JP6412351B2 - 無段変速機の制御装置及び制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一組のプーリにベルト又はチェーンを掛け渡して構成される無段変速機の制御装置に関する。
一組のプーリにベルト又はチェーンを掛け渡し、プライマリプーリ及びセカンダリプーリの溝幅を変更することにより変速を行う無段変速機において、大きな入力トルクに対してベルトをスリップさせないためには、ベルトの挟持力を大きくする必要がある。
ベルトの挟持力を大きくするには、油圧室に供給する油圧を増大する、又は、油圧室の受圧面積を増大する、という手法がある。
油圧を増大させるためには、油圧ポンプ等の油圧源の容量を増大する必要がある。受圧面積を増大するためには、各プーリの半径を増大する必要がある。このような構成では、油圧ポンプのフリクションの増大や、油圧ポンプ及び変速機のサイズや重量の増加による燃費の悪化や配置の制約等の問題が発生する。
このような問題に対して、プーリの油圧室を軸方向に二重構造とした無段変速機が知られている。軸方向に二重構造とすることでプーリの径を増加することなく受圧面積を増大させることができる。
特許文献1には、セカンダリ側プーリ油室が第1油圧室と第2油圧室とを有し、第1油圧室と第2油圧室とのいずれか一方のみに切換バルブを介してセカンダリ側制御油圧を供給し、他方にはライン圧が供給されるベルト式無段変速機が開示されている。
特開2005−273730号公報
前述の特許文献1に記載の技術は、切換バルブを切り換えることによって、第1油圧室と第2油圧室との双方に油圧を供給することができる。
このように切換バルブを切り換え制御する場合、切換バルブをON/OFFするときに油圧の変動が生じる場合がある。プライマリプーリとセカンダリプーリとで協働してベルト巻掛け半径を変更する無段変速機において、油圧が切換バルブのON/OFFによりステップ状に変化すると、プーリ間で油圧の過不足が生じ、ベルトの滑りの発生や、意図しない変速比への変動が発生する。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、複数の油圧室を備え、受圧面積を増大させた無段変速機において、油圧室への油圧の変動を抑制できる無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。
本発明のある実施態様によると、セカンダリプーリの回転軸に固定される固定シーブと、回転軸の軸方向に摺動可能に備えられ、第1油圧室及び第2油圧室を有し、第1油圧室及び第2油圧室に供給される油圧によって可動する可動シーブと、固定シーブ及び可動シーブの間に挟持されるベルトと、を備える無段変速機の制御装置であって、油圧源の油圧を調圧して供給する第1調圧部と、第1調圧部と第1油圧室とを連通する第1油路と、第1油路と第2油圧室とを連通する第2油路と、第1油路と第2油路との間に備えられ、第1油路が供給する油圧を調圧して第2油路に供給する第2調圧部と、第1調圧部及び第2調圧部を制御する制御部と、を備え、制御部は、第2調圧部を制御して第2油圧室に油圧の供給を開始する際、又は、第2調圧部を制御して第2油圧室への油圧の供給を停止する際に、第1調圧部が調圧する油圧を増大させることを特徴とする。
上記態様によると、第2油圧室に供給する油圧を変更する際に、油圧源の油圧を調圧する第1調圧部が調圧する油圧を変更するので、第1油圧室及び第2油圧室からなる複数の油圧室を備える場合に、一方の油圧室の油圧を変更する際に、油圧源から調圧される油圧を変更することによって、油圧の変動を抑制することができる。これにより、プーリ間で油圧の過不足が発生することを抑制して、ベルトの滑りの発生や、意図しない変速比への変動を防止できる。
本発明の実施形態の無段変速機(CVT)の構成の一例を示す説明図である。 本発明の実施形態の無段変速機構のセカンダリプーリの説明図である。 本発明の実施形態の油圧制御装置の油圧制御のフローチャートである。 本実施形態の無段変速機構が適用される車両が走行するときの制御のタイムチャートである。 本実施形態の無段変速機構における、キックダウンを伴う大きな加速要求があった場合の制御のタイムチャートである。 本実施形態の無段変速機構における、第2調圧弁のON/OFFの制御のタイムチャートである。
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の無段変速機(CVT)の構成の一例を示す説明図である。
エンジン1により駆動されるクランク軸11の回転は、トルクコンバータ2及び前後進切換機構3を介して無段変速機構4に伝達される。
トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチを備えており、油圧によりコンバータ状態及びロックアップ状態(スリップロックアップ)に制御される。
