JP6412309B2 - サーミスタ素子、温度センサ及びサーミスタ素子の製造方法 - Google Patents
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Description
感温素子の頂点における内側保護層の層厚が薄くなると、この部位で還元性ガスの侵入を防止する特性が劣るので、例えば、特許文献1では、内側保護層全体をさらに外側から外側保護層で被覆して還元性ガスの侵入を防いでいる。しかしながら、被覆層を二重(内側保護層と外側保護層)にすることにより、内側保護層と外側保護層との熱膨張収縮の違いによる応力が発生するほか、サーミスタ素子の熱応答性が低下する不具合が生じる。
但し、サーミスタ素子がサーミスタ本体に接続され、第1被覆層を貫通して外部に延出する引出線を備える場合、引出線と第1被覆層との界面を通じて還元性ガスが侵入しやすい。
これに対し、前述のサーミスタ素子では、第2被覆層が引出線の一部及び第1被覆層の一部を覆って、界面を気密に閉塞している。このため、この第2被覆層により、第1被覆層と引出線との界面を通じて還元性ガスが侵入するのを適切に防止できる。
さらに、上述のサーミスタ素子では、第2被覆層の熱膨張係数X2が第1被覆層の熱膨張係数X1よりも小さく、かつ、引出線の熱膨張係数X3よりも小さい。従って、焼成後、第2被覆層には圧縮応力がかかり、第2被覆層における割れの発生を抑えることができ、第1被覆層と引出線との界面を通じて還元性ガスが侵入するのを確実に抑えたサーミスタ素子とすることができる。
加えて、上述のサーミスタ素子では、差(X1−X2)が15×10 -7 /℃以下であり、かつ、差(X3−X2)が15×10 -7 /℃以下である。つまり、第1被覆層、第2被覆層及び引出線の各熱膨張係数X1,X2,X3の違いが少ない。従って、サーミスタ素子の環境温度が変化しても、第1被覆層と第2被覆層との間、及び、引出線と第2被覆層との間に隙間や剥離(亀裂)が生じがたく、この第2被覆層により、引出線の隣在部及び第1被覆層の周囲外表面部とを確実に封止したサーミスタ素子とすることができる。
また上述のサーミスタ素子では、第1被覆層がガラスあるいはガラスと金属酸化物粒子との混合物からなるため、1層の第1被覆層によって、頂点を含めたサーミスタ本体に向かう還元性ガスの侵入を、サーミスタ素子全体にわたって確実に抑制できる。
なお、直方体の頂点とは、3つの辺が共有する点、即ち直方体状のサーミスタ素子をなす3つの稜線が集まった点をいう。また、直方体は、立方体を含む。
加えて、第2被覆層が引出線及び第1被覆層の一部を覆って界面を気密に閉塞してなる形態としては、例えば、引出線の第1被覆層から延出した延出部のうち、第1被覆層に隣り合って存在する部位、即ち、第1被覆層に隣在する隣在部、及び、第1被覆層の外表面のうち、隣在部の周囲の周囲外表面部を被覆する形態が挙げられる。
さらに、第1被覆層として用いうるガラスの材質としては、SiO2−RO−B2O3(R:アルカリ土類金属)、SiO2−RO−Al2O3、SiO2−RO−ZnO、SiO2−RO−Al2O3−ZrO2、SiO2−RO−TiO2、SiO2−B2O3−Al2O3、SiO2−B2O3−ZnOからなる結晶化ガラスや、SiO2−RO、SiO2−RO−B2O3、SiO2−RO−Al2O3、SiO2−RO−Al2O3−ZrO2からなる非晶質ガラスが挙げられる。なお、結晶化ガラスの方が非晶質ガラスよりも耐熱性が高いため、第1被覆層に結晶化ガラスを用いるのがより好ましい。また、金属酸化物粒子の材質としては、例えば、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)が挙げられる。
なお、サーミスタ本体の1つの端面とは、2つの対向面との間を結ぶ4つの面(側面)のうち、サーミスタ本体において、引出線の延出方向側に位置する面(第1側面)を指す。
また、一般に、結晶化ガラスの熱伝導率は、非結晶質ガラスの熱伝導率よりも高いため、第1被覆層をなすガラスとして結晶化ガラスを用いることで、第1被覆層を介してサーミスタ本体に熱が伝わりやすく、熱応答性を確保しやすい。
次に、本発明の実施形態1のうち実施例1について説明する。
