JP6411825B2 - 記録用紙、および該記録用紙を用いたラベル - Google Patents

記録用紙、および該記録用紙を用いたラベル Download PDF

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Description

本発明は、記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルに関し、特に、熱可塑性樹脂を主材料とする支持体を有する記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルに関する。
各種印刷用紙、各種ポスター用紙、各種ラベル用紙、インクジェット記録紙、感熱記録紙、熱転写受容紙、感圧転写記録紙、電子写真記録紙等の記録用紙には、耐水性、耐候性、及び耐久性を有することが求められる。これらの用途に用いられる記録用紙としては、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂に無機微細粉末や有機フィラーを配合して延伸したフィルム法合成紙や、これらの熱可塑性樹脂を主原料とする透明な延伸フィルム等からなる支持体の表面に塗工液を塗布したものが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。また、記録用紙に対しては、その特性を改善するために様々な検討が行われており、例えば表面の塗工液に対する濡れ性等を改善するため水接触角を制御した記録用紙が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
ところで、これらの記録用紙には、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット記録印刷を始めとする各種の印刷方式によって印刷が行われる。こうした印刷に際し、記録用紙が十分な帯電防止性能を有していない場合には、静電気による記録用紙同士の貼り付きが発生し、印刷工程でトラブルの原因になりやすい。
また、これらの記録用紙に更にインクジェット用インク受容層、感熱記録層、熱転写受容層、感圧転写層などの記録層を設けて、種々の記録方式に適応した記録用紙においても、記録用紙が十分な帯電防止性能を有していない場合は、静電気がプリンタの印字ヘッドを破壊や損耗するトラブルの原因になりやすい。
このため、記録用紙には、帯電防止性能を付与する必要がある。
特に熱可塑性樹脂フィルムを支持体とする記録用紙は、支持体自体が水を吸わないことから耐水性に優れる反面、大気中の湿気も吸わないため、天然紙が有するような大気中に静電気を放出する機能に乏しい。このため、この熱可塑性樹脂フィルムを支持体とする記録用紙は、特に冬場のような低湿度環境下において静電気を逃し難く、より高い帯電防止性能を付与することが必要になる。
このような要求から、記録用紙に帯電防止性能を付与するための検討が進められ、例えば、特許文献6には、合成樹脂フィルム(記録用紙)に塗布する帯電防止剤として、第4級アンモニウム塩を含有する共重合体が提案されている。
特開平4−219277号公報 特開平5−305780号公報 特開平10−119428号公報 特開平7−290654号公報 特開2011−150305号公報 特開昭51−104485号公報
しかしながら、本発明者らが従来の記録用紙について帯電防止性能を評価したところ、特許文献5に記載の帯電防止剤を塗布した記録用紙は、相対湿度40〜80%の範囲であれば十分な帯電防止性能を発揮するものの、相対湿度40%未満の低湿度環境下では帯電防止性能が低下するという問題があった。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、耐水性を有するとともに、低湿度環境下においても優れた帯電防止性能が得られる記録用紙および該記録用紙を用いたラベルを提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、熱可塑性樹脂を主材料とする支持体の表面に、特定の構造単位を有する第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含む表面処理層を設け、かつ、表面処理層表面の帯電圧半減期を5秒以下に規定することにより、耐水性を有するとともに、低湿度環境下においても優れた帯電防止性能を発揮する記録用紙が得られることを見出した。具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 熱可塑性樹脂を主材料とする支持体と、該支持体の少なくとも一方の表面上に設けられた表面処理層とを有する記録用紙であって、前記表面処理層は、下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(2)で表される構造単位(b)とを有し、前記構造単位(a)と前記構造単位(b)との質量比が40:60〜70:30の範囲である第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含み、かつ、前記表面処理層は、温度5℃、相対湿度30%の条件下で測定される表面の帯電圧半減期が5秒以下であることを特徴とする記録用紙。
Figure 0006411825
(一般式(1)において、Aは−O−又は−NH−を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜4のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基を表す。R3、R4、R5及びR6は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。R7は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表す。Xm-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンからなる群より選択されるm価のイオンを表す。mは1または2を表し、nは1〜3の整数を表す。)
Figure 0006411825
[2] 前記表面処理層は、さらにエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ホルマリン系化合物、オキサゾリン系化合物およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物から選択される少なくとも一種の架橋剤を含むことを特徴とする[1]に記載の記録用紙。
[3] 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載の記録用紙。
[4] 前記支持体は、無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の記録用紙。
[5] 前記支持体は、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を50〜80質量%含み、且つ無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20〜50質量%含むことを特徴とする[3]又は[4]に記載の記録用紙。
[6] 前記一般式(2)におけるR9が、炭素数1〜3のアルキル基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の記録用紙。
[7] 前記支持体は、少なくとも1軸方向に延伸されていることを特徴とする[1]〜[6]の何れかに記載の記録用紙。
[8] 前記支持体は、走査型電子顕微鏡による断面観察像から求められる空孔率が10〜50%であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の記録用紙。
[9] 前記表面処理層の上に、感熱記録層を設けたことを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の記録用紙。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の記録用紙と、該記録用紙の一方の表面上に設けられた粘着剤層とを有することを特徴とするラベル。
本発明によれば、耐水性を有するとともに、低湿度環境下においても優れた帯電防止性能を発揮する記録用紙を得ることができる。さらに、本発明の記録用紙に粘着剤層を設けることにより、低湿度環境下における使用に好適なラベルを実現することができる。
以下に、本発明の記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルについて詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。 また、「(メタ)アクリル酸」というときは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を指して言う。(メタ)アクリル酸誘導体についても同様である。
<<記録用紙>>
本発明の記録用紙は、熱可塑性樹脂を主材料とする支持体と、該支持体の少なくとも一方の表面に設けられた表面処理層とを有する記録用紙であって、表面処理層が、後述する一般式(1)で表される構造単位(a)と一般式(2)で表される構造単位(b)とを有し、構造単位(a)と構造単位(b)との質量比が40:60〜70:30の範囲である第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含み、かつ、温度5℃、相対湿度30%の条件下で測定される表面処理層表面の帯電圧半減期が5秒以下であることを特徴とする。
ここで、本発明において「帯電圧半減期」とは、JIS L1094:1997に規定される「織物及び編物の帯電性試験方法」に基づいて測定される帯電圧の半減期のことを言う。
以下、各部の構成について説明する。
<表面処理層>
表面処理層は、支持体の少なくとも一方の表面上に設ける。表面処理層は、支持体の一方の表面上に設けてもよいし、支持体の両方の表面上に設けてもよいが、両面上に設けることが好ましい。これにより、記録用紙の帯電防止性能をより向上させることができる。
表面処理層は、下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(2)で表される構造単位(b)とを有し、構造単位(a)と構造単位(b)との質量比が40:60〜70:30の範囲である第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含むものである。
表面処理層は、このような構成であることにより、温度5℃、相対湿度30%の条件下で測定されるその表面の帯電圧半減期を5秒以下に抑えることが可能となり、優れた帯電防止性能を発揮する。その結果、冬場のような低湿度環境下においても、印刷に際する記録用紙同士の貼り付きが抑えられ、印刷工程でのトラブルの発生を回避することができる。また、この表面処理層は、インクや印刷用インキ、後述する感熱記録層を形成するための塗工液(以下、「感熱塗工液」と言うことがある)等との化学的親和性が強く、その表面にインクの印刷や塗工液の塗工を好適に行うことができる。
(第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分)
第4級アンモニウム型共重合体に由来する成分は、表面処理層に帯電防止性能を付与する作用を有する。ここで、第4級アンモニウム型共重合体に「由来する成分」とは、第4級アンモニウム型共重合体そのものであってもよいし、表面処理層を形成する過程で第4級アンモニウム型共重合体が変性した変性体であってもよい。
第4級アンモニウム塩型共重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(2)で表される構造単位(b)とを有する。