前後進切換機構3は、トルクコンバータ2の出力軸であるタービン軸6の回転を無段変速機構4に正(前進)方向に伝達するための前進用クラッチと、逆(後退)方向に伝達するための後退用ブレーキとを備える。
無段変速機構4は、前後進切換機構3に連結される入力軸12に連結されるプライマリプーリ15と、入力軸12と並列に配置される出力軸13に連結されるセカンダリプーリ16と、プライマリプーリ15とセカンダリプーリ16との間に掛け渡される無端の動力伝達部材(Vベルト)17とを備えるベルト式無段変速機構である。
プライマリプーリ15には、固定プーリ(固定シーブ)15aと、固定プーリ15aに対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定プーリとの間にV溝を形成する可動プーリ(可動シーブ)15bと、可動プーリ15bの背面に設けられて可動プーリ15bを軸方向に変位させる油圧シリンダ21とを備える。
セカンダリプーリ16には、固定プーリ(固定シーブ)16aと、可動プーリ(可動シーブ)16bと、可動プーリ16bの背面に設けられて可動プーリ16bを軸方向に変位させる油圧シリンダ22とを備える。セカンダリプーリ16の油圧シリンダ22は、第1油圧室51及び第2油圧室52を備える。
これら油圧シリンダ21、22に供給する油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト17と各プーリ15、16との接触半径が変化して、無段変速機構4の変速比が無段階に変化する。
セカンダリ軸14の回転は、終減速装置18を介して車輪に伝達される。
オイルポンプ30が発生する油圧は、油圧回路31を介して無段変速機構4の各部(プライマリプーリ15、セカンダリプーリ16、トルクコンバータ2等)に供給される。
油圧シリンダ21、22には、オイルポンプ30が発生する油圧を元圧として、第1調圧弁101により調圧された油圧が供給される。油圧制御装置40は、第1調圧弁101が調圧して出力する油圧を制御する。
第1調圧弁101によって調圧された油圧は、油路200及び第1油路201を経由して第1油圧室51へと送られる。さらに、第1調圧弁101によって調圧された油圧は、油路200から第2調圧弁102を介して第2油路202を経由して第2油圧室52へと送られる。
油圧制御装置40は第1調圧弁101及び第2調圧弁102を制御して油圧シリンダ21、22の油圧をそれぞれ制御することにより、プライマリプーリ15及びセカンダリプーリ16の溝幅をそれぞれ変更して、無段変速機構4の変速比が変更される。
第1調圧弁101は、例えば電磁ソレノイド等により構成され、油圧制御装置40から出力される制御指令に基づいて、デューティー比制御されて、油圧を制御する。
第2調圧弁102は、例えばON−OFFソレノイド等により構成される。第2調圧弁102がONのときは、第1油圧室51に供給される油圧と同圧が第2油圧室52にも供給される。第2調圧弁102がOFFのときは、第2油圧室52には油圧が供給されない。油圧制御装置40は、第2調圧弁のON−OFFを制御する制御指令を出力する。
油圧回路31により供給される油圧は、無段変速機構4の内部で作動油(潤滑油)として機能する。作動油は各部からドレンされた後にオイルパン19に落下し、再びオイルポンプ30に供給される。
次に、セカンダリプーリ16の油圧シリンダ22の構成を説明する。
図2は、本発明の実施形態のセカンダリプーリ16の説明図である。
セカンダリプーリ16の油圧シリンダ22には、第1油圧室51と第2油圧室52とが備えられる。
可動プーリ16bは、出力軸13の外周に嵌装され、出力軸13に対して摺動する軸方向延設部16dが備えられる。また、可動プーリ16bの外周側には、可動プーリ16bから軸方向に延設される外筒部16cを備える。
第1油圧室51及び第2油圧室52は、シリンダ53と、可動プーリ16bの外筒部16cとにより画成される内部空洞内に形成される。
油圧シリンダ22の内部には、第1仕切壁61と第2仕切壁62とが備えられる。第1仕切壁61は、シリンダ53の端部に連結され、シリンダ53に対して不動に、すなわち軸方向に不動に固定される。第2仕切壁62は、軸方向延設部16dに固定され、可動プーリ16bの移動に伴って、油圧シリンダ22内を移動する。第1仕切壁61と第2仕切壁62との間の中間部70は、空隙となっている。
第1油圧室51は、可動プーリ16bと第1仕切壁61とで画成された空間により形成される。第1油圧室51には、油圧制御装置40から供給される油圧が、出力軸13の内部に形成される第1供給油路131及び第1油圧供給孔81を介して供給される。第1油圧室51に油圧が供給されることにより、軸方向に不動に固定される第1仕切壁61に対する油圧が作用して、可動プーリ16bを、Vベルト17を挟持する方向に押圧する。第1仕切壁61は、外筒部16cの内周と軸方向延設部16dの外周とに対して摺動する。第1仕切壁61の摺動部分にはオイルシール61aが備えられる。
