以下、図面に基づいて本発明に係る共用車両管理装置及び方法の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明に係る共用車両管理装置10を、複数のユーザが複数のステーションに配置された複数の共用車両を共用するカーシェアリングシステムを管理運営する共用車両管理システム1に適用した一具体例である。本実施形態のカーシェアリングシステムを概説すると、一のステーション(出発ステーション)から借り出した共用車両を、他のステーション(帰着ステーション)へ返却することが許される、いわゆるワンウェイカーシェアリングシステム(乗り捨て型カーシェアリングシステムとも称される。)である。勿論、このワンウェイカーシェリングシステムでは、出発ステーションと帰着ステーションが同じステーションであってもよい。また以下の説明では、共用車両Vとして二次電池のみを駆動エネルギとする電気自動車を用いた実施形態を示すが、二次電池とガソリン又は軽油を駆動エネルギとするハイブリッド自動車や、ガソリン又は軽油のみを駆動エネルギとする内燃機関自動車にも本発明を適用することができる。
図1Aは、本実施形態の共用車両管理システム1の概要図であって、ユーザが共用車両を利用する手順を説明するための図である。ユーザは、ユーザ端末装置3Xを操作することで本実施形態の共用車両管理システム1を利用する。すなわち最初に、共用車両管理装置10が管理する複数のステーションST1,ST2,ST3の中から、任意のステーションを、共用車両V1,V2を借りるためのステーション(出発ステーション)として設定するとともに、当該出発ステーションに駐車している共用車両V1,V2の利用予約を設定する。また、これと同時に又は返却する際に、共用車両V1,V2を返却するためのステーション(帰着ステーション)を設定するとともに返却の設定をする。これにより、ユーザは、出発ステーションに駐車している、予約した共用車両V1,V2に乗車して共用車両を利用し、その後、利用した共用車両V1,V2を、予め設定した帰着ステーションに返却する。こうした手順でワンウェイカーシェアリングシステムを利用する。
本実施形態の共用車両管理システム1の利用手順について、図1Aに示す場面を例に挙げてさらに具体的に説明する。なお、図1Aに示す場面例では、共用車両管理装置10が管理するステーションとして3つのステーションST1〜ST3が存在し、これらのステーションST1〜ST3のうち、ステーションST1には共用車両V1が、ステーションST2には共用車両V2がそれぞれ駐車し、これら共用車両V1,V2がユーザにより利用可能な状態にあるものとする。
図1Aに示す場面において、ユーザはステーションST1からステーションST2へ行きたいものとする。この場合には、ユーザがユーザ端末装置3Xを操作することで、ステーションST1を出発ステーションとして設定するとともに、ステーションST1に駐車している共用車両V1の利用予約を設定し、併せて、ステーションST2を帰着ステーションとして設定する。そして、ユーザは、ステーションST1から共用車両V1に乗車し、所望の経路を辿って用事を済ませたのちステーションST2へ移動するか、又はステーションST1からそのままステーションST2へと移動し、ステーションST2に共用車両V1を返却するとともにユーザ端末装置3Xを操作して返却の設定をする。これにより、共用車両V1の利用が終了する。このとき、共用車両管理装置10は、ユーザが所持するユーザ端末装置3Xと、共用車両V1に搭載された車載装置との間で情報通信を行うことで、ユーザによる共用車両V1の利用状況を管理したり当該ユーザに課金したりする。こうしたワンウェイカーシェアリングシステムは、特に限定されないが、自宅と最寄駅との間の通勤、繁華街での買い物、観光地での観光所巡りなど、短距離又は短時間の車両の利用に適している。従来のカーシェリングシステムでは、出発ステーションに共用車両を返却する必要があるため、こうした利用形態には向かないからである。
図1Bは、このような共用車両管理システム1を示すブロック図である。図1Bに示すように、本実施形態の共用車両管理システム1は、共用車両管理装置10と、複数のユーザに利用される複数の共用車両V1〜Vnにそれぞれ搭載された車載装置2V1〜2Vnと、複数のユーザがそれぞれ所持するユーザ端末装置3X1〜3Xmと、を備える。本実施形態の共用車両管理システム1を構成する、車載装置2V1〜2Vnと、ユーザ端末装置3X1〜3Xmの各台数は特に限定されない(すなわち、m,nはいずれも自然数であればよい)。以下、共用車両V1〜Vnを総称する場合は共用車両Vといい、車載装置2V1〜2Vnを総称する場合は車載装置2Vといい、ユーザ端末装置3X1〜3Xmを総称する場合はユーザ端末装置3Xという。
共用車両管理装置10、車載装置2V1〜2Vn及びユーザ端末装置3X1〜3Xmは、それぞれ通信装置12,22,32を備え、インターネットなどの電気通信回線網4を介して相互に情報の送受信が可能とされている。通信経路は有線であっても無線であってもよい。
本実施形態のユーザ端末装置3Xは、本発明の共用車両管理装置に係るユーザ端末装置3Xに適用されるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、各機能を実行させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。本実施形態のユーザ端末装置3Xは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン又はPDA(Personal Digital Assistant)その他の可搬型の端末装置であってもよい。
