JP6405902B2 - 色調補正フィルム及びこれを用いた透明導電性フィルム - Google Patents

色調補正フィルム及びこれを用いた透明導電性フィルム Download PDF

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Description

本発明は、タッチパネル用の色調補正フィルムと、当該色調補正フィルム上に透明導電層を積層した透明導電性フィルムに関する。
現在、画像表示部に直接触れることにより、情報を入力できるデバイスとしてタッチパネルが広く用いられている。タッチパネルは光を透過する入力装置を液晶表示装置等のディスプレイ画面上に配置したものであり、代表的な形式として、透明電極と指との間に生じる電流容量の変化を利用した静電容量式タッチパネルがある。
タッチパネル用の透明導電性フィルムとしては、透明基材フィルム上に、酸化錫を含有するインジウム酸化物(錫ドープ酸化インジウム、ITO)や酸化亜鉛等の金属酸化物による透明導電層を積層したものが一般的に用いられている。このような透明導電性フィルムは、金属酸化物層の反射及び吸収に由来する可視光短波長領域の透過率の低下により、黄色の呈色が見られることが多い。そのため、タッチパネルの下に配置される表示装置の発色を正確に表現することが難しいという問題があった。
この問題を解決するために、透明導電層を多層光学膜と組み合わせた透明導電体が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、透明基材には、一方の面上に第1色相調整層、他方の面上に第2色相調整層が設けられている。そのうえで、第1色相調整層上に、屈折率の異なる高屈折率層と低屈折率層とが積層され、両者の光学干渉により反射率の低減が図られている。そして、この高屈折率層と低屈折率層とからなる反射低減層の上に透明導電層が積層されて透明導電体が構成されている。この透明導電体では、このような積層構成において各層の厚みと屈折率を規定し、色相調整機能と反射低減機能とを適切に発揮させることで、全光線透過率を高めるとともに着色の低減が図られている。
特開2012−20425号公報
しかし、特許文献1の透明導電性フィルムは、透明基材フィルム上へ5種類もの層を多数積層する必要があるため、生産性が悪い課題があった。また、このように多数の層を積層していると、上記機能を発現するための各層における屈折率や膜厚の調整が煩雑であった。
そこで、本発明の目的とするところは、透過光の着色を抑え、さらに生産性にも優れる透明導電性フィルムと、その下地フィルムとして用いられる色調補正フィルムを提供することにある。
そのための手段として、本発明は次の色調補正フィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル及び表示装置を提供する。
(1)透明基材フィルムの一方の面上に、色調補正層が積層され、透明基材フィルムの反対面に、機能層を有する色調補正フィルムであって、
前記色調補正層は、シリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、波長400nmの光に対する屈折率が1.33〜1.53、膜厚が10〜55nmであり
前記機能層は波長400nmの光に対する屈折率が1.31〜1.51の透過率向上層であることを特徴とする、色調補正フィルム。
(2)前記機能層は、ハードコート層、透過率向上層がこの順に積層された多機能層であり、
前記透過率向上層の波長400nmの光に対する屈折率が1.31〜1.51であることを特徴とする、(1)に記載の色調補正フィルム。
(3)(1)又は(2)に記載の色調補正フィルムの色調補正層上に、錫ドープ酸化インジウム層が積層されており、
前記錫ドープ酸化インジウム層は、波長400nmの光に対する屈折率が1.90〜2.35、膜厚が5〜45nmである、透明導電性フィルム。
(4)(3)に記載の透明導電性フィルムを備えることを特徴とするタッチパネル。
(5)(4)に記載のタッチパネルを備えることを特徴とする表示装置。
本発明の色調補正フィルムないし透明導電フィルムでは、透明基材フィルムに積層する色調補正層及び錫ドープ酸化インジウム層について、波長400nmの光に対する屈折率および膜厚を適切に設定したことで、透過光の着色を抑え、全光線透過率を高くすることが出来る。
本発明の色調補正フィルム及び透明導電性フィルムの構成を示す概略説明図である。
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「○○〜××」とは、特に明示しない限り「○○以上××以下」を意味する。
≪色調補正フィルム≫
本実施形態の色調補正フィルムは、図1に示すように、透明基材フィルムの一方面に、色調補正層が積層され、透明基材フィルムの他方の面に機能層が積層されている。以下に、この色調補正フィルムの構成要素について順に説明する。
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムは、透明性を有している限り特に制限されないが、屈折率が1.55〜1.70の範囲内のものが好ましい。このような透明基材フィルムを形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET、屈折率:1.67)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC、屈折率:1.59)、ポリアリレート(PAR、屈折率:1.60)及びポリエーテルスルフォン(PES、屈折率:1.65)等が好ましい。これらのうち、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが成形の容易性で好ましい。透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは25〜188μmである。透明基材フィルムの厚みが25μmより薄い場合や400μmより厚い場合には、色調補正フィルムの製造時及び使用時における取り扱い性が低下して好ましくない。透明基材フィルムの全光線透過率は、88%以上であることが好ましい。88%未満である場合は、透明導電性フィルムの全光線透過率が低くなり好ましくない。なお、透明基材フィルムには、全光線透過率が88%未満とならない範囲で、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。また、透明基材フィルムには、フィルム上に加工する層との密着性向上や干渉縞低減のために、波長400nmの光における屈折率が1.50〜1.80の公知の易接着層を設けても良い。
