図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。
(第1実施形態)
先ず、図1に基づき、本実施形態に係る燃料噴射制御装置の概略構成を説明する。本実施形態の燃料噴射制御装置は、エンジンECU(Electronic Control Unit)として構成されている。以下においては、エンジンECUとしての機能のうち、インジェクタの駆動を制御する機能について説明する。
図1に示す燃料噴射制御装置10は、車両において、たとえばエンジンコンパートメントに配置されており、3気筒直噴型エンジン(内燃機関)の各気筒に設けられたインジェクタINJ1,INJ2,INJ3の駆動(開閉)を制御する。本実施形態では、ディーゼルエンジンの各気筒に設けられたインジェクタINJ1,INJ2,INJ3の駆動を制御する。
インジェクタINJ1,INJ2,INJ3は、それぞれソレノイドL1,L2,L3を有している。インジェクタINJ1,INJ2,INJ3が燃料噴射弁に相当し、ソレノイドL1,L2,L3は電磁負荷に相当する。また、ソレノイドL1が第1電磁負荷、ソレノイドL2が第2電磁負荷、ソレノイドL3が第3電磁負荷に相当する。ソレノイドL1,L2,L3はコイルとも称される。インジェクタINJ1及びソレノイドL1は第1気筒に設けられており、インジェクタINJ2及びソレノイドL2は第2気筒に設けられている。インジェクタINJ3及びソレノイドL3は第3気筒に設けられている。
インジェクタINJ1,INJ2,INJ3は、対応するソレノイドL1,L2,L3の通電時にはソレノイドL1,L2,L3が生じる電磁力によって開放され、燃料を噴射するようになっている。また、ソレノイドL1,L2,L3への非通電時には、インジェクタINJ1,INJ2,INJ3に設けられた図示しないバネの付勢力により閉鎖されるようになっている。ソレノイドL1,L2,L3の上流端子は燃料噴射制御装置10の出力端子P1に接続され、下流端子は出力端子P2に接続されている。出力端子P1は上流端子とも称され、出力端子P2は下流端子とも称される。なお、出力端子P11,P21がソレノイドL1に接続され、出力端子P12,P22がソレノイドL2に接続されている。また、出力端子P13,P23がソレノイドL3に接続されている。
燃料噴射制御装置10は、コンデンサC1と、充電回路部20と、ハイサイド回路部COMと、ローサイドスイッチQ4と、電流検出用の抵抗R2と、選択スイッチQ5と、制御部30と、を備えている。
コンデンサC1は、電解コンデンサである。コンデンサC1は、開弁駆動時に各ソレノイドL1,L2,L3に印加するエネルギを蓄える。コンデンサC1は昇圧電源とも称される。
充電回路部20は、直流電圧であるバッテリ電圧VBを昇圧して、コンデンサC1を充電する回路である。充電回路部20は、コンデンサC1とともに昇圧回路を構成する。充電回路部20は、インダクタL4と、充電スイッチQ1と、抵抗R1と、ダイオードD1と、を有している。インダクタL4は、コイルとも称される。
燃料噴射制御装置10の電源端子P3にはバッテリ電圧VBが供給される。電源端子P3には、電源ライン21が接続されている。インダクタL4の一端は電源ライン21に接続されており、インダクタL4の他端には、充電スイッチQ1が接続されている。本実施形態では、充電スイッチQ1としてnチャネル型のMOSFETを採用している。充電スイッチQ1のドレインがインダクタL4に接続され、ソースが抵抗R1を介してグランドに接続されている。
インダクタL4と充電スイッチQ1との接続点には、逆流阻止用のダイオードD1のアノードが接続されている。充電スイッチQ1と抵抗R1との接続点とダイオードD1のカソードとの間には、コンデンサC1が配置されている。コンデンサC1の正極がダイオードD1のカソードに接続され、負極が充電スイッチQ1と抵抗R1との接続点に接続されている。
ハイサイド回路部COMは、対応するソレノイドL1,L2,L3の上流側に配置され、オンすることで対応するソレノイドL1,L2,L3に電力を供給するスイッチを備えた回路である。ハイサイド回路部COMは、ソレノイドL1,L2に対して電力を供給可能な第1ハイサイド回路部COM1と、ソレノイドL2,L3に対して電力を供給可能な第2ハイサイド回路部COM2と、を有している。このように、第1ハイサイド回路部COM1は、ソレノイドL1,l2に共通の回路であり、第2ハイサイド回路部COM2は、ソレノイドL2,L3に共通の回路である。したがって、ハイサイド回路部COMは、コモン回路とも称される。
ハイサイド回路部COMは、放電スイッチQ2a,Q2bと、定電流スイッチQ3a,Q3bと、を有している。第1ハイサイド回路部COM1が放電スイッチQ2aと定電流スイッチQ3aを有し、第2ハイサイド回路部COM2が放電スイッチQ2bと定電流スイッチQ3bを有している。
放電スイッチQ2aは、ソレノイドL1,L2の上流端子、すなわち出力端子P11,P12とコンデンサC1との間に配置され、オンすることで、コンデンサC1に蓄積されたエネルギ(バッテリ電圧VBを昇圧してなる充電電圧)を、出力端子P11,P12を介してソレノイドL1,L2に放電させるスイッチである。放電スイッチQ2bは、ソレノイドL2,L3の上流端子、すなわち出力端子P12,P13とコンデンサC1との間に配置され、オンすることで、コンデンサC1に蓄積されたエネルギ(充電電圧)を、出力端子P12,P13を介してソレノイドL2,L3に放電させるスイッチである。本実施形態では、放電スイッチQ2a,Q2bとして、pチャネル型のMOSFETを採用している。放電スイッチQ2a,Q2bのソースは、ダイオードD1とコンデンサC1との接続点、すなわちコンデンサC1の正極に接続されている。
