以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(ウォーターフェンスの構成)
図1〜図13を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態によるウォーターフェンス100は、建物への浸水を防いだり、工事現場などにおいて水を長時間せき止めたり、流れを有する河川などをせき止めたりするために用いられる。ウォーターフェンス100は、図1および図2に示すように、ウォーターフェンス本体部1と、設置力増強部材2とを備えている。また、ウォーターフェンス本体部1には、自吸機能を有した自吸ポンプ(以下「ポンプ」と称す)3が接続されている。また、ポンプ3は、急な増水に対しても信頼性の高い水没使用が可能な防水構造を有するポンプとすることが望ましい。また、ウォーターフェンス本体部1には、重りとしてペットボトル4が配置されている。なお、ポンプ3は、特許請求の範囲の「吸水装置」および「ポンプ」の一例であり、ペットボトル4は、特許請求の範囲の「重り部材」の一例である。
ウォーターフェンス本体部1は、第1部材11と、第2部材12と、連結部材13とを含んでいる。第1部材11は、吸水装置取付部111と、吸水口部112(図3参照)と、溝部113と、連結用係合部114(図4参照)と、嵌合部115(図5参照)とを有している。連結用係合部114の端部には、引掛部114aが設けられている。第2部材12は、重り取付部121(図1参照)と、溝部122(図3参照)と、連結用係合部123(図4参照)と、嵌合部124(図6参照)とを有している。連結用係合部123の端部には、引掛部123aが設けられている。なお、第1部材11および第2部材12は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1本体部」および「第2本体部」の一例である。また、嵌合部115および嵌合部124は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1嵌合部」および「第2嵌合部」の一例である。
設置力増強部材2は、図2および図4に示すように、第1設置力増強部材21と、第2設置力増強部材22とを含んでいる。
ウォーターフェンス本体部1は、浸水を防止するための堰を形成している。具体的には、ウォーターフェンス本体部1は、図1に示すように、第1部材11のX方向の両端に、それぞれ、第2部材12が連結されている。つまり、ウォーターフェンス本体部1は、複数に分割可能に構成されている。第1部材11と第2部材12とは、ゴム製の連結部材13により互いに連結されている。詳しくは、図4に示すように、第1部材11の連結用係合部114と、第2部材12の連結用係合部123とが隣接して配置された状態で、連結部材13が、連結用係合部114および連結用係合部123の両方に係合している。また、連結部材13の両端部は、それぞれ、連結用係合部114の引掛部114aおよび連結用係合部123の引掛部123aの両方に引掛けられている。これにより、連結部材13が外れるのを抑制することが可能である。また、第1部材11と第2部材12との接合をより強固にすることが可能である。連結部材13は、第1部材11および第2部材12の側面(Y1方向側およびY2方向側の側面)と、上面(Z1方向側の面)とに跨って係合するように構成されている。
第1部材11は、水を透過させない素材により形成されている。第1部材11は、たとえば、ゴムや樹脂或いは金属などにより形成されている。第1部材11の吸水装置取付部111には、図1に示すように、ポンプ3が連結されるように構成されている。吸水装置取付部111は、ウォーターフェンス本体部1の底面1a側(Z2方向側)に設けられた吸水口部112(図3参照)と連通している。つまり、ウォーターフェンス本体部1の底面1aと設置面との間の水が、ポンプ3により吸水口部112および吸水装置取付部111を介して吸水される。また、吸水装置取付部111に、異物除去用のフィルターを設けてもよい。これにより、ポンプ3によって吸い込み、排出される水からゴミなどの異物を除去することができるので、緊急時の水として活用することも可能である。なお、フィルターは吸込みから排出までの間に設けられれば良いので、ポンプ3の吸水用ホースなどに設けてもよい。
図3に示すように、第1部材11の下面側(Z2方向側)には、溝部113が設けられている。溝部113には、設置力増強部材2が嵌り込むように配置される。また、溝部113は、吸水口部112をY方向に挟み込むように、1対設けられている。また、溝部113は、第1部材11に連結される第2部材12の溝部122とつながるように形成されている。
図5に示すように、第1部材11の底面部(Z2方向側部)には、第2部材12側に凸状に突出する嵌合部115が設けられている。嵌合部115は、第2部材12の嵌合部124に嵌合するように構成されている。また、嵌合部115は、平面視において(Z方向から見て)、第2部材12とオーバーラップするように配置されている。つまり、嵌合部115は、第1部材11および第2部材12を底面を上にして組立てた場合に、第2部材12に覆いかぶさるように、嵌合部124に嵌合する。