<色調補正層>
色調補正層は、透明基材フィルムの一方面に積層され、屈折率と膜厚を所定の範囲(詳細は後述する)に調整することで、色調補正フィルムないし透明導電性フィルムの色調を補正(透過色の着色を抑制)する層である。色調補正層は、シリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含む色調補正層用塗液を、活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
活性エネルギー線硬化型樹脂は、色調補正層のバインダーとなる。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリレートの単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」や「(メタ)アクリロイル基」も同様である。活性エネルギー線硬化型樹脂は、波長400nmの光に対する屈折率が1.4〜1.7であることが好ましい。色調補正層中の活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量は、5〜80質量%程度である。
シリカ微粒子は、色調補正層の屈折率を積極的に低減させるために配合されるものである。このようなシリカ微粒子としては、コロイダルシリカや中空シリカ微粒子が好ましい。波長400nmの光に対するコロイダルシリカ及び中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.55であることが好ましい。シリカ微粒子は、色調補正層中に20〜90質量%含まれることが好ましい。シリカ微粒子の含有量が20質量%未満では、色調補正層の屈折率が所定の範囲(詳細は後述する)とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が90質量%より多いと、塗膜強度が弱くなる。
色調補正層用塗液は、光重合開始剤も含む。光重合開始剤は、紫外線(UV)等の活性エネルギー線により色調補正層用塗液を硬化させて塗膜を形成する際の重合開始剤として用いられる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線照射により重合を開始するものであれば特に限定されず、公知の化合物を使用できる。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。
色調補正層用塗液中に含まれる光重合開始剤の含有量は、色調補正層用塗液から溶媒を除いた固形分の質量100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が1質量部未満では、色調補正層用塗液における活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となり、10質量部を超えると不必要に多くなり好ましくない。
塗液の溶媒は、この種の色調補正フィルム等において各層形成用の塗液に従来から使用されている公知のものであれば特に制限は無く、例えばアルコール系、ケトン系、エステル系の溶媒が適時選択できる。
色調補正層は、屈折率が後述の範囲を外れない範囲で、その他の添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、表面調整剤や防汚剤、スリップ剤等が挙げられる。
色調補正層は、シリカ微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂をそれぞれ波長400nmの光に対する屈折率が1.33〜1.53となるように配合されることで形成される。色調補正層の屈折率が1.33未満の場合は、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。また、色調補正層の屈折率が1.53より大きい場合は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。
また、色調補正層の乾燥硬化後の膜厚は10〜55nmであることが必要である。色調補正層の膜厚がこの範囲外では、b*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。膜厚は、特に25〜35nmであることが好ましい。この範囲とすることにより、透明導電性フィルムの透過色b*を極めて小さくすることができる。
色調補正層用塗液の塗布方法は特に制限されず、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知の湿式の塗布方法を採用できる。また、活性エネルギー線の種類は特に制限されないが、利便性等の観点から紫外線を用いることが好ましい。
また、色調補正層は無機物である酸化ケイ素(波長400nmの光に対する屈折率が1.47)を用いた乾式の成膜法により形成することも出来る。乾式の成膜にて形成する膜厚は湿式による形成同様、10〜55nmであることが必要である。膜厚がこの範囲外では、b*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。乾式の製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンスプレーティング法、CVD法等公知の製膜法を採用できる。
<機能層>
機能層は、透明基材フィルムの反対面に積層され、透明導電性フィルムに所定の機能を付与することができる層である。機能層としては、例えばハードコート層、透過率向上層、紫外線吸収層、帯電防止層、アンチブロッキング層などである。
(ハードコート層)