定電流スイッチQ3aは、ソレノイドL1,L2の上流端子、すなわち出力端子P11,P12に対して上流側に配置され、オンすることで、出力端子P11,P12を介してソレノイドL1,L2にバッテリ電圧VBを供給するスイッチである。定電流スイッチQ3bは、ソレノイドL2,L3の上流端子、すなわち出力端子P12,P13に対して上流側に配置され、オンすることで、出力端子P12,P13を介してソレノイドL2,L3にバッテリ電圧VBを供給するスイッチである。本実施形態では、定電流スイッチQ3a,Q3bとして、pチャネル型のMOSFETを採用している。定電流スイッチQ3a,Q3bのソースは電源ライン21に接続されている。
さらに、第1ハイサイド回路部COM1はダイオードD2a,D3aを有し、第2ハイサイド回路部COM2はダイオードD2b,D3bを有している。ダイオードD2a,D2bのアノードは、対応する定電流スイッチQ3a,Q3bのドレインに接続され、カソードは対応する放電スイッチQ2a,Q2bのドレインに接続されている。ダイオードD2aと放電スイッチQ2aの接続点とグランドとの間には、還流用のダイオードD3aがアノードをグランド側にして配置されている。同じく、ダイオードD2bと放電スイッチQ2bの接続点とグランドとの間には、還流用のダイオードD3bがアノードをグランド側にして配置されている。
ローサイドスイッチQ4は、対応するソレノイドL1,L2,L3の下流側に配置され、オンすることで対応するソレノイドL1,L2,L3の下流端子をグランドに接続する。ローサイドスイッチQ4がオンすることで、対応するソレノイドL1,L2,L3に電流が流れるため、駆動スイッチとも称される。また、ソレノイドL1,L2,L3ごとに設けられるため、気筒選択スイッチとも称される。
ローサイドスイッチQ4は、ソレノイドL1の下流側に配置された第1ローサイドスイッチQ41と、ソレノイドL2の下流側に配置された第2ローサイドスイッチQ42と、ソレノイドL3の下流側に配置された第3ローサイドスイッチQ43と、を有している。本実施形態では、ローサイドスイッチQ4(Q41,Q42,Q43)として、nチャネル型のMOSFETを採用している。ローサイドスイッチQ4のソースは、対応する電流検出用の抵抗R2を介してグランドに接続されている。一方、ドレインは、対応する出力端子P2を介して、対応するソレノイドL1,L2,L3の下流端子に接続されている。
抵抗R2は、対応するローサイドスイッチQ4に直列に接続されており、ローサイドスイッチQ4がオンしているときに、対応するソレノイドL1,L2,L3に流れる電流を検出するための抵抗である。抵抗R2は、抵抗R21と、抵抗R22と、抵抗R23と、を有している。抵抗R2(R21,R22,R23)が、電流検出抵抗に相当する。第1ローサイドスイッチQ41のソースは、抵抗R21を介してグランドに接続され、ドレインは、出力端子P21を介してソレノイドL1の下流側に接続されている。第2ローサイドスイッチQ42のソースは、抵抗R22を介してグランドに接続され、ドレインは、出力端子P22を介してソレノイドL2の下流側に接続されている。第3ローサイドスイッチQ43のソースは、抵抗R23を介してグランドに接続され、ドレインは、出力端子P23を介してソレノイドL3の下流側に接続されている。
ローサイドスイッチQ4のゲートには、制御部30の出力ポートP4から制御信号が入力される。制御部30は、ローサイドスイッチQ4に対する出力ポートP4として、第1出力ポートP41と、第2出力ポートP42aと、第3出力ポートP42bと、第4出力ポートP43と、を有している。第1出力ポートP41から出力された制御信号が、第1ローサイドスイッチQ41のゲートに入力される。第2出力ポートP42aから出力された制御信号が、第2ローサイドスイッチQ42のゲートに入力される。第3出力ポートP42bから出力された制御信号が、第2ローサイドスイッチQ42のゲートに入力される。第4出力ポートP43から出力された制御信号が、第3ローサイドスイッチQ43のゲートに入力される。このように、第2ローサイドスイッチQ42には、第2出力ポートP42a及び第3出力ポート42bから制御信号の入力が可能となっている。
なお、第2出力ポートP42aと第2ローサイドスイッチQ42のゲートとの間には、アノードを第2出力ポートP42a側として逆流阻止用のダイオードD4aが設けられている。また、第3出力ポートP42bと第2ローサイドスイッチQ42のゲートとの間には、アノードを第3出力ポートP42b側として逆流阻止用のダイオードD4bが設けられている。
選択スイッチQ5は、ハイサイド回路部COMと対応するソレノイドL1,L2,L3の上流端子(すなわち出力端子P1)との通電経路に設けられ、ハイサイド回路部COMから供給される電力を印加する対象を選択する。選択スイッチQ5は、第1選択スイッチQ51と、第2選択スイッチQ52aと、第3選択スイッチQ52bと、第4選択スイッチQ53と、を有している。
