JP5209854B2 - 二軸延伸スチレン系樹脂シート - Google Patents

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Description

本発明は、高い剛性、成形性および優れた耐衝撃性を備えた二軸延伸スチレン系樹脂シートおよび前記シートで形成された成形体(例えば、容器やトレーなど)に関する。
二軸延伸スチレン系樹脂シートは、成形性に優れ、高い弾性率を有するため、食品分野における容器やトレー用途などに広く利用されている。食品業界では、近年の環境問題や容器リサイクル法への対応により、容器やトレーなどの容器包装を薄肉軽量化及び簡略化する傾向にある。ポリスチレンは弾性率が高く剛性に優れているが、一方、耐衝撃性や耐油性などは十分でない。したがって、スチレン系樹脂シートをある程度薄肉軽量化しても、剛性があるため実用的な強度は維持できるが、耐衝撃性は十分でないため割れやヒビが発生しやすい。また、揚げ物などの油分を含んだ食品トレー用途などには使用しにくい。そこで、ポリスチレンの耐衝撃性や耐油性を改善する方法として、ポリスチレンにゴム成分を含有させる方法が用いられている。
特公昭56−37051号公報(特許文献1)には、ポリブタジエン又はスチレン含有率が50重量%以下のスチレン−ブタジエンゴムを1〜5重量%含むスチレン系グラフト共重合体、またはスチレン含有率が20〜50重量%のスチレン−ブタジエンゴムを5〜15重量%含むスチレン系樹脂を基材樹脂とする二軸延伸ポリスチレンシートであって、前記シート内のゴム成分が扁平化されて層状にほぼ均一分散し、透明性および耐折強さが改善されたゴム強化二軸延伸ポリスチレンシートが開示されている。この文献には、厚みが0.09〜0.13mmのシートを得たことが記載されている。この文献の第1図には、ゴム粒子が層状に分散した電子顕微鏡写真が示されており、この写真では、ゴム成分は著しく扁平化して細長い層状である。この写真を解析すると、シート断面に対するサラミ構造内に内包するスチレン系樹脂を含むゴム成分の面積占有率は34%程度であり、ゴム成分の断面の長軸Lと短軸Sとの比で表されるゴム扁平度F(F=L/S)は平均20.5程度であり、シート断面の厚み方向に引いた直線を横切るゴム成分の数は15.5個/10μm程度である。しかし、ゴムを扁平化させるためには、高い収縮応力を付与してシートを製造する必要がある。そのため、成形過程でシートの破断も起こりやすい。しかも、成形されたシートの収縮応力が高いため、容器などへの二次成形性も低下する。
また、特開昭54−29381号公報(特許文献2)には、ゴム含有率が3重量%以上であり、メルトフローレート(MFR)が8g/mm以下であるグラフト型ハイインパクトポリスチレンを押出し、熱収縮応力が縦方向および横方向共に4kg/cm2以上となるように二軸延伸し、得られたシートを実質的に配向戻りさせることなく成形する容器の製造方法が開示されている。この文献には、上記要件を満たすと、容器の耐油性が飛躍的に向上すると記載されている。また、この文献では、グラフト型ハイインパクトポリスチレンを汎用ポリスチレンで希釈して希望のゴム含有量を得ることが可能であることが記載され、厚みが0.3mm程度以上のシートが使用されている。
特公昭55−35246号公報(特許文献3)には、合成ゴムを0.5〜3重量%含有し、ASTMD−1504に準拠して測定した配向緩和応力が5〜15kg/cmの範囲となるように二軸延伸されたスチレン系樹脂シートが開示されている。この文献では、グラフト型ハイインパクトポリスチレンと汎用ポリスチレンとを組合わせて使用できることが記載され、シートの厚みは0.25〜0.3mm程度であると記載されている。しかし、シートの耐衝撃性が低く、シートを薄肉軽量化して耐衝撃性を改善するのが困難である。
これらのシートでは、ゴム含有量を大きくすると剛性が低下する。そのため、薄肉化が困難である。一方、ゴム含有量を低減すると、耐衝撃性および耐油性が低下する。そのため、剛性と耐衝撃性及び耐油性とを高いレベルで両立できない。
特公昭56−37051号公報 特開昭54−29381号公報 特公昭55−35246号公報
従って、本発明の目的は、シートを薄肉軽量化しても、高い剛性、優れた耐衝撃性および耐油性を兼ね備えた樹脂組成物、ゴム含有二軸延伸スチレン系樹脂シートおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、成形性や減容性にも優れたゴム含有二軸延伸スチレン系樹脂シートを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、冷凍保存などの低温で使用される成形体において、薄肉軽量化しても割れにくい成形体(例えば、容器やトレーなど)を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、二軸延伸スチレン系樹脂シートにおいて、特定の膨潤度及びグラフト率のゴム成分を含むスチレン系グラフト共重合体と、必要によりスチレン系樹脂とを組合わせて、特定の分散状態にゴム成分を分散させると、シートの成形性が高く、薄肉軽量化しても、剛性と耐衝撃性および耐油性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体がグラフト重合したスチレン系グラフト共重合体を少なくとも含むスチレン系樹脂組成物で構成され、かつ縦及び横方向において、それぞれ1.2〜5倍の延伸倍率で二軸延伸された厚みが0.05〜0.5mm(特に0.05〜0.15mm)のスチレン系樹脂シートであって、下記(1)〜(3)の要件を満たす。