第2油圧室52は、第2仕切壁62とシリンダ53とで画成された空間により形成される。第2油圧室52には、第1調圧弁により調圧された油圧が、第2調圧弁102を経由し、出力軸13の内部に形成される第2供給油路132及び第2油圧供給孔82を介して供給される。第2油圧室52に油圧が供給されることにより、軸方向に不動に固定されるシリンダ53に対する油圧が作用して、第2仕切壁62を押圧して、可動プーリ16bを、Vベルト17を挟持する方向に押圧する。第2仕切壁62は、シリンダ53の内周に対して摺動する。第2仕切壁62の摺動部分にはオイルシール62aが備えられる。
このようにセカンダリプーリ16を構成することにより、セカンダリプーリ16における受圧面積を増大させることができるので、無段変速機構4の入力トルクの上限を大きくすることができる。第1油圧室51は、可動プーリ16bの背面に近い側に備えられる。第1油圧室51は、後述するように常に可動プーリ16bに対して油圧を供給するものであり、シーブ面全体に油圧を作用させることができ、Vベルト17を均一に挟持できる。第2油圧室52は、主に、大きな挟持力が必要な場合に油圧が供給される。
次に、このように構成された無段変速機構4における制御を説明する。
油圧制御装置40により、プライマリプーリ15及びセカンダリプーリ16の油圧シリンダ21、22の油圧をそれぞれ制御することにより、各プーリ15、16の溝幅が変更されて、変速比が変更される。
ここで、無段変速機構4に大きなトルクが入力される場合を想定する。大きなトルクが入力される場合とは、例えば、車速ゼロからの発進、キックダウンを伴う大きな加速要求等がある。大きなトルクが入力される場合は、Vベルト17のスリップを防止しつつ大きなトルクを伝達させるために、油圧シリンダ21及び22大きな油圧が要求される。
一般的な、ベルト式の無段変速機においては、プライマリプーリ15の油圧は主に変速比を制御し、セカンダリプーリ16の油圧は、主にVベルト17が滑らないような挟持力を提供する。そのため、大きなトルクを伝達するためにセカンダリプーリ16に大きな油圧が必要となる。
本実施形態では、前述のようにセカンダリプーリ16に、軸方向に並列して第1油圧室51と第2油圧室52とを備えることにより、受圧面積を増大したので、油圧室が一つである場合と比較して大きな油圧を作用させることができる。
ここで、セカンダリプーリ16の受圧面積のみを大きくした場合は、プライマリプーリ15の受圧面積とに差異が生じ、同一の油圧を供給した場合にシーブ面に加わる挟持力が不均衡となってしまう。
そこで、本実施形態では、次のような制御を行うことにより、Vベルト17をスリップさせることなく大きなトルクを伝達できると共に、油圧の不均衡を抑制するように制御した。
図3は、本実施形態の油圧制御装置40が実行する油圧制御のフローチャートである。図3に示す油圧制御は、油圧制御装置40において、他の処理と並行して周期的に実行される。
制御が開始されると、油圧制御装置40は、ステップS11において、セカンダリプーリ16に要求されるVベルト17の挟持力を取得し、取得した挟持力が、予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。Vベルト17の挟持力は、車速、エンジン回転速度、変速比、及び加速要求(アクセル開度)等に基づいて決定される。
ステップS11における閾値は、前述のように、車速ゼロからの発進、キックダウンを伴う大きな加速要求等、大きなトルクが入力される状況を想定して、現在の車速、エンジン回転速度、エンジントルク、変速比、油温等に基づいて決定される。一例として、高車速での加速要求よりも車速が比較的低速である場合の加速要求における閾値を小さく設定する。
Vベルト17の挟持力が閾値以上であると判定した場合はステップS12に移行する。Vベルト17の挟持力が閾値未満であると判定した場合は、ステップS21に移行する。
ステップS12では、油圧制御装置40は、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51及び第2油圧室52の双方の油圧室であるか否かを判定する。既に第2調圧弁102がONであり、第1油圧室51と第2油圧室52との双方に油圧が供給されている場合は、ステップS13に移行して、油圧制御装置40は、ステップS11におけるセカンダリプーリ16に要求されるVベルト17の挟持力を満足する油圧を供給する。ステップS13の処理の後、本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
