JP6413315B2 - 電気機械システム、ヘッドアップディスプレイ及び車両 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の発明は、取り付け誤差によるレジストレーション機能の低下を防ぐことを目的としている。同文献には、2つのレジストレーションセンサを用意し、検出した2つの潜像としてのレジストレーション測定用画像の相対的位置関係から光線の位置ずれを演算、調整する構成が開示されている。これにより温度変化や経時変化など環境変化に伴う光線の位置ずれを防ぎ、画像品質を確保することができる。
特許文献2に記載の発明は、MEMSミラーの温度特性を改善する目的で、密封容器中にMEMSデバイスを周囲温度よりも高い一定の温度に保つ温度調節手段を有する構成が開示されている。これにより複雑な温度制御を行わずに温度特性を改善することができる。
また、特許文献2に記載の発明は、温度制御による定温化は、装置の構成を複雑化する。またMEMSミラーに任意の加熱冷却を行うことにより、熱変動によって引き起こされるデバイスの位置ズレや、結露の発生などが発生するという問題があった。
すなわち、装置構成自体の複雑化や任意の加熱冷却による諸弊害への対応という問題は解消できていない。
本発明の実施の形態を説明する。本発明は、MEMSミラーを含む電気機械システムに際して、以下の特徴を有する。
要するに、位置ずれ量と温度との相関関係を利用し、MEMSミラーの共振周波数から環境温度を検知し、ダイクロイックミラーの向きやLDの出力タイミングの制御により位置ずれを調整する。これにより、レジストレーションセンサ等の検知装置を追加することなく、温度変化による半導体レーザーの位置ずれを調整して画像品質低下を防ぐことができる。
実施形態1について説明する。
[構 成]
図1(a)は、電気機械素子としてのMEMSミラーの外観斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示したMEMSミラーを駆動する電気機械システムのブロック図の一例である。
振動保持枠3及び振動ミラー4の回動は、図示しない電極への電圧の印加による静電力で行われるが、永久磁石と交番電流とを用いてもよい。
ダイクロイックミラー向き制御部/LD出力制御部20は、温度検知部13によって検知された環境温度に基づいて加熱器41がバイメタル40の温度を制御する。
MEMS駆動機構11のブロックから順に、まずMEMSミラー1を駆動し、任意の振角を得るために、駆動制御機構において駆動周波数と駆動電圧とが決定される。
駆動周波数には共振周波数が採用される。
MEMSミラー1本体の温度と環境温度との差分であるMEMSミラー1の自己発熱等を除いて環境温度情報を算出する。すなわち温度検知される。
環境温度情報の変化によるレーザー位置のずれ量、すなわちスクリーンに対してXY方向の数値テーブルを予め明らかにし、環境温度情報からずれ量を求める。
ずれ量に対応してダイクロイックミラーの向きの調整、またはLDの出力タイミングの制御を行う。これらの調整や制御は環境温度情報を変数とする。
MEMS制御機構12は、駆動制御機構15及び共振周波数検知機構16を有する。
図2(a)、(b)は、共振周波数検知のための説明図である。
図2(a)のようにMEMSミラー1がスクリーン21の方向にレーザー光を走査すると、レーザー光がフォトダイオードPD22に入射して検出されたタイミング、MEMSミラー1からPD22までの距離、PD22間の距離からMEMSミラー1の振角θが検出できる。
図2(b)のようにMEMSミラー1の振角θは駆動周波数fによって変化し、共振周波数foで最大の振角になる。駆動周波数fを掃引して振角θが最大になる周波数fが共振周波数foであり、駆動制御は共振周波数foを採用してMEMSミラー1を駆動する。すなわち、PD22は電気機械素子の駆動時の共振周波数を検出するセンサである。
共振周波数foには温度依存性があるため、MEMSミラー1の本体の温度によって共振周波数foが変化する。この点については図3にて説明する。
MEMSミラー1内に駆動信号を検出する機構を有している場合、PDを用いなくても検出信号によって振角θを得ることが出来る。例えばMEMSミラー1の変位を電気信号に変える検出用PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)圧電素子をMEMSミラー1に組み込む構成が考えられる。