本実施形態のユーザ端末装置3Xは、各ユーザによる共用車両Vの利用を求める利用要求などの入力情報を受け付ける入力装置31と、共用車両管理装置10などの外部装置と通信を行う通信装置32と、各ユーザに情報を通知するための表示装置33と、を備える。
ユーザ端末装置3Xの入力装置31としては、たとえば、ユーザの手操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されるタッチパネル、ジョイスティック、ユーザの音声による入力が可能なマイクなどの装置を用いることができる。表示装置33としては、ディスプレイなどが挙げられ、タッチパネル・ディスプレイを用いる場合には、入力装置31と兼用することができる。
本実施形態において、ユーザ端末装置3Xは、各ユーザから入力された共用車両Vの利用を求める利用要求などの入力情報を、通信装置32を介して、共用車両管理装置10に送信する。このような共用車両Vの利用を求める利用要求には、ユーザのID情報、ユーザが共用車両Vを利用開始するステーションとして設定する出発ステーションの情報、ユーザが利用しようとする共用車両VのID情報、ユーザが共用車両Vを利用後に返却するためのステーションとして設定する帰着ステーションの情報などが含まれる。
本実施形態において、ユーザは、ユーザ端末装置3Xを操作することで共用車両管理装置10と通信可能とされ、共用車両管理装置10から、各共用車両Vの情報及び各ステーションST1〜STu(uは任意の自然数,以下、ステーションST1〜STuを総称する場合はステーションSTという)の情報を得て、所望の共用車両Vを利用するための利用要求を入力できる。たとえば、ユーザは、ユーザ端末装置3Xを介して、共用車両管理装置10から、利用可能な共用車両Vの情報、出発ステーションとして設定可能なステーションSTの情報及び帰着ステーションとして設定可能なステーションSTの情報を得ることができる。また、得られた情報に基づいて、共用車両Vを借り出す出発ステーションと、出発ステーションに配置された共用車両Vのうち利用する共用車両Vと、利用後の共用車両Vを返却するための帰着ステーションとを設定することで、利用要求を入力する。
加えて、本実施形態において、ユーザ端末装置3Xは、ユーザに対して共用車両Vの走行経路を案内するためのナビゲーション装置として機能するものであってもよい。この場合には、ユーザ端末装置3Xは、たとえば、予めユーザ端末装置3Xに備えられたメモリなどの記憶媒体に地図情報を記憶させておき、表示装置430に、地図情報とともに、ユーザが現在利用している共用車両Vの現在位置、及びユーザが設定した帰着ステーションの位置を表示し、共用車両Vの現在位置から帰着ステーションまでの走行経路を案内するように構成することができる。
本実施形態の車載装置2Vは、各自の共用車両Vの現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)受信機21を備え、GPS受信機21により取得した共用車両Vの現在位置の情報などを、通信装置22を介して共用車両管理装置10に送信する。
本実施形態の共用車両管理装置10は、ユーザ端末装置3Xを介して入力された利用要求に基づき、一のステーションSTから利用可能な共用車両Vをユーザに貸し出し、他のステーションSTでユーザから共用車両Vの返却を受け付ける。
本実施形態の共用車両管理装置10は、共用車両管理システム1のサーバとして機能し、カーシェアリングシステムを管理運営するための制御処理を実行する制御装置11と、通信装置12と、データベース13とを備える。
図1Cは、共用車両管理装置10に含まれる制御装置11の各機能を示すブロック図である。本実施形態においては、制御装置11は、各ユーザ端末装置3X及び各共用車両Vから、通信装置12を介して受信した情報を、適宜データベース13に記憶させる。そして、制御装置11は、後述する各機能により、通信装置12が受信した情報及びデータベース13に記憶させた情報に基づいて、ユーザによる共用車両Vの利用及び返却の管理を行う。
図2は、本実施形態に係る共用車両管理システムのステーションSTの配置例を示す平面図である。同図に示す本実施形態においては、図2に破線で示す地図上の所定の利用領域内に、丸印で示す複数のステーションSTが設けられている。そして、ユーザがステーションST1で借りた共用車両Vnを利用し、その後共用車両VnをステーションST2に返却するような場面において、共用車両管理装置10は、ユーザによる共用車両Vnの利用及び返却の管理を行うことができる。なお、図2に示すステーションSTの配置例では、隣り合うステーション間の距離が等しくなるように、各ステーションが配置されているが、配置の態様はこれに限定されるものではない。たとえば、パーソントリップ情報などに基づいて利用ユーザが多いと予想される範囲に多数のステーションを配置し、利用ユーザが少ないと予想される範囲に少数のステーションを配置してもよい。
図1Bに戻り、本実施形態の共用車両管理装置10のデータベース13は、共用車両情報131と、ステーション情報132と、ユーザから受け付けた利用要求情報133と、地図情報134と、各共用車両VのSOC残量情報135と、各共用車両VのSOC消費実績情報136と、各ステーションSTの利用パターン情報137と、充電ステーション情報138とを記憶する。なお、記憶媒体としてのデータベース13は、物理的に一つの記憶媒体で構成してもよいが、上述した各情報を任意の組合せで記憶する複数の記憶媒体で構成してもよい。
データベース13に記憶する共用車両情報131は、各共用車両VのID、車種・車型、出力などを含む情報である。データベース13に記憶するステーション情報132は、各ステーションSTの位置情報、各ステーションSTの最大駐車可能台数、各ステーションSTの駐車台数又は空車台数、目印となる周辺の地名、各ステーションST間の距離や道路勾配などを含む情報である。