ステップS12において、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51及び第2油圧室52の双方の油圧室でないと判定した場合は、油圧制御装置40は、第2調圧弁102がOFFであり、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51のみである。この場合は、ステップS11におけるVベルト17の挟持力に対して油圧が不足するので、油圧制御装置40は、第1油圧室51に加えて第2油圧室52にも油圧を供給するように次のステップS15からS19の制御を実行する。
ステップS15において、油圧制御装置40は、第2油圧室52に油圧を供給する前準備として、第1油圧室51に供給する油圧を増圧する油圧増加制御を行う。
第2調圧弁102をONとして第2油圧室52に油圧の供給を開始した場合は、第2油路202や第2油圧室52に作動油が充填されるまでの間、第1油圧室51の油圧が一時的に低下する。特にVベルト17に大きな挟持力が要求されている場合に油圧の低下が発生すると、Vベルト17にスリップが発生する可能性がある。
そこで、本実施形態では、第2油圧室52に油圧を供給する前に、一旦第1油圧室51に供給される油圧を上昇させて、挟持力が低下することを防止する。
ステップS15では、油圧制御装置40は、第1調圧弁101に制御指令を出力して、第1油圧室51に供給する油圧を増圧する。このときの増圧分は、第2油圧室52に油圧の供給を開始することによって減少する油圧分を超えるように、予め油路の管路長、油圧室の体積等により計算で求めた値と、現在供給されている油圧とに基づいて算出する。
次に、油圧制御装置40は、ステップS16において、タイマ1のインクリメントを開始する。次に、ステップS17において、タイマ1が所定時間を満了したかを判定する。
ステップS17における所定時間は、ステップ15において油圧の増加制御を開始してから、第1油圧室51の油圧が十分に上昇するまでに必要な時間を設定する。例えば前述のように、予め油路の管路長、油圧室の体積等により計算で求めた値と、現在供給されている油圧とに基づいて算出してもよい。
ステップS17において、ステップS16でインクリメントを開始したタイマ1が所定時間を満了していない場合は本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
タイマ1が満了したと判定した場合は、ステップS18において、油圧制御装置40は、第2調圧弁102をONに設定し、第2油圧室52に油圧の供給を開始する。
第2油圧室52に油圧の供給を開始した後、ステップS19において、油圧制御装置40は、ステップS15において増圧した油圧を低下させる油圧低下制御を実行する。
第2油圧室52に油圧を供給することで、セカンダリプーリ16の受圧面積が増大することによりVベルト17の挟持力が増大する。そこで、油圧制御装置40は、第1調圧弁101に制御指令を出力して、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給する油圧を、増大した挟持力からステップS11にて取得した要求される挟持力を差し引いた分だけ低下させる。
ステップS19の制御の後、本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
ステップS11において、Vベルト17の挟持力が閾値未満であると判定した場合は、油圧制御装置40は、ステップS21において、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51及び第2油圧室52の双方の油圧室であるか否かを判定する。
既に第2調圧弁102がONであり、第1油圧室51と第2油圧室52との双方に油圧が供給されている場合は、ステップS11におけるVベルト17の挟持力に対して油圧が過多となるので、油圧制御装置40は、第1油圧室51のみ油圧が供給されるように次のように制御する。
まず、ステップS22において、油圧制御装置40は、第2油圧室52への油圧の供給を停止する前準備として、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給する油圧を増圧する油圧増加制御を行う。
第2調圧弁102をOFFとして第2油圧室52の油圧の供給を停止する場合は、セカンダリプーリ16における受圧面積が急に減少することになり、ベルト挟持力が一時的に低下して挟持力がベルトスリップの限界を下回る可能性がある。
そこで、本実施形態では、第2油圧室52の油圧の供給を停止する前に、一旦第1油圧室51及び第2油圧室52に供給される油圧を上昇させて、第2油圧室52の油圧の供給を停止した後にも挟持力がベルトスリップの限界を下回らないように制御する。