(1)スチレン系グラフト共重合体中のゴム成分について、グラフト率(g)が1.8〜5であり、膨潤度(SI)とグラフト率(g)との積(SI×g)が20〜80(特に20〜60)であり、かつ平均粒子径が1〜5μmであること
(2)スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量が0.7〜12重量%(好ましくは3重量%を超え10重量%以下、さらに好ましくは3.3〜5重量%)であること
(3)延伸方向に沿ってシート面に対して垂直方向に切断したシート断面において、ゴム成分の長軸がシート面に対して実質的に平行であり、ゴム成分の断面の長軸Lと短軸Sとの比で表されるゴム扁平度F(F=L/S)が5〜21.2であること。
二軸延伸スチレン系樹脂シートの延伸方向に沿ってシート面に対して垂直方向に切断したシート断面において、シート断面に対するゴム成分の割合(面積占有率)は10〜25%程度であってもよい。前記スチレン系樹脂組成物は、スチレン系グラフト共重合体と、スチレン系樹脂とを、前者/後者=30/70〜80/20(重量比)、好ましくは50/50〜70/30(重量比)の割合で含んでいてもよい。JIS K 7113に準拠して測定した前記シートの引張弾性率は2.8×10Pa以上であってもよい。高分子素材センター規格「硬質プラスチックスの計装化多軸衝撃試験方法」に準拠して測定した前記シートの全吸収エネルギーは、例えば、−30℃および20℃において3J/mm以上であるのが好ましい。また、本発明には、薄肉軽量化した二軸延伸スチレンシート系樹脂シートの剛性、耐衝撃性及び耐油性を改善する方法であって、前記二軸延伸スチレン系樹脂シートを使用して、シートの剛性、耐衝撃性及び耐油性を改善する方法も含まれる。この改善方法において、延伸方向に沿ってシート面に対して垂直方向に切断したシート断面において、シート断面に対するゴム成分の断面の割合(面積占有率)を10〜25%程度に調整し、スチレン系樹脂シートの剛性、耐衝撃性及び耐油性を改善してもよい。さらに、本発明には、前記シートで形成された成形体(例えば、容器やトレーなど)も含まれる。
本発明では、特定のスチレン系樹脂組成物で二軸延伸シートを形成するので、シートを薄肉軽量化しても、高い剛性および優れた耐衝撃性を兼ね備えている。また、高い剛性および優れた耐衝撃性に加えて、成形性にも優れている。さらに、減容性や耐油性にも優れている。本発明のシートは、薄肉軽量化しても割れにくいため、容器やトレーなどの食品容器包装用途に好適に使用できる。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、ゴム成分に少なくともスチレン系単量体がグラフト重合したスチレン系グラフト共重合体(スチレン系グラフト共重合体またはグラフト型ハイインパクトポリスチレン)を少なくとも含むスチレン系樹脂組成物で構成でき、前記スチレン系グラフト共重合体またはスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂マトリックス中にゴム成分が分散している。
スチレン系グラフト共重合体は、ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合することにより得ることができる。ゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)など)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム(例えば、エピクロルヒドリンゴムなど)、ブチルゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン系アイオノマー、熱可塑性エラストマー(例えば、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、フッ素ポリマー系エラストマー、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、オレフィン系エラストマー(TPO)など)などが挙げられる。前記ゴム成分を構成する共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体であってもよい。これらのゴム成分は、必要により水添されていてもよい。これらのゴム成分は、単独でまたは二種類以上組合わせて使用してもよい。前記ゴム成分のうち好ましいのはジエン系ゴムであり、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(ランダム又はブロック共重合体)が特に好ましい。このスチレン−ブタジエンブロック共重合体おけるスチレン含有量は10〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。
前記ゴム成分に対するグラフト成分には、少なくともスチレン系単量体を使用すればよく、スチレン系単量体単独、又はスチレン系単量体と共重合可能な共重合性単量体が使用できる。スチレン系単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエン(o−、m−、p−メチルスチレン)、ビニルエチルベンゼン(p−エチルスチレンなど)、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルキシレンなど)、α−アルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)、モノ乃至ペンタハロスチレン(例えば、クロロスチレン、ブロモスチレンなど)、α−ハロ置換スチレン(例えば、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレンなど)、β−ハロ置換スチレン(例えば、β−クロロスチレン、β−ブロモスチレンなど)などが挙げられる。これらのスチレン系単量体は単独で又は二種以上組合わせて使用してもよい。スチレン系単量体のうち、通常、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等が使用でき、特にスチレンが使用できる。
