以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態によるガソリン機関からなるエンジン100の構成について説明する。第1実施形態では、直列4気筒のエンジン100の例を示す。また、以下では、クランクシャフト11(図1参照)の延びる方向をX方向とし、クランクシャフト11に直交する横方向をY方向として説明を行う。また、エンジン100は、本発明の「内燃機関」の一例である。
第1実施形態による自動車用のエンジン100は、図1に示すように、シリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含むアルミニウム合金製のエンジン本体10を備えている。シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、クランクケース3とは、それぞれ別体として構成されている。また、エンジン100は、シリンダヘッド1の鉛直方向上側(Z1側)に組み付けられるヘッドカバー(シリンダヘッドカバー)4を備えている。
エンジン本体10は、エンジン本体10内をX方向に貫通するように配置されるクランクシャフト11を含んでいる。また、エンジン本体10の外側面のうち、クランクシャフト11が延びるX方向に沿った一方側(Y2側)の外側面10aには、インテークマニホールド5と、オイルセパレータ6とが取り付けられている。インテークマニホールド5とオイルセパレータ6とは、接続通路7によって直接接続されている。なお、エンジン本体10は、本発明の「内燃機関本体」の一例である。
図2および図3に示すように、シリンダブロック2の外側面2aおよびクランクケース3の外側面3aには、それぞれ、ねじ101が螺合されるねじ穴2bおよび複数(3つ)のねじ穴3bが形成されている。このねじ101により、図1に示すように、エンジン本体10の外側面10aにオイルセパレータ6が取り付けられる。
インテークマニホールド5は、エンジン本体10の複数(4つ)の吸気ポート1aにそれぞれ接続される複数(4つ)の分配配管51と、複数の分配配管51が合流するサージタンク52とを含む。インテークマニホールド5は、シリンダブロック2の鉛直方向(Z方向)に延びる複数(4つ)のシリンダ21(図2参照)の鉛直方向上方(Z1側)にそれぞれ形成される燃焼室(図示せず)に、シリンダヘッド1の吸気ポート1aを介して吸気を導入する吸気装置である。また、インテークマニホールド5では、接続通路7を介して、サージタンク52の鉛直方向の下面側にブローバイガスBGが導入されるように構成されている。
オイルセパレータ6は、エンジン本体10のブローバイガスBGに含まれるオイルミストを分離するために設けられている。なお、オイルミストとは、微細化したエンジンオイルのことであり、ブローバイガスBG中に分散している。そして、オイルセパレータ6は、エンジン本体10から流入したブローバイガスBG中の微細なオイルミストを液滴状にすることによって、気体である燃焼ガスおよび未燃焼の混合気と、液滴状の液状オイルLOとに気液分離する機能を有している。なお、オイルセパレータ6は、6,6−ナイロンなどの耐油性、耐熱性、耐薬品性、十分な強度を有する樹脂から構成されている。
接続通路7は、管部材からなり、オイルセパレータ6の後述する吐出口64(PCVバルブ66)から吐出されるブローバイガスBGを吸気側のインテークマニホールド5に還元させるための接続配管である。
次に、エンジン本体10の構造について説明する。
図1に示すシリンダヘッド1の内部には、カムシャフトおよびバルブ機構(図示せず)などが配置されているとともに、シリンダ21(図2参照)に連通する吸気ポート1aと排気ポート(図示せず)とを含んでいる。シリンダブロック2は、鉛直方向の上端(Z1側)がシリンダヘッド1の鉛直方向の下端(Z2側)に接続されている。シリンダブロック2の内部には、図2に示すように、ピストン22がZ方向に往復動する4個のシリンダ21が形成されている。この4個のシリンダ21には、吸気ポート1a(図1参照)を介して、4本の分配配管51(図1参照)から各々吸気が供給される。
クランクケース3は、鉛直方向の上端がシリンダブロック2の鉛直方向の下端に接続されている。シリンダブロック2とクランクケース3とによって、エンジン本体10の内部に中空のクランク室10bが形成されている。また、クランク室10bには、X方向(図1参照)に沿って延びる回転(中心)軸線A回りに回転可能に接続されたクランクシャフト11が配置されている。クランクシャフト11は、シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面に配置されるとともに回転可能に軸受けされている。この結果、クランクシャフト11の回転軸線Aと、シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面とは、鉛直方向(Z方向)の位置が略一致している。クランクシャフト11は、コンロッド(コネクティングロッド)12を介してピストン22と連結されており、エンジン100の駆動に伴ってピストン22がシリンダ21内を鉛直方向に移動するのに伴ってクランクシャフト11が回転駆動される。その際、ピストン22の鉛直方向上方(Z1側)の図示しない燃焼室からピストン22とシリンダ21との微小な隙間を介してブローバイガスBGがクランク室10bに漏れ出てくる。