ハードコート層は、透明基材フィルム上に設けることでフィルム表面の硬度及び耐擦傷性を向上する層である。表面硬度や耐擦傷性を向上できる限り、この種のフィルムにおいてハードコート層に用いられる公知の全ての樹脂が使用可能である。ハードコート層に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、色調補正層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用することができる。
ハードコート層用塗液は光重合開始剤も含む。光重合開始剤は、当該光重合開始剤も、色調補正層用塗液で使用する光重合開始剤と同種のものを使用すればよい。また、塗液の溶媒についても、色調補正層用塗液で使用するものと同種のものを使用すればよい。
また、ハードコート層は、透光性微粒子を含有していてもよい。透光性微粒子は、ハードコート層に表面の凹凸を形成し、製造工程上の巻き取り性を向上させるものである。前記透光性微粒子は、任意の材料を用いることが出来る。そのような透光性微粒子としては、例えばシリカのほか、塩化ビニル、(メタ)アクリル単量体、スチレン及びエチレンから選択される少なくとも1種の単量体を重合して得られる重合体などから形成される。
更に、ハードコート層は、屈折率調整用に金属酸化物微粒子を含有していてもよい。金属酸化物としては、例えばITO(インジウム−錫複合酸化物、屈折率2.0)、ATO(アンチモン−錫複合酸化物、屈折率2.1)、酸化アンチモン(屈折率2.1)、酸化亜鉛(屈折率2.1)、酸化ジルコニウム(屈折率2.1)、酸化チタン(屈折率2.4)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
更に、ハードコート層は、その他添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、表面調整剤やスリップ剤等が挙げられる。
ハードコート層は、波長400nmの光に対する屈折率が1.49〜1.68であることが好ましい。屈折率が上記範囲外の場合、透明基材フィルムとハードコート層との屈折率差が大きくなり、干渉縞が発生するため好ましくない。本発明の透明導電性フィルムにおいて、全光線透過率を向上させるという観点から、ハードコート層の屈折率は、1.62〜1.68が好ましい。
またハードコート層の膜厚は、0.4〜3.5μmであることが好ましい。膜厚が0.4μmより薄い場合は、鉛筆硬度がH未満になるため好ましくない。膜厚が3.5μmより厚い場合は、硬化収縮によるカールが強くなるとともに、不必要に厚くなり、生産性や作業性が低下するため好ましくない。
(透過率向上層)
透過率向上層は、透明基材フィルム上や透明基材フィルム上に積層したハードコート層上に設けられ、透明基材フィルムやハードコート層との相対関係によって、反射を低減することで透過率を向上する層である。透過率向上層は、シリカ微粒子と、活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる透過率向上層用塗液を活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。
シリカ微粒子は、透過率向上層の屈折率を積極的に低減させるために配合されるものである。シリカ微粒子は、色調補正層にて使用したシリカ微粒子と同種のものを使用すればよい。シリカ微粒子は、透過率向上層中に20〜90質量%含まれることが好ましい。シリカ微粒子の含有量が20質量%未満では、透過率向上層の屈折率が所定の範囲(詳細は後述する)とすることが出来ない。一方、シリカ微粒子の含有量が90質量%より多いと、塗膜強度が弱くなってしまう。
ここで、シリカ微粒子は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等により表面を修飾してもよい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等でシリカ微粒子表面を修飾することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂との共有結合が生じ、塗膜強度が強くなる傾向が見られる。
バインダーとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、波長400nmの光に対する屈折率が1.38〜1.67であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、色調補正層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用することができる。透過率向上層中の活性エネルギー線硬化型樹脂の含有量は10〜79質量%程度である。
さらに、透過率向上層用塗液は光重合開始剤も含む。当該光重合開始剤も、色調補正層用塗液で使用する光重合開始剤と同種のものを使用すればよい。透過率向上層用塗液中に含まれる光重合開始剤の含有量は、透過率向上層用塗液から溶媒を除いた固形分の質量100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が1質量部未満では活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化が不十分となり、10質量部を超えると不必要に多くなり好ましくない。
透過率向上層は、屈折率が後述の範囲を外れない範囲で、その他の添加剤を含有していても良い。その他の添加剤としては、表面調整剤や防汚剤、スリップ剤等が挙げられる。
透過率向上層は、シリカ微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂をそれぞれ波長400nmの光に対する屈折率が1.31〜1.51となるように配合されることで形成される。透過率向上層の屈折率が1.31未満の場合は、塗膜中の粒子の割合が多くなり、ヘイズ値が上昇してしまうため全光線透過率が低下する。また、透過率向上層の屈折率が1.51より大きい場合は、反射低減機能が落ちるため全光線透過率が低くなってしまう。さらには、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における透過色のb*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味が明瞭に認識されるようになる。本発明の透明導電性フィルムにおいて、全光線透過率を向上させるという観点から、透過率向上層の屈折率は、1.31〜1.41が好ましい。