図1に示すように、第2部材12は、直方体の箱型形状を有している。また、第2部材12は、X方向に延びるように形成されている。また、第2部材12は、水を透過させない素材により形成されている。第2部材12は、たとえば、ゴムや樹脂或いは金属などにより形成されている。第2部材12の重り取付部121には、重りとしてのペットボトル4が取り付けられるように構成されている。第2部材12の重り取付部121にペットボトル4が取り付けられることによりウォーターフェンス100に加わる荷重を増すことが可能なように構成されている。なお、重り取付部121に、水、石、砂、土などを入れて重りとしてもよい。
図3に示すように、第2部材12の下面側(Z2方向側)には、溝部122が設けられている。溝部122には、設置力増強部材2が嵌り込むように配置される。また、溝部122は、U字形状に形成されている。また、溝部122は、第2部材12に連結される第1部材11の溝部113とつながるように形成されている。つまり、第1部材11の溝部113と、第2部材12の溝部122とが連結されて、長方形のロ字形状の溝部が形成される。
図6に示すように、第2部材12の底面部(Z2方向側部)には、第1部材11の嵌合部115が嵌合する嵌合部124が設けられている。具体的には、嵌合部124は、凹状に形成されており、凸状の嵌合部115が嵌合するように構成されている。嵌合部115および嵌合部124が嵌合することにより、第1部材および第2部材を組み立てる際に、第1部材および第2部材がYおよびZ方向にずれることを抑制することができるとともに、第1部材と第2部材の向きを間違えることなく位置決めが容易となるので、組み立て作業を容易に行うことが可能である。
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、設置力増強部材2は、ウォーターフェンス本体部1の底面1aに配置され、ウォーターフェンス本体部1の設置面への設置性を向上させるように構成されている。つまり、ウォーターフェンス本体部1の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することとによって、設置力増強部材2は、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させることにより、ウォーターフェンス本体部1の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成されている。
具体的には、設置力増強部材2は、ウォーターフェンス本体部1の自重と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧とにより、水の透過率が所定の値となることにより、ウォーターフェンス本体部1の底面1aと設置面との間に外部からの水を所定量透過させてポンプ3の自吸水を確保するように構成されている。
設置力増強部材2は、第1設置力増強部材21と、第2設置力増強部材22とが積層されている。第1設置力増強部材21は、設置面側(Z2方向側)に配置されている。第2設置力増強部材22は、ウォーターフェンス本体部1側に配置されている。第1設置力増強部材21および第2設置力増強部材22は、接着層(接着剤や接着テープなど)を介して貼り合わされている。
第1設置力増強部材21は、半連続気泡構造を有しており、圧縮変形されることにより水の透過率が変化するように構成されている。第1設置力増強部材21は、たとえば、半連続気泡構造の気孔率50%〜60%程度のやわらかいスポンジにより形成されている。また、第1設置力増強部材21は、半連続気泡構造のスポンジが圧縮されることによりスポンジの孔が小さくなり、水の透過率が変わるように構成されている。ポンプ3が駆動された場合、半連続気泡構造のスポンジは50〜80%程度圧縮されることが望ましい。
第1設置力増強部材21は、たとえば、30〜40mm程度の厚みに形成されている。また、第1設置力増強部材21は、ウォーターフェンス本体部1の自重と、重り取付部121に取り付けられたペットボトル4の重さと、ポンプ3の吸引力によって生じる負圧とにより圧縮されるように構成されている。また、ポンプ3は空気を混じって吸うと空運転となってしまうので、第1設置力増強部材21を透過させる水はポンプ3を空運転させない水量となるように構成されている。
第2設置力増強部材22は、第1設置力増強部材21よりも硬い材料により形成されている。第2設置力増強部材22は、たとえば、硬質のスポンジ材やゴム材により形成されている。第2設置力増強部材22は、ウォーターフェンス本体部1の自重やポンプ3の吸引力による負圧によって圧縮されない程度の硬さを有する。また、第2設置力増強部材22は、ウォーターフェンス本体部1の底面1aに、ウォーターフェンス本体部1から、たとえば5mm程度出るように取り付けられている。たとえば、ウォーターフェンス本体部1の底面1aの溝部113および122の深さが20mmの場合、第2設置力増強部材22の厚さは25mmに形成される。また、第2設置力増強部材22は、は、ウォーターフェンス本体部1の底面1aの溝部113および122の幅より若干大きい幅を有するように形成されているので、第2設置力増強部材22は、溝部113および122に圧入されることによりウォーターフェンス本体部1の底面1aに取り付けられるように構成されている。これにより、設置力増強部材2が経年劣化などにより交換が必要となった場合でも容易に取替えることが可能である。また、第2設置力増強部材22が、ウォーターフェンス本体部1から、たとえば5mm程度出るように取り付けられた場合、吸水口部112がウォーターフェンス本体部1から4mm程度まで出るように構成すれば、吸水口部112が地面に接して吸水できなくなるということが起こらないように構成することが可能である。