クランクケース3のY2側の側部には、オイルセパレータ6の後述する吸込口63が接続される開口部31が設けられている。開口部31は、クランクケース3の内部のクランク室10bと外部(オイルセパレータ6)とを接続するように、クランクケース3のY2側の側部をY方向に貫通している。また、開口部31は、鉛直方向(Z方向)に長い長円形状を有している。
クランク室10bの鉛直方向の下部(Z2側)には、液状オイルLOが貯留されるオイル貯留部32が設けられている。液状オイルLOは、図示しないオイルポンプによりオイル貯留部32からエンジン本体10内の鉛直方向の上部に汲み上げられてカムシャフトなどの動弁系タイミング部材(図示せず)やピストン22の外周面などの摺動部を潤滑した後、自重により落下して、大部分がオイル貯留部32に戻される。ここで、液状オイルLOの一部は微細化されて霧(ミスト)状になり、ブローバイガスBGにオイルミストとして含まれることになる。このオイルミストは、オイルセパレータ6において気液分離される。
また、クランクケース3の鉛直方向の上端(シリンダブロック2とクランクケース3との合わせ面)は、オイル貯留部32に貯留された液状オイルLOの油面Gよりも鉛直方向上方(Z1側)に位置するようにクランクケース3が構成されている。なお、本明細書において液状オイルLOの油面Gとは、オイル貯留部32に許容量(上限量)の液状オイルLOが貯留された状態における油面を意味している。なお、オイル貯留部32は、クランクケース3に一体的に形成されてもよいし、クランクケース3とは別体(別部材)で形成されてもよい。
ここで、エンジン本体10内(クランク室10b)では、クランクシャフト11に付着した液状オイルLOがクランクシャフト11の旋回によって飛散することなどによって、開口部31の鉛直方向上側のエンジン本体10の内側面10cに付着して開口部31(オイルセパレータ6の吸込口63)に向かって流れたり、開口部31に向かって飛散したりする。
そこで、第1実施形態では、オイルセパレータ6に、吸込口63を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ6の内部に流入するのを規制する上側流入規制部67を設けている。なお、上側流入規制部67については後述する。また、上側流入規制部67は、本発明の「液状オイル流入規制部」の一例である。
次に、オイルセパレータ6の構造について詳細に説明する。なお、オイルセパレータ6の各々の構造における方向については、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられた際の方向で規定している。
図1に示すように、オイルセパレータ6は、エンジン本体10のY2側の外側面10aにおいて、インテークマニホールド5よりも鉛直方向下方(Z2側)に取り付けられている。この際、オイルセパレータ6は、吸込口63の位置を開口部31の位置に一致させた状態で、エンジン本体10の外側面10aに固定されている。また、図4および図5に示すように、オイルセパレータ6には、ねじ101が挿入されるねじ挿入穴6aが複数(4つ)形成されている。
オイルセパレータ6は、クランクケース3(図2参照)側(Y1側)に配置された蓋部61と、クランクケース3とは反対側(Y2側)に配置され、蓋部61がY1側から取り付けられる本体部62とを含んでいる。また、オイルセパレータ6は、蓋部61に本体部62が取り付けられた状態で、振動溶着などによって一体化されることによって作成されている。
また、図2に示すように、オイルセパレータ6は、エンジン本体10のクランクケース3の開口部31に対向配置されることによって、エンジン本体10の内部に連通する吸込口63と、接続通路7を介してインテークマニホールド5の内部と連通する吐出口64とを含む。なお、吸込口63は、蓋部61に形成されており、吐出口64は、本体部62に形成されている。
ここで、クランクケース3の開口部31およびオイルセパレータ6の吸込口63は、共に、鉛直方向(Z方向)において、クランクシャフト11の回転軸線A(クランクセンター)よりも鉛直方向下方(Z2側)で、かつ、オイル貯留部32に溜められた液状オイルLOの油面Gよりも鉛直方向上方(Z1側)に位置するように配置されている。つまり、クランクケース3の開口部31およびオイルセパレータ6の吸込口63は、共に、クランクシャフト11の回転軸線Aよりも鉛直方向上側のシリンダヘッド1やシリンダブロック2には配置されていない。
