JP6423665B2 - 二軸延伸スチレン系樹脂積層シート、成形品および食品包装容器 - Google Patents
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Description
しかし近年、コンビ二エンスストア等において、電子レンジ加熱用容器の需要が増えているが、汎用のポリスチレン(GPPS)からなる容器では、耐熱性や耐油性は十分に有していない。
これらのことから、耐熱性ポリスチレン系シートは透明性、剛性、耐熱性を兼ね備えた食品包装用容器に好適なシートであると言え、唯一の欠点である耐油性について改善が求められてきた。
一般に、樹脂シートの製造においては、シート幅を必要サイズにカットした際に発生するフラフとよばれるシート片、容器成形時に、成形したシートから成型部を打ち抜いたスケルトンと呼ばれる残渣などが発生する。実際の生産工程では、これらのシート片を製造時に再び原料系と混合することによって、コストや環境への負荷を抑える工夫をしているが、このときの原料とリサイクルシート片との相溶性が悪い場合、製品性能の低下を招く恐れがある。
特許文献6〜7に記載の方法では、ポリスチレンに非相溶な異素材を使用するため、リサイクル時に不透明化、強度の低下を引き起こし、食品容器用としての使用は見込めない。これら食品包装用の積層シートには、このようにリサイクル性を踏まえた材料設計が必要である。
(1)基材層とその少なくとも片面に表層を有し、表層の樹脂組成物(A)がスチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有する共重合体からなり、基材層の樹脂組成物(B)がスチレン系単量体単位及びメタクリル酸単量体単位を含有する共重合体からなることを特徴とする、二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
(2)表層の樹脂組成物(A)がメチルメタクリレート単量体単位を40〜100質量%含有する共重合体からなり、基材層の樹脂組成物(B)がメタクリル酸単量体単位を4〜14質量%含有する共重合体からなることを特徴とする、上記(1)に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
(3)基材層の樹脂組成物(B)の50Nにおけるビカット軟化点が108〜130℃であることを特徴とする、上記(2)に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
(4)積層シートの縦方向の配向緩和応力をσM[MPa]、横方向の配向緩和応力をσT[MPa]とした場合、下記の式1〜式3の全てを満たすことを特徴とする上記(3)に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
│σM−σT│≦0.2 ・・・式1
0.3≦σM≦1.2 ・・・式2
0.3≦σT≦1.2[MPa] ・・・式3
(5)食品接触面の表層(a)の厚みを(x)[μm]、基材層(b)の厚みを(y)[μm]とした場合、下記の式4を満たすことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
(x)/(y)=10〜100/100〜400 ・・・式4
(6)食品接触面の表層(a)の厚みを(x)[μm]、基材層(b)の厚みを(y)[μm]、他方の面の表層(c)の厚みを(z)[μm]とした場合、下記の式5を満たすことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
(x)/(y)/(z)=10〜100/100〜400/10〜100 ・・・式5
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シートを熱成形してなる成形品。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シートを熱成形してなる食品包装容器。
(9)電子レンジ加熱用途であることを特徴とする(7)に記載の成形品。
(10)電子レンジ加熱用途であることを特徴とする(8)に記載の食品包装容器。
本発明で使用する基材層の樹脂組成物(A)、(B)を構成するスチレン系単量体単位とは、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、p−フェ二ルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン等をあげることができるが、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、特に好ましくはスチレンである。これらスチレン系単量体は、単独でもよいが二種類以上を併用してもよい。
また、必要に応じて共重合可能なビ二ル系単量体単位、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンなどの不飽和炭化水素系単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロ二トリルなどの不飽和二トリル系単量体、(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェ二ルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体等を含有した共重合体であってもよい。
