本発明者らは、高温高湿環境で高速印字した場合の耐久性(画像濃度の低下が少ない)、長期間放置後の帯電立ち上がり性(非画像部のカブリが少ない)、さらには低温定着性(こすりによる濃度低下が少ない)を満たすトナーについて鋭意検討した。
しかし従来の延長線上の技術思想では、例えばシリカ微粒子をトナー表面に固着させるほど、耐久性は良化できても低温定着性が悪化してしまい、両立が難しかった。
そこで我々は視点を変え、トナーの帯電立ち上がり性を高めるためのトナーの表面状態の設計に注力した。その結果、トナーが摩擦帯電される際の、摩擦帯電を起こすサイトをこれまで以上に増やす必要があることがわかった。より具体的には、帯電部材とトナー間の摩擦による帯電だけではなく、トナー間における外添剤同士の摩擦による帯電を誘発できるトナー構成とすることが好ましい。
そして、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子を特定の状態で固着させたトナー粒子と、該トナー粒子の表面に有機無機複合微粒子を有するトナーとすることで、帯電立ち上がり性を飛躍的に改良できることを見出した。
帯電立ち上がり性が改良されるのは以下の理由によると推定している。
上記の構成のトナーでは、有機無機複合微粒子が、シリカ微粒子が固着されたトナー粒子の表面に均一に分散され、複数の固着されたシリカ微粒子の間に噛み合って担持された状態となると考えられる。このような存在状態となることで、アンカー効果が発現して有機無機複合微粒子が外力によって動き難くなるため、トナー間の摩擦において、固着されたシリカ微粒子と、有機無機複合微粒子との摩擦が効率的に起こる。
この時、固着されたシリカ微粒子と有機無機複合微粒子の樹脂粒子部分との間で電荷の授受が速やかにおこり、固着されたシリカ微粒子の帯電速度が飛躍的に高まり、トナーの帯電立ち上がり性を良化できるものと推定している。
そして驚くべきことに、上記のような構成とすることで、トナーの耐久性や低温定着性も良好なトナーとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
トナーの耐久性を良化できるのは、上述したようにトナー粒子表面において、有機無機複合微粒子が均一に分散された効果と、固着されたシリカ微粒子によるアンカー効果で担持された効果によるものと考えられる。
つまり有機無機複合微粒子の分散性が良好であることでスペーサー効果が高まり、固着されたシリカ微粒子によるアンカー効果で埋め込みや、脱離が抑制できるため、長期にわたってスペーサー効果が維持され、耐久性が高まるものと考えられる。
また一方で低温定着性を良化できるのは、定着時において、上述のアンカー効果によって、有機無機複合微粒子と固着されたシリカ微粒子がお互いの埋め込みを助長し合い、トナー母粒子の内部へと速やかに埋め込まれるためと考えられる。
これにより結着樹脂の表面露出が促進できるとともに、外添剤による結着樹脂の粘度上昇(フィラー効果)を低減でき、メディアへの結着樹脂の濡れ広がりを促進できるため、接着面積が高まり、低温定着性が良化するものと推定される。
本発明のトナーは、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aが固着されたトナー粒子を含有することが必要である。トナー母粒子の表面に固着されたシリカ微粒子Aを、以下単に固着シリカ微粒子Aと呼ぶことがある。
本発明のトナーは、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子が特定の状態で固着されていることが重要である。
そのためX線光電子分光装置(ESCA)を用いて測定される該シリカ微粒子による該トナー粒子表面の被覆率Xが60.0面積%以上80.0面積%以下であることが必要である。
被覆率Xが60.0面積%未満では、トナーの耐久性と帯電立ち上がり性が不十分となるため好ましくない。すなわち、被覆率Xが60.0面積%未満では、固着シリカ微粒子Aの量が少ないため、有機無機複合微粒子の分散性が低下したり、上述のアンカー効果が得にくくなるため、高温高湿環境で高速印字した場合の耐久性(ベタ画像の画像濃度)が悪化するため好ましくない。また固着シリカ微粒子Aと有機無機複合微粒子Bとの間の摩擦帯電が起こり難いために、長期放置後の帯電立ち上がり性が悪くなり、非画像部のカブリが悪化するため好ましくない。
一方で被覆率Xが80.0面積%を超えると、トナーの低温定着性と帯電立ち上がり性が不十分となるため好ましくない。
低温定着性が不十分となるのは、定着時に固着シリカ微粒子Aがトナー母粒子に完全に埋め込まれずに、トナー粒子表面の結着樹脂の粘度を高めてしまい(フィラー効果)、メディアに対するトナーの濡れ広がりが阻害され、接着面積が低下することによる。
帯電立ち上がり性が悪化するのは、被覆率Xが高すぎるために有機無機複合微粒子Bが担持され難くなり、担持されない有機無機複合微粒子Bが増加してしまうことによる。
このような状態では、トナー粒子表面からの脱離を抑えきれず、固着シリカ微粒子Aと有機無機複合微粒子Bの摩擦が効率的に行われないために、トナーの帯電立ち上がり性が悪化してしまうため好ましくない。
本発明にて好ましいシリカ微粒子Aとしては、後述にて詳細に記載する。
本発明のトナーは、トナー粒子の表面に、有機無機複合微粒子Bを有することが必要である。有機無機複合微粒子Bを有さない場合、トナーの耐久性、帯電立ち上がり性が悪化するため好ましくない。
また有機無機複合微粒子Bとしては、樹脂粒子に無機微粒子が埋め込まれた構造を有していることが必要である。このような構造を有することで、トナー粒子表面に存在する複数の固着シリカ微粒子Aの間に、有機無機複合微粒子Bが噛み合った状態となって担持され、アンカー効果が高まるため、トナーの耐久性や帯電立ち上がり性が良好となるため好ましい。
有機無機複合微粒子Bが、樹脂粒子に無機微粒子が埋め込まれた構造を有さない場合、高速印字で連続出力を続けた際に、有機無機複合微粒子Bがトナー粒子表面から脱離し易くなり、トナーの耐久性が悪化するため好ましくない。
また有機無機複合微粒子Bが樹脂粒子を含まない場合、固着シリカ微粒子Aとの摩擦による電荷の受け渡しがスムーズに行われなくなるため、トナーの帯電立ち上がり性が悪化するため好ましくない。
本発明に係る有機無機複合微粒子Bは、例えば、WO2013/063291の実施例の記載に従って製造することができる。有機無機複合微粒子に使用される無機微粒子は特に限定されるものではなく、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化亜鉛微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、酸化セリウム微粒子及び炭酸カルシウム微粒子等が好ましく用いられ、これらの微粒子群の中から任意の組み合わせで選択される2種以上を用いることもできる。
本発明においては、トナーの帯電立ち上がり性と耐久性の観点から、無機微粒子としてはシリカ微粒子であることがより好ましい。
また有機無機複合微粒子Bが含有する樹脂粒子としては、従来公知の樹脂粒子を用いることができるが、トナーの帯電立ち上がり性、低温定着性の両立の観点から、ビニル系樹脂であることが好ましい。
本発明のトナーは、該有機無機複合微粒子Bによるトナー粒子表面の単位拡散指数Yが0.75以上であると、さらにハーフトーン画像の濃度ムラを抑えられるため好ましい。これはトナーの帯電立ち上がり性が高まり、帯電量分布が均一化できるためと推定される。
単位拡散指数Yは、トナー粒子表面における、有機無機複合微粒子Bの解れ度合いを示す指標であり、理想的に1粒子ごとに解れて分散した状態を1.00とした指数である。該単位拡散指教Yが大きいほど有機無機複合微粒子Bの拡散性が良いことを示す。
近年、オフィスプリンター等の画像形成装置においては、ハーフトーン画像を含む文書の出力頻度が年々増加し、ハーフトーン画像の均一性に対する要望が高まっている。
しかしトナーの消費量が比較的多いベタ部の後に、トナーの消費量の比較的少ないハーフトーン部を含む画像パターンを出力する場合、帯電立ち上がり性が不十分なトナーでは、帯電分布が不均一となり、ハーフトーン部に濃度ムラが生じる場合があった。
特に高速機では、トナーの帯電立ち上げに要する時間が短いために、従来のトナーではハーフトーン画像部の濃度ムラが生じ易い傾向にあった。
本発明のトナーは単位拡散指数Yが0.75以上であることで、有機無機複合微粒子
Bの拡散性が良好となり、トナー間で有機無機複合微粒子Bと固着シリカ微粒子Aとの摩擦帯電が均一に起こるため、トナーの帯電量を均一化させることができる。
そのため上述のような帯電分布が不均一になり易い画像パターンで出力する場合においても、ハーフトーン部の濃度ムラを抑制できるため好ましい。より好ましくは、単位拡散指数Yは0.85以上であることが好ましい。
本発明のトナーは、トナー粒子表面の固着シリカ微粒子Aの存在により、外添工程において有機無機複合微粒子Bが解砕・分散され易く、トナー粒子の凹部への掃き寄せも抑制されるため、有機無機複合微粒子Bの単位拡散指数Yを高め易く好ましい。
しかし、より積極的に有機無機複合微粒子Bの単位拡散指数Yを高めるためには、外添工程において、外添強度や混合性を高めることが好ましい。具体的には、例えば撹拌羽根の周速を高めたり、外添装置に投入するトナー粒子の仕込み量を調整する等の手段を講じることが好ましい。
本発明のトナーは、該有機無機複合微粒子Bの温度32.5℃、湿度80%における飽和水分吸着量(質量%)が1.0%以上3.5%以下であることが好ましい。
温度32.5℃、湿度80%における飽和水分吸着量(質量%)が1.0%以上3.5%以下であることで、トナーのチャージアップや帯電量緩和を抑制できる。
これにより高温高湿環境下において高速印字する場合のトナーの耐久性を良化させることができ、特に帯電量の影響を受け易いハーフトーン画像の画像濃度の低下を抑えられるため好ましい。また、高温高湿環境下における非画像部へのカブリも良化できるため好ましい。
有機無機複合微粒子Bの飽和水分吸着量(質量%)は、有機無機複合微粒子の樹脂粒子、無機微粒子の種類や含有量や、表面処理を変更することで調整することができる。
本発明のトナーは、有機無機複合微粒子Bの容積比熱が3000kJ/(m3・℃)以上4200kJ/(m3・℃)以下であることが好ましい。
高速機では機内モーターによる発熱や、現像部でのブレードの摩擦熱等により、トナーの劣化が加速されやすい。
