以下、本発明の実施形態に係るOCXOについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
OCXOは、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともにz方向の正側を上方として、上面、下面などの用語を用いるものとする。
図1は、本発明の実施形態に係るOCXO1の概略構成を、一部を破断して示す斜視図である。また、図2は、図1のII−II線における断面図である。
OCXO1は、例えば、TCXO3と、TCXO3の周囲の雰囲気を所定の温度に維持するとともにTCXO3と外部機器との電気的接続を仲介するための恒温槽5とを有している。
TCXO3は、例えば、素子搭載用部材7と、素子搭載用部材7に搭載された振動素子9(図2)及びIC11(図2)と、振動素子9を封止するための蓋体13とを有している。
素子搭載用部材7は、例えば、絶縁部材15と、絶縁部材15の表面又は内部に設けられた各種の導体とを有している。
絶縁部材15は、図2に示すように、上方に開口し、振動素子9を収容する第1凹部15aと、下方に開口し、IC11を収容する第2凹部15bとを有している。別の観点では、絶縁部材15は、基板部15cと、基板部15cの一方の主面上に位置する第1枠部15dと、基板部15cの他方の主面上に位置する第2枠部15eとを有している。絶縁部材15は、例えば、アルミナ等のセラミックからなる層状部材を複数枚重ねて形成されている。
素子搭載用部材7の各種の導体は、例えば、第1凹部15aの底面に設けられ、振動素子9を搭載するための1対の素子搭載用パッド(不図示)、第2凹部15bの底面に設けられ、IC11を実装するための複数のIC実装用パッド(不図示)、第2枠部15eの下面等に設けられ、TCXO3に対する信号の入出力のための複数の第1端子25(図3参照。25Wを含む)、1対の素子搭載用パッドと複数のIC実装用パッドのうちの2つとを接続する配線(不図示)、複数のIC実装用パッドの残りと複数の第1端子25とを接続する配線(不図示)である。なお、配線は、例えば、基板部15cの主面に設けられた層状配線及び絶縁部材15を貫通するビア導体からなる。
振動素子9は、例えば、平板状の圧電素板10(図2)と、圧電素板10の両主面に設けられた1対の励振電極32(図3参照)とを備えている。圧電素板10は、例えば、水晶のような石英材料よりなり、結晶軸に対し所定の角度で切断され、平面視で長方形状とされている。振動素子9は、1対の励振電極32に電圧が印加されることにより、所定の周波数で厚みすべり振動を生じる。
蓋体13は、第1枠部15dの上面に接合され、第1凹部15aを封止する。蓋体13は、金属等の導電材料により構成されてもよいし、絶縁材料により構成されてもよいし、絶縁層と導電層とを積層した複合材料により構成されてもよい。例えば、蓋体13は、金属板から構成されており、この金属板は、シーム溶接等により第1枠部15dに接合される。
恒温槽5は、例えば、TCXO3が実装される実装基体17と、TCXO3を収容するケース19と、ケース19内の雰囲気を加熱するためのヒータ21(図2)と、OCXO1を外部機器に実装するための複数(本実施形態では6個)の外部端子23(図1の23W含む)と、実装基体17に実装された各種の電子部品とを有している。
実装基体17は、例えば、プリント配線基板により構成されており、絶縁基体24と、絶縁基体24に設けられた各種の導体とを有している。絶縁基体24は、例えば、ガラスエポキシ材よりなる。
実装基体17に設けられる各種の導体は、例えば、実装基体17の上方の主面に設けられ、TCXO3の複数の第1端子25(25W除く)と接続される複数の第2端子27(図3参照)、複数の第2端子27から延びる複数の配線(不図示)、及び、その複数の配線に接続された複数の第3端子29(図1)である。