また、図7に示すように吸水口部112にスリットや突起やバースクリーン等を設けるように端面部を凹凸状に構成すれば、吸水口部112端部の周方向から吸水することが可能になるので、吸水口部112が地面に接したとしてもスリットや、突起やバースクリーンの隙間から吸水することが可能である。つまり、第2設置力増強部材22がウォーターフェンス本体部1から、D(たとえば5mm程度)出るように取り付けられた場合、吸水口部112も同様にウォーターフェンス本体部1からD(5mm程度)出る長さにまで構成することが可能である。また、バースクリーンの隙間から吸水することにより、異物の混入を抑制することができるので、ポンプ3に異物が吸い込まれるのを抑制することが可能である。
ポンプ3は、ウォーターフェンス本体部1の底面1aと設置面との間の水を吸い取るように構成されている。また、ポンプ3は、水深が浅い水を吸水可能に構成されている。よって、ポンプ3は、設置面とウォーターフェンス本体部1の底面1aとの間に浸水した少量の水を効果的に排水することができる。
図8を参照して、設置力増強部材2(第1設置力増強部材21および第2設置力増強部材22)の特性の一例について説明する。
図8に示すように、第1設置力増強部材21は、たとえば、見掛け密度が130kg/m3であり、引張強さが100kPaであり、伸びが550%である。また、第1設置力増強部材21は、圧縮硬さが、圧縮率が25%の場合、3.9kPaであり、圧縮率が50%の場合、6.0kPaである。第2設置力増強部材22は、見掛け密度が110kg/m3であり、引張強さが1480kPaであり、伸びが120%である。また、第2設置力増強部材22は、たとえば、圧縮硬さが、圧縮率が25%の場合、275kPaであり、圧縮率が50%の場合、400kPaである。つまり、第1設置力増強部材21よりも第2設置力増強部材22の方が硬い材料により形成されている。
図9を参照して、第1設置力増強部材21の特性(水透過)の一例について説明する。
図9に示すように、水透過について、第1設置力増強部材21は、圧縮率が60%の場合、水深100mmの水頭圧(100mmH2O=0.01kgf/cm2≒0.98kPa)に対して、10分を超えて30分以内に水漏れがあった。また、第1設置力増強部材21は、圧縮率が70%、80%および90%の場合、水深100mmの水頭圧(100mmH2O=0.01kgf/cm2≒0.98kPa)に対して、30分間水漏れしなかった。なお、水透過について、10分を超えて30分以内に水漏れがあった場合、「△」と示し、30分間水漏れしなかった場合、「○」と示している。
第1設置力増強部材21に用いる気孔率50%〜60%程度の半連続気泡構造のやわらかいスポンジは、図9に示す一例のように、圧縮率に応じた透過率となる。また、第1設置力増強部材21は、50%以上80%以下の圧縮率になるように圧縮抑制することにより、半連続気泡構造のスポンジを透過する水量をポンプ3の呼び水として適度な透過水量に抑えることが可能である。また、第1設置力増強部材21(スポンジ)を透過した水をポンプ3で排水するのでウォーターフェンス本体部1を越えて浸水させないようにすることが可能である。つまり、ポンプ3を駆動させた場合に、第1設置力増強部材21の圧縮率が50以上80以下になることが好ましい。
(シートを設置した第1使用例)
図10および図11を参照して、ウォーターフェンス本体部1をシート5により覆った状態の第1使用例について説明する。
図10に示すように、ウォーターフェンス100は、シート5を備える。シート5は、ウォーターフェンス本体部1を覆うように配置されている。また、シート5は、ウォーターフェンス本体部1の背面側のたとえば、柱50や壁或いは扉(図示せず)などに取り付けられている。シート5は、水を透過させない素材により形成されている。たとえば、シート5は、ポリ塩化ビニルにより形成されている。また、シート5は、たとえば、約0.1mmの厚みを有する。
シート5をウォーターフェンス本体部1を覆うように設置することにより、ウォーターフェンス本体部1の背面(Y1方向側)に回りこむ水をせき止めながら、ポンプ3により排水を行うことが可能に構成されている。また、シート5をウォーターフェンス本体部1の背面側(Y1方向側)を高く覆うように設置することにより、ウォーターフェンス本体部1の背面に回りこむ水をせき止めながら、ポンプ3により排水を行うことが可能に構成されている。