ステップS22では、油圧制御装置40は、第1調圧弁101に制御指令を出力して、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給する油圧を増圧する。このときの増圧分は、セカンダリプーリに16におけるVベルト17の挟持力が、プライマリプーリ15のVベルト挟持力と不均衡とならないように現在の車速、エンジン回転速度、変速比等に基づいて決定する。
次に、油圧制御装置40は、ステップS23において、タイマ2のインクリメントを開始する。次に、ステップS24において、タイマ2が所定時間を満了したかを判定する。
ステップS24における所定時間は、ステップ22において油圧の増加制御を開始してから、第1油圧室51及び第2油圧室52の油圧が十分に上昇するまでに必要な時間を設定する。例えば前述のように、予め油路の管路長、油圧室の体積等により計算で求めた値と、現在供給されている油圧とに基づいて算出してもよい。
ステップS24において、ステップS22でインクリメントを開始したタイマ2が所定時間を満了していない場合は本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
タイマ2が満了したと判定した場合は、ステップS25において、油圧制御装置40は、第2調圧弁102をOFFに設定し、第2油圧室52の油圧の供給を停止する。
第2油圧室52の油圧の供給を停止した後、ステップS26において、油圧制御装置40は、第1調圧弁101に制御指令を出力して、ステップS22において増圧した油圧を低下させ、第1油圧室51に供給される油圧のみでVベルト17の挟持力を発揮できるように制御する油圧低下制御を実行する。
ステップS26の制御の後、本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
ステップS21において、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51及び第2油圧室52の双方の油圧室でないと判定した場合は、第2調圧弁102がOFFであり、現在油圧が供給されているのは第1油圧室51のみである。この場合は、油圧制御装置40は、ステップS32において、第1油圧室51に供給する油圧によってVベルト17の挟持力を発揮できるように制御する油圧制御を実行する。
ステップS32の制御の後、本フローチャートの処理を一旦終了して、他の処理に戻る。
このような制御によって、第1油圧室51のみを用いるか、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方を用いるかを適切に制御すると共に、これらの切換時にもVベルト17の挟持力が過渡的に低下することがないように制御できる。
図3に示すフローチャートの制御では、ステップS16、S17及びステップS23、S24において、油圧の増大を指令してから所定時間の経過を待って、第2調圧弁102のON−OFFを制御した。これに対して、第1油圧室51、第2油圧室52に油圧センサを設け、油圧センサが取得した実油圧の上昇を確認してから、第2調圧弁102のON−OFFを制御するように構成してもよい。
図4は、本実施形態の無段変速機構4が適用される車両が走行するときの油圧制御装置40の制御のタイムチャートを示す。
図4に示すタイムチャートは、車速、プーリ比(変速比)、Vベルト17の挟持力、セカンダリプーリ16の供給油圧及び油圧室の状態を、時間を横軸としたタイムチャートで示す。なお、供給油圧については、セカンダリプーリ16の油圧室が一つである従来の無段変速機構の供給油圧を点線で示す。
車両が停止しているときに、タイミングT11で車両の発進要求があった場合は大きなトルクが必要とされる。そこで、前述のように油圧制御装置40は、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給して、Vベルトの挟持力を増大させる。
車両が発進した後、車速が上昇し、変速比がHigh側へと変速されると、Vベルト17が必要な挟持力が低下する(タイミングT12)。このとき、挟持力が閾値を下回った場合は、油圧制御装置40は、第1油圧室51のみに油圧を供給するように第2調圧弁102をOFFに制御して、Vベルトの挟持力を低下させる。
定常走行時(タイミングT13)では、Vベルト17の挟持力は大きくないので、第1油圧室51のみで走行を行う。
その後、車両が減速し、変速比がLow側へと変速する。このとき、Vベルト17の挟持力が閾値を上回った場合は(タイミングT14)、油圧制御装置40は、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給して、Vベルトの挟持力を増大させる(タイミングT15)。なお、車両が停車した後は、次の発進時の大きなトルクが必要となり、大きなVベルトの挟持力が必要となるので。停車中も第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給する状態が維持される。
