JP6252508B2 - 高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高強度厚肉熱延鋼帯、特に高強度パイプの素材となる熱延鋼帯の製造方法に関する。
近年、主としてパイプラインでの原油や天然ガス等の資源の輸送効率化を目的に、API(American Petroleum Institute)規格にしてX70〜100といった大径厚肉高強度パイプ材の需要が高まっている。原油や天然ガス等の資源を効率的に輸送するため、パイプ内部には高い内圧がかけられており、かつ寒冷地での使用や地震による地殻変動なども考慮し、高靭性、高強度といった特性がパイプ材にとって重要になっている。これらのパイプラインにて使用されるパイプは肉厚が12〜25mm程度、外径は20インチ程度以上と大径であり、従来は高強度パイプとしては長手方向に縦長形状である厚鋼板の短辺側を円形に成形した後、突合せ部を長手方向に溶接してパイプとする電縫管が多用されている。通常、厚鋼板は熱間スラブを1基または2基の圧延機を有する厚板ミルでの多パス圧延にて略矩形形状に製造されるものであり、その製品長は最大でも30m程度である。
これに対し、近年、厚鋼板を薄板圧延用の熱間圧延(ホットストリップミル)ラインにて圧延してコイル状に巻き取って熱延コイルとした後、コイルを巻きほどいて所定の長さに切断した後に電縫管に成形するほか、熱延鋼帯を長手方向にらせん状に成形すると同時に板幅端部の突合せ部を溶接しながらパイプに製造するスパイラル鋼管の需要が高まっている。熱延コイルは、最大45トン程度までの製造が可能であり、例えば板厚20mm、板幅1900mm程度であれば熱延鋼帯の長さは151m程度となり、直径28インチのスパイラル鋼管に成形したときのパイプ長は約128mとなる。このように、パイプ成形前の母材をホットストリップミルで製造し、熱延コイルとすることにより、厚板ミルで製造される厚鋼板から製造する場合に比べ、連続して長いパイプの製造が可能となることから生産性の向上も期待できる。
特開2010−162594号公報
熱間圧延ラインにおいて高強度厚肉熱延鋼帯を製造しようとする場合には、熱延コイルとして巻取り後に、スプリングバックによるコイルの巻きほぐれが発生しやすく、熱間圧延ラインからの熱延コイルの取り出し・搬送等の取り扱いに障害を招きやすくなる。巻きほぐれがひどい場合にはコイル台車に搭載した状態にてコイラー(巻き取り装置)から抜き出す際にコイルが浮き上がって台車から転げ落ちるという問題が生じる場合もある(特許文献1を参照)。
これに対して、特許文献1には、熱間圧延ラインのコイラーにおいて、高強度厚肉鋼帯を巻き取った後に、複数のラッパーロールをコイルに押し付けた状態で、コイル外周部を冷却する技術が開示されている。これにより、熱間圧延ラインからの熱延コイルの取り出し・搬送等の取り扱いが容易になる。
ところで、高強度厚肉熱延鋼帯を電縫管に成形する際に、成形ラインの入側に熱延コイルを装入した後、スプリングバックによる巻きほぐれが発生すると、コイルの層間に隙間が生じ、成形ラインでの通板時に層間の相対すべりによってスリ疵が発生するという問題も生じる。
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、熱延コイルの外周部のスプリングバックを防止して、コイルの巻きほぐれを防止するための手段であり、熱延コイルの内周部のスプリングバック自体を低減するものではない。
そのため、熱間圧延ラインにおける高強度厚肉熱延鋼帯の製造上及び搬送上の問題点を解決できるものの、前述の電縫管の成形ラインにおいて発生するスリ疵の問題点を解決するものではない。すなわち、電縫管の成形ライン等における入側のアンコイラーでは、成形を開始した後に熱延コイルの内周部分が露出する。その際に、内周部のスプリングバックに起因して鋼帯表面にスリ疵が発生する。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、熱延コイルとして得られる熱延鋼帯において、内周部のスプリングバックに起因するスリ疵の発生を抑制できる高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、高強度厚肉熱延鋼帯を熱延コイルとして巻き取った後に保熱することにより、熱延コイルの内周部のスプリングバックが抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]板厚12mm以上の熱延鋼帯を形成し、形成した上記熱延鋼帯を熱延コイルとして巻き取る熱間圧延工程と、上記熱延コイルを保熱する保熱工程と、を備える高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
