以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
以下、本発明に係る印刷装置の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置が用いられる印刷システムの全体構成を示す概念図である。本実施形態における印刷システムは、図1に示すように、通信ネットワークNに対して、複数のユーザ端末T(Ta〜Tc)及びインクジェット記録装置1(1a〜1c)と、プリンタサーバSとが接続されている。
ユーザ端末T(Ta〜Tc)は、CPUを備えた演算処理装置であり、各種アプリケーションソフトにより印刷用のデータを作成し、そのデータの印刷処理の実行を指示する機能を備えている。ユーザ端末T(Ta〜Tc)は、例えば、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータにより実現することができる。
通信ネットワークNは、通信プロトコルTCP/IPを用いて種々の通信回線(FTTH等の光回線、ADSL回線等の公衆回線、専用回線、無線通信網)を相互に接続して構築される分散型のIP網である。このIP網には、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワーク等のLANも含まれる。
インクジェット記録装置1(1a〜1c)は、ユーザ端末T(Ta〜Tc)からの印刷ジョブに含まれる画像データに応じて、用紙に画像を形成する。このインクジェット記録装置1(1a〜1c)は、通信ネットワークN及びプリンタサーバSを通じてユーザ端末T(Ta〜Tc)から受信した印刷ジョブの画像を印刷するネットワークプリンタとしての機能を有する。インクジェット記録装置1(1a〜1c)の詳細については後述する。
プリンタサーバSは、ユーザ端末T(Ta〜Tc)からスプールされた印刷ジョブを一時ストックし、空き状態のインクジェット記録装置1(1a〜1c)に転送する中継処理機能を有している。
次に、インクジェット記録装置1の詳細について説明する。なお、以下の説明において、図中、用紙の搬送方向をX軸方向又は副走査方向とし、この搬送方向と直交する方向をY軸方向又は主走査方向又は記録媒体の幅方向としている。また、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向又は上下方向とする。
図2はインクジェット記録装置1の概略構成を示す説明図である。図2に示すインクジェット記録装置1は、主として給紙部2、搬送部3、画像形成部4、排紙部6及び制御部10で構成されている。
給紙部2は、給紙トレイ7に積載された用紙9をピックアップローラ8により1枚ずつピックアップし、搬送部3へと給送する。
搬送部3は、給紙部2により給送された用紙9をレジストローラ12により搬送ベルト16に搬送し、さらに、搬送ベルト16により用紙9を排紙部6側に搬送する。搬送ベルト16は、従動ローラ13、テンションローラ14及び駆動ローラ15に掛け渡された無端ベルトであり、搬送ベルト16の内側(下方)にはプラテン17が配置されている。
搬送ベルト16及びプラテン17には不図示の多数の孔が設けられており、搬送部3では、この孔を介して吸引ファン18が空気を吸引することで、用紙9が搬送ベルト16に吸着されて搬送される。
画像形成部4は、ヘッドユニット保持部25に保持されたK色(黒)、C色(シアン)、M色(マゼンタ)及びY色(イエロー)の4つのヘッドユニット21、22、23、24を有しており、搬送部3に対向して配置されている。
各ヘッドユニット21〜24は、用紙9の搬送方向と直交する方向に用紙9の記録領域幅以上の幅を有するラインヘッドである。各ヘッドユニット21〜24は、搬送部3が副走査方向に搬送する用紙9の主走査方向の全幅に亘って、不図示のノズルから各色のインク液滴を吐出させる。このインク液滴により用紙9に各色の画像が印刷される。
排紙部6は、画像形成部4によって画像形成された用紙9を排出ローラ対27で挟持し、排出トレイ28へと排出する。排出トレイ28は、排出された記録媒体を複数枚収容可能となっている。
次に、インクジェット記録装置1におけるインク経路の構成について説明する。図3は、インクジェット記録装置1のインク経路を模式的に示す説明図である。なお、図3では、K色、C色、M色及びY色の各ヘッドユニット21〜24に関わる4色のインクのうち、代表的に1色のインクに関わるインク経路を示している。したがって、図3に示す構成のインク経路は、K色、C色、M色及びY色の各色毎に独立して設けられる。
図3に示すように、インクジェット記録装置1のインク経路30は、大別すると、インク循環部31と、インク循環部31にインクを補充するための補充部32と、インク循環部31で不要となったインクやオーバーフローしたインクを収容する廃液部33と、インク循環部31内の圧力を調整する圧力調整部57と、を備えている。
インク循環部31は、大別して、第1のインク経路44と第2のインク経路45に分けることができる。