本発明のトナーはトナー粒子表面に固着シリカ微粒子Aを有するため、このような機内昇温による影響を受けにくいが、さらに耐久性に優れたトナーとなる点で、有機無機複合微粒子Bの容積比熱が3000kJ/(m3・℃)以上であることが好ましい。容積比熱が3000kJ/(m3・℃)以上であることで、現像時において、トナー母粒子への熱の伝わりを低減することができ、固着シリカ微粒子Aの埋め込みを抑えることができる。
これにより高温高湿環境下において高速印字する場合のトナーの耐久性を良化させることができ、特に帯電量の影響を受け易いハーフトーン画像を高速印字する場合においても、画像の濃度の維持率を高められるため好ましい。
一方で、容積比熱が4200kJ/(m3・℃)以下であることで、定着時において、
定着スリーブの熱をトナー粒子の表面へ伝え易くなり、結着樹脂の軟化を促進させて、より低温定着性に優れたトナーとなるため好ましい。
有機無機複合微粒子Bの容積比熱は、有機無機複合微粒子の樹脂粒子、無機微粒子の種類や含有量を変更することで調整することができる。
本発明のトナーは、より低温定着性、耐久性にバランスよく優れたトナーである点で、該結着樹脂の60質量%以上が、ポリエステル樹脂であることが好ましい。低温定着性が良好となるのは、ポリエステル樹脂がシャープメルト性に優れることと、極性基を有するため紙との親和性を高め易いことによる。
本発明にて好ましい結着樹脂については、後述にて詳細に記載する。
本発明のトナーは、有機無機複合微粒子Bの含有量が、トナーの質量を基準として、0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
0.5質量%以上であることにより、帯電立ち上がり性が良化し、非画像部へのカブリを抑制し易いため好ましい。またトナーの耐久性が良化し、高温高湿環境下での画像濃度の維持率が高まるため好ましい。
3.0質量%以下であることにより、定着時において結着樹脂がトナー表面へ露出し易くなり、紙とトナーの接着性が高まるため、 トナーの低温定着性がさらに良化するため好ましい。
本発明のトナーは、該有機無機複合微粒子Bは、表面に該無機微粒子に由来する凸部を複数有することが好ましい。該有機無機複合微粒子Bの表面に該無機微粒子に由来する凸部を有するほど、トナー粒子表面に存在する固着シリカ微粒子Aとの間でアンカー効果が発現し易くなり、トナーの耐久性が良化するため好ましい。なお有機無機複合微粒子の表面に無機微粒子が存在していれば良く、樹脂粒子内部における無機微粒子の有無は特に限定されない。
また有機無機複合微粒子Bは、一次粒子の個数平均粒径(D1)が50nm以上200nm以下であることが好ましい。
一次粒子の個数平均粒径(D1)が50nm以上であることで、有機無機複合微粒子Bのスペーサー効果が高まるため、トナーの耐久性をさらに良化できるため好ましい。
一方で、一次粒子の個数平均粒径(D1)が200nm以下であることで、トナー粒子表面における摩擦帯電サイトが増加するため、帯電立ち上がり性を良化でき、高温高湿下における非画像部のカブリをさらに低減できるため好ましい。
本発明のトナーは、有機無機複合微粒子Bの倍率20万倍で測定した形状係数SF−2が、103以上120以下であることが好ましい。
形状係数SF−2は粒子の凹凸度合いの指標であり、その値が100であると真円となり、数値が大きくなるほど凹凸の度合いが増していく。
形状係数SF−2が103以上であることにより、トナー粒子表面に存在する固着シリカ微粒子Aとの間でアンカー効果が発現し易くなり、トナーの耐久性が良化するため好ましい。一方で形状係数SF−2が120以下であることにより、有機無機複合微粒子Bの樹脂粒子部と固着シリカ微粒子Aとの摩擦帯電が起こり易くなり、トナーの帯電立ち上がり性がさらに良化するため好ましい。
形状係数SF−2は110以上120以下であることがさらに好ましい。
有機無機複合粒子Bの一次粒子の個数平均粒径(D1)や形状係数SF−2は、有機無機複合粒子Bの製造に使用する無機微粒子の粒径や、無機微粒子と樹脂の量比を変えることで適宜コントロールすることが可能である。
本発明のトナーは、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径(D1)が、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
シリカ微粒子Aの個数平均粒径(D1)が50nm以上であると、シリカ微粒子Aの表面積が小さくなるため、トナー粒子表面で固着された状態で存在しても、トナー母粒子表面の粘度を上昇させ難くなり、低温定着性が良好となるため好ましい。一方で、個数平均粒径(D1)が200nm以下であることで、トナー粒子表面における摩擦帯電サイトが増加して帯電立ち上がり性が良化するため、高温高湿下における非画像部のカブリが良好となるため好ましい。
本発明のトナーのシリカ微粒子Aとしては、例えば、湿式法、火炎溶融法、気相法など任意の方法で製造されたシリカ微粒子が好ましく用いられる。
湿式法としては、水が存在する有機溶媒中にアルコキシシランを滴下し、触媒により加水分解、縮合反応させた後、得られたシリカゾル懸濁液から、溶媒を除去し、乾燥するゾルゲル法が挙げられる(ゾルゲルシリカ)。
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の4官能性シラン化合物が好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがより好ましい。
有機溶媒としては、水と溶解するものであれば特に制限されず、アルコール類、セロソルブ類、ケトン類、エーテル類が用いられるが、シリカゾルの造粒性の観点から、炭素原子数が1乃至6のアルコール類を用いることがより好ましい。
触媒としては、塩基性物質である、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミンが挙げられ、アンモニアであることが好ましい。該触媒は予め水に溶解させた後、水が存在する有機溶媒へ添加することが好ましい。
火炎溶融法としては、常温でガス状または液状である珪素化合物を、予めガス状にした後、水素および/または炭化水素からなる可燃性ガスと、酸素を供給して形成した外炎中において、該珪素化合物を分解・溶融させてシリカ微粒子を得る方法がある(溶融シリカ)。
該火炎溶融法では、外炎中において、該珪素化合物からシリカ微粒子を生成させると同時に、所望の粒径や形状となるようにシリカ微粒子同士を融着、合一させた後、冷却し、バグフィルター等で捕集することができる。
原料として用いる該珪素化合物は、常温でガス状または液状であれば特に制限はなく、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどの有機シラン化合物、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素、モノシラン、ジシラン等の無機珪素が挙げられる。
環状シロキサンを用いると、粒度分布の狭いシリカ微粒子を得やすい傾向にあるため好ましく、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンを用いることが特に好ましい。
また、二重管構造を有するバーナーを用い、内炎用の供給口にガス状の珪素化合物を供給し、外炎用の供給口に可燃性ガスと酸素の混合ガスを供給し、内炎と外炎を形成する方法で、シリカ微粒子を得ることが好ましい。
なお内炎用の供給口には必要に応じてガス状の珪素化合物以外に、窒素ガスや酸素ガス等のキャリアガスを導入してもよい。
気相法としては、四塩化珪素を酸素、水素、希釈ガス(例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素など)の混合ガスとともに高温で燃焼させて製造する、ヒュームド法が挙げられる。
例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
ヒュームド法においては、燃焼させるバーナーの温度などによって、得られるシリカ微粒子の一次粒径(D1)を適宜調整することができる。
また、この製造工程において、少量成分として塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物とともに併用しても良い。
また、本発明のシリカ微粒子Aは、表面処理によって表面が疎水化されていることが好ましい。表面が疎水化されていることで、高温高湿環境下におけるシリカ微粒子Aの帯電性が良化し、長期間放置後の非画像部へのカブリを抑えられるため好ましい。
表面処理としては、シランカップリング処理、オイル処理、アルミナ被膜を形成する表面処理などを挙げることでき、適宜選択することができる。また複数種の表面処理を選択することも可能であり、それらの処理の順序も任意である。
シランカップリング処理に用いるシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個当りのSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサンなどが挙げられ、これらを1種で用いても良いが、2種以上を併用しても良い。
好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
シランカップリング剤処理の方法としては、微粉体を撹拌によってクラウド状としたものに、気化したシランカップリング剤を反応させる乾式法、または微粉体を溶媒中に分散させシランカップリング剤を滴下反応させる湿式法のいずれも採用することが出来る。
該シリカ微粉体は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
オイル処理としては、シリコーンオイル、フッ素オイル、各種変性オイルを用いた処理が挙げられ、具体的には、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルを用いた処理などが挙げられる。
シリコーンオイルとしては、25℃における粘度が50乃至100mm2/sのものであればよく、オイル処理量は、シリカ微粒子Aの原体100質量部に対して3乃至35質量部の範囲で選択することができる。
シリコーンオイル処理の方法としては、以下の方法が挙げられる。シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法。ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させる方法。