データベース13に記憶する利用要求情報133は、各ユーザがユーザ端末装置3Xを用いて入力した共用車両Vの利用を求める入力情報であり、利用要求情報133には、ユーザのID情報、ユーザが利用しようとする共用車両VのID情報、ユーザが共用車両Vの利用を開始するための出発ステーションSTの情報、ユーザが共用車両Vを利用後に返却するための帰着ステーションSTの情報などが含まれる。
データベース13に記憶する地図情報134は、少なくとも図2に示す全てのステーションSTを包含する地図情報であり、道路、ノード間の距離・勾配・道路幅・道路種、建造物の名称などを含む情報である。
データベース13に記憶するSOC残量情報135は、電気自動車である各共用車両Vの二次電池残量を示す情報であり、電気自動車のバッテリコントローラで算出される二次電池のSOC(State of Charge,0〜100%)の実測値を所定時間間隔で読み出して記憶される。なお、ガソリン又は軽油などの石油系燃料を駆動エネルギとする共用車両の場合には、燃料タンクの残量計の情報が車両コントローラにて管理されているので、この実測値を所定時間間隔で読み出して記憶すればよい。
データベース13に記憶するSOC消費実績情報136は、各共用車両Vにおける単位SOC当たりの走行距離に関する情報であり、電力消費率情報、いわゆる電費情報である。本実施形態においては、SOC残量情報135を用いる関係で電費情報としてSOCに基づく消費実績情報を用いるが、電費情報として二次電池の単位容量当たりの走行距離[km/Wh]を用いてもよい。また、内燃機関自動車にあっては単位燃料体積当たりの走行距離[km/リットル]である燃費情報をもちいればよい。
データベース13に記憶する利用パターン情報137は、各ステーションSTにおける出発及び帰着パターンの履歴に関する情報である。たとえば、ステーションST1から出発した共用車両がどのステーションSTnに何回帰着したかという利用実績を示す情報である。この利用パターン情報137は、ユーザが出発ステーション及びそのときの帰着ステーションとした利用パターンの実績がデータベース13に蓄積され、ユーザが利用するたび又は所定時間間隔で更新される。
データベース13に記憶する充電ステーション情報138は、共用車両Vの駆動エネルギを補給する充電ステーションCSTの位置情報、各充電ステーションCSTの最大充電可能台数、各充電ステーションCSTの充電台数又は空車台数、目印となる周辺の地名、各ステーションSTとの距離・道路勾配などを含む情報である。電気自動車を共用車両Vに用いた場合に、充電装置は高価であるため各ステーションSTに充電装置を設けることは費用の面で好ましくない。また、共用車両Vは定期的に保守点検が必要であるため、その設備やスペースも必要とされる。このため本実施形態のワンウェイカーシェアリングシステムでは、図2に示す利用領域内又はこれの近傍の一箇所又は数箇所に充電ステーションCSTを設置することとしている。同図の例では2つの充電ステーションCST1,CST2を利用領域内に設置したものである。そして、詳細は後述するが、共用車両VのSOC残量が所定閾値以下になったり、あるいは保守点検作業が必要になったりすると、作業者がその共用車両Vを充電ステーションCSTまで搬送し、充電処理を行ったのち、再び作業者が所定のステーションSTに搬送する。なお、ステーションSTの幾つかに充電装置や保守点検設備を設置し、そのステーションSTを充電ステーションCSTとして共用してもよい。
以上、データベース13に記憶される各情報のうち、各共用車両VのSOC残量情報135と各共用車両VのSOC消費実績情報136は、その共用車両情報131に関連付けて記憶される。すなわち、特定の共用車両Vの共用車両情報131を抽出すると、現在のSOC残量情報135とSOC消費実績情報136も同時に抽出される。また、ユーザが共用車両Vを利用すると、共用車両管理装置10は、ユーザからの利用要求情報133に基づき、たとえば図3に示すように、ユーザID、車両ID(共用車両VのID)、予約時刻(ユーザから利用要求を受信した時刻)、出発ステーション及び帰着ステーションの情報をデータベース13に記憶する。なお、図3に示す例においては、データベース13には、これらの情報に加えて、さらに、利用状況の情報、すなわち、各共用車両Vの返却が完了したか否か(図3においては、返却が完了したものを「finished」と示した。)の情報を、利用要求情報133ごとに記憶する。
図1Bに戻り、本実施形態の共用車両管理装置10の制御装置11は、カーシェアリングシステムを管理運営する処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)112と、このROM112に格納されたプログラムを実行することで、共用車両管理装置10として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)113とを備える。そしてこの制御装置11は、図1Cに示すように、利用受付機能と、位置監視機能と、返却受付機能と、SOC推定値算出機能と、充電処理指示機能とを実現する。本実施形態の制御装置11は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実現するコンピュータからなる。以下、共用車両管理装置10の制御装置11が実現する各機能についてそれぞれ説明する。