[2]上記熱延鋼帯を上記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度が400℃以上600℃以下である、上記[1]に記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
[3]上記熱延鋼帯を上記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度をCT(単位:℃)、上記熱延コイルを保熱する保熱時間をt(単位:分)とした場合に、下記式(1)を満足する、上記[1]または[2]に記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
t≧350−0.57×CT・・・(1)
[4]上記熱延鋼帯を上記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度をCT(単位:℃)、上記熱延コイルを保熱する際の雰囲気温度をAT(単位:℃)とした場合に、下記式(2)を満足する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
CT−100≦AT≦CT・・・(2)
本発明によれば、熱延コイルとして得られる熱延鋼帯において、内周部のスプリングバックに起因するスリ疵の発生を抑制できる高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法を提供できる。
本発明の製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。 保熱装置の一例を概念的に示す図である。 保熱装置の他の一例を概念的に示す図である。 実験例No.1〜22について、巻取温度CTと保熱時間tとの関係を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[本発明者らの知見]
本発明者らは、高強度厚肉熱延鋼帯の熱間圧延工程における巻取り後のスプリングバック発生挙動について検討した。その結果、熱延鋼帯を熱延コイルとして巻き取った後に保熱することによって、コイル内周部のスプリングバックを低減できるという知見を得た。
熱延鋼帯のコイラーにおける巻取り過程では、鋼帯を巻取り径に一致させるように曲げ加工が施される。一般に、曲げ加工では、曲げの外側では引張応力、曲げの内側では圧縮応力が作用し、加工力の除去、すなわち除荷過程において、板厚断面内の曲げモーメントが0になる位置まで弾性的に曲率が変化するスプリングバック変形が生ずる。
そして、このスプリングバック変形を低減するためには、例えば、曲げ加工後に長手方向に引張歪、または圧縮歪を加えた後に除荷することによって、曲げモーメントが0になるまでの変形量を小さくできることが知られている(例えば、日本塑性加工学会「曲げ加工―高精度化への挑戦―」コロナ社,1995年1月10日,p.28参照)。
本発明は、この原理を高強度厚肉熱延鋼帯の巻取り後のコイルに応用したものであり、曲げ加工後に外力を加えるのではなく、曲げ加工によって板厚断面内に応力が付与されている状態で保熱することによってクリープひずみを発生させ、そのひずみにより板厚断面内の曲げモーメントの分布を軽減させるものである。
また、巻取り後の熱延コイルは外巻きの部分から順次温度が低下するため、温度が低下しようとする部分には熱収縮が生じるが、コイル全体として高温に維持することで、その温度低下が生じる部分には鋼板の長手方向に引張応力が発生する。この引張応力によっても高温に保持された状態ではクリープ変形が促進され、結果として板厚断面内の曲げモーメントの分布が軽減される。
こうして、コイルが室温まで冷却された後にも板厚断面内の曲げモーメントの分布が緩和され、コイル内周部のスプリングバックが低減される。