ケース19は、例えば、金属材料よりなり、TCXO3、実装基体17及びヒータ21を収容している。ケース19は、特に図示しないが、例えば、ケース19の下面を構成する部材と、ケース19の上面及び外周面を構成する部材とが固定されて構成されている。両部材間は封止材等により気密に接合され、ケース19の内部は密閉されていることが好ましい。
ヒータ21は、例えば、実装基体17の下面において、TCXO3と重なる位置に接合されている。ヒータ21は、例えば、所定のパターンに延びる導電体(抵抗体)を絶縁材料により封止して構成されており、実装基体17を介して印加された電圧に応じた熱を生じる。
複数の外部端子23は、例えば、ピン状の端子であり、一端側が、実装基体17に形成された孔に挿通される。この孔の内面乃至は周囲には上述の第3端子29が形成されている。そして、複数の外部端子23の一端側は、半田等により第3端子29に固定されるとともに電気的に接続されている。複数の外部端子23の他端側は、例えば、ケース19の下面から延び出ている。なお、複数の外部端子23は、ケース19に対して固定され、実装基体17とケース19の下面との間隔を確保しつつ、実装基体17とケース19とを固定することに寄与してもよい。
実装基体17に実装された各種の電子部品としては、例えば、電源電圧供給用の外部端子23とTCXO3との間に介在する変圧用IC53、及び、ヒータ21の制御用のヒータ制御用IC55が設けられている。変圧用IC53及びヒータ制御用IC55は、例えば、実装基体17のTCXO3が実装されている側の主面において、TCXO3を挟むように配置されている。
図3は、OCXO1の信号処理系の概略構成を示すブロック図である。
OCXO1は、既述のように、TCXO3と、恒温槽5とを有しており、両者は、複数の第1端子25と複数の第2端子27とが接続されることにより電気的に接続されている。また、恒温槽5の複数の外部端子23を介して、TCXO3の複数の第1端子25(25W除く)は、種々の信号が入力され、又は、種々の信号を出力する。
複数の外部端子23(第1端子25)に付与される信号は、例えば、TCXO3及び恒温槽5を駆動するための電源電圧Vcc、基準電位GND、TCXO3の生成する発振信号の周波数を制御するための制御電圧Vconである。複数の外部端子23から出力される信号は、例えば、TCXO3の生成した発振信号Voutである。なお、いずれの位置の外部端子23に対していずれの役割を割り振るかは、適宜に設定されてよい。第1端子25、第2端子27及び第3端子29についても同様である。
TCXO3の複数の第1端子25のうち一つは、TCXO3に温度補償に係る情報を書き込むための書込み信号Vwが入力される書込み端子25Wとなっている。なお、書込み端子25Wの位置は適宜に設定されてよいが、例えば、図1に示すように、素子搭載用部材7の側面に設けられている。書込み端子25Wについては、対応する外部端子23は設けられていない。
TCXO3は、上述のように、振動素子9と、振動素子9と接続されるIC11とを有している。IC11は、例えば、振動素子9に電圧を印加して発振信号を生成する発振回路33と、発振信号の温度変化に対する補償を行うための温度補償回路35と、温度補償回路35の保持する温度補償に係るデータの内容を書き換えるための書換え回路37とを有している。発振回路33、温度補償回路35及び書換え回路37の構成は、公知の構成と同様でよい。
例えば、発振回路33は、特に図示しないが、入力側及び出力側が振動素子9に接続されるインバータ、インバータの入力側及び出力側に接続される帰還抵抗、インバータの入力側とグランド部との間に配置される可変容量素子、及び、インバータの出力側とグランド部との間に配置される可変容量素子を含んで構成されている。
また、例えば、温度補償回路35は、振動素子9とグランド部との間に配置される可変容量素子39と、可変容量素子39に接続された補償信号発生回路41と、補償信号発生回路41に接続されたROM43、RAM45及び第1温度センサ47とを有している。