第1のインク経路44は、画像形成部4よりも重力方向上方に配置された上部タンク38からインク分配器49及びラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)を経由して、画像形成部4よりも重力方向下方に配置された下部タンク39へ、重力(水頭差)によりインクが流れる経路である。
第2のインク経路45は、下部タンク39からポンプ41、熱交換器42、フィルタ43を経由して上部タンク38へ、ポンプ41の動力によりインクが流れる経路である。
熱交換器42は、インク循環部31内を流れるインクを加温、及び/又は、冷却して、ラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)のノズルからの吐出に適切な温度にインクを調温する。フィルタ43は、インク循環部31内を流れるインクから異物を除去してラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)に供給させ、ノズルの目詰まりを防止する。
補充部32に装着(セット)されたインクカートリッジ34の供給口35に補充部32のジョイント部36が不図示のアクチュエータの動作により連結されると、インクカートリッジ34内のインクが下部タンク39に、補給弁37を介して供給される。
なお、補充部32には当初、純正品のインクを充填したインクカートリッジ34が装着されているが、交換の際に、汎用品のインクを充填したインクカートリッジ34が補充部32に装着される場合もある。
純正品のインクを充填したインクカートリッジ34の表面には、ICタグ34aが取り付けられている。ICタグ34aは不揮発性のメモリ34bを内蔵している。このメモリ34bは、書き換え不能なシステム領域と書き換え可能なデータ領域とを有しており、これらの領域に、インクカートリッジ34に充填されているインクに関するインク情報が記憶されている。
補充部32に装着されたインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bに記憶されているインク情報は、補充部32のICタグリーダライタ32aによって読み出すことができる。また、ICタグリーダライタ32aは、メモリ34bのデータ領域に新規の情報を記憶(上書き記憶も含む)させることができる。
ICタグ34aは独自の電源を有しておらず、ICタグリーダライタ32aとICタグ34aとは、所謂パッシブ方式と呼ばれる公知の方式によりデータ送受信を行う。
図4は、インクカートリッジ34の出荷の段階で予めICタグ34aのメモリ34bに書き込まれているインクカートリッジ34のインク情報の一例を示す説明図である。図4に示すように、インク情報は、メモリ34bのシステム領域に書き換え不能に記憶された固定情報と、メモリ34bのデータ領域に書き換え可能に記憶された可変情報及び固有情報とを有している。
固定情報は、ICタグ34aの識別用IDや、インクの粘度を示す粘度情報、インクの使用に適合したインクジェット記録装置1の機種情報、インクカートリッジ34のインクを用いてインクジェット記録装置1を正常に動作させるための制御データ、インクカートリッジ34に対して設定された認証用のパスワード等を含んでいる。可変情報は、インク残量情報等を含んでいる。
インク残量情報は、インクカートリッジ34の残インク量を示すもので、更新イベントが発生する度に、インクの消費に応じた値に更新される。この更新イベントは、例えば、一定周期毎に発生するものとしてもよく、印刷ジョブの印刷処理を終了する毎に発生するものとしてもよい。
具体的には、制御部10は、インクカートリッジ34のデフォルトの残インク量をICタグ34aのメモリ34bに記憶させた後、インク循環部31を循環するインク量や印刷ジョブの処理等に伴うインク消費量を考慮して算出した残インク量に、メモリ34bの残インク量を順次書き換えて行く。
固有情報は、固定情報及び可変情報の全ての情報に応じて固有に決められるもので、本実施形態では誤り訂正(又は誤り検出)符号である。この誤り訂正(又は誤り検出)符号は、補充部32のICタグリーダライタ32aとインクカートリッジ34のICタグ34aとの間で通信エラーが発生したときのデータ復号用の符号である。
具体的には、誤り訂正(又は誤り検出)符号は、ICタグリーダライタ32aがメモリ34bから読み取ったインク情報の誤り訂正(又は誤り検出)を行うのに用いる、チェックサムやCRC(巡回冗長検査)等のデータであり、その時々の固定情報及び可変情報の内容に応じて決まる固有の情報である。そのため、誤り訂正(又は誤り検出)符号は、更新イベントが発生する度に、その時点の固定情報及び可変情報の内容に応じた値に更新される。この更新イベントは、例えば、一定周期毎に発生するものとしてもよく、可変情報が更新される毎に発生するものとしてもよい。