また、本体部62の鉛直方向の下面には、吸込口63に向かう方向(Y1方向)で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜する傾斜部62aが形成されている。
また、オイルセパレータ6は、蓋部61と本体部62とが一体化されることによって、吸込口63と吐出口64とを接続する屈曲した流路65からなるラビリンス構造の分離部を含んでいる。なお、吸込口63は、流路65の下端部に配置され、吐出口64は、流路65の上端部近傍のY2側に配置されている。
なお、オイルセパレータ6では、ラビリンス構造の分離部内でブローバイガスBGが内壁に衝突することなどによって、ブローバイガスBG中の微細なオイルミストが液滴状の液状オイルLOにされる。そして、液滴状の液状オイルLOは、オイルの自重により、オイルセパレータ6の流路65をブローバイガスBGの流通方向とは逆方向に流れて、吸込口63および開口部31の鉛直方向の下部からクランク室10bのオイル貯留部32に戻される。ここで、吸込口63とオイルの排出口とを共通にすることにより、吸込口63と排出口とに圧力差が発生しない構造となっている。これにより、吸込口63と排出口とに圧力差が生じることに起因してブローバイガスBGの吸引効率に悪影響を及ぼすのを抑制することが可能である。
図2に示すように、オイルセパレータ6の吐出口64には、ブローバイガスBGを吐出方向に流通させるPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ66が直接的に取り付けられている。また、PCVバルブ66の吐出側には、接続通路7が接続されている。
PCVバルブ66は、インテークマニホールド5側とオイルセパレータ6側の圧力差に応じて開度を変更するように構成され、インテークマニホールド5側が低圧となる場合に開弁し、インテークマニホールド5側が高圧となる場合には閉弁する。また、PCVバルブ66は、ブローバイガスBGの流量を調整する機能を有している。
このような構成により、図2に示すように、インテークマニホールド5(図1参照)の負圧によって、オイルセパレータ6の吸込口63にブローバイガスBGが吸い込まれる。そして、吸込口63に吸い込まれたブローバイガスBGは、オイルセパレータ6、PCVバルブ66および接続通路7を介してインテークマニホールド5のサージタンク52内(図1参照)に還元される。サージタンク52内に還元されたブローバイガスBGは、各分配配管51を経て各吸気ポート1a(図1参照)に吸気と共に供給される。このようなPCVシステムがエンジン100に設けられている。
また、オイルセパレータ6の蓋部61には、Oリング102が配置される周状の溝部61aが形成されている。この周状の溝部61aは、吸込口63の周囲を取り囲むように形成されている。Oリング102は、オイルがエンジン100の外部に流出するのを抑制するために設けられている。
ここで、オイルセパレータ6の吸込口63および上側流入規制部67の構造について詳細に説明する。
図4および図5に示すように、吸込口63は、オイルセパレータ6の蓋部61をY方向に貫通するように形成されている。また、吸込口63の鉛直方向(Z方向)の上側部分を構成する上側縁部63b以外の部分は、開口部31と対応するように鉛直方向に長い長円形状の一部を構成している一方、上側縁部63bは、Y1側から見て、長円形状の一部を構成する半円状ではなく、線分が鉛直方向の上端63aで交わる山形状になるように形成されている。このような吸込口63の形状は、長円形状の鉛直方向の上部に、上側流入規制部67を形成するための基部61bが位置することによって形成されている。
また、吸込口63は、吸込口63の鉛直方向(上下方向、Z方向)に延びる中心線Cに対して、略鏡像対称になるように形成されている。また、図2に示すように、吸込口63の上側縁部63bは、開口部31の内面よりも若干内側に形成されている。
図4および図5に示すように、上側流入規制部67は、吸込口63の鉛直方向の上側縁部63b近傍の基部61bからY1側に突出することによって、オイルセパレータ6と一体的に形成されている。また、上側流入規制部67は、吸込口63の上側縁部63bに沿うようにY1側から見て山形状に形成されており、吸込口63の全体を鉛直方向上側から覆うひさし形状(傘形状)を有している。
また、図2に示すように、オイルセパレータ6がエンジン本体10の外側面10aに取り付けられた際に、吸込口63の上側縁部63bが開口部31の内面よりも若干内側に位置するように形成されていることによって、上側流入規制部67は、開口部31を通過して、エンジン本体10の内側(内部)のクランク室10bまで突出することが可能なように形成されている。なお、上側流入規制部67は、クランク室10bの内側面10cからY1側に長さL1だけ突出している。