利用受付機能は、ユーザからユーザ端末装置3Xを介して一の共用車両Vの利用を要求する利用要求情報133を取得し、取得した利用要求情報133を、利用要求を受信した時刻(予約時刻)の情報と共にデータベース13に記憶させる機能である。
たとえば、図1Aに示す場面を例に説明すると、まずユーザが、ユーザ端末装置3Xの通信装置32を起動させて共用車両管理装置10にアクセスし、共用車両管理装置10のデータベース13に記憶されたステーション情報132の中から、希望の出発ステーションとしてステーションST1を特定し、出発ステーションとして特定したステーションST1に配置された共用車両Vのうち利用可能な共用車両V1を予約車両として特定し、さらに、データベース13に記憶されたステーション情報132の中から、希望の帰着ステーションとして、ステーションST2を特定する。そして、ユーザが、ユーザ端末装置3Xを用いて、このように特定した出発ステーション(ステーションST1)、予約車両のID(共用車両V1のID)及び帰着ステーション(ステーションST2)の情報を、利用要求情報133として共用車両管理装置10に送信することで、制御装置11が、利用要求を取得する。そして、制御装置11は、ユーザ端末装置3Xから取得したこの利用要求情報133を、利用要求を受信した時刻(予約時刻)の情報と共に、図3に示すように、データベース13に記憶させる。
なお、制御装置11が取得する利用要求情報133としては、ユーザが申込み直後に共用車両Vの利用を開始できる即時利用の申込みでもよいし、ユーザが指定する日時から共用車両Vの利用を開始できる利用予約の申込みでもよい。さらに、制御装置11が取得する利用要求情報133には、ユーザが共用車両Vを帰着ステーションに返却する予定時刻の情報を含んでいてもよい。
位置監視機能は、ユーザが利用している共用車両Vの現在位置の情報を取得する機能である。たとえば、共用車両Vが、車載装置2VのGPS受信機21により取得した現在位置の情報を、車載装置2Vの通信装置22から、共用車両管理装置10に送信することで、制御装置11は、ユーザが利用している共用車両Vの現在位置の情報を取得することができる。
返却受付機能は、ユーザが共用車両Vを帰着ステーションに返却しようとする際に送信する返却要求情報を取得する機能である。たとえば、ユーザが、利用した共用車両Vを帰着ステーションに停車した後に、ユーザ端末装置3Xを操作して、共用車両Vを帰着ステーションに返却する旨の返却要求情報を、ユーザ端末装置3Xを介して、共用車両管理装置10に送信した場合に、制御装置11は、この返却要求を取得する。なお、返却要求情報には、ユーザが利用した共用車両VのID情報及び現在位置情報が含まれる。そして、制御装置11は、通信装置12を介して返却要求情報を受信し、共用車両Vnの返却処理を実行する。すなわち、制御装置11は、受信した返却要求情報に含まれる共用車両VのID情報に基づき、データベース13に記憶された利用要求情報133の中から、該共用車両Vの利用要求情報133を読み出し、該共用車両Vが利用要求情報の帰着ステーションに位置しているか否かを判定し、共用車両Vが帰着ステーションに位置していると判定された場合には、共用車両Vが正しく返却されたものとして返却処理や課金処理を実行する。
SOC推定値算出機能は、少なくとも各共用車両VのSOC消費実績情報136に基づいて、その日の営業時間の終了時までに必要とされる各共用車両VのSOC消費推定値を算出する機能である。詳細は後述するが、SOC消費推定値を算出する場合に、各共用車両VのSOC消費実績情報136のほか、各ステーションSTにおける利用パターン情報137、PT調査サーバ5から取得されるユーザの動線に関連するパーソントリップ調査情報、環境情報サーバ6から取得される休日か否かの情報、曜日の情報、天候の情報、気温の情報及び催し行事の情報のいずれかを含む環境情報に基づく重み係数を用いてもよい。
充電処理指示機能は、上記SOC推定値算出機能により算出されたSOC推定値が、予め定められた所定閾値以下であるか否かを判断し、所定閾値以下の共用車両に対して、営業時間外及び/又は営業時間内で充電処理を実行する旨の充電処理計画を生成する機能である。
ここで、本実施形態のカーシェアリングシステムの前提となるカーシェリングサービスの営業時間について説明する。図4は、その一例を示す図であり、8時から20時までが営業時間であり、20時から翌日の8時までが非営業時間である。本実施形態のカーシェリングサービスでは、8時に共用車両Vの貸し出しの受付を開始し、20時に貸し出した共用車両Vの返却を終了するものとする。また、20時から翌日の8時までの営業時間外においては、共用車両Vの貸し出しや返却は受け付けないが、サービス提供会社の作業者が、共用車両Vの充電作業や保守点検を行うものとする。なお、8時から20時の営業時間内においても、必要に応じて、サービス提供会社の作業者が、共用車両Vの充電作業や保守点検を行うものとする。作業者が共用車両Vの充電作業又は保守点検を行う場合には、対象となる共用車両Vが駐車しているステーションSTに行き、その共用車両Vに乗車して充電ステーションCSTまで搬送する。また、充電作業又は保守点検作業が終了したら、作業者がその共用車両Vに乗車し、所定のステーションST(元のステーションSTとは限らない)に搬送する。
こうしたカーシェリングサービスについて、本発明者らは、合計120台の駐車スペースを備えた60箇所のステーションSTに、70台の共用車両Vを配車し、約2か月間、上述した営業時間帯にて、共用車両Vの稼働率(総営業時間Tに対する総実使用時間tの比率t/T×100)を検証したところ、充電処理が必要となった共用車両を搬送する時間(往復時間)の割合が約4%、充電処理又は保守点検作業の時間の割合が