インクジェット記録装置1におけるインク経路の説明に戻って、図3に示すように、上部タンク38と下部タンク39との各インク液面46,54上の空間は、上部タンク電磁弁53及び下部タンク電磁弁56をそれぞれ介して、オーバーフロータンク52に接続されている。オーバーフロータンク52は、常時、大気にさらされた状態のため、上部タンク電磁弁53及び下部タンク電磁弁56の開閉(開放/遮断)により上部タンク38内及び下部タンク39内をそれぞれ大気開放、又は密閉させることができる。
第2のインク経路45には、圧力調整部57のベローズ58が接続されている。ベローズ58は、ベローズ昇降機構61を下方に移動させると錘59の重さで伸長する。下部タンク39を密閉してベローズ58を伸長させると、インク液面55上の空間に負圧がかかり、ラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)のノズルにメニスカスが形成される。これにより、インク液滴を吐出させない時にノズルからインクが漏出するのを防止することができる。
図3に示す廃液部33は、タンクトレイ62と、廃液タンク63と、廃インク量検知部64と、タンク装着検知部65と、前述したオーバーフロータンク52とで構成される。
オーバーフロータンク52は、上述したように、上部タンク38及び下部タンク39の各インク液面46,54上の空間と接続されている。従って、装置の異常により上部タンク38や、下部タンク39からオーバーフローによりインクが溢れ出したとしても、漏れたインクをオーバーフロータンク52に収容させることができる。
また、オーバーフロータンク52は、チューブを介して廃液タンク63と接続されている。廃液タンク63は、タンクトレイ62上に配置され、タンクトレイ62に対して着脱可能となっている。
この廃液タンク63は、チューブを介して補充部32とも接続されている。これによりインクカートリッジ34の交換時に外部に漏れ出たインクは、チューブを介して廃液として廃液タンク63に送り出される。
なお、廃液タンク63をK色、C色、M色及びY色の色別でなく全色で共用する1つとし、廃液タンク63に各色のラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)からインクを回収するための構成を各色毎に設けてもよい。
タンクトレイ62には、廃液タンク63内に収容されたインク量を検知する廃インク量検知部64と、重量の検知や光学的な検知により廃液タンク63が装着されているか否かを検知するタンク装着検知部65が設けられている。そして、廃液タンク63内に所定量の廃液が溜まったことを廃インク量検知部64が検知すると、制御部10が、後述する操作パネル68を用いて、ユーザに交換を示唆する警報を報知する。
このように構成された本実施形態のインクジェット記録装置1では、補充部32のICタグリーダライタ32aによりインクカートリッジ34のICタグ34aから取得した固定情報を利用して、インクジェット記録装置1の制御内容を制御部10が決定する。したがって、インクカートリッジ34から下部タンク39へのインクの補給動作や、インク循環部31におけるインクの循環動作、ラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)からの各色のインクの吐出動作等、インクジェット記録装置1の各種動作は、制御部10が決定した制御内容にしたがって実行される。
このため、インクジェット記録装置1を正常動作させるのに適した純正品(適合品)のインクを収容したインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bには、純正品のインクに対応するインク情報が記憶されており、制御部10は、このインク情報を取得して、インクジェット記録装置1の各種動作の制御内容を決定することができる。
これに対し、純正品でない汎用品のインクを収容したインクカートリッジ34では、汎用品のインクに対応するインク情報をICタグ34aのメモリ34bに記憶させていない場合がある。特に、メモリ34bにインク情報が全く記憶されていないと、制御部10がインクカートリッジ34のインクに対応した制御内容を決定することができないので、インク情報の入力を求める必要が生じる。
しかし、インク情報の入力は汎用品のインクカートリッジ34のユーザにとって負担になる。そこで、インク情報の入力の負担からユーザを解放するために、純正品のインクカートリッジ34に取り付けられたICタグ34aのメモリ34bに記憶されているのと同じインク情報を、汎用品のインクカートリッジ34に取り付けられたICタグ34aのメモリ34bに記憶させておくことが考えられる。
この場合、補充部32に汎用品のインクカートリッジ34を装着すると、制御部10は、ICタグリーダライタ32aによりICタグ34aから取得した純正品と同じインク情報の固定情報を利用して、インクジェット記録装置1の各種動作の制御内容を決定することになる。