すなわち、本発明によれば、熱延コイル巻取り後のクリープひずみを利用することにより、コイル内周部のスプリングバックも効果的に低減できるので、鋼管の成形ライン等において、高強度厚肉熱延鋼帯の巻きほぐれに起因したスリ疵を抑制できる。これにより、高品質な電縫管の素材を提供することができる。
[高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法]
本発明の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)について、図1に示すフローチャートを参照して説明する。
図1は、本発明の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1に示す製造方法は、熱間圧延工程(S100)と、保熱工程(S102)と、をこの順に有する。
以下、各工程について詳細に説明する。
〔熱間圧延工程〕
熱間圧延工程は、例えば鋼スラブを加熱し、板厚12mm以上の熱延鋼帯(高強度厚肉熱延鋼帯)を形成し、形成した熱延鋼帯を熱延コイルとして巻き取る工程である。
本発明が対象とする高強度厚肉熱延鋼帯としては、例えば、API規格にてX65以上のものが挙げられるが、その板厚としては12mm以上のものだけを対象とする。スプリングバックは鋼板の降伏応力が高いほど顕著に発生するからであり、板厚が厚いほどスプリングバック時の曲げモーメントが大きくなって、成形ライン等でのスリ疵が発生しやすくなるからである。
なお、本発明の製造方法は、原理的には板厚12mm未満の熱延鋼帯にも適用できるが、板厚が薄い場合にはスプリングバック時の曲げモーメントが小さいため、成形ライン等において一定の張力を付与しながら払い出せば、たとえコイルの内周部にスプリングバックが存在していても、コイルの巻きほぐれ等は容易に防ぐことができるため、本発明の対象とはしない。
また、本発明が対象とする熱延鋼帯(高強度厚肉熱延鋼帯)の板厚の上限としては、特に限定されないが、34mm以下が好ましく、26mm以下がより好ましい。
なお、本発明において、「高強度」とは、JIS Z 2241の規定に準拠した引張強さが590MPa以上であることをいう。
熱間圧延工程に用いる高強度厚肉熱延鋼帯の製造ライン(熱間圧延ライン)としては、例えば、加熱炉、粗圧延機、仕上圧延機、冷却装置および巻取り機(コイラー)を有するホットストリップミルが挙げられる。もっとも、高温で熱延鋼帯の巻取りを行うコイラーを備えていれば、レバース式の熱間圧延機を有するステッケルミル等であってもよい。
熱間圧延ラインにおいては、仕上圧延により所定の板厚まで圧下した後に、鋼板として所定の機械的性質を得るために一定の温度まで冷却し、高温のままコイル(熱延コイル)として巻き取る。以下、熱延コイルとして巻き取る際の熱延鋼帯の温度(単位:℃)を、「巻取温度」、「CT」または「巻取温度CT」とも称する。
巻取温度(CT)は、400℃以上が好ましい。巻取温度が低すぎるとコイル内周部でクリープひずみが発生しにくく、スプリングバック低減の効果を得にくい場合があるが、巻取温度が400℃以上であれば、コイル内周部でクリープひずみが発生しやすくなり、スプリングバック低減の効果が十分に得られる。
また、巻取温度(CT)は、高過ぎる場合には、巻取り後の保熱をしなくてもスプリングバックを低減するのに十分なクリープひずみの発生が期待できるという理由から、600℃以下が好ましい。
さらに、巻取温度(CT)は、得られる熱延鋼帯の引張強さが良好になるという理由から、550℃以下がより好ましい。
なお、コイラーによる巻き取り時に、特許文献1に記載された技術を適用してもよい。コイル外周部のスプリングバックを抑制して、搬送時の巻きほぐれを抑制できるからである。
そして、熱間圧延工程において巻き取られた熱延コイルは、熱間圧延ラインから保熱工程に供される。
熱間圧延ラインから保熱工程で使用される後述する保熱装置等への熱延コイルの搬送方法には特に限定はない。例えば、通常のコイル搬送台車を使用すればよい。その際、搬送中の熱延コイルの温度低下を抑制する観点から、熱延コイルを断熱材等で覆いながら搬送するのが好ましい。
また、搬送時間が短い場合は、搬送手段として、コイル搬送台車に替えて、クレーンやフォークリフト等の重量物の搬送が可能な運搬用機材を使用してもよい。それらの運搬用機材を用いて搬送する場合は断熱性を高めることが困難であるが、短時間の搬送であれば、熱延コイルの温度低下を抑えることができる。