約10%あり、これらの合計が約14%に達することが判明した。このため、本実施形態の共用車両管理装置10の制御装置11に、上述したSOC推定値算出機能と充電処理指示機能を新たに加え、図4の20時から翌日の8時の間の営業時間外に、できる限り充電処理の時間を充て、さらにこの営業時間外にこの充電処理時間を充てるに際し稼働率が向上する充電処理指示を生成することとした。
充電処理指示については、従来のカーシェアリングサービスでは、SOC残量が所定閾値SOCmin、たとえば25%に達した共用車両Vを検出したら、その後の貸し出しを禁止するとともに、作業者がその共用車両Vを充電ステーションCSTに搬送し、充電処理を行っていた。このため、営業時間内においても充電処理を行っている共用車両Vが存在し、これにより上述した稼働率の低下を招いていたものと推察される。
これに対して、本実施形態の共用車両管理装置10は、所定の時間間隔、たとえば30分毎や1時間毎に、各共用車両Vの営業時間終了時までに必要とされるSOC消費推定値SOCEを算出し、各共用車両Vの現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEにSOC充電下限値SOCmin(上述した25%に相当)を加算した総和値SOC0以下であるか否かを判断し、総和値SOC0以下の共用車両Vに対して、営業時間外及び/又は営業時間内で充電処理を実行する旨の充電処理計画、すなわち充電処理指示を生成する。
上述した共用車両Vの営業時間終了時までに必要とされるSOC消費推定値SOCEの算出は、原則として、現在から営業時間終了時までに消費するSOC消費量の実績値SOCAに基づいて算出される。SOC消費量の実績値SOCAは、データベース13に順次蓄積されるSOC消費実績情報136から抽出される。この場合に、データベース13に蓄積されたSOC消費実績情報の平均値をSOC消費量の実績値SOCAとしてもよいし、車種ごと又は車両の個体差によって電費が相違するので、推定精度を高めるために、推定対象とされる共用車両VのSOC消費実績情報そのものをSOC消費量の実績値SOCAとしてもよい。
なお、閾値となる総和値SOC0をSOC消費量の実績値SOCAのみに設定してもよいが、そうすると営業時間の終了時においてSOCがゼロになる共用車両Vが生じる可能性があり、充電ステーションCSTまで自走できない。このため、総和値SOC0はSOC消費量の実績値SOCAにSOC充電下限値SOCmin(たとえば25%)を加算した値とすることが望ましい。そして、現在のSOC残量SOC1が、総和値SOC0(=SOC消費推定値SOCE+SOC充電下限値SOCmin)を超える共用車両は、営業時間が終了するまでに充電処理が必要とされない車両であることから、実際にSOC残量SOC1が充電下限値SOCminに達しない限り、営業時間内はそのまま貸し出しを許可する。
これに対して、現在のSOC残量SOC1が、総和値SOC0(=SOC消費推定値SOCE+SOC充電下限値SOCmin)以下である共用車両は、営業時間が終了するまでに充電処理が必要とされる車両であることから、実際にSOC残量SOC1が充電下限値SOCminに達する前にこれらの共用車両Vを抽出し、後述する優先度を付与して優先度の高い順序で営業時間外又は営業時間内に充電処理を実行する旨の充電処理計画を生成する。
ここで、SOC消費推定値SOCEの算出例を説明する。上述したとおり、SOC消費推定値SOCEは、原則としてデータベース13に蓄積されたSOC消費量の実績値SOCAから算出する。ただし、このSOC消費量の実績値SOCAに、必要に応じて、各ステーションSTにおける利用パターン情報137、PT調査サーバ5から取得されるユーザの動線に関連するパーソントリップ調査情報、環境情報サーバ6から取得される休日か否かの情報、曜日の情報、天候の情報、気温の情報及び催し行事の情報のいずれかを含む環境情報に基づく重み係数α1,α2…を乗じてもよい。
重み係数として用いられる各ステーションSTにおける利用パターン情報137は、SOC消費推定値の算出対象となる共用車両Vが駐車しているステーションSTが、どのようなパターンで利用されるか否かの重み係数として用いる。たとえば、データベース13に蓄積されたステーションST1の利用パターンが、長距離の利用頻度が高い場合には重み係数を1より大きい値とし、逆に短距離の利用頻度が高い場合には重み係数を1より小さい値とする。
重み係数として用いられるパーソントリップ調査情報は、政府機関などが実施するものであって、一定の地域内において人の動き(ユーザの動線)を調査した情報である。パーソントリップ調査情報は、電気通信回線網4を介してPT調査サーバ5から取得することができる。そしてたとえば、人の動きが多い動線に設置されたステーションSTに駐車した共用車両VがSOC消費推定値の算出対象となる場合は、重み係数を1より大きい値とし、逆に人の動きが小さい動線に設置されたステーションSTに駐車した共用車両VがSOC消費推定値の算出対象となる場合は、重み係数を1より小さい値とする。
重み係数として用いられる環境情報は、休日か否かの情報、曜日の情報、天候の情報、気温の情報及び催し行事の情報のいずれかを含む。環境情報は、電気通信回線網4を介して環境情報サーバ6から取得することができる。SOC消費推定値の算出対象となる現在の環境が、SOC消費量にどのように影響するかに関する重み係数として用いる。たとえば、催し行事が開催される日は開催されない日に比べてユーザ数が増加すると予想されるので、重み係数を1より大きい値に設定する。その他の休日か否かの情報、曜日の情報、天候の情報及び気温の情報については、地域の特徴や車種との関係で一概に言えないので、予め環境情報サーバ6から取得したこれらの環境情報と、各共用車両Vの利用実績とをデータベース13に蓄積し、その実績値を用いてもよい。