Figure 0006411825
(一般式(1)において、Aは−O−又は−NH−を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜4のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基を表す。R3、R4、R5及びR6は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。R7は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表す。Xm-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンからなる群より選択されるm価のイオンを表す。mは1または2を表し、nは1〜3の整数を表す。)
Figure 0006411825
(一般式(2)において、R8は水素原子又はメチル基を表す。R9は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(1)で表される構造単位(a)は帯電防止性能に寄与する成分である。
一般式(1)において、Aは−O−又は−NH−を表し、このうち−O−であることが好ましい。
1は水素原子又はメチル基を表し、このうちメチル基であることが好ましい。
2は炭素数2〜4のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基を表し、このうち炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましい。
3、R4、R5及びR6は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。R3、R4、R5及びR6が表すアルキル基の炭素数は、1〜3であり、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。また、R3、R4、R5及びR6が表すアルキル基の炭素数は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
7は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表し、このうち炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。R7がアルキル基を表す場合、アルキル基の炭素数は、1〜10であり、1〜8であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。R7がアラルキル基を表す場合、アラルキル基の炭素数は、7〜10であり、7又は8であることが好ましい。
m-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンからなる群より選択されるm価のイオンを表し、塩素イオン又は臭素イオンであることが好ましく、塩素イオンであることがより好ましい。
mは1または2を表す。
nは1〜3の整数を表し、1であることが好ましい。
一般式(1)で表される構造単位(a)は、下記一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体を、メチル化剤等のアルキル化剤または、下記一般式(4)で表される変性剤で、重合前に又は重合後に変性することによって得ることができる。
Figure 0006411825
(一般式(3)において、Aは−O−又は−NH−を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜4のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基を表す。R3及びR4は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
第4級アンモニウム塩型共重合体を合成する際、一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体の使用量は、一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体と構造単位(b)の前駆体モノマーの合計使用量に対して25質量%以上であることが好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、29質量%以上であることがさらに好ましい。また、一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体の使用量は、一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体と構造単位(b)の前駆体モノマーの合計使用量に対して55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
メチル化剤としては、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、ジヨードメタン等が挙げられる。
Figure 0006411825
(一般式(4)において、R5及びR6は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。R7は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表す。X-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンからなる群より選択されるm価のイオンを表す。mは1または2を表し、nは1〜3の整数を表す。)
一般式(3)、(4)において、R1〜R7、A、Xが表す好ましい基及び炭素数、nの好ましい範囲については、一般式(1)の対応する記載を参照することができる。
一般式(3)で表される第3級アミン含有単量体としては、具体的にはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができ、このうちジエチルアミノエチルアクリレートまたはジエチルアミノエチルアクリレートであることが好ましく、ジメチルアミノエチルアクリレートであることがより好ましい。
一般式(4)で表される変成剤としては、具体的には塩化3‐クロロ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム等を挙げることができる。また、一般式(4)において、末端の炭素原子と水酸基が結合することで環状エーテルを形成した構造を有するグリシジル化合物も変成剤として用いることができる。そのようなグリシジル化合物としては、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを好適に用いることができる。
一方、一般式(2)で表される構造単位(b)は、適度な疎水性を有し、インクや塗工液に対する表面処理層上の濡れ性に寄与する成分である。
一般式(2)において、R8は水素原子又はメチル基を表し、このうちメチル基であることが好ましい。
9は炭素数1〜6のアルキル基を表す。R9が表すアルキル基の炭素数は、1〜6であり、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
一般式(2)で表される構成単位(b)としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の残基を挙げることができ、このうちアルキル基の炭素数が1〜3であるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートの残基であることが好ましい。
第4級アンモニウム塩型共重合体の平均分子量は、記録用紙の耐水性及びインキとの密着性を高める観点から、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。また、表面処理層の形成を容易にする観点から、第4級アンモニウム塩型共重合体の平均分子量は、1000000以下であることが好ましく、800000以下であることがより好ましい。
第4級アンモニウム塩型共重合体における構造単位(a)と構造単位(b)との質量比[構造単位(a)の質量:構造単位(b)の質量]は、40:60〜70:30の範囲であり、好ましくは45:55〜65:35の範囲、さらに好ましくは45:55〜60:40の範囲である。構造単位(a)の含有率が40質量%以上であることにより、記録用紙は低湿度環境下においても十分な帯電防止性能を発揮することができる。一方、構造単位(a)の含有率が70質量%以下であることにより、表面処理層の水溶性が低くなり、オフセット印刷やフレキソ印刷、インクジェット印刷後のインク画像の耐水性が向上する。また、構造単位(b)の含有率が30質量%以上であることにより、例えば後述する感熱塗工液を表面処理層の表面に塗工する際、塗工液が弾きにくくなり、感熱記録層を均一に形成することができる。一方、構造単位(b)の含有率が60質量%以下であることにより、構造単位(a)による帯電防止効果を向上させることができる。
以上のような第4級アンモニウム塩型共重合体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分)
表面処理層に含まれる、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分は、支持体と表面処理層との密着性を高める接着剤の働きを有するとともに、表面処理層に、インクや印刷用インキ、感熱塗工液等の塗工液に対する親和性を付与する機能を有する。
ここで、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに「由来する成分」とは、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体そのものであってもよいし、表面処理層を形成する過程で、これらの成分がさらに変性した変性体であってもよい。また、エチレンイミン系重合体とは、エチレンイミンが付加された重合体であり、例えばポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体、ポリエチレンイミンのグリシジルエーテル付加体等を挙げることができる。表面処理層は、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体のいずれかを一種を含んでいてもよいし、上記の中から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
ポリエチレンイミン及びエチレンイミン系重合体の各変性体としては、ポリエチレンイミン又はエチレンイミン系重合体を、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化ベンジル等のハロゲン化物、エポキシ基含有化合物、又はハロヒドリン等の変性剤によって変性したもの等を挙げることができる。変性剤としては、具体的には、塩化メチル、臭化メチル、塩化n−ブチル、塩化ラウリル、ヨウ化ステアリル、塩化オレイル、塩化シクロヘキシル、塩化ベンジル、塩化アリル、塩化シクロペンチル等のハロゲン化物、グリシドール等のエポキシ基含有化合物、エピクロロヒドリン等のハロヒドリン等を挙げることができる。これらの変性体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