なお、温度補償回路35の可変容量素子39には、制御電圧Vconに従って発振信号の周波数を変化させるために発振回路33に含まれる可変容量素子が兼用されてもよい。また、ROM43及びRAM45は、発振回路33が利用する情報を保持するROM及びRAMと兼用されるものであってもよい。第1温度センサ47は、IC11とは別個に設けられてもよい。
補償信号発生回路41は、ROM43又はRAM45に記憶されている情報に基づいて、第1温度センサ47の検出する温度に応じた電圧を可変容量素子39に印加する。これにより、温度に応じて振動素子9の負荷容量が変化し、発振信号の周波数は温度補償がなされる。
より具体的には、例えば、温度補償がなされていない発振信号の周波数の温度変化に対する変化量は3次関数で表わされる。そして、この変化量を打ち消すために可変容量素子39に印加されるべき電圧も温度を変数とする3次関数で表わされる。ROM43又はRAM45は、この電圧の3次関数の係数及び定数の値を保持している。補償信号発生回路41は、第1温度センサ47の検出した温度を、ROM43又はRAM45に記憶されている係数及び定数の値により規定される3次関数に代入して、可変容量素子39に印加すべき電圧を算出・生成し、可変容量素子39に印加する。
書換え回路37は、例えば、ROM43又はRAM45に記憶されている3次関数の係数及び定数の値を書き換える(書き込む)。
恒温槽5は、上述したヒータ21、変圧用IC53及びヒータ制御用IC55(温度制御回路51)に加えて、ケース19内の適宜な位置の温度を検出する第2温度センサ49を有している。
なお、第2温度センサ49は、ヒータ制御用IC55に含まれていてもよい。また、TCXOには、第1温度センサ47の検出する温度を第1端子25から出力可能なものがある。このようなTCXOがTCXO3として選択されている場合においては、第2温度センサ49を設けずに、第1温度センサ47の検出した温度に基づいてヒータ21が制御されてもよい。
変圧用IC53は、公知のDC−DCコンバータ用のICによって構成されてよい。変換方式は適宜に選択されてよい。例えば、変換方式は、絶縁式でも非絶縁式でもよいし、スイッチング方式(チョッパ式)でもリニア式でもよい。変圧用IC53は、例えば、降圧型のものであり、恒温槽5の外部端子23から入力された電源電圧Vccを低くして、TCXO3の第1端子25に供給する。一例として、外部端子23に入力される電圧は約5V、第1端子25に入力される電圧は約3.3Vである。
ヒータ制御用IC55(温度制御回路51)は、例えば、DC−DCコンバータ、CPU、ROM及びRAM等を含んで構成されており、第2温度センサ49の検出する温度が予め設定された温度に維持されるように、第2温度センサ49の検出温度に基づいて、ヒータ21に印加する電圧をフィードバック制御する。
恒温槽5の複数の外部端子23のうち制御電圧Vconの入力及び発振信号Voutの出力に利用される外部端子23は、実装基体17の配線によってTCXO3の第1端子25と接続されている。ただし、これらの間には、適宜な回路乃至は電子素子が介在していてもよい。例えば、増幅器又はインピーダンス整合を図るための素子が介在していてもよい。
図4は、OCXO1の製造方法の手順を示すフローチャートである。
この手順では、まず、サンプルとしてのOCXO1について温度特性が測定される(ステップST1〜ST4)。その後、その温度特性に基づいて、製品としてのOCXO1に対して温度補償量が設定される(ステップST5〜ST8)。具体的には、以下のとおりである。
ステップST1では、サンプルとしてのOCXO1に設けられるTCXO3(以下、サンプルとしてのTCXO3ということがある。サンプルとしてのOCXO1に設けられる他の部品についても同様。)を準備する。このTCXO3のROM43には、例えば、温度補償量を規定するパラメータ(3次関数の係数及び定数)の値が記憶されている。このパラメータの値は、例えば、個々のTCXO3について測定された周波数の温度特性に基づいて設定され、書込み端子25Wを介してROM43に書き込まれている。