まず、実施例1にかかるサーミスタ素子1について図1〜3を参照しつつ説明する。このサーミスタ素子1は、導電性酸化物焼結体からなり直方体状のサーミスタ本体10と、耐還元性を有し、サーミスタ本体10の周囲全体を被覆する第1被覆層20とを備える(図1参照)。また、サーミスタ本体10に接続され、第1被覆層20を貫通してこの外部に延出する一対の引出線40,40と、耐還元性を有する第2被覆層30とを備える(図1参照)。
また、サーミスタ本体10は、2つの接続面11A,11Bとの間を結ぶ4つの側面12A〜12Dを有する(図1,2,4参照)。このうち、第1側面12Aは、サーミスタ本体10において、引出線40が第1被覆層20の外部に延出する延出方向DX側に位置する。また、第2側面12Bは、第1側面12Aと対向している。一方、第3側面12Cと第4側面12Dも、互いに対向している(図1,3,4参照)。
具体的に、サーミスタ本体10の8つの頂点のうちの第1頂点16Aについて考える。この第1頂点16Aは、前述したように、第2辺13B、第3辺13C及び第11辺15Cの三辺が交わる点である。また、第1接続面11A、第2側面12B及び第3側面12Cの三平面が交わる点である。
第1接続面11Aと第1平面21、第2側面12Bと第4平面24、及び、第3側面12Cと第5平面25とはいずれも平行であるので、サーミスタ本体10の第1接続面11A上のいずれの起点においても露出層厚は第1層厚TX1である。また、第2側面12B及び第3側面12Cにおける露出層厚はそれぞれ第2層厚TX2,第3層厚TX3である。なお、本実施形態1では、第1層厚TX1、第2層厚TX2及び第3層厚TX3は、TX3<TX1<TX2である。
しかしながら、図1〜3に示すように、第1被覆層20の各平面21〜26はいずれも、対応するサーミスタ本体10の各平面(各接続面11A,11B及び各側面12A〜12D)よりも大きい。このため、第1頂点16Aをなす3本の辺のうち、第2辺13B上のいずれの起点においても、露出層厚が第1層厚TX1である。また、第3辺13C及び第11辺15Cにおける露出層厚がいずれも第3層厚TX3である。
以上より、本実施形態1では、サーミスタ本体10の第1頂点16Aをなす三辺(第2辺13B,第3辺13C,第11辺15C)及び三平面(第1接続面11A,第2側面12B,第3側面12C)内の点(第1頂点16Aを除く)を起点とする露出層厚のうち最も小さい最小露出層厚は第3層厚TX3である。
まず、直方体状のサーミスタ本体10を用意する。なお、このサーミスタ本体10は、表裏面全面に電極層ESとなる白金層を形成した大判のセラミック板を形成し、これをダイシング加工によって直方体状に切断した。
サーミスタ本体10に設けた電極層ES、及び、白金−ロジウム合金からなる引出線40に、白金を含有するペーストをそれぞれ塗布した後、熱処理によりこれらを接合した(図4参照)。
このプレス工程では、具体的に、第1方向DPに延びる貫通孔61を有する矩形筒型状の第1金型60と、この第1金型60の2つの開口(第1開口61A,第2開口61B)をそれぞれ塞ぐ矩形板状の第2金型70及び第3金型80とからなる金型50を用いる(図5参照)。このうち、第1金型60は、この内側寸法が前述した第1被覆層20の外側寸法よりも大きく成型されている。
また、第2金型70は、第1金型60の第1方向DP一方側(図5中、上方)の第1開口61A内に配置されて、この第1開口61Aを塞ぐ。また、第3金型80は、第1金型60の第1方向DP他方側(図5中、下方)の第2開口61B内に配置されて、この第2開口61Bを閉塞する。このうち第2金型70は、第1方向DPに貫通する2つの貫通孔71,71を有する。この貫通孔71は、プレス成形する際、サーミスタ本体10に接続された引出線40を挿通するためのものである。なお、貫通孔71の内径寸法は、引出線40の外径寸法よりもわずかにだけ大きくしてあり、プレス工程の際、貫通孔71と引出線40との間の隙間を通じて、未焼成第1被覆層20Bをなす粉末が金型50(第2金型70)の外部にもれ出るのを抑制している。