データ取得のために、本出願人設計のMEMSミラー1を恒温槽内で動作させ環境温度が変化したときの共振周波数foを計測した。
共振周波数foから温度情報を検知するために、計測値のプロットを用いて近似関数を求める。図3に示したように、ここでは近似関数y=−0.5x+20735であるから、温度; x=−41470−2y (y;共振周波数) として求めることができる。
環境温度に対する共振周波数foの変化が不安定である場合、温度情報の検知精度が低くなる。−40〜80℃の各温度に「水準」を設定し、これに共振周波数foの対応を割り当てておくことで誤認識の発生を防ぐことができる。例えば10kHz刻みに環境温度の水準を設定する等である。
MEMSミラー駆動の共振周波数はデバイス固有の特性値であり、MEMSミラー1の構造、MEMSミラー1を支える梁の長さ:L、厚さ:h、幅:w、重さや材質(ヤング率:E)等によって異なる事が知られている。MEMSミラー1を支える梁の共振周波数foはfo〜(1/2π)√(k/m)であり、k:梁の機械的剛性はk=Ehw^3/L^3で表すことができる。また、設計形状やレイアウト、圧電素子の感度などが共振周波数foに影響を与える。
共振周波数foはMEMSミラー本体の温度に依存して変化する。ここでいう温度はMEMSミラー本体が環境温度から得る熱の他にMEMSミラー1が駆動することによって発する自己発熱、走査レーザーがMEMSミラー1に照射されることによって発する吸収熱等が共振周波数fo−温度特性に影響している。すなわち、環境温度+自己発熱+レーザー吸収熱=MEMSミラー本体の温度が共振周波数foに関係する。
HUDイメージャー使用のMEMS本体においては20KHz駆動周波数、300mW(RGB各100mW)相当のレーザー照射において約9℃程度の温度上昇が見られた。
光源ユニット30は、R(赤)、G(緑)、B(青)の三色の半導体レーザー(LD)31,32,33を備えており、レーザー光はコリメートされている。三色のレーザー光はダイクロイックミラー34,35によって合成されると共に折り返され、三色のレーザー光が同軸の光線になるよう光学設計されている。レーザー光はMEMSミラー1によって走査されてスクリーン21に画像を描画する。尚、半導体レーザーは三色に限定されるものではなく、複数であればよい。
各LD31,32,33の光軸を調整するには光源ユニット30に組みつけた調整手段としてのダイクロイックミラー34,35の向きを微調整することが考えられる。すなわち、この調整手段は、温度検知部13によって検知された環境温度に対応する、記憶手段としての温度−位置ずれ量対応テーブル19に記憶された色ずれ量に基づいて、光源の光軸を調整する。
また、MEMSミラー1の振角θに対してLD31,32,33の出力領域を制御することでスクリーン21での描画位置を調整できる。
図5(a)、(b)は狙いの画像位置に対して、点線で示す青色のべた画像が+X、+Y方向に、破線で示す赤色のべた画像を−X、−Y方向にずれが発生していることを表すイメージ図である。
温度変化によるずれの主な原因はハウジングや光学素子ホルダの熱膨張によるものである。各部材の熱膨張は熱膨張率から算出できる。熱膨張率は温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を、1K(℃)当たりで示し材質によって数値である。温度変化によるずれ量は、熱膨張率の差やハウジングや光学素子ホルダの材質やレイアウトによって決まる。温度変化によるずれ量はすなわちHUDイメージャーの特性値である。
共振周波数foから導出した「環境温度情報」と、HUDイメージャーの特性値として求めた「温度−位置ずれ量対応テーブル19」に基づいて、色ずれが補正される構成について以降に示していく。
具体的には、温度変化に対応する形で向きが変化するダイクロイックミラー34,35やLD出力領域を調整する手段である。
ダイクロイックミラーの台座に、熱膨張率が異なる2枚の金属板を張り合わせ固定したバイメタル40を用いる。バイメタル40は温度変化に対応して変化量を持つ特性がある。変化量は次の数式(1)で表すことができる。
D=(k×t)/(L×L×T) …(1)
[D:変化量(反り量)、k:湾曲係数、t:バイメタル40の厚さ、L:バイメタル40の長さ、T:変化させた温度]にしたがってDは変化する。