また、図5に示すように、上側流入規制部67は、吸込口63と同様に、中心線Cに対して略鏡像対称になるように形成されている。そして、上側流入規制部67は、中心線C上の頂部67aからX1側に向かう傾斜部67bにおいては、中心線Cから離間するX1方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜するように形成されており、中心線C上の頂部67aからX2側に向かう傾斜部67cにおいては、中心線Cから離間するX2方向で、かつ、鉛直方向下方に傾斜するように形成されている。一方、傘形状の上側流入規制部67の傾斜部67bおよび67cは、Y方向においては、鉛直方向下方に傾斜せずに略水平に伸びるように形成されている。
また、傘形状の上側流入規制部67の傾斜部67bおよび67cの鉛直方向の下端には、若干鉛直方向下方に延びる壁部67dがそれぞれ形成されている。この壁部67dは、吸込口63のX方向の両側に形成された直線部分に沿って延びるように形成されている。
これにより、上側流入規制部67の傾斜部67bまたは67cの鉛直方向の上面に落下した液状オイルLOは、傾斜部67bまたは67cの傾斜に沿って、中心線Cから離間する方向(X1方向またはX2方向)で、かつ、鉛直方向下方に導かれる。そして、液状オイルLOは、上側流入規制部67の壁部67dから吸込口63のX方向の外側に落下する。一方、上側流入規制部67の傾斜部67bおよび67cがY方向において鉛直方向下方に傾斜せずに略水平に伸びるように形成されていることによって、上側流入規制部67のY1側の端部から吸込口63(開口部31)の正面(Y方向に重なる位置)に液状オイルLOが落下するのが抑制される。これにより、吸込口63の正面に落下した液状オイルLOが負圧によりオイルセパレータ6の内部に吸い込まれるのが抑制される。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように、吸込口63を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ6の内部に流入するのを規制する上側流入規制部67を設ける。これにより、エンジン本体10の内側に突出する上側流入規制部67により吸込口63に向かう液状オイルLOを遮ることができるので、吸込口63を介して液状オイルがオイルセパレータ6の内部に流入するのを規制することができる。これにより、オイルの消費量(持ち去り量)が増加するのを抑制することができる。また、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられるオイルセパレータ6に、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように上側流入規制部67を設けることによって、上側流入規制部67をエンジン本体10に設ける場合と比べて、エンジン本体10の形状を大幅に変更する必要がない。これにより、液状オイルLOの流入を規制する上側流入規制部67をエンジン100に容易に設けることができる。
また、第1実施形態では、上側流入規制部67を、吸込口63の鉛直方向の上側縁部63b近傍の基部61bからY1側に突出させることによって、オイルセパレータ6と一体的に形成する。これにより、オイルセパレータ6に別体の上側流入規制部67を取り付ける場合と比べて、部品点数を削減することができる。また、オイルセパレータ6をエンジン本体10を構成するアルミニウム合金よりも軽量な樹脂から構成することによって、上側流入規制部67をエンジン本体10側に設ける場合と比べて、上側流入規制部67を軽量化することができるとともに、オイルセパレータ6自体も軽量化することができる。
第1実施形態では、上側流入規制部67を、吸込口63の鉛直方向の上側縁部63b近傍の基部61bからY1側に突出させるとともに、吸込口63の上側縁部63bに沿うように吸込口63の全体を鉛直方向上側から覆うひさし形状に形成する。これにより、ひさし形状の上側流入規制部67によって、液状オイルLOが吸込口63の鉛直方向上側からオイルセパレータ6の内部に流入するのを確実に抑制することができる。
第1実施形態では、ひさし形状の上側流入規制部67を、吸込口63の鉛直方向の上側縁部63a近傍からエンジン本体10の内側に突出するように形成することによって、液状オイルLOが吸込口63の鉛直方向上側からオイルセパレータ6の内部に流入するのを、吸込口63の鉛直方向上側の近傍で効果的に抑制することができる。また、上側流入規制部67のX1側の傾斜部67bを、吸込口63の上下方向(Z方向)に延びる中心線Cに対して中心線Cから離間するX1方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜するように形成するとともに、上側流入規制部67のX2側の傾斜部67cを、中心線Cから離間するX2方向で、かつ、鉛直方向下方に傾斜するように形成する。これにより、吸込口63と重ならない位置(開口部31および吸込口63のY1側の正面からずれた位置)に液状オイルLOを流す(逃がす)ことができるので、吸込口63と重なる位置(吸込口63の正面)に液状オイルLOが導かれることに起因して液状オイルLOが吸込口63に流入するのを抑制することができる。
