以下、実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、車両に乗車した運転者から見た方向を基準とする。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る自動二輪車1の要部の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1では、その車体フレーム2に、略前後方向に延びるスイングアーム3の前端部がピボット軸4により回動自在に支持され、スイングアーム3の後端部に後輪5が回転自在に支持されている。車体フレーム2には、図示しない走行駆動力を発生する駆動源(例えば、エンジン)及びそれに接続された変速機が搭載され、その変速機の出力軸6から出力される回転動力が無端状の動力伝達ループ7(例えば、ドライブチェーン)を介して後輪5に伝達される。後輪5の車軸8は、後輪5と一体に回転するよう構成されている。車軸8には、動力伝達ループ7が巻き掛けられる従動部31d(例えば、スプロケット部)を有するダンパ装置9が接続されている。即ち、動力伝達ループ7の回転動力は、ダンパ装置9を介して後輪5に伝達される。
スイングアーム3の後部には、後輪5の車速(回転数)を検出する車速センサ(図示せず)と、油圧により摩擦パッド(図示せず)にブレーキディスク26(図2参照)を圧接挟持させるブレーキキャリパ10とが設けられている。前記車速センサに接続されたセンサケーブル11とブレーキキャリパ10に接続された油圧パイプ12とは、スイングアーム3の上端面3dに沿わせて設置され、クランプ部材13〜15によりスイングアーム3に対して位置決めされている。
スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b及び後部3cが互いに溶接接続されて形成されている。スイングアーム3には、前後方向に離れて配置された一対の開口部S1,S2が形成されている。スイングアーム3のうち前側の開口部S1と後側の開口部S2とで挟まれて且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3baは、動力伝達ループ7よりも車幅方向外方に配置されている。スイングアーム3のうち前側の開口部S1の前方で且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3aaは、動力伝達ループ7よりも車幅方向内方に配置されている。スイングアーム3のうち後側の開口部S2の後方で且つ側面視で動力伝達ループ7と重なる部位3caは、動力伝達ループ7よりも車幅方向内方に配置されている。
即ち、動力伝達ループ7は、開口部S1,S2を前後方向に通過し、中間部3bは、動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆い、前部3a及び後部3cは、動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆わない。本実施形態では、スイングアーム3の前部3a及び後部3cは、車幅方向内方に窪んだ前後方向に延びる溝を有し、当該溝の底壁(即ち、前記部位3aa,3ca)が側面視で動力伝達ループ7に対して車幅方向内側から重なる。スイングアーム3の中間部3bは、車幅方向外方に窪んだ前後方向に延びる溝を有し、当該溝の底壁(即ち、前記部位3ba)が側面視で動力伝達ループ7に対して車幅方向外側から重なる。また、車体フレーム2にはライダーが足を載せるためのステップ18が取り付けられ、ステップ18は、車幅方向外方から見た側面視でスイングアーム3の前部3aに重なっている。
開口部S1,S2は、車幅方向両側に向けて開口するだけでなく、スイングアーム3の延在方向、具体的には、ピボット軸4と後輪車軸8とを結ぶ方向に向けて開口する。スイングアーム3の開口部S1,S2を前後方向に通過する動力伝達ループ7は、ピボット軸4と後輪車軸8とを結ぶ仮想平面よりも上方に位置する上部分と、当該仮想平面よりも下方に位置する下部分とを有し、上部分及び下部分とはピボット軸4及び後輪車軸8の回りで折り返して連なることで、ループ状に形成される。本実施形態では、動力伝達ループ7の上部分がスイングアーム3の下緑部よりも上方に位置して開口部S1,S2を通過ずる。また、動力伝達ループ7の下部分がスイングアーム3の下縁部よりも下方を通過する。
図2は、図1に示す自動二輪車1の後輪5の車軸8に沿って切断した要部断面図である。図2に示すように、スイングアーム3の後部3cは、後輪5(図1参照)の車軸8の中央部8gを回動自在に支持している。具体的には、スイングアーム3の後部3cには、車幅方向両側に向けて開口した真円状の嵌合孔3cbが形成され、その嵌合孔3cbに偏心器20が内嵌されている。偏心器20には、側面視で偏心して且つ車軸8が挿通される偏心穴20aと、車軸8の軸線方向L(車幅方向)の両側に向けて開口した肉抜き用の複数の貫通穴20bとが形成されている。偏心器20の外周壁の軸線方向Lの外端部には、周方向に間隔をあけて径方向外方に突出した複数のタブ20cが形成されている。