環境温度の変化に応じて、色ずれ補正分だけ、MEMSミラー1の向きが変わるように台座としてのバイメタル40を設計することで温度による色ずれが発生しなくなる。
バイメタル40の変形は温度の一次関数であり、色ずれに追従不可能なケースも考えられる。この場合は、台座としてのバイメタル40に加熱器41を取り付けバイメタル40の温度を管理することで対応する。加熱器41としては、例えば、セラミックヒータもしくはペルチェ素子が挙げられる。
図7に示すとおり、台座の変位Dによってダイクロイックミラーの向きがθだけ変化する。図の記号を用いて数式(2)
tanθ=D/(L/2) …(2)
のようにθを表すことができる。
ダイクロイックミラーの向きがθ変わると、レーザーの出射角は2θ変わる。
ダイクロイックミラーからスクリーンまでの距離をXとし、スクリーン上での位置ずれdを修正することが必要な場合は、出射角が2θ変化したとき、数式(3)
tan2θ=d/X …(3)
となるようなθとすればよい。
尚、tan2θ=2tanθ/(1-tanθ^2)であるから、
tanθ=D/(L/2)よりtan2θ=4LD/(L^2-4D^2)である。
補償すべき温度領域での温度変化Tに対して、
ずれ量d(T)=4LD(T)X/(L^2-4D(T)^2)となるような、台座の変位D(T)をバイメタル40で設計できる場合は環境温度を検知することなく温度変化による位置ずれを補正可能である。
図8(a)と図8(b)との相違点は、バイメタル40とハウジング43との間に断熱材42と加熱器41とを挿入したか否かにある。
断熱材42としては、熱膨張が小さい、セラミックやガラス系の複合材料が挙げられる。
D(T)はTの一次関数であるから図7で示した条件を満たす台座を設計できない場合がある。曲線的にダイクロイックミラーの向きを変化させるためには、台座に加熱器を取り付け、検知した環境温度に基づいてバイメタル40の温度を制御してレーザーの出射角を調整する必要がある。
加熱器によって「環境温度+α」の温度を台座のバイメタルに与えることにより、レーザーの出射位置を曲線的に変位させることができる。これは、バイメタルは環境温度の変化に対して直線的に変位するが、加熱器がバイメタルに与える+αの温度によってバイメタルはさらに変位を促されるので、その結果加熱器がバイメタルの変位の非直線部分を制御することになるためである。
フロー図にあるように、加熱器の出力制御、すなわち台座の温度制御は「検知した環境温度」及び「温度―位置ずれ量対応テーブル」のデータに基づいて行われる。ずれ量d(T)=4LD(T+ΔT)X/(L^2-4D(T+ΔT)^2)となるように台座のバイメタルの温度をΔTさせる熱量を加えることを加熱器の目的とする。
図に示すようにMEMSミラーが正弦波の印加電圧で駆動する際に温度変化により色ずれが生じる場合、LD出力タイミングをMEMSミラーの振幅一周期内で時間的にずらし描画位置を調整することで、レーザー光の光軸調整と同様の効果が得られる。
検知した環境温度に基づいて補正すべきずれ量を求め、これに合わせてLD出力タイミングを調整することで色ずれを補正することが可能である。
位置ずれ対策のために温度センサを設置して温度計測を行うことにより、設置コストや装置の大型化が懸念される。また、温度センサ固有の誤差を補正するため、製品管理がユーザーの負担になることが考えられる。これらの懸念はMEMSミラーの共振周波数から温度を推定することで除かれる。
まず外付けの温度センサの方式について、既存の温度センサ方式は接触式、例えば測温抵抗体、サーミスタ、熱電対と、非接触式、例えば赤外線放射とに分類される。非接触式は、接触式に比べて測定精度や応答性に劣る上に放射熱の計測機等を設置するコストが高価であり、HUDに搭載することは難しい。よって接触式の温度センサを用いることになる。
筐体内の光学素子51は、環境温度変化時には、光学素子51の位置ずれが生じた場合、LD出力の制御である位置ずれ補正を行う。MEMSミラーの振幅駆動52が行われると、環境温度変化時には振幅条件の変化54により駆動条件の制御57が行われる。共振周波数特性55はLD出力の56及び駆動条件の制御57に影響を及ぼす。
温度変化によるレーザーの位置ずれのずれ量(すなわち色ずれ量)は、数式(4)により温度依存性があることが分かる。
ΔL=L × α × ΔT …(4)