このように、車両の発進時や減速時など、入力トルクが大きく、Vベルト17に大きな挟持力が必要である場合に、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給することで受圧面積を増大させることができる。これにより、供給する油圧は、油圧室が一つである従来の無段変速機構と比べて低く抑えることができる。
定常走行時では、一つの第1油圧室51のみでVベルト挟持力を制御する。油圧室が一つである従来の無段変速機構では、発進時や減速時の大きな入力トルクに備えて、油圧室の受圧面積を大きくする必要があるが、本実施形態では、入力トルクが小さい場合のみを第1油圧室51によって制御するので、第1油圧室51の受圧面積は小さくてもよい。
従って、本実施形態では、油圧室が一つである従来の無段変速機構と比較して、オイルポンプ30の容量を小型化でき、フリクション及び重量が減少することにより、燃費を向上することができる。
図5は、本実施形態の無段変速機構4における、キックダウンを伴う大きな加速要求があった場合の油圧制御装置40の制御のタイムチャートを示す。
図5に示すタイムチャートは、アクセル開度、車速、プーリ比(変速比)、Vベルト17の挟持力、セカンダリプーリ16の供給油圧及び油圧室の状態を、時間を横軸としたタイムチャートで示す。なお、供給油圧については、セカンダリプーリ16の油圧室が一つである従来の無段変速機構の供給油圧を点線で示す。
車両が走行中に、運転者がアクセルペダルを大きく踏み込むことにより大きな加速要求があった場合は、油圧制御装置40は、変速比をLow側にキックダウンさせる。このとき、Vベルト17の挟持力が上昇し閾値を上回った場合は(タイミングT21)、油圧制御装置40は、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給して、Vベルトの挟持力を増大させる。
変速比をキックダウンすることで車速が上昇する。その後、車速の上昇に伴って油圧制御装置40は、無段変速機構4をHigh側に変速させる。High側の変速により、挟持力が閾値を下回った場合(タイミングT22)は、油圧制御装置40は、第1油圧室51のみに油圧を供給するように第2調圧弁102をOFFに制御して、Vベルトの挟持力を低下させる(タイミングT23)。
このように、キックダウンを伴う大きな加速要求があり、Vベルト17に大きな挟持力が必要である場合に、第1油圧室51及び第2油圧室52の双方に油圧を供給することで受圧面積を増大させる、挟持力を増大させることができる。これにより、供給する油圧は、油圧室が一つである従来の無段変速機構と比べて低く抑えることができる。従って、油圧室が一つである従来の無段変速機構と比較して、オイルポンプ30の容量を小型化でき、フリクション及び重量が減少することにより、燃費を向上することができる。
図6は、本実施形態の無段変速機構4における、第2調圧弁102のON/OFFの制御のタイムチャートを示す。
図6に示すタイムチャートは、Vベルト17の挟持力、油圧室の状態、第2調圧弁102の状態、セカンダリプーリ16の供給油圧及びプライマリプーリ15の供給油圧を、時間を横軸としたタイムチャートで示す。
油圧制御装置40は、第1油圧室51に加えて第2油圧室52にも油圧を供給する場合は、次のように制御する。
まず、油圧制御装置40は、第2油圧室52に油圧を供給することを決定した場合は(タイミングT31)、前準備として、第1油圧室51に供給する油圧を増圧する油圧増加制御を行う。
第2調圧弁102をONとして第2油圧室52に油圧の供給を開始した場合は、第2油路202や第2油圧室52に作動油が充填されるまでの間、第1油圧室51の油圧が一時的に低下し、Vベルト17の挟持力が低下する。挟持力の低下を抑制するために、油圧制御装置40は、第2油圧室52に油圧を供給する前に、一旦、第1油圧室51に供給される油圧を上昇させる。
これにより、セカンダリプーリ16の供給油圧が上昇するが、セカンダリプーリ16の油圧の上昇に合わせて、プライマリプーリ15の供給油圧も同様に上昇させて、Vベルト17の挟持力をバランスさせる。
油圧増加制御は、タイマ1が所定時間を満了するまで行われる(タイミングT32)。タイマ1が所定時間を満了した後、油圧制御装置40は、第2調圧弁102をONに設定し、第2油圧室52に油圧の供給を開始する。
次に、第2油圧室52に油圧を供給することで、セカンダリプーリ16の受圧面積が増大することによりVベルト17の挟持力が増大することを抑制するために、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給する油圧を、受圧面積が増大して挟持力が増大した分だけ低下させる(タイミングT33)。
次に、油圧制御装置40は、第2油圧室52の油圧の供給を終了する場合は、次のように制御する。