また、透過率向上層の乾燥硬化後の膜厚は60〜100nmであることが必要である。透過率向上層の膜厚が60nm未満の場合は、反射低減機能が落ちるため全光線透過率が低くなってしまう。また、透過率向上層の膜厚が100nmよりも厚い場合は、b*の値が大きくなってしまい、透明導電性フィルムの透過色の黄色味の着色が明瞭に認識されるようになる。
(その他の機能層)
本発明の機能層には、上記ハードコート層、透過率向上層の他、紫外線吸収層、帯電防止層、アンチブロッキング層等を適用することができる。これらの機能層は、フィルム層に紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の機能性材料を配合することにより調製することができる。フィルム剤、機能性材料の種類や配合、フィルム層の膜厚等は、本発明の透明導電性フィルムの透過色b*、全光線透過率を所望の範囲から外れないように適宜調整すればよい。
(多機能層)
本発明の機能層は、必要に応じて複数の機能を有する多機能層としてもよい。多機能層としては、一つの機能層に複数の機能性材料を配合しても、複数の層を積層してもよい。特に、ハードコート層、透過率向上層の順に積層した多機能層が好ましい。
≪透明導電性フィルム≫
透明導電性フィルムは、図1に示すように、上記色調補正フィルムの色調補正層上に錫ドープ酸化インジウム層を有する。透明導電性フィルムの透過光の着色は、JIS Z 8729に規定されるLab表色系のb*で評価でき、好ましくは−1≦b*≦1である。b*>1の場合、透明導電性フィルムが黄色に着色して見えるため好ましくない。一方、b*<−1の場合、透明導電性フィルムが青色に着色して見えるため好ましくない。
透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは89.0%以上である。全光線透過率が89.0%未満の場合、視認性が悪化するため好ましくない。
<錫ドープ酸化インジウム層>
錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)は透明導電層であり、波長400nmの光に対する屈折率が1.90〜2.35、膜厚が5〜45nmである。
屈折率がこの範囲を外れると、色調補正層や機能層との光学干渉が適切に作用しなくなるため、透明導電性フィルムの透過色が着色を呈し、全光線透過率も低下する。透過色の着色を極めて小さくできるという観点から、屈折率は2.00〜2.20であることが特に好ましい。
ITO層の膜厚が5nmより薄い場合は、ITO層を均一の厚みに成形することが難しく、安定した抵抗が得られないため好ましくない。また、ITO層の膜厚が50nmより厚い場合は、ITO層自身による光の吸収が強くなり、透過色の着色低減効果が薄れると共に、全光線透過率が小さくなる傾向があるため好ましくない。
<錫ドープ酸化インジウム層の形成>
錫ドープ酸化インジウム層の製膜方法は特に限定されず、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法を採用できる。これらの中では、層の厚み制御の観点より蒸着法及びスパッタリング法が特に好ましい。尚、錫ドープ酸化インジウム層を形成した後に、100℃〜200℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化する。具体的には、高い温度で結晶化すると錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は小さくなる傾向を示す。従って、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は、アニール処理の温度と時間を制御することで調整可能である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。また、各例における、屈折率、透過色、全光線透過率、膜厚は下記に示す方法により測定した。
<屈折率(色調補正層、ハードコート層)>
(1)波長400nmの光に対する屈折率が1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器株式会社製)により、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nm程度になるように層の厚さを調整して塗布した。
(2)乾燥後、紫外線照射装置(岩崎電気株式会社製)により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ4+b/λ2+c (式1)
(N:屈折率、λ:波長、a、b、c:波長分散定数)
<屈折率(ITO層)>
(1)波長400nmの光に対する屈折率が1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、実膜厚20nmの透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニーリングを施し、透明導電性フィルムを作製した。
(2)上記透明導電性フィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、上記(式1)を用いて、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
なお、各表(後述)に記載の各層の屈折率は、上記屈折率測定用サンプルから求めた屈折率である。
<透過色>
色差計(「SQ−2000」、日本電色工業株式会社製)を用いて透明導電性フィルムの透過色、b*を測定した。このb*は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b*表色系における値である。
<全光線透過率>
ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業株式会社製)により透明導電性フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
〔色調補正層用塗液の調製〕