(但し、L:材料の長さ α:熱膨張係数 ΔT:温度差)
であり、ハウジング設計における物質の熱膨張係数、長さによってずれ量ΔLが決まるからである。
したがって、温度変化に対してレーザーの位置をいかほど修正すればよいかはシミュレーションを用いることで、設計段階で明らかとなる。
位置ずれと温度の関係が明らかになっていることから、「環境温度検知手段」、「(温度に対応した)光線調整機構」の2つを備えることで温度変化による光線の位置ずれを適切に調整して画像品質低下を防ぐことができる。
電気機械素子の駆動時の共振周波数の検出は、MEMSミラーの振角θから導出できる。振角検知は走査レーザーをPDによって直接検出するか、MEMSミラーに備えられた検出センサを用いることで実現できる。PDによる検出は例えばスクリーンの投影箇所の左右にPDを設置する。MEMSミラーの検出センサは、例えばPZT圧電素子は変位量と発生電流に相関があり電流信号を検出することで実際のレーザー走査領域を確認しなくてもミラーの振幅を検出できる。
さらに、本実施形態1によれば、LD出力時間をずらして描画タイミングを調整することで、所望の光軸調整を実現する効果がある。
本発明の実施形態2を説明する。本発明は、MEMSを含むイメージングシステムに際して、以下の特徴を有する。
<概要2>
要するに、MEMSミラーの共振周波数からデバイス温度を検知し、検知した温度とリニアリティの最適位相差との対応データに基づいて副駆動の印加電圧の位相差を最適化する。これによりMEMSミラーの温度制御を行わなくても画像品質、すなわちリニアリティの温度変動を抑えることを含む。ここでいうリニアリティとは、画像ずれ(デバイス振動のずれ)を示す指標の一種であって、画像の線形性(デバイス振動の線形性)をいう。
[構 成]
図12は、電気機械素子としてのMEMSスキャナの外観斜視図である。図13は、図12に示したMEMSスキャナを駆動する電気機械システムのブロック図の一例である。
MEMSスキャナ60は、MEMSミラー74と、MEMSミラー74を挟むように配置され、MEMSミラー74を回動軸L1の周りに矢印P1方向に回動させるカンチレバー63,70を有する。MEMSミラー74は、ほぼ楕円形のミラー64、リブ67、一対のトーション梁65a,65b、両トーション梁65a,65bを支持するSiからなる可動枠68、可動枠68の裏面に設けられた補強板69、及びミラー64を回動軸L2の周りに矢印P2方向に回動させるPZT66,73を有する。リブ67は、ミラー64の裏面に設けられミラー64が捻れるのを防止する。リブ67の形状は、図12では略Φ字形状に形成されているが、本発明は、これに限定されるものではなく、ミラー64が捻れるのを防止できればどのような形状でもよい。
ミラー64はパッケージ内に気密封止され、パッケージ内は窒素パージされているのが好ましい。パッケージ内にミラー64を固定する接着剤は95℃〜-40℃の温度変化に対して機能を損なわない必要がある。
カンチレバー63は、Siからなり回動軸L1を中心として捻れることが可能なクランク部61と、クランク部61の屈曲部に設けられクランク部61を回動軸L1の周りに回動させるPZT62と、を有する。
カンチレバー70は、Siからなり回動軸L1を中心として捻れることが可能なクランク部71と、クランク部71の屈曲部に設けられクランク部71を回動軸L1の周りに回動させるPZT72と、を有する。
環境温度が変化してMEMSミラーの温度が変わった際、温度変化に応じて共振周波数が変化する。この共振周波数変化を検知82する。また特性変化により画像乱れとしてのリニアリティ低下が生じる。
共振周波数は温度依存性があり、この関係性はMEMSミラー固有である。「共振周波数-温度」の数値テーブル83をあらかじめ明らかにしておき、共振周波数からMEMSミラーの温度を検知する。<MEMSミラーの温度検知のブロック(点線81内)>リニアリティ最適位相差は温度依存性があり、この関係性はMEMSミラー固有である。「リニアリティ最適位相差-温度」の数値テーブル86をあらかじめ明らかにしておき、MEMSミラーの温度からリニアティ最適位相差を導出し、駆動制御87の駆動条件に反映する。<駆動制御手段としての位相差制御のブロック(点線85内)>駆動位相差を最適化することで、画像乱れの制御を行うことができる。本発明は主走査の共振周波数を検知できるシステムを持っていて、MEMSミラー駆動84時には共振周波数を検知することができるものとする。