ところが、純正品のインクと汎用品のインクとでは一般的に組成が異なる。このため、純正品のインクに対応するインク情報から制御部10が決定する制御内容は、純正品のインクの制御データに応じた内容となり、汎用品のインクを用いるのに合わせて最適化された制御内容にはならない。このため、インクジェット記録装置1が誤った制御データに基づいて汎用品のインクを用いた動作を行うことになり、インクジェット記録装置1の故障発生や印刷品質の劣化を招く場合がある。
また、図5の説明図に示すように、ICタグ34aのメモリ34bに記憶されている汎用品のインク情報を純正品のインク情報に変換する変換回路34cを、汎用品のインクカートリッジ34に追加して設けると、汎用品のインクカートリッジ34のICタグ34aから純正品のインク情報と同じ内容のインク情報が取得できてしまう。
そこで、本実施形態のインクジェット記録装置1では、補充部32に装着されたインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bからICタグリーダライタ32aがインク情報を取得する度に、履歴として保持しておくと共に、そのインク情報が純正品であることを示しているかどうかを確認する。そして、純正品であることを示している場合に、履歴として保持した前回のインク情報と比較し、比較した結果から、純正品でない可能性があるインクカートリッジ34を検出して、そのインクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止すると共にインク情報の入力を要求する。
以下、具体例を挙げて説明する。図6(a)〜(c)は、汎用品のインクカートリッジ34に取り付けた図5の変換回路34cが、ICタグ34aのメモリ34bに記憶されたインク情報を変換する場合の、変換前後のインク情報の一例を示す説明図である。
まず、ICタグ34aのメモリ34bには、インクカートリッジ34の汎用品のインクに関するインク情報として、図4を参照して先に説明した固定情報、可変情報、及び、固有情報が記憶されている。インクカートリッジ34のインクの制御情報等を含む固定情報は、インクの消費や時間の経過等があっても更新されず内容が変化しない。一方、インクカートリッジ34の残インク量を含む可変情報は、インクの消費や時間の経過等があると更新されて内容が変化する。また、誤り訂正(又は誤り検出)符号である固有情報は、可変情報が変化するとそれに伴い更新されて内容が変化する。
なお、図6(a)では、固定情報を模式的に「eee」、「fff」、可変情報を「ggg」、固有情報を「hhh」と示している。このうち、可変情報「ggg」を除く固定情報「eee」、「fff」と固有情報「hhh」は、インク循環部31へのインクの供給を許可するか否かを判定する認証データとして用いられる。
そして、インクカートリッジ34に変換回路34cを設けると、固定情報「eee」、「fff」、可変情報「ggg」、固有情報「hhh」の全てが、変換回路34cによって、汎用品のインクの内容から純正品のインクの内容に変換される。変換後のインク情報は、例えば図6(a)に示すように、固定情報「aaa」、「bbb」、可変情報「ccc」、固有情報「ddd」となる。このうち、固定情報「aaa」、「bbb」と固有情報「ddd」が、認証データとして用いられる。
この変換後のインク情報の内容は、ある時点において、純正品のインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bに記憶されていたインク情報の内容である。
このため、変換回路34cによる変換後のインク情報(固定情報「aaa」、「bbb」、可変情報「ccc」、固有情報「ddd」)をICタグリーダライタ32aが取得すると、認証データ(特に、固定情報「aaa」、「bbb」)の内容から制御部10が、補充部32の汎用品のインクカートリッジ34を純正品のインクカートリッジ34と誤って認識してしまう。
そこで、制御部10は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報を、ICタグリーダライタ32aが取得した前回のインク情報と比較して、インク情報に異常があるかどうかを判断する。以下、その具体的な内容について説明する。
まず、ICタグ34aのメモリ34bに記憶されている変換前のインク情報中の可変情報「ggg」や固有情報「hhh」は、インクの消費や時間の経過等によって内容が例えば図6(b)に示す「g′g′g′」、「h′h′h′」へ、さらに、図6(c)に示す「g″g″g″」、「h″h″h″」へと、順次変化する。
これに対し、変換回路34cは、変換前の内容に関係なく毎回同じ内容にインク情報を変換する。即ち、ICタグリーダライタ32aが取得した変換回路34cによる変換後のインク情報の可変情報「ccc」や固有情報「ddd」は、インクの消費や時間の経過等があっても、図6(a)〜(c)に示すように、同じ内容のまま変化しない。
このため、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の可変情報や固有情報を前回と今回とで比較し、その内容が変化しているか否かによって、インク情報に異常があるかどうかを判断することができる。