共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなど)]、シアン化ビニル(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物(例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸など)、マレイミド単量体(例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミドなどのN−アルキルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)などが挙げられる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組合わせて使用してもよい。これらの共重合性単量体のうち、通常、アクリロニトリル、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド単量体が使用できる。共重合性単量体の使用量は、スチレン系単量体100モルに対して、0〜100モル、好ましくは0〜50モル、さらに好ましくは0〜25モル程度の範囲から選択できる。
代表的なスチレン系グラフト共重合体としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が挙げられる。
本発明のシートは、特定の膨潤度およびグラフト率のゴム成分を含有するスチレン系グラフト共重合体で構成されているため、シートの耐衝撃性および剛性を大きく向上できる。前記ゴム成分の膨潤度(SI)とグラフト率(g)との積(SI×g)は、13〜80、好ましくは15〜70、さらに好ましくは20〜60(特に、20〜40)程度であり、例えば、23〜55程度であってもよい。前記積(SI×g)が前記範囲より小さいと、ゴム成分の扁平度が小さくなり、シートの耐衝撃性が低下する。また、スチレン系グラフト共重合体において、無理にゴム成分を扁平化させようとすると、シートの成形性は低下し、容器などへの二次成形性も低下する。前記積(SI×g)が前記範囲より大きいと、シートの耐衝撃性および耐油性が低下する。
ゴム成分の膨潤度(SI)およびグラフト率(g)は、膨潤度(SI)とグラフト率(g)との積(SI×g)が前記範囲内であれば特に制限されない。膨潤度(SI)は、通常、7.5〜20、好ましくは10〜20、さらに好ましくは11〜18程度である。また、グラフト率(g)は、通常、1〜5、好ましくは1.2〜5、さらに好ましくは1.5〜5(特に1.8〜4.5)程度である。
ゴム成分の膨潤度(SI)は、通常、ゴム成分の架橋度合いを示す指標として用いられ、この値が小さいほど、ゴム成分は延伸により扁平化しにくい。膨潤度(SI)は、例えば、スチレン系グラフト共重合体を溶媒(例えば、トルエン)に溶解し、溶媒により膨潤したスチレン系グラフト共重合体の膨潤ゲル重量(AI)と、前記膨潤したスチレン系グラフト共重合体を乾燥させた乾燥ゲル重量(BI)とを測定し、両者の割合(AI/BI)から求めることができる。
グラフト率(g)は、ゴム成分に対するグラフト成分の割合を示す指標として用いられ、この値が大きいほど、ゴム成分は延伸により扁平化しやすい。グラフト率(g)は、スチレン系グラフト共重合体のゲル分率(G)と、ゴム成分の含有量(RC)を用いて下記式で算出できる。
g=(G−RC)/RC
前記式において、ゲル分率(G)は10〜72%、好ましくは11〜72%、さらに好ましくは12〜70%(例えば、14〜66%)程度である。ゲル分率(G)は、例えば、スチレン系グラフト共重合体の重量(CI)と、前記スチレン系グラフト共重合体を溶媒(例えば、メチルエチルケトンとアセトンの混合溶媒)に溶解し、溶媒により膨潤したゲル状のスチレン系グラフト共重合体を乾燥させた乾燥ゲル重量(DI)とを測定し、両者の割合(DI/CI)から求めることができる。
スチレン系グラフト共重合体中のゴム成分の含有量(RC)は3〜15重量%、好ましくは4〜13重量%、さらに好ましくは5〜12重量%(例えば、8〜12重量%)程度である。ゴム成分の含有量が少なすぎるとシートおよび成形体の耐衝撃性が低下し、多すぎると剛性が低下する。
スチレン系グラフト共重合体中のゴム成分の平均粒子径は0.5〜10μm、好ましくは1〜7μm、さらに好ましくは1〜5μm程度である。平均粒子径が前記範囲からはずれるとシートおよび成形体の耐衝撃性は低下する。なお、ゴム成分の形状は、特に制限されず、例えば、サラミ構造、小粒径サラミ構造、コアシェル構造、大粒径サラミ構造と小粒径サラミ構造とが混在した構造などが挙げられる。また、サラミ構造内のゴム成分はスチレン系樹脂を内包していてもよい。