なお、SOC消費推定値SOCEを算出する時間が、図3に示す20時から翌日の8時の間の営業時間外である場合は、営業時間の終了時までの時間が8時から20時というフルの時間であるため、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAの1日の実績値を用いる。これに対して、SOC消費推定値SOCEを算出する時間が、図3に示す8時から当日の20時の間の営業時間内である場合は、その時間から営業時間の終了時までの時間に応じて、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAの1日の実績値を按分して用いる。たとえば、SOC消費推定値SOCEを算出する時間が、図3に示す1日の中間時点の14時である場合には、営業時間の終了までの時間が半分になるので、SOC消費推定値SOCEは、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAの1日の実績値の2分の1の値とする。
またこの後者の場合に、SOC消費推定値SOCEを算出してから当日の営業時間の終了時までの時間が短いほど、上述した総和値SOC0を小さい値に設定してもよい。たとえば、上述した総和値SOC0は、SOC消費推定値SOCE+SOC充電下限値SOCminで算出されることから、SOC消費推定値SOCEを、その算出時間から営業時間の終了時までの時間に応じて、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAの1日の実績値を按分して用いると、これにともない総和値SOC0も変動する。しかしながら、このSOC消費推定値SOCEの算出結果に拘わらず、総和値SOC0の値を営業時間の終了時までの時間に応じて変更してもよい。たとえば、SOC消費推定値SOCEは営業時間の終了時までの時間に拘わらずデータベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAの1日の実績値を用いる一方で、総和値SOC0の値は、営業時間の終了時までの時間が短いほど小さい値に設定してもよい。こうすることで、所定閾値である総和値SOC0が小さくなるので、貸出可能な共用車両Vが増加し、稼働率が高くなる。
以上のように、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAに重み係数α1,α2…を乗じ、これに充電下限値SOCminを加算することでSOC消費推定値SOCE={SOCmin+(SOCA×α1×α2×…)}を算出する。そして、各共用車両Vの現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEにSOC充電下限値SOCmin(上述した25%に相当)を加算した総和値SOC0以下であるか否かを判断し、総和値SOC0以下の共用車両Vを抽出し、これらの共用車両Vに優先度を付与して優先度の高い順序で営業時間外又は営業時間内に充電処理を実行する旨の充電処理計画を生成する。なお、総和値SOC0以下の共用車両Vを抽出した結果、全ての共用車両Vの充電処理が営業時間が開始するまでの営業時間外に完了するか否かを判断し、当該全ての充電処理が当該営業時間外に完了する場合には、当該共用車両Vに対して当該営業時間外に充電処理を実行する旨の充電処理指令を生成する。
これに対して、総和値SOC0以下の共用車両Vを抽出した結果、全ての共用車両Vの充電処理が営業時間が開始するまでの営業時間外に完了するか否かを判断し、当該全ての充電処理が当該営業時間外に完了しない場合には、営業時間外又は営業時間内に充電処理を実行する旨の充電処理計画を生成する。なお、総和値SOC0以下の共用車両Vを抽出した結果、全ての共用車両Vの充電処理が営業時間が開始するまでの営業時間外に完了するか否かを判断し、当該全ての充電処理が当該営業時間外に完了しない場合には、SOC消費推定値SOCE、充電ステーションCSTまでの距離又はそこまでのSOC消費量、各ステーションSTの稼働頻度及び共用車両Vの車種の少なくともいずれかに基づいて、充電処理の優先度を設定し、この優先度の高い順序で、営業時間外に充電処理を実行する旨の充電処理指令を生成する。
本実施形態の充電順序を決定するための優先度は、SOC消費推定値SOCEが小さい共用車両Vほど、充電時間が短くなり、営業時間が開始されてから即時利用可能となるので、優先度を高く設定する。また、充電ステーションCSTまでの距離が短い又は充電ステーションCSTまでのSOC消費量が少ない共用車両Vほど、充電ステーションCSTに搬送するまでに消費されるSOCが少なく且つ短時間で充電でき、営業時間が開始されてから即時利用可能となるので、優先度を高く設定する。また、稼働頻度が高いステーションSTに駐車した共用車両Vほど、利用可能とされる共用車両が必要であるため、優先度を高く設定する。また、充電速度が速い車種の共用車両Vほど、充電時間が短くなり、営業時間が開始されてから即時利用可能となるので、優先度を高く設定する。
以上のようにして、共用車両管理装置10の制御装置11が実現する各機能により、カーシェアリングシステムの管理運営が行われる。
次に、本実施形態の制御例を説明する。図5は、本実施形態の共用車両管理装置10によるカーシェアリングシステムの制御手順を示すフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートは、一のユーザが、一の共用車両V1を利用するために、出発ステーションとしてステーションST1を設定し、帰着ステーションとしてステーションST2を設定することで利用要求を送信した後、共用車両V1を利用後に返却するまでの基本的な制御手順を示すものである。