そこで、制御部10は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の可変情報や固有情報が前回と今回とで同じ内容かどうかを確認し、同じだった場合は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報に異常があると判断する。
そして、制御部10は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報の固定情報が、例えば純正品に対応する「aaa」、「bbb」であった場合でも、その固定情報に対応する純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があると判断する。また、この判断に基づいて制御部10は、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止すると共にインク情報の入力を要求する。
なお、変換回路34cが、認証データである固定情報「eee」、「fff」と固有情報「hhh」だけを変換し、認証データでない可変情報「ggg」は変換しないことも考えられる。
この場合、ICタグ34aのメモリ34bに記憶されたインク情報は変換回路34cによって、図7(a)に示すように、固定情報が「eee」、「fff」から「aaa」、「bbb」に、固有情報が「hhh」から「ddd」にそれぞれ変換される。しかし、変換回路34cが変換しない可変情報の内容は、ICタグ34aのメモリ34bに記憶された「ggg」のままとなる。
そして、変換回路34cによって変換されない可変情報「ggg」は、インクの消費や時間の経過等によって、例えば「ggg」から図7(b)に示す「g′g′g′」へ、さらに、「g′g′g′」から図7(c)に示す「g″g″g″」へと、順次変化する。このため、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の可変情報を前回と今回とで比較しても、両者の内容が異なるので、制御部10は、可変情報の内容からインク情報の異常を判断することができない。
そこで、この場合に制御部10は、制御部10の内蔵メモリに記憶されたロジックを用いて、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の固定情報「aaa」、「bbb」と可変情報「ggg」(又は、「g′g′g′」か「g″g″g″」)から固有情報を再度決定する。
即ち、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の固有情報「ddd」は、同じインク情報中の可変情報が図7(a)に示す「hhh」から図7(b)に示す「h′h′h′」へ、さらに、図7(c)に示す「h″h″h″」へと変化しても、常に同じ内容である。
しかし、誤り訂正(又は誤り検出)符号である固有情報は、可変情報が変化するとそれに伴い更新されて内容が変化するものである。したがって、図7(a)〜(c)の変換後のインク情報の固有情報が全て同じ内容であるということは、そのうち少なくとも2つのインク情報は、固有情報が固定情報及び可変情報の全ての情報に応じた内容でないということになる。
そこで、制御部10は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報中の固定情報「aaa」、「bbb」と可変情報「ggg」(又は、「g′g′g′」か「g″g″g″」)から再度決定した固有情報を、同じインク情報中の固有情報「ddd」と比較し、両者が一致しなかった場合は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報に異常があると判断する。
そして、制御部10は、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報の固定情報が、例えば純正品に対応する「aaa」、「bbb」であった場合でも、その固定情報に対応する純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があると判断する。また、この判断に基づいて制御部10は、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止すると共にインク情報の入力を要求する。
なお、上述した変換回路34cを設ける代わりに、ある時点において純正品のインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bに記憶されていたインク情報の内容を、汎用品のインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bにコピーして記憶させることも考えられる。