樹脂組成物(A)には、必要に応じて共重合可能なビ二ル系単量体単位、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、(メタ)アクリロ二トリルなどの不飽和二トリル系単量体、(メタ)アクリル酸等の不飽和アミド酸単量体、(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェ二ルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物単量体等を含有した共重合体であってもよい。
また、配向緩和応力σM及びσTの範囲は0.3〜1.2[MPa]が望ましく、好ましい範囲は0.4〜1.0[MPa]であり、より好ましい範囲は0.5〜0.8[MPa]である。配向緩和応力が低いと耐折強度が低下し、成形時や巻取り時にひび割れが発生しやすい。また、高すぎると熱成形の際の伸びが低下し成形性を悪化させる。
また、必要によっては、本発明の特性が損なわれない範囲内で、接着層、帯電防止層、印刷層その他の樹脂よりなる付加層を加えても良い。
層の厚み(x)〜(z)の確認方法としては、例えば表層のみを着色し、製膜後の積層シートをミクロトーム等の鋭利な刃物で切削後、その断面を光学式顕微鏡で観察し測定する方法がある。簡易的には製膜時の樹脂吐出量の比をもって層比に置き換えても良い。
樹脂組成物(A−1)
内容積200リットルの重合缶に、純水70.4kg、第三リン酸カルシウム300g
を加え、攪拌した後、メチルメタクリレート80.0kg、ベンゾイルパーオキサイド267.2gを加え、密封して100℃で6時間反応させた。これを冷却した後、中和、脱水、乾燥した。
メチルメタクリレート60.0kg、スチレン20.0kgとした以外は、上記樹脂組成物(A−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、メチルメタクリレート/スチレン質量組成比は75/25であった。
メチルメタクリレート40.0kg、スチレン40.0kgとした以外は、上記樹脂組成物(A−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを上記同様の分析を実施した結果、メチルメタクリレート/スチレン質量組成比は50/50であった。
メチルメタクリレート20.0kg、スチレン60.0kgとした以外は、上記樹脂組成物(A−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを上記同様の分析を実施した結果、メチルメタクリレート/スチレン質量組成比は25/75であった。
スチレン80.0kgとした以外は、上記樹脂組成物(A−1)と同様の操作をして重合体を得た。
内容量200Lのジャケット、攪拌機付きオートクレーブに純水100kg、ポリビ二ルアルコール100gを加え、130rpmで攪拌した。続いてスチレン72.0kg、メタクリル酸4.0kg及びt−ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。また、4.0kgのメタクリル酸を、重合温度が110℃に達した時点から2時間かけて、均等に追加添加した(ステップ2)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ3)。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、押出してペレット形状の樹脂を得た。これを熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレン/メタクリル酸質量組成比は90/10であった。
ステップ1にてスチレンを76.8kg、メタクリル酸を1.6kg仕込み、ステップ2にて1.6kgのメタクリル酸を追加添加したほかは、上記樹脂組成物(B−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを上記同様の分析を実施した結果、スチレン/メタクリル酸質量組成比は96/4であった。
ステップ1にてスチレンを69.8kg、メタクリル酸を5.6kg仕込み、ステップ2にて5.6kgのメタクリル酸を追加添加したほかは、上記樹脂組成物(B−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを上記同様の分析を実施した結果、スチレン/メタクリル酸質量組成比は86/14であった。
ステップ1にてスチレンを64.0kg、メタクリル酸を8.0kg仕込み、ステップ2にて8.0kgのメタクリル酸を追加添加したほかは、上記樹脂組成物(B−1)と同様の操作をして共重合体を得た。これを上記同様の分析を実施した結果、スチレン/メタクリル酸質量組成比は80/20であった。
上記樹脂組成物(A−5)と同様の操作をして重合体を得た。
(1)ビカット軟化点
JIS−K7206に準拠して、樹脂(A−1)〜(A−5)、(B−1)〜(B−5)を各々用いて、試験片として厚み3.2mmの射出成型品を成形後、23℃×50%の恒温恒温室にて24時間放置し、状態調整を行い、50Nのウェイトを使用し、50℃/hr.の昇温速度で温度上昇させ、試験片に圧子が1mm進入したときの温度を記録した。これを3回繰り返しその平均値を採用した。
ASTM D1504に準じて、実施例にて得られたシートの押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)での配向緩和応力の最大値を測定した。
JIS K−7361−1に準じ、実施例にて得られたシートのヘーズメーターNDH5000(日本電色社)により測定した。測定には実施例にて得られたシートを用いた。
○:ヘーズ1.5%未満
△:ヘーズ1.5〜3.0%
×:ヘーズ3.0%以上