本実施形態2では図のようなSiとPZT膜とを有するMEMSスキャナを用いている。
ミラー64は主走査の回動を与えるトーション梁65a,65bによって保持される。
主走査は正弦波の印加信号によりトーション梁65a,65bにトルクが与えられ回転変位する(図14(a)〜図14(e))。副走査はそれぞれ独立した副駆動カンチレバー63,70(A,Bch)への鋸波の印加信号によりカンチレバー63,70が変位する(図14(f)〜(j))。これにより可動枠68が変位することによって二次元スキャンとしての2D走査が実現される(図14(k))。
副走査方向の変位について、カンチレバー63,70(A,Bch)への印加信号の位相差を最適に設定することにより、リニアリティが高い可動枠68の変位を得ることができる。
図15(a)、(b)は、リニアリティの低下の説明図である。
副走査において、適切な駆動条件、特に副駆動カンチレバー(A,Bch)の位相差を設定しない場合、リニアリティが悪化して図15(b)のような筋が画像に表れてしまう。原因は副走査の共振によるものであり、特に一次のモードによる共振によって画像の副走査方向の明るさにムラが発生する。
ムラをなくすためには副走査・可動枠の変位速度の安定性を獲得することが必要で、具体的には副駆動カンチレバー(A,Bch)の駆動信号に適切な位相差を与える。これによりムラがなくなりリニアリティが高い状態になる。
初期値で高いリニアリティを実現する駆動条件を設定していたとしても、環境温度の変化によってPZT膜やSiに特性変動が生じリニアリティが低下する。これはPZT膜の駆動感度やSiのヤング率などに温度依存性があるためで、カンチレバー(A,Bch)の駆動におけるバランスが損なわれるためである。
データ取得のために、MEMSミラーを恒温槽内で動作させ環境温度が変化したときの共振周波数を測定して、グラフにプロットした。
MEMSミラー駆動の共振周波数はデバイス固有の特性値であり、MEMSの構造、ミラーを支持するトーション梁の長さ:L、厚さ:h、幅:w、重さや材質(ヤング率:E)などによって異なる事が知られている。ミラーを支持するトーション梁の共振周波数はf〜(1/2π)√(k/m)であり、k:トーション梁の機械的剛性はk=Ehw^3/L^3で表すことができる。
なお、共振周波数はMEMSミラーの温度に依存して変化する。つまり、MEMSミラーが環境温度から得る熱のほかにMEMS自身が駆動することによって発する自己発熱、走査レーザーがMEMSミラーに照射されることによって発する吸収熱などが共振周波数-温度特性に影響している。すなわち、環境温度+自己発熱+レーザー吸収熱=MEMSミラーの温度が共振周波数に関係する。
MEMSミラーの温度≒環境温度と考えるか自己発熱や吸収熱を考慮するかは、温度の検知精度と関わってくるので使用の状況に応じて検討すべきである。
図17における縦軸リニアリティは数値が小さいほど画像ムラが少ないことを示している。横軸位相ズレは副駆動用のカンチレバー(A,Bch)駆動電圧位相差の25℃設定値からのずれであり、位相をずらしたとき、また温度を変化させたときでリニアリティがどのように変化するかを示している。
取得したデータから温度と位相ずれの関係を求めるために、プロットを一次関数で表す。この関数と図16で説明したとおりに検知したMEMSミラーの温度から、カンチレバー(A,Bch)の位相ずれの調整値を導出することが出来る。
すなわち、このデバイスにおいては25℃設定の初期位相差からΔθ=(−0.4/70)*(T−25)の位相をMEMSミラーの温度Tに合わせて調整することにより、リニアリティの温度変動を抑えることができる。尚、図18に示したグラフとしての関数データは、電気機械システムにおける図示しない記憶手段に格納されている。
電気機械素子は、互いに異なる駆動電圧によって変位する2つのカンチレバー(A,Bch)で駆動され、環境温度と環境温度に対応する2つのカンチレバー(A,Bch)の駆動電圧の位相差との関係を図示しない記憶手段に記憶する。
本実施形態のMEMSミラーは、副走査を行うための機構として圧電素子によって駆動する2つのカンチレバーがミラーを保持している。2つのカンチレバーはそれぞれ独立した印加電圧を与えられ、それぞれ独立に駆動する。2つのカンチレバーに対して駆動周期にデバイス固有の最適な位相差を与えることで、副駆動は時間に対してリニアな走査領域を得る(有効走査領域)。
