましくは、10〜90のモルパーセント、より好ましくは、40〜70のモルパーセントを示す。
また、上記式(1)において、X―は、陰イオンを示す。
陰イオンとしては、例えば、硫酸水素イオン、硝酸イオン、チオシアネートイオン、過塩素酸イオン、酢酸イオン、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲンイオン、水酸化物イオン、炭酸水素イオンなどの1価の陰イオンが挙げられ、好ましくは、水酸化物イオンが挙げられる。なお、陰イオンは、1種類でも2種類以上混在していてもよい。
また、上記式(1)で示される構造単位は、下記式(2)で示される構造単位と、下記式(3)で示される構造単位とからなる。
また、上記式(1)におけるmは、下記式(2)で示される構造単位のモル数と下記式(3)で示される構造単位のモル数との総モル数に対する下記式(2)で示される構造単位のモルパーセントを示すが、mを用いた構造式により示される構造単位を含有するポリマーは、ブロックポリマーまたはランダムポリマーであり、好ましくは、ランダムポリマーである。
(式中、R1、R2、R3、R4およびX−は、上記式(1)のR1、R2、R3、R4およびX−と同意義を示す。)
(式中、R5は、上記式(1)のR5と同意義を示し、aは、上記式(1)のaと同意義を示す。)
上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーを得るには、まず、下記式(4)で示されるN−ビニルイミダゾール誘導体と、下記式(5)で示されるスチレン誘導体とを共重合させる。
(式中、R2、R3およびR4は、上記式(1)のR2、R3およびR4と同意義を示す。)
N−ビニルイミダゾール誘導体としては、例えば、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルー2−メチルイミダゾール、4,5−ジシアノ−N−ビニルイミダゾール、4,5−ジフェニル−N−ビニルイミダゾール、4,5−ジヒドロキシメチル−N−ビニルイミダゾールなどが挙げられ、好ましくは、N−ビニルイミダゾールが挙げられる。
これらN−ビニルイミダゾール誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
(式中、R5およびaは、上記式(1)のR5およびaと同意義を示す。)
スチレン誘導体として、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、環ハロゲン化スチレン、環アルキル化スチレン、2−ビニルトルエン(o−メチルスチレン)、3−ビニルトルエン(m−メチルスチレン)、4−ビニルトルエン(p−メチルスチレン)などが挙げられ、好ましくは、スチレンが挙げられる。これらスチレン誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
スチレン誘導体の配合割合は、N−イミダゾール誘導体とスチレン誘導体との総モル数に対して、例えば、1モルパーセント以上、好ましくは、10モルパーセント以上、より好ましくは、40モルパーセント以上であり、また、例えば、99モルパーセント以下、好ましくは、90モルパーセント以下、より好ましくは、70モルパーセント以下である。
N−ビニルイミダゾール誘導体とスチレン誘導体とを共重合させる方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、N−ビニルイミダゾール誘導体およびスチレン誘導体を、必要により、不活性溶媒および重合開始剤の存在下、不活性ガス(例えば、アルゴンガス)雰囲気下で反応させる。
不活性溶媒としては、N−ビニルイミダゾール誘導体およびスチレン誘導体と反応しなければ特に制限されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール(1−PrOH)、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、水などが挙げられる。
不活性溶媒として、好ましくは、芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくは、キシレンが挙げられる。
これら不活性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
不活性溶媒の配合割合は、N−ビニルイミダゾール誘導体およびスチレン誘導体の総量に対して、例えば、0質量パーセントを超え、好ましくは、10質量パーセント以上であり、また、例えば、200質量パーセント以下、好ましくは、100質量パーセント以下である。
重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエートなどの有機過酸化物、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルなどのアゾ化合物などが挙げられ、好ましくは、アゾ化合物が挙げられ、より好ましくは、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
これらラジカル重合剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
重合開始剤の配合割合は、N−ビニルイミダゾール誘導体およびスチレン誘導体の総モル数に対して、例えば、0.01モルパーセント以上、好ましくは、0.1モルパーセント以上であり、また、例えば、1モルパーセント以下、好ましくは、0.5モルパーセント以下である。
反応条件として、反応温度は、例えば、60℃〜140℃、好ましくは、60℃〜100℃であり、また、反応時間は、例えば、16時間〜48時間、好ましくは、24時間〜36時間である。
これにより、下記式(6)で示される構造単位を含有する重合体(コポリマー)を得ることができる。
(式中、R2、R3、R4、R5、aおよびmは、上記式(1)のR2、R3、R4、R5、aおよびmと同意義を示す。)
なお、得られた上記式(6)で示される構造単位を含有する重合体は、公知の方法により精製することができる。
次いで、上記式(6)で示される構造単位を含有する重合体のイミダゾール部位を、炭素数1〜10の炭化水素基を有するハロゲン化炭化水素でN−炭化水素化することにより、上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーを得る。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、下記式(7)で示される化合物が挙げられる。
R1−X (7)
(式中、R1は、上記式(1)のR1と同意義を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。)
上記式(7)において、Xは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を示し、好ましくは、ヨウ素原子を示す。