色調補正層用塗液として以下の原料を使用し、各原料を下記表1に記載した組成で混合して、色調補正層用塗液L−1〜L−7を調製した。得られた色調補正層用塗液L−1〜L−7を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
シリカ微粒子として、扶桑化学工業(株)製「PL−1」または日揮触媒化成(株)製アクリル修飾中空シリカ微粒子「スルーリアNAU」を使用した。また金属酸化物微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)を使用した。また、活性エネルギー線硬化型樹脂として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)を使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE907(I−907)を使用した。溶媒として、イソプロピルアルコールを使用した。微粒子成分(シリカ微粒子又は金属酸化物微粒子)及び活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、溶媒とを、重量比で95:5:4000の割合で混合した。
Figure 0006405902
〔ハードコート層用塗液の調製〕
ハードコート層用塗液として以下の原料を使用し、各原料を下記表2に記載した組成で混合して、ハードコート層用塗液D−1〜D−2を調製した。得られたハードコート層用塗液D−1〜D−2を用いて形成されるハードコート層の屈折率を測定した。その結果も表2に示す。
有機微粒子として、アクリル系有機微粒子(綜研化学(株)製MX−80H3wT)を使用した。金属酸化物微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)を使用した。また活性エネルギー線硬化型樹脂として、6官能ウレタンアクリレートである(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7600B)を使用した。有機微粒子、又は金属酸化物微粒子及び活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、溶媒とを、重量比で95:5:100の割合で混合した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE184(I−184)を使用した。また溶媒としてメチルイソブチルケトンを使用した。
Figure 0006405902
〔透過率向上層用塗液の調製〕
透過率向上層用塗液として以下の原料を使用し、各原料を下記表3に記載した組成で、微粒子成分(シリカ微粒子又は金属酸化物微粒子)及び活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、溶媒とを、重量比で95:5:4000の割合で混合して、透過率向上層用塗液E−1〜E−2を調製した。得られた透過率向上層用塗液E−1〜E−2を用いて形成される透過率向上層の光の波長400nmに対する屈折率を測定した。その結果を表3に示す。
シリカ微粒子として、扶桑化学工業(株)製「PL−1」または日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子「スルーリアNAU」を使用した。また金属酸化物微粒子として、酸化ジルコニウム微粒子分散液(シーアイ化成(株)製 ZRMEK25%−F47)を使用した。また、活性エネルギー線硬化型樹脂として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製DPHA)を使用した。光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE907(I−907)を使用した。溶媒として、イソプロピルアルコールを使用した。
Figure 0006405902
(実施例1−1)
PETフィルムの一方面に、色調補正層用塗液(L−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより色調補正層を形成した。続いて、PETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、ハードコート層用塗液(D−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表4を参照)。
(実施例1−2〜実施例1−9)
色調補正層を下記表4に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルムを作製した。
Figure 0006405902
(実施例2−1)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、透過率向上層用塗液(E−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表5を参照)。
(実施例2−2)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、透過率向上層用塗液(E−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表5を参照)。
Figure 0006405902
(実施例3−1)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、ハードコート層用塗液(D−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。続いて、上記ハードコート層上に、透過率向上層用塗液(E−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表6を参照)。
(実施例3−2)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、ハードコート層用塗液(D−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。続いて、上記ハードコート層上に、透過率向上層用塗液(E−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表6を参照)。