前記スチレン系樹脂組成物は、スチレン系グラフト共重合体で構成してもよく、スチレン系グラフト共重合体とスチレン系樹脂と組み合わせて構成してもよい。スチレン系樹脂は、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体であってもよく、スチレン系単量体と共重合可能な共重合性単量体との共重合体であってもよい。スチレン系単量体および共重合可能な共重合性単量体としては、前記スチレン系グラフト共重合体の項で例示された単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル系単量体、アクリロニトリル、マレイミド系単量体など)が使用できる。スチレン系樹脂としては、汎用ポリスチレン(GPPS)などのポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。スチレン系グラフト共重合体とスチレン系樹脂とを組合わせて使用することにより、耐衝撃性や剛性など物性のバランスに優れた樹脂が得られるとともに、成形性を大きく改善できる。
前記スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量は、耐衝撃性、成形性などの特性を損なわない範囲から選択でき、0.7〜12重量%(例えば、2.5〜10重量%)、好ましくは3重量%を超え10重量%以下(例えば、3.2〜7重量%)、さらに好ましくは3.3〜5重量%(例えば、3.3〜4重量%)程度である。ゴム成分の含有量が少なすぎるとシートの衝撃強度が低下し、多すぎると剛性が低下する。
スチレン系グラフト共重合体とスチレン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=5/95〜100/0の範囲から選択でき、通常、20/80〜90/10、好ましくは30/70〜80/20、さらに好ましくは50/50〜70/30(特に、55/45〜65/35)程度である。スチレン系樹脂の割合が前記範囲より大きいと、耐衝撃性が低下し、前記範囲より小さいと、剛性が低下する。
スチレン系グラフト共重合体のメルトフローレート(M1)は、温度200℃、荷重5kgにおいて、2〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分、さらに好ましくは2〜5g/10分程度である。スチレン系樹脂のメルトフローレート(M2)は、温度200℃、荷重5kgにおいて、1〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分、さらに好ましくは1〜5g/10分程度である。
スチレン系グラフト共重合体のメルトフローレート(M1)と、スチレン系樹脂のメルトフローレート(M2)との割合(M1/M2)は0.1〜20、好ましくは0.2〜10、さらに好ましくは0.4〜5程度である。メルトフローレートの割合(M1/M2)が前記範囲からはずれると、薄肉化したシートの耐衝撃性が低下する。
前記スチレン系樹脂組成物には、必要に応じて他の熱可塑性樹脂(例えば、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、熱可塑性ポリイミドなど)等を添加してもよい。
前記スチレン系樹脂組成物には、さらに、必要に応じて種々の添加剤、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、難燃剤、防曇剤、分散剤、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等)、低分子帯電防止剤、抗菌剤、着色剤、充填剤、補強材(ガラス繊維、炭素繊維などの繊維充填剤等)、流動性改良剤、増粘剤等を添加してもよい。
前記スチレン系樹脂組成物で構成され、かつ二軸延伸された本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、ゴム成分が特定の形態で分散しているので、薄肉軽量化しても、高い剛性および優れた耐衝撃性だけでなく、高い二次成形性を備えている。
すなわち、前記シートをシート面に対して垂直方向に切断したシート断面において、ゴム成分の長軸は、通常、シート面に対して実質的にほぼ平行に向いている。また、本発明では、前記シート断面に占めるゴム成分の断面の割合(面積占有率)が小さくても耐衝撃性を向上でき、例えば、前記割合(面積占有率)は10〜25%、好ましくは12〜22%、さらに好ましくは14〜20%程度であってもよい。面積占有率が小さすぎると耐衝撃性が低下し、大きすぎると剛性が低下する。なお、前記面積占有率は、サラミ構造を有するゴム成分においては、サラミ構造内に内包するスチレン系樹脂も含まれる。
また、前記シート断面において、ゴム成分は、通常、層状の形態で分散しているため、耐衝撃性を向上できる。ゴム成分の断面の長軸Lと短軸Sとの比で表されるゴム扁平度F(F=L/S)は5〜18、好ましくは8〜15、さらに好ましくは10〜14程度である。ゴム扁平度が小さすぎると、耐衝撃性および耐油性が低下し、大きすぎると、容器などへの二次成形性が低下する。
さらに、前記シートの平面から厚み方向に透視したとき、前記層状ゴム成分が少なくとも部分的に重複しているのが好ましい。ゴム成分が部分的に重複していることにより、シートへの衝撃を吸収しやすく、耐衝撃性が飛躍的に向上するだけでなく、成形性を損なうことがない。
前記シートの断面において、断面の厚み方向に引いた直線を通過するゴム成分の数は1〜13個/10μm(例えば、3〜13個/10μm)、好ましくは5〜13個/10μm、さらに好ましくは8〜13個/10μm(特に、8〜10個/10μm)程度である。ゴム成分の数が多すぎるとシートの剛性が低下し、少なすぎると耐衝撃性が低下する。