ハロゲン化炭化水素として、例えば、フッ化メチル、フッ化エチル、フッ化プロピル、フッ化ブチル、フッ化ペンチル、フッ化ヘキシルなどのフッ化炭化水素、例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、塩化ペンチル、塩化ヘキシルなどの塩化炭化水素、例えば、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、臭化ペンチル、臭化ヘキシルなどの臭化炭化水素、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化炭化水素などが挙げられ、好ましくは、ヨウ化炭化水素が挙げられる。より好ましくは、ヨウ化メチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ヘキシルが挙げられる。
これらハロゲン化炭化水素は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ハロゲン化炭化水素の配合割合は、上記式(6)で示される構造単位を含有する重合体のイミダゾール部位のモル数に対して、例えば、100モルパーセント以上、好ましくは、200モルパーセント以上であり、また、例えば、10000モルパーセント以下、好ましくは、1000モルパーセント以下である。
上記式(6)で示される構造単位を含有する重合体のイミダゾール部位を、N−炭化水素化するには、上記式(6)で示される構造単位を含有する重合体をハロゲン化炭化水素溶液に溶解させ、反応させる。
ハロゲン化炭化水素溶液を調製するために用いられる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、n−ヘキサン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられ、好ましくは、エーテル類、芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくは、ジオキサン、トルエンが挙げられる。
これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
有機溶媒の配合割合は、重合体の総量に対して、例えば、100質量パーセント以上、好ましくは、1000質量パーセント質量部以上であり、また、例えば、10000質量パーセント質量部以下、好ましくは、3000質量パーセント質量部以下である。
反応条件として、反応温度は、例えば、40℃〜100℃、好ましくは、60℃〜95℃であり、また、反応時間は、例えば、16時間〜72時間、好ましくは、24時間〜48時間である。
これにより、上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーを得る。
なお、得られた上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーは、公知の方法により精製することができる。
また、上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーの重量平均分子量(後述するGPCにより測定)は、例えば、1000以上、好ましくは、10000以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
また、上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーにおける、上記式(2)で示される構造単位のモル数と、上記式(3)で示される構造単位のモル数との総数に対する上記式(2)で示される構造単位のモルパーセント(含有比率)、すなわち、上記式(1)における、mの値は、例えば、1以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、40以上であり、また、例えば、99以下、好ましくは、90以下、より好ましくは、70以下である。
上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーにおける、上記式(2)で示される構造単位のモル数と、上記式(3)で示される構造単位のモル数との総数に対する上記式(2)で示される構造単位のモルパーセントが上記範囲内であれば、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーのSP値(溶解度パラメーター)は、例えば、9.5(cal/cm3)1/2以上、好ましくは、10.1(cal/cm3)1/2以上であり、また、例えば、13.0(cal/cm3)1/2以下、好ましくは、12.1(cal/cm3)1/2以下である。
なお、ポリマーのSP値δ(単位:(cal/cm3)1/2)は、R.F.Fedors, 「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liuids.」 Polym.Eng.Sci., Vol.14 pp.147−154(1974)に記載の原子および原子団の蒸発エネルギーei(cal/mol)およびモル体積vi(cm3/mol)の値から、各原子および原子団のSP値δi(単位:(cal/cm3)1/2)を、下記式(8)により算出でき、そのSP値の合計により表される。
δi=(ei/vi)(1/2) (8)
そして、上記のポリマーを、本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーは含んでいる。
本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いる際には、上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマーの陰イオンを、他の陰イオン(例えば、水酸化物イオン、炭酸水素イオンなど)に置換して用いることもできる。
本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーに含まれるポリマーは、上記式(1)で示される構造単位を含有している。
そのため、電解質膜、とりわけ、特開2014−049352号公報に記載されているアニオン伝導電解質膜を用いた場合に、本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いれば、電解質膜と電極触媒層との相溶性が向上し、その結果、燃料電池(後述)の発電性能を向上させることができる。
また、本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーでは、重合(グラフト重合)性の観点から、好ましくは、上記式(1)においてaが0〜2の整数、より好ましくは、上記式(1)においてaが0、すなわち、N−ビニルイミダゾール誘導体と共重合させるスチレン誘導体がスチレンである。