そこで、本実施形態の印刷システムでは、制御部10が、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報が別のインクカートリッジ34のインク情報のコピーであるかどうかを判断する。以下、その具体的な内容について説明する。
図8は、汎用品のインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bにコピーした純正品のインクカートリッジのインク情報の変化例を示す説明図である。
この場合は、図8に示すように、汎用品のインクカートリッジ34に取り付けたICタグ34aのメモリ34bに、初期状態として、純正品のインク情報の内容と同じ固定情報「aaa」、「bbb」と可変情報「ccc」、固有情報「ddd」がコピーして記憶される。
そして、インクカートリッジ34の残インク量の変化やインク情報の内容の変化に応じて、可変情報「ccc」と固有情報「ddd」が、「c′c′c′」、「d′d′d′」、さらに、「c″c″c″」、「d″d″d″」…へと、順次更新される。
この例では、可変情報「ccc」が順次更新され、それに伴い固有情報「ddd」も更新されるので、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報を、ICタグリーダライタ32aが取得した前回のインク情報と比較すると、可変情報「ccc」や固有情報「ddd」の内容が前回と今回とで異なる。このため、可変情報「ccc」や固有情報「ddd」によってインク情報の異常を判断することができない。
そこで、制御部10は、ICタグリーダライタ32aがインクカートリッジ34のICタグ34aからインク情報を取得する度に、取得したインク情報をプリンタサーバSにアップロードして蓄積させると共に、既に蓄積されているプリンタサーバSのインク情報と照合する。
そして、ICタグリーダライタ32aが取得した特に初期状態のインク情報と同じ内容のインク情報がプリンタサーバSに蓄積されていた場合は、ネットワークN上のインクジェット記録装置1(1a〜1c)のいずれかに既に装着されたインクカートリッジ34のインク情報と同じであるとして、インク情報に異常があり、インク情報の固定情報に対応する純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があると判断する。
この場合、制御部10は、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止すると共にインク情報の入力を要求する。
次に、制御部10が行うインクジェット記録装置1のインクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給に関する動作の制御手順について、図9のフローチャートを参照して説明する。なお、制御部10は、図9の手順の制御を周期的に繰り返して実行する。また、制御部10は、インクカートリッジ34が補充部32にセットされている間に繰り返して図9の制御を行う。そして、補充部32のインクカートリッジ34が異なるものに交換されると制御部10は、図9の制御を最初から改めて実行する。
そして、図9に示すように、制御部10は、補充部32に装着されたインクカートリッジ34のICタグ34aからインク情報を取得する取得イベントが発生したか否かを確認する(ステップS1)。
インク情報の取得イベントは、例えば、インクジェット記録装置1の電源が投入されることや、インクジェット記録装置1が省電力モードから通常モードに復帰すること、補充部32に対するインクカートリッジ34の装着が不図示のセンサにより検出されること等によって発生するものとすることができる。
インク情報の取得イベントが発生していない場合は(ステップS1でNO)、後述するステップS31に移行し、取得イベントが発生した場合は(ステップS1でYES)、制御部10は、ICタグリーダライタ32aによりインクカートリッジ34のICタグ34aからインク情報が取得できたか否かを確認する(ステップS3)。
インク情報が取得できない場合は(ステップS3でNO)、制御部10は、インクカートリッジ34の検出エラーを示すメッセージを操作パネル68に表示させ、インクジェット記録装置1を印刷動作禁止状態とした後(ステップS5)、一連の処理を終了する。そして、ステップS3で再びインク情報が取得できエラー状態が回復するのを待機する。
一方、インク情報が取得できた場合は(ステップS3でYES)、制御部10は、取得できたインク情報の認証データに基づいて、インクカートリッジ34のインクがインクジェット記録装置1での使用に適合した純正品であるか否かを確認する(ステップS7)。
インクカートリッジ34のインクが純正品でない場合は(ステップS7でNO)、後述するステップS19に移行し、純正品である場合は(ステップS7でYES)、制御部10は、取得できたインク情報をプリンタサーバSに蓄積させる(ステップS9)。そして、制御部10は、ICタグリーダライタ32aがインクカートリッジ34のICタグ34aから前回取得したインク情報を内蔵の不図示のメモリから抽出して、インク情報の可変情報の内容がステップS3で取得できた今回のインク情報と同じか否かを確認する(ステップS11)。