第1選択スイッチQ51は、第1ハイサイド回路部COM1とソレノイドL1の上流端子(出力端子P11)との通電経路に設けられている。このため、第1選択スイッチQ51がオンすると、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL1に電力が供給可能となる。第2選択スイッチQ52aは、第1ハイサイド回路部COM1とソレノイドL2の上流端子(出力端子P12)との通電経路に設けられている。このため、第2選択スイッチQ52aがオンすると、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL2に電力が供給可能となる。
第3選択スイッチQ52bは、第2ハイサイド回路部COM2とソレノイドL2の上流端子(出力端子P12)との通電経路に設けられている。このため、第3選択スイッチQ52bがオンすると、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL2に電力が供給可能となる。第4選択スイッチQ53は、第2ハイサイド回路部COM2とソレノイドL3の上流端子(出力端子P13)との通電経路に設けられている。このため、第4選択スイッチQ53がオンすると、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL3に電力が供給可能となる。
本実施形態では、第1出力端子P1から出力される制御信号が第1選択スイッチQ51のゲートに入力され、第2出力端子P2から出力される制御信号が第2選択スイッチQ52aのゲートに入力される。また、第3出力ポートP42bから出力される制御信号が第3選択スイッチQ52bに入力され、第4出力ポートP43から出力される制御信号が第4選択スイッチQ53に入力される。このため、第1ローサイドスイッチQ41のオンオフに同期して第1選択スイッチQ51がオンオフされる。また、第2出力ポートP42aからの出力による第2ローサイドスイッチQ42のオンオフに同期して第2選択スイッチQ52aがオンオフされる。第3出力ポートP42bからの出力による第2ローサイドスイッチQ42のオンオフに同期して第3選択スイッチQ52bがオンオフされる。第3ローサイドスイッチQ43のオンオフに同期して第4選択スイッチQ53がオンオフされる。
制御部30は、充電回路部20の駆動、すなわち充電スイッチQ1のオンオフを制御する。また、制御部30は、ハイサイド回路部COMが備えるスイッチ、すなわち放電スイッチQ2a,Q2bのオンオフ、及び、定電流スイッチQ3a,Q3bのオンオフを制御する。また、制御部30は、ローサイドスイッチQ4(Q41,Q42,Q43)のオンオフ、及び、選択スイッチQ5(Q51,Q52a,Q52b,Q53)のオンオフを制御する。
制御部30が提供する手段及び/又は機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。たとえば制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。
本実施形態の燃料噴射制御装置10は、上記したようにエンジンECUとして構成されている。そして、制御部30が、図示しないマイコン及び制御ICにより構成されている。
制御部30は、コンデンサC1の正極側の電圧、すなわちコンデンサC1の充電電圧を取得する。充電電圧は、たとえば図示しない抵抗により分圧されて、制御部30に入力される。制御部30は、充電電圧が所定の閾値電圧以下になると、充電回路部20を駆動、具体的には充電スイッチQ1を繰り返しオンオフさせることで、充電電圧が目標電圧(たとえば満充電電圧)となるようにコンデンサC1を充電させる。充電スイッチQ1をオンさせると、インダクタL4及び充電スイッチQ1を通じて抵抗R1に電流(充電電流)が流れる。充電スイッチQ1をオフさせると、インダクタL4に蓄積されたエネルギが、ダイオードD1を通じてコンデンサC1に移り、充電電圧は上昇する。このとき、抵抗R1に充電電流が流れる。制御部30は、噴射のためにコンデンサC1から放電が行われた後、次の放電が開始されるまでの間に、コンデンサC1を充電させる。
制御部30のマイコンは、エンジン回転数、アクセル開度、エンジン水温など、各種センサにて検出されるエンジンの運転情報に基づいて、気筒ごとの噴射指令信号を生成し、制御ICに出力する。マイコンは、開弁を指示する期間において、噴射指令信号として電圧レベルがHレベルの信号を出力し、閉弁を指示する期間において噴射指令信号としてLレベルの信号を出力する。
制御ICは、取得した噴射指令信号及び抵抗R2(R21,R22,R23)により取得した電流(駆動電流)に基づき、各スイッチQ2a,Q2b,Q3a,Q3b,Q4,Q5のオンオフを制御して、対応するインジェクタINJ1,INJ2,INJ3を開弁させる。すなわち、燃料噴射を制御する。
制御部30は、インジェクタINJ1,INJ2,INJ3ごとに、エンジンの1燃焼サイクル中における噴射回数を制御する機能を有している。ここで、1燃焼サイクルとは、エンジンの燃焼サイクルの1周期(吸入行程−圧縮行程−膨張行程−排気行程)、すなわち1燃焼行程を示す。制御部30は、1度の燃焼サイクル中に燃料を複数回に分けて所定の時間間隔で噴射、すなわち多段噴射するよう制御する。多段噴射は、マルチ噴射とも称される。