表面処理層における第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分の含有率は、固形分量として、表面処理層を構成する材料の合計量に対して40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましい。第4級アンモニウム塩型共重合体の含有率が40質量%以上であることで、表面処理層の優れた帯電防止性能を達成しやすい。一方、第4級アンモニウム塩型共重合体の含有率は、固形分量として、表面処理層を構成する材料の合計量に対して96質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましい。第4級アンモニウム塩型共重合体の含有率が96質量%以下であることで、支持体と表面処理層との密着性や、表面処理層とインクや印刷用インキとの密着性、或いは表面処理層と感熱記録層との密着性を改善しやすい。
表面処理層におけるポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分の含有率は、固形分量として、表面処理層を構成する材料の合計量に対して4質量%以上であることが好ましく、6質量%以上であることがより好ましい。この含有率が4質量%以上であることで、支持体と表面処理層との密着性や、表面処理層とインクや印刷用インキとの密着性、或いは表面処理層と感熱記録層との密着性を改善しやすい。一方、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分の含有率は、固形分量として、表面処理層を構成する材料の合計量に対して60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましい。この含有率が60質量%以下であることで、表面処理層の優れた帯電防止性能を達成しやすい。
(架橋剤)
表面処理層には、必要に応じて架橋剤が添加されていてもよい。これにより、架橋剤と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体や、これらの変性体との架橋反応によって網目状の分子構造が形成され、表面処理層の耐水性が向上する。その結果、記録用紙として好適な表面(表面処理層の表面)を得やすい。
架橋剤としては、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ホルマリン系化合物、オキサゾリン系化合物、カルボジイミド系化合物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等を挙げることができる。より具体的には、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂イソシアネート系化合物、およびこれらの誘導体等を挙げることができる。さらに、架橋剤としては、多価アルコール、エーテル樹脂、又はエステル樹脂と、イソシアネート系化合物とを反応させてNCO基が末端になるように重縮合されたウレタン樹脂系イソシアネート、ポリグリシジルエーテルおよびこれらの誘導体、さらにメラミン樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、特にポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物、単官能又は多官能のグリシジルエーテル、グリシジルエステル類等を架橋剤として用いることが好ましい。これらの架橋剤を用いることにより、感熱記録層形成用の塗工液等を表面処理層表面に塗布する場合に、塗工液を該表面に均一に塗布することができ、表面処理層と感熱記録層との密着性を高めることができる。
表面処理層に添加する架橋剤の添加量は、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかの合計量に対して10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、架橋剤の添加量は、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかの合計量に対して1000質量%以下であることが好ましく、300質量%以下であることがより好ましい。
(その他の添加剤)
表面処理層には、帯電防止性能や表面の濡れ性を阻害しない範囲で、この他の添加剤を添加してもよい。そのような添加剤としては、例えばpH調整剤、消泡剤(界面張力調整剤)、希釈剤、流動性改良剤、防腐剤等を挙げることができる。
<支持体>
支持体は、記録用紙に機械強度やコシ等の印刷適性、耐水性、耐薬品性を付与するとともに、必要に応じて不透明性等を付与するものである。
本発明では、熱可塑性樹脂を主材料として支持体を構成する。
ここで、「熱可塑性樹脂を主材料とする」とは、支持体全量に対する熱可塑性樹脂の含有率が50質量%以上であることを意味する。支持体の主材料が熱可塑性樹脂であることにより、印刷適性および耐薬品性を有し、特に耐水性に優れた支持体を得ることができる。
(熱可塑性樹脂)
支持体に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1〜8)等の(メタ)アクリル酸誘導体のホモポリマー及び共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂等のように、融点が130〜280℃の範囲の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、耐水性や耐薬品性、生産コスト等の観点からポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましく、フィルムの成形性の観点からポリプロピレン系樹脂を用いることが特に好ましい。さらに、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体、シンジオタクティック重合体等を用いることが好ましい。またプロピレンを主体とし、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとを共重合させた様々な立体規則性を有する共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
(無機微粉末および有機フィラー)
支持体は、無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、支持体を白色化、不透明化させることができ、文字や画像等を印刷するのに好適な記録用紙を得ることができる。特に、無機微細粉末や有機フィラーが添加された熱可塑性樹脂フィルムを延伸してなる支持体は、無機微細粉末や有機フィラーを核とした微細な空孔が内部に多数形成されており、これによって白色化および不透明化の度合いが大きく、しかも軽量であるという利点を有する。
無機微細粉末としては、特に限定されないが、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、硫酸バリウム、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素等を挙げることができる。また、これらの無機微細粉末を、脂肪酸、高分子界面活性剤、帯電防止剤等で表面処理したものであってもよい。これらの中でも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルクが、空孔成形性が良く、安価であることから好ましい。
有機フィラーとしては、特に限定されないが、支持体に用いる熱可塑性樹脂と非相溶であり、融点が120〜300℃、ガラス転移温度が120〜280℃であり、さらに熱可塑性樹脂との溶融混練条件下で微分散するものであることが好ましい。例えば、支持体に用いる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリメチルメタクリレート、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等を挙げることができる。また、メラミン樹脂のような熱硬化性樹脂の微粉末を有機フィラーとして用いてもよい。
これらの無機微細粉末および有機フィラーは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、無機微細粉末と有機フィラーとを組み合わせて使用してもよい。
無機微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径は、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。特に、体積平均粒子径が0.1μm以上であることにより、無機微細粉末又は有機フィラーと、熱可塑性樹脂との混合を容易に行うことが可能になる。一方、無機微粉末や有機フィラーを添加した熱可塑性フィルムを延伸する際、シート切れや表面層の強度低下等を抑える観点からは、無微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、無機微細粉末及び有機フィラーの体積平均粒子径とは、粒子計測装置により測定した粒度分布において、累積体積が全体積の50%に当たる座標点での粒子径(累積50%粒径)である。粒子径測定装置としては、例えば、レーザー回折式粒子計測装置「マイクロトラック」(日機装社製、商品名)を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂フィルム中に分散した有機フィラーの平均粒子径は、熱可塑性樹脂フィルムの断面を電子顕微鏡によって観察し、その観察領域に存在する有機フィラーの少なくとも10個の粒子径を計測し、その平均値を算出することによって求めることができる。
支持体が無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含む場合、支持体における無機微細粉末および有機フィラーの総含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、支持体に十分な不透明性を付与することができる。また、支持体における無機微細粉末および有機フィラーの総含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、支持体に適度な強度を付与して記録用紙を取扱い易いものにすることができる。
また、支持体の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、支持体は、ポリプロピレン系樹脂を50〜80質量%含み、無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20〜50質量%含むことが好ましい。
(分散剤)
支持体には、必要に応じて、無機微細粉末および有機フィラーの分散性を向上させる分散剤を添加してもよい。
分散剤としては、支持体に用いられる熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、酸変性ポリオレフィン、シラノール変性ポリオレフィン等を挙げることができる。この中でも、分散剤としては、酸変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸をランダム共重合又はグラフト共重合した無水カルボン酸基含有ポリオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸をランダム共重合又はグラフト共重合したカルボン酸基含有ポリオレフィン、グリシジルメタクリレートをランダム共重合又はグラフト共重合したエポキシ基含有ポリオレフィン等を挙げることができる。
分散剤の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸ランダム共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレートランダム共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体、グリシジルメタクリレート変性ポリプロピレン等を挙げることができる。この中でも無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが熱可塑性樹脂への相溶性や無機微細粉末等を分散させ易いことから好ましい。