車軸8の中央部分8gには、径方向外方に突出した左右一対の突出部8a,8bが形成されている。径方向外方に突出した左右一対の突出部8a,8bが形成されている。右側の突出部8aの右側端には、右側から軸受21が当接している。即ち、突出部8aの右側端は、軸線方向Lの中間部8gで径方向外方に突出して軸線方向Lの右側に臨み、軸受21を軸線方向Lの内側から位置決めするために拡径した段差部8cである。左側の環状突出部8bの外周面には、軸受22が外嵌されている。偏心器20は、これら軸受21,22を介して車軸8を支持している。即ち、車軸8は、間隔をあけて配置された2つの軸受21,22によりスイングアーム3に対して支持されている。なお、本実施形態では、軸受21,22は、内輪と外輪との間にボールが収容されたボール軸受である。
偏心器20は、その内周部に径方向内方に突出する突出部20d,20eを有している。本実施形態では、左右一対の突出部20d,20eが互いに間隔をあけて形成される。右側の突出部20dの右側端面に右側の軸受21の外輪の左端面が当按し、右側の軸受21の左方向ヘの移動が阻止される。同様に、左側の突出部20eの左側端面に左側の軸受22の外輪の右端面が当接し、左側の軸受22の右方向ヘの移動が阻止される。
車軸8の右側には、その外周面にスプライン溝8eが形成され、ハブ23にもスプライン溝8eに嵌合するためのハブ側スプライン溝23aが形成され、ハブ23が軸線方向Lの外側から車軸8にスプライン結合されている。即ち、ハブ23は、車軸8に対して軸線方向Lに摺動可能で且つ共回転するように結合されている。スプライン溝8eは、軸線方向Lにおいて軸受21と重なる位置まで延びており、スプライン溝8eの先端は、軸受21の直下に位置している。即ち、スプライン溝8eは、ハブ23が車軸8に結合された状態で、ハブ側スプライン溝23aの軸線方向Lの内側端を越えて軸線方向Lの内側に延長している。これにより、ハブ23の軸線方向Lの内側の先端は、軸受21の内輪の軸線方向外端面に直接に当接し、軸受21を段差部8cに向けて押している。なお、軸受21の外輪の軸線方向内端面には、偏心器20に係合されたサークリップ27が当接している。
ハブ23には、ホイール24が固定具25により固定され、ホイール24のリム24aにタイヤ45(図3参照)が装着されている。即ち、車軸8は、後輪3(図1参照)と一体に回転する。ハブ23には、ブレーキディスク26が固定され、偏心器20及びスイングアーム9には、ブレーキディスク26を把持して制動するブレーキキャリパ10(図1参照)を支持するキャリパホルダ28が固定されている。車軸8の右端部には、ハブ23が車軸8から脱落するのを防ぐための締結部材29(例えば、ナット)が取り付けられている。締結部材29の軸線方向Lの内側の端面は、ハブ23に直接に当接している。即ち、ハブ23は、段差部8aにより軸線方向Lに間接的に位置決めされるように右側から締結部材29により締め付けられる。
車軸8の左側部分には、動力伝達ループ7(図1参照)の回転動力を衝撃吸収しながら車軸8に伝達するダンパ装置9が装着されている。ダンパ装置9は、動力伝達ループ7からの回転動力が伝達される第1カップリング部材31と、第1カップリング部材31を車軸8に相対回転可能に支持させる軸受33と、第1カップリング部材31に接続されて且つ車軸8と共回転するよう車軸8に結合された第2カップリング部材34と、第1カップリング部材31から第2カップリング部材34に伝達される衝撃を吸収するために第1カップリング部材31と第2カップリング部材34との間に介設された緩衝部材35とを備える。
左側の環状突出部8bの左側端には、円筒状のスリーブ30が左側から当接し、スリーブ30の左側端には、軸受34が左側から当接している。即ち、環状突出部8bの左側端は、軸線方向Lの中間部8gで径方向外方に突出して軸線方向Lの左側に臨み、スリーブ30を介して軸受33を軸線方向Lの内側から位置決めするために拡径した段差部8dである。スリーブ30は、車軸8よりも比重の軽い材料により形成されて軽量化が図られている。本実施形態では、車軸8が鋼で形成され、スリーブ30がアルミ合金で形成されている。
車軸8には、軸受33を介して第1カップリング部材31が外嵌されている。即ち、軸受33は、第1カップリング部材31の内周面と車軸8の外周面との間に介在する。軸受33は、第1カップリング部材31の内周面よりも軸線方向Lに短い。本実施形態では、軸受33の軸線方向Lの長さは、第1カップリング部材31の内周面の軸線方向Lの長さの半分以下である。
第1カップリング部材31は、車軸8に同軸に形成される筒状の内周壁部31aと、車軸8に同軸で内周壁部31aに対して径方向外方に離れて形成される筒状の外周壁部31bと、車軸8に同軸で外周壁部31bを内周壁部31aに連結する環状ディスク状の側壁部31cと、外周壁部31bの軸線方向Lにおける中間部分から径方向外方に突出して動力伝達ループ7からの回転動力が伝達される従動部31d(例えば、スプロケット)とを備える。また、図示されていないが、第1カップリング部材31は、内周壁部31aと外周壁部31bと側壁部31cとで囲まれて且つ軸線方向Lの左方に開口した環状空間を周方向に間隔をあけて仕切る複数の仕切壁部を備える。
即ち、第1カップリング部材31には、内周壁部31aと外周壁部31bと側壁部31cと仕切壁部(図示せず)とによって、周方向に間隔をあけて配置されて且つ軸線方向Lの左方に開口した複数の凹部である複数の被嵌合部31dが形成されている。また、従動部31dは、軸線方向Lに垂直な方向(径方向)から見て軸受33と部分的に重なる位置に配置されている。従動部31d及び軸受33は、内周壁部31a及び外周壁部31bの軸線方向Lの中間部に対応して配置されている。