本実施形態では、制御部30が、インジェクタINJ1,INJ2,INJ3ごとに、エンジンの1燃焼サイクル中における噴射回数を5回とする。この5段噴射のうち、2段がプレ噴射、1段がメイン噴射、2段がアフター噴射である。プレ噴射は、メイン噴射の前の噴射である。プレ噴射により、メイン噴射の前に火種をつくり、たとえばNOxや燃焼騒音を低減することができる。アフター噴射は、メイン噴射の後の噴射である。アフター噴射により、燃え残った燃料を完全燃焼させ、PMを低減することができる。
制御部30は、5段噴射の各段において、ピーク電流制御及び定電流制御をそれぞれ実行する。その際、インジェクタINJ1については、第1ハイサイド回路部COM1から電力を供給させる。インジェクタINJ3については、第2ハイサイド回路部C0M2から電力を供給させる。インジェクタINJ2については、5段噴射の途中で、電力供給元を、第1ハイサイド回路部COM1から第2ハイサイド回路部COM2に切り替える。制御部30は、第2選択スイッチQ52aのオン期間と、第3選択スイッチQ52bのオン期間とが重ならないように制御する。すなわち、インジェクタINJ2に対する第1ハイサイド回路部COM1からの電力供給タイミングと、インジェクタINJ2に対する第2ハイサイド回路部C0M2からの電力供給タイミングが重ならないように、制御部30が、第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bのオンオフを制御する。
制御部30は、3気筒のうちの2気筒へ同時期に燃料を噴射させるオーバーラップ噴射制御の機能も有している。オーバーラップ噴射は、多重噴射とも称される。本実施形態では、後述するように、インジェクタINJ1のアフター噴射とインジェクタINJ2のプレ噴射がオーバーラップし、インジェクタINJ2のアフター噴射とインジェクタINJ3のプレ噴射がオーバーラップするように、噴射タイミングを制御する。
次に、図2に基づき、制御部30が実行する燃料噴射制御処理について説明する。
先ず、インジェクタINJ1について説明する。制御部30は、インジェクタINJ1に対する5段噴射の各段において、ピーク電流制御及び定電流制御をそれぞれ実行する。図2に示す時刻t1において、インジェクタINJ1に対する噴射指令信号がHレベルになると、Hレベルの期間の初期、すなわちソレノイドL1の駆動期間の初期において、制御部30はインジェクタINJ1に対してピーク電流制御を実行する。制御部30は、第1ハイサイド回路部COM1の放電スイッチQ2a、第1ローサイドスイッチQ41、第1選択スイッチQ51をオンさせる。このとき、第2選択スイッチQ52aについてはオフさせておく。本実施形態では、第1出力ポート41からの制御信号により、第1ローサイドスイッチQ41及び第1選択スイッチQ51が同じ期間においてオンする。
放電スイッチQ2aがオンされる期間であるピーク電流制御期間では、コンデンサC1からソレノイドL1に電圧が印加され、その放電エネルギにより、ソレノイドL1に流れる駆動電流が急激に立ち上がってインジェクタINJ1が開弁する。なお、ピーク電流制御期間において定電流スイッチQ3aをオンさせてもよい。これにより、放電スイッチQ2aなどの故障によってコンデンサC1の充電電圧がソレノイドL1に供給できなくなっても、インジェクタINJ1を開弁させることが可能となる。
駆動電流が所定のピーク電流値に達すると、制御部30は、放電スイッチQ2aをオフさせる。これにより、ピーク電流制御期間が終了となる。ピーク電流制御期間において定電流スイッチQ3aをオンさせる場合、あわせて定電流スイッチQ3aもオフさせる。第1ローサイドスイッチQ41については、継続してオンさせておく。
ピーク電流制御期間が終了してから駆動期間が終了するまでの定電流制御期間において、制御部30は、定電流制御を実行する。制御部30は、抵抗R21により検出される駆動電流が、所定の下限電流値まで低下すると、定電流スイッチQ3aをオンさせる。定電流スイッチQ3aをオンさせると、駆動電流は上昇する。駆動電流が所定の上限電流値まで上昇すると、定電流スイッチQ3aをオフさせる。これにより、駆動電流が低下する。上限電流値は、ピーク電流値よりも小さい値が設定されている。
このように、制御部30は、抵抗R21により検出される駆動電流が下限電流値以上、上限電流値以下となるように、定電流スイッチQ3aのオンオフを制御する。これにより定電流制御期間では、駆動電流として、ピーク電流値よりも小さい所定の保持電流、すなわちほぼ一定の電流が、ソレノイドL1に通電される。これにより、インジェクタINJ1の開弁状態が保持される。噴射指令信号がLレベルになると、制御部30は、定電流スイッチQ3a、第1ローサイドスイッチQ41、及び第1選択スイッチQ51をオフさせ、所定段におけるインジェクタINJ1の開弁処理を終了する。なお、定電流制御期間において、定電流スイッチQ3aをオンさせておき、第1ローサイドスイッチQ41をオンオフさせることで、一定電流に保持することもできる。この場合、第1ローサイドスイッチQ41のオンオフに同期して、第1選択スイッチQ51がオンオフすることとなる。
上記したように、第1ハイサイド回路部COM1からの出力信号により、インジェクタINJ1は開弁される。図2では、放電スイッチQ2aのオンによる出力信号と、定電流スイッチQ3aのオンによる出力信号とを、まとめてCOM1出力信号と示している。なお、図2に示すように、制御部30は、メイン噴射において、定電流制御期間を、他の噴射(プレ噴射及びアフター噴射)の定電流期間の約2倍の時間としている。これにより、メイン噴射での燃料噴射量を確保することができる。なお、他のインジェクタINJ2,INJ3のメイン噴射でも同様である。図2に示す時刻t2は、インジェクタINJ1のアフター噴射の開始タイミングであり、時刻t3は、一燃焼サイクルでのインジェクタINJ1の噴射終了タイミングである。