(その他の添加剤)
支持体には、必要に応じて公知の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料、可塑剤、結晶核剤、離型剤、難燃剤等を挙げることができる。特に、支持体を耐久資材として使用する場合には酸化防止剤や光安定剤等を添加することが好ましい。
酸化防止剤としては、立体障害フェノール系化合物等を挙げることができる。熱安定剤としては、リン系、アミン系の化合物が挙げられる。光安定剤としては、立体障害アミン化合物等を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の化合物等を挙げることができる。スリップ剤としては、脂肪酸アミド等を挙げることができる。
これらの添加剤は、支持体と表面処理層との密着を阻害しない範囲で添加することが好ましい。例えば、酸化防止剤を用いる場合、支持体における酸化防止剤の添加量は0.001〜1質量%であることが好ましい。また、光安定剤を用いる場合、支持体における光安定剤の添加量は、0.001〜1質量%であることが好ましい。
(延伸)
支持体は、上記の各成分を混合した樹脂組成物をシート状に成形した後、少なくとも一軸方向に延伸したものであることが好ましい。延伸された支持体は、不透明性が高く、記録用紙の支持体として好適に用いることができる。延伸の方法は、後述する記録用紙の製造方法の欄の(1)支持体製造工程を参照することができる。
(層構成)
支持体は単層構造であってもよいし、多層構造であってもよいが、異なる性質を付与した複数の熱可塑性樹脂フィルムを積層した多層構造であることが好ましい。
例えば、支持体を表面層/コア層/表面層の3層の熱可塑性樹脂フィルムよりなる多層構造とし、一方の表面層側の熱可塑性樹脂フィルムに、表面処理層および後述する感熱記録層を設けるのに適した特性を付与し、他方の表面層側の熱可塑性樹脂フィルムに、粘着剤層を設けるのに適した特性を付与することで、感熱記録用紙の支持体と粘着ラベルの支持体を兼ねた支持体として好適なものにすることができる。
また、一方の表面層と他方の表面層の組成や厚さ等を適宜設計することで、支持体自体のカールや、該支持体に表面処理層や感熱記録層を設けた記録用紙のカールを特定の範囲内に制御することができる。また、このような制御によれば、記録用紙に記録面側が反るようなカールを付与することもでき、これによりプリンタでの記録用紙の通紙性を改善することできる。
さらに多層構造の支持体は、その少なくとも1層を、ベタ印刷層や顔料含有層等の隠蔽層にして含むものでもよい。これにより、一方の表面に記録された印刷画像が他方の表面から透けて見えることが抑えられ、また、印刷画像の視認性を向上させることもできる。
また、多層構造の支持体は、そのうち少なくとも一層が延伸フィルムであることが好ましい。これにより、支持体に不透明性を付与することができる。
(厚さ)
支持体の厚さは、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。これにより、大型のポスター等として屋外掲示する用途においても十分な剛度が得ることができる。また、支持体の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。これにより、記録用紙が重くなり過ぎることを回避することができる。
(空孔率)
本明細書中において支持体の空孔率とは、支持体を厚さ方向に切断した切断面を走査型電子顕微鏡で観察し、その観察領域の全面積に対する空孔が占める割合のことを言う。この空孔率は、具体的には以下のようにして求めることができる。
まず、支持体から任意の一部をサンプルとして切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて、面方向に対する垂直方向(厚さ方向)にサンプルを切断する。そして、その切断面が観察面になるように、サンプルが包埋されたエポキシ樹脂を観察試料台に貼り付け、その観察面に金又は金−パラジウム等を蒸着する。続いて、走査型電子顕微鏡によって、任意の倍率(例えば、500倍〜3000倍)で切断面の空孔を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んで画像処理を行い、観察領域の全面積に対する空孔が占める割合(空孔率)を求める。
そして、本発明では同様の手法で、支持体の任意の10箇所以上、30箇所以内からサンプルを切り取って空孔率を測定し、その平均値を算出して、これを支持体の空孔率とした。
支持体の空孔率は、支持体に十分な不透明性を付与する観点から、10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが特に好ましい。また、支持体の空孔率は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、42%以下であることがさらに好ましく、40%以下であることが特に好ましい。
また記録用紙に、印刷画像の視認性以上に、支持体の透明性に由来する意匠性や機能性を求める場合、支持体の空孔率は10%未満であっても良い。
(感熱記録層)
本発明の記録用紙は、表面処理層の表面に感熱記録層が設けられていてもよい。これにより、この記録用紙を感熱記録用紙として用いることができる。本発明の記録用紙は、表面処理層が特定の構造単位(a)、(b)を有する第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含んでいるため、表面処理層の表面に感熱塗工液を良好に塗工することができ、ムラのない均一な感熱記録層を設けることができる。
感熱記録層は、少なくとも発色剤と顕色剤とを含み、熱エネルギーによって発色剤と顕色剤とが反応することによって発色するものである。
発色剤と顕色剤の組合せとしては、両者が接触して発色反応を起こすような組合せであればよく、例えば無色ないし淡白の塩基性染料と無機又は有機の酸性物質との組合せ、ステアリン酸第二鉄等の高級脂肪酸金属塩と没食子酸等のフェノール類との組み合わせ、ジアゾニウム塩化合物とカプラー及び塩基性物質との組合せ等を挙げることができる。このジアゾニウム塩化合物は、ポリウレア、ウレタン又はゼラチンを殻とするマイクロカプセル内に包含されたものであってもよい。また、この感熱記録層には、必要に応じて、バインダー、発色調整剤、蛍光増白剤、滑剤、硬化剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
<記録用紙の物性>
(帯電圧半減期)
本発明において「帯電圧半減期」とは、温度5℃、相対湿度30%の条件下で、JIS L1094:1997に規定される「織物及び編物の帯電性試験方法」に基づいて測定される帯電圧の半減期のことを言う。
本発明では、表面処理層の帯電圧半減期を5秒以下に規定する。表面処理層の帯電圧半減期は、帯電防止性能の指標となるものであり、この値が5秒以下である表面処理層は、静電気を逃がし易く、優れた帯電防止性能を発揮する。これにより、冬場のような低湿度環境下においても、印刷や加工に際する記録用紙同士の貼り付きが抑えられ、印刷工程、加工工程でのトラブルの発生を回避しやすくなる。
この表面処理層の帯電圧半減期は、3秒以下であることが好ましく、1秒以下であることがより好ましい。表面処理層の帯電圧半減期は、第4級アンモニウム塩型共重合体における構成単位(a)、(b)の質量比や、第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分の表面処理層における含有率等によって制御することができる。
(表面抵抗値)
本明細書中において、「表面抵抗値」とは、温度5℃、相対湿度30%の条件下で、JIS K6911:1995に規定される「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に基づいて測定される表面抵抗率である。
本発明の記録用紙は、表面処理層の表面抵抗値が7×109Ω以上であることが好ましく、8×109Ω以上であることがより好ましく、9×109以上であることがさらに好ましい。また、本発明の記録用紙は、その表面処理層の表面抵抗値が1×1012Ω以下であることが好ましく、5×1011Ω以下であることがより好ましく、2×1011Ω以下であることがさらに好ましい。表面処理層の表面抵抗値が1×1012Ωより低いことにより、冬場のような低湿度環境下においても、印刷時の記録用紙同士の貼り付きが確実に抑えられ、効率よく印刷を行うことができる。
(水接触角)
本明細書中において、「水接触角」とは、JIS R3257:1999に規定される「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に基づいて測定される水の接触角である。この水接触角は、印刷に際しては記録用紙表面のインクや印刷用インキに対する濡れ性等、またはオフセット印刷時の湿し水に対する濡れ性の指標となるものであり、或いは加工に際しては記録用紙表面の感熱塗工液等に対する濡れ性の指標となるものである。この水接触角が大きい程、疎水性の印刷用インキや溶剤系塗工液等への濡れ性が高いことを意味し、この水接触角が小さい程、湿し水や感熱塗工液等への濡れ性が高いことを意味する。
本発明の記録用紙は、表面処理層表面の水接触角が50°以上であることが好ましく、55°以上であることがより好ましく、60°以上であることがさらに好ましい。これは以下の理由による。
すなわち、熱可塑性樹脂を主材料とする支持体を用いる記録用紙は、記録用紙が水を吸収し難いことから、オフセット印刷の際、刷版上の湿し水が増加し、インキが水を含みすぎて過乳化状態となりやすい。その結果、乳化したインクが刷版の親水部に付着し、親水部におけるインクへの反発力が低下して汚れることから、印刷物の水負けが起こりやすくなる傾向がある。このとき、記録用紙表面の親水性が高すぎると、水負けがより起こり易くなる傾向がある。
これに対して、前述のように表面処理層表面の水接触角が50°以上の記録用紙は、表面処理層表面の親水性が比較的低いため、このような水負けが生じ難く、汚れのない鮮明な印刷画像を得ることができる。またこのような表面処理層の表面は、疎水性の印刷用インキや溶剤系塗工液が濡れやすく、これらを容易に塗ることができる。また例えば、感熱塗工液等の塗工液を塗工する場合に、塗工液が記録用紙の端部で液ダレし難く、周囲の汚染を抑えつつ塗工作業を行うことができる。
また、本発明の記録用紙は、その表面処理層表面の水接触角が80°以下であることが好ましく、75°以下であることがより好ましく、70°以下であることがさらに好ましい。これは以下の理由による。
すなわち、表面処理層表面の水接触角が80°以下である記録用紙は、感熱塗工液等の塗工液を塗工する場合に、表面処理層の表面で塗工液が弾き難く、塗面がムラになりにくいため、感熱記録層等を均一に形成することができる。またこのような表面処理層の表面は、疎水性すぎないためにオフセット印刷時の湿し水が適正に濡れて鮮明な印刷画像を得ることができる。
上記のような理由により、この記録用紙は、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷方式を始めとする各種印刷が可能であり、且つ感熱塗工液等の塗工液の塗工が容易であるという、顕著な効果を奏するものである。
[不透明度]
本明細書中において、「不透明度」とは、JIS P8149:2000に規定される「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」によって測定される不透明度である。