シート5は、図10および図11に示すように、ウォーターフェンス本体部1の柱50側(建物側)に水溜まり部51が形成されるように配置される。具体的には、シート5をウォーターフェンス本体部1に沿うように覆い、柱50側の設置面と扉を含めた建物側面に沿って配置するとともに、柱50や壁或いは扉(図示せず)などに沿って上下方向(Z方向)に延びるように配置する。このようにシート5を配置することにより、ウォーターフェンス本体部1を越える急な増水の水位の水が押し寄せたとしても、ウォーターフェンス本体部1を越えた水を水溜まり部51で受けることができるので、扉を含めた建物内への浸水をより一層効果的にせき止めることができる。そして、水溜まり部51に溜まった水はウォーターフェンス本体部1に接続されたポンプ3により排水させることが可能である。上述の如く、水溜まり部51に溜まった水により、シート5を設置面と扉を含めた建物側面に対して密着させることが可能である。つまり、シート5は設置面と扉を含めた建物側面に対するフィッティング性に優れるので、凹凸のある地面や扉を含めた建物側面に対しても確実に密着させることが可能である。これにより、シート5を越えて浸水することや、ウォーターフェンス100の背面への水の回り込みをより一層効果的に防ぐことが可能である。
(シートを設置した第2使用例)
図12を参照して、ウォーターフェンス本体部1をシート5により覆った状態の第2使用例について説明する。
図12に示す第2使用例では、ウォーターフェンス本体部1の背面側(Y1方向側)の水溜り部52aと、側面側(X1方向側およびX2方向側)の水溜り部52bとを含む水溜り部52が形成されるようにシート5を配置する。これにより、ウォーターフェンス本体部1の側面側(X1方向側およびX2方向側)から背面側(Y1方向側)までの水の回り込みをより効果的に抑制することが可能である。なお、その他の構成は、第1使用例と同様である。
(河川に設置した使用例)
図13を参照して、ウォーターフェンス100を河川に設置した状態の使用例について説明する。
図13に示すように、ウォーターフェンス100は、河川の流れをせき止めるようにして設置されている。ウォーターフェンス本体部1は、設置される河川の幅に合わせて設置されている。また、幅方向の端に土嚢などを設置して幅方向の長さを調整したり、ウォーターフェンスの側面側の止水性をより向上させてもよい。また、ポンプ3は、ウォーターフェンス本体部1に対して、堰き止められる水の上流側に配置にされており、堰き止められる水の上流側内の水によってポンプ3を効果的に放熱することができるので、長時間の運転による温度上昇によってポンプ3の運転が停止することがなく、継続して運転させることが可能となる。よって、河川などの水を堰き止めて工事などの作業を行う場合でも、長時間水を堰き止めて十分な作業時間を確保し、安全な作業帯域を作業者に提供することが可能となる。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、ウォーターフェンス本体部1の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧の吸引作用とによって、設置力増強部材2が、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部1の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成する。これにより、外部から設置面とウォーターフェンス本体部1の底面1aとの間に侵入する水を適量に抑制しつつポンプ3の自吸水を確保することができるので、ポンプ3を駆動させることにより、設置力増強部材2が適量の浸水を通過させることができる。これにより、ウォーターフェンス本体部1の底面1aと設置面との間に適量の浸水を導水することができるので、その浸水をポンプ3により自吸継続しながら設置面への密着力を保持することができる。その結果、凹凸のある設置面に対しての設置性や水密性を向上させて、浸水を効果的に防ぐことができる。また、外部から所定量の水を透過させるため、ポンプ3が空運転するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、設置力増強部材2は、設置面側に配置された第1設置力増強部材21と、第1設置力増強部材21より硬い材料により形成され、ウォーターフェンス本体部1側に配置された第2設置力増強部材22とを積層状に構成する。これにより、第1設置力増強部材21を、点字ブロックなどの設置面の凹凸に沿うように変形させることができるので、ウォーターフェンス100の設置性および水密性をより向上させることができる。また、第1設置力増強部材21より硬い第2設置力増強部材22を設けることにより、点字ブロックなどの設置面の凸部がウォーターフェンス本体部1に直接当たることに起因してウォーターフェンス本体部1が傾いて設置されるのを抑制することができる。これにより、吸水口部112が吸水面から離脱して空気中に配置されるのを抑制することができるので、ポンプ3が空運転するのを効果的に抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、設置力増強部材2を、ウォーターフェンス本体部1の自重と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧の吸引作用とにより、水の透過率が所定の値となる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部1の底面1aと設置面との間に外部からの水を所定量透過させてポンプ3の自吸水を確保するように構成する。