従って、所定の温度雰囲気において、サンプルとしてのTCXO3が実際に出力する発振信号の周波数と、TCXO3が出力すべき発振信号の周波数とのずれ量は、所定の許容誤差範囲内に収まっている。また、サンプルとしてのTCXO3に保持されているパラメータの値は、同一種類の製品における製造ばらつきの影響が加味されたものとなっている。
ステップST2では、サンプルとしてのTCXO3を実装基体17に実装する。例えば、TCXO3の複数の第1端子25と、実装基体17の複数の第2端子27とを半田からなる不図示のバンプによって固定及び接続する。なお、複数の外部端子23は、TCXO3を実装基体17に実装する前又は実装した後に実装基体17に固定される。
ステップST3では、サンプルとしてのTCXO3をケース19に収容する。例えば、TCXO3が収容されるようにケース19を構成する部材を接着剤等により互いに固定する。これにより、サンプルとしてのOCXO1が作製される。
ステップST4では、サンプルとしてのOCXO1の温度特性を測定する。具体的には、サンプルとしてのOCXO1が実際に出力した発振信号の周波数と、OCXO1が出力すべき発振信号の周波数とのずれ量を測定する。
例えば、OCXO1の使用時と同様に、サンプルのOCXO1の複数の外部端子23に電源電圧Vcc、基準電位GND及び制御電圧Vconを付与して、TCXO3によって温度補償がなされた発振信号Voutを外部端子23から出力させる。恒温槽5は、電源電圧Vcc及び基準電位GNDが供給されることにより駆動され、ケース19の内部は、予め定められた温度に維持される。
そして、例えば、所定の時間が経過するなど、恒温槽5の温度が十分に安定したときに、サンプルのOCXO1の外部端子23から実際に出力される発振信号の周波数を測定し、この測定した周波数と、OCXO1が外部端子23から出力すべき発振信号の周波数とのずれ量を算出する。
なお、本実施形態では、ステップST1のサンプルのTCXO3の準備において、温度補償量を規定するパラメータの値が調整されているから、このときのずれ量のうち、ステップST1において許容したずれ量を超える部分は、サンプルのTCXO3を実装基体17に実装したこと等によるものである。
ステップST5では、製品としてのOCXO1に設けられるTCXO3(以下、製品としてのTCXO3ということがある。製品としてのOCXO1に設けられる他の部品についても同様。)を準備する。このTCXO3は、サンプルとしてのTCXO3と同一種類のものであり、また、この工程は、ステップST1と同様である。ただし、記述のように、製造ばらつきに起因して、製品としてのTCXO3とサンプルとしてのTCXO3とは、温度特性が若干異なることがあり、ひいては、ROM43に保持されている温度補償量を規定するパラメータの値も若干異なることがある。
ステップST6では、ステップST4で測定されたずれ量に基づいて、製品としてのTCXO3のROM43が保持している温度補償量を規定するパラメータの値を書き換える。
例えば、実装後の温度特性は、実装前の温度特性を表す3次曲線(3次関数)をその形状を変えずに温度の軸方向に沿って所定のシフト量(温度のずれ量)でシフトしたものによって近似的に表すことができると考えられる。従って、補償信号発生回路41が印加する電圧の3次関数を温度の軸方向に沿って、上記のシフト量と同一のシフト量でシフトすればよい。
より具体的には、例えば、以下のようにすればよい。
まず、製品としてのTCXO3において、書込み端子25Wを介してROM43に記憶されている温度補償量を規定するパラメータの値を読み出す。例えば、ROM43には、下記(1)式のα、β、γ及びT0の値が記憶されている。(1)式は、第1温度センサ47の検出温度Tに対応して可変容量素子39に印加される電圧ΔVの3次関数の例である。
ΔV=α(T−T0)3+β(T−T0)+γ (1)