アルミナ被膜を形成させる方法としては、水溶液中または溶媒中で塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を添加し、微粒子を浸漬、乾燥する方法、あるいは含水アルミナ、含水アルミナ−シリカ、含水アルミナ−酸化チタン、含水アルミナ−酸化チタン−シリカ、または含水アルミナ−酸化チタン−シリカ−酸化亜鉛を添加し、その水溶液に微粒子を浸漬、乾燥する方法を採用することが出来る。
また、表面処理によって疎水化されたシリカ微粒子Aは、表面処理後の無機微粒子のメタノール滴定試験によって測定された疎水化度(メタノールウェッタビリティー;メタノールに対する濡れ性を示す指標)が60以上92以下であることが好ましい。
本発明のトナーへのシリカ微粒子Aの添加量は、トナーの帯電立ち上がり性と低温定着性の観点から、トナー母体粒子100質量部に対して、0.3質量部以上10.0質量部以下添加することが好ましく、0.5質量部以上7.0質量部以下添加することがより好ましい。
本発明のトナーは、シリカ微粒子A、有機無機複合微粒子Bに加えて、他の微粒子Cを外添剤を含有しても良い。
微粒子Cとしては、前述したシリカ微粒子Aとして好ましいシリカ微粒子や、酸化チタン微粒子等を挙げることができ、特に制限はない。
酸化チタン微粒子の製造方法としては、従来公知の硫酸法、塩素法が挙げられ、結晶系としてはアナターゼ型、ルチル型ともに用いることが可能である。
微粒子Cは、トナー粒子100.00質量部に対して0.01質量部以上8.00質量部以下、好ましくは0.10質量部以上4.00質量部以下使用するのが良い。
本発明のトナーには、必要に応じて他の添加剤を含有しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。これらの外添剤はヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分混合し本発明のトナーを得ることができる。
本発明のトナー母粒子に用いられる結着樹脂について以下に説明する。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が挙げられる。
本発明においてはよりシャープメルト性が高まり低温定着性の良好なトナーとなる点で、結着樹脂の60質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましく、75質量%以上がポリエステル樹脂であることが好ましい。
ポリエステル樹脂成分を合成する際に用いることができるアルコール成分及び酸成分は以下の通りである。
アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェールA、芳香族ジオールとしては、下記式[2]で表わされるビスフェノール及びその誘導体、下記式[3]で示されるジオール類、が挙げられる。
酸成分としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類またはその無水物、またさらに炭素数6以上18以下のアルキル基またはアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物。3価以上の多価アルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンが挙げられる。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂は通常一般に知られている縮重合によって得られる。
一方、ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットを生成する為のビニル系モノマーとしては、次の様なものが挙げられる。
スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きスチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエン、イソプレンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体。
さらに、以下のものが挙げられる。マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β−不飽和酸無水物、該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルの如きカルボキシル基を有するモノマー。
さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの如きアクリル酸またはメタクリル酸エステル類;4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンの如きヒドロキシ基を有するモノマーが挙げられる。
本発明のトナーにおいて、ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットは、ビニル基を2個以上有する架橋剤で架橋された架橋構造を有してもよい。この場合に用いられる架橋剤としては、以下のものが挙げられる。芳香族ジビニル化合物(ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレー卜をメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で緒ばれたジアクリレート化合物類[ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの];ポリエステル型ジアクリレート化合物類(日本化薬社製「MANDA」)。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01質量部以上10.00質量部以下、さらに好ましくは0.03質量部以上5.00質量部以下用いることができる。
これらの架橋剤のうち、樹脂成分に低温定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
上記ビニル系樹脂或いはビニル系重合体ユニットの重合に用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カーバモイルアゾ)−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルプロパン)、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドの如きケトンパーオキサイド類、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエイト、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、tert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−プチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−tert−ブチルパーオキシアゼレート。
本発明の結着樹脂は、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂が一部反応したハイブリッド樹脂であってもよい。
本発明の結着樹脂が、ハイブリッド樹脂である場合、ビニル系樹脂及び/またはポリエステル樹脂成分中に、両樹脂成分と反応し得るモノマー成分を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系樹脂と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物が挙げられる。ビニル系樹脂成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
ビニル系樹脂とポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、先に挙げたビニル系樹脂及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応をさせることにより得る方法が好ましい。
結着樹脂として用いる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、トナーの耐久性と、定着性の観点から45℃以上75℃以下である事が好ましく、同様の観点から、軟化点は80℃以上、150℃以下であることが好ましい。
また結着樹脂として用いる樹脂の重量平均分子量は、トナーの耐久性と、定着性の観点から、8000以上120,0000以下、好ましくは40,000以上300,000以下であることが好ましい。
結着樹脂として用いる樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることが、トナーの耐久性や帯電立ち上がり性の観点から好ましい。
結着樹脂として用いる樹脂は、1種類であっても良いが、複数種併用してもよく、低温定着性と耐久性の両立の観点から、Tgや軟化点の異なる複数種の樹脂を併用して用いることが好ましい。
本発明のトナーは離型剤を含むことが好ましい。
離型剤としては定着スリーブとトナー画像との離型性を高められるものであれば制限はないが、以下に好ましい離型剤について説明する。
例えばポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。
また、これらの離型剤を、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものなどがある。
離型剤の具体的な例としては、以下のものが挙げられる。
ビスコール(登録商標)330−P、550−P、660−P、TS−200(三洋化成工業社)、ハイワックス400P、200P、100P、410P、420P、320P、220P、210P、110P(三井化学社)、サゾールH1、H2、C80、C105、C77(シューマン・サゾール社)、HNP−1、HNP−3、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12(日本精鑞株式会社)、ユニリン(登録商標)350、425、550、700、ユニシッド(登録商標)、ユニシッド(登録商標)350、425、550、700(東洋アドレ株式会社)、木ろう、蜜ろう、ライスワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス(株式会社セラリカNODAにて入手可能)。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが結着樹脂の製造時であっても良く、既存の方法から適宜選ばれる。又、これらの離型剤は単独で使用しても、併用しても良い。