これにより、設置力増強部材2を、ウォーターフェンス本体部1の自重と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧の吸引作用とにより弾性圧縮変形させて、水の透過率が所定の値となるように抑制することができる。その結果、設置力増強部材2を透過する水の量をポンプ3の呼び水として適度な水量としながら、設置力増強部材2を透過した水をポンプ3により排水することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、ウォーターフェンス本体部1を、複数に分割可能に構成する。これにより、ウォーターフェンス本体部1を分割して保管することができるので、保管場所の省スペース化を図ることができる。
また、第1実施形態では、第1部材11の底面部に、第2部材12側に突出する嵌合部115を設け、第2部材12の底面部に、第1部材11の嵌合部115が嵌合する嵌合部124を設ける。これにより、第1部材11および第2部材12を組み合わせてウォーターフェンス本体部1を組み立てる際に、X方向の端部を互いに当接させるとともに、嵌合部115および嵌合部124を嵌合させることができるので、底面部の高さを揃えて組み立てることができるとともに、第1部材11および第2部材12がY方向およびZ方向にずれることを防ぐことができる。その結果、組み立てたウォーターフェンス本体部1の底面に設置力増強部材2を容易に取り付けることができる。また、組み立て時に、第1部材11および第2部材12の向きを間違えるのを防止するとともに、精度よく位置決めを行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、ウォーターフェンス本体部1に、ペットボトル4を取り付け可能な重り取付部121を設けるこれにより、ペットボトル4をウォーターフェンス本体部1に容易に取り付けることができるので、ウォーターフェンス本体部1に加わる荷重を容易に増加させることができる。その結果、上記設置力増強部材2の弾性圧縮変形がより一層効果的に加えられると共に、ウォーターフェンス100が水により流されるのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、設置力増強部材2は、半連続気泡構造を有しており、圧縮変形されることにより水の透過率が変化するように構成する。これにより、設置力増強部材2が圧縮変形されることにより、水の透過率を抑制することができるので、設置力増強部材2を透過する水の量をポンプ3の呼び水として適度な水量となるように容易に抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、シート5をウォーターフェンス本体部1を覆うように設置することにより、ウォーターフェンス本体部1の背面に回りこむ水をせき止めながら、ポンプ3により排水を行うことが可能に構成する。これにより、ウォーターフェンス本体部1を水が回りこんで浸水するのを抑制することができるので、浸水をより効果的に防ぐことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、シート5をウォーターフェンス本体部1の背面側を高く覆うように設置することにより、ウォーターフェンス本体部1を越える急な増水に対しても、ウォーターフェンス本体部1の背面に回りこむ水をせき止めながら、ポンプ3により排水を行うことが可能に構成する。これにより、ウォーターフェンス本体部1を越える水位の水でもシート5により浸水を抑制することができる。また、急な増水に対してもウォーターフェンス本体部1の背面に回りこむ水をせき止めながら、ポンプ3により排水を行うことができるので、浸水を効果的に防ぐことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、吸水口部112を、周方向から吸水できるように端面部が凹凸形状を有するように形成する。これにより、吸水口部112が地面に接したとしても凹凸形状の端面部の周方向から吸水することができる。これにより、設置面とウォーターフェンス本体部1の底面1aとの間の水を確実に吸水することができる。
[第2実施形態]
次に、図14および図15を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、ウォーターフェンス本体部1が箱状に形成されていた上記第1実施形態とは異なり、ウォーターフェンス本体部210がマット状に形成されている例について説明する。
図14および図15に示すように、第2実施形態のウォーターフェンス200は、マット状に形成されている。ウォーターフェンス200は、特に建物の入口に配置されて比較的低い水位の浸水を防いだりするために用いられる。ウォーターフェンス200は、ウォーターフェンス本体部210と、設置力増強部材220とを備えている。また、ウォーターフェンス本体部210には、ポンプ3が接続されている。なお、ポンプ3は、特許請求の範囲の「吸水装置」および「ポンプ」の一例である。