その後、第2金型70で、第1金型60の第1開口61Aを塞いで、第1金型60を密閉する。このとき、第1金型60の内部から延出する2本の引出線40,40を各貫通孔71,71に挿通させる。さらに、第2金型70に外力Fをかけて、サーミスタ本体10を内包する形態にガラス粉末をプレス成形する。これにより、金型50(第1金型60、第2金型70及び第3金型80)の内部には、焼成前の未焼成第1被覆層20Bができる(図5参照)。なお、本実施形態1では、第2金型70のみに外力Fを加えてガラス粉末をプレス成形しているが、第3金型80にも外力Fをかけてガラス粉末をプレス成形しても良い。
続いて、第1被覆層20の第3平面23上に、既知のディスペンサ(液体定量吐出装置)を用いて、SiO2−RO−Al2O3(R:アルカリ土類金属)からなるガラス粉末を含むペーストを塗布した。塗布したペーストを乾燥させた後、これを焼成して(950℃で1時間)、第2被覆層30を形成した。
なお、本実施形態1では、第1被覆層20の熱膨張係数(=99×10-7/℃)をX1、第2被覆層30の熱膨張係数(=84×10-7/℃)をX2、引出線40の熱膨張係数(=98×10-7/℃)をX3としたとき、X1>X2、かつ、X3>X2を満たす。このため、焼成後、第2被覆層30には圧縮応力がかかり、第2被覆層30における割れの発生を抑えて形成できる。
かくして、本実施形態1にかかるサーミスタ素子1が出来上がる(図1〜3参照)。
即ち、まず、サーミスタ素子1について、900℃の大気環境下における初期抵抗値を測定した。その後、サーミスタ素子1を、900℃の還元ガス(Ar:H2=95:5)中に1時間保持した後の抵抗値を測定した。そして、初期抵抗値から還元ガスに保持した後の抵抗値を減じた値を初期抵抗値で除した値の百分率を抵抗値変化率として、これを算出した。なお、抵抗値変化率が1%未満のものを合格、1%以上のものを不合格とした。
試料数Nを10とし(N=10)、各回数において合否を判定し、合格率を算出した。
評価結果(合格率)について表1に示す。また、第1被覆層20の熱膨張係数X1と第2被覆層30の熱膨張係数X2との差(X1−X2)、及び、引出線40の熱膨張係数X3と第2被覆層30の熱膨張係数X2との差(X3−X2)についても、表1に示す。
また、上述した実施例1のサーミスタ素子1とは異なる実施例2〜8の各サーミスタ素子と、比較例1のサーミスタ素子を用意した。
具体的には、実施例2のサーミスタ素子は、第2被覆層を有しない点で実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例3のサーミスタ素子は、第2被覆層の材質に非晶質ガラスと酸化イットリウムとの混合物を用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例4のサーミスタ素子は、第2被覆層の材質に結晶化ガラスと酸化アルミニウムとの混合物を用い、かつ、この結晶化ガラスに、ガラス組成がSiO2−RO−Al2O3−ZrO2(R:アルカリ土類金属)のものを用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例5のサーミスタ素子は、第1被覆層の材質に結晶化ガラスと酸化アルミニウムとの混合物を用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例6のサーミスタ素子は、第1被覆層の材質に結晶化ガラスと酸化アルミニウムとの混合物を用い、かつ、第2被覆層の材質に非晶質ガラスと酸化イットリウムとの混合物を用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例7のサーミスタ素子は、第1被覆層の結晶化ガラスに、ガラス組成がSiO2−RO−ZnO(R:アルカリ土類金属)のものを用い、かつ、第2被覆層の材質に結晶化ガラスと酸化アルミニウムとの混合物を用い、さらに、第2被覆層の結晶化ガラスに、ガラス組成がSiO2−RO−Al2O3−ZrO2(R:アルカリ土類金属)のものを用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
また、実施例8のサーミスタ素子は、第2被覆層の非晶質ガラスに、ガラス組成がSiO2−RO−B2O3(R:アルカリ土類金属)のものを用いている点で、実施例1のサーミスタ素子1とは異なる(表1参照)。