該離型剤は結着樹脂の総量100.0質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下で添加することが好ましい。
該離型剤の融点ピーク温度は、トナーの耐久性と低温定着性の観点から、60℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上110℃以下であることがより好ましい。
本発明のトナーは、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、炭素数4以上18以下の脂肪族ジオールと、炭素数4以上18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を縮重合させて得られる脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
脂肪族ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、フマル酸、1,8−オクタン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸等が挙げられる。
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良い。磁性トナーとして用いる場合は、着色剤としては磁性酸化鉄を用いることが好ましい。
磁性酸化鉄としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄、鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ビスマス、カルシウム、マンガン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金およびその混合物が挙げられる。
磁性酸化鉄はトナー粒子中への微分散性を向上させる目的で、製造時のスラリーにせん断をかけ、磁性酸化鉄を一旦ほぐす処理を施すことが好ましい。
これらの磁性体は個数平均粒子径が0.05μm以上2.0μm以下、好ましくは0.10μm以上0.50μm以下のものが好ましい。
本発明の着色剤が磁性酸化鉄である場合、トナーが含有する磁性酸化鉄の量は、トナーの低温定着性と帯電立ち上がり性の観点から、結着樹脂100質量部に対し、30質量部以上120質量部以下が好ましく、40質量部以上110質量部以下がさらに好ましい。
また必要に応じて、トナーの色味調整のために従来公知の顔料や染料を併用しても良い。
本発明のトナーが非磁性トナーである場合に用いられる着色剤は、黒色着色剤としてカーボンブラック,グラフト化カーボンや以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用可能である。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物,イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物,アゾ金属錯体,メチン化合物,アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物,ジケトピロロピロール化合物,アントラキノン,キナクリドン化合物,塩基染料レーキ化合物,ナフトール化合物,ベンズイミダゾロン化合物,チオインジゴ化合物,ペリレン化合物等が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体,アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。
本発明のトナーは、その帯電安定性をさらに良好となる点で、電荷制御剤を含有することが好ましい。
電荷制御剤としては、本発明に用いられる結着樹脂の末端に存在する酸基あるいは水酸基と中心金属が相互作用し易い、有機金属錯体、キレート化合物が好ましい。
例えば、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩が好ましく用いられる。
具体的な例としては、Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学工業(株))、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89(オリエント化学工業(株))が挙げられる。
また電荷制御剤は1種類で用いても良いし、2種類以上を併用してもよい。
本発明のトナーは帯電立ち上がり性の観点から、磁性一成分系現像剤として用いることが好ましい。これは磁性一成分系現像システムでは、現像ブレード等の帯電部材からトナーが受ける摺擦力が高まり易く、トナー間での摩擦が誘発され、より帯電立ち上がり性が良好となることによる。
本発明のトナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aを固着させる方法について、好ましい方法を以下に説明する。
混合装置を用いてシリカ微粒子Aをトナー母粒子の表面に付着させた(付着工程)後、熱風による表面処理を行って該付着したシリカ微粒子Aをトナー母粒子の表面に固着させる(固着工程)方法が好ましく採用される。
トナー粒子の被覆率Xを上述の範囲に調整するためには、シリカ微粒子Aの一次粒径、添加量を上述の好ましい範囲で調整することが好ましい。加えて付着工程および固着工程における製造条件をそれぞれ後述の好ましい範囲で調整し、シリカ微粒子Aの固着度合いを制御することが好ましい。
被覆率Xを高めるためには、付着工程において、シリカ微粒子Aの解砕性、分散性を高め、シリカ微粒子A適度にトナー母粒子に付着させることが好ましい。
このときシリカ微粒子Aを埋め込みすぎず、トナー母粒子の凹部への掃き寄せを低減することが好ましいことから、混合装置の回転羽根の周速、混合時間を後述の好ましい範囲で調整することが好ましい。
また被覆率Xを高めるためには、固着工程において、トナー母粒子の表面を半溶融状態としてトナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aを埋没され、急冷して固定化することが好ましい。このときトナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aを埋め込みすぎずに固着させることが重要であり、熱風の吐出温度、熱風流量、冷却風の温度、風量を後述の好ましい範囲で調整することが好ましい。
なお、付着工程や固着工程における製造条件はシリカ微粒子Aの添加量や個数平均粒径に応じて、適宜選択することが好ましい。シリカ微粒子Aの添加量が少ない、個数平均粒径が小さい場合には、シリカ微粒子Aの埋め込みが進行し易いために、これを抑制できる条件を選択することが好ましい。
付着工程で用いる混合装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等が挙げられる。
よりシリカ微粒子Aを均一に付着させ易い点でヘンシェルミキサーを用いることが好ましい。
混合条件としては、混合羽根の回転速度が高いほど、混合時間が長いほど、シリカ微粒子Aが解砕され易くなり、トナー母粒子の表面に均一に付着し易くなるため好ましい。
ただし、混合羽根の回転数が高すぎるとシリカ微粒子Aの埋め込みを抑制し難くなり、混合時間が長すぎると、トナー母粒子の凹部へシリカ微粒子Aが掃き寄せられ易くなる傾向にある。
これらのことから、本発明にて好ましい被覆率Xに調整するためには、混合羽根の最大周速は20.0m/sec以上70.0m/sec以下であることが好ましく、30.0m/sec以上40.0m/sec以下であることより好ましい。
同様の理由により、混合時間は0.5分以上15.0分以下の範囲で調整することが好ましく、1.0分以上5.0分以下であることがより好ましい。
また、均一付着性の観点から、混合機内の温度が45℃以下となる範囲調整することが好ましく、混合機に水冷ジャケットを設けるなどして、混合機を積極的に冷却することが好ましい。
また、付着工程は、1段階で行っても、2段階以上の多段階で行ってもよく、それぞれの段階で用いる混合装置、混合条件及び母体粒子の配合等は、同一であっても異なっていても良い。
本発明の固着工程に用いる、熱風による表面処理を施す装置としては、熱風でトナーの表面を溶融状態にする手段を有し、かつ、熱風で処理されたトナーを冷風で冷却できる手段を有するものであれば、どのようなものでもかまわない。
熱風による表面処理のための装置としては、例えば、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)などを用いることが可能である。
次に、熱風による表面処理の方法の一態様を、図1を用いて説明する。
本発明では、表面にシリカ微粒子Aが付着されたトナー母粒子に、熱風による表面処理が施され、表面にシリカ微粒子Aが固着された粒子をトナー粒子と呼ぶが、以下の説明では、便宜上、シリカ微粒子Aが固着される前の粒子もトナー粒子と表現することがある。
図1は、本発明で用いた表面処理装置の一例を示した断面図である。表面処理の方法としては、具体的には、予めトナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aを付着させたものを原料とし、該原料を当該表面処理装置に供給する。
そして、トナー粒子供給口(100)から供給されたトナー粒子(114)は、高圧エア供給ノズル(115)から噴射されるインジェクションエアにより加速され、その下方にある気流噴射部材(102)へ向かう。
気流噴射部材(102)からは拡散エアが噴射され、この拡散エアによりトナー粒子が外側方向へ拡散する。この時、インジェクションエアの流量と拡散エアの流量とを調節することにより、トナー粒子の拡散状態をコントロールすることができる。
また、トナー粒子の融着防止を目的として、トナー粒子供給口(100)の外周、表面処理装置外周及び移送配管(116)の外周には冷却ジャケット(106)が設けられている。
尚、該冷却ジャケットには冷却水(好ましくはエチレングリコール等の不凍液)を通水することが好ましい。
一方、拡散エアにより拡散したトナー粒子は、熱風供給口(101)から供給された熱風により、トナー粒子の表面が処理され、シリカ微粒子Aを固着させることができる。
この時、トナー粒子にかかる熱量が低すぎると、シリカ微粒子Aを固着させ難くなり、被覆率Xが低下し易い。
一方で熱量が高すぎると、シリカ微粒子Aがトナー母粒子に埋没しすぎてしまい、やはり被覆率Xが低下し易い。