本発明の記録用紙の不透明度は、記録用紙の用途によっても異なるが、40〜100%であることが好ましく、50〜98%であることがより好ましく、60〜95%であることがさらに好ましい。これは以下の理由による。
本発明の記録用紙は、各種の情報が印刷および/または印字され、各種の用途に用いられる。このため、記録用紙に印刷および/または印字された文字等は、記録用紙の背景に関わらず判読できることが望ましい。記録用紙の不透明度が40%以上であれば、背景が透けて見えることが抑えられ、印刷面に印刷された文字等を容易に判読することができる。
一方、本発明の記録用紙が透けて見えることが望ましい場合には、記録用紙の不透明度は、40%未満であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、8%以下であることが特に好ましい。記録用紙の不透明度が40%未満であれば、記録用紙を介して背景を視認することができる。
<<ラベル>>
本発明のラベルは、本発明の記録用紙と、その記録用紙の一方の表面上に設けられた粘着剤層とを有する。、このラベルは、粘着剤層を介して記録用紙を被着体に容易に貼り付け可能としたものである。本発明において、粘着剤層は支持体上に直接設けてもよく、表面処理層上に設けてもよい。本発明のラベルの好ましい様態としては、支持体の両方の表面上に表面処理層を設け、一方の表面処理層上に粘着剤層を設けたものが挙げられる。更に本発明のラベルの好ましい様態としては、支持体の両方の表面上に表面処理層を設け、一方の表面処理層上に粘着剤層を設け、もう一方の表面処理層上にインクや印刷用インキによる印刷層、或いは感熱記録層を設けたものが挙げられる。
本発明のラベルに用いられる記録用紙は、表面処理層が特定の構造単位(a)、(b)を有する第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分を含んでいるため、低湿度環境下においても優れた帯電防止性能を発揮する。このため、本発明のラベルは、印刷工程や加工工程において静電気のために記録用紙同士が貼りつくトラブルや、ラベル貼付工程においてオートラベラーを使用して自動で商品にラベルを貼着する際に静電気のためにラベルを規定の位置に貼れないといったトラブルを防止することができる。
(粘着剤層)
本発明のラベルは、粘着剤層を含む。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、従来ラベルの粘着剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
このような粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびウレタン系粘着剤を用いることができる。
ゴム系粘着剤の具体例としては、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンブロック共重合体、スチレンブタジエンブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独で又は複数混合して用いられる。或いは、これらゴム系粘着剤にアビエチン酸ロジンエステル、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・インデン共重合体などの粘着付与剤を配合したものが挙げられる。
アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n−ブチル共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体などのガラス転移点が−20℃以下のものが挙げられる。
シリコーン系粘着剤の具体例としては、シリコーンゴムとシリコーンレジンとの混合物、末端に水酸基を持つオルガノポリシロキサンに架橋剤を混合した縮合硬化型、或いは末端にビニル基を持つオルガノポリシロキサンに架橋剤を混合した付加硬化型のものが挙げられる。
ウレタン系粘着剤の具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオールとイソシアネート化合物との混合物などを挙げることができる。
これらの粘着剤は通常、高分子量の樹脂成分からなるものである。これらの粘着剤の形態としては、有機溶媒に溶解した溶剤型、水に分散したディスパージョン型やエマルジョン型、無溶媒の形態であるホットメルト型等が使用されるが、一般的には溶剤型、ディスバージョン型、エマルジョン型等の溶液状のものを、支持体上に塗工し、乾燥固化させて、粘着剤層を形成することが容易である。
かかる塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコーター等の機器を用いることができる。更に必要によりスムージングを行い、オーブン等の乾燥工程を経て、粘着剤層を形成することができる。
(離型紙)
本発明のラベルには、粘着剤層の保護のために、更に粘着剤層の外側に離型紙を設けることも可能である。
記録用紙に粘着剤層を介し設けられる離型紙は、慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、上質紙やクラフト紙をそのまま、あるいは同紙にカレンダー処理したもの、樹脂を塗工したもの、フィルムラミネートしたもの、グラシン紙、コート紙、およびプラスチックフィルムなどにシリコーン処理を施したものが使用できる。
離型紙は粘着剤層との剥離性を良好にするために、粘着剤層に接触する面にシリコーン処理が施されるのが一般的である。
<<記録用紙の製造方法>>
次に、本発明の記録用紙の製造方法の一例について説明する。
この記録用紙の製造方法は、支持体製造工程と、表面酸化処理工程と、表面処理層形成工程とを含む。以下、各工程について説明する。
(1)支持体製造工程
この工程では、前述の支持体の材料を溶融混練した樹脂組成物を樹脂シートに成形して、必要に応じて延伸して支持体を得る。
支持体の材料(樹脂組成物)の溶融混練には、市販の押出機を使用することができ、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、異方向回転二軸押出機等を用いることができる。これらは具体的には、同方向回転二軸押出機としては、東芝機械社製のTEM(登録商標)、日本製鋼所社製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)などを例示できる。異方向回転二軸押出機としては、日本製鋼所社製のTEX(登録商標)及びCMP(登録商標)、並びに、神戸製鋼所社製のFCM(登録商標)、NCM(登録商標)及びLCM(登録商標)等を例示できる。
樹脂シートの成形方法としては、押出キャスト成形、共押出キャスト成形、押出ラミネート、共押出ラミネート等を挙げることができる。
成形された樹脂シートは、更に少なくとも一軸方向に延伸することが好ましい。これにより、得られる支持体に不透明性や均一な厚さを付与しやすい。ここで、少なくとも1層が延伸フィルムからなる多層構造の支持体を製造する場合には、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸しても差し支えない。
延伸方法としては、従来公知の種々の方法を使用することができ、具体的にはロール群の周速差を利用したロール間縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法等を使用することができる。また、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等も使用することができる。さらには、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用することができる。
樹脂シートの延伸温度は、支持体に用いる熱可塑性樹脂が非晶性樹脂である場合には、この非晶性樹脂のガラス転移点以上に設定することが好ましい。また、熱可塑性樹脂が非結晶部分と結晶部分とを有する結晶性樹脂である場合には、延伸温度は、非結晶部分のガラス転移点以上、結晶部分の融点以下に設定することが好ましい。特に、支持体に用いる熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合に、延伸温度が結晶部分の融点を超えると、所望の空孔が得られず、不透明性が低下する傾向がある。
樹脂シートの延伸速度は、20〜350m/分であることが好ましい。これにより、樹脂シートの延伸を安定に行うことができる。
樹脂シートの延伸倍率は、面積延伸倍率として2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましく、4倍以上であることがさらに好ましい。面積延伸倍率が2倍以上であれば、樹脂シートに所望の空孔を形成することができ、不透明性の高い支持体を得ることができる。また、樹脂シートの面積延伸倍率は、80倍以下であることが好ましく、60倍以下であることがより好ましく、50倍以下であることがさらに好ましい。面積延伸倍率が80倍以下であれば、樹脂シートに破断が起きにくく、安定した延伸成形を行うことができる。
(2)表面酸化処理工程
この工程は、支持体の表面に酸化処理を施す工程であり、必要に応じて行われる。支持体の表面に酸化処理を施すことにより、支持体と、後工程で形成する表面処理層との密着性を高めることができる。
表面酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等を挙げることができ、中でもコロナ放電処理、プラズマ処理を用いることが好ましい。
酸化処理量は、コロナ放電処理の場合には10W・分/m2(600J/m2)以上であることが好ましく、20W・分/m2(1,200J/m2)以上であることがより好ましい。20W・分/m2(1,200J/m2)以上にすることにより、安定で効果的な酸化処理を行うことができる。また、酸化処理量は、コロナ放電処理の場合には200W・分/m2(12,000J/m2)以下であることが好ましく、180W・分/m2(10,800J/m2)以下であることがより好ましい。
(3)表面処理層形成工程
この工程では、支持体の表面上に表面処理層を形成する。表面処理層の形成方法としては、特に限定はないが、前述の表面処理層の材料を溶媒に分散、溶解させた塗料を、前記工程で製造した支持体の表面上に塗工した後、塗膜から溶媒を除去し乾燥する塗工法を用いることが好ましい。本発明における表面処理層の材料はいずれも水溶性であるため、塗料を容易に調製することができ、表面処理層を低コストで効率よく形成することができる。
溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、溶媒に水を用いることにより、塗料をより安全に取り扱うことができ、表面処理層の形成工程の管理が容易になり、記録用紙の製造効率を高めることができる。なお、4級アンモニウム塩型共重合体、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体は、その組成によっては水に溶解しない場合がある。この場合、助溶媒として水に相溶するアルコール類、ケトン類を併用することが好ましい。
塗料における前述の表面処理層の材料の固形分濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、塗料における前述の表面処理層の材料の固形分濃度は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
塗料を支持体表面上に塗工する方法としては、例えば、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター等の公知の塗工装置を用いる方法が挙げられる。
またこの他、支持体を直接塗料に漬け込む浸漬法も用いることができる。