(実施例3−3)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、ハードコート層用塗液(D−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。続いて、上記ハードコート層上に、透過率向上層用塗液(E−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表6を参照)。
(実施例3−4)
実施例1−1にて作製した色調補正フィルムのPETフィルムの他方面(色調補正層の反対面)に、ハードコート層用塗液(D−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることによりハードコート層を形成した。続いて、上記ハードコート層上に、透過率向上層用塗液(E−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより透過率向上層を形成し、色調補正フィルムを作製した(下記表6を参照)。
Figure 0006405902
(実施例4−1)
実施例1−1の色調補正フィルムの色調補正層上に、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が25nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、150℃、30分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表7に示す。
(実施例4−2〜実施例4−15)
色調補正フィルムとして表7、8に示すものを使用した以外は、実施例4−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した(下記表7、8を参照)。得られた透明導電性フィルムについて透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表7、8に示す。
(実施例4−16)
実施例1−1の色調補正フィルムの色調補正層上に、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が40nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、150℃、100分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した(下記表8を参照)。得られた透明導電性フィルムについて透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表8に示す。
(実施例4−17)
実施例1−1の色調補正フィルムの色調補正層上に、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、120℃、60分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した(下記表8を参照)。得られた透明導電性フィルムについて透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表8に示す。
Figure 0006405902
Figure 0006405902
(比較例1−1〜比較例1−4)
色調補正層を下記表9に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルムを作製した(下記表9を参照)。
Figure 0006405902
(比較例2−1〜比較例2−4)
色調補正フィルムとして表10に示すものを使用した以外は、実施例4−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表10に示す。
Figure 0006405902
(結果および考察)
実施例4−1〜4−17では、色調補正層及び錫ドープ酸化インジウム層の適切な材料、屈折率、膜厚にて透明導電性フィルムを作製しているため、透過色b*の値が小さく、着色を十分に抑え、且つ全光線透過率が優れた透明導電性フィルムとすることが出来た。
また、従来の色調補正フィルムのように透明基材フィルム上へ5種類もの層を多数積層する必要がなく、生産性に優れた色調補正フィルムを得ることができた。
その一方、比較例2−1〜2−4は、色調補正層及び膜厚のいずれかの相対バランスが悪いため、透過色b*の値が大きく、透明導電性フィルムが着色する、若しくは、全光線透過率が低い結果となった。
1 透明基材フィルム
2 色調補正層
3 機能層
4 錫ドープ酸化インジウム層
(A)色調補正フィルム
(B)透明導電性フィルム

Claims (5)

  1. 透明基材フィルムの一方の面上に、色調補正層が積層され、透明基材フィルムの反対面に、機能層を有する色調補正フィルムであって、
    前記色調補正層は、シリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、波長400nmの光に対する屈折率が1.33〜1.53、膜厚が10〜55nmであり
    前記機能層は波長400nmの光に対する屈折率が1.31〜1.51の透過率向上層であることを特徴とする、色調補正フィルム。
  2. 前記機能層は、ハードコート層、透過率向上層がこの順に積層された多機能層であり、
    前記透過率向上層の波長400nmの光に対する屈折率が1.31〜1.51であることを特徴とする、請求項1に記載の色調補正フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の色調補正フィルムの色調補正層上に、錫ドープ酸化インジウム層が積層されており、
    前記錫ドープ酸化インジウム層は、波長400nmの光に対する屈折率が1.90〜2.35、膜厚が5〜45nmである、透明導電性フィルム。
  4. 請求項3に記載の透明導電性フィルムを備えることを特徴とするタッチパネル。
  5. 請求項4に記載のタッチパネルを備えることを特徴とする表示装置。

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