(第1実施形態の第1変形例)
次に、図6〜図8を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。この第1実施形態の変形例では、山形状に形成された上側流入規制部67と異なり、上側流入規制部267が半円状に形成された例について説明する。なお、第1実施形態の第1変形例において、上記第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。また、上側流入規制部267は、本発明の「液状オイル流入規制部」の一例である。
第1実施形態の第1変形例では、図6に示すように、エンジン200のオイルセパレータ206は、エンジン本体10のY2側の外側面10aに取り付けられている。また、オイルセパレータ206自体の構造については、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられた際における方向で規定している。なお、エンジン200は、本発明の「内燃機関」の一例である。
オイルセパレータ206の吸込口263は、図7および図8に示すように、上記第1実施形態の吸込口63(図4および図5参照)とは異なり、基部61bが設けられていないことによって、開口部31に対応するように鉛直方向(Z方向)に長い長円形状に形成されている。つまり、吸込口263の鉛直方向の上側部分を構成する上側縁部263bは、長円形状の一部を構成する半円状に形成されている。一方、図6に示すように、吸込口263の鉛直方向の上端263aを含む上端縁部263bが開口部31の内面よりも若干鉛直方向下方(Z2側)に位置するように、吸込口263は開口部31よりも若干小さな長円形状に形成されている。なお、吸込口263の鉛直方向に延びる中心線Cに対して、吸込口263は、略鏡像対称になるように形成されている。
また、図7および図8に示すように、オイルセパレータ206には、吸込口263を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ206の内部の流路65に流入するのを規制する上側流入規制部267が設けられている。上側流入規制部267は、溝部61aと吸込口263との間で、かつ、上側縁部263b近傍の蓋部261からY1側に突出することによって、オイルセパレータ206の蓋部261と一体的に形成されている。また、上側流入規制部267は、吸込口263の半円状の上側縁部263bに沿うようにY1側から見て半円状に形成されており、吸込口263の全体を鉛直方向上側(Z1側)から覆うひさし形状を有している。
また、図6に示すように、オイルセパレータ206がエンジン本体10の外側面10aに取り付けられた際に、吸込口263の上端縁部263bが開口部31の内面よりも若干鉛直方向下方(Z2側)に位置するように形成されていることによって、上側流入規制部267は、開口部31を通過して、エンジン本体10の内側(内部)のクランク室10bまで突出することが可能なように形成されている。なお、上側流入規制部267は、クランク室10bの内側面10cからY1側に長さL2だけ突出している。
また、図8に示すように、上側流入規制部267は、吸込口263と同様に、中心線Cに対して略鏡像対称になるように形成されている。そして、上側流入規制部267は、中心線C上の頂部267aからX1側に向かう円弧状部267bにおいては、中心線Cから離間するX1方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜するように円弧状に形成されており、中心線C上の頂部267aからX2側に向かう円弧状部267cにおいては、中心線Cから離間するX2方向で、かつ、鉛直方向下方に傾斜するように円弧状に形成されている。また、上側流入規制部267の円弧状部267bおよび267cは、Y方向においては、鉛直方向下方に傾斜せずに略水平に伸びるように形成されている。
これにより、上側流入規制部267の円弧状部267bまたは267cの鉛直方向の上面に落下した液状オイルLOは、円弧状部267bまたは267cに沿って、中心線Cから離間する方向(X1方向またはX2方向)で、かつ、鉛直方向下方に導かれる。そして、液状オイルLOは、上側流入規制部267から吸込口263のX方向の外側に落下する。一方、上側流入規制部267の円弧状部267bおよび267cがY方向において鉛直方向下方に傾斜せずに略水平に伸びるように形成されていることによって、上側流入規制部267のY1側の端部から吸込口263(開口部31)の正面(Y方向に重なる位置)に液状オイルLOが落下するのが抑制される。これにより、吸込口263の正面に落下した液状オイルLOが負圧によりオイルセパレータ206の内部に吸い込まれるのが抑制される。