位相差が最適値からずれた場合、リニアな領域が得られず有効走査領域が小さくなり、画像異常(リニアリティ異常)が発生する。
上記にいう最適な位相差は、圧電素子や構造材の特性によって変化する。圧電素子の圧電定数や構造材の弾性率には温度依存性があるため、すなわち最適な位相差は温度に依存して変化する。
最適位相差の温度依存性について、実際にデバイスの温度係数を実測する。温度係数に基づいて、MEMSミラー温度変動に対応させた副駆動の位相差を設定することで、リニアリティ異常を制御することが出来る。
MEMSミラーの共振周波数には温度依存性がある。ミラーの温度特性(共振周波数と温度の関係)を設計するか、あらかじめ温度特性を計測しておくことで共振周波数からミラー温度を導出することができる。
共振周波数からミラー温度を導出することで、外部接続の温度センサを用いるよりも正確にデバイス温度を計測することが出来る。
共振周波数の検知はMEMSミラーの振角から導出する。振角検知は走査レーザーをPDによって直接検出するか、MEMSに備えられた検出センサを用いるなどして行うことが出来る。
PDによる検出は例えばスクリーンの投影箇所の左右にPDを設置する(後述図参照)。MEMSの検出センサは例えばPZT圧電素子は変位量と発生電流に相関があり電流信号を検出することで実際のレーザー走査領域を確認しなくてもミラーの振幅を検出できる。
2 固定保持枠
3a、3b、4a、4b ねじり梁
5 入射光
6 反射光
11 MEMS駆動機構
12 MEMS制御部
13 温度検知部
14 位置ずれ調整部
15 駆動制御機構
16 共振周波数検知部
17 共振周波数−温度対応テーブル
18 環境温度算出部
19 温度−位置ずれ量対応テーブル
20 ダイクロイックミラー向き制御/LD出力制御部
21 スクリーン
22 PD
30 光源ユニット
31、32、33 LD
34、35 ダイクロイックミラー
40 バイメタル
41 加熱器
42 断熱材
43 ハウジング
60 MEMSスキャナ
63、70 カンチレバー
64 ミラー
65a、65b トーション梁
67 リブ
68 可動枠
Claims (7)
- 画像を形成するための光線を反射し、所定の周波数において駆動される電気機械素子と、
前記電気機械素子の駆動時の共振周波数を検出する検出手段と、
前記共振周波数から環境温度を検知する温度検知手段と、
前記環境温度に基づいて、前記光線の位置ずれを調整する調整手段と、を備えたことを特徴とする
電気機械システム。 - 前記環境温度と出力画像の色ずれ量との関係を記憶した記憶手段と、
前記温度検知手段によって検知された環境温度に対応する、前記記憶手段に記憶された色ずれ量に基づいて、光源の光軸を調整する調整手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気機械システム。 - 前記光軸の調整手段は、
前記光源の出力を合成するダイクロイックミラーと、
前記ダイクロイックミラーの台座に設けられたバイメタルと、
前記バイメタルに設けられた加熱器と、
前記温度検知手段によって検知された環境温度に基づいて前記加熱器が前記バイメタルの温度を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の電気機械システム。 - 前記光軸の調整手段は、
前記温度検知手段で検知された環境温度情報に基づいて前記光源の出力タイミングを制御する制御手段を、備えたことを特徴とする請求項2記載の電気機械システム。 - 前記電気機械素子は、互いに異なる駆動電圧によって変位する2つのカンチレバーで駆動され、
前記環境温度と前記環境温度に対応する前記2つのカンチレバーの駆動電圧の位相差との関係を記憶する記憶手段と、
前記2つのカンチレバーの駆動電圧の位相差を調整する駆動制御手段と、を有し、
前記駆動制御手段は、前記温度検知手段によって検知された環境温度に対応する、前記記憶手段に記憶された位相差に基づいて、前記位相差を調整することを特徴とする請求項1記載の電気機械システム。 - 請求項1乃至5の何れか1項に記載の電気機械システムを有するヘッドアップディスプレイ。
- 請求項6に記載のヘッドアップディスプレイを有する車両。
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