次に、製品としてのTCXO3において、読み出したα、β及びγの値をRAM45に書き込むとともに、読み出したT0の値を少し変化(増加又は減少)させた値をT0の値としてRAM45に書き込む。次に、製品としてのTCXO3において、RAM45に書き込んだα、β、γ及びT0の値に基づく電圧ΔVを補償信号発生回路41に発生させる。そして、その電圧ΔVによって温度補償がなされた発振信号の周波数と、OCXO1が出力すべき発振信号の周波数との(正又は負の)ずれ量Δf2を測定する。
このずれ量Δf2と、ステップST4で測定したサンプルとしてのOCXO1におけるずれ量Δf1との和(Δf1+Δf2)が、ずれ量Δf1よりも小さければ、製品としてのTCXO3を実装基体17に実装したり、ケース19に収容したりすることなどにより生じるずれ量が低減されることになる。
そこで、RAM45に保持されているT0の値を少し変化させてずれ量Δf2を測定する動作を繰り返す。これにより、ずれ量の和(Δf1+Δf2)が所定の許容誤差範囲内(例えばTCXO3の許容誤差範囲と同じ範囲内)となる又はずれ量の和が最小となるT0の値を探索できる。そして、ROM43の保持しているT0の値を、探索した最適なT0の値に書き換える。
その後、ステップST7では、製品としてのTCXO3は、実装基体17に実装される。この実装基体17は、サンプルとしての実装基体17と同一種類のものであり、また、この工程は、ステップST2と同様である。
また、ステップST8では、製品としてのTCXO3は、ケース19に収容される。このケース19は、サンプルとしてのケース19と同一種類のものであり、また、この工程は、ステップST3と同様である。
以上のとおり、本実施形態のOCXO1の製造方法は、サンプルとしてのTCXO3(第1温度補償型圧電デバイス)を実装基体17に実装する第1実装工程(ステップST2)と、実装基体17に実装されたサンプルとしてのTCXO3(第1温度補償型圧電デバイス)の温度特性を測定する測定工程(ステップST4)と、測定工程の測定結果に基づいて、サンプルとしてのTCXO3(第1温度補償型圧電デバイス)と同一種類の製品としてのTCXO3(第2温度補償型圧電デバイス)のROM43に、温度補償量を規定する情報を書き込む書込み工程(ステップST6)と、製品としてのTCXO3(第2温度補償型圧電デバイス)をサンプルとしての実装基体17と同一種類の実装基体17に実装する第2実装工程(ステップST7)と、を有している。
従って、TCXO3の実装基体17に対する実装の影響を加味した温度補償が可能となる。また、製品としてのTCXO3(OCXO1)の構成は、ROM43に保持される情報を除いては、公知の構成と同様とすることができる。その結果、コスト増大を抑えて、OCXO1の温度補償精度を向上させることができる。
また、本実施形態のOCXO1の製造方法は、第1実装工程(ステップST2)の後、且つ、測定工程(ステップST4)の前において、サンプルとしてのTCXO3(第1温度補償型圧電デバイス)をケース19に収容する第1収容工程(ステップST3)と、書込み工程(ステップST6)及び第2実装工程(ステップST7)の後において、製品としてのTCXO3(第2温度補償型圧電デバイス)をサンプルとしてのケース19と同一種類のケース19に収容する第2収容工程(ステップST8)と、を更に有している。
従って、TCXO3をケース19に収容したことによる影響を加味した温度補償が可能となる。換言すれば、最終的な製品形態における温度の影響を加味した温度補償が可能となる。
なお、本実施形態の製造方法によって製造された製品としてのOCXO1においては、OCXO1を分解してTCXO3をケース19及び実装基体17から取り外し、製品としてのTCXO3の発振信号の周波数を測定すると、この測定された周波数と、OCXO1が出力すべき発振信号の周波数とのずれ量は、分解前の製品としてのOCXO1が出力した発振信号の周波数と、OCXO1が出力すべき発振信号の周波数とのずれ量よりも大きくなる。