具体的には、被覆率Xを本発明の範囲とするためには、熱風の吐出温度は130℃以上、230℃以下であることが好ましく、140℃以上210℃以下であることがより好ましい。
また被覆率Xを本発明の範囲とするためには、各トナー粒子を熱風によって均一に加熱できる観点で、熱風流量は3.0m3/min以上20.0m3/min以下とすることが好ましく、5.0m3/min以上10.0m3/min以下とすることがより好ましい。
また、上記の温度範囲において熱風の吐出温度を調整することで、得られるトナーの平均円形度を0.955以上0.980以下に制御することができる。
熱風の温度が高温で処理するほど、得られるトナーの平均円形度は高くなり、低温で処理するほど、得られるトナーの平均円形度は低くなる傾向にある。
熱風により表面が処理されたトナー粒子は、装置上部外周に設けた冷風供給口(103)から供給される冷風により冷却される。この時、装置内の温度分布の制御、トナー粒子の表面状態をコントロールする目的で、装置の本体側面に設けた第二の冷風供給口(104)から冷風を導入することが好ましい。第二の冷風供給口(104)の出口はスリット形状、ルーバー形状、多孔板形状、メッシュ形状等を用いることができ、導入方向は中心方向へ水平、装置壁面に沿う方向が、目的に応じて選択可能である。
この時、上記冷風温度は−30℃以上10℃以下であることが好ましく、−25℃以上8℃以下であることがより好ましい。
冷風温度を−30℃以上とすることで、本来の目的である熱による処理が十分に為され、トナーの被覆率Xを高め易い。一方で10℃以下とすることで、熱風による表面処理が施されたトナー粒子の冷却効率が高まり、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aを埋め込みすぎることを抑制でき、被覆率Xを高め易い。
また熱風による表面処理したトナー粒子を均一に急冷し易く、トナー母粒子へシリカ微粒子Aを均一に埋め込んだ状態で固定化できる観点から、冷風流量は3.0m3/分以上10.0m3/sec以下であることが好ましく、冷風流量は4.0m3/分以上8.0m3/sec以下であることがより好ましい。
また、上記冷風は除湿空気であることが好ましい。具体的には、冷風中の絶対水分量が5g/m3以下であることが好ましい。
その後、冷却されたトナー粒子は、ブロワーで吸引され、移送配管(116)を通じて、サイクロン等で回収される。
このようにして熱風による表面処理を施した後、必要に応じて分級機や篩分機を用いて分級し、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子Aが固着されたトナー粒子を得ることができる。
上述のようにして得られたトナー粒子に対して、有機無機複合微粒子Bを外添した(外添工程)後、必要に応じて分級機や篩分機を用いて分級し、本発明のトナーを得ることができる。
本発明のトナーは上述したように有機無機複合微粒子Bの単位拡散指数Yが高いほど好ましく、そのためにはシリカ微粒子Aの被覆率Xを好ましい範囲とし、有機無機複合微粒子Bの一次粒径、含有量を好ましい範囲で調整することが好ましい。
しかしさらに、後述の好ましい外添方法を採用することで、有機無機複合微粒子Bの解砕性、分散性、およびトナー粒子への埋め込みを制御でき、有機無機複合微粒子Bの単位拡散指数Yのより高いトナーが得られるため好ましい。
外添工程で用いる混合装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等が挙げられる。
より有機無機複合微粒子Bの解砕性高め易い点でヘンシェルミキサーを用いることが好ましい。
有機無機複合微粒子Bの解砕性と、トナー粒子への埋め込みの制御の観点から、外添時の混合羽根の最大周速は30.0m/sec以上70.0m/sec以下であることが好ましく、40.0m/sec以上50.0m/sec以下であることより好ましい。
また混合羽根との衝突回数が増え、有機無機複合微粒子Bの解砕性と分散性が高まる点で、外添装置の処理容積(L)に対するトナー粒子(kg)の粉密度は、0.10kg/L以上0.40kg/L以下であることが好ましい。より好ましくは0.15kg/L以上0.30kg/Lである。
なお有機無機複合微粒子Bのトナー粒子表面における凹部への掃き寄せを抑制でき、分散性が高まる観点から、混合時間は0.5分以上10.0分以下の範囲で調整することが好ましく、1.0分以上5.0分以下がさらに好ましい。
また外添工程の前にトナー粒子と有機無機複合微粒子Bを予め低い回転速度でプレ混合することも好ましく用いられる。
また、外添時の混合機内の温度を50℃以下となる範囲調整することが好ましく、混合機に水冷ジャケットを設けるなどして、混合機内の温度を調整することが好ましい。
また、外添工程は、1段階で行っても、2段階以上の多段階で行ってもよく、それぞれの段階で用いる混合装置、混合条件及び母体粒子の配合等は、同一であっても異なっていても良い。付着工程や、外添工程において必要に応じて他の微粒子Cを同時または逐次で外添することも可能である。
本発明のトナーは、特に制限されるものではないが、溶融混練工程を経て、得られたトナー母粒子を含有することが好ましく、トナー母粒子の製造方法として好ましい態様を以下に説明する。
本発明のトナー母粒子は、結着樹脂、着色剤、必要に応じて離型剤を溶融混練して冷却固化される製造工程を含む粉砕法を用いた製造方法であることが好ましい。
溶融混練時にせん断力を加えて混合することで、結着樹脂中における着色剤や離型剤の分散性を高めることができ、トナー中の耐久性を良化できるため好ましい。
原料混合工程では、トナー母粒子を構成する材料として、結着樹脂、着色剤、必要に応じて離型剤、その他の添加剤等を、所定量秤量して配合し、混合する。
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練してせん断力を加えることで、上述したようにトナー母粒子中に着色剤、離型剤等を分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が好ましい。KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却ことが好ましい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、トナー母粒子を得ることができる。
また、必要に応じて、粉砕後に、ハイブリタイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー MR Type(日本ニューマチック社製)を用いて、球形化処理の如きトナー粒子の表面処理を行うこともできる。
更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナー母粒子を得ることが出来る。
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
<シリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定方法>
シリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定は以下の手順で行った。
まず、トナーに対して下記の前処理1、2を行い、トナー粒子表面から外添剤を強制的に剥がす処理を施し、固着されたシリカ微粒子A以外の外添剤を剥がしたトナー粒子表面を有する試料A2を作製する。
(1)前処理1
まずKM Shaker(いわき産業社製)を用い、トナー粒子表面から外添剤を剥がす前処理1を行った。
イオン交換水20g、界面活性剤としてコンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)0.4gを30ccのガラスバイアル(例えば、日電理化硝子株式会社製、VCV−30、外径:35mm、高さ:70mm)に入れて十分混合し、分散液を作成する。このバイアルに試料(トナー)1.5gを添加し、トナーが自然に沈降するまで静置して処理前分散液Aを作成する。その後に下記条件で振とうして外添剤を剥がし、分散液を減圧濾過器で濾過して、濾過ケーキA及び、ろ液Aを得た後、該濾過ケーキAを乾燥機で12時間以上乾燥する。得られた試料を試料A1とした。
[振とう装置/条件]
装置:KM Shaker(いわき産業社製)
model:V.SX
振とう条件:speedを50(振とう速度:46.7cm/秒、1分間に350往復、振とうの幅:4.0cm)に設定し、2分間振とう
(2)前処理2
前処理1で得られた試料A1を試料とし、前処理1と同様にして分散液を作成した後、超音波式ホモジナイザーVP−050(タイテック株式会社製)を用いて、さらに外添剤を剥がす処理を行い、前処理(1)と同様に分散液を減圧濾過器で濾過、乾燥して、試料A2とした。
超音波式ホモジナイザーVP−050による処理条件を下記に示す。
[振とう装置/条件]
装置:超音波式ホモジナイザーVP−050(タイテック株式会社製)
マイクロチップ:ステップ型マイクロチップ、先端径φ2mm
マイクロチップの先端位置:ガラスバイアルの中央部、且つバイアル底面から5mmの高さ
超音波条件:強度30%(強度15W、120W/cm2)、30分間。このとき、分散液が昇温しないようにバイアルを氷水で冷却しながら超音波を掛ける。
なお上記の超音波条件を30分間とした理由は、超音波処理時間を変更して超音波処理を施した場合、20分以上の条件では、蛍光X線分析装置で測定されるトナー中から観測されるシリカ微粒子由来の珪素のネット強度(A)の変化がほぼなくなるためである。
そのため上記の超音波条件(30分間)では、トナー粒子表面から固着されたシリカ微粒子A以外のシリカ微粒子を概ねすべて剥がすことができていると判断した。
このとき蛍光X線分析装置は Axios(PANalytical製)、及び測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いた。
また蛍光X線分析の試料は以下のようにして作製した。試料をリング径22mm×16mm×5mmの塩ビリングに約1g載せ、プレス機にて100kgfで圧縮しサンプルを作製する。得られたサンプルを蛍光X線分析装置(Axios)にて測定及び上記専用ソフトによる解析を実施し、トナーが含有するシリカ微粒子由来の珪素のネット強度(A)を測定した。
(3)固着されたシリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定
前処理1、2を施した試料A2を用いて、被覆率Xは、以下のようにして算出した。なお、被覆率Xはトナー粒子表面のうち、固着シリカ微粒子Aが被覆している面積の割合を示す。