上記の実施形態では、N−ビニルイミダゾール誘導体とスチレン誘導体とを共重合させることができるとしたが、スチレン誘導体は、炭化水素系ビニルモノマー(スチレン誘導体を除く)や、炭化フッ素系ビニルモノマーで代替することもできる。
炭化水素系ビニルモノマー(スチレン誘導体を除く)としては、例えば、アクリロニトリル誘導体、ビニルケトン、イソブテン誘導体、ブタジエン誘導体、イソプレン誘導体、アセチレン誘導体などが挙げられる。これら炭化水素系ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
炭化フッ素系ビニルモノマーとしては、例えば、ヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテル、エチルトリフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサン−1−エン)、トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これら炭化フッ素系ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、N−ビニルイミダゾール誘導体とスチレン誘導体とを重合させる際に、必要により、多官能性モノマーなどの架橋剤を配合してもよい。多官能性モノマーとしては、例えば、ビス(ビニルフェニル)エタン、ジビニルベンゼン、2,4,6−トリアリロキシ−1,3,5−トリアジン(トリアリルシアヌレート)、トリアリル−1,2,4−ベンゼントリカルボキシレート(トリアリルトリメリテート)、ジアリルエーテル、ビス(ビニルフェニル)メタン、ジビニルエーテル、1,5−ヘキサジエンなどが挙げられる。
架橋剤の配合割合は、N−ビニルイミダゾール誘導体およびスチレン誘導体の総量に対して、例えば、0.1質量パーセント以上、好ましくは、1質量パーセント以上であり、また、例えば、20質量パーセント以下、好ましくは、10質量パーセント以下である。
そして、本発明は、このような膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを含む電池電極触媒層組成物から形成される触媒層からなる燃料側電極および/または酸素側電極を備える燃料電池を含んでいる。
以下において、本発明の燃料電池について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を示す概略構成図である。
燃料電池1は、液体の燃料成分が直接供給されるアニオン交換型燃料電池である。
燃料電池1に供給される燃料成分としては、例えば、メタノール、ジメチルエーテル、ヒドラジン類(水加ヒドラジン、無水ヒドラジン(ヒドラジン)などを含む)などが挙げられ、好ましくは、ヒドラジン類が挙げられる。
燃料電池1は、膜電極接合体2、燃料側拡散層8、酸素側拡散層9、膜電極接合体2の一方側(アノード側)に配置された燃料供給部材3、および、膜電極接合体2の他方側(カソード側)に配置された空気供給部材4を備える燃料電池セル(単位セル)が、複数積層されたスタック構造に形成されている。なお、図1では、複数の単位セルのうち1つだけを燃料電池1として表し、その他の単位セルについては省略している。
膜電極接合体2は、電解質層としての電解質膜5、電解質膜5の厚み方向一方側の面(以下、単に一方面と記載する。)に形成される触媒層からなる燃料側電極6、および、電解質膜5の厚み方向他方側の面(以下、単に他方面と記載する。)に形成される触媒層からなる酸素側電極7を備えている。
すなわち、燃料側電極6および酸素側電極7は、電解質膜5を挟んで対向配置されている。
電解質膜5は、アニオン成分が移動可能な層であり、例えば、アニオン交換膜を用いて形成されている。
アニオン交換膜としては、アニオン成分(例えば、水酸化物イオン(OH−)など)が移動可能な媒体であれば、特に限定されず、例えば、4級アンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基などのアニオン交換基を有する固体高分子膜(アニオン交換樹脂)が挙げられる。
アニオン交換膜を形成する固体高分子としては、例えば、ポリスチレンおよびその変性体などの炭化水素系の固体高分子膜や、特開2014−049352号公報に記載のアニオン伝導電解質膜などの固体高分子膜などが挙げられ、好ましくは、特開2014−049352号公報に記載のアニオン伝導電解質膜などの固体高分子膜が挙げられる。また、アニオン交換膜を形成する固体高分子のガラス転移温度(Tg)は、例えば、80〜200℃、好ましくは、100〜200℃である。
また、アニオン交換膜を形成する固体高分子は、その分子構造において、架橋構造を有していてもよい。
燃料側電極6は、上記した膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーと、触媒とを含む電池電極触媒層組成物から形成される触媒層からなる。
触媒は、触媒担体に担持されていてもよい。
触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt))、鉄族元素(鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni))などの周期表第8〜10(VIII)族元素や、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)などの周期表第11(IB)族元素などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ニッケルが挙げられる。また、これら触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
触媒担体としては、例えば、カーボンなどの多孔質物質が挙げられる。
燃料側電極6の触媒層を形成するには、まず、燃料側電極6用の触媒インク(電池電極触媒層組成物を含む溶液)を調製する。
燃料側電極6用の触媒インクを調製するには、上記した触媒に、上記した膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび溶媒を加え、攪拌する。
膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーは、予め溶媒に溶解されたものを用いてもよい。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどの低級アルコール類、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、水などの公知の溶媒が挙げられる。また、このときの攪拌温度は、例えば、10〜30℃であり、攪拌時間は、例えば、1〜60分間である。なお、これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