塗料の塗工量は、単位面積(m2)当たりの乾燥後固形分換算で、5g/m2以下であることが好ましく、2g/m2以下であることがより好ましく、1g/m2以下であることがさらに好ましい。表面処理層が厚すぎる(塗工量が多すぎると)、表面処理層内部で凝集が起こり、得られる記録用紙と、インクや印刷用インキ、感熱塗工液等との密着性が低下する傾向がある。また、塗料の塗工量は、0.005g/m2以上であることが好ましく、0.01g/m2以上であることがより好ましく、0.02g/m2以上であることがさらに好ましい。塗料の塗工量が少なすぎると、支持体表面に表面処理層を均質に形成することができず、十分な帯電防止効果が得られない場合がある。また表面処理層が均質でない結果、記録用紙と、インクや印刷用インキ、感熱塗工液等との接着力が不足するおそれがある。
この表面処理層を形成する塗料の塗工は、支持体の少なくとも一方の表面上に行われる。
表面処理層を形成する塗料の塗工は支持体の一方の表面上にのみ行ってもよいし、両方の表面上に行ってもよいが、両方の表面上に行うことが好ましい。これにより、帯電防止性能に優れた記録用紙を得ることができる。
また、この表面処理層を形成する塗料の塗工は、樹脂組成物をシート状に成形して支持体を製造するライン上で連続して行ってもよいし、支持体を製造するラインとは別のラインで行ってもよい。また、樹脂シートを延伸する場合、この塗料の塗工は、樹脂シートの延伸工程の前に行ってもよいし、延伸工程の後に行ってもよい。
即ち、上記の(1)支持体製造工程と、(2)表面酸化処理工程と、(3)表面処理層形成工程とは、同一の製造ライン上で行うものでもよく、個別の製造ラインで都度行うものでもよい。
以上のようにして表面処理層を形成する塗料を支持体の表面上に塗工した後、塗膜を乾燥して表面処理層を得る。塗膜の乾燥は、自然乾燥であってもよいし、オーブンや赤外線等を用いる加熱乾燥であってもよい。
<<感熱記録層を設けた記録用紙の製造方法>>
(4)感熱記録層形成工程
記録用紙は、以上の工程によって製造されるが、記録用紙として感熱記録用紙を製造する場合には、さらに表面処理層の表面上に感熱記録層を形成する。
感熱記録層の形成方法は特に限定されず、例えばドライラミネーション法、押出ラミネーション、ウエットラミネーション法、塗工法等を挙げることができる。これらの中でも塗工法を用いることが好ましい。
塗工法では、前述の感熱記録層の材料を溶媒に分散、溶解させた感熱塗工液を、表面処理層の表面上に塗工した後、乾燥によって塗膜から溶媒を除去することで感熱記録層が得られる。感熱塗工液を塗工する塗工装置としては、例えばロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、コンマコーター、サイズプレスコーター、ゲートロール等を挙げることができる。
感熱塗工液の塗工量は、特に制限されないが、通常、固形分質量で0.1g/m2以上であることが好ましく、0.2g/m2以上であることがより好ましい。一方、感熱塗工液の塗工量は30g/m2以下であることが好ましく、10g/m2以下であることがより好ましい。
なお、本発明の記録用紙には、感熱記録層を保護する等の目的で、感熱記録層上に、さらにオーバーコート層を設ける等、その他の公知の構成を追加で採用することもできる。
<<ラベルの製造方法>>
次に、本発明のラベルの製造方法について説明する。
本発明の記録用紙を用いてラベルを製造する場合には、記録用紙(支持体または表面処理層)の一方の表面上にさらに粘着剤層を形成する。また、記録用紙が感熱記録層を備えている場合には、ラベルは、例えば、上記記録用紙の支持体の感熱記録層が備えられていない面上に、粘着剤層を形成して得ることができる。
ラベルの形成方法は特に限定されず、例えば記録用紙(支持体または表面処理層)の一方の表面上に直接、上記の粘着剤を塗工し、必要により乾燥を行い、形成することができる。また例えば上記の離型紙へ上記の粘着剤を塗工し、必要により乾燥を行い、一旦粘着剤層を形成した後に、この粘着剤層と記録用紙(支持体または表面処理層)を接するように積層して形成することもできる。
粘着剤を塗工する装置としては、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を挙げることができる。これらの塗工装置によって粘着剤を塗工した後に、必要によりレベリング、スムージング、乾燥を行うことで粘着剤層を形成する。
粘着剤の塗工量は、特に制限されないが、通常、固形分質量で3g/m2 以上であることが好ましく、5g/m2 以上であることがより好ましくい。一方、粘着剤の塗工量は60g/m2 以下であることが好ましく、40g/m2 以下であることがより好ましい。
<<記録用紙、および該記録用紙を用いたラベルの用途>>
本発明の記録用紙は、優れた帯電防止性能により後述の種々の印刷方式で直接印刷することができる。
本発明の記録用紙への印刷は、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷、スクリーン印刷、インクジェット記録方式、熱転写記録方式、感圧転写記録方式、電子写真記録方式などの種々の公知の手法を用いることが可能である。印刷の精細性の観点からはグラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット記録方式、電子写真記録方式が好ましく、小ロットに対応可能である観点からはレタープレス印刷、フレキソ印刷が好ましい。
これらの印刷に用いるインキとしては、油性インキならびに紫外線硬化型インキが使用可能であるが、即座にインキの乾燥固化ができるメリットや耐擦過性の観点から、紫外線硬化型インキが好ましい。
紫外線硬化型インキで印刷を施す場合、該インキは紫外線照射により乾燥固化される。紫外線照射方法は、紫外線硬化型インクが硬化される方法であれば特に限定されないが、例えば、メタルハライドランプ(200〜400nm)、低圧水銀灯(180〜250nm)、高圧水銀灯(250〜365nm)、ブラックライト(350〜360nm)、UV−LEDランプ(355〜375nm)から照射される紫外線を、300〜3000mJ/cm2、好ましくは400〜1000mJ/cm2の照射量となるように照射する方法が挙げられる。
また、本発明の記録用紙であって、感熱記録層等の種々の記録層を有する記録用紙は、優れた帯電防止性能により感熱記録方式、熱転写方式、感圧転写方式、インクジェット記録方式等の種々の印刷方式に好適に用いられる。
本発明の記録用紙は、その表面処理層上に後述する感熱記録層を設けることにより、サーマルプリンタ等による直接印字が可能な感熱記録用紙として用いることができる。本発明の記録用紙は、同表面の優れた化学的親和性から、感熱塗工液の塗工性に優れ、また低温低湿環境下においても優れた帯電防止性能を発揮することから、プリンタの破壊や損耗のリスクを軽減でき、かつ用紙搬送性にも優れ、感熱記録用紙等の原反として好適である。
同様に、本発明の記録用紙の上に、さらに水性インクジェット受容層や熱転写受容層等の記録層を設けた場合には、対応する印刷方式による印字が可能な記録用紙となる。本発明の記録用紙は、上記印刷方式の中から複数の印刷方式を併用して用いることも可能である。
更に、本発明の記録用紙を用いたラベルは、低温低湿度環境下においても優れた帯電防止性能を発揮することから、印刷工程や加工工程の静電気トラブルを防止し、またオートラベラーを使用して自動でラベルを商品に貼着するラベル貼着工程において、静電気でラベルが規定の位置に貼れないといったトラブルを防止することができる。そのため、同ラベルは低温倉庫における製品管理用ラベルや、食品表示用ラベル等に好適である。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例で用いた材料>
1.熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂としては次のものを使用した。
(1)プロピレン単独重合体1:商品名「ノバテックPP MA−8」、日本ポリプロ社製、融点164℃
(2)プロピレン単独重合体2:商品名「ノバテックPP MA−3」、日本ポリプロ社製、融点165℃
(3)高密度ポリエチレン:商品名「ノバテックHD HJ580」、日本ポリエチレン社製、融点134℃
(4)ポリエチレンテレフタレートフィルム:商品名「ルミラーS10 #100」、東レ社製、厚さ100μm
2.第4級アンモニウム塩型共重合体
第4級アンモニウム塩型共重合体として、次のように合成したものを使用した。
(第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成)
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管、及び攪拌装置を取り付けた4つ口フラスコに、メタクリル酸ジメチルアミノエチル45質量部、メタクリル酸メチル55質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの60%水溶液100質量部を加え、さらに80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体1の水溶液を得た。
(第4級アンモニウム塩型共重合体2の合成)
第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成と同様に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル65質量部、メタクリル酸メチル35質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの60%水溶液160質量部を加え、さらに80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体2の水溶液を得た。
(第4級アンモニウム塩型共重合体3の合成)
第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成と同様に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル95質量部、メタクリル酸メチル5質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの60%水溶液250質量部を加え、さらに80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体3の水溶液を得た。
(第4級アンモニウム塩型共重合体4の合成)
第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成と同様に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル5質量部、メタクリル酸メチル95質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの60%水溶液20質量部を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体4の水溶液を得た。
(第4級アンモニウム塩型共重合体5の合成)
第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成と同様に、メタクリル酸ジメチルアミノエチル35質量部、メタクリル酸エチル20質量部、メタクリル酸シクロヘキシル:20質量部、メタクリル酸ステアリル25質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、窒素気流下に80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムの60%水溶液:70質量部を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体5の水溶液を得た。
(第4級アンモニウム塩型共重合体6の合成)