第2カップリング部材34は、車軸8に結合される結合部34aと、第1カップリング部材31の複数の被嵌合部31eに軸線方向Lの左側からそれぞれ嵌合される複数の凸部である複数の嵌合部34bと、結合部34aを嵌合部34bに連結する連結部34cを備える。連結部34cは、第1カップリング部材31よりも軸線方向Lの外側に配置されている。緩衝部材35は、第1カップリング部材31の被嵌合部31eと第2カップリング部材34の嵌合部34bとで動力伝達方向に挟まれている。緩衝部材35は、例えば、ゴムのような弾性材料で形成されている。緩衝部材35及び嵌合部34bは、軸線方向Lに垂直な方向から見て、第1カップリング部材31の従動部31dに重なるように配置される。
車軸8の左側には、その外周面にスプライン溝8fが形成され、第2カップリング部材34の結合部にもスプライン溝8fに嵌合するためのカップリング側スプライン溝34abが形成され、第2カップリング部材34が軸線方向Lの外側から車軸8にスプライン結合されている。即ち、第2カップリング部材34は、車軸8に対して軸線方向Lに摺動可能で且つ共回転するように結合されている。スプライン溝8fは、軸線方向Lにおいて軸受33と重なる位置まで延びており、スプライン溝8fの先端は、軸受33の直下に位置している。即ち、スプライン溝8fは、第2カップリング部材34が車軸8に結合された状態で、カップリング側スプライン溝34abの軸線方向Lの内側端を越えて軸線方向Lの内側に延長している。
軸受33の内輪と段差部8dとの間にはスリーブ30が配置され、軸受33の外輪の軸線方向内端面には第1カップリング部材31に係合されたサークリップ40が当接している。即ち、軸受33の内輪が、車軸8の径方向外方に突出する環状突出部8bにより車幅方向内側から位置決めされ、軸受33の外輪が、サークリップ40を介して第1カップリング部材31により車幅方向内側から位置決めされる。
第2カップリング部材34の結合部34aは、軸線方向Lの外側から第1カップリング部材31と車軸8との間の領域まで軸線方向内側に延びた延長部34aaを有している。即ち、延長部34aaは、第1カップリング部材31と車軸8とで挟まれた環状空間に軸線方向Lの外側から進入している。これにより、第2カップリング部材34の結合部34aの軸線方向Lの内側の先端(即ち、延長部34aaの先端)は、軸受33に直接に当接し、軸受33を段差部8dに向けて押している。
車軸8の左端部には、第2カップリング部材34が車軸8から脱落するのを防ぐための締結部材39(例えば、ナット)が取り付けられている。締結部材39の軸線方向Lの内側の端面は、第2カップリング部材34に直接に当接している。即ち、第2カップリング部材34は、段差部8dにより軸線方向Lに間接的に位置決めされるように左側から締結部材39により締め付けられる。
第2カップリング部材34の結合部34aは、車軸8の径方向から見て、第1カップリング部材31と重なる位置まで配置されている。言い換えると、結合部34aの軸線方向内端面は、第1カップリング部材31の軸線方向外端面よりも軸線方向内側に位置する。本実施形態では、結合部34aの軸線方向内端面は、従動部31dの軸線方向外側面よりも軸線方向内側に位置する。結合部34aは、第1カップリング部材31を車軸8に対して回転自在に支持する軸受33に軸線方向外側から近接対向するように延びる。具体的には、結合部34aは、軸受33の内輪(車軸8と一体に回転する部分)に軸線方向外側から当接する。このように結合部34aが形成されることで、結合部34aの軸線方向寸法を大型化することができる。本実施形態では、結合部34aの軸線方向寸法は、第1カップリング部材31の軸線方向寸法と同じ程度に形成される。
結合部34aの軸線方向外端面は、連結部34cよりも軸線方向外側に位置する。言い換えると、連結部34cは、結合部34aの軸線方向中間部から径方向外方に突出する。これによって、結合部34aを連結部34cよりも軸線方向外側にも延長することができ、結合部34aの軸線方向寸法をさらに大きくすることができる。
軸受33は、第1カップリング部材31の軸線方向外側面よりも内側に配置される。軸受33は、従動部31dに径方向から見て重なり、第1カップリング部材31の内側寄りに配置される。軸受33の軸線方向中心は、第1カップリング部材31の軸線方向中心線よりも内側に配置される。これによって、軸受33に当接する結合部34aの軸線方向寸法を大きくすることができる。
連結部34cは、第1カップリング部材31よりも軸線方向外側に配置されるので、連結部34cを第1カップリング部材31よりも軸線方向外側に膨らませることができ、強度を向上させることができる。また、第2カップリング部材34の強度が過剰となるのを防ぐために、連結部34cにおいて軸線方向外側に突出する凸部(例えば、リブ)が形成されてもよい。これにより、第2カップリング部材34において、強度を向上させつつ軽量化が図られる。
締結部材29,39は、車軸8に外嵌する部材(例えば、ハブ23及び第2カップリング部材34)を押して軸線方向に移動させるように車軸8の両端に取り付けられることで、当該外嵌部材が2つの軸受21,22のうち少なくとも一方の内輪を突出部8a,8bに向けて押し付ける。これによって、軸受21,22のうち少なくとも一方が偏心器20に対して軸線方向に位置決めされる。また、締結部材29は、車軸8に外嵌する部材(例えば、ハブ23)を押して軸線方向に移動させるように車軸8の端部に取り付けられることで、当該外嵌部材が2つの軸受21,22の内輪を偏心器20の突出部20dに向けて押し付ける。本実施形態では、カラー30は軸受22に当接せず、ハブ23は軸受21に当接している。
