JP6414108B2 - 熱延コイルの払出方法 - Google Patents
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Description
厚鋼板をホットストリップミルで圧延して製造した熱延コイルを処理ラインでアンコイラーから払い出して電縫鋼管やスパイラル鋼管を製造することにより、厚板ミルで製造される厚鋼板からこれらの鋼管を製造する場合に比べ、連続して長いパイプを製造することができ、また生産性も向上する。
例えば、高強度厚肉熱延鋼帯を電縫管に成形する際に、処理ラインの入側のアンコイラーに装入された熱延コイルを払い出す際に、コイルにスプリングバックによる巻きほぐれが発生すると、コイルの層間に隙間が生じ、成形加工する処理ラインでの通板時に層間の相対すべりによって鋼帯にスリ疵が発生するという問題が生じる。また、建機用高強度鋼板のシートカットラインの入側のアンコイラーに装入された熱延コイルを払い出す際にも同様に、スプリングバックによる巻きほぐれが発生してコイルの層間に隙間が生じ、同様にスリ疵が発生するという問題がある。
しかし、特許文献2に記載された発明は、熱延コイルを処理するラインの入側で張力を付与するものであるが、ラインパイプ素材に用いられるような極厚材や建機用鋼板のように降伏強さが非常に大きなものに対しては、より大きな張力を付与する必要があるため、張力を付与するための付帯的設備が大型化し経済的ではない。
特許文献3で開示された押さえロールは、図2に示すものと同様に、熱延コイルの回転軸に平行な回転軸を有する1本の押さえロール3cが上部から熱延コイル1を押し付ける構造になっている。この従来技術では、図4に示すように、コイルの外周面に対して垂直方向の力を付与することで、コイルの層間での摩擦抵抗を増加させる効果により、コイルが巻き緩むときの層間のすべりを低減して、コイルの巻きほぐれを防止している。この方法は設備構成が比較的簡易であり、板厚が薄く、降伏強さが低い鋼板に対しては有効である。なお、図4では、押さえロール3cにより下から押し付けるように描いている。
ラインパイプ素材となる熱延鋼帯は、主としてAPI規格にてX65以上、製品厚としては12mm以上のものである。また、建機用高強度鋼板としては、主として降伏応力が980MPa以上、製品厚としては4〜12mmであり、通常の熱延鋼帯としては比較的板厚が厚いものである。鋼帯の降伏応力が高いほどスプリングバックが大きくなり、また、降伏強度が比較的低いものであっても、板厚が厚いほどスプリングバック時の曲げモーメントが大きくなって、そのために成形ラインのアンコイラーで鋼帯を払い出す際に巻きほぐれが顕著になり、スリ疵が発生しやすくなるからである。
[1]降伏応力400MPa以上の熱延鋼帯のコイルをアンコイラーから払い出すに際し、2本で一対の押さえロールを、下記の式(1)で表されるP0(kN)以上の押付け力でコイルの外周部から押し付けながら払い出すことを特徴とするコイル払出方法。
P0=0.001×h2×W×Y/L・・・(1)
ここで、hは熱延鋼帯の板厚(mm)、Wは熱延鋼帯の板幅(mm)、Yは熱延鋼帯の降伏応力(MPa)、Lは2本で一対の押さえロールのロール軸心間距離(mm)である。
[2]降伏応力400MPa以上の熱延鋼帯のコイルをアンコイラーから払い出すに際し、コイルの払い出し開始の外周部から全巻き数の少なくとも1/4まで、2本で一対の押さえロールを、下記の式(1)で表されるP0(kN)以上の押付け力でコイル外周部に押し付けながら払い出すことを特徴とするコイル払出方法。
P0=0.001×h2×W×Y/L・・・(1)
ここで、hは熱延鋼帯の板厚(mm)、Wは熱延鋼帯の板幅(mm)、Yは熱延鋼帯の降伏応力(MPa)、Lは2本で一対の押さえロールのロール軸心間距離(mm)である。
[3]前記2本で一対の押さえロールを前記コイルの最上部から押し付けることを特徴とする[1]又は[2]に記載のコイル払出方法。
[4]前記2本で一対の押さえロールを前記コイルの最下部から押し付けることを特徴とする[1]又は[2]に記載のコイル払出方法。
図1には高強度熱延コイルの処理ラインの入側に設置されたアンコイラーが示されている。
ここでの処理ラインは、熱延コイルを処理する工程のアンコイラーから払い出して、熱延鋼板を処理するラインが対象となるが、具体的には、スパイラル鋼管の造管ライン、建機用高強度材のシートカットラインが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではなく、熱延コイルの巻換えラインや調質圧延を行うスキンパスライン、短冊状にコイルのせん断を行うスリッターライン、酸洗ラインのアンコイラーの他、プレス成形ライン入側のアンコイラーにも適用できる。
マンドレル2は、半径方向に拡縮可能であり、縮小させた状態でコイルを受け入れ、拡大させた状態でコイル内周面をチャックすることができる。
いずれの場合にも、本発明では回転する熱延コイルの外側に2本で1対の押さえロール3a、3bが配置される。
そして、ハウジング6などに設けた伸縮可能なシリンダー5により、支持ユニット4を介して、押さえロール3a、3bが熱延コイルをその外周部から押し付けることが可能な構造になっている。押さえロール3a、3bは、そのロール軸がコイルの回転軸(マンドレル2の回転軸)と平行になるようコイルに押し付けられる。
押さえロール3a、3bと支持ユニット4とシリンダーとは、後述するように、コイル外周部の鋼帯に曲げモーメントを付与する手段を構成している。
本発明が対象とする熱延鋼帯のコイル径やマンドレル径などを考慮して、ロール軸心間距離は250mm以上とすることが望ましい。なお、払い出し開始時のコイル径はおよそ1800〜2200mm、マンドレル径は600〜800mmである。