油圧制御装置40は、第2油圧室52の油圧の供給を停止することを決定した場合は(タイミングT34)、前準備として、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給する油圧を増圧する油圧増加制御を行う。
第2調圧弁102をOFFとして第2油圧室52の油圧の供給を停止する場合は、セカンダリプーリ16における受圧面積が減少するため、ベルト挟持力が一時的に低下する。挟持力の低下を抑制するために、油圧制御装置40は、第2油圧室52の油圧を停止する前に、一旦、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給される油圧を上昇させる。
このときも同様に、セカンダリプーリ16の供給油圧が上昇するが、セカンダリプーリ16の油圧の上昇に合わせて、プライマリプーリ15の供給油圧も同様に上昇させて、Vベルト17の挟持力をバランスさせる。
油圧増加制御は、タイマ2が所定時間を満了するまで行われる(タイミングT35)。タイマ2が所定時間を満了した後、油圧制御装置40は、第2調圧弁102をOFFに設定し、第2油圧室52の油圧の供給を停止する。
次に、第1油圧室51に供給する油圧を増圧させる。セカンダリプーリ16の受圧面積が減少することによりVベルト17の挟持力が低下することを抑制するために、第1油圧室51に供給する油圧を、受圧面積が減少して挟持力が低下した分だけ増大させる。
このような制御により、第2調圧弁102のON−OFFを切り換えたときのセカンダリプーリの油圧の変動を抑制することができる。
以上説明したように、本発明の実施形態は、回転軸(出力軸)13に固定される固定シーブ16aと、出力軸13の軸方向に摺動可能に備えられ、第1油圧室51及び第2油圧室52を有し、第1油圧室51及び第2油圧室52に供給される油圧によって可動する可動シーブ16bと、固定シーブ16a及び可動シーブ16bの間に挟持されるVベルト17と、を備える無段変速機構4の制御装置であって、油圧源(オイルポンプ)30の油圧を調圧して供給する第1調圧部(第1調圧弁)101と、第1調圧弁101と第1油圧室51とを連通する第1油路201と、第1油路201と第2油圧室52とを連通する第2油路202と、第1油路201と第2油路202との間に備えられ、第1油路201が供給する油圧を調圧して第2油路202に供給する第2調圧部(第2調圧弁)102と、第1調圧弁101及び第2調圧弁102を制御する制御部としての油圧制御装置40と、を備え、油圧制御装置40は、第2調圧弁102を制御して第2油圧室52に供給する油圧を変更する際に、第1調圧弁101が調圧する油圧を変更してVベルト17を挟持する挟持力が不足することを抑制する。
このような制御により、第1油圧室51及び第2油圧室52からなる複数の油圧室を備える無段変速機構4において、一方の第2油圧室52の油圧を変更する際に、オイルポンプ30から調圧される油圧を第1調圧弁101により変更することによって、油圧の変動を抑制することができる。これにより、プーリ間で油圧の過不足が発生することを抑制して、Vベルト17の滑りの発生や、意図しない変速比への変動を防止できる。この効果は請求項1及び5に対応する。
さらに、油圧制御装置40は、第2調圧弁102を制御して第2油圧室52に供給する油圧を変更する際に、第1調圧弁101が調圧する油圧を増大させる。すなわち、第2調圧弁102をONとして第2油圧室52に油圧の供給を開始した場合は、第2油路202や第2油圧室52に作動油が充填されるまでの間、第1油圧室51の油圧が一時的に低下してVベルト17の挟持力が低下することを抑制できると共に、第2調圧弁102をOFFとして第2油圧室52の油圧の供給を停止する場合は、セカンダリプーリ16における受圧面積が減少してベルト挟持力が一時的に低下することを抑制できる。この効果は請求項2に対応する。
さらに、油圧制御装置40は、第2調圧弁102を制御して第2油圧室52に供給する油圧を変更する場合は、第1調圧弁101に、第1調圧弁101が調圧する油圧を変更する制御指令を出力した後に、第2調圧弁102に、第2油圧室52に供給する油圧を変更する制御指令を出力する。これにより、油路の管長や油圧室の体積により油圧の応答が遅れることを予期して、第1油圧室51及び第2油圧室52の油圧を制御することができる。この効果は請求項3に対応する。
さらに、第2調圧弁102は、第1油路201の油圧を第2油路202を介して第2油圧室52に供給するか、第2油圧室52への油圧の供給を停止するか、のいずれかに切り換えられるON−OFFソレノイドにより構成される。第2調圧弁102としてデューティーソレノイドを用いてデューティー比制御すると、調圧弁の上流と下流で油圧に差が生じ、制御先の油圧の増大、減少を例えば油圧センサにより把握する必要があり、油圧センサを設ける分コストが上昇する。これに対して、ON−OFFソレノイドを用いた場合は、調圧弁の上流と下流とで差が生じず、例えば油圧センサを設ける必要がなく、コストを低減することができる。この効果は請求項3に対応する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記実施形態では、プーリ間にVベルト17を掛け渡したベルト式無段変速機構4を例に説明したが、これに限られない。Vベルト17の代わりにプーリ間にチェーンを掛け渡した無段変速機構であってもよい。