なお、偏心器20とハブ23との間には、軸受21の配置される空間を軸線方向外側(右側)から封止するシール部材50が挿入されている。また、偏心器20とスリーブ30との間には、軸受22の配置される空間を軸線方向外側から封止するシール部材51が挿入されている。また、第1カップリング部材31とスリーブ30との間には、軸受33の配置される空間を軸線方向内側から封止するシール部材52が挿入されている。
図3は、図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3の平面図である。図3に示すように、スイングアーム3は、複数の構成要素3a,3b(16,17),3cを互いに溶接することで形成されている。具体的には、スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b及び後部3cが互いに溶接接続されてなり、更に、中間部3bは、車幅方向の内側に位置する内側要素16と、車幅方向の外側に位置する外側要素17とが互いに溶接接続されてなる。スイングアーム3は、強度を確保しつつ軽量化を図るために、中空部または開断面部を有する形状である。本実施形態では、分割構造に形成されることで、中空形状のスイングアーム3が形成しやすくなっている。
スイングアーム3の前部3aは、後輸5よりも前方に位置し、略U字状に二股に分岐した左右一対の前端部を有している。前部3aの各前端部は、車幅方向に間隔をあけて位置し、スイングアーム3の延在方向(前後方向)に延びる。前部3aの各前端部は、それぞれピボット軸4に角変位可能に支持される。例えば、各前端部は、リム24の幅方向寸法と同程度またはそれ以上に、車幅方向に間隔をあけて配置される。前部3aの後端部は、車軸中心に対して車幅方向一方に偏って配置され、本実施形態では、左側に偏って配置される。
中間部3bは、タイヤ45の前部に対して車幅方向一方に配置され、車幅方向外側からタイヤ45の前部に対向する位置に配置されている。中間部3bは、その前端が前部3aに連なり、その後端が後部3cに連なる。中間部3bの車幅方向の内側面及び外側面は、中間部3bの前端と後端に対して中間部3bが車幅方向外側に膨出する形状に形成される。言い換えると、中間部3bは、前部3a及び後部3cに比べて車幅方向の外方(左方)に位置し、スイングアーム3のうち車幅方向の外方に向けて最も突出する膨出部3bbを有している。膨出部3bbの車幅方向外方の表面が外側要素17により形成されている。
後部3cは、ホイール24に対して車幅方向一方側に配置され、車幅方向外側からホイール24に対向する位置に配置される。後部3cの後端部には、ホイール24に対して車幅方向一方で後輪車軸8を支持する支持部分が形成される。後部3cは、その前端から当該支持部分に向けてスイングアーム3の延在方向に進むにつれて車幅方向中心に向かって延びる。言い換えると、平面視において、後部3cは、ホイール24の車幅方向一方側の縁辺形状に沿ってスイングアーム3の延在方向に延びる。
スイングアーム3の複数の構成要素3a,3b(16,17),3cのうち一の構成要素の車幅方向外側の外面の表面粗さは、他の構成要素の外面の表面粗さよりも小さい。具体的には、中間部3bの外側要素17の車幅方向外側の外面の表面粗さは、他の構成要素3a,3c,16の外面の表面粗さよりも小さい。例えば、中間部3bの外側要素17は、板金プレス加工又は鍛造加工により製作され、前部3aと内側要素16と後部3cとは、鋳造加工により製作される。スイングアーム3のうち板金プレス加工又は鍛造加工により製作される外側要素17と異なる部分(前部3a及び後部3c)に、ピボット軸4又は車軸8を支持する支持部が形成されている。そのため、外側要素17の構造が単純化され、外側要素17は塑性加工によって形成しやすくなっている。
内側要素16と外側要素17との間の分割線は、平面視において、中間部3bの上端面の車幅方向中間領域をスイングアーム3の延びる方向に沿って延びている。即ち、内側要素16の上端面16aと外側要素17の上端面17aとが車幅方向に接続されることで、スイングアーム3の中間部3bの上端面が形成されている。スイングアーム3の前部3a及び後部3bの各々は、その車幅方向の全体が一体に成形されている。
外側要素17は、車幅方向から見て、ホイール24のリム24aに装着されたタイヤ45に重なるように配置されている。詳細には、外側要素17は、タイヤ45の最も車幅方向の幅が大きくなる部分を車幅方向外方から覆っている(図1参照)。ステップ18は、側面視で外側要素17の前側に位置し、スイングアーム3の前部3aを車幅方向外方から隠している(図1参照)。動力伝達ループ7が巻き掛けられる従動部31dは、外側要素17の後側に位置し、スイングアーム3の後部3cを車幅方向外方から隠している(図1参照)。
中間部3bの内側要素16は、中間部3bの外側要素17に比べて、肉厚が大きく形成されたり、補強部材であるリブが形成されたりして、強度が高く形成されてもよい。これによって、外側要素17の肉厚を薄くしても、スイングアーム3としての剛性を確保することができる。外側要素17の肉厚を薄くすることで、外側要素17を塑性加工によって形成しやすくすることができ、歩留まりが向上する。
