JP6431349B2 - 光ファイバ母材の製造方法 - Google Patents
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Description
光ファイバは、所望の光学特性を得るために、光が通る領域(コア)とその周辺(クラッド)とで屈折率差を設け、コア内の屈折率分布にも勾配を持たせている。光ファイバ用母材の半径方向の屈折率分布は、求める光ファイバの屈折率分布と相似形になるように形成される。
なお、母材の屈折率分布の測定は、母材の軸に垂直な断面に沿ってレーザ光線を入射し、面内における屈折角の変化を計測することにより非破壊で行うことができる(非特許文献1参照)。
そこで本発明は、脈理の生成を抑制し、母材中を前方に透過するレーザ光の異常な散乱や屈折を抑制した光ファイバ母材の製造方法を提供することを課題とする。
そこで、堆積しなかったシリカ微粒子をチャンバー外へ排出する排気管のスート側の開口部の下端位置を、スート底面高さより低い位置に配置することで、スート底面に平坦な堆積面が形成されることが判明した。ガラス微粒子を含む火炎流は、この平坦な堆積面に沿って排気管に向かって安定して流れ、かつ引上げ速度の制御が容易となり、GeO2を10重量%以上の濃度になるように添加する場合においても、脈理の少ない光ファイバ母材が得られることを知見し、本発明を達成した。
前記引上速度の変動の標準偏差は、平均引上速度に対して10%以下とするのが好ましい。このようにして得られたガラス微粒子堆積体は、加熱焼結して透明ガラス体とされ、該透明ガラス体の軸中心におけるコアとクラッドとの比屈折率差Δは、1%以上とされる。
図2は、従来のスート製造方法を説明する図である。図2のように、バーナから堆積面であるスート底面へ向かって流れるシリカ微粒子を含む火炎流は、スート底面を経て排気管へ至るが、排気管のスート側の開口部の下端がスート底面よりも高い位置にあると、スート底面からスート体に沿って上方向への流れが占める割合が大きくなり、スート底面の凸形状を強調するように堆積が進行する。そのため、カメラなどで検出されるスート底面の最下端の位置に誤差が生じやすくなり、スートの引上量(引上速度)に変動が生じる。この結果、スート底面とバーナとの相対位置に変動が生じる。
図3では、排気管のスート側の開口部の下端がスート底面と同じ高さになるように配置されている。このように排気管を配置することで、バーナから排気管へと至るシリカ微粒子を含む火炎流のうち、スート体に沿って上方向に流れる成分を減らすことができ、スート底面での凸形状の形成が抑制され、引上げ速度の変動を抑えることができる。このときの引上速度の変動は10%以下とすることができ、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下とするのが良い。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されず、様々な態様が可能である。
4重管バーナの中心管に、SiCl4 2.7g/min.とGeCl41g/min.をそれぞれ気体状態で供給し、その外側の領域に水素7.3リットル/min.、さらにその外側の領域にアルゴン1.7リットル/min.、最外側の領域に酸素15リットル/min.を供給して、出発材へのシリカ微粒子の堆積を行った。排気管は、図3に示すようにその開口部の下端高さがスート底面と同じとなるように配置している。また、出発材はその軸方向に回転させながら上方に引き上げ、カメラが認識するスート底面の高さが一定となるようにその引上げ速度を制御した。
以上のようにしてスート体の製造を行った結果、製造中の引上げ速度の平均は0.58mm/min.、標準偏差は0.0079mm/min.(平均引上速度の1.36%)であった。製造したスート体を焼結炉で加熱し、透明ガラス化処理をおこなったところ、脈理のないガラスロッドが得られた。
コア中心付近の屈折率が高い部分のレーザ光の透過率は、高濃度のドーパントによる散乱の影響で10%程度まで低下したものの、問題なく屈折角を検出することができた。また、屈折率分布の測定結果から、中心部分の比屈折率差は2.7%であった。
実施例1と同様に、4重管バーナの中心管にSiCl4 2.7g/minのとGeCl41g/min.をそれぞれ気体状態で供給し、その外側の領域に水素7.3リットル/mm.、さらにその外側の領域にアルゴン1リットル/mm.、最外側の領域に酸素15リットル/mm.を供給して、出発材へのシリカ微粒子の堆積をおこなった。排気管は、図4に示すように、その開口部の下端高さがスート底面より5mm低い位置となるように配置している。また、引上げ速度の制御は、実施例1と同様にして行った。
得られた透明ガラス母材の屈折率分布を実施例1と同様にして測定した。コア中心付近の屈折率が高い部分では、レーザ光の透過率の低下(約10%程度)が認められたが、屈折角を計測できた。屈折率分布の測定結果から、中心部分の比屈折率差は2.9%であった。
実施例1と同様に、4重管バーナの中心管に2.7g/min.のSiCl4と、0.9g/minのGeCl4をそれぞれ気体状態で供給し、その外側の領域に水素7.3リットル/min.、さらにその外側の領域にアルゴン1リットル/min.、最外の領域に酸素15リットル/min.を供給して、出発材へのシリカ微粒子の堆積を行った。排気管は、図5に示すように、開口端を下げ傾斜を設けてその開口部の下端高さが、スート底面よりやや低い位置となるように配置し、バーナのセッティング位置を実施例1から変更している。また、引上げ速度制御は、実施例1と同様にして行った。
得られた透明ガラス母材の屈折率分布を実施例1と同様にして測定した。コア中心付近の屈折率が高い部分では、レーザ光の透過率の低下(約10%程度)が認められたが、屈折角を計測できた。屈折率分布の測定結果から、中心部分の比屈折率差は2.4%であった。
排気管を図2に示す位置に配置したほかは、実施例1と同様にして、バーナ、ガス条件、引上げ速度制御を行ってスート体を製造した。ただし、排気管の下端はスート底面より5mm上方に配置されている。この条件でスート体の製造を行ったところ、引上げ速度の平均は0.55mm/min.、標準偏差は0.06mm/min. (平均引上速度の10.9%)であった。
また、製造中のスート体の縦断面形状は、その底面が略逆三角形状の凸形状となっていた。製造したスート体を焼結炉で加熱し、透明ガラス化処理を行ったところ、透明ガラスロッド中に強い脈理が認められた。屈折率分布測定のため、母材軸に垂直な断面方向からレーザ光線を入射したが、脈理の部分でレーザ光が散乱し、この断面方向に透過するレーザ光強度が1%以下にまで減衰し、屈折角が検出できず、屈折率分布の測定ができず、製品として使用できなかった。
2.スート体、
3.バーナ、
4.バーナ火炎、
5.排気管。
Claims (5)
- 酸水素火炎にガラス原料を供給し、生成したガラス微粒子を回転させながら上方に引き上げる出発材の先端に噴きつけて堆積させる光ファイバ母材の製造方法において、排気ガスを排出する排気管の下端位置が、ガラス微粒子堆積体の堆積底面の下端より低い位置にくるように該排気管を配置し、前記堆積底面とバーナ間との距離が一定となるように引上げ速度を制御しながらガラス微粒子を堆積させることを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。
- 前記排気管の開口部上下方向の中心位置が、ガラス微粒子堆積体の堆積底面の下端位置より高い位置にある請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記引上速度の変動の標準偏差が、平均引上速度に対して10%以下である請求項1に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記ガラス微粒子堆積体を加熱焼結して、透明ガラス体とする請求項1又は2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
- 前記透明ガラス体の軸中心におけるコアとクラッドとの比屈折率差Δが1%以上である請求項4に記載の光ファイバ母材の製造方法。
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