前記シートの厚みは特に限定されず、通常、0.05〜0.5mm(例えば、0.05〜0.4mm)の範囲から選択できるが、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、厚みが薄くても耐衝撃性、剛性を向上できる。そのため、薄肉軽量化の観点から、二軸延伸スチレン系樹脂シートの厚みは、通常、0.05〜0.25mm、好ましくは0.05〜0.2mm(特に、0.08〜0.15mm)程度である。本発明のシートは、厚みが0.05〜0.13mm程度であっても、薄肉軽量化しても剛性および耐衝撃性のバランスに優れる。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、高い弾性率を示す。引張弾性率は、例えば、2.8×10Pa以上(例えば、2.8×10〜7×10Pa)であり、好ましくは3.3×10〜6×10Pa、さらに好ましくは3.8×10〜6×10Pa程度である。引張弾性率は、JIS K 7113に準拠した測定方法により測定できる。引張弾性率が前記範囲より小さいと、厚みを0.05〜0.25mm程度にまで薄肉軽量化したシートでは、剛性が不足し、実用的な強度を得ることができない。また、本発明のシートは、低温での耐衝撃性も高い。例えば、本発明の二軸延伸シートにおいて、−30℃および20℃における全吸収エネルギーは3J/mm以上(例えば、3〜50J/mm)、好ましくは3.5J/mm以上(例えば、3.5〜20J/mm)、さらに好ましくは5J/mm以上(例えば、5〜15J/mm)程度である。全吸収エネルギーは、高分子素材センター規格「硬質プラスチックスの計装化多軸衝撃試験方法」に準拠して測定できる。全吸収エネルギーが、前記範囲より小さい場合には、シートの耐衝撃性(特に、耐寒衝撃性)が低下する。特に、シートの厚みが0.05〜0.2mm程度にまで薄肉軽量化すると、低温でのシートの割れやヒビの発生が顕著である。
本発明のシートは、高い剛性および優れた耐衝撃性に加えて、減容性にも優れている。前記シートは、特定の戻り角度を有しているため、押し潰したり、丸めたりするのが容易であり、減容性に優れている。戻り角度とは、平均厚みが0.2mmで1.5(MD)cm×11(TD)cmのシートを、長手方向の中間位置で180°折り曲げ、折り曲げたシートに直径150mm、重さ1kgの錘で1分間荷重をかけた後、荷重を取り除いて30分間放置した後のシートの角度を意味する。本発明のシートの戻り角度は、100°以下(例えば、10〜100°)、好ましくは70°以下(例えば、10〜70°)、さらに好ましくは60°以下(例えば、10〜60°)程度である。戻り角度が100°を超えると回収又は廃棄時に減容するのが困難になる。なお、前記シートは、前記折り曲げを3回以上行っても破断しないシートであることが条件である。
本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、スチレン系樹脂組成物の未延伸シートを二軸延伸することにより得られる。
スチレン系樹脂シートは、前記スチレン系樹脂組成物を用いて、押出成形機(例えば、単軸押出機や二軸押出機など)やカレンダー成形機を使用して製造でき、通常、前記シートは、スチレン系樹脂組成物を押出成形機内で溶融混練し、押出成形機の先端部の口金(ダイ)より押出すことにより成形される。前記口金(ダイ)は、インフレーション成形に利用されるリングダイであってもよいが、通常、マルチマニホールドダイなどのTダイまたはフラットダイなどが使用できる。
押出成形条件は、押出成形機やスチレン系樹脂組成物の種類などに応じて選択でき、通常、成形温度は100〜200℃、好ましくは110〜180℃、さらに好ましくは120〜140℃程度であり、成形圧力は1〜10kg/cm、好ましくは2〜8kg/cm、さらに好ましくは3〜6kg/cm程度であってもよい。
二軸延伸スチレン系樹脂シートは、ダイより押し出された前記シートを二軸延伸(逐次または同時延伸)することによって形成できる。逐次延伸としては、例えば、Tダイまたはカレンダーなどを用いて調製された未延伸シートを一軸方向に延伸し、次いで、上記延伸方向に直交する方向に延伸する方法などが挙げられる。同時二軸延伸としては、例えば、テンター延伸において縦、横方向の延伸を同時に行なう方法、及びインフレーション法などが挙げられる。
延伸倍率は、縦および横方向において、通常、それぞれ1.2〜5倍の範囲から選択でき、好ましくは1.5〜4倍、さらに好ましくは2〜3倍程度である。延伸倍率が前記範囲より低いと、耐衝撃性が不十分となり、前記範囲より高いと、シートの厚みの均一性が得られず、容器などへの成形性も低下する。なお、延伸時におけるシートの加熱温度は、100〜130℃、好ましくは110〜130℃、さらに好ましくは120〜130℃である。加熱温度が前記範囲からはずれると、延伸が困難となり、また、シートの厚みの均一性が低下する。
本発明のシートは、成形性、二次成形性に優れているので、種々の成形法、例えば、圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形等)、真空成形、自由吹込成形、折り曲げ加工、マッチド・モールド成形、熱板成形等の慣用の熱成形などで、簡便に成形品を得ることができる。容器やトレーなどの凹部形状を有する三次元形状の成形体を容易に成形できる観点から、加熱したシートを圧空により金型に押し当てて成形する圧空成形や、金型と加熱したシートとの間を真空にすることにより加熱シートを金型側に引き込んで成形する真空成形が好ましい。