上記実施例では、セカンダリプーリ16の油圧室を第1油圧室51及び第2油圧室52により構成したが、これをプライマリプーリ15に適用してもよい。さらに、プライマリプーリ15及びセカンダリプーリ16の双方に、複数の油室を備える構成としてもよい。このように構成した場合も、前述のような制御を行うことで、油圧の変動を抑制できる。
上記実施例では、図3に示すフローチャートのように、Vベルト17の挟持力が閾値以上であるか否かによって制御を行っている。このため、閾値付近でハンチングが発生する可能性がある。このような場合は、ヒステリシスを持たせるように、所定の運転状態が継続する間は、第2調圧弁102をONに設定する。油圧制御装置40や第2調圧弁102にフェールが発生した場合は、Vベルト17のスリップを防ぐ観点から、第2調圧弁をONに制御する。
1 エンジン
2 トルクコンバータ
4 無段変速機構
6 タービン軸
11 クランク軸
12 入力軸
13 回転軸(出力軸)
15 プライマリプーリ
16 セカンダリプーリ
16a 固定プーリ(固定シーブ)
16b 可動プーリ(可動シーブ)
17 動力伝達部材(Vベルト)
30 オイルポンプ
31 油圧回路
40 油圧制御装置
51 第1油圧室
52 第2油圧室
101 第1調圧弁(第1調圧部)
102 第2調圧弁(第2調圧部)
200 油路
201 第1油路
202 第2油路

Claims (4)

  1. セカンダリプーリの回転軸に固定される固定シーブと、
    前記回転軸の軸方向に摺動可能に備えられ、第1油圧室及び第2油圧室を有し、前記第1油圧室及び第2油圧室に供給される油圧によって可動する可動シーブと、
    前記固定シーブ及び前記可動シーブの間に挟持されるベルトと、を備える無段変速機の制御装置であって、
    油圧源の油圧を調圧して供給する第1調圧部と、
    前記第1調圧部と前記第1油圧室とを連通する第1油路と、
    前記第1油路と前記第2油圧室とを連通する第2油路と、
    前記第1油路と前記第2油路との間に備えられ、前記第1油路が供給する油圧を調圧して前記第2油路に供給する第2調圧部と、
    前記第1調圧部及び前記第2調圧部を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記第2調圧部を制御して前記第2油圧室に油圧の供給を開始する際、又は、前記第2調圧部を制御して前記第2油圧室への油圧の供給を停止する際に、前記第1調圧部が調圧する油圧を増大させる
    ことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 請求項に記載の無段変速機の制御装置であって、
    前記制御部は、前記第2調圧部を制御して前記第2油圧室に供給する油圧を変更する場合は、
    前記第1調圧部に、前記第1調圧部が調圧する油圧を変更する制御指令を出力した後に、前記第2調圧部に、前記第2油圧室に供給する油圧を変更する制御指令を出力する
    ことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の無段変速機の制御装置であって、
    前記第2調圧部は、前記第1油路の油圧を、前記第2油路を介して前記第2油圧室に供給するか、前記第2油圧室への油圧の供給を停止するか、のいずれかに切り換えられる
    ことを特徴とする無段変速機の制御装置。
  4. セカンダリプーリの回転軸に固定される固定シーブと、
    前記回転軸の軸方向に摺動可能に備えられ、第1油圧室及び第2油圧室を備え、前記第1油圧室及び前記第2油圧室に供給される油圧によって可動する可動シーブと、
    前記固定シーブ及び前記可動シーブの間に挟持されるベルトと、を備える無段変速機の制御方法であって、
    油圧源の油圧を第1調圧部によって調圧して1油路を介して前記第1油圧室に供給し、
    前記第1油路から第2調圧部及び第2油路を介して前記第2油圧室に油圧を供給し
    前記第2調圧部を制御して前記第2油圧室に油圧の供給を開始する際、又は、前記第2調圧部を制御して前記第2油圧室への油圧の供給を停止する際に、前記第1調圧部が調圧する油圧を増大させる
    ことを特徴とする無段変速機の制御方法。
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