図4は、図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3にセンサケーブル11及び油圧パイプ12が取り付けられた構成を斜め上後後方かつ外側から見た斜視図である。図5は、図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3の中間部3bを斜め上後方かつ内側から見た斜視図である。図5は、図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3の中間部3bを斜め上後方かつ内側から見た斜視図である。図4及び5に示すように、線状部材であるセンサケーブル11及び油圧パイプ12は、スイングアーム3の上端面3dに沿って前後方向に延びている。スイングアーム3の前部3a、内側要素16及び後部3cには、センサケーブル11及び油圧パイプ12を支持するための支持部3ab,16bが形成されている。但し、スイングアーム3の外側要素17には、センサケーブル11及び油圧パイプ12を支持するための支持部は形成されていない。
即ち、鋳造加工により製作された前部3a、内側要素16及び後部3cに支持部3ab,16bが形成され、板金プレス加工又は鍛造加工により製作された外側要素17には支持部が形成されていない。鋳造加工は、板金プレス加工又は鍛造加工に比べて、単純でない形状を安定して作り易いため、スイングアーム3の製造効率が高められる。スイングアーム3の支持部3ab,16bには、クランプ部材13〜15が固定され、クランプ部材13〜15によりセンサケーブル11及び油圧パイプ12が保持されている。センサケーブル11及び油圧パイプ12は、スイングアーム3の中間部3bにおいては、内側要素16の上端面16aの上を通過している。
図6は、図1に示す自動二輪車1のスイングアーム3の後部3cを斜め下後方かつ内側から見た斜視図である。図6に示すように、偏心器20には、車軸8が貫通するための左右に開口した偏心孔20aと、周方向に間隔をあけて配置され且つそれぞれ左右に開口した複数の肉抜き孔20bとが形成されている。更に、偏心器20には、偏心孔20aの周囲から車幅方向内方(右方)に突出する円筒部20cが設けられ、その円筒部20cにブレーキキャリパ10を支持するキャリパホルダ28が嵌合されている(図1参照)。スイングアーム3の車幅方向内側の表面には、突起部3ccが設けられ、突起部3ccには雌ネジが形成された取付穴3ccaが形成されている。取付穴3ccaには、係止部48aを有する係止部材48が螺着されている。
キャリパホルダ28には、係止部48aと係止する被係止部28bが設けられている。即ち、被係止部28bに係止部48aが係止することで、キャリパホルダ28が円筒部20c周りに回転することが阻止されている。本実施形態では、係止部48aは、直方体形状の突起部であり、被係止部28bは、係止部48aが嵌合される長穴である。係止部48aは、スイングアーム3に突起部3ccが設けられることで、被係止部48aと車幅方向位置が合うようになっている。
以上に説明した構成によれば、第2カップリング部材34の結合部34aが、第1カップリング部材31と車軸8との間の領域まで延びた延長部34aaを有するので、車軸8のうち第1カップリング部材31よりも軸線方向外側の部分に結合されるだけでなく、車軸8のうち第1カップリング部材31と車軸方向位置が重なる部分にも結合される。これにより、第2カップリング部材34の車軸8に結合される部分の軸線方向寸法が大きくなり、全体としてコンパクトな構成でありながらも、第2カップリング部材34から車軸8に動力伝達する部分の強度を向上させることができる。
また、第2カップリング部材34の結合部34aの延長部34aaが第1カップリング部材31の内周面と車軸8の外周面との間の隙間に入り込んで軸受33を軸線方向内側に押すので、第2カップリング部材34と軸受33との間においてカラー等を車軸8に嵌合させずとも、第2カップリング部材34により軸受33を軸線方向の内側に直接押して位置決めすることができる。よって、部品点数を増やすことなく、第1カップリング部材31を支持する軸受33を適切な位置に簡単に位置決めすることができる。
第1カップリング部材の31の従動部31dは、軸線方向に垂直な方向から見て、緩衝部材35及び嵌合部34bに重なるように配置されているので、動力伝達ループ7から従動部31dに伝達される加速ショックを緩衝部材35によって吸収する際に、軸線方向に偏って力が伝達されるのを抑制することができる。また、軸受33は、軸線方向に垂直な方向から見て、部分的に従動部31dに重なるように配置されているので、第1カップリング部材31のうち従動部31dに伝達される加速ショックにより荷重が集中する部分に軸受33を配置することができ、軸受33の性能及び寿命を向上させることができる。更に、従動部31d及び軸受33は、内周壁部31a及び外周壁部31bの軸線方向の中間部に対応して配置されているので、動力伝達ループ7から回転動力が伝達される部分と軸受33で支持される部分とが、第1カップリング部材31の軸線方向の中間位置に設けられることになり、第1カップリング部材31を安定して支持することができる。
軸受33は、第1カップリング部材31の内周面と車軸8の外周面との間に配置され、軸受33の内輪が、車軸8の径方向外方に突出する環状突出部8a,8bにより車幅方向内側から支持され、軸受8の外輪が、第1カップリング部材31により車幅方向内側から支持されているので、第1カップリング部材31用の軸受33を用いて第2カップリング部材34を車軸8に対して軸線方向に位置決めすることができる。