〔保熱工程〕
保熱工程は、熱間圧延工程において巻き取られた熱延コイルを保熱する工程である。
保熱工程における熱延コイルの保熱(温度保持)の方法には特に限定はなく、例えば、耐熱性および断熱性を有する容器内に収容する、耐熱性および断熱性を有するカバー(保熱カバー)で覆う等の方法が利用可能であり、より具体的には、例えば、後述する保熱装置を使用できる。
図2は、保熱装置の一例を概念的に示す図である。図2に示す保熱装置40は、一面が開放された箱型のピット42と、ピット42の開口部を覆う保熱カバー44とを有する。
ピット42の材質としては、例えば、耐熱性および断熱性を有する材質が挙げられる。ピット42の具体例としては、表面を断熱材で被覆したコンクリート壁、表面をアルミ箔等の反射材で被覆したコンクリート壁などが挙げられる。
また、保熱カバー44の材質としては、例えば、耐熱性および断熱性を有する材質が挙げられる。保熱カバー44の具体例としては、表面を断熱材で被覆した鋼製の蓋、表面をアルミ箔等の反射材で被覆した鋼製の蓋などが挙げられる。
図2に示す保熱装置40においては、複数個の熱延コイル26をピット42に収納し、ピット42の開口部を保熱カバー44で覆うことで、熱延コイル26全体の温度低下を抑制しながら保熱する。これによって、熱延コイル26の内周部の温度が一定時間保持され、クリープひずみの発生によりスプリングバックを低減できる。
図3は、保熱装置の他の一例を概念的に示す図である。図3に示す保熱装置30は、熱延コイル26を内部に収納可能な一面が開放された鐘状の保熱カバー32を有する。保熱カバー32の材質としては、例えば、耐熱性および断熱性を有する材質が挙げられる。保熱カバー32の具体例としては、内部をアルミナやシリカなどの繊維状の断熱素材で覆った鋼製のカバーなどが挙げられる。
図3に示す保熱装置30においては、保熱カバー32内に熱延コイル26を収容して、熱延コイル26からの熱エネルギーの放散を抑制して、熱延コイル26の温度低下を抑制しながら保熱する。こうして、熱延コイル26の内周部でのクリープひずみ発生が促進され、スプリングバックを低減できる。
なお、図3に示す保熱装置30は、補助加熱手段36を有する。補助加熱手段36は、公知の加熱手段であり、保熱装置30内を加熱するものである。補助加熱手段36を有することで、熱延コイル26を例えば500℃以上で長時間保熱できる。また、熱間圧延工程における巻取温度(CT)が例えば450℃以下になると、熱延コイル26の内周部に発生するクリープひずみが小さくなり、より長時間の保熱が必要となる場合がある。このとき、単に保熱カバー32のみでは高温での保持が難しい場合には、補助加熱手段36を用いればよい。
もっとも、保熱装置30は、熱延コイル26を所定の時間、所定の温度範囲に保熱できれば、補助加熱手段36は有さない構成であってもよい。
さらに、図3に示す保熱装置30は、好ましい態様として、雰囲気制御装置38を備える。雰囲気制御装置38は、保熱カバー32内に不活性ガスを供給し、また、ガス濃度等を制御するものである。保熱カバー32内を不活性ガス雰囲気とすることで、熱延コイル26の表面の酸化を抑制できる。
次に、保熱工程において熱延コイルを保熱する時間(保熱時間)について説明する。なお、以下では、保熱時間(単位:分)を「t」または「保熱時間t」とも称する。
保熱時間(t)は、熱間圧延工程における巻取温度(CT)が高い場合には短時間で十分であり、一方、巻取温度(CT)が低い場合には比較的長時間であることが好ましい。
具体的には、下記式(1)を満足することが好ましい。下記式(1)を満足することにより、コイル内周部でのクリープひずみ発生がより促進され、スプリングバックをより低減でき、スプリングバックに起因する鋼帯表面のスリ疵発生がより抑制される。後述する[実施例]において説明する図4のグラフも参照されたい。
t≧350−0.57×CT・・・(1)
なお、保熱時間の上限は、特に限定されない。クリープひずみは保持時間が長いほど顕著に発生するからである。
もっとも、保熱装置内等で熱延コイルが室温に冷却されるまで保熱する必要はなく、あまり長時間保熱すると生産能率が低下するとともに、熱延コイルの温度が低くなるとクリープひずみの発生が期待できなくなる場合がある。