本発明のシートおよび容器やトレーなどの成形品は、高い剛性および優れた耐衝撃性(特に、耐寒衝撃性)を兼ね備え、厚みを薄くしても割れにくいため、菓子トレーや珍味トレーなどの食品包装用途として好適である。また、前記成形品は、耐油性にも優れているため、焼き肉用トレーなど油分を含んだ食品包装用途にも適している。さらに、前記成形品は、耐衝撃性(特に、耐寒衝撃性)にも優れているため、冷凍食品用トレーなどの食品包装用途としても特に好適である。被包装体としては、各種食品、例えば肉類、野菜類、魚介類、フライ類(コロッケ、フィッシュフライなど)、非フライ類(焼き肉、ハンバーグ、おにぎりなど)、菓子類(スナック類、チーズ鱈、するめいかなど珍味類)、氷菓(アイスクリーム、アイスシャーベットなど)、冷凍食品などが挙げられる。
本発明のシートは、薄肉軽量化が可能であるため、コスト的に有利であり、かつ減容性にも優れるため、容器リサイクル法にも対応し、回収や破棄が容易に行えることができる。したがって、本発明の二軸延伸スチレン系樹脂シートは、工業上きわめて有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例で用いた樹脂成分および膨潤度、ゴム含有量、グラフト率の測定方法、およびシートの評価方法は以下に通りである。
[樹脂成分]
[スチレン系グラフト共重合体(HIPS)]
(HIPS1〜HIPS6)
ダブルヘリカル攪拌翼を備えた内容量25リットルの反応器と、脱揮装置を備えた2軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX44α)と、ギアポンプ((株)島津製作所製、SKJV50)とを連結させた重合装置を用いて、窒素雰囲気下で重合反応を行い、反応生成物を押出機のダイより押出し、押出された溶融ストランドを冷却後切断することにより、ペレット状のHIPSを得た。各成分(例えば、ゴム成分、溶媒、重合開始剤など)の種類や割合、および反応条件や押出条件を変えて、下記に示す種々のHIPS(HIPS1〜HIPS6)を作製した。表1〜2に各HIPSのゴム成分の含有量、膨潤度およびグラフト率を示す。
(HIPS1)
1.5kgのポリブタジエン(宇部興産(株)製、BR22H)、17.5kgのスチレンモノマー、1kgのトルエン、4gのt−ドデシルメルカプタンを反応器に仕込み、130℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、130℃および攪拌速度50rpmで2時間、140℃および攪拌速度20rpmで2時間、150℃および攪拌速度10rpmで1時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、230℃、ギアポンプ出力20%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
(HIPS2)
2kgのポリブタジエン(旭化成(株)製、アサプレン760A)、16kgのスチレンモノマー、4.8gの重合開始剤(日本油脂(株)製、パーブチルZ)を反応器に仕込み、117℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、117℃および攪拌速度40rpmで2時間、135℃および攪拌速度20rpmで2時間、150℃および攪拌速度10rpmで1時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、230℃、ギアポンプ出力10%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
(HIPS3)
2kgのポリブタジエン(旭化成(株)製、ジエン55)、16kgのスチレンモノマー、4.8gの重合開始剤(日本油脂(株)製、パーブチルZ)を反応器に仕込み、117℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、117℃および攪拌速度20rpmで2時間、135℃および攪拌速度20rpmで2時間、150℃および攪拌速度10rpmで1時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、230℃、ギアポンプ出力10%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
(HIPS4)
2kgのポリブタジエン(日本ゼオン(株)製、BR1220SL)、16kgのスチレンモノマー、4.8gの重合開始剤(日本油脂(株)製、パーブチルZ)を反応器に仕込み、117℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、117℃および攪拌速度40rpmで2時間、135℃および攪拌速度20rpmで2時間、150℃および攪拌速度10rpmで1時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、240℃、ギアポンプ出力10%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
(HIPS5)
2.5kgのポリブタジエン(日本ゼオン(株)製、BR1220SG)、16kgのスチレンモノマー、7.2gの重合開始剤(日本油脂(株)製、パーブチルZ)を反応器に仕込み、120℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、120℃および攪拌速度20rpmで2時間、125℃および攪拌速度20rpmで2時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、240℃、ギアポンプ出力10%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