次に、インジェクタINJ2について説明する。時刻t2になると、制御部30は、インジェクタINJ2のプレ噴射を実行する。すなわち、時刻t2〜t3の期間において、インジェクタINJ1の2段のアフター噴射と同時期に、インジェクタINJ2の2段のプレ噴射を実行する。制御部30は、プレ噴射の実行後、すなわち時刻t3の後に、インジェクタINJ2のメイン噴射を実行する。そして、時刻t4になると、制御部30は、インジェクタINJ2のアフター噴射を実行し、時刻t5で、一燃焼サイクルでのインジェクタINJ2の噴射が終了となる。
上記したように、時刻t2〜t3において、インジェクタINJ1に第1ハイサイド回路部COM1から電力が供給されているため、インジェクタINJ2のプレ噴射は、第2ハイサイド回路部COM2からの電力供給によりなされる。また、図2に示す例では、続くメイン噴射も、第2ハイサイド回路部COM2からの電力供給によりなされる。
制御部30は、インジェクタINJ2に対する2段のプレ噴射及び1段のメイン噴射の各段において、ピーク電流制御及び定電流制御をそれぞれ実行する。制御部30は、時刻t2において、インジェクタINJ2に対する噴射指令信号がHレベルになると、ソレノイドL2の駆動期間の初期において、ピーク電流制御を実行する。制御部30は、第2ハイサイド回路部COM2の放電スイッチQ2b、第2ローサイドスイッチQ42、第3選択スイッチQ52bをオンさせる。このとき、第2選択スイッチQ52a及び第4選択スイッチQ53についてはオフさせておく。本実施形態では、第3出力ポート42bからの制御信号により、第2ローサイドスイッチQ42及び第3選択スイッチQ52bが同じ期間においてオンする。駆動電流が所定のピーク電流値に達すると、制御部30は、放電スイッチQ2bをオフさせる。これにより、ピーク電流制御期間が終了となる。
ピーク電流制御期間が終了してから駆動期間が終了するまでの定電流制御期間において、制御部30は、定電流制御を実行する。制御部30は、抵抗R22により検出される駆動電流が下限電流値以上、上限電流値以下となるように、定電流スイッチQ3bのオンオフを制御する。これにより、定電流制御期間では、インジェクタINJ2の開弁状態が保持される。噴射指令信号がLレベルになると、制御部30は、定電流スイッチQ3b、第2ローサイドスイッチQ42、及び第3選択スイッチQ52bをオフさせ、インジェクタINJ2の開弁処理を終了する。この定電流制御期間において、定電流スイッチQ3bをオンさせておき、第2ローサイドスイッチQ42をオンオフさせることで、一定電流に保持することもできる。この場合、第2ローサイドスイッチQ42に同期して、第3選択スイッチQ52bがオンオフすることとなる。
このように、インジェクタINJ2のプレ噴射及びメイン噴射において、第2ハイサイド回路部COM2からの出力信号により、インジェクタINJ2は開弁される。図2では、放電スイッチQ2bのオンによる出力信号と、定電流スイッチQ3bのオンによる出力信号とを、まとめてCOM2出力信号と示している。
一方、インジェクタINJ2のアフター噴射は、第1ハイサイド回路部COM1から電力供給によりなされる。制御部30は、ソレノイドL2の駆動期間の初期において、ピーク電流制御を実行する。制御部30は、第1ハイサイド回路部COM1の放電スイッチQ2a、第2ローサイドスイッチQ42、第2選択スイッチQ52aをオンさせる。このとき、第3選択スイッチQ52b及び第1選択スイッチQ51についてはオフさせておく。本実施形態では、第2出力ポート42aからの制御信号により、第2ローサイドスイッチQ42及び第2選択スイッチQ52aが同じ期間においてオンする。駆動電流が所定のピーク電流値に達すると、制御部30は、放電スイッチQ2aをオフさせる。これにより、ピーク電流制御期間が終了となる。
ピーク電流制御期間が終了してから駆動期間が終了するまでの定電流制御期間において、制御部30は、定電流制御を実行する。制御部30は、抵抗R22により検出される駆動電流が下限電流値以上、上限電流値以下となるように、定電流スイッチQ3aのオンオフを制御する。これにより、定電流制御期間では、インジェクタINJ2の開弁状態が保持される。噴射指令信号がLレベルになると、制御部30は、定電流スイッチQ3a、第2ローサイドスイッチQ42、及び第2選択スイッチQ52aをオフさせ、インジェクタINJ2の開弁処理を終了する。この定電流制御期間において、定電流スイッチQ3aをオンさせておき、第2ローサイドスイッチQ42をオンオフさせることで、一定電流に保持することもできる。この場合、第2ローサイドスイッチQ42に同期して、第2選択スイッチQ52aがオンオフすることとなる。
このように、インジェクタINJ2のアフター噴射において、第1ハイサイド回路部COM1からの出力信号により、インジェクタINJ2は開弁される。なお、図2では、メイン噴射を第2ハイサイド回路部COM2からの電力により行う例を示した。しかしながら、メイン噴射を第1ハイサイド回路部COM1からの電力により行うようにしてもよい。