下記装置を下記条件にて使用し、上記サンプル表面の元素分析を行う。
・測定装置:X線光電子分光装置Quantum2000(商品名、アルバックファイ株式会社製)
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、Si原子の定量値の算出には、C 1c(B.E.280〜295eV)、O 1s(B.E.525〜540eV)及びSi 2p(B.E.95〜113eV)のピークを使用した。ここで得られたSi元素の定量値をX1とする。
次いで上述のトナー表面の元素分析と同様にして、シリカ微粒子単体の元素分析を行い、ここで得られたSi元素の定量値をX2とする。
本発明において、トナー表面のシリカ微粒子による被覆率Xは、上記X1及びX2を用いて下式のように定義される。
被覆率X(面積%)=X1/X2×100
尚、本測定の精度を向上させるために、X1及びX2の測定を、2回以上行うことが好ましい。定量値X2を求める際には、外添に使用されたシリカ微粒子Aを入手できれば、それを用いて測定を行う。
入手できない場合には、トナーからシリカ微粒子Aを単離して測定することができる。
例えば、トナーを「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加えたイオン交換水に超音波分散し24時間静置する。上澄み液を採取して乾燥することで、外添剤を単離することができる。トナーに複数の外添剤が外添されている場合は、上澄み液を遠心分離法で分離することで、シリカ微粒子Aを単離することが可能である。
<一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
有機無機複合微粒子B、シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均粒径(D1)の測定は、走査型電子顕微鏡「S−4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行った。
有機無機複合微粒子B、シリカ微粒子Aが外添されたトナーを観察して、最大20万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の有機無機複合微粒子B、シリカ微粒子Aの一次粒子の長径を測定して個数平均粒径(D1)を求めた。
観察倍率は、有機無機複合微粒子B、シリカ微粒子Aの大きさによって適宜調整した。
<形状係数SF−2の測定方法>
有機無機複合微粒子の形状係数SF−2の測定は、走査型電子顕微鏡「S−4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行った。測定は有機無機複合微粒子Bが外添されたトナーを観察し以下のように算出した。
観察倍率は有機無機複合微粒子Bの大きさによって適宜調整した。最大20万倍に拡大した視野において、画像処理ソフト「Image−Pro Plus5.1J」(MediaCybernetics社製)を使用し、ランダムに100個の有機無機複合微粒子Bの一次粒子の周囲長および面積を算出した。
SF−2は下記の式にて算出し、その平均値をSF−2とした。
SF−2=(粒子の周囲長)2/粒子の面積×100/4π
<有機無機複合微粒子B中の無機微粒子の含有量の測定方法>
有機無機複合微粒子B中の無機微粒子の含有量の測定はTGA Q5000IR(TAインスツルメント社製)を用いて測定を行った。測定は以下の手順で行った。
試料をサンプルパンに10.0mg秤量したのち本体にセットした。
そして酸素ガス雰囲気下にて、温度50℃で1分保持した後、25℃/分の昇温速度で、900℃まで加熱し、このときの試料の重量変化を測定した。そして初期試料の質量(W1)と、900℃時点での試料質量(W2)を用い、以下の式により有機無機複合微粒子B中の無機微粒子の含有量を求めた。
無機微粒子の含有量(質量%)=W2/W1×100
外添した有機無機複合微粒子Bを入手できる場合には、それを試料として用いた。入手できない場合には、トナーから有機無機複合微粒子を単離して測定することができる。
例えば、シリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定方法に記載の前処理1、2における濾過液を集め24時間静置した後上澄み液を採取する。該上澄み液を遠心分離法で分離して単離したのち乾燥させることで有機無機複合微粒子Bを回収し測定に供することが可能である。
<単位拡散指数の測定方法>
本発明における単位拡散指数は下記式で求められる。
単位拡散指数=Sr/Si
Sr:有機無機複合粒子の実際のトナー粒子表面被覆率
Si:有機無機複合粒子が理想的に拡散した場合のトナー粒子表面被覆率
理想的に拡散した場合の被覆状態とは、有機無機複合粒子がそれぞれ重なり合うこと無く、凹部に集積することも無く、一層でトナー表面を被覆している状態を示す。
単位拡散指数が1に近いほど有機無機複合粒子が理想的な拡散状態にあることを示す。逆に単位拡散指数が0に近いほど、有機無機複合粒子がトナー表面の凹部などに掃き寄せられ凝集していることを示す。
Srは日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影されたトナー表面画像を、画像解析ソフトImage−Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)により解析して算出する。S−4800の画像撮影条件は以下の通りである。
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
(2)S−4800観察条件設定
有機無機複合粒子の被覆率の算出は、S−4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べてチャージアップが少ないため、有機無機複合粒子の被覆率を精度良く測定することが出来る。
S−4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S−4800の「PC−SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し実行する。フラッシングによるエミッション電流が20〜40μAであることを確認する。試料ホルダをS−4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。
同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
(3)焦点調整
コントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を5000(5k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、視野内全体にある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。この操作を更に2度繰り返し、ピントを合わせる。
次に対象のトナーについて、最大径の中点を測定画面の中央に合わせた状態でコントロールパネルの倍率表示部内をドラッグして、倍率を10000(10k)倍に設定する。操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャ]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー30粒子以上について画像を得る。
(5)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで有機無機複合微粒子の被覆率を算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って解析を行う。この時、領域の面積(C)は24000〜26000ピクセルになるようにする。
ここで有機無機複合粒子の輪郭の領域指定を行い、有機無機複合粒子の被覆面積(D)を算出する。
正方形の領域の面積C、有機無機複合粒子の被覆面積Dから下記式で有機無機複合粒子の実際の被覆率Srが求められる。
Sr(%)=D/C×100
有機無機複合粒子の被覆率の計算はトナー30粒子以上について行う。得られた全データの平均値を本発明におけるSrとする。
Siの求め方は次の通りである。
まずトナー1gに含まれる有機無機複合粒子の質量(Ay)gと密度(Gy)g/cm3、粒径(Dy)cmから、トナー1gあたりに含まれる有機無機複合粒子の個数(N)を計算する。Ayは後述の含有量の測定方法に基づいて測定した。Gyは有機無機複合粒子を試料とし、島津製作所製の乾式自動密度計アキュピック1330で測定した。Dyは先述の通り走査型電子顕微鏡S−4800で測定した。Nの計算式を以下に示す。
N=4/3・π・(Dy/2)3・Gy/Ay
次にSr測定時と同様に撮影した電子顕微鏡画像のうち、凝集せず単分散している有機無機複合粒子を30個以上選択し、そのうち面積が小さい方から10個の平均値を求め、算出した平均値を有機無機複合粒子の1粒子当たりの被覆面積(S1)m2とする。
そして、前記シリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定方法と同様にして、前処理1、2を施した試料A2を用い、外添剤を外したトナー粒子1gあたりの表面積(Sm)m2測定する。
トナー粒子1gあたりの表面積(Sm)は定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用い計測する。
これらの値を下記式に代入しSiを求める。
Si(%)=N×S1/Sm×100
<容積比熱の測定方法>
本発明における容積比熱は個別にサンプルの比熱(J/g・℃)と真密度(g/cm3)を求め、両値の積から算出した。
比熱の測定には、パーキンエルマージャパン社製の入力補償型示差走査熱量測定装置DSC8500を用い、StepScanモードにて測定を行った。サンプルはアルミニウム製パンを用い対照用に空パンを使用した。サンプルは20℃で1分間等温放置後、10℃/minの昇温速度で100℃まで昇温し、80℃時の比熱を算出した。
真密度は、島津製作所製の乾式自動密度計アキュピック1330により測定した。
トナー母体及び有機無機複合微粒子の容積比熱を測定する場合は、例えば次のようにしてトナーから母体及び有機無機複合微粒子を単離した。まずトナーを「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を数滴加えたイオン交換水に超音波分散し24時間静置する。上澄み液を採取して乾燥することで、外添剤を単離することができる。トナーに複数の外添剤が外添されている場合は、上澄み液を遠心分離法で分離して単離が可能である。