まず、ステップS1では、共用車両管理装置10の制御装置11は、ユーザから、ユーザ端末装置3Xを介して利用要求情報が送信されたか否かを判定する。なお、利用要求情報には、ユーザのID情報、ユーザが利用しようとする共用車両V1のID、ユーザにより設定された出発ステーション(ステーションST1)及び帰着ステーション(ステーションST2)の情報が含まれる。そして、ステップS1において、利用要求情報が送信されたと判定された場合には、ステップS2へ進む。一方、ステップS1において、利用要求情報が送信されていないと判定された場合には、ステップS1で待機する。
ステップS2では、制御装置11は、利用受付機能により、ユーザのユーザ端末装置3Xから送信された利用要求情報を受信し、利用要求情報を、受信した時刻(予約時刻)の情報と共に、図3に示すように、データベース13に記憶させる。
ステップS3では、制御装置11は、利用要求情報を送信したユーザが、利用要求情報により利用予約した共用車両V1に乗車したか否かを判定する。具体的には、制御装置11は、位置監視機能により、ユーザが利用要求情報により利用予約した共用車両V1の位置を監視し、位置が変動した場合には、ユーザが共用車両V1に乗車したと判定する。そして、ステップS3において、ユーザが共用車両V1に乗車したと判定された場合には、ステップS4へ進む。一方、ステップS3において、ユーザが共用車両V1に乗車していないと判定された場合には、ステップS3で待機する。
ステップS4では、制御装置11は、ユーザから、共用車両V1を帰着ステーションに返却しようとする返却要求情報が送信されたか否かを判定する。なお、ユーザにより送信される返却要求情報には、ユーザのID情報、並びにユーザが利用した共用車両V1のID情報及び位置情報が含まれる。そして、ステップS4において、返却要求情報が送信されたと判定された場合には、ステップS5へ進む。一方、ステップS4において、返却要求情報が送信されていないと判定された場合には、ステップS4で待機する。ステップS5では、制御装置11は、ステップS4でユーザから送信された返却要求を受信する。
ステップS6では、制御装置11は、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1が、共用車両V1に対してステップS2で設定された帰着ステーションST2に位置しているか否かを確認する。ステップS7では、制御装置11は、ステップS5で受信した返却要求情報、及びデータベース13に記憶された利用要求情報133の情報に基づいて、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1のID情報と、該ユーザにより送信された利用要求情報133に含まれる共用車両V1のID情報とが一致するか否かを確認する。
ステップS8では、制御装置11は、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1について、返却処理を完了することができるか否かを判定する。具体的には、制御装置11は、ステップS6及びステップS7で確認した情報に基づいて、ユーザにより返却されようとしている共用車両V1について、現在位置が、共用車両V1に対して設定された帰着ステーションST2の位置と一致しており、かつ、ID情報が、該ユーザにより送信された利用要求情報133に含まれる共用車両V1のID情報と一致していると判断した場合には、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定する。そして、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定された場合には、ステップS9へ進む。一方、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができないと判定された場合には、ステップS10へ進む。
ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができると判定された場合には、ステップS9へ進み、ステップS9では、制御装置11は、共用車両V1の返却処理を完了させ、ユーザに対して、共用車両V1の利用料金を、たとえばクレジットカードの引き落とし等の方法により課金する。一方、ステップS8において、共用車両V1の返却処理を完了することができないと判定された場合には、ステップS10へ進み、ステップS11では、制御装置11は、共用車両V1の返却処理を中断し、ステップS4に戻り、再びステップS4の返却要求処理を実行する。
以上がユーザによる共用車両Vの貸し出し及び返却手順であるが、次に各共用車両Vの充電処理に関する制御手順について説明する。図6は、本実施形態の共用車両管理装置による充電処理手順の一例を示すフローチャートである。同図に示す手順は、所定時間間隔、特に限定されないが、たとえば30分毎、1時間毎といった間隔で実行される。
ステップS11では、制御装置11は、データベース13に記憶された共用車両情報131、SOC残量情報135及びSOC消費実績136を取得するとともに、PT調査サーバ5からPT調査情報を取得し、また環境情報サーバ6から環境情報を取得する。
ステップS12では、ステップS11で取得されたSOC消費量の実績値SOCAと、同じくステップS11で取得されたPT調査情報及び環境情報から求められる重み係数α1,α2…とから、共用車両Vの営業時間終了時までに必要とされるSOC消費推定値SOCEを算出する。具体的には、上述したとおり、データベース13に蓄積されたSOC消費実績値SOCAに重み係数α1,α2…を乗じ、これに充電下限値SOCminを加算することでSOC消費推定値SOCE={SOCmin+(SOCA×α1×α2×…)}を算出する。