したがって、保熱時間の上限としては、実用的な観点から最大でも10時間が好ましい。また、例えば、熱延コイルの平均温度が300〜350℃よりも低くなったら、保熱を中止して、保熱装置等から搬出するようにしてもよい。
次に、保熱工程において熱延コイルを保熱する際の雰囲気の温度(雰囲気温度)について説明する。雰囲気温度は、具体的には、例えば、図2に示す保熱装置40においては、保熱カバー44で覆われた箱型のピット42の内部雰囲気の温度であり、図3に示す保熱装置30においては、鐘状の保熱カバー32の内部雰囲気の温度である。
なお、以下では、雰囲気温度(単位:℃)を「AT」または「雰囲気温度AT」とも称する。
雰囲気温度(AT)は、熱間圧延工程における巻取温度(CT)以下の温度であることが好ましい。巻取温度(CT)は、高強度厚肉熱延鋼帯の機械的性質を制御するために設定されるものであり、巻取温度(CT)よりも高い温度で熱延コイルを加熱すると機械的性質が劣化しやすいおそれがあるからである。
一方、雰囲気温度(AT)は、熱間圧延工程における巻取温度(CT)よりも100℃だけ低い温度以上の温度であることが好ましい。雰囲気温度(AT)を低くし過ぎると、保熱装置内等での熱延コイルの冷却が促進され、クリープひずみの発生が阻害されやすい場合があるからである。
具体的には、下記式(2)を満足することが好ましい。
CT−100≦AT≦CT・・・(2)
保熱工程において、所定時間にわたって保熱された熱延コイルは、その後、例えば室温まで冷却されて製品となる。熱延コイル内周部に発生するクリープひずみは高温ほど発生しやすく、熱延コイルの温度低下とともに発生しにくくなるため、一定の温度以下ではスプリングバックを低減させるほどのクリープひずみが発生しなくなる。
冷却の方法としては、特に限定されず、例えば、空冷または水冷が挙げられる。空冷の場合、例えば、保熱カバーを撤去して熱延コイルを冷却する方法、熱延コイルをコイルヤード(冷却ヤード)に保管して冷却する方法などが挙げられる。また、水冷の場合は、例えば、積極的に水等の冷却媒体を熱延コイルに吹き付ける方法が挙げられ、気体の冷却媒体を使用してもよい。
以上、本発明の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実験例No.1〜33]
〔熱間圧延工程〕
まず、熱間圧延ラインにおいて、API規格X70グレードであり、厚さ250mm、幅1850mm、長さ9090mmの寸法のスラブ(質量33トン)を、加熱炉で加熱し、粗圧延機および仕上圧延機を経て、下記表1に示す板厚(単位:mm)まで圧延して熱延鋼帯(高強度厚肉熱延鋼帯)を形成し、冷却装置である冷却テーブル上で所定の温度まで冷却した後、コイラーを用いて下記表1に示す巻取温度CT(単位:℃)で巻き取って熱延コイルとした。用いたコイラーは、マンドレル外径がφ750mmであり、緩みなく巻いた状態での熱延コイルの外径はφ1858mmであった。
〔保熱工程〕
次に、一部の例を除き、熱延コイルを、巻取り後30分以内に、図3に基づいて説明した保熱装置30に移送して、下記表1に示す保熱時間t(単位:分)だけ保熱カバー32による保熱を行なった。保熱カバー32としては、内部を厚さ150mmの断熱材(イソライト工業社製の「イソウール」)で覆った鋼製のカバーを用いた。その後、熱延コイルを、保熱装置内から取り出し、空冷ヤードに移送して、室温まで冷却した。なお、保熱装置の雰囲気温度(AT)は、保熱時間t中、上述した式(2)の条件を満足していた。
なお、熱延コイルを保熱しなかった例では、巻き取った熱延コイルを保熱装置30に移送せずに、空冷ヤードに移送して、室温まで冷却した。
<評価>
(スリ疵)
各例について、スプリングバックに起因するスリ疵の評価を行った。具体的には、室温まで冷却した熱延コイルを、電縫管成形ラインのペイオフリールに装入し、コイル全長に渡って成形を施した。このとき、成形ラインの入側において、熱延コイルの内周部のスプリングバックに起因して、鋼帯表面にスリ疵が発生する場合があった。
鋼帯表面にスリ疵が確認されなかった場合は「○」を、全長で鋼帯表面にスリ疵が1〜5箇所確認された場合は「△」を、全長で鋼帯表面にスリ疵が6箇所以上確認された場合は「×」を下記表1に記載した。なお、スリ疵「△」の場合は、鋼管への成形後に熱延鋼帯の表面を手入れすれば製品として十分使用できる。このため、実用上「○」または「△」であれば、スリ疵が抑制されたものとして評価できる。