そして、前回取得したインク情報の可変情報の内容が今回のインク情報と同じである場合や前回取得したインク情報が存在しない場合は(ステップS11でYES)、制御部10は、図6(a)〜(c)に示した例のように、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報がインクカートリッジ34の変換回路34cにより純正品の内容に変換されていて、純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があるものとして、ステップS19に移行する。
また、可変情報の内容が同じでない場合は(ステップS11でNO)、制御部10は、ステップS3で取得できたインク情報の固定情報及び可変情報から、誤り訂正(又は誤り検出)符号である固有情報を算出し(ステップS13)、さらに、算出した固有情報がステップS3で取得できたインク情報の固有情報と一致するか否かを確認する(ステップS15)。
固有情報が一致しない場合は(ステップS15でNO)、制御部10は、図7(a)〜(c)に示した例のように、固有情報が固定情報及び可変情報の全ての情報に応じた内容でなく、純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があるものとして、ステップS19に移行する。
一方、固有情報が一致した場合は(ステップS15でYES)、制御部10は、ステップS3で取得できたインク情報が、プリンタサーバSに蓄積されたネットワークN上のインクジェット記録装置1(1a〜1c)のICタグリーダライタ32aがインクカートリッジ34のICタグ34aから過去に取得したインク情報と同じか否かを確認する(ステップS17)。
インク情報の内容が過去のインク情報と同じである場合は(ステップS17でYES)、制御部10は、図8に示した例のように、ICタグリーダライタ32aが取得したインク情報が純正品の内容をコピーしたICタグ34aのメモリ34bから取得したものであり、純正品のインクがインクカートリッジ34に充填されていない可能性があるものとして、ステップS19に移行する。
一方、インク情報の内容が過去のインク情報と同じでない場合は(ステップS17でNO)、制御部は、インクカートリッジ34が純正のインクを充填したものであるとして、後述するステップS27に移行する。
そして、ステップS7でインクカートリッジ34のインクが純正品でない場合(NO)、ステップS11で可変情報の内容が同じである場合(YES)、ステップS11でインク情報の内容が過去のインク情報と同じである場合(YES)、及び、ステップS15で固有情報が一致しない場合(NO)にそれぞれ移行するステップS19では、制御部10は、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止すると共にインク情報の入力を要求するメッセージを操作パネル68に表示させ、続いて、ユーザによる操作パネル68からのインク情報の入力を待機する(ステップS21)。
ここで、ユーザに入力を要求するインク情報は、例えば、インクカートリッジ34のインクを用いてインクジェット記録装置1を正常に動作させるための制御データや、インクカートリッジ34のインクの粘度を示す粘度情報とすることができる。粘度情報は、例えば、操作パネル68の不図示のディスプレイに表示させた柔らかめから硬めまでのインク粘度のスケール上で、インクカートリッジ34のインクの粘度に対応する箇所をタッチして指定したり、テンキーで粘度を表す数値を指定することで、入力するようにしてもよい。
そして、インク情報が入力されたならば(ステップS21でYES)、制御部10は、入力されたインク情報の認証データに基づいて、インクカートリッジ34のインクがインクジェット記録装置1で使用可能であるか否かを確認し(ステップS23)、使用可能である場合は(ステップS23でYES)、ステップS27に移行する。
一方、インクカートリッジ34のインクがインクジェット記録装置1で使用可能でない場合は(ステップS23でNO)、制御部10は、インクの不適合によるエラーを示すメッセージを操作パネル68に表示させ、インクジェット記録装置1を印刷動作禁止状態とした後(ステップS25)、一連の処理を終了する。そして、インクジェット記録装置1で使用可能なインクのインク情報がステップS3で取得できエラー状態が回復するのを待機する。
ステップS17でインク情報の内容が過去のインク情報と同じでない場合(NO)と、ステップS23でインクカートリッジ34のインクがインクジェット記録装置1で使用可能である場合(YES)にそれぞれ移行するステップS27では、制御部10は、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を許可する。