これに対し、実施例1〜8の各サーミスタ素子(サーミスタ素子1)では、第1被覆層20の、サーミスタ本体10のいずれの頂点を起点とした露出層厚も、最小露出層厚以上の厚さを有する。このため、1層の第1被覆層20によって、サーミスタ本体10の頂点に向かう場合を含め、サーミスタ本体10のいずれの部位に向かう還元性ガスの侵入をも、サーミスタ素子1全体にわたって適切に抑制することができたと考えられる。
これに対し、実施例1,3〜8の各サーミスタ素子(サーミスタ素子1)では、第2被覆層30が引出線40の隣在部42E及び第1被覆層20の周囲外表面部20STを覆って、引出線40と第1被覆層20との界面VEを気密に閉塞している。このため、この第2被覆層30により、第1被覆層20と引出線40との界面VEを通じて還元性ガスが侵入するのを適切に防止できたと考えられる。
これに対し、実施例1,3〜6,8の各サーミスタ素子(サーミスタ素子1)について、第1被覆層20の熱膨張係数X1、第2被覆層30の熱膨張係数X2、及び、引出線40の熱膨張係数X3の関係が、X1>X2、かつ、X3>X2を満たしている。従って、焼成後、第2被覆層30には圧縮応力が十分にかかり、第2被覆層30における割れの発生を抑えることができ、第1被覆層20と引出線40との界面VEを通じて還元性ガスが侵入するのを確実に抑えたサーミスタ素子1とすることができる。
次に、本発明の変形形態にかかるサーミスタ素子101について、図面を参照しつつ説明する。
本変形形態では、第1被覆層の外形が円柱形状である点で、上述した実施形態1(実施例1〜8)と異なる。
そこで、実施形態1と異なる点を中心に説明し、同様の部分の説明は省略または簡略化する。なお、同様の部分については同様の作用効果を生じる。また、同内容の部材、部位には同番号を付して説明する。
なお、本変形形態では、第1被覆層120の外形が円柱形状である点で、前述した実施形態1の第1被覆層20と異なる(図6参照)。具体的には、この第1被覆層120は、第1被覆層120を介してサーミスタ本体10の第1側面12Aあるいは第2側面12Bとそれぞれ平行な第1平面121及び第2平面122を有している(図7参照)。また、サーミスタ本体10の第1接続面11A、第2接続面11B、第3側面12C及び第4側面12Dの外側に位置する円筒状の側面123を有している(図6,7参照)。なお、本変形形態では、側面123の円筒軸AXの軸線方向DAとサーミスタ本体10の延出方向DXとは平行である。
この第1被覆層120は、外表面120Fのうち外部に露出する露出外表面120Rと第2被覆層130に被覆された被覆外表面120Sとを含む。なお、本変形形態では、第2平面122及び側面123の各外表面が露出外表面120Rに、第1平面121の外表面の一部が被覆外表面120Sにそれぞれ該当する(図7参照)。
具体的に、サーミスタ本体10の第1頂点16Aについて考える。この第1頂点16Aは、前述したように、第2辺13B、第3辺13C及び第11辺15Cの三辺が交わる点であり、第1接続面11A、第2側面12B及び第3側面12Cの三平面が交わる点である(図4参照)。
なお、本変形形態のサーミスタ素子101は、前述した実施形態1と同じように、金型(第1金型)内にサーミスタ本体10を配置した後、第1金型とサーミスタ本体10との間に充填したガラス粉末をプレス成形して作製する。このため、サーミスタ素子101では、サーミスタ本体10が第1被覆層120の円形の横断面の中心から少しずれて配置されることがある。
そこで、本変形形態のサーミスタ素子101として、サーミスタ本体10の中心線BX(即ち、厚み方向DTの中心、かつ、幅方向DWの中心であり、延出方向DXに延びる線)が、第1被覆層120の円筒軸AXよりも、厚み方向DTに見て図8中、上方向に、かつ、幅方向DWに見て図8中、右方向にずれて配置されたものを示す(図8参照)。
この場合、第1接続面11Aをなす部位のうち側面123に近い部位は、第1接続面11Aをなす第3辺13Cである。この第3辺13Cと側面123との間に介在する第1被覆層120の層厚(第5層厚)をTX5とすれば、サーミスタ本体10の第1接続面11A内の点を起点とする露出層厚の最小値は第5層厚TX5である。