すなわち、本実施形態の(製品としての)OCXO1は、TCXO3と、TCXO3が実装された実装基体17と、TCXO3を収容するケース19と、ケース19内の雰囲気を加熱するヒータ21と、TCXO3と接続され、ケース19の外部に露出する複数の外部端子23と、を有し、TCXO3が複数の外部端子23のいずれかを介して実際に出力する発振信号Voutの周波数と、この周波数があるべき目標周波数とのずれ量は、ケース19及び実装基体17から取り外された(現に同一の)TCXO3が、恒温槽5が維持する温度と同一の温度の雰囲気において実際に出力する発振信号Voutの周波数と、目標周波数とのずれ量よりも小さい。
なお、目標周波数は、OCXO自体からは特定することはできないが、OCXOの仕様書又はカタログ等の付随物には、OCXOが出力すべき発振信号の所定の周波数、又は、OCXOの制御電圧と周波数との対応関係が必ず明記されており、目標周波数の意味するところは明確である。
本実施形態のOCXO1では、ケース19内の雰囲気の温度を調整する温度調整素子はヒータ21であり、TCXO3と、複数の外部端子23のうちTCXO3に電源電圧Vccを付与する電源用端子とは、電圧変換を行う変圧用IC53を介して接続されている。
従って、例えば、OCXO1の起動特性が向上する。具体的には、変圧用IC53は、駆動されているときに熱を生じる。特に、変圧用IC53が降圧式である場合やリニア式である場合においては、比較的熱量が多い。一方、熱は、高い所から低い所へ移動する。従って、TCXO3から変圧用IC53(電源電圧Vcc用の外部端子23)へ流れる熱量が低減する。その結果、振動素子9の周囲の雰囲気の熱量が外部端子23へ流れることが抑制され、振動素子9の周囲の雰囲気の温度が一定の温度に安定するまでの時間が短縮される。また、例えば、変圧用IC53が設けられることにより、TCXO3の仕様を変更することなく、OCXO1の種々の仕様を実現できることから、TCXO3として汎用品を用いることができる。その結果、生産性の向上、ひいては、コスト削減が期待される。
また、本実施形態では、ケース19内の雰囲気の温度を調整する温度調整素子は、実装基体17のTCXO3が実装される主面とは反対側の主面の、TCXO3と重なる位置に固定されたヒータ21である。TCXO3が実装される主面には、当該主面に沿う方向においてTCXO3を挟むように位置する2つの集積回路素子(変圧用IC53及びヒータ制御用IC55)が実装されている。
従って、例えば、TCXO3は、熱源であるヒータ21、変圧用IC53及びヒータ制御用IC55に囲まれることから、その周囲の雰囲気の温度が一定の温度に安定するまでの時間が短縮される。すなわち、OCXO1の起動特性が向上する。
なお、以上の実施形態において、OCXO1は恒温槽付圧電デバイスの一例であり、サンプルとしてのOCXO1のTCXO3、実装基体17及びケース19は、第1温度補償型圧電デバイス、第1実装基体及び第1ケースの一例であり、製品としてのOCXO1のTCXO3、実装基体17及びケース19は、第2温度補償型圧電デバイス、第2実装基体及び第2ケースの一例であり、ROM43はメモリの一例であり、ヒータ21は温度調整素子の一例であり、変圧用IC53及びヒータ制御用IC55は集積回路素子の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、圧電デバイスは、発振器に限定されない。例えば、SAWフィルタ等のフィルタであってもよい。なお、フィルタの場合においては、例えば、所定の波形の入力信号をフィルタリングしたときの出力信号の波形が所定の形状に近づくように、温度補償量を規定するパラメータの値が最適化される。
また、発振器は、実施形態に例示した以外の信号を入出力するものであってもよい。例えば、発振器は、制御電圧が入力されないもの(予め定められた一定の周波数の発振信号を出力するもの)であってもよいし、イネーブル・ディセーブル信号が入力されるものであってもよいし、周波数が互いに異なる又は同一の2つの発振信号を出力するものであってもよい。
振動素子は、圧電体の両主面に1対の電極が設けられるものに限定されず、SAW型の振動素子のように圧電体の一主面に1対の電極が設けられるものであってもよい。圧電体のカットの角度は適宜に設定されてよい。圧電体は、水晶に限定されず、例えば、セラミックであってもよい。