第1実施形態の第1変形例のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第1実施形態の第1変形例では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態の第1変形例では、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように、吸込口263を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ206の内部に流入するのを規制する上側流入規制部267を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、上側流入規制部267によって、オイルの消費量が増加するのを抑制することができる。また、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられるオイルセパレータ206に、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように上側流入規制部267を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、液状オイルLOの流入を規制する上側流入規制部267をエンジン200に容易に設けることができる。
第1実施形態の第1変形例では、上側流入規制部267を、吸込口263の半円状の鉛直方向の上側縁部263bに沿うように形成する。これにより、開口部31に対応するように上側流入規制部267を形成することができるので、開口部31と上側流入規制部267との隙間を小さくすることができる。これにより、開口部31と上側流入規制部267との隙間に液状オイルLOが留まることに起因してエンジン本体10の摺動部を潤滑するために用いられるオイルの量が減少するのを抑制することができる。
第1実施形態の第1変形例のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態)
次に、図9〜図12を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上側流入規制部67が設けられた上記第1実施形態とは異なり、下側流入規制部368が設けられた例について説明する。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。また、下側流入規制部368は、本発明の「液状オイル流入規制部」の一例である。
第2実施形態では、図9に示すように、エンジン300のオイルセパレータ306は、エンジン本体10のY2側の外側面10aに取り付けられている。また、オイルセパレータ306自体の構造については、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられた際における方向で規定している。なお、エンジン300は、本発明の「内燃機関」の一例である。
オイルセパレータ306の蓋部361には、エンジン本体10の開口部31と対応するように鉛直方向(Z方向)に長い長円形状の開口部361cが形成されている。なお、エンジン本体10の開口部31と蓋部361の開口部361cとは、略同じ大きさに形成されている。
また、第2実施形態では、オイルセパレータ306には、吸込口363を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ306の内部の流路65に流入するのを規制する下側流入規制部368が設けられている。この下側流入規制部368は、オイル貯留部32の液状オイルLOの油面Gよりも鉛直方向上方(Z1側)に形成されているとともに、オイルセパレータ306の本体部362の鉛直方向の下部と一体的に形成されている。
また、図9〜図11に示すように、下側流入規制部368の鉛直方向の上面368aは、オイルセパレータ306の本体部362の傾斜する傾斜部362aと連通しているとともに、エンジン本体10側のY1方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜している。つまり、オイルセパレータ306の傾斜部362aは、オイルセパレータ306の内部から吸込口363を通過してY1方向に突出するように鉛直方向下方に傾斜しており、下側流入規制部368の上面368aを兼ねている。
なお、第2実施形態では、吸込口363の鉛直方向の上部および中央部は、蓋部361の開口部361cにより構成されており、吸込口363の鉛直方向の下部は、下側流入規制部368の上面368a(傾斜部362a)により構成されている。つまり、下側流入規制部368は、吸込口363の鉛直方向の下端およびその近傍に形成されている。