燃料側電極6用の触媒インクにおける触媒の配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、70質量部以上、好ましくは、83質量部以上であり、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下である。
燃料側電極6用の触媒インクにおける膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーの配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、17質量部以下である。
燃料側電極6用の触媒インクにおける溶媒の配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、500質量部以上、好ましくは、900質量部以上であり、また、例えば、1200質量部以下、好ましくは、1050質量部以下である。
これにより、燃料側電極6用の触媒インクを調製することができる。
そして、上記した燃料側電極6用の触媒インクを、電解質膜5の一方面に塗布し、乾燥させることにより触媒層を形成させる。
燃料側電極6用の触媒インクの塗布方法としては、例えば、スプレー法、ダイコーター法、インクジェット法など公知の塗布方法が挙げられ、好ましくは、スプレー法が挙げられる。
乾燥温度としては、例えば、10〜40℃である。
これにより、触媒層からなる燃料側電極6を得ることができる。
燃料側電極6の厚み(乾燥後加圧前の厚み)は、例えば、10〜200μm、好ましくは、20〜100μmである。
酸素側電極7は、燃料側電極6と同様に、上記した膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーと、上記した触媒とを含む電池電極触媒層組成物から形成される触媒層からなる。
また、酸素側電極7の触媒としては、例えば、錯体形成有機化合物および/または導電性高分子とカーボンとからなる複合体(以下、この複合体を「カーボンコンポジット」という。)に、遷移金属が担持されている材料により形成されてもよい。
遷移金属としては、例えば、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、ランタン(La)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、銀、コバルトが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
錯体形成有機化合物は、金属原子に配位することによって、当該金属原子と錯体を形成する有機化合物であって、例えば、ピロール、ポルフィリン、テトラメトキシフェニルポルフィリン、ジベンゾテトラアザアヌレン、フタロシアニン、コリン、クロリン、フェナントロリン、サルコミン、ベンゾイミダゾール、アミノベンゾイミダゾール、ナイカルバジン、ジアミノマレオニトリル、カルベンダジム、アミノアンチピリンなどの錯体形成有機化合物またはこれらの重合体が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ピロールの重合体であるポリピロール、フェナントロリン、サルコミンが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
導電性高分子としては、上記錯体形成有機化合物と重複する化合物もあるが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリトリフェニルアミン、ポリピリジン、ポリピリミジン、ポリキノキサリン、ポリフェニルキノキサリン、ポリイソチアナフテン、ポリピリジンジイル、ポリチエニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルラン、ポリアセン、ポリフラン、ポリアズレン、ポリインドール、ポリジアミノアントラキノンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、ポリピロールが挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
酸素側電極7の触媒層を形成するには、燃料側電極6の触媒層を形成する場合と同様に、まず、酸素側電極7用の触媒インク(電池電極触媒層組成物を含む溶液)を調製する。
酸素側電極7用の触媒インクは、例えば、燃料側電極6用の触媒インクと同様にして、調製する。
また、酸素側電極7用の触媒インクは、例えば、カーボンコンポジットを形成した後、このカーボンコンポジットに遷移金属を担持させて、調製してもよい。
具体的には、まず、カーボン100質量部に対して、例えば、100〜1000質量部の溶媒を加え、攪拌することによって、溶媒にカーボンが分散したカーボン分散液を調製する。溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられる。また、このときの攪拌温度は、例えば、10℃〜30℃であり、攪拌時間は、例えば、10〜60分間である。
また、このとき、必要により、例えば、酢酸、シュウ酸などの有機酸を添加してもよい。有機酸の添加量は、カーボン100質量部に対して、例えば、1〜50質量部である。
次いで、導電性高分子および/または錯体形成有機化合物の重合体を用いる場合には、カーボン100質量部に対して、それらの総量として、例えば、1〜50質量部、好ましくは、10〜20質量部の対応するモノマー(錯体形成有機化合物)をカーボン分散液に加え、攪拌する。このときの攪拌温度は、例えば、10〜30℃であり、攪拌時間は、例えば、1〜10分間である。
続いて、カーボン分散液中のモノマーを重合させる。重合方法としては、例えば、化学酸化重合、電解酸化重合などの酸化重合が挙げられ、好ましくは、化学酸化重合が挙げられる。
化学酸化重合では、モノマーを含有したカーボン分散液に、酸化重合用触媒を加え、攪拌することによってモノマーを重合させる。酸化重合用触媒としては、例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸マグネシウムなどの過マンガン酸など、公知の酸化重合用触媒が挙げられる。これらのうち、好ましくは、過酸化水素が挙げられる。また、これらは、単独使用または2種以上併用することができる。また、重合温度は、例えば、10〜30℃であり、重合時間は、例えば、10〜90分間である。
一方、錯体形成有機化合物を重合せずに用いる場合には、カーボン100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは、10〜20質量部の低分子錯体形成有機化合物をカーボン分散液に加え、攪拌する。このときの攪拌温度は、例えば、50〜100℃であり、攪拌時間は、例えば、10〜60分間である。
その後、カーボンと導電性高分子および/または錯体形成有機化合物とが分散した分散液を濾過して洗浄し、例えば、50℃〜100℃で真空乾燥する。これにより、カーボンコンポジットの乾燥粉末が得られる。