圧電体(振動素子)及び集積回路素子が搭載される素子搭載用部材は、互いに反対側に2つの凹部を有するいわゆるH型に限定されない。例えば、1つの凹部に圧電体及び集積回路素子が収容されてもよい。
温度補償型圧電デバイス(TCXO等)は、バンプによって実装基体に実装されるものに限定されず、例えば、ボンディングワイヤ又はピン状の第1端子によって実装基体に実装されるものであってもよい。
ケースは、温度補償型圧電デバイス(TCXO等)に加えて実装基体を収容するものに限定されない。例えば、実装基体の、TCXOが実装された面を覆うのみであってもよい。換言すれば、実装基体が恒温槽の底部を構成するものであってもよい。なお、この場合、実装基体に設けられた第3端子がケースの外部に露出する外部端子として利用されてもよい。
温度調整素子は、加熱を行うもの(ヒータ)に限定されず、冷却を行うものであってもよい。例えば、ケースの内外に露出するペルチェ素子を設け、加熱素子、若しくは、冷却素子、又は、加熱及び冷却の双方が可能な加熱冷却素子として機能させてよい。温度調整素子は、必ずしもケースに収容されている必要はなく、ケースの外部に配置され、ケースを加熱又は冷却することにより、ケースの内部の雰囲気を加熱又は冷却するものであってもよい。
温度補償量を規定する情報は、3次関数の係数及び定数の値に限定されない。例えば、発振器の温度補償量は、所定の温度範囲を複数に区分して、その区分ごとに1次関数乃至は2次関数で規定することが可能であり、この場合には、1次関数乃至は2次関数の係数又は定数の値が温度補償量を規定する情報となる。また、関数の係数及び定数の値は変えずに、温度のずれ量そのものの情報(例えば実施形態におけるT0の初期値と最適値との差)を情報として保持し、検出温度を関数に代入するときに変数としての検出温度からずれ量を加算するようにしてもよい。
実施形態では、T0の値を少しずつ変化させながらTCXO3に発振信号を出力させ、T0の好適化された値を探査したが、演算によってT0の好適化された値が求められてもよい。例えば、下記の(2)式にα、β、γ、T、T0(初期値)、Δf及びFの値を代入して得られる方程式において、ΔTの値を演算により求め、T0+ΔTの値をT0の新たな値としてよい。
α(T−T0)3+β(T−T0)+γ+Δf/F
=α(T−(T0+ΔT))3+β(T−(T0+ΔT))+γ (2)
ただし、ΔfはステップST4で測定された周波数のずれ量、Fは可変容量素子39に印加する電圧と発振信号の周波数の変化量とが線形の関係にあると仮定した場合における比例定数である。
実施形態では、サンプルとしてのOCXO1の温度特性を測定するとき(ステップST4)、TCXO3をケース19に収容した状態とした。しかし、TCXO3を実装基体17に実装したことによる温度特性の変化が、TCXO3をケース19に収容したことによる温度特性の変化に比較して小さいと予想されるような場合においては、TCXO3を実装基体17に実装後、TCXO3をケース19に収容する前に、第3端子29(又は外部端子23)を介してTCXO3の温度特性を測定するなどしてもよい。
恒温槽付圧電発振器の発明に関し、その製造方法において、温度特性が測定される温度補償型圧電発振器と、その温度特性に基づく情報が書き込まれる温度補償型圧電発振器とは、現に同一のものであってもよい。例えば、上記のように、TCXO3を実装基体17に実装後、TCXO3をケース19に収容する前に、第3端子29を介してTCXO3の温度特性を測定する場合においては、その温度特性が測定されたTCXO3に対して、その温度特性に基づく温度補償に係る情報を書き込むことが可能である。また、この場合、温度特性の測定及び温度補償に係る情報の書き込みは、実装前のTCXO3における温度特性の測定及び温度補償に係る情報の書き込みと同様に、測定用の恒温槽において、TCXO3及び実装基体17の雰囲気の温度を種々変化させて行われ、全ての係数及び定数の値が設定されてもよい。