ステップS13では、ステップS11で取得した共用車両Vの現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEにSOC充電下限値SOCminを加算した総和値SOC0以下であるか否かを判断する。共用車両Vの現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEにSOC充電下限値SOCminを加算した総和値SOC0超える場合はステップS14の処理を実行することなくステップS15へ進む。共用車両Vの現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEにSOC充電下限値SOCminを加算した総和値SOC0以下の場合はステップS14へ進み、その共用車両のIDを一時的に記憶する。
ステップS15では、全ての共用車両Vについて処理が終了したか否かを判断し、未処理の共用車両Vが存在する場合はステップ11へ戻り、残りの各共用車両VについてステップS11〜S14の処理を繰り返す。全ての共用車両Vについて処理が終了した場合はステップS16へ進む。ステップS16では、ステップS15で一時的に記憶した共用車両のIDからそれらのSOC残量値を読出し、これらを合計し、総充電時間を算出する。
ステップS17では、ステップS16で算出した総充電時間が、営業時間の開始までの時間内であるか否かを判断し、営業時間の開始までの時間内であれば、すなわち全ての充電処理が当該営業時間外に完了する場合には、ステップS21へ進み、これらの共用車両Vに対して当該営業時間が開始されるまでの営業時間外に充電処理を実行する旨の充電処理指令を生成する。この充電処理指令を受けたサービス提供会社の作業者は、営業時間外に充電処理が必要とされた共用車両Vを充電ステーションCSTに搬送し、充電処理を行ったのち、再び所定のステーションSTに搬送する。これにより、充電が必要とされた全ての共用車両の充電処理を営業時間外に実行することができ、次の営業時間が開始する際には、全ての共用車両Vについて利用が可能な状態となる。
これに対して、ステップS17において、ステップS16で算出した総充電時間が、営業時間の開始までの時間を超える場合、すなわち全ての充電処理が当該営業時間外に完了しない場合には、ステップS18へ進む。
ステップS18では、制御装置11は、データベース13に記憶された共用車両情報131、ステーション情報132、利用パターン情報137及び充電ステーション情報138を取得する。そして続くステップS19にて、これらの情報を用いつつ、SOC消費推定値SOCE、充電ステーションCSTまでの距離又はそこまでのSOC消費量、各ステーションSTの稼働頻度及び共用車両Vの車種の少なくともいずれかに基づいて、充電処理の優先度を設定する。
ステップS19にて充電処理の優先度が設定されたら、ステップS20へ進み、営業時間の開始までに、優先度が高い順序で充電処理を実行する。なおこの場合は、一部の共用車両の充電処理が営業時間に重なることになるが、優先度の高い順序で営業時間外から充電処理を始めるので、営業時間内に充電処理が重なる台数を最小限に留めることができる。ちなみに、ステップS18〜S19の優先度の設定は省略し、任意の順序で充電処理を行ってもよい。
以上のとおり、本実施形態によれば、営業時間の終了時までに必要とされる各共用車両VのSOC消費推定値SOCEを算出し、現在のSOC残量SOC1が、SOC消費推定値SOCEと充電下限値SOCminの総和値SOC0以下の共用車両Vを抽出する。そして、各共用車両Vが充電下限値SOCminに達する前に、これらの共用車両Vの充電処理を主として営業時間外に集約して実行する。これにより、営業時間内に充電処理を実行する共用車両Vの台数が減少するので、営業時間内に使用できる共用車両Vの台数が増加する。その結果、共用車両Vの稼働率を高めることができる。
また本実施形態によれば、SOC消費推定値SOCEを算出するにあたり、推定対象とされる共用車両VのSOC消費量の実績値又は複数の共用車両VのSOC消費量の実績値の平均値のいずれをも用いることができるが、推定対象とされる共用車両VのSOC消費量の実績値を用いてSOC消費推定値SOCEを算出すれば、車種毎又は車両の個体差によって生じる電費の誤差を小さくすることができるので、推定精度を高めることができる。
また本実施形態によれば、SOC消費推定値SOCEを算出するにあたり、共用車両VのSOC消費量の実績値に加えて、PT調査情報や環境情報から求めた重み係数α1,α2…を用いるので、SOC消費推定値SOCEの推定精度をより高めることができる。
また本実施形態によれば、充電処理指令を生成するにあたり、SOC消費推定値SOCE、充電ステーションCSTまでの距離又はSOC消費量、各ステーションSTの稼働頻度及び共用車両Vの車種の少なくともいずれかに基づいて、充電処理の優先度を設定するので、同じ時間内に充電処理できる共用車両Vの台数が増加する。
また本実施形態によれば、SOC消費推定値SOCEの算出結果に拘わらず、総和値SOC0の値を営業時間の終了時までの時間に応じて変更し、たとえば営業時間の終了時までの時間が短いほど小さい値に設定するので、所定閾値である総和値SOC0が小さくなる。その結果、貸出可能な共用車両Vが増加し、稼働率が高くなる。
上述した実施形態における共用車両管理装置10の制御装置11は本発明の推定手段、生成手段、利用受付手段、位置取得手段及び利用可否検出手段に、共用車両管理装置10のデータベース13は本発明の記憶手段に、それぞれ相当する。