次に、インジェクタINJ3について説明する。時刻t4になると、制御部30は、インジェクタINJ3のプレ噴射を実行する。すなわち、時刻t4〜t5の期間において、インジェクタINJ2の2段のアフター噴射と同時期に、インジェクタINJ3の2段のプレ噴射を実行する。制御部30は、プレ噴射の実行後、すなわち時刻t5の後に、インジェクタINJ3のメイン噴射を実行する。そして、メイン噴射後、制御部30は、インジェクタINJ2のアフター噴射を実行し、一燃焼サイクルでのインジェクタINJ3の噴射が終了となる。
制御部30は、時刻t4においてインジェクタINJ3に対する噴射指令信号がHレベルになると、ソレノイドL1の駆動期間の初期において、インジェクタINJ3に対してピーク電流制御を実行する。制御部30は、第2ハイサイド回路部COM2の放電スイッチQ2b、第3ローサイドスイッチQ43、第4選択スイッチQ53をオンさせる。このとき、第3選択スイッチQ52bについてはオフさせておく。本実施形態では、第3出力ポート43からの制御信号により、第3ローサイドスイッチQ43及び第4選択スイッチQ53が同じ期間においてオンする。駆動電流が所定のピーク電流値に達すると、制御部30は、放電スイッチQ2bをオフさせる。これにより、ピーク電流制御期間が終了となる。
ピーク電流制御期間が終了してから駆動期間が終了するまでの定電流制御期間において、制御部30は、定電流制御を実行する。制御部30は、抵抗R23により検出される駆動電流が下限電流値以上、上限電流値以下となるように、定電流スイッチQ3bのオンオフを制御する。これにより、定電流制御期間では、インジェクタINJ3の開弁状態が保持される。噴射指令信号がLレベルになると、制御部30は、定電流スイッチQ3b、第3ローサイドスイッチQ43、及び第4選択スイッチQ53をオフさせ、インジェクタINJ3の開弁処理を終了する。この定電流制御期間において、定電流スイッチQ3bをオンさせておき、第3ローサイドスイッチQ43をオンオフさせることで、一定電流に保持することもできる。この場合、第3ローサイドスイッチQ43に同期して、第4選択スイッチQ53がオンオフすることとなる。
このように、第2ハイサイド回路部COM2からの出力信号により、インジェクタINJ3は開弁される。
次に、上記した燃料噴射制御装置10の効果について説明する。
制御部30は、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL1に電力を供給させるタイミング、すなわちインジェクタINJ1の噴射タイミングにおいて、第1ローサイドスイッチQ41をオン、第2選択スイッチQ52aをオフさせるとともに、第1ローサイドスイッチQ41のオンタイミングに重なるように第1選択スイッチQ51をオンさせる。これにより、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL2には電力が供給されず、ソレノイドL1に電力が供給され、ソレノイドL1に駆動電流が流れてインジェクタINJ1が開弁する。
また、制御部30は、ソレノイドL1に電力を供給させるタイミングとは異なり、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL2に電力を供給させるタイミングにおいて、第2ローサイドスイッチQ42をオン、第1選択スイッチQ51をオフさせるとともに、第2ローサイドスイッチQ42のオンタイミングに重なるように第2選択スイッチQ52aをオンさせる。これにより、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL2に電力が供給され、ソレノイドL1には電力が供給されず、ソレノイドL2に駆動電流が流れてインジェクタINJ2が開弁する。
また、制御部30は、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL3に電力を供給させるタイミングにおいて、第3ローサイドスイッチQ43をオン、第3選択スイッチQ52bをオフさせるとともに、第3ローサイドスイッチQ43のオンタイミングに重なるように第4選択スイッチQ53をオンさせる。これにより、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL3に電力が供給され、ソレノイドL2には電力が供給されず、ソレノイドL3に駆動電流が流れてインジェクタINJ3が開弁する。
また、制御部30は、ソレノイドL3に電力を供給させるタイミングとは異なり、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL2に電力を供給させるタイミングにおいて、第2ローサイドスイッチQ42をオン、第4選択スイッチQ53をオフさせるとともに、第2ローサイドスイッチQ42のオンタイミングに重なるように第3選択スイッチQ52bをオンさせる。これにより、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL2に電力が供給され、ソレノイドL3に電力が供給されず、ソレノイドL2に駆動電流が流れてインジェクタINJ2が開弁する。
このように、エンジンの気筒数よりも少ない2つのハイサイド回路部COM(COM1,COM2)により、3気筒のインジェクタINJ1,INJ2,INJ3の燃料噴射が可能である。