車軸8のスプライン溝8fは、第2カップリング部材34が車軸8に結合された状態で、カップリング側スプライン溝34abの軸線方向の内側端を越えて軸線方向の内側に延長しているので、車軸8を長くすることなくスプライン嵌合部分を増やすことができ、コンパクトな構成でありながら第2カップリング部材34と車軸8との結合力を向上させることができる。同様に、車軸8のスプライン溝8eは、ハブ23が車軸8に結合された状態で、ハブ側スプライン溝23aの軸線方向の内側端を越えて軸線方向の内側に延長しているので、車軸8を長くすることなくスプライン嵌合部分を増やすことができ、コンパクトな構成でありながらハブ23と車軸8との結合力を向上させることができる。
第1及び第2カップリング部材31,34は、段差部8dにより軸線方向に間接的に位置決めされるように左側から締結部材39により締結され、ハブ23は、段差部8cにより軸線方向に間接的に位置決めされるように右側から締結部材29により締結されているので、車軸8に対して軸線方向両側から第1及び第2カップリング部材31,34とハブ23とを組み付けることができ、組立て作業性が向上する。
スイングアーム3のうち軸線方向の外側に向けて最も突出する部位であって軸線方向の両側面を含む膨出部3bbが、軸線方向の内側に位置する内側要素16と軸線方向の外側に位置する外側要素17とが互いに溶接されて形成されているので、スイングアーム3のうち外観として最も目立つ部分である膨出部3bbの外側要素17を内側要素16に比べて表面粗さの小さい部材で形成することができ、簡単かつ効果的に美観を向上させることができる。
スイングアーム3は、前後方向に並んだ前部3a、中間部3b(内側要素16及び外側要素17)及び後部3cが互いに溶接接続されて形成されるので、複雑な形状のスイングアーム3を容易に製作することができる。また、動力伝達ループ7は、スイングアーム3の開口部S1,S2を前後方向に通過し、中間部3bが動力伝達ループ7を車幅方向外方から覆うので、側面視において、表面粗さの小さい外側要素17により動力伝達ループ7を隠すことができる。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る自動二輪車の後輪の車軸108に沿って切断した要部断面図である。図8は、図7に示す自動二輪車の締結部材129及びその近傍の下方から見た斜視図である。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
図7及び8に示すように、車軸108の右端部の外周面には、ホイール124を車軸108に連結するハブ23(連結部)が車軸8から脱落するのを防ぐための締結部材129(例えば、ナット)が螺着されている。締結部材129の軸線方向の内側の端面は、ハブ23に当接している。即ち、ハブ23は、車軸108の段差部8aにより軸線方向に間接的に位置決めされるように右側から締結部材129により着脱可能に締め付けられる。ハブ23には、ホイール124が固定具25により固定される。
車軸108の左端部の外周面には、駆動源からの動力を車軸108に伝達する第2カップリング部材34(伝達部)が車軸8から脱落するのを防ぐための締結部材139(例えば、ナット)が螺着されている。締結部材139の軸線方向の内側の端面は、第2カップリング部材34に直接に当接している。即ち、第2カップリング部材34は、段差部8dにより軸線方向に間接的に位置決めされるように左側から締結部材139により着脱可能に締め付けられる。
車軸108は、管状であり、軸線方向両側に開放された中空空間を有する。車軸108の両端部の内周面は、非円形の断面形状を有する。具体的には、車軸108の両端部の内周面は、軸線方向に延びる凹凸を有する。例えば、車軸108の両端部の内周面の形状は、軸線方向から見て星形状又は多角形状等を採用し得る。
なお、車軸8の右端部に螺着される締結部材129と車軸8の左端部に螺着される締結部材139とは、互いに同一の構成を有するものであるため、以下では代表して右側の締結部材129について説明する。
締結部材129は、その内周面に雌ネジが形成される。締結部材129は、外周面が非円形に形成された環状部129aと、環状部129aの径方向内側部分から軸線方向外方に突出し、周方向に間隔をあけて配置された複数の突出部129bとを有する。環状部129aの外周面は、軸線方向に延びる凹凸を有する。例えば、環状部129aの外周面の形状は、軸線方向から見て星形状又は多角形状等を採用し得る。突出部129bは、環状部129aの径方向内側部分から軸線方向外方に突出して、環状部129aよりも外径が小さい円弧状板部129baと、円弧状板部129aから軸線方向外方に突出して、円弧状板部129baよりも外径が大きく且つ環状部129aよりは外径が小さい鍔部129bbとを有する。締結部材129には、円弧状板部129baを底壁とし且つ環状部129a及び鍔部129bbを側壁とした溝部129cが車軸108の軸線周りに形成される。
締結部材129の溝部129cには、締結部材129と車軸108との間の相対回転を阻止するワイヤW(係止片)が巻き付けられる。ワイヤWの一端部Waは、締結部材129の隣接する突出部129bの隙間と、車軸108の端部に形成された孔108cとに径方向外方から差し込まれることで、ワイヤWが締結部材129に係止されるとともに、締結部材129と車軸108との間の相対回転が阻止される。ワイヤWの一端部Waの先端は、車軸108の端部の内周面より径方向外方に位置する。ワイヤWの他端部Wbは、径方向内方に向けてフック状に湾曲した形状とすることで、ワイヤWと締結部材129との間に径方向の反発力を発生させて互いの密着を高めている。