カーボンコンポジットが得られた後には、このカーボンコンポジットに遷移金属を担持させる。
具体的には、カーボンコンポジット100質量部に対して、例えば、100〜3000質量部の溶媒を加え、攪拌する。これによって、溶媒中にカーボンコンポジットが分散したカーボンコンポジット分散液を調製する。溶媒としては、例えば、上記した溶媒が挙げられる。
一方、カーボンコンポジット100質量部に対して、例えば、1〜150質量部の遷移金属を含む塩を、例えば、100〜1000質量部の溶媒に溶解させ、遷移金属溶液を調製する。
そして、この遷移金属溶液を、カーボンコンポジット分散液に加え、攪拌することによって、遷移金属溶液とカーボンコンポジット分散液との混合液を調製する。このときの攪拌温度は、例えば、50〜100℃であり、攪拌時間は、例えば、10〜60分間である。
続いて、調製された混合液のpHが10〜12の範囲になるまで、還元剤を含有する還元剤溶液を加え、その後、混合液を、例えば、60〜100℃で、例えば、10〜60分間放置することで、遷移金属をカーボンコンポジットに担持させ、続いて、ろ過、洗浄した後、真空乾燥することで遷移金属担持カーボンコンポジットを得る。
なお、還元剤溶液に含有される還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、ヒドラジンなど、公知の還元剤が挙げられる。これらのうち、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として用いる場合には、水素化ホウ素ナトリウムを水酸化ナトリウムとともに水に溶解させた水溶液として用い、かつ、窒素雰囲気下で混合液に加える。これによって、水素化ホウ素ナトリウムと酸素との接触を防止することができるので、水素化ホウ素ナトリウムが酸素と接触することによって分解されることを防止することができる。
また、遷移金属担持カーボンコンポジットを焼成して、その焼成体を遷移金属担持カーボンコンポジットとして用いてもよい。
続いて、燃料側電極6用の触媒インクを調製する場合と同様に、上記した触媒に、上記した膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび上記した溶媒を加えて、攪拌することで、酸素側電極7用の触媒インクを調製する。
酸素側電極7用の触媒インクにおける触媒の配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、75質量部以上であり、また、例えば、95質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。
酸素側電極7用の触媒インクにおける膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーの配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。
酸素側電極7用の触媒インクにおける溶媒の配合割合は、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーおよび触媒の総量100質量部に対して、例えば、1000質量部以上、好ましくは、1800質量部以上であり、また、例えば、2400質量部以下、好ましくは、2100質量部以下である。
これにより、酸素側電極7用の触媒インクを調製することができる。
そして、上記した酸素側電極7用の触媒インクを、燃料側電極6用の触媒インクと同様にして、電解質膜5の他方面に塗布し、乾燥させることにより触媒層を形成させる。
これにより、触媒層からなる酸素側電極7を得ることができる。
酸素側電極7の厚み(乾燥後加圧前の厚み)は、例えば、10〜300μm、好ましくは、20〜150μmである。
膜電極接合体2を製造するには、次いで、燃料側電極6および酸素側電極7と、電解質膜5とを接合させる。
燃料側電極6および酸素側電極7と、電解質膜5とを接合させるには、燃料側電極6および酸素側電極7が形成された電解質膜5を、電解質膜5の厚み方向両側から、例えば、1〜50MPa、好ましくは、2〜30MPaの圧力で、例えば、0.1〜10分、好ましくは、0.2〜5分、加圧する。電解質膜5を加圧するには、例えば、油圧プレス機などが用いられる。
なお、このとき、加圧と同時に加熱してもよい(ホットプレス)。ホットプレスにより、燃料側電極6および酸素側電極7と、電解質膜5とを接合させる場合には、電解質膜5のガラス転移点(Tg)とほぼ同じ温度で加熱しながら、上記した圧力で加圧する。加熱温度は、例えば、電解質膜5のTgと同じ温度からTgよりも40℃高い温度まで、好ましくは、電解質膜5のTgと同じ温度からTgよりも20℃高い温度までである。
ホットプレスすることにより、より低い圧力で、燃料側電極6および酸素側電極7を電解質膜5に接合させることができる。
これにより、膜電極接合体2が製造される。
燃料側拡散層8としては、例えば、カーボンペーパーあるいはカーボンクロスなどが、必要によりフッ素処理されているガス透過性材料が挙げられる。また、燃料側拡散層8は、集電体としても作用する。
燃料側拡散層8は、市販品として入手可能であり、例えば、B−1 Carbon Cloth Type A No wet proofing(BASF社製)、ELAT(登録商標) LT 1400−W(BASF社製)などが挙げられる。
酸素側拡散層9としては、例えば、燃料側拡散層8として例示した、ガス透過性材料などが挙げられる。また、燃料側拡散層8と同様に、酸素側拡散層9も、集電体としても作用する。
燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を形成するには、燃料側電極6を被覆するように、電解質膜5の一方面に、燃料側拡散層8を積層し、酸素側電極7を被覆するように、電解質膜5の他方面に、酸素側拡散層9を積層する。
燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を電解質膜5に積層させるには、電解質膜5の両側に、燃料側拡散層8が燃料側電極6を被覆し、酸素側拡散層9が酸素側電極7を被覆するように、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を配置して、必要により、ガスケット(図示せず)などで固定する。
また、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を電解質膜5に積層させるには、電解質膜5の両側に、燃料側拡散層8が燃料側電極6を被覆し、酸素側拡散層9が酸素側電極7を被覆するように、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を配置して、電解質膜5の厚み方向両側から、例えば、0.5〜30MPa、好ましくは、1〜20MPaの圧力で加圧してもよい。