第4級アンモニウム塩型共重合体1の合成と同様に、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム80%水溶液50質量部、メタクリル酸メチル30質量部、メタクリル酸エチル30質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加し、系内を窒素置換後、窒素気流下で80℃の温度で6時間重合反応を行った。次いで水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第4級アンモニウム塩型共重合体6の水溶液を得た。
3.ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体
ポリエチレンイミン7、エチレンイミン系重合体8として、次のものを使用し、ポリエチレンイミン変性体9および10として、次のように合成したものを使用した。
(1)ポリエチレンイミン7:商品名「エポミン P−1000」、日本触媒社製、固形分濃度30質量%
(2)エチレンイミン系重合体の変性体8:商品名「ポリミンSK」、BASFジャパン社製、固形分濃度25質量%
ポリエチレンイミン変性体9、10として、次のようにしてポリエチレンイミンを変性したものを使用した。
(ポリエチレンイミン変性体9の合成)
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、および撹拌装置を取り付けた4つ口フラスコに、ポリエチレンイミン水溶液(商品名「エポミン P−1000」、日本触媒社製)の100質量部、塩化n−ブチル10質量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル10質量部を添加し、系内を窒素置換後、窒素気流下で80℃の温度で25時間変性反応を行い、ポリエチレンイミン変性体9の水溶液を得た。
(ポリエチレンイミン変性体10の合成)
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管、および撹拌装置を取り付けた4つ口フラスコに、ポリエチレンイミン水溶液(商品名「エポミン P−1000」、日本触媒社製)の100質量部、グリシドール10質量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル10質量部を添加し、系内を窒素置換後、窒素気流下で80℃の温度で16時間変性反応を行い、ポリエチレンイミン変性体10の水溶液を得た。
このものを乾燥した後、赤外分光分析、1H−NMR分析、13C−NMR分析により、グリシドールのエポキシ基がポリエチレンイミンの窒素に付加した構造、およびポリエチレンイミンの全窒素の23モル%が変性していることを確認した。
4.架橋剤
架橋剤11、架橋剤12として、次のものを使用した。
(1)架橋剤11:ポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物(商品名「WS4082」、星光PMC社製)
(2)架橋剤12:多価カルボジイミド(商品名「カルボジライトV−02」、日清紡ケミカル社製)
<支持体の製造>
(支持体1の製造)
プロピレン単独重合体1を67質量%、高密度ポリエチレン10質量%、および平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末23質量%よりなる樹脂組成物(a)を、押出機を用いて260℃で溶融混練したのち、ダイよりフィルム状に押し出し、約50℃の温度となるまでフィルムを冷却した。このフィルムを約140℃に再度加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に5倍延伸して、コア層となる一軸延伸フィルムを得た。
一方、プロピレン単独重合体2を51.5質量%、高密度ポリエチレン3.5質量%、平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末42質量%、および平均粒径0.8μmの酸化チタン粉末3質量%よりなる樹脂組成物(b)を別の押出機を用いて250℃で溶融混練し、これを上記一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、表面層/コア層(b/a)の積層体を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物(b)を250℃で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(b/a)のコア層(a)側の面に積層して、表面層/コア層/裏面層の三層構造の積層体(b/a/b)を得た。
この三層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向に8倍延伸し、次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃迄冷却し耳部をスリットして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルム(支持体1)を得た。支持体1の空孔率は、34%であった。
(支持体2の製造)
支持体1の製造において、熱可塑性樹脂フィルムに表面層、裏面層を積層せずに、樹脂組成物(a)のコア層のみの単層構造とし、支持体1と同様に縦方向に5倍、横方向に8倍延伸して得た2軸延伸フィルムを164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃迄冷却し耳部をスリットして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルム(支持体2)を得た。支持体2の空孔率は、40%であった。
(支持体3の製造)
支持体2の製造において、樹脂組成物(a)の代わりに、プロピレン単独重合体1を80質量%、高密度ポリエチレンを10質量%、および平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粉末10質量%よりなる樹脂組成物に変更した以外は、支持体2の製造と同様にして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルム(支持体3)を得た。支持体3の空孔率は、10%であった。
(支持体4の製造)
支持体2の製造において、樹脂組成物(a)の代わりに、プロピレン単独重合体1を87質量%、高密度ポリエチレンを13質量%よりなる樹脂組成物に変更した以外は、支持体2の製造と同様にして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルム(支持体4)を得た。支持体4の空孔率は、0%であった。
(支持体5の製造)
肉厚100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS10 #100」、東レ社製)を支持体5とした。支持体5の空孔率は、0%であった。
上記で得た材料を用いて、以下のとおり実施例1〜15および比較例1〜6の記録用紙を得て、物性測定や評価に供した。
[実施例1]
第4級アンモニウム塩型共重合体1の固形分濃度2質量%、およびエチレンイミン系重合体の変性体8の固形分濃度0.3質量%を含む水溶液(表面処理層形成用の溶液)を調製した。
上記支持体1の両面に30W/m2/分の強度でコロナ放電処理を施し、次いで支持体1の両面に、上記表面処理層形成用の溶液を、ロールコーターを用いて片面の単位面積(m2)当たり乾燥後の固形分が0.02gとなるように塗工し、60℃のオーブンを介して乾燥させて表面処理層を設けて、実施例1の記録用紙を得た。この記録用紙は長尺のものを得てワインダーにて巻き取り、最終的にはロール状の記録用紙とした。
[実施例2〜10]
実施例1において、表面処理層(表面処理層形成用の溶液)に用いる第4級アンモニウム塩型共重合体ならびにポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の種類、ならびにこれらの配合量を表2に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に製造して実施例2〜10の記録用紙を得た。
[実施例11〜14]
実施例4において、用いる支持体の種類を表2に記載のものに変更した以外は、実施例4と同様に製造して実施例11〜14の記録用紙を得た。
[比較例1〜4]
実施例1において、表面処理層(表面処理層形成用の溶液)に用いる第4級アンモニウム塩型共重合体の種類を表2記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に製造して比較例1〜4の記録用紙を得た。
[比較例5]
実施例1において、表面処理層(表面処理層形成用の溶液)にポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体を含まないように変更した以外は、実施例1と同様に製造して比較例5の記録用紙を得た。
[比較例6]
実施例1において、表面処理層を設けない以外は、実施例1と同様に製造して比較例6の記録用紙を得た。
[実施例15]
シリコーン処理を施したグラシン紙(商品名:G7B、王子タック社製)を離型紙として用い、これのシリコーン処理面に溶剤系アクリル系粘着剤(商品名:オリバインBPS1109、トーヨーケム社製)とイソシアネート系架橋剤(商品名:オリバインBHS8515、トーヨーケム社製)の100:3(質量比)の混合液を、乾燥後の固形分量が単位面積(m2)当たり25gとなるようにコンマコーターで塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した。
次いで実施例4で得た記録用紙の一方の表面処理層と、上記の粘着剤層が接するように貼り合せて、圧着ロールで記録用紙と離型紙を接圧し、記録用紙(表面処理層/支持体/表面処理層)/粘着剤層/離型紙の積層構造からなる実施例15のラベルを得た。
このラベルは、低温倉庫でのラベル貼付作業においてもラベル貼付位置のズレが生じにくいという特徴を有するものであった。
<記録用紙の物性>
上記実施例1〜14および比較例1〜6で得られた記録用紙について、以下の物性の測定を行った。測定結果を表2に示す。
[帯電圧半減期]
JIS L1094:1997に記載の方法に従い、各実施例、比較例で得られた記録用紙の表面処理層における帯電圧の半減期を、スタティック・オネストメーター(商品名「H−0110」、シシド静電気社製)を用いて、温度5℃、相対湿度30%の条件下で測定した。測定は両面で行い平均値を求めた。
[表面抵抗値]
JIS K6911:1995に記載の方法に従い、各実施例、比較例で得られた記録用紙の表面処理層における表面抵抗値を、ディジタル超絶縁/微少電流計(商品名「DSM−8104」、日置電機社製)を用いて、温度23℃、相対湿度30%の条件下で測定した。測定は両面で行い平均値を求めた。
[水接触角]
JIS R3257:1999に記載の方法に従い、各実施例、比較例で得られた記録用紙の表面処理層における水の接触角を、自動接触角計(商品名「DM−301」、協和界面科学社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の条件下で測定した。測定は両面で行い平均値を求めた。
[不透明度]
JIS P8149:2000に記載の方法に従い、各実施例、比較例で得られた記録用紙の不透明度を測定した。不透明度は、試料背面に黒色板をあてて測定した値を、同試料背面に白色板をあてて測定した値で除した数値を百分率で表示したものである。
<記録用紙の評価>
上記実施例1〜14および比較例1〜6で得られた記録用紙について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