右側の締結部材129は、右側から見てホイール124に覆われている。ホイール124には、側面視で車軸108の中空空間が見えるように当該中空空間と重なる中心孔124aが形成されている。ホイール124の内径D1(中心孔124aの径)は、車軸108の端部の内径D2以上であり、かつ、締結部材129の外径D3未満である。より具体的には、ホイール124の内径D1は、締結部材129の内径未満である。
以上に説明した構成によれば、車軸108の端部の内周面は、非円形の断面形状を有するので、締結部材129,139の締結作業を行う際に、車軸108の内周面の形状に合致する工具を差し込むことで、車軸108が回り止めされ、締結作業の作業性を向上できる。また、締結部材129,139には、締結部材129,139と車軸108との間の相対回転を阻止するワイヤW(係止片)が取り付けられ、ワイヤWの一端部Waは、車軸108の端部の内周面より径方向外方に位置する状態で車軸108に径方向外方から差し込まれるので、ワイヤWが車軸108の中空空間を横断せず、車軸108の中空空間にスタンドのロッド等を差し込んでメンテナンス作業を行うことができる。
また、ワイヤWは、締結部材129,139の外周面の溝部129cに巻き付けられるので、ワイヤWの軸線方向の移動が阻止され、締結部材129,139に対するワイヤWのズレを防止できる。また、締結部材129は、側面視でホイール124により覆われて隠されるので、美観が向上する。しかも、ホイール124の内径D1は、車軸108の端部の内径D2以上であり、かつ、締結部材129の外径D3未満であるので、締結部材129をホイール124で隠して美観を向上させながら、車軸108の中空空間に工具を挿入することが可能となる。なお、本実施形態では、車軸108の両端部の内周面を非円形としたが、車軸108の片方の端部の内周面のみを非円形としてもよい。
また、車軸108は、ハブ23とダンパ装置9と別体で形成されるので、車軸108の大型化が防がれ、車軸108の形成を容易にすることができる。また、車軸108には、環状突出部8a,8bが一体形成されるので、ハブ23及びダンパ装置9の車軸108に対する組み立て誤差を減らすことができる。
また、ハブ23の軸線方向の内側の先端は、軸受21の内輪の軸線方向外端面に当接し、軸受21は、車軸108の段差部8c及び偏心器20の突出部20dに向けて押し、軸受21の外輪の軸線方向内端面に、偏心器20に係合されたサークリップ27が当接している。即ち、シール部材50を取り外してサークリップ27を取り外さない限りは、スイングアーム3及び偏心器20は車軸108に対して軸方向に係合されたままである。よって、左側の締結部材139を取り外してダンパ装置9を車軸108から抜いても、車軸108はスイングアーム3及び偏心器20に対して軸方向に位置決めされた状態で維持されるので、メンテナンスが行い易い。
また、偏心器20の突出部20d,20eの内径は、車軸108の突出部8a,8bの外径よりも大きく、即ち、偏心器20の内径は、車軸108の外径よりも大きい。よって、車軸108は、左右どちらの方向からもスイングアーム3及び偏心器20から抜くことができる。
また、ダンパ装置9の軸受33は、サークリップ40により第1カップリング部材31に軸方向に位置決めされ、第2カップリング部材34が軸受33を車軸108の段差部8dに向けて押している。即ち、左側の締結部材139を取り外さない限りは、ダンパ装置9は車軸108に軸方向に係合されたままである。よって、右側の締結部材129を取り外して、ホイール124、ハブ23、偏心器20及びスイングアーム3を車軸108から抜いても、ダンパ装置9を車軸108に対して軸方向に位置決めされた状態で維持することができる。
また、偏心器20は、突出部20d及びサークリップ27により軸受21に対して軸方向に係合され、その軸受21が車軸108の段差部8c及びハブ23により挟持されているので、ハブ23に設けられたブレーキディスク26とスイングアーム3との車幅方向の位置関係に累積誤差が生じるのを防止することができる。
(その他)
鞍乗型車両は、走行駆動力を発生する駆動源を支持する車体フレームと、車輪と一体に回転する車軸と、前端部が前記車体フレームに回動自在に支持され、後端部が前記車軸を回動自在に支持するスイングアームと、前記駆動源からの回転動力が伝達される従動部を有し、前記車軸と同軸に配置され、前記車軸に軸受を介して相対回転可能に支持される第1カップリング部材と、前記車軸と共回転するよう前記車軸に結合される結合部と、緩衝部材を介して前記第1カップリング部材に嵌合される嵌合部と、前記結合部を前記嵌合部に連結する連結部とを有し、前記車軸と同軸に配置された第2カップリング部材と、を備え、前記連結部は、前記第1カップリング部材よりも前記車軸の軸線方向の外側に配置され、前記結合部は、前記軸線方向の外側から前記第1カップリング部材と前記車軸との間の領域まで軸線方向内側に延びている。
前記従動部は、前記軸線方向に垂直な方向から見て、前記緩衝部材及び前記嵌合部に重なるように配置される。
前記軸受は、前記軸線方向に垂直な方向から見て、少なくとも部分的に前記従動部に重なるように配置される。