ASTM D2176に準じて、シート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の耐折曲げ強さを測定した。縦横の平均値を求め評価した。
○:5回以上
△:2回以上、5回未満
×:2回未満
熱板成型機HPT−400A(脇坂エンジ二アリング製)にて、熱板温度145℃、加熱時間2.0秒の条件で、弁当蓋(寸法 縦241×横193×高さ28mm)を成形し、外観を評価した。
○:良好
△:表面の荒れによる軽微な白化、レインドロップ、形状不良
×:表面の荒れによる著しい白化、レインドロップ、形状不良(製品化できない)
上記成形条件で得られた弁当蓋を110℃に設定した熱風乾燥機に60分間入れた後、容器の変形を目視で観察した。
○:変形なし
△:軽微な変形、外寸変化5%未満
×:大変形、外寸変化5%以上
弁当蓋の中央にサラダ油(日清製油社製)、マヨネーズ(キユーピー社製)を試験液としてしみ込ませたガーゼ10×10mmを貼り付け、60℃オーブンにて24時間静置し、付着部の表面観察を行った。
○:変化無し
△:わずかに白化あり
×:著しい白化、穴あき
弁当蓋中央に5mm×5mmの範囲でマヨネーズを9点付着させ、容器本体に水300gを入れ、蓋容器をかぶせて1500Wの電子レンジで90秒間加熱した後、マヨネーズ付着部分の様子を目視で評価した。
○:変化なし
△:容器がわずかに変形
×:白化あり、穴あきあり、容器が著しく変形(製品化できない)
実施例より得られたシートを粉砕したものを射出成型機(日精 Injection Molding Machine FS−55)、樹脂温度230℃、金型温度70℃にて2mm厚みプレートを成形した後、このプレートをJIS K−7361−1に準じ、ヘーズメーターNDH5000(日本電色社)により測定した。
○:ヘーズ3.0%未満
△:ヘーズ3.0〜5.0%
×:ヘーズ5.0%以上
樹脂(A−1)を押出機A(田辺プラスチックス機械 VS40−36ベント式単軸横型)にて、樹脂(B−1)を押出機B(王牌机機 SJ−40/30単螺螺杆擠出机)にて押出し、フィードブロック、コートハンガー式Tダイを介して共押出し、表層/基材層の層比が1/9である2種2層シートを得た。このシートをバッチ式二軸延伸機(東洋精機)にて、縦及び横方向に2.4倍に延伸し、二軸延伸シートを得た。この積層シートをミクロトームで切削後、その断面を光学式顕微鏡で観察し厚みを計測したところ、表層厚み(a)/基材層厚み(b)はそれぞれ25/225(μm)であった。また、積層シートの押出方向(MD)とそれに垂直な方向(TD)での配向緩和応力の最大値を測定したところ、MD/TDで0.6/0.6(MPa)であった。以上の結果を表2にまとめた。
表層及び基材層に使用した樹脂、層の厚み比率、配向緩和応力のうち一部を変えた他は、実施例1と同様の方法で2種2層二軸延伸シートを得て、評価を行った。以上の結果を表2、表3にまとめた。
実施例1に用いたものと同じ樹脂、押出機を用いて共押出し、層の構成および厚み比率を変え、表層/基材層/表層の2種3層シートを得た。これを同様の手法で延伸し、所定の層比の二軸延伸シートを得て、評価を行った。以上の結果を表2、表3にまとめた。
Claims (7)
- 表層(a)/基材層(b)の2層構造、又は、表層(a)/基材層(b)/表層(c)の3層構造を有する二軸延伸スチレン系樹脂積層シートであって、
前記表層(a)及び前記表層(c)は、それぞれ、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を40〜100質量%含有する重合体のみからなり、
前記基材層(b)は、スチレン系単量体単位及びメタクリル酸単量体単位を含有し、前記メタクリル酸単量体の含有量が4〜14質量%である共重合体からなり、
前記積層シートの縦方向の配向緩和応力をσM[MPa]、横方向の配向緩和応力をσT[MPa]とした場合、下記の式1〜式3の全てを満たし、
│σM−σT│≦0.2 ・・・式1
0.3≦σM≦1.2 ・・・式2
0.3≦σT≦1.2 ・・・式3
前記積層シートが前記2層構造を有する場合、前記表層(a)の厚みが10〜100μmであり、かつ前記基材層(b)の厚みが100〜400μmであり、
前記積層シートが前記3層構造を有する場合、前記表層(a)の厚みが10〜100μmであり、前記基材層(b)の厚みが100〜400μmであり、かつ前記表層(c)の厚みが10〜100μmであることを特徴とする、二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。 - 前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位がメチルメタクリレート単量体単位である、請求項1に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
- 前記基材層(b)の50Nにおけるビカット軟化点が108〜130℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シート。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シートからなる成形品。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の二軸延伸スチレン系樹脂積層シートからなる食品包装容器。
- 電子レンジ加熱用途であることを特徴とする請求項4に記載の成形品。
- 電子レンジ加熱用途であることを特徴とする請求項5に記載の食品包装容器。
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