しかしながら、図6〜8に示すように、第1被覆層120の第2平面122は、対応するサーミスタ本体10の第2側面12Bよりも大きい。さらに、図7に示すように、第1被覆層120の側面123が、サーミスタ本体10の第1接続面11A及び第3側面12Cよりも、軸線方向DA(延出方向DX)に大きい。
このため、第1頂点16Aをなす3本の辺のうち、第2辺13B及び第11辺15Cにおける露出層厚が第4層厚TX4である一方、第3辺13Cにおける露出層厚が第5層厚TX5である。
なお、本変形形態のサーミスタ素子101では、層厚TX4,TX5は、TX4<TX5である。従って、本変形形態のサーミスタ素子101では、サーミスタ本体10の第1頂点16Aをなす三辺(第2辺13B,第3辺13C,第11辺15C)及び三平面(第1接続面11A,第2側面12B,第3側面12C)内の点(第1頂点16Aを除く)を起点とする露出層厚のうち最も小さい最小露出層厚は第4層厚TX4である。
また、この第2被覆層130は、実施形態1と同様、第1被覆層120の外表面120Fのうち、第1側面12Aよりも延出方向DXに位置する延出側外表面V1内に形成されている(図7参照)。このため、実施形態1のサーミスタ素子1と同様、本体側外表面V2にまで第2被覆層を形成したサーミスタ素子に比べ、サーミスタ素子の良好な熱応答性を確保することができる。
次いで、実施形態2にかかる温度センサ200について、図面を参照しつつ説明する。 この温度センサ200は、前述した実施形態1にかかるサーミスタ素子1(または変形形態にかかるサーミスタ素子101)と、このサーミスタ素子1(101)を内部に収容する筐体210とを有する(図9参照)。このうち、筐体210は、円筒形状の本体部211と、この本体部211から突出する、本体部211よりも径小な円筒形状の突出部212とからなる。この突出部212は、内側にサーミスタ素子1(101)を配置しており、突出部212の周囲の温度を測温することができる。
なお、本実施形態2にかかる温度センサ200は、例えば、図9に示すように、車両のエンジン(図示しない)から排出されてエキゾーストパイプEP内を流れる排気ガスEGの温度を計測するのに用いる。この場合、筐体210の突出部212をエキゾーストパイプEPの内側に配置しつつ、筐体210の本体部211をエキゾーストパイプの壁に固定する(図9参照)。
まず、温度センサ200を室温(25℃)の大気中で1時間保持した。その後、温度センサを、ガス温度100℃、流速20m/secの測定ガス(Air)の流路内へ投入した。これにより、温度センサ200で検知される検知温度は、室温に相当する初期温度から上昇するが、やがてガス温度に近い飽和温度で飽和する。そこで、温度センサ200の検知温度の初期温度から飽和温度までの変化を100%とした場合の、63%に相当する温度を63%温度とする。そして、初期温度からこの63%温度に達するまでの応答時間を計測した。試料数Nを10とし(N=10)、各試料の応答時間の平均を算出し、各実施例及び比較例について、熱応答性の良否を判定した。具体的には、応答時間の平均が5sec未満の場合に「○」を、5sec以上の場合に「×」を付した。結果を前述の表1に示す。
一方、比較例2のサーミスタ素子は、第2被覆層で第1被覆層の外表面の全面を覆ってなる点で、即ち、第2被覆層で、延出側外表面V1のほか本体側外表面V2の全面を被覆している点で、第1被覆層の一部を第2被覆層で覆うあるいは第2被覆層が存在しない実施例1〜8のサーミスタ素子と異なる(表1参照)。比較例2のサーミスタ素子は、実施例1と同様にサーミスタ本体に第1被覆層を形成した後、ディップにより第1被覆層の全面を覆うように、ガラス粉末を含むペーストを塗布し、その後、焼成して第2被覆層とした。
そして、実施例1〜8、及び比較例2のサーミスタ素子を温度センサに組み付けて、上述した熱応答性の評価を行った。
この結果から、第1被覆層20の外表面20Fのうち、本体側外表面V2にまで第2被覆層30を設けるのに比して、延出側外表面V1内にのみ第2被覆層30を設けるのが好ましいことが判る。
実施形態1及び変形形態では、直方体状のサーミスタ本体の周囲全体を、直方体状、或いは、円筒形状の第1被覆層で被覆し、第1被覆層について、直方体状のサーミスタ本体のうちいずれの頂点を起点とした露出層厚も、当該頂点をなす三辺及び三平面内の点を起点とする最小露出層厚の厚さと同じになる形態を示した。しかしながら、直方体状のサーミスタ本体の頂点を起点とした露出層厚を、当該頂点をなす三辺及び三平面内の点を起点とする最小露出層厚の厚さよりも厚くした形態のサーミスタ素子としても良い。