なお、このとき、上記した燃料側電極6および酸素側電極7と電解質膜5との接合と同様に、ホットプレスしてもよい。ホットプレスにより、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9と、電解質膜5とを接合させる場合には、電解質膜5のTgとほぼ同じ温度で加熱しながら、上記した圧力で加圧する。加熱温度は、例えば、電解質膜5のTgと同じ温度からTgよりも40℃高い温度まで、好ましくは、電解質膜5のTgと同じ温度からTgよりも20℃高い温度までである。
ホットプレスすることにより、より低い圧力で、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を電解質膜5に接合させることができ、より燃料側拡散層8および酸素側拡散層9の破損を防止することができる。
燃料供給部材3は、ガス不透過性の導電性部材からなり、燃料側電極6に液体燃料を供給する。燃料供給部材3には、その表面から凹む、例えば、葛折状などの溝が形成されている。そして、燃料供給部材3は、溝の形成された表面が燃料側電極6に対向接触されている。これにより、燃料側電極6の一方面と燃料供給部材3の他方面(溝の形成された表面)との間には、燃料側電極6全体に燃料成分を接触させるための燃料供給路10が形成される。
燃料供給路10には、燃料成分を燃料供給部材3内に流入させるための燃料供給口11が一端側(図1における紙面上側)に形成され、燃料成分を燃料供給部材3から排出するための燃料排出口12が他端側(図1における紙面下側)に形成されている。
空気供給部材4は、ガス不透過性の導電性部材からなり、酸素側電極7に空気(酸素)を供給する。空気供給部材4には、その表面から凹む、例えば、葛折状などの溝が形成されている。そして、空気供給部材4は、溝の形成された表面が酸素側電極7に対向接触されている。これにより、酸素側電極7の他方面と空気供給部材4の一方面(溝の形成された表面)との間には、酸素側電極7全体に空気(酸素)を接触させるための空気供給路13が形成される。
空気供給路13には、空気(酸素)を空気供給部材4内に流入させるための空気供給口14が一端側(図1における紙面上側)に形成され、空気(酸素)を空気供給部材4から排出するための空気排出口15が他端側(図1における紙面下側)に形成されている。
以下において、燃料電池1の発電方法を説明する。
上記した燃料電池1では、燃料成分が燃料供給口11から燃料側電極6に供給される。一方、空気(酸素)が空気供給口14から酸素側電極7に供給される。
アノード側では、液体燃料が、燃料側電極6と接触しながら燃料供給路10を通過する。一方、カソード側では、空気(酸素)が、酸素側電極7と接触しながら空気供給路13を通過する。
そして、各電極(燃料側電極6および酸素側電極7)において電気化学反応が生じ、起電力が発生する。例えば、液体燃料がメタノールである場合には、下記式(10)〜(12)の通りとなる。
(10) CH3OH+6OH−→CO2+5H2O+6e−(燃料側電極6での反応)
(11) O2+2H2O+4e−→4OH−(酸素側電極7での反応)
(12) CH3OH+3/2O2→CO2+2H2O(燃料電池1全体での反応)
すなわち、メタノールが供給された燃料側電極6では、メタノール(CH3OH)と酸素側電極7での反応で生成した水酸化物イオン(OH−)とが反応して、二酸化炭素(CO2)および水(H2O)が生成するとともに、電子(e−)が発生する(上記式(10)参照)。
燃料側電極6で発生した電子(e−)は、図示しない外部回路を経由して酸素側電極7に到達する。つまり、この外部回路を通過する電子(e−)が、電流となる。
一方、酸素側電極7では、電子(e−)と、外部からの供給もしくは燃料電池1での反応で生成した水(H2O)と、空気供給路13を流れる空気中の酸素(O2)とが反応して、水酸化物イオン(OH−)が生成する(上記式(11)参照)。
そして、生成した水酸化物イオン(OH−)が、電解質膜5を通過して燃料側電極6に到達し、上記と同様の反応(上記式(10)参照)が生じる。
このような燃料側電極6および酸素側電極7での電気化学的反応が連続的に生じることによって、燃料電池1全体として上記式(12)で表わされる反応が生じて、燃料電池1に起電力が発生する。すなわち、燃料電池1は、燃料成分を消費して発電する。
また、例えば、燃料成分がヒドラジンである場合には、電気化学反応は、下記式(13)〜(15)の通りとなる。
(13) N2H4+4OH−→N2+4H2O+4e−(燃料側電極6での反応)
(14) O2+2H2O+4e−→4OH−(酸素側電極7での反応)
(15) N2H4+O2→N2+2H2O(燃料電池1全体での反応)
本発明の燃料電池は、上記した膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーと、触媒とを含む電池電極触媒層組成物から形成される触媒層からなる燃料側電極および酸素側電極を備える。
そのため、その発電性能を向上させることができる。
なお、上記した実施形態では、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を、ガスケットにより固定、加圧またはホットプレスにより電解質膜5に積層したが、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を、加熱のみにより、電解質膜5に溶着(熱溶着)させてもよい。
また、燃料側拡散層8および酸素側拡散層9を、上記した実施形態と同様に電解質膜5の両側に配置し、複数の膜電極接合体2を積層してスタック構造を形成するときに、加圧されるようにしてもよい。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
(膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーの製造)
実施例1
スチレン2.0g(19.2mmol)およびN−ビニルイミダゾール8.0g(85.0mmol)、10mLのキシレンをフラスコに入れ、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す。)18mg(0.1mmol)を加えた。
次いで、フラスコを−78℃に冷却して、脱気操作を30分間した後、アルゴン雰囲気下80℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、減圧下にして溶媒および未反応の残留モノマーを除いた。
その後、水−エタノール系の溶媒を用いて再沈精製し、収率23%で2.3gの淡黄色の重合体を得た。この重合体について、重量平均分子量を、下記した測定条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、見積もったところ、10000であった。
<GPCの測定条件>
データ処理装置:D−7000、日立社製