鋼板にスプリングバックを生じさせようとするモーメントは、熱延コイルの曲率によっても変化するが、概ね板厚の2乗に比例して、かつ板幅と降伏応力に比例するから、このモーメントと逆方向のモーメントを付与することでスプリングバックを発生させる曲げモーメントの影響を解消して、払い出し時に発生するするスリ疵を確実に防止することができる。
P0=0.001×h2×W×Y/L・・・(1)
〇:コイル全長でスリ疵が発生しなかった場合
Δ:コイル全長でスリ疵が1〜5個発生した場合
×:コイル全長でスリ疵が6個以上発生した場合
図6から分かるように、押付け力をP0以上にしてコイルを払い出すと、スリ疵の発生は皆無であったが、押付け力がP0未満であると、ほとんどのコイルにおいてスリ疵が発生した。
図7から分かるように、スリ疵の発生状況は、図6と同様であり、押付け力をP0以上にしてコイルを払い出すと、スリ疵の発生は皆無であったが、押付け力がP0未満であると、わずかな例を除いて、スリ疵が発生した。
押付け力の上限については特に制約はないものの、押付け力が過大になるとマンドレル2を駆動するための動力が増加してしまう。また、引張力によって鋼板を搬送させる場合には、より大きな引張力が必要となるため、実用上は式(1)から求まるP0の2倍程度を上限にするのが望ましい。
したがって、熱延コイルの下側に押さえロールを設置してもよく、図5に示すように、コイルの最下部から押し付けてもよい。
降伏応力が400MPa以上の熱延鋼帯のコイルに対して、2本で1対の押さえロールによる押付け力の値や押さえロールの軸心間距離を変えて、アンコイラーから熱延鋼帯の払い出しを行い、払い出された鋼帯のスリ疵評価を行った。
押さえロールは、支持ユニットを介して、ハウジングに設けたシリンダーにより、コイルの最上部から押し付けた。
鋼帯は板厚が5〜24.5mm、板幅が1650〜1900mm、降伏応力は540〜1200MPaの範囲である。
〇:コイル全長でスリ疵が発生しなかった場合
Δ:コイル全長でスリ疵が1〜5個発生した場合
×:コイル全長でスリ疵が6個以上発生した場合
これに対して、押付け力がP0未満である比較例では、いずれもスリ疵が観察され、スリ疵評価がΔ(やや不良)か×(不良)であった。
降伏応力が400MPa以上の鋼板に対して、図1に示す2本で1対の押さえロールによる払い出しと図2に示す1本の押さえロールによる払い出しを行い、アンコイラーから払い出して鋼帯のスリ疵評価を行なった。
2本で1対の押さえロールおよび1本の押さえロールは、いずれも、支持ユニットを介して、ハウジングに設けたシリンダーにより、コイルの最上部から押し付けた。
スリ疵評価の基準は実施例1と同じである。結果を表2に示した。なお、表2におけるP0(kN)は式(1)により求めた値である。
これに対して、1本の押さえロールによる比較例の実施例No.2、4、6、8、10、12では、スリ疵が防止できず、スリ疵評価は不良(×)あるいはやや不良(Δ)であった。
例えば、実施例No.1(本発明例)と実施例No.2(実施例)の対象鋼帯は、板厚、板幅、降伏応力、押さえロールの軸心間距離および押さえ力がP0以上でともに同じであるが、2本一対の押さえロールで押さえた実施例No.1のスリ疵評価は〇であり、1本の押さえロールで押さえた実施例No.2のスリ疵評価は×である。
実施例No.3(本発明例)とNo.4(比較例)、実施例No.5(本発明例)とNo.6(比較例)、実施例No.7(本発明例)とNo.8(比較例)、実施例No.9(本発明例)とNo.10(比較例)、実施例No.11(本発明例)とNo.12(比較例)についても同様である。
2:マンドレル
3a、3b、3c:押さえロール
4:押さえロール支持ユニット
5:シリンダー
6:ハウジング
7:ピンチロール
8:レベラー
Claims (4)
- 降伏応力400MPa以上の熱延鋼帯のコイルをアンコイラーから払い出すに際し、2本で一対の押さえロールを、下記の式(1)で表されるP0(kN)以上の押付け力でコイルの外周部から押し付けながら払い出すことを特徴とするコイル払出方法。
P0=0.001×h2×W×Y/L・・・(1)
ここで、hは熱延鋼帯の板厚(mm)、Wは熱延鋼帯の板幅(mm)、Yは熱延鋼帯の降伏応力(MPa)、Lは2本で一対の押さえロールのロール軸心間距離(mm)である。 - 降伏応力400MPa以上の熱延鋼帯のコイルをアンコイラーから払い出すに際し、コイルの払い出し開始の外周部から全巻き数の少なくとも1/4まで、2本で一対の押さえロールを、下記の式(1)で表されるP0(kN)以上の押付け力でコイル外周部に押し付けながら払い出すことを特徴とするコイル払出方法。
P0=0.001×h2×W×Y/L・・・(1)
ここで、hは熱延鋼帯の板厚(mm)、Wは熱延鋼帯の板幅(mm)、Yは熱延鋼帯の降伏応力(MPa)、Lは2本で一対の押さえロールのロール軸心間距離(mm)である。 - 前記2本で一対の押さえロールを前記コイルの最上部から押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル払出方法。
- 前記2本で一対の押さえロールを前記コイルの最下部から押し付けることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル払出方法。
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JP2016046723A JP6414108B2 (ja) | 2016-03-10 | 2016-03-10 | 熱延コイルの払出方法 |
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