[低湿度環境下での静電気による貼り付き]
各実施例、比較例で得られた記録用紙を菊半版(636mm×470mm)に断裁し、これの片面にオフセット印刷機(商品名「リスロン」、小森コーポレーション社製)、および紫外線硬化型オフセットインキ(商品名「UV BC161」、T&K TOKA社製)を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、商品名、製造元、販売会社名、使用方法、注意事項等の文字情報およびバーコードや意匠を含む図柄を、6000枚/時間の速度にて、オフセット4色印刷を施した。次いで、これを紫外線照射器(メタルハライド灯、100W/cm、1灯、アイグラフィック者製)の下を通過させて印刷面のインキを乾燥させて、1000枚連続印刷を行い、オフセット印刷物を得た。
得られたオフセット印刷物を70mm×110mmのサイズに打抜き、これを10枚重ね合わせたものを、温度5℃、相対湿度30%の条件下で一昼夜調整した。その後印刷物を上より一枚ずつ取り出す際の貼り付きの有無を、以下の基準で判定した。結果を表2に示す。なお、この評価により低湿度環境下における、静電気による記録用紙同士の貼り付きの程度を見積もった。
○:すべて貼り付きなし。
×:1枚以上貼り付きあり。
[感熱塗工液のハジキ]
(感熱塗工液の調製)
3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン4質量部、3−ジエチルアミノ−7−オルトクロロアニリノフルオラン1質量部、およびヒドロキシエチルセルロース5%水溶液20質量部よりなる組成物をサンドグラインダーで平均粒径2μmまで粉砕し、A液とした。
次いで4,4'−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)の25質量部、ステアリン酸アミド15質量部、およびヒドロキシエチルセルロース5%水溶液140質量部よりなる組成物をサンドグラインダーで平均粒径2μmまで粉砕し、B液とした。
次いでA液25質量部、B液180質量部、タルク50%水分散液70質量部およびバインダーとしてヒドロキシエチルセルロース5%水溶液240質量部を混合し、感熱記録層用の塗工液である感熱塗工液を得た。
(ハジキ評価)
各実施例、比較例で得られた記録用紙上に、上記の感熱塗工液を塗工し、塗工液が均一に塗れるか否かを評価した。具体的には各実施例、比較例で得られた記録用紙上に、上記の感熱塗工液を、メイヤーバー#2およびバーコーターを用いて塗工し、記録用紙表面における液のハジキ(塗工ムラ、塗膜の凹凸)の有無を目視で評価し以下の基準で判定した。なお、この評価により記録用紙の加工適性の程度を見積もった。結果を表2に示す。
○:液のハジキは認められない。
×:液のハジキにより、塗工液の膜厚が不均一となり、凹凸の陰影が認められる。
[オフセット印刷時の水負け]
各実施例、比較例で得られた記録用紙にインキを乳化させたものを印刷し、同インキの転移の程度から、記録用紙のオフセット印刷時の水負けのしやすさを以下の方法で評価した。
具体的には印刷適性試験機(商品名「RIテスター」、明製作所社製)を用い、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、紫外線硬化型オフセットインキ(商品名「UV BC161」、T&K TOKA社製)0.4gに水0.4gを加え、インキ練りローラーで1分間インキと水を練ってインキを乳化させた。
次いで各実施例、比較例で得られた記録用紙をA4サイズに断裁し、これの片面に同試験機で乳化させたインキの印刷試験を行い、直ちに印刷物にUV照射して、オフセット印刷時の水負けを以下の基準で判定した。なお、この評価により記録用紙の印刷適性の程度を見積もった。結果を下記表2に示す。
○:一面に印刷されている。
×:印刷部が斑状に印刷されている。
[耐水性]
各実施例、比較例で得られた記録用紙について、表面処理層の耐水性を以下の方法で評価した。具体的には上記低湿度環境下での静電気による貼り付きの評価で得た、各実施例、比較例の記録用紙を用いたオフセット印刷物を70mm×110mmのサイズに打抜き、これを23℃のイオン交換水中に24時間浸漬した。その後該印刷物を水中より取り出し、該印刷物を学振形染色摩擦堅ろう度試験機(商品名「摩擦試験機II形」、スガ試験器社製)に取り付け、JIS L0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準拠し、印刷面を白綿布(金巾3号)にて荷重500gで50回摩擦試験し、印刷の剥がれの有無を目視で評価して以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
○:印刷の剥がれは認められない。
×:印刷の剥がれが認められる。
[印刷文字判読性]
上記低湿度環境下での静電気による貼り付きの評価で得た、各実施例、比較例の記録用紙を用いたオフセット印刷物を鏡面上に載せ、印刷された文字の判読の難易を以下の基準で判定した。結果を表2に示す。
○:文字が容易に判読できる。
○−:細かい文字では判読しにくいことがある。
△:文字が判読しにくいことがある。
×:文字が判読できない。
Figure 0006411825
Figure 0006411825
表2から分かるとおり、上記一般式(1)で表される構造単位(a)及び下記一般式(2)で表される構造単位(b)を含有し、構造単位(a)と構造単位(b)の質量比が40:60〜70:30の範囲である第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体に由来する成分とを含む表面処理層を有する、実施例1〜14の記録用紙は、表面処理層の表面における帯電圧半減期が5秒以下であり、低湿度環境下での静電気による貼り付き、感熱塗工液ハジキ、オフセット印刷時の水負け、耐水性、印刷文字判読性がいずれも良好であった。
第4級アンモニウム塩型共重合体の構造単位(a)の質量基準の含有割合が70質量%よりも多い比較例1の記録用紙は、水の接触角が低く、オフセット印刷時に水負けしやすく、表面処理層の耐水性が不十分であった。一方、第4級アンモニウム塩型共重合体の構造単位(a)の質量基準の含有割合が40質量%より少ない比較例2の記録用紙は、帯電圧半減期が長く、表面抵抗値が高く、低湿度環境下での静電気による貼り付きが起きた。
また、第4級アンモニウム塩型共重合体の構造単位(b)が実施例1〜14と異なり、疎水性が高い比較例3の記録用紙は、水の接触角が高く、感熱塗工液のハジキが起きた。
一方、第4級アンモニウム塩型共重合体の構造単位(a)の構造が異なる比較例4の記録用紙は、帯電圧半減期が長く、表面抵抗値が高く、低湿度環境下での静電気による貼り付きが起きた。
ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体を表面処理層に添加していない比較例5の記録用紙は、耐水性が不十分であった。
表面処理層を設けていない比較例6の記録用紙は、低湿度環境下での低湿度環境下での静電気による貼り付き、感熱塗工液ハジキ、耐水性がいずれも不十分であった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本発明の記録用紙は、優れた帯電防止性能を具備していることから、低湿度環境下においても多様な印刷方式およびプリンタに適用することができる。また、更なる帯電防止処理を施す必要がないため、低コストで製造することができる。さらに、本発明の記録用紙に印字、印刷を施すことにより得られる印刷物は、耐水性に優れ、長期保存に適する。このため、本発明の記録用紙および該記録用紙を用いたラベルは産業上の利用性が高い。

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂を主材料とする支持体と、該支持体の少なくとも一方の表面上に設けられた表面処理層とを有する記録用紙であって、
    前記表面処理層は、下記一般式(1)で表される構造単位(a)と下記一般式(2)で表される構造単位(b)からなり、前記構造単位(a)と前記構造単位(b)との質量比が40:60〜70:30の範囲である第4級アンモニウム塩型共重合体に由来する成分と、ポリエチレンイミン、エチレンイミン系重合体、およびこれらの変性体の少なくともいずれかに由来する成分とを含み、かつ、
    前記表面処理層は、温度5℃、相対湿度30%の条件下で測定される表面の帯電圧半減期が5秒以下であることを特徴とする記録用紙。
    Figure 0006411825
    (一般式(1)において、Aは−O−又は−NH−を表す。R1は水素原子又はメチル基を表す。R2は炭素数2〜4のアルキレン基又は2−ヒドロキシプロピレン基を表す。R3、R4、R5及びR6は、各々独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。R7は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を表す。Xm-は塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオンおよび炭酸イオンからなる群より選択されるm価のイオンを表す。mは1または2を表し、nは1〜3の整数を表す。)
    Figure 0006411825
    (一般式(2)において、R 8 は水素原子又はメチル基を表す。R 9 は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
  2. 前記表面処理層は、さらにエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ホルマリン系化合物、オキサゾリン系化合物およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物から選択される少なくとも一種の架橋剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
  3. 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録用紙。
  4. 前記支持体は、無機微粉末および有機フィラーの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録用紙。
  5. 前記支持体は、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を50〜80質量%含み、且つ無機微細粉末および有機フィラーの少なくとも一方を20〜50質量%含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の記録用紙。
  6. 前記一般式(2)におけるR9が、炭素数1〜3のアルキル基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録用紙。
  7. 前記支持体は、少なくとも1軸方向に延伸されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の記録用紙。
  8. 前記支持体は、走査型電子顕微鏡による断面観察像から求められる空孔率が10〜50%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録用紙。
  9. 前記表面処理層の上に、感熱記録層を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録用紙。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録用紙と、該記録用紙の一方の表面上に設けられた粘着剤層を有することを特徴とするラベル。
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