また、第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bの切り替えにより、ソレノイドL2に対して、第1ハイサイド回路部COM1及び第2ハイサイド回路部COM2のいずれからも電力を供給することができる。換言すれば、第1ハイサイド回路部COM1からの電力の供給先は、ソレノイドL1,L2の2つあり、第2ハイサイド回路部COM2からの電力の供給先は、ソレノイドL2,L3の2つある。このため、燃料噴射の自由度を向上することができる。したがって、燃料噴射の自由度を向上することができる。
なお、第2選択スイッチQ52aのオン期間と、第3選択スイッチQ52bのオン期間とが重なるように、たとえばオン期間が同時期となるように、制御部30が第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bのオンオフを制御することもできる。たとえば、図2に示した時刻t3〜t4において、第1ハイサイド回路部COM1からもメイン噴射用の電力を出力し、第2選択スイッチQ52aをオンさせてもよい。しかしながら、第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bのオンオフのタイミングがわずかでもずれると、燃料噴射の精度が低下する。これに対し、本実施形態では、制御部30が、第2選択スイッチQ52aのオン期間と、第3選択スイッチQ52bのオン期間とが重ならないように制御する。これにより、2つのハイサイド回路部COM(COM1,COM2)からソレノイドL2に対して電力が供給されるタイミングが異なるため、燃料を精度よく噴射させることができる。
また、本実施形態では、第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bの切り替えにより、ソレノイドL2に対して、第1ハイサイド回路部COM1及び第2ハイサイド回路部COM2のいずれからも電力を供給できることを利用し、多段噴射の途中でソレノイドL2に電力を供給するハイサイド回路部COM(COM1,COM2)を切り替える。これにより、インジェクタINJ2のプレ噴射をインジェクタINJ1のアフター噴射とオーバーラップさせ、インジェクタINJ2のアフター噴射をインジェクタINJ3のプレ噴射とオーバーラップさせることができる。なお、インジェクタINJ2のプレ噴射及びアフター噴射の一方のみを、他のインジェクタINJ1,INJ3の噴射とオーバーラップさせることもできる。たとえば、インジェクタINJ2のプレ噴射及びアフター噴射のうち、インジェクタINJ2のプレ噴射のみをインジェクタINJ1のアフター噴射とオーバーラップさせてもよい。
また、本実施形態では、制御部30が、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL1に電力を供給させるタイミングにおいて、第1ローサイドスイッチQ41のオンオフに同期させて第1選択スイッチQ51をオンオフさせる。また、第1ハイサイド回路部COM1からソレノイドL2に電力を供給させるタイミングにおいて、第2ローサイドスイッチQ42のオンオフに同期させて第2選択スイッチQ52aをオンオフさせる。また、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL2に電力を供給させるタイミングにおいて、第2ローサイドスイッチQ42のオンオフに同期させて第3選択スイッチQ52bをオンオフさせる。さらには、第2ハイサイド回路部COM2からソレノイドL3に電力を供給させるタイミングにおいて、第3ローサイドスイッチQ43のオンオフに同期させて第4選択スイッチQ53をオンオフさせる。このように、互いに対応するローサイドスイッチQ4と選択スイッチQ5のオンオフ(オン期間)を同期させるため、制御部30の構成、ひいては燃料噴射制御装置10を簡素化することができる。
特に本実施形態では、同期の一例として、制御信号を出力する出力ポートP4が共通化されている。具体的には、第1出力ポートP41から出力される制御信号により、第1選択スイッチQ51及び第1ローサイドスイッチQ41のオンオフがともに制御される。また、第2出力ポートP42aから出力される制御信号により、第2選択スイッチQ52a及び第2ローサイドスイッチQ42のオンオフがともに制御される。また、第3出力ポートP42bから出力される制御信号により、第3選択スイッチQ52b及び第2ローサイドスイッチQ42のオンオフがともに制御される。さらには、第4出力ポートP43から出力される制御信号により、第4選択スイッチQ53及び第3ローサイドスイッチQ43のオンオフがともに制御される。これによれば、制御部30の構成、ひいては燃料噴射制御装置10をさらに簡素化することができる。
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した燃料噴射制御装置10と共通する部分についての説明は省略する。
第1実施形態では、オーバーラップ噴射の例を示した。これに対し、本実施形態では、図3に示すように、各インジェクタINJ1,INJ2,INJ3の燃料噴射が同時期に行われていない。具体的には、インジェクタINJ1の5段噴射の終了後、次いでインジェクタINJ2の5段噴射が実行され、その後、インジェクタINJ3の5段噴射が実行されている。このように、オーバーラップ噴射しない形態にも、適用することができる。
(第3実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した燃料噴射制御装置10と共通する部分についての説明は省略する。