また、実施形態1及び変形形態では、図4に示すように、各面が長方形となる直方体状のサーミスタ本体を用いたが、これに限らず、各面が正方形となる立方体状のサーミスタ本体を用いたサーミスタ素子としても良い。
具体的には、この金型350は、第1方向DP(図10中、上下方向)に延びる貫通孔361を有する矩形筒状の第1金型360と、この第1金型360の2つの開口(第1開口361A,第2開口361B)をそれぞれ塞ぐ矩形板状の第2金型370及び第3金型380とからなる。
このうち、第1金型360は、上型362と下型363を組み合わせてなり、プレス成形する際、第1方向DPに嵌め合わせることができる。そして、上型362及び下型363には、それぞれ、貫通孔361から第1方向DPに垂直な第2方向DQ(図10中、左上右下方向)に沿って延びる2つの溝364、364が設けられている。この2つの溝364、364は、第2方向DQに沿って半円筒状に窪んだ形態である。この2つの溝364、364は、上型362と下型363とを嵌め合わせた際、サーミスタ本体10に接続された引出線40を包囲するためのものである。
また、第2金型370は、第1金型360の第1方向DP一方側(図10中、上方)の第1開口361A内に配置されて、この第1開口361Aを塞ぐ。また、第3金型380は、第1金型360の第1方向DP他方側(図10中、下方)の第2開口361B内に配置されて、この第2開口361Bを塞ぐ。
続いて、上型362の第1開口361Aから空間内に、SiO2−RO−Al2O3−ZrO2(R:アルカリ土類金属)からなるガラス粉末を所定量満たす。
その後、第2金型370で、第1金型360(上型362)の第1開口361Aを塞いで、第1金型360を密閉する。さらに、第2金型370及び第3金型380に外力Fをかけて、サーミスタ本体10を内包する形態にガラス粉末をプレス成形する。これにより、金型350(第1金型360、第2金型370及び第3金型380)の内部に、焼成前の未焼成第1被覆層20Bを形成する(図10参照)。
この未焼成第1被覆層20Bを焼成することで、実施形態1及び変形形態と同様、第1被覆層20を形成することができる。
10 サーミスタ本体
11A 第1接続面(平面,対向面)
11B 第2接続面(平面,対向面)
12A 第1側面(平面,端面)
12B 第2側面(平面)
12C 第3側面(平面)
12D 第4側面(平面)
13A〜13D 第1〜4辺(辺)
14A〜14D 第5〜8辺(辺)
15A〜15D 第9〜12辺(辺)
16A〜16D 第1〜4頂点(頂点)
17A〜17D 第5〜8頂点(頂点)
20,120 第1被覆層
20B 未焼成第1被覆層
20F,120F 外表面
20R,120R 露出外表面
20ST,120ST 周囲外表面部(第1被覆層の一部)
21〜26 第1〜6平面(平面)
30,130 第2被覆層
40 引出線
42E 隣在部(引出線の一部)
121,122 第1,2平面(一対の平面)
200 温度センサ
DX 延出方向
V1 延出側外表面(外表面)
VE 界面
Claims (9)
- 導電性酸化物焼結体からなり直方体状のサーミスタ本体と、
耐還元性を有し、上記サーミスタ本体の周囲を被覆し、自身の外表面の少なくとも一部が外部に露出する露出外表面をなす第1被覆層と、を備える
サーミスタ素子であって、
上記第1被覆層は、
ガラスあるいはガラスと金属酸化物粒子との混合物からなり、
上記サーミスタ本体上の起点から上記露出外表面に至る上記第1被覆層内の最小直線距離を、当該起点における露出層厚としたとき、
上記第1被覆層は、
直方体状の上記サーミスタ本体のうち、いずれの頂点を上記起点とした上記露出層厚も、当該頂点をなす三辺及び三平面内の点(但し、上記当該頂点を除く)を起点とする上記露出層厚のうち最も小さい最小露出層厚以上の厚さを有し、
前記サーミスタ本体に接続され、前記第1被覆層を貫通して外部に延出する引出線と、
耐還元性を有し、上記第1被覆層とは異なる材質からなる第2被覆層と、を備え、
上記第2被覆層は、