ウォーターフェンス本体部210は、吸水装置取付部211(図14参照)と、吸水口部212(図15参照)とを含んでいる。設置力増強部材220は、第1設置力増強部材221と、第2設置力増強部材222とを含んでいる。
ウォーターフェンス本体部210は、水平面(XY平面)上に延びるマット状に形成されている。また、ウォーターフェンス本体部210は、水を透過させない素材により形成されている。ウォーターフェンス本体部210は、たとえば、ゴムや樹脂或いは金属や防水加工された繊維素材などにより形成されている。吸水装置取付部211は、ウォーターフェンス本体部210の底面210a側(Z2方向側)に設けられた吸水口部212(図15参照)と連通している。つまり、ウォーターフェンス本体部210の底面210aと設置面との間の水が、ポンプ3により吸水口部212および吸水装置取付部211を介して吸水される。
また、吸水装置取付部211は、ウォーターフェンス本体部210の端部近傍に設けられている。これにより、マット状のウォーターフェンス本体部210の上を人が通る場合でも、吸水装置取付部211およびポンプ3に接続されるホースが邪魔になるのを抑制することができる。その結果、人がマット状のウォーターフェンス本体部210上を踏んで通ることが可能となる。
ウォーターフェンス本体部210の底面210aには、溝部が設けられている。ウォーターフェンス本体部210の溝部には、設置力増強部材220が嵌り込むように配置される。
ここで、第2実施形態では、設置力増強部材220は、ウォーターフェンス本体部210の底面210aに配置され、ウォーターフェンス本体部210の設置面への設置性を向上させるように構成されている。つまり、ウォーターフェンス本体部210の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧の吸引作用とによって、設置力増強部材220は、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部210の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成されている。
設置力増強部材220は、第1設置力増強部材221と、第2設置力増強部材222とが積層されている。第1設置力増強部材221は、設置面側(Z2方向側)に配置されている。第2設置力増強部材222は、ウォーターフェンス本体部210側に配置されている。第1設置力増強部材221および第2設置力増強部材222は、接着層(接着剤や接着テープなど)を介して貼り合わされている。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、ウォーターフェンス本体部210の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することによって生じる負圧の吸引作用とによって、設置力増強部材220が、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部210の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成する。これにより、外部から設置面とウォーターフェンス本体部210の底面210aとの間に侵入する水を適量に抑制しつつポンプ3の自吸水を確保することができるので、ポンプ3を駆動させることにより、設置力増強部材220が適量の浸水を通過させることができる。これにより、ウォーターフェンス本体部210の底面210aと設置面との間に適量の浸水を導水することができるので、その浸水をポンプ3により自吸継続しながら設置面への密着力を保持することができる。その結果、凹凸のある設置面に対しての設置性や水密性を向上させて、浸水を効果的に防ぐことができる。また、外部から所定量の水を透過させるため、ポンプ3が空運転するのを抑制することができる。
また、第2実施形態では、ウォーターフェンス本体部210をマット状に形成することにより、ウォーターフェンス200の不使用時は、ウォーターフェンス本体部210を巻いてコンパクトにして収納することができる。また、浸水の恐れがない場合でも、ウォーターフェンス200の設置を継続しても邪魔になることがないので、ウォーターフェンス200を常設することにより、急に水が来た場合でも浸水を防ぐことができる。また、ウォーターフェンス本体部210の高さを小さくすることができるので、空間が限られる室内においても邪魔になることがなく使用することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
次に、図16および図17を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、ウォーターフェンス本体部1が直線状に形成されていた上記第1実施形態とは異なり、ウォーターフェンス本体部310が折り曲げ可能に構成されている例について説明する。