示差屈折率検出器:L−7490、日立社製
カラム:KF−805L×2本、Shodex社製
移動相:THF
カラム流量:1mL/min
試料濃度:1.00質量%
注入量:10μL
測定温度:40℃
分子量校正:ポリスチレンスタンダード、Shodex社製
得られた重合体1.0gを濃度1Mのヨウ化ヘキシル−ジオキサン溶液に溶解させ、95℃で24時間、N−炭化水素化反応させた。反応終了後、得られた沈殿物をヘキサンで洗浄した後、ヘキサン−アセトン系で再沈精製をし、1.83gの褐色固体の上記式(1)で示される構造単位を含有しているポリマー(R1は、n−ヘキシル基を示し、R2、R3およびR4は、互いに同一に水素原子を示し、aは、0を示し、X−は、ヨウ化物イオンを示す。)を得た。なお、このポリマーのSP値は12.1(cal/cm3)1/2であった。
下記条件で測定した1H−NMRのNMRチャートにおける、イミダゾール基に結合したn−ヘキシル基末端の水素原子(プロトン)と、芳香族領域の水素原子(プロトン)との積分比から算出した、N−ビニルイミダゾールとスチレンとの重合比は、42:58であった(すなわち、上記式(1)において、m=42であった。)。N−炭化水素化は定量的に進行するため、収率は97%と算出された。
<1H−NMRの測定条件>
装置:ADVANCE300、ブルカー社製
周波数:300MHz
測定温度:25℃
積算回数:16回
得られたポリマーを40mLのアセトンに溶解させ、その溶液に濃度1Mの水酸化カリウム水溶液を20mL加え、室温(25℃)で3時間攪拌し、対イオンをヨウ化物イオンから水酸化物イオンに置換した。溶媒を溜去し固体を析出させ、水洗浄をして生成した塩および余剰のアルカリを除いた。この置換操作をもう一度繰り返して、水酸化物イオンを対イオンとする膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを、収率82%で1.10g得た。
実施例2
スチレン7.0g(67.2mmol)およびN−ビニルイミダゾール3.0g(31.9mmol)、10mLのキシレンをフラスコに入れ、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す。)18mg(0.1mmol)を加えた。
次いで、フラスコを−78℃に冷却して、脱気操作を30分間した後、アルゴン雰囲気下80℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、減圧下にして溶媒および未反応の残留モノマーを除いた。
その後、エタノール−トルエン系の溶媒を用いて再沈精製し、収率46%で4.6gの白色の重合体を得た。この重合体について、上記した測定条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、重量平均分子量を見積もったところ、10000であった。
得られた重合体1.0gを濃度1Mのヨウ化プロピル−ジオキサン溶液に溶解させ、60℃で24時間、N−炭化水素化反応させた。反応終了後、減圧下にして溶媒および未反応の残留モノマーを溜去し、その後、ヘキサン−アセトン系で再沈精製をし、1.20gの淡黄色固体の上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマー(R1は、n−プロピル基を示し、R2、R3およびR4は、互いに同一に水素原子を示し、aは、0を示し、X−は、ヨウ化物イオンを示す。)を得た。なお、このポリマーのSP値は12.1(cal/cm3)1/2であった。
上記条件で測定した1H−NMRのNMRチャートにおける、イミダゾール基に結合したn−プロピル基末端の水素原子(プロトン)と、芳香族領域の水素原子(プロトン)との積分比から算出した、N−ビニルイミダゾールとスチレンとの重合比は、14:86であった(すなわち、上記式(1)において、m=14であった。)。N−炭化水素化は定量的に進行するため、収率は98%と算出された。
得られたポリマーを40mLのアセトンに溶解させ、その溶液に濃度1Mの水酸化カリウム水溶液を20mL加え、室温(25℃)で3時間攪拌し、対イオンをヨウ化物イオンから水酸化物イオンに置換した。溶媒を溜去し固体を析出させ、水洗浄をして生成した塩および余剰のアルカリを除いた。この置換操作をもう一度繰り返して、水酸化物イオンを対イオンとする膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを、収率97%で1.03g得た。
実施例3
スチレン7.0g(67.2mmol)およびN−ビニルイミダゾール3.0g(31.9mmol)、10mLのキシレンをフラスコに入れ、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略す。)18mg(0.1mmol)を加えた。
次いで、フラスコを−78℃に冷却して、脱気操作を30分間した後、アルゴン雰囲気下80℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を水で洗浄し、減圧下にして溶媒および未反応の残留モノマーを除いた。
その後、エタノール−トルエン系の溶媒を用いて再沈精製し、収率46%で4.6gの白色の重合体を得た。この重合体について、上記した測定条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、重量平均分子量を見積もったところ、10000であった。
得られた重合体1.0gを濃度1Mのヨウ化メチル−ジオキサン溶液に溶解させ、40℃で24時間、N−炭化水素化反応させた。反応終了後、減圧下にして溶媒および未反応の残留モノマーを溜去し、その後、ヘキサン−アセトン系で再沈精製をし、1.01gの淡黄色固体の上記式(1)で示される構造単位を含有するポリマー(R1は、メチル基を示し、R2、R3およびR4は、互いに同一に水素原子を示し、aは、0を示し、X−は、ヨウ化物イオンを示す。)を得た。なお、このポリマーのSP値は12.1(cal/cm3)1/2であった。
上記条件で測定した1H−NMRのNMRチャートにおける、イミダゾール基に結合したメチル基末端の水素原子(プロトン)と、芳香族領域の水素原子(プロトン)との積分比から算出した、N−ビニルイミダゾールとスチレンとの重合比は、14:86であった(すなわち、上記式(1)において、m=14であった。)。N−炭化水素化は定量的に進行するため、収率は85%と算出された。
得られたポリマーを40mLのアセトンに溶解させ、その溶液に濃度1Mの水酸化カリウム水溶液を20mL加え、室温(25℃)で3時間攪拌し、対イオンをヨウ化物イオンから水酸化物イオンに置換した。溶媒を溜去し固体を析出させ、水洗浄をして生成した塩および余剰のアルカリを除いた。この置換操作をもう一度繰り返して、水酸化物イオンを対イオンとする膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを、収率81%で0.72g得た。