(HIPS6)
1.5kgのポリブタジエン(宇部興産(株)製、BR22H)、17.5kgのスチレンモノマー、1kgのトルエンおよび4gのt−ドデシルメルカプタンを反応器に仕込み、130℃に昇温して重合反応を開始した。反応は、130℃および攪拌速度50rpmで2時間、140℃および攪拌速度20rpmで2時間、150℃および攪拌速度10rpmで1時間の順に、段階的に行った。得られた反応生成物を、240℃、ギアポンプ出力10%の条件で押出し、未反応のモノマーおよび溶媒は除去し、ペレット状のHIPSを得た。
[スチレン系樹脂(GPPS)]
ポリスチレン(東洋スチレン(株)製、東洋スチロールGP、HRM63C)を用いた。
[膨潤度]
精秤したHIPS 3gに、トルエン125gを加えて溶解させ、溶液とした。この溶液を暗所にて24時間放置後、冷却延伸分離器(Beckman Instruments Inc.製、Avanti HP−30I)で、温度−4℃、回転数1500rpmで23分間遠心分離した。上澄み液を除いて沈殿分を取り出し、その重量(AI)を測定した(膨潤ゲル重量)。次に、前記沈殿分を、160℃、常圧、窒素雰囲気下で45分間、さらに、160℃、真空中で1時間乾燥し、乾燥後の重量(BI)を測定した(乾燥ゲル重量)。ゴム成分の膨潤度(SI)を、膨潤ゲル重量(AI)と乾燥ゲル重量(BI)との割合(AI/BI)より求めた。
[ゴム含有量]
以下の手順(1)〜(4)でHIPSのゴム含有量を測定した。
(1)試薬の調整
以下に示す溶液A〜Cを調整した。
A溶液:5%一塩化ヨウ素酢酸溶液(一塩化ヨウ素25gを褐色瓶に移し、酢酸500gに溶解させた)
B溶液:10%ヨウ化カリウム水溶液(ヨウ化カリウム100gを蒸留水900gに溶解させた)
C溶液:チオ硫酸ナトリウム水溶液(チオ硫酸ナトリウム45gを精秤し、これを蒸留水に溶解させ1000mlの溶液とした。前記溶液に0.3gの炭酸水素ナトリウムを添加し一晩放置した)。
(2)チオ硫酸ナトリウム水溶液の標定
300mlの三角フラスコに、精秤した臭素酸カリウム0.1gと、100mlの蒸留水と、100mlのB溶液とを加え、混合溶液とした。この溶液に、10mlの濃塩酸を添加し、3分間放置した。この溶液をチオ硫酸ナトリウム水溶液(C溶液)で滴定し、水溶液が無色になったところで滴定を終了した。下記式により、C溶液の規定度(N)を算出した。
チオ硫酸ナトリウム水溶液(C溶液)の規定度(N)=[秤量した臭素酸カリウムの重量(g)]/[(チオ硫酸ナトリウム水溶液の滴定量(ml))×0.0278]
(3)HIPSの溶解
300mlの三角フラスコに、精秤したHIPS 1gと、75mlのテトラヒドロフラン(THF)とを加え、一晩放置し、HIPSを溶解させた。
(4)ゴム含有量の測定
HIPSのTHF溶液(前記(3))に、10mlのA溶液を添加し、15分間暗所に放置し、さらに100mlのB溶液を添加し、混合溶液(HIPS溶液)とした。この溶液を、チオ硫酸ナトリウム水溶液(C溶液)で滴定し、水溶液が無色になったところで滴定を終了した。ブランクとして、HIPSを含まない溶液(ブランク溶液)でも同様の操作をおこなった。下記式よりゴム含有量(RC)を算出した。
RC(%)=[0.02705×(チオ硫酸ナトリウムの規定度(N))×{(ブランク溶液におけるC溶液の滴定量(ml))−(HIPS溶液におけるC溶液の滴定量(ml))}/HIPS仕込み重量(g)]×100
[グラフト率]
HIPSサンプル1gを精秤し、これにメチルエチルケトンとアセトンとの割合(体積%)=1/1の混合溶媒35mlを加え、振とう器を用いて、1.5時間溶解させ、溶液とした。この溶液を冷却遠心分離器(Beckman Instruments,Inc.製、Avanti HP−30I)を用いて、温度−4℃、回転数10000rpmの条件で、30分間遠心分離した。上澄み液を除いて沈殿分を取り出し、前記沈殿分を80℃、真空で3時間乾燥させ、乾燥後の重量(乾燥ゲル重量)を測定した。乾燥ゲル重量から、ゲル分率(G)を下記式を用いて算出した。
G(%)=[(乾燥ゲル重量)/(サンプル重量)]×100
グラフト率(g)は、ゲル分率G(%)とゴム含有量RC(%)を用いて、下記式で算出した。
g=(G−RC)/RC
なお、グラフト率(g)は、サラミ構造のゴム成分に内包するスチレン系樹脂も考慮に入れた値として算出される。
[剛性]
シートをJIS K 7113に準じた2号ダンベルで(比較例6のスチレン系グラフト共重合体および比較例7のポリプロピレンは樹脂の配向方向に)打ち抜き、サンプルシートを得た。得られたサンプルシートの引張弾性率を、テンシロン(RTA520、(株)東洋精機製作所製)を用いて、試験スピード50mm/分の条件で測定した。結果より下記の基準で剛性を評価した。
○:3.3×10Pa以上
△:2.8×10Pa以上、3.3×10Pa未満
×:2.8×10Pa未満。
[耐衝撃性(耐寒衝撃性)]
シートを落錘衝撃試験機((株)東洋精機製作所製)に装着し、恒温槽を用いてシートの温度を−40℃〜20℃で恒温にした。シートに対して、ストライカー(直径12.7mm、全重量6.5kg)を40cmの高さから自由落下させてシートに衝突させて、シートにかかる荷重とシートの変位から、各温度に対する全吸収エネルギーを算出した。算出された−30℃および20℃での全吸収エネルギーについて、下記の基準で評価した。