上記引出線及び上記第1被覆層の一部を覆って、上記引出線と上記第1被覆層とがなす界面を気密に閉塞してなり、
前記第1被覆層の熱膨張係数をX1、前記第2被覆層の熱膨張係数をX2、前記引出線の熱膨張係数をX3としたとき、
X1>X2、かつ、X3>X2を満たし、
前記第1被覆層の熱膨張係数X1と前記第2被覆層の熱膨張係数X2との差(X1−X2)が、(X1−X2)≦15×10 -7 /℃を満たし、かつ、
前記引出線の熱膨張係数X3と上記第2被覆層の熱膨張係数X2との差(X3−X2)が、(X3−X2)≦15×10 -7 /℃を満たす
サーミスタ素子。 - 請求項1に記載のサーミスタ素子であって、
前記引出線は、
前記サーミスタ本体の1つの端面を介して対向する対向面にそれぞれ接続され、上記端面を越えて同方向に引き出された一対の引出線であり、
前記第2被覆層は、
前記第1被覆層の前記外表面のうち、上記端面よりも上記引出線の延出方向に位置する外表面内に形成されてなる
サーミスタ素子。 - 請求項1または請求項2に記載のサーミスタ素子であって、
前記第2被覆層は、
ガラスあるいはガラスと金属酸化物粒子との混合物からなる
サーミスタ素子。 - 請求項3に記載のサーミスタ素子であって、
前記第2被覆層をなすガラスは、非晶質ガラスである
サーミスタ素子。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のサーミスタ素子であって、
前記第1被覆層をなすガラスは、結晶化ガラスである
サーミスタ素子。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のサーミスタ素子であって、
前記第1被覆層の外形が、直方体状の前記サーミスタ本体の各平面と平行な平面を有する直方体状とされてなる
サーミスタ素子。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のサーミスタ素子であって、
前記第1被覆層の外形が、直方体状の前記サーミスタ本体の互いに対向する一対の平面と平行な一対の平面を有する円柱形状とされてなる
サーミスタ素子。 - 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のサーミスタ素子を用いた温度センサ。
- 導電性酸化物焼結体からなり直方体状のサーミスタ本体と、
耐還元性を有し、上記サーミスタ本体の周囲を被覆し、自身の外表面の少なくとも一部が外部に露出する露出外表面をなす第1被覆層と、を備え、
上記第1被覆層は、ガラスあるいはガラスと金属酸化物粒子との混合物からなり、
上記サーミスタ本体上の起点から上記露出外表面に至る上記第1被覆層内の最小直線距離を、当該起点における露出層厚としたとき、
上記第1被覆層は、
直方体状の上記サーミスタ本体のうち、いずれの頂点を上記起点とした上記露出層厚も、当該頂点をなす三辺及び三平面内の点(但し、上記当該頂点を除く)を起点とする上記露出層厚のうち最も小さい最小露出層厚以上の厚さを有し、
前記サーミスタ本体に接続され、前記第1被覆層を貫通して外部に延出する引出線と、
耐還元性を有し、上記第1被覆層とは異なる材質からなる第2被覆層と、を備え、
上記第2被覆層は、
上記引出線及び上記第1被覆層の一部を覆って、上記引出線と上記第1被覆層とがなす界面を気密に閉塞してなり、
前記第1被覆層の熱膨張係数をX1、前記第2被覆層の熱膨張係数をX2、前記引出線の熱膨張係数をX3としたとき、
X1>X2、かつ、X3>X2を満たし、
前記第1被覆層の熱膨張係数X1と前記第2被覆層の熱膨張係数X2との差(X1−X2)が、(X1−X2)≦15×10 -7 /℃を満たし、かつ、
前記引出線の熱膨張係数X3と上記第2被覆層の熱膨張係数X2との差(X3−X2)が、(X3−X2)≦15×10 -7 /℃を満たす
サーミスタ素子の製造方法であって、
焼成により上記第1被覆層となる未焼成第1被覆層を、上記サーミスタ本体を内包する形態にプレス成形するプレス工程と、
上記未焼成第1被覆層を焼成して上記第1被覆層を形成する焼成工程と、を備える
サーミスタ素子の製造方法。
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