本実施形態では、制御部30が、抵抗R2(R21,R22,R23)により検出される電流に基づいて、対応するソレノイドL1,L2,L3に異常が生じたことを検出する機能を有している。
たとえば、インジェクタINJ1の上流端子がグランドショートした場合、以後、抵抗R21に電流が流れないか、流れたとしても通常時に流れる電流値よりも低くなり、検出閾値以下となる。また、インジェクタINJ1の上流端子がバッテリショート(バッテリ電圧VB)した場合、ピーク電流制御時において、抵抗R21に電流が流れないか、流れたとしても検出閾値以下となる。また、インジェクタINJ1の下流端子がグランドショートした場合、以後、抵抗R21に電流が流れないか、流れたとしても検出閾値以下となる。また、インジェクタINJ1の下流端子がバッテリショートした場合、以後、定電流スイッチQ3aのオフタイミングでも、第1ローサイドスイッチQ41のオンタイミングであれば電流が流れる。また、インジェクタINJ1の上流端子と下流端子がショートした場合、ソレノイドL1での消費分がなくなり、抵抗R21に流れる電流値が目標値から大きくずれることとなる。したがって、抵抗R21の両端電圧と所定の閾値とを比較することで、ソレノイドL1に異常が生じたことを検出することができる。なお、他のソレノイドL2,L3についても同様である。
そして、制御部30は、異常が生じたソレノイドL1,L2,L3に対応する選択スイッチQ5を、異常の検出後において継続してオフさせる。図4では、インジェクタINJ1の5段噴射の途中、具体的には時刻t2と時刻t3の間の時間で、ソレノイドL2の異常を制御部30が検出した例を示している。図4では、ソレノイドL2の異常として、ソレノイドL2の上流端子がグランドショートした例を示している。制御部30は、本来所定の電流が流れるタイミングで、抵抗R22に電流が流れないか、流れたとしても検出閾値以下となると、ソレノイドL2の異常を検出する。ソレノイドL2の異常を検出すると、制御部30は、上記したように、ソレノイドL2に対応する選択スイッチQ5である第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bを継続してオフさせる。すなわち、本来オンすべきタイミングでもオンさせない。図4では、ソレノイドL2の異常検出後、時刻t2〜t4において第3選択スイッチQ52bをオフさせ、時刻t4〜t5において第2選択スイッチQ52aをオフさせている。
これによれば、インジェクタINJ1,INJ2,INJ3のソレノイドL1,L2,L3のいずれかに異常が生じても、対応する選択スイッチQ5をオフさせることで、2気筒での燃料噴射が可能となる。したがって、1気筒のみを燃料噴射可能とする構成や、3気筒とも燃料噴射不可となる構成に較べて、フェールセーフ性(安全性)を向上することができる。
なお、本実施形態でも、第1実施形態同様、制御信号を出力する出力ポートP4が共通化されているため、第2選択スイッチQ52a及び第3選択スイッチQ52bとともに第2ローサイドスイッチQ42もオフされる。しかしながら、出力ポートP4を別とする構成も可能であり、その場合には、第2ローサイドスイッチQ42をオンさせておくこともできる。また、出力ポートP4を別とする構成において、第2ローサイドスイッチQ42も合わせてもオフさせることもできる。さらには、ハイサイド回路部COM(COM1,COM2)の出力のうち、インジェクタINJ2の噴射に対応する出力を停止させてもよい。たとえば、時刻t2〜t4において、放電スイッチQ2b及び定電流スイッチQ3bをオフさせ、時刻t4〜時刻t5において、放電スイッチQ2a及び定電流スイッチQ3aをオフさせてもよい。
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
燃料噴射制御装置10が、エンジンECUとして構成される例を示した。しかしながら、燃料噴射制御装置10が、EDU(Electronic Drive Unit)として構成されてもよい。この場合、マイコンを備えるエンジンECUからの噴射信号により燃料噴射制御装置10(EDU)はインジェクタ100の駆動を制御してもよい。始動信号もエンジンECUから入力されることとなる。
燃料噴射制御装置10が、ディーゼルエンジンに適用される例を示したが、直噴型ガソリンエンジンにも適用できる。多段噴射やオーバーラップ噴射を実施しない場合、すなわち、選択スイッチQ5により、2系統のハイサイド回路部C0M(COM1,COM2)により、3気筒のインジェクタINJ1,INJ2,INJ3の燃料噴射を制御する思想は、ポート噴射にも適用することができる。
特に言及しなかったが、燃料噴射制御装置10が、ローサイドスイッチQ4がオフされたときに、対応するソレノイドL1,L2,L3に蓄積されたエネルギをコンデンサC1に回収する回収部をさらに備えてもよい。回収部として、ダイオードやMOSFETなどのスイッチを採用することができる。たとえばソレノイドL1に対応するダイオードの場合、ダイオードのアノードは出力端子P21に接続され、カソードは、ダイオードD1とコンデンサC1との接続点、すなわちコンデンサC1の正極に接続される。
互いに対応するローサイドスイッチQ4と選択スイッチQ5のオンオフ(オン期間)を同期させる例を示したが、これに限定されない。少なくともローサイドスイッチQ4のオンタイミング(オン期間)に重なるように、対応する選択スイッチQ5がオンされれば、燃料噴射が可能である。