また、下側流入規制部368のエンジン本体10側(Y1側)の端部368cは、蓋部361の開口部361cの鉛直方向の下端および開口部31の鉛直方向の下端よりも鉛直方向上方に位置するように構成されている。これにより、下側流入規制部368は、開口部31を通過して、エンジン本体10の内側(内部)のクランク室10bまで突出することが可能なように形成されている。なお、下側流入規制部368は、クランク室10bの内側面10cからY1側に長さL3だけ突出している。
また、図9に示すように、下側流入規制部368の鉛直方向の下面368bは、略水平に形成されている。そして、鉛直方向下方のオイル貯留部32からの液状オイルLOは、下側流入規制部368の下面368bに衝突することによって、吸込口363から吸い込まれずに、再度オイル貯留部32に戻されるように構成されている。
また、下側流入規制部368は、図12に示すように、鉛直方向上方(Z1側)から見て、台形状にY1方向に突出している。つまり、下側流入規制部368のY1側の端部368cは、X方向に所定の長さだけ延びるように形成されている。さらに、下側流入規制部368の鉛直方向の上面368a(傾斜部362a)は、Y1方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜している一方、X方向には傾斜しないように構成されている。
また、図11に示すように、吸込口363および下側流入規制部368は、中心線Cに対して略鏡像対称になるように形成されている。
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように、吸込口363を介してエンジン本体10内の液状オイルLOがオイルセパレータ306の内部に流入するのを規制する下側流入規制部368を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、下側流入規制部368によって、オイルの消費量が増加するのを抑制することができる。また、エンジン本体10の外側面10aに取り付けられるオイルセパレータ306に、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出するように下側流入規制部368を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、液状オイルLOの流入を規制する下側流入規制部368をエンジン300に容易に設けることができる。
第2実施形態では、下側流入規制部368を、オイル貯留部32の液状オイルLOの油面Gよりも鉛直方向上方で、かつ、吸込口363の鉛直方向の下端近傍に形成する。これにより、エンジン本体10の振動に起因してオイル貯留部32の液状オイルLOが鉛直方向上方の吸込口363に向かって飛散したり、エンジン300が配置された車両が傾斜することによりオイル貯留部32の液状オイルLOの油面Gが吸込口363近傍に到達した場合などであっても、下側流入規制部368により、液状オイルLOがオイルセパレータ306の内部に流入するのを確実に抑制することができる。
第2実施形態では、オイルセパレータ306の本体部362に、オイルセパレータ306の内部から吸込口363を通過してエンジン本体10の内側のクランク室10bまで鉛直方向下方に傾斜するとともに、下側流入規制部368の鉛直方向の上面368aを構成する傾斜部362aを形成する。これにより、オイルセパレータ306において液状化されたオイルミスト(液状オイルLO)を、エンジン本体10の内側のクランク室10bまで鉛直方向下方に傾斜する傾斜部362aを介して、確実にオイル貯留部32に戻すことができる。
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、オイルセパレータ6(206)に上側流入規制部67(267、液状オイル流入規制部)を設け、上記第2実施形態では、オイルセパレータ306に下側流入規制部368(液状オイル流入規制部)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、図13に示す第1実施形態の第2変形例のように、オイルセパレータ406に、エンジン本体10の内側のクランク室10bに突出する上側流入規制部67および下側流入規制部368の両方を設けてもよい。また、上側流入規制部と下側流入規制部とを接続するように、吸込口の両側方に壁状の液状オイル流入規制部をそれぞれ設けてもよい。つまり、吸込口の全周に亘って、エンジン本体の内側のクランク室に突出する液状オイル流入規制部を設けてもよい。
また、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、オイルセパレータ6(206)に上側流入規制部67(267、液状オイル流入規制部)を一体的に設け、上記第2実施形態では、オイルセパレータ306に下側流入規制部368(液状オイル流入規制部)を一体的に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、液状オイル流入規制部をオイルセパレータとは別個に設けてもよい。つまり、オイルセパレータとは別体の液状オイル流入規制部をねじ止めすることなどによってオイルセパレータに設けてもよい。