(引張強さ)
一部の例について、室温まで冷却した熱延コイルから圧延方向に対して0°方向(LL方向)および90°方向(C方向)にJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠してクロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、引張強さ(単位:MPa)を求めた。
引張強さが630MPa以上670MPa未満の場合は強度に優れるものとして下記表1中に「○」を記載し、引張強さが670MPa以上の場合は強度により優れるものとして下記表1中に「◎」を記載した。
上記表1に示すように、熱延コイルの保熱を行わなかった実験例No.23〜30(比較例)では、鋼帯表面にスリ疵が多数確認された(「×」)。
なお、板厚が10mmである実験例No.31〜33(参考例)も、同様に熱延コイルの保熱を行わなかったが、スリ疵は確認されなかった(「○」)。これは、成形ラインの入側で十分な張力を付与できているため、熱延コイルの巻きほぐれによるスプリングバックが抑制されたためと考えられる。
一方、実験例No.1〜22(本発明例)では、いずれも、鋼帯表面のスリ疵は抑制されていた(「○」または「△」)。
ここで、実験例No.1〜22をグラフにプロットした。図4は、実験例No.1〜22について、巻取温度CTと保熱時間tとの関係を示すグラフである。図4のグラフ中、横軸は巻取温度CT(単位:℃)を示し、縦軸は保熱時間t(単位:分)を示し、プロットの形はスリ疵の評価結果(「○」または「△」)に合わせている。さらに、図4のグラフ中には、式「t=350−0.57×CT」で表される直線を図示している。
上記表1および図4から明らかなように、実験例No.1〜22(本発明例)どうしを対比すると、式「t=350−0.57×CT」で表される直線上またはこの直線よりも上側の領域にプロットされている場合、すなわち、上述の式(1)を満足する場合、スリ疵は確認されず(「○」)、より良好な結果が得られた。
また、上記表1に示すように、実験例No.1〜22(本発明例)どうしを対比すると、巻取温度CTが550℃以下の場合は、巻取温度CTが550℃超の場合よりも引張強さが大きく、より高強度であった。
26:熱延コイル
30、40:保熱装置
32、44:保熱カバー
36:補助加熱装置
38:雰囲気制御装置
42:ピット

Claims (4)

  1. 板厚12mm以上の熱延鋼帯を形成し、形成した前記熱延鋼帯を熱延コイルとして巻き取る熱間圧延工程と、前記熱延コイルを保熱することによってクリープひずみを発生させる保熱工程と、を備える高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。ただし、「高強度」とは、JIS Z 2241の規定に準拠した引張強さが590MPa以上であることをいう。
  2. 前記熱延鋼帯を前記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度が400℃以上600℃以下である、請求項1に記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
  3. 前記熱延鋼帯を前記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度をCT(単位:℃)、前記熱延コイルを保熱する保熱時間をt(単位:分)とした場合に、下記式(1)を満足する、請求項1または2に記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
    t≧350−0.57×CT・・・(1)
  4. 前記熱延鋼帯を前記熱延コイルとして巻き取る際の巻取温度をCT(単位:℃)、前記熱延コイルを保熱する際の雰囲気温度をAT(単位:℃)とした場合に、下記式(2)を満足する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度厚肉熱延鋼帯の製造方法。
    CT−100≦AT≦CT・・・(2)
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