そして、制御部10は、ステップS3で取得したインク情報、又は、ステップS21で入力されたインク情報に基づいて、インクカートリッジ34のインクに応じた制御内容で、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を含む印刷動作を行わせ(ステップS29)、一連の処理を終了する。
また、ステップS1でインク情報の取得イベントが発生していない場合(NO)に移行するステップS31では、制御部10は、インク情報の更新イベントが発生したか否かを確認する。インク情報の更新イベントは、例えば、一定周期毎に発生するものとしてもよく、印刷ジョブによる印刷動作を終了する毎に発生するものとしてもよい。
インク情報の更新イベントが発生していない場合は(ステップS31でNO)、一連の処理を終了する。一方、更新イベントが発生した場合は(ステップS31でYES)、制御部10は、ICタグリーダライタ32aによりインクカートリッジ34のICタグ34aのメモリ34bに記憶されたインク情報の可変情報を更新させた後(ステップS33)、一連の処理を終了する。
以上に説明したように、本実施形態のインクジェット記録装置1では、補充部32に装着された汎用品のインクカートリッジ34が、ICタグ34aのメモリ34bに純正品のインクカートリッジ34のインク情報をコピーしたものであったり、メモリ34bの汎用品のインク情報を純正品のインク情報に変換する変換回路34cを追加したものである場合に、前回取得したインク情報との比較や、取得した固定情報及び可変情報から求めた固有情報と取得した固有情報との比較、あるいは、過去に取得されたインク情報との比較によって、それらのインクカートリッジ34を検出し、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給を禁止し、インク情報の入力を要求するようにした。
このため、インクに関する正しいインク情報をメモリ34bに記憶したICタグ34aを有していない汎用品のインクカートリッジ34が補充部32に装着された場合に、インクの特性を特定できるインク情報を操作パネル68から入力させることで、そのインクカートリッジのインクを用いた印刷動作を、そのインクの特性に応じた制御で制御部10に行わせ、ラインヘッド50(ヘッドユニット21〜24)のノズルの目詰まり等の不具合が発生するのを回避させることができる。
なお、ICタグリーダライタ32aにより取得したインク情報がプリンタサーバSに蓄積された過去のインク情報と同じか否かを確認して、インクカートリッジ34からのインクの供給を許可するか禁止するかを決定する構成は、省略してもよい。
その場合は、図9のステップS9及びステップS17を省略し、ステップS7においてインクカートリッジ34のインクが純正品である場合(YES)に、ステップS11に移行すると共に、ステップS15において固有情報が一致した場合(YES)に、図9中の破線で示すようにステップS27に移行する内容に、制御部10の制御の手順を変えればよい。
また、ICタグリーダライタ32aにより取得した固定情報及び可変情報から求めた固有情報と、ICタグリーダライタ32aにより取得した固有情報とが一致するか否かを確認して、インクカートリッジ34からのインクの供給を許可するか禁止するかを決定する構成も、省略してもよい。
その場合は、図9のステップS13及びステップS15を省略し、ステップS11において前回取得したインク情報の可変情報の内容が今回のインク情報と同じである場合(YES)に、図9中の破線で示すようにステップS27に移行する内容に、制御部10の制御の手順を変えればよい。
さらに、上述した実施形態等では、図9のステップS21でインク情報の入力を要求した後、インク情報が入力されない限り(NO)、印刷品質の劣化防止やインクジェット記録装置1の故障防止のために、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給が制御部10により禁止されたままとなるものとした。しかし、印刷品質の劣化やインクジェット記録装置1の故障を防止できないことを認識した上で、インクジェット記録装置1の使用をユーザが希望する場合には、インクカートリッジ34からインク循環部31へのインクの供給が制御部10により許可されるようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、インクジェット記録装置1における消耗品であるインクを収容したインクカートリッジ34を本発明の消耗品ユニットとした場合の例について説明した。しかし、本発明は、例えば、消耗品である孔版原紙を巻回した孔版原紙ロールを消耗品ユニットとする孔版印刷装置にも適用可能である。即ち、消耗品ユニットの記憶手段に記憶された情報に基づいて消耗品を用いた印刷動作を行う印刷装置であれば、電子写真方式等のインクジェット方式や孔版印刷方式以外の方式で印刷を行う印刷装置にも、本発明は広く適用可能である。