<飽和水分吸着量の測定方法>
有機無機複合微粒子Bの飽和水分吸着量の測定はTGA Q5000SA(TAインスツルメント社製)を用いて測定を行った。測定は以下の手順で行った。
試料をサンプルパンに5〜20mg秤量したのち本体にセットした。測定条件は温度32.5℃湿度0%で2時間、その後温度32.5℃湿度80%で2時間その後に再び温度32.5℃湿度0%で2時間測定を行った。測定開始から温度32.5℃湿度0%で2時間放置した後の水分量と32.5℃湿度80%で2時間放置した後の水分量の差を飽和水分吸着量とした。
外添した有機無機複合微粒子Bを入手できる場合には、それを試料として用いた。入手できない場合には、トナーから有機無機複合微粒子を単離して測定することができる。
例えば、シリカ微粒子Aによる被覆率Xの測定方法に記載の前処理1、2における濾過液を集め24時間静置した後上澄み液を採取する。該上澄み液を遠心分離法で分離して単離したのち乾燥させることで有機無機複合微粒子Bを回収し測定に供することが可能である。
<トナー中の有機無機複合微粒子Bの含有量の定量方法>
有機無機複合微粒子Bが外添されたトナーから、有機無機複合微粒子Bの含有量を測定する場合は、トナーから有機無機複合微粒子Bを分離して測定することができる。
イオン交換水20質量部とコンタミノンN(和光純薬工業社製)で0.4質量部で作製した分散液に対して、トナーを1.5質量部添加し、超音波分散させて有機無機複合微粒子Bを外して、24時間静置する。
沈降したトナー粒子と上澄み液に分散した有機無機複合微粒子Bとを分離、回収し、十分に乾燥させることで、単離することができる。
トナーに他の外添剤が外添されている場合は、上澄み液を遠心分離法で分離して単離することで測定することもできる。単離した有機無機複合微粒子Bの量を測定することで、トナー中の有機無機複合微粒子Bの含有量を計算する。
<ガラス転移温度Tgの測定>
ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲−10〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて−10℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、ガラス転移温度Tgとする。
<軟化点の測定>
軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。尚、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの試料を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
昇温速度:4℃/min
開始温度:40℃
到達温度:200℃
<酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(商品名;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(商品名;日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<樹脂A−1の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表1に示す配合量(モル比)の原料モノマーを入れた後、触媒としてジブチル錫を原料モノマー総量100部に対して1.0部添加した。そして槽内温度を窒素雰囲気下にて150℃に撹拌しながら昇温した。
その後、撹拌しながら150℃から200℃まで10℃/時間の昇温速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。200℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、200℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、冷却、粉砕して樹脂A−1を製造した。得られた樹脂A−1の諸物性を表1に示す。
なお、所望の軟化点する重縮合時間を決定するために、予備検討として、減圧開始後からの重縮合時間を複数点変更して反応槽から樹脂を取り出し、冷却、粉砕した後に軟化点を測定した。この予備検討で得られた樹脂A−1処方における重縮合時間と軟化点との対応関係を元に、表1に記載の軟化点となるように重縮合時間を決定した。
<樹脂A−2の製造例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表1に示す配合量(モル比)の原料モノマーを入れた後、触媒としてジブチル錫を原料モノマー総量100部に対して1.0部添加した。そして窒素雰囲気下にて180℃に撹拌しながら昇温した。
次いで窒素雰囲気下において常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から230℃まで10℃/時間の昇温速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。
230℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、230℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、反応槽から取り出し、冷却、粉砕して樹脂A−2を得た。樹脂A−2の諸物性を表1に示す。
重縮合時間は樹脂A−1の製造例と同様に予備検討を行い、得られた重縮合時間と軟化点との対応関係を元に、表1に記載の軟化点となるように重縮合時間を決定した。
<樹脂B−1の製造例>
4つ口フラスコ内にキシレン300部を投入し、昇温して還流させ、スチレン78部(81.4モル部)、アクリル酸−n−ブチル22部(18.6モル部)、及びジ−tert−ブチルパーオキサイド2.5部の混合液を6時間かけて滴下した。
その後、還流下で十分に混合した後、有機溶剤を留去して、表1に示す、樹脂B−1を得た。
<樹脂B−2の製造例>
4つ口フラスコ内に脱気水180部とポリビニルアルコールの2%水溶液20部を投入した後、スチレン78部(81.4モル部)、アクリル酸−n−ブチル22部(18.6モル部)、ジビニルベンゼン0.05部(0.04モル部)、及び2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(半減期10時間温度;92℃)0.08部の混合液を加え、撹拌し懸濁液とした。フラスコ内を十分に窒素で置換した後、80℃まで昇温して重合し、24時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド(半減期10時間温度;72℃)0.1部を追加添加し、さらに、12時間保持して重合を完了した。
その後、還流下で十分に混合した後、有機溶剤を留去して、表1に示す、樹脂B−2を得た。
<シリカ微粒子の製造例1>
乾式法により得られたヒュームドシリカ(BET:40m2/g)100部を原体とし、ヘキサメチルジシラザン15部で処理して、解砕、篩分級処理を施し、シリカ微粒子1を得た。シリカ微粒子1について表2に示す。
<シリカ微粒子の製造例2>
シリカ微粒子の製造例1において、原体として用いるヒュームドシリカのBETを変更した以外は、製造例1と同様にして、シリカ微粒子2を得た。シリカ微粒子2について表2に示す。
<シリカ微粒子の製造例3>
メタノール、水、アンモニア水存在下、34℃に加温し、撹拌しながら、テトラメトキシシランを7時間かけて滴下し、シリカ微粒子の懸濁液を得た。溶媒置換を行って得られた分散液に対して、室温にて、疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザンを得られるシリカ微粒子100部に対して10部となるよう添加した。その後、120℃まで加熱して反応させ、シリカ微粒子表面の疎水化処理を行なった。湿式で篩いを通過させ、粗大粒子を除去後、溶媒を除去し、乾燥することにより、シリカ微粒子3(ゾルゲルシリカ)を得た。シリカ微粒子3について表2に示す。
<シリカ微粒子の製造例4>
乾式法により得られたヒュームドシリカ(BET:200m2/g)100部を原体とし、ヘキサメチルジシラザン10部で処理し、次いでジメチルシリコーンオイル10部で処理を行い、解砕、篩分級処理を施し、シリカ微粒子4を得た。シリカ微粒子4について表2に示す。
<有機無機複合微粒子の製造例1乃至6>
有機無機複合微粒子1乃至6としては、表3に示す無機微粒子を用いて、WO2013/063291の実施例1に従って製造したものを用意した。有機無機複合微粒子1乃至6の物性を表3に示す。
有機無機複合微粒子1乃至6は、示差走査熱量分析(DSC)の測定において、20℃から220℃までの範囲に発熱ピーク、吸熱ピーク、ガラス転移点(Tg)は有さなかった。
<トナー母粒子の製造例1>
・樹脂A−1 45.0部
・樹脂A−2 55.0部
・球状磁性酸化鉄粒子(個数平均粒径=0.20μm、Hc=11.5kA/m、σs=88Am2/kg、σr=14Am2/kg) 60.0部
・離型剤(フィッシャートロプッシュワックス(サゾール社製、C105、融点105℃)) 2.0部
・荷電制御剤(T−77:保土ヶ谷化学社製) 2.0部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機によって、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)で粉砕した。得られた微粉砕粉末をコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)7.0μmの負帯電性の原料トナー粒子を得た。
その原料トナー粒子を、表面改質装置ファカルティー(ホソカワミクロン社製)で表面改質処理を行った。その際、分散ローターの回転周速を150m/secとし、微粉砕品の投入量を1サイクル当たり7.6kgとし、表面改質時間(=サイクルタイム、原料供給が終了してから排出弁が開くまでの時間)を82secとした。またトナー母粒子排出時の温度は44℃であった。以上の工程を経てトナー母粒子1を得た。
<トナー母粒子の製造例2>
トナー母粒子の製造例1において、樹脂A−1を樹脂B−1に、樹脂A−2を樹脂B−2に変更した以外は、トナー母粒子の製造例1と同様にして、トナー母粒子2を得た。
<トナーの製造例1>
(付着工程)