前記第1カップリング部材は、前記車軸に同軸に形成される筒状の内周壁部と、前記車軸に同軸で前記内周壁部に対して径方向外方に形成される筒状の外周壁部と、前記車軸に同軸で前記外周壁部を前記内周壁部に連結する環状ディスク状の側壁部とを更に有し、前記従動部及び前記軸受は、前記内周壁部及び前記外周壁部の軸線方向の中間部に対応して配置される。
前記軸受は、前記第1カップリング部材の内周面と前記車軸の外周面との間に配置され、前記軸受の内輪が、前記車軸の径方向外方に突出する突出部により車幅方向内側から支持され、前記軸受の外輪が、前記第1カップリング部材により車幅方向内側から支持される。
前記車軸には、第1スプライン溝が形成され、前記第2カップリング部材には、前記第1スプライン溝とスプライン結合するためのカップリング側スプライン溝が形成され、前記第1スプライン溝は、前記第2カップリング部材が前記車軸に結合された状態で、前記カップリング側スプライン溝の前記軸線方向の内側端を越えて前記軸線方向の内側に延長している。
前記車軸に結合されたハブを更に備え、前記第2カップリング部材及び前記ハブは、前記車軸に対して前記軸線方向に摺動可能で且つ共回転するように結合され、前記車軸は、前記軸線方向の中間部で径方向外方に突出して前記軸線方向の一側に臨む第1段差部と、前記中間部で径方向外方に突出して前記軸線方向の他側に臨む第2段差部とを有し、前記第1及び第2カップリング部材は、前記第1段差部により前記軸線方向に直接又は間接的に位置決めされるように前記軸線方向の一側から第1締結部材により締結され、前記ハブは、前記第2段差部により前記軸線方向に直接又は間接的に位置決めされるように前記軸線方向の他側から第2締結部材により締結される。
前記車軸には、前記ハブがスプライン結合される第2スプライン溝が形成され、前記ハブには、前記第2スプライン溝とスプライン結合するためのハブ側スプライン溝が形成され、前記第2スプライン溝は、前記ハブが前記車軸に結合された状態で、前記ハブ側スプライン溝の前記軸線方向の内側端を越えて前記軸線方向の内側に延長している。
前記スイングアームのうち前記軸線方向の外側に向けて最も突出する部位であって前記軸線方向の両側面を含む膨出部が、前記軸線方向の内側に位置する内側要素と前記軸線方向の外側に位置する外側要素とが互いに溶接されて形成される。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記実施形態では、本発明を自動二輪車に適用した例について説明したが、ライダーがシートに跨がった状態で運転する鞍乗型車両のいずれにも適用可能である。鞍乗型車両には、自動二輪車の他に、ATV(All-Terrain Vehicle)等が含まれる。また、鞍乗型車両では、エンジン(内燃機関)を駆動源としてもよいし、電動モータを駆動源としてもよいし、エンジン及び電動モータの両方を駆動源としてもよい。
また、動力伝達ループ7は、ドライブチェーンでなくドライブベルトでもよく、その場合、プーリが第1カップリング部材31に固定される。駆動源からの回転動力は、動力伝達ループ7の代わりに、ドライブシャフト又はギヤ等の動力伝達部材を用いてダンパ装置9に伝達してもよく、シャフトドライブの場合、ベベルギヤが第1カップリング部材31に固定される。また、第1カップリング31を支持する軸受33は、第2カップリング34の結合部34aの延長部34aaと第1カップリング31との間に配置されてもよい。また、スイングアーム3の外側要素17の外面には、その表面粗さがスイングアーム3の他の部分の表面粗さに比べて小さくなるように、表面を滑らかにする表面処理(例えば、研磨加工)を施すようにしてもよい。その場合、外側要素17も他の構成要素3a,3c,16と同様に鋳造加工にて製作してもよい。また、第1及び第2カップリング部材31,34は、段差部8dにより軸線方向に直接的に位置決めされてもよいし、ハブ23も、段差部8cにより軸線方向に直接的に位置決めされてもよい。
また、第2カップリング部材34及びハブ23の車軸8との結合は、スプライン結合の他、キー溝、キーによる結合、ボルト等の締結部材によって着脱可能に結合するものとしてもよい。緩衝部材35は、樹脂材料の他、弾発性を有するバネ材料によって実現されてもよい。本実施形態では、スイングアーム3に関して、表面粗さが他の要素よりも小さい外側要素17が中間部3bの外側に形成されるとしたが、これに限られない。例えば、前部3aまたは後部3cを車幅方向に分かれた分割体を互いに溶接して形成されるとした場合、中間部3bの外側要素17が前部または後部の車幅方向外側部分として延長されてもよい。本実施形態では、内側要素16と外側要素17とについて、成形方法を異ならせたがこれに限らない。例えば、内側要素16と外側要素17とで成形方法を同じにして、成形後の後処理を異ならせてもよい。例えば、外側要素17は、内側要素16に比べて、表面粗さを低下させる表面処理を行ってもよい。
また、内側要素16及び外側要素17ともに、鋳造成形したとしても、外側要素17の方が成形後の表面粗さが低い鋳造方法を適用してもよい。外側要素17について、塑性加工以外に、例えば切削加工によって形成してもよい。また、外側要素17として、少なくとも動力伝達ループ7よりも車幅方向外側に位置するスイングアーム3部分を含むようにしてもよい。例えば、スイングアーム3の前部3aまたは後部3cなどで、動力伝達ループ7の車幅方向外側に位置する部分が存在する場合には、その外側部分についても、前記の外側要素として形成されるとよい。