比較例1
本発明の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーと比較するため、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーとして、特開2012−201772号公報の実施例1の(2−1)に記載の触媒電極層用のアニオン伝導性アイオノマーを非営利目的で合成し、比較例1として用いた。
このアイオノマーは、下記式(9)で示される構造単位を含有しており、上記した測定条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定し、重量平均分子量を見積もったところ、30000であった。なお、このポリマーのSP値は、9.4(cal/cm3)1/2であった。
(膜電極接合体および燃料電池の製造)
製造例1
(1)燃料側電極用の触媒インクの調製
ニッケルのナノ粒子、予め5質量%になるように溶媒に溶解希釈した実施例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダー、および、溶媒(テトラヒドロフラン(THF)+1−プロパノール、以下同様。)を混合し、25℃で15分間撹拌することにより、ニッケル触媒の分散液を調製した。
このニッケル触媒の分散液を、燃料側電極用の触媒インクとして用いた。
(2)酸素側触媒用の触媒インクの調製
(2−1)ポリピロールカーボンコンポジット(PPy−C)の作製
純水に、カーボンと酢酸とを加え、室温(25℃)で20分間攪拌して、カーボンが分散したカーボン分散液を調製した。
次いで、このカーボン分散液にピロールを加え、室温(25℃)で5分間攪拌した。さらに、このカーボン分散液に濃度10%の過酸化水素を加え、室温(25℃)で1時間攪拌することにより、ピロールを酸化重合させた。
その後、このカーボン分散液を濾過して温水洗浄し、90℃で真空乾燥した。これにより、カーボン上にピロールが重合したPPy−C乾燥粉末を得た。
(2−2)コバルト担持ポリピロールカーボンの作製
PPy−C乾燥粉末を純水に加え、窒素雰囲気で、80℃まで加熱しながら30分間攪拌して、PPy−Cが分散したPPy−C分散液を得た。
次いで、硝酸コバルト(II)六水和物を、窒素雰囲気で、純水に溶解させ、コバルト含有水溶液を調製した。そして、このコバルト含有水溶液を、PPy−C分散液に加え、窒素雰囲気で、80℃で30分間攪拌することによって、コバルト−PPy−C混合液を得た。
続いて、水素化ホウ素ナトリウムと水酸化ナトリウムとを、窒素雰囲気で、純水に溶解させ、アルカリ水溶液を調製した。次いで、窒素雰囲気で、コバルト−PPy−C混合液のpHが11.1になるまで、アルカリ水溶液を徐々に加えた後、80℃で30分間放置した。ろ過の後、80℃の温水にて洗浄し、80℃で12時間真空乾燥することで、コバルト担持ポリピロールカーボン(CoPPyC)を調製した。
このコバルト担持ポリピロールカーボン(CoPPyC)に、予め5質量%になるように溶媒に溶解希釈した実施例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダー、および、溶媒を加え、25℃で15分間攪拌したものを、酸素側電極用の触媒インクとして用いた。
(3)各触媒インクの塗布および乾燥
燃料側電極用の触媒インクを、電解質膜(PAMPAM−Me−aceton・I/free G120、特開2014−049352号公報に記載の実施例4のアニオン伝導電解質膜、以下同様。)の一方面に、スプレー法により塗布した。また、酸素側電極用の触媒インクを、電解質膜の他方面に、スプレー法により塗布した。
その後、25℃で乾燥することにより、触媒面積4cm2、厚み100μmの燃料側電極、および、触媒面積4cm2、厚み150μmの酸素側電極を形成した。
(4)燃料側電極および酸素側電極と、電解質膜との接合
次いで、燃料側電極および酸素側電極が形成された電解質膜を、電解質膜の厚み方向両側から、30MPaの圧力で、0.5分間、加圧して、燃料側電極および酸素側電極と、電解質膜とを接合させた。
なお、このとき、付着防止のため、燃料側電極および酸素側電極が形成された電解質膜を、PETフィルムで挟んで加圧した。このとき、膜厚は25μmであった。
これにより、膜電極接合体を得た。
(5)燃料側拡散層および酸素側拡散層と、電解質膜との接合
次いで、燃料側電極を被覆するように、電解質膜の一方面に、燃料側拡散層(B−1 Carbon Cloth Type A No wet proofing:BASF社製)を積層し、酸素側電極を被覆するように、電解質膜の他方面に、酸素側拡散層(ELAT(登録商標) LT 1400−W:BASF社製)を積層した。
(6)燃料電池の製造
得られた膜電極接合体に、燃料供給部材および空気供給部材を設け、図1に示す構造の単セルユニットの燃料電池を形成した。
製造例2
燃料側電極用の触媒インク、および、酸素側電極用の触媒インクの調製において、実施例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを混合する代わりに、比較例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを混合したこと以外は、製造例1と同様にして、膜電極接合体および燃料電池を得た。
(評価)
(燃料電池出力試験)
製造例1および2で得られた単セルユニットの燃料電池を用いて出力試験をした。
電極基材は、撥水処理をしたカーボンクロスを用いた。
燃料電池セル温度を80℃に設定し、アノード側に5質量%水加ヒドラジン+5質量%水酸化カリウム水溶液を50℃にて2ml/min、カソード側に50℃−相対湿度(RH)95%の大気圧の空気を500ml/minで供給して発電させ、電流密度を0mA/cm2から徐々に増大させたときの電圧を測定し、得られた値から各電流値における出力電力を算出した。なお、電解質膜、および、膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーは、その対イオンを、炭酸水素イオン(HCO3 −)に置換してから用いた。
その結果を図2に示す。
(考察)
図2に示すように、比較例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いた製造例2の燃料電池では、最大出力電力密度が54mW/cm2であったのに対し、実施例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いた製造例1の燃料電池では、最大出力電力密度が68mW/cm2であった。
そのため、実施例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いた製造例1の燃料電池の発電性能が、比較例1の膜電極接合体の電極触媒層形成用バインダーを用いた製造例2の燃料電池の発電性能に対して、向上していることがわかる。