ヘンシェルミキサー(「FM−75型、処理容積50L」、日本コークス工業社製)を用い、以下の処方で材料を投入し、回転羽根の周速38m/sec、混合時間3分、粉密度0.20kg/Lの条件で(表4の条件2)、トナー母粒子の表面にシリカ微粒子1を付着させた母体粒子1を得た。
トナー母粒子1 100.0部
シリカ微粒子1 3.5部
(固着工程(熱風による表面処理工程))
付着工程で得られた得られた母体粒子1を、図1に示す熱風による表面処理装置により処理を行った。
表面処理時の条件として、原料供給速度が4.0kg/hr、熱風流量が7.0m3/min、熱風の吐出温度が195℃、冷風温度が−5℃、冷風流量が4.0m3/minの条件(表4の条件2)で表面処理を行った。
次に、コアンダ効果を利用した風力分級機(「エルボージェットラボEJ−L3」、日鉄鉱業社製)で分級しで微粉及び粗粉を同時に分級除去、トナー粒子1を得た。
(外添工程)
得られたトナー粒子1に、有機無機複合微粒子1を、得られるトナー100部に対して1.0質量%となるように添加し、ヘンシェルミキサー(「FM−75型、処理容積50L」、日本コークス工業社製)で外添を行った。
このとき回転羽根の周速を43m/sec、混合時間4分、粉密度0.16kg/Lの条件(表4の条件1)で外添し、トナー1を得た。
得られたトナー1の重量平均粒径(D4)は7.0μmであり、平均円形度は0.962であった。得られたトナー1の物性を表5に示す。またトナーから単離した有機無機複合微粒子1の物性は、表3に記載の値と同一であった。
<トナーの製造例2乃至22、および28乃至30>
トナーの製造例1における、付着工程、固着工程、外添工程における処方および条件を、表5のように変更した以外は、トナーの製造例1と同様にして、トナー2乃至22、およびトナー28乃至30を得た。トナー2乃至22、およびトナー28乃至30の物性を表5に示す。またそれぞれのトナーから単離した有機無機複合微粒子Bの物性は、表3に記載の値と同一であった。
<トナーの製造例23>
トナーの製造例1において、固着工程を行わなず、表5に記載のように、トナー母粒子種、付着工程、外添工程における処方と製造条件を変更した以外はトナーの製造例1と同様にして、トナー23を得た。トナー23について表5に示す。またトナー23から単離した有機無機複合微粒子Bの物性は、表3に記載の値と同一であった。
<トナーの製造例24>
トナーの製造例1において、表5に記載のように、トナーの処方および製造条件を変更し、外添工程において有機無機複合微粒子の代わりに微粒子C(シリカ微粒子4)を、トナー粒子100部に対して、1.5部添加した以外は、トナーの製造例1と同様にしてトナー24を得た。トナー24について表5に示す。
<トナーの製造例25>
トナーの製造例1において、固着工程を行わなず、表5に記載のように、トナー母粒子種、付着工程、外添工程における処方と製造条件を変更し、外添工程において有機無機複合微粒子の代わりにシリカ微粒子4を、トナー粒子100部に対して、1.5部添加した以外は、トナーの製造例1と同様にしてトナー25を得た。トナー25について表5に示す。なおトナーから単離したシリカ微粒子4の容積比熱は8564kJ/(m3・℃)、飽和水分吸着量は0.1質量%であった。
<トナーの製造例26>
トナーの製造例1において、表5に記載のように、トナーの処方および製造条件を変更し、外添工程において有機無機複合微粒子の代わりに樹脂粒子1(エポスターS 日本触媒社製)を、トナー粒子100部に対して、1.0部添加した以外は、トナーの製造例1と同様にしてトナー26を得た。トナー26について表5に示す。なおトナーから単離した樹脂粒子1の個数平均粒径は150nm、SF−2は100、容積比熱は4144kJ/(m3・℃)、飽和水分吸着量は5.1質量%であった。
<トナーの製造例27>
トナーの製造例26において、外添工程においてトナー粒子100部に対して、樹脂粒子1(エポスターS 日本触媒社製)を1.0部とシリカ微粒子4を1.0部を添加した以外は、トナーの製造例26と同様にしてトナー27を得た。トナー27について表5に示す。
得られたトナーの観察を走査型電子顕微鏡「S−4800」(商品名;日立製作所製)を用いて行った。その結果、トナー粒子表面に存在する樹脂微粒1は、シリカ微粒子4が付着しているものの埋め込まれた構造は有していなかった。またSF−2は133であった。
〔実施例1〕
トナー1を以下の様に評価した。評価結果を表6に示す。
<トナーの耐久性評価(ベタ画像の画像濃度)>
HP LaserJet Enterprise600 M603dn(HP社製)を、本来のプロセススピードよりも高速である500mm/sに改造して使用した。
トナー1を所定のプロセスカートリッジに982g充填したものを用意した。印字率1%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、80,000枚の画出し試験を実施した。評価はトナー母粒子の軟化で外添剤の埋め込みが促進される、厳しい環境下である高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)で行った。
1,000枚目と、80,000枚目において、5mm丸ベタ画像を有するチェック画像を出力して画像濃度を測定した。
画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm丸のベタ黒画像の反射濃度を測定することにより測定した。数値が大きいほどトナーの耐久性が良好であることを示す。具体的な評価基準を以下に示す。
A:反射濃度 1.45以上 (優れる)
B:反射濃度 1.40以上1.45未満 (良好)
C:反射濃度 1.30以上1.40未満 (やや良好)
D:反射濃度 1.35未満 (従来トナーレベル)
本発明ではC以上が許容できる。
<トナーの帯電立ち上がり性評価(長期放置後の非画像部へのカブリ)>
前記トナーの耐久性評価において、80,000枚目後にチェック画像を出力した後、白地画像を5枚を出力して、それぞれカブリ率を測定して最大値を求め、耐久後のカブリ率とした。その後、本体とカートリッジを高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)で、3日間放置した後、再度白地画像を5枚を出力してカブリ率を測定して最大値を求め、長期放置後のカブリ率とした。カブリ率の測定は以下のようにして行った。
評価画像と、通紙前の白紙について、デジタル白色光度計(TC−6D型、有限会社東京電色製、グリーンフィルター使用)を用い、反射率(%)を1枚あたり5点測定し、それぞれの平均反射率(%)を求めた。そして白紙の平均反射率(%)と評価画像の平均反射率(%)の差をカブリ率(%)とした。
評価紙としてはボンド紙(坪量75g/m2)紙を用いた。
A:カブリ率が0.5%未満である。 (優れる)
B:カブリ率が0.5%以上1.0%未満である。 (良好)
C:カブリ率が1.0%以上1.5%未満である。 (やや良好)
D:カブリ率が1.5%以上である。 (従来トナーレベル)
本発明ではC以上が許容できる。
<低温定着性の評価(摺擦前後の濃度低下率)>
HP LaserJet Enterprise600 M603dn(HP社製)の本来のプロセススピードよりも高速である500mm/sに改造して使用した。
この装置を用いて、定着器の温度200℃にて、キヤノン社製GF−C104(A4、坪量104g/m2)に画像濃度が0.70となるようにハーフトーン画像を出力する。得られた画像を4.9kPaの荷重をかけたシルボン紙で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率を測定した。濃度低下率が低いほど低温定着性が良好であることを示す。画像出力は全て定着装置が温まり難く、低温定着にはより困難な条件である低温低湿環境下(15℃/10%RH)で行った。
A:濃度低下率 5.0%未満 (優れる)
B:濃度低下率 5.0%以上10.0%未満 (良好)
C:濃度低下率 10.0%以上15.0%未満 (やや良好)
D:濃度差 15.0%以上 (従来トナーレベル)
本発明ではC以上が許容できる。
<ハーフトーン画像の画像濃度均一性>
HP LaserJet Enterprise600 M603dn(HP社製)を、本来のプロセススピードよりも高速である500mm/sに改造して使用した。
トナー1を所定のプロセスカートリッジに982g充填したものを用意した。印字率1%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンがいったん停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、80,000枚の画出し試験を実施した。評価はトナー母粒子の軟化で外添剤の埋め込みが促進される、厳しい環境下である高温高湿環境下(32.5℃,85%RH)で行った。
1,000枚目と、80,000枚目において、先端余白5mmの後、20mm×20mmのベタ画像部、200mm×250mmのハーフトーン画像部(ドット印字率23%)を有するチェック画像を出力した。そしてハーフトーン画像部の画像濃度をランダムに10点測定し、最大値と最小値を求め、最大値と最小値の差を求めた(ハーフトーン画像濃度差)。
画像濃度は、反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、画像部の反射濃度を測定することにより測定した。
ハーフトーン濃度差が小さいほど。ハーフトーンの画像均一性に優れることを示す。
具体的な評価基準を以下に示す。
A:濃度差 0.04未満 (優れる)
B:濃度差 0.04以上0.07未満 (良好)
C:濃度差 0.07以上0.10未満 (やや良好)
D:濃度差 0.10以上 (従来トナーレベル)
本発明ではC以上が許容できる。
<ハーフトーン画像の画像濃度>
前記ハーフトーンの画像濃度で、画像濃度1,000枚目後と80,000枚目後のチェック画像について、ハーフトーン画像部の画像濃度をランダムに10点測定し平均値を求めた(ハーフトーン画像濃度)。
ハーフトーン画像濃度が大きいほどトナーの耐久性が良好であることを示す。具体的な評価基準を以下に示す。
A:反射濃度 0.70以上 (優れる)
B:反射濃度 0.65以上0.70未満 (良好)
C:反射濃度 0.60以上0.65未満 (やや良好)
D:反射濃度 0.60未満 (従来トナーレベル)
本発明ではC以上が許容できる。
<実施例1乃至22、比較例1乃至8>
実施例1において、トナー2乃至22、比較例1乃至8を用いて、同様に評価を行った。評価結果を表6に示す。