◎:5J/mm以上
○:3.5J/mm以上、5J/mm未満
△:3J/mm以上、3.5J/mm未満
×:3J/mm未満。
[減容性]
平均厚みが0.2mmで1.5(MD)cm×11(TD)cmのシートを、長手方向の中間位置で180°折り曲げ、折り曲げたシートに直径150mm、重さ1kgの錘で1分間荷重をかけた後、荷重を取り除いて30分間放置した後のシートの角度を測定し、下記の基準で減容性を評価した。ただし、前記シートは、シートを180°に折り曲げ、折り曲げ線上に破断がない場合は、さらに折り曲げ線を中心に逆方向に360°折り曲げ、この繰り返しを3回以上行っても破断しないシートであることが条件とする。
○:70°以下
△:70°を超え100°以下
×:100°を超える。
[耐油性]
シートをJIS K 7127の2号ダンベルで(比較例6のスチレン系グラフト共重合体および比較例7のポリプロピレンは樹脂の配向方向に)打ち抜き、ダンベル形状のシートを得た。シートの両端をチャックで掴み、シートの中央部にサラダ油を塗布し、下側のチャックに200kg/cmの荷重をかけて、破断時間を測定し、下記の基準で耐油性を評価した。
○:10分以上
△:5分以上10分未満
×:5分未満。
[容器成形性]
単発真空成形機((株)浅野研究所製)によって、開口部径90mm、底部径80mm、高さ50mmのカップ状容器を成形して、容器と底面のコーナー(底面と側面とが接する部分)の外観を目視観察して、下記の基準で評価した。
○:均一に伸びて、均一な厚みに成形されている
△:底面またはコーナーの厚み部分にムラがある
×:底面またはコーナーの一部に破れがある。
参考例1〜3、実施例1〜および比較例1〜4
表1〜2に示すスチレン系グラフト共重合体(HIPS)と、汎用ポリスチレン(GPPS)とを、表1〜2に示す割合で用い、所定のゴム含有量となるように2軸混練押出機(池貝(株)製)で溶融混練し、押出すことによりペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、圧縮成型機(松田工業(株)製)を用いて230℃で2分加熱し、厚さ1mm(実施例では0.5mm、実施例では1.5mm)のシートを成形した。得られたシートを縦130mm、横130mmの正方形に裁断し、二軸延伸機(T.M Long社製)を用いて、厚さ0.2mm(実施例では0.1mm、実施例では0.3mm)、縦295mm、横295mmに二軸延伸した。二軸延伸の条件は、加熱時間2分、延伸速度900mm/分、延伸倍率縦方向2.5倍×横方向2.5倍、延伸温度110℃〜130℃である。得られた二軸延伸シートの特性を表1〜2に示す。
比較例5、6
実施例の樹脂組成物に代えて、汎用ポリスチレン(GPPS)とスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)(Kレジン KK38、フィリップス石油(株)製、ゴム含有量30重量%)を表に示す割合で用いた以外は、実施例と同様にして二軸延伸シートを得た。
比較例
実施例の樹脂組成物に代えて、汎用ポリスチレン(GPPS)を100重量%用いた以外は、実施例と同様にして二軸延伸シートを得た。
比較例
スチレン系グラフト共重合体(東洋スチロールHI E640、東洋スチレン(株)製)(HIPS7)を、直径65mmの押出機(シリンダ温度200℃)を用いて、Tダイから押出し、厚み0.2mmのシートを得た。このシートを使用し、実施例と同様の評価を行った。
比較例
超耐寒ポリプロピレン(PP)シート(共栄樹脂(株)製、F−32L)、厚み0.33mmのシートを使用し、実施例と同様の評価を行った。
なお、参考例1と実施例2および比較例7〜9のシートにおける温度と耐(寒)衝撃性(全吸収エネルギー)との関係を図1に示す。
Figure 0005209854
Figure 0005209854
表から明らかなように、実施例に示すシートは各種性能に優れる。これに対して、比較例に示すシートでは、剛性や耐衝撃性、成形性などの各種物性またはそのバランスが十分でない。
図1は、参考例1と実施例2および比較例7〜9における温度と耐(寒)衝撃性(全吸収エネルギー)との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. ゴム成分に少なくともスチレン系単量体がグラフト重合したスチレン系グラフト共重合体を少なくとも含むスチレン系樹脂組成物で構成され、かつ縦及び横方向において、それぞれ倍の延伸倍率で二軸延伸された厚みが0.05〜0.5mmのスチレン系樹脂シートであって、下記(1)〜(3)の要件を満たす二軸延伸スチレン系樹脂シート。
    (1)スチレン系グラフト共重合体中のゴム成分について、グラフト率(g)が1.8〜5であり、膨潤度(SI)とグラフト率(g)との積(SI×g)が20〜80であり、かつ平均粒子径が1〜5μmであること
    (2)スチレン系樹脂組成物中のゴム成分の含有量が3重量%を超え10重量%以下であること
    (3)延伸方向に沿ってシート面に対して垂直方向に切断したシート断面において、ゴム成分の長軸がシート面に対して実質的に平行であり、ゴム成分の断面の長軸Lと短軸Sとの比で表されるゴム扁平度F(F=L/S)が5〜21.2であること
  2. 薄肉軽量化した二軸延伸スチレンシート系樹脂シートの剛性、耐衝撃性及び耐油性を改善する方法であって、請求項1記載の二軸延伸スチレン系樹脂シートを使用して、シートの剛性、耐衝撃性及び耐油性を改善する方法。
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