図16および図17に示すように、第3実施形態のウォーターフェンス300は、折り曲げ可能に構成されている。また、ウォーターフェンス200は、建物の入口に配置されて浸水を防いだりするために用いられる。また、ウォーターフェンス300は、ウォーターフェンス本体部310と、設置力増強部材320とを備えている。ウォーターフェンス本体部310には、ポンプ3が接続されている。なお、ポンプ3は、特許請求の範囲の「吸水装置」および「ポンプ」の一例である。
ウォーターフェンス本体部310は、吸水装置取付部311を含んでいる。設置力増強部材320は、第1設置力増強部材321と、第2設置力増強部材322とを含んでいる。
ウォーターフェンス本体部310は、Z方向の軸を中心に途中で折り曲げ可能に構成されている。また、ウォーターフェンス本体部310は、水を透過させない素材により形成されている。ウォーターフェンス本体部310は、たとえば、ゴムや樹脂或いは金属や防水加工された繊維素材により形成されている。吸水装置取付部311は、ウォーターフェンス本体部310の底面310a側(Z2方向側)に設けられた吸水口部と連通している。つまり、ウォーターフェンス本体部310の底面310aと設置面との間の水が、ポンプ3により吸水装置取付部311を介して吸水される。吸水装置取付部311は、複数設けられている。これにより、折り曲げられた各部分において、底面310aと設置面との間の水を吸水することが可能である。
図17に示すように、ウォーターフェンス300は、ウォーターフェンス本体部310が折り曲げられて建物入口を外側から囲むように配置される。また、ウォーターフェンス本体部310よりも高さが大きい板330が、ウォーターフェンス本体部310を外側から囲むように配置される。
ウォーターフェンス本体部310の底面310aには、溝部が設けられている。ウォーターフェンス本体部310の溝部には、設置力増強部材320が嵌り込むように配置される。
ここで、第3実施形態では、設置力増強部材320は、ウォーターフェンス本体部310の底面310aに配置され、ウォーターフェンス本体部310の設置面への設置性を向上させるように構成されている。つまり、ウォーターフェンス本体部310の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することによって生じる負圧の吸引作用とによって、設置力増強部材320は、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部310の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成されている。
設置力増強部材320は、第1設置力増強部材321と、第2設置力増強部材322とが積層されている。第1設置力増強部材321は、設置面側(Z2方向側)に配置されている。第2設置力増強部材322は、ウォーターフェンス本体部310側に配置されている。第1設置力増強部材321および第2設置力増強部材322は、接着層(接着剤や接着テープなど)を介して貼り合わされている。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記第1実施形態と同様に、ウォーターフェンス本体部310の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することによって生じる負圧の吸引作用とによって、設置力増強部材320が、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させる抑制作用により、ウォーターフェンス本体部310の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成する。これにより、外部から設置面とウォーターフェンス本体部310の底面310aとの間に侵入する水を適量に抑制しつつポンプ3の自吸水を確保することができるので、ポンプ3を駆動させることにより、設置力増強部材320が適量の浸水を通過させることができる。これにより、ウォーターフェンス本体部310の底面310aと設置面との間に適量の浸水を導水することができるので、その浸水をポンプ3により自吸継続しながら設置面への密着力を保持することができる。その結果、凹凸のある設置面に対しての設置性や水密性を向上させて、浸水を効果的に防ぐことができる。また、外部から所定量の水を透過させるため、ポンプ3が空運転するのを抑制することができる。
また、第3実施形態では、ウォーターフェンス本体部310を折り曲げ可能に構成することによって、扉を含めた建物の浸水防止対象幅(X方向)などの浸水防止対象の実態形態に即した形状の設置が容易に行えると共に、直線的設置と比べて設置吸引面積を大きく構成することで、より一層水の背面への回り込みを抑制することができるので、浸水をより効果的に防ぐことができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、図18〜図21に示す変形例によるウォーターフェンス400のように、第2部材14(ウォーターフェンス本体部)に、箱型形状の長手方向と直交する方向(Y方向)に延びて箱型形状の内部を仕切る仕切り部141を設けてもよい。この場合、第2部材14(ウォーターフェンス本体部)を、仕切り部141において切断可能に構成してもよい。