また、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、上側流入規制部67(267)をY方向(開口部31および吸込口63(263)の貫通方向)には鉛直方向(Z方向)に傾斜しないように形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上側流入規制部を開口部および吸込口の貫通方向において、鉛直方向に傾斜するように形成してもよい。この際、上側流入規制部をエンジン本体とは反対側(図2においてY2側)で、かつ、鉛直方向下方に傾斜するように形成すれば、上側流入規制部のエンジン本体側の端部に液状オイルが導かれるのを抑制することができるので、吸込口(開口部)の正面に液状オイルが落下するのを抑制することが可能である。
また、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、上側流入規制部67(267)を、吸込口63(263)の鉛直方向(上下方向、Z方向)に延びる中心線Cに対して略鏡像対称になるように形成するとともに、中心線Cから離間する方向で、かつ、鉛直方向下方(Z2方向)に傾斜するように傾斜部67bおよび67c(円弧状部267bおよび267c)を形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸込口の鉛直方向に延びる中心線に対して鏡像対称に形成しなくてもよい。たとえば、上側流入規制部を、吸込口の中心線と直交する方向(図5においてX方向)の一方端部側から他方端部側に向かって鉛直方向下方に傾斜するように形成することによって、吸込口を鉛直方向上側から覆うひさし形状に上側流入規制部を形成してもよい。
また、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、上側流入規制部67(267)を、吸込口63(263)の全体を鉛直方向上側から覆うひさし形状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上側流入規制部を、吸込口の一部のみを鉛直方向上側から覆うように形成してもよい。
また、上記第1実施形態および第1実施形態の変形例では、吸込口63(263)の鉛直方向上側に上側流入規制部67(267、液状オイル流入規制部)を形成した例を示し、上記第2実施形態では、吸込口363の鉛直方向下側に下側流入規制部368(液状オイル流入規制部)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸込口の側方にのみ液状オイル流入規制部を形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、オイルセパレータ6(206、306、406)がエンジン本体10(シリンダブロック2およびクランクケース3)のY2側の外側面10aに取り付けられている例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイルセパレータをエンジン本体のクランクケースの外側面に取り付ける一方、シリンダブロックの外側面には取り付けないように構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、エンジン本体10がシリンダヘッド1、シリンダブロック2およびクランクケース3を含む例について示したが、本発明はこれに限られない。エンジン本体がシリンダヘッド、シリンダブロックおよびクランクケース以外の部材を含んでいてもよい。たとえば、エンジン本体が、クランクシャフトを支持するラダーフレームと、オイル貯留部を有するオイルパンとを含んでもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、シリンダブロック2とクランクケース3とは、別体として構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シリンダブロックとクランクケースとを一体として構成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、ラビリンス構造の流路65からなる分離部を有するオイルセパレータ6(206、306、406)(いわゆる慣性衝突型のオイルセパレータ)の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイルセパレータは、オイルセパレータ内でブローバイガスの旋回流を作り、遠心力によって気液分離を行う遠心分離型のオイルセパレータや、ブローバイガスを通過させるフィルタによって気液分離を行うフィルタ内蔵型のオイルセパレータであってもよい。また、オイルセパレータは、これらの複数方式の分離部の組み合わせにより構成されていてもよい。