具体的には、図18に示すように、仕切り部141は、第2部材14の長手方向(X方向)の中間位置に配置されている。仕切り部141の外側には、連結部123が形成されている。また、図19に示すように、仕切り部141に対応する底面部には、嵌合部124が形成されている。つまり、第2部材14を、図18および図19に示す140−140線に沿って切断することにより、図20に示すように、第2部材14の略半分の長手方向(X方向)の長さを有する第2部材14aおよび14bが生成される。図21に示すように、第1部材11と、第2部材14と、第2部材14aとを組み合わせることにより、切断前の第2部材14を用いた場合よりも長手方向(X方向)が短い状態のウォーターフェンス400が組み立てられる。これにより、第2部材14(ウォーターフェンス本体部)を切断することによって、ウォーターフェンス400の長さを調節することができるので、ウォーターフェンス400の形状を設置場所により適した形状にすることができる。
また、上記第1実施形態では、ウォーターフェンス本体部が直線的に形成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ウォーターフェンス本体部が折れ曲がるように形成されていてもよい。たとえば、図22に示す変形例によるウォーターフェンス500のように、直線状の第2部材12と、折れ曲がる継手部分としての第1部材11aとを連結してウォーターフェンス本体部501を形成してもよい。
また、上記第1実施形態では、重り部材としてペットボトルを用いた例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ペットボトル以外の部材を重り部材として用いてもよい。たとえば、バーベルや石などを重り部材として用いてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、設置力増強部材が、第1設置力増強部材および第2設置力増強部材の2層により形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、設置力増強部材を1層により形成してもよいし、3層以上により形成してもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、吸水装置として自吸式のポンプを用いる例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、自吸式に限らず、吸水機能を有するポンプであれば特に限定されない。また、真空ポンプや掃除機などの真空吸引方式の吸引装置を用いてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、ウォーターフェンスのみにより浸水を防ぐ例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ウォーターフェンスに加えて、土嚢や水嚢を周辺に配置して、浸水を防いでもよい。これにより、押し寄せる水の量が多い場合でも、ウォーターフェンスの周囲に土嚢や水嚢を設置することによって、ウォーターフェンスの背面から回り込もうとする水をせき止めるとともに、回り込もうとする水をウォーターフェンスの側面側の設置力増強部材から吸引することができる。
また、上記第1実施形態では、ウォーターフェンス本体部の第1部材と第2部材とを連結部材により係合させて連結する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ウォーターフェンス本体部の第1部材と第2部材とをボルトにより締結して連結してもよい。
また、上記第1実施形態では、吸水装置取付部111を片側のみにポンプ3が連結されるようにL字状に構成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、吸水装置取付部111をT字状に構成して、Y1方向、Y2方向のいずれからでもポンプを連結可能に構成してもよい。なお、T字状に構成した吸水装置取付部111のポンプを連結しない側はバルブ等で閉じておくことが望ましい。また、吸水装置取付部111をT字状に構成することで、2台のポンプを同時に連結可能に構成することが可能である。
また、上記第1実施形態では、ウォーターフェンス本体部の第1部材に突出する凸状の嵌合部を設け、第2部材に第1部材の突出する嵌合部が嵌合する凹状の嵌合部を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1部材および第2部材の両方に凸状の嵌合部と凹状の嵌合部とを半分ずつ設けてもよいし、第1部材に凹状の嵌合部を設けて、第2部材に凸状の嵌合部を設けてもよい。また、第1部材および第2部材に嵌合部を設けなくてもよい。
また、上記第1実施形態では、ウォーターフェンス本体部の第1部材および第2部材の底面に嵌合部を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1部材および第2部材の接合面の全周に嵌合部を設けてもよく、このように構成することで、第1部材および第2部材のY方向およびZ方向のずれを防ぐだけではなく、X方向も